特許第6298191号(P6298191)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6298191活性エネルギー線硬化性樹脂組成物、防曇防汚積層体、及びその製造方法、物品、並びに防曇方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6298191
(24)【登録日】2018年3月2日
(45)【発行日】2018年3月20日
(54)【発明の名称】活性エネルギー線硬化性樹脂組成物、防曇防汚積層体、及びその製造方法、物品、並びに防曇方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/30 20060101AFI20180312BHJP
   B32B 27/16 20060101ALI20180312BHJP
   C09D 133/14 20060101ALI20180312BHJP
【FI】
   B32B27/30 A
   B32B27/16 101
   C09D133/14
【請求項の数】15
【全頁数】38
(21)【出願番号】特願2017-87437(P2017-87437)
(22)【出願日】2017年4月26日
【審査請求日】2017年6月14日
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000108410
【氏名又は名称】デクセリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 良
(72)【発明者】
【氏名】水野 幹久
(72)【発明者】
【氏名】原 忍
【審査官】 高崎 久子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2017−030347(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/143522(WO,A1)
【文献】 特開平03−215589(JP,A)
【文献】 実開昭54−069097(JP,U)
【文献】 特開2005−097031(JP,A)
【文献】 特開2002−105433(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D1/00−10/00;101/00−201/10
B05D
B32B
C09K3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、前記基材上にプライマー層と、前記プライマー層上に表面が平滑な防曇防汚層とを有し、
前記プライマー層の平均厚みが、1μm〜10μmであり、
前記防曇防汚層が、10N/mm以上のマルテンス硬度と、0.40以下の動摩擦係数と、10μm以上の平均厚みとを有し、
前記防曇防汚層が、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の硬化物であり、
前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物が、アルキレンオキシド当量が100未満でありかつアクリル当量が200〜500である親水性モノマーと、アルキレンオキシド当量が100以上でありかつアクリル当量が400未満である非脂環式の架橋剤と、フッ素及びケイ素の少なくともいずれかを有する撥水性モノマーとを含有し、
前記親水性モノマーが、アルコキシ化トリメチロールプロパントリアクリレートであり、
前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物における前記架橋剤の含有量が、前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の不揮発分に対して、5質量%〜40質量%であり、
前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物における前記撥水性モノマーの含有量が、前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の不揮発分に対して、0.001質量%〜10質量%である、
ことを特徴とする防曇防汚積層体。
【請求項2】
前記防曇防汚層の表面の純水接触角が、80°以上であり、かつヘキサデカン接触角が、35°以上である請求項1に記載の防曇防汚積層体。
【請求項3】
下記評価方法により防曇性を評価した際の結果が、◎となる請求項1から2のいずれかに記載の防曇防汚積層体。
<防曇性の評価方法>
常温環境下に2時間放置後、35℃85%RH(高温高湿環境)に15分間暴露する。高温高湿環境へ暴露している間、表面を目視で観察し、下記評価基準で防曇性を評価する。
〔評価基準〕
◎: 15分後も曇る面積が3割以下。
○: 10分後まで曇る面積が3割以下。
△: 5分後まで曇る面積が3割以下。
×: 5分で曇る面積が3割より大きい。
【請求項4】
前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物における前記親水性モノマーの含有量が、前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の不揮発分に対して、55質量%〜90質量%である請求項1から3のいずれかに記載の防曇防汚積層体。
【請求項5】
前記基材が、ガラス製基材である請求項1から4のいずれかに記載の防曇防汚積層体。
【請求項6】
前記防曇防汚層の平均厚みが、10μm〜100μmである請求項1から5のいずれかに記載の防曇防汚積層体。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載の防曇防汚積層体を表面に有することを特徴とする物品。
【請求項8】
請求項1から6のいずれかに記載の防曇防汚積層体の製造方法であって、
前記プライマー層上の、前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物から形成される未硬化層に対して、酸素濃度0.1体積%未満の雰囲気下で紫外線照射を行い、前記防曇防汚層を形成する工程を含む、ことを特徴とする防曇防汚積層体の製造方法。
【請求項9】
請求項1から6のいずれかに記載の防曇防汚積層体を常温以上に加温することにより、前記防曇防汚層の防曇性を向上させることを特徴とする防曇方法。
【請求項10】
請求項1から6のいずれかに記載の防曇防汚積層体の前記防曇防汚層を清掃することにより、前記防曇防汚層の防曇性を維持させることを特徴とする防曇方法。
【請求項11】
親水性モノマーと、撥水性モノマーと、非脂環式の架橋剤と、光重合開始剤と、沸点80℃以上の溶剤とを含有する活性エネルギー線硬化性樹脂組成物であって、
前記親水性モノマーが、アルコキシ化トリメチロールプロパントリアクリレートであり、
前記撥水性モノマーが、フッ素及びケイ素の少なくともいずれかを有し、
前記架橋剤の、アルキレンオキシド当量が100以上でありかつアクリル当量が400未満であり、
前記撥水性モノマーの含有量が、前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の不揮発分に対して、0.001質量%〜10質量%であり、
前記架橋剤の含有量が、前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の不揮発分に対して、5質量%〜40質量%であり、
前記溶が、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−2−プロパノール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2−エチル−1−ヘキサノール、酢酸ノルマルプロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、ジイソブチルケトン、ジアセトンアルコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、1,4−ジオキサン、メチルカルビトール、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、エチルカルビトールアセテート、及びブチルカルビトールアセテートの少なくともいずれかであることを特徴とする活性エネルギー線硬化性樹脂組成物。
【請求項12】
前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物が、活性エネルギー線により硬化して得られる表面が平滑な防曇防汚層の表面のマルテンス硬度が10N/mm以上であり、動摩擦係数が0.40以下である請求項11に記載の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物。
【請求項13】
前記防曇防汚層の表面の純水接触角が、80°以上であり、かつヘキサデカン接触角が、35°以上である請求項12に記載の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物。
【請求項14】
前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物における前記親水性モノマーの含有量が、前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の不揮発分に対して、55質量%〜90質量%である請求項11から13のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物。
【請求項15】
前記溶剤が、プロピレングリコールモノメチルエーテルである請求項11から14のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築用途、産業用途、自動車用途、光学用途、太陽電池パネルなどの広範囲に使用できる防曇防汚積層体、及びその製造方法、前記防曇防汚積層体を用いた物品、前記防曇防汚積層体を用いた防曇方法、並びに前記防曇防汚積層体の防曇防汚層の形成に適用可能な活性エネルギー線硬化性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
種々の物品には、その表面を装飾及び保護するために、その表面に樹脂フィルム、ガラスなどが貼り付けられている。
しかし、物品の表面を装飾及び保護する樹脂フィルム、ガラスなどが曇ることにより物品の視認性及び美観が低下することがある。
そのため、そのような物品の視認性及び美観の低下を防ぐために、前記樹脂フィルム及びガラスには、防曇処理が施されている。
【0003】
例えば、防曇性、及び防汚性を備え、特定の組成を有する電子線硬化型ハードコートシートが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
通常、防曇性が求められる、鏡、ガラス窓、眼鏡などの物品においては、常温常湿よりも高温高湿状態に曝される場合がある。その場合において、防曇防汚層に防曇性の低下や白化が生じると、物品の視認性が低下するという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3760669号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、外観、防汚性、及び耐久性に優れ、更に高温高湿状態でも外観の低下が生じずかつ防曇性に優れる防曇防汚積層体、及びその製造方法、前記防曇防汚積層体を用いた物品、前記防曇防汚積層体を用いた防曇方法、並びに前記防曇防汚積層体の防曇防汚層の形成に適用可能な活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> 基材と、前記基材上にプライマー層と、前記プライマー層上に表面が平滑な防曇防汚層とを有し、
前記プライマー層の平均厚みが、0.5μm超であり、
前記防曇防汚層が、10N/mm以上のマルテンス硬度と、0.40以下の動摩擦係数と、10μm以上の平均厚みとを有し、
前記防曇防汚層が、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の硬化物であり、
前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物が、アルキレンオキシド当量が100未満でありかつアクリル当量が200〜500である親水性モノマーと、アルキレンオキシド当量が100以上でありかつアクリル当量が400未満である非脂環式の架橋剤と、フッ素及びケイ素の少なくともいずれかを有する撥水性モノマーとを含有し、
前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物における前記架橋剤の含有量が、前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の不揮発分に対して、5質量%〜40質量%であり、
前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物における前記撥水性モノマーの含有量が、前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の不揮発分に対して、0.001質量%〜10質量%である、
ことを特徴とする防曇防汚積層体である。
<2> 前記防曇防汚層の表面の純水接触角が、80°以上であり、かつヘキサデカン接触角が、35°以上である前記<1>に記載の防曇防汚積層体である。
<3> 下記評価方法により防曇性を評価した際の結果が、◎となる前記<1>から<2>のいずれかに記載の防曇防汚積層体である。
<防曇性の評価方法>
常温環境下に2時間放置後、35℃85%RH(高温高湿環境)に15分間暴露する。高温高湿環境へ暴露している間、表面を目視で観察し、下記評価基準で防曇性を評価する。
〔評価基準〕
◎: 15分後も曇る面積が3割以下。
○: 10分後まで曇る面積が3割以下。
△: 5分後まで曇る面積が3割以下。
×: 5分で曇る面積が3割より大きい。
<4> 前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物における前記親水性モノマーの含有量が、前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の不揮発分に対して、55質量%〜90質量%である前記<1>から<3>のいずれかに記載の防曇防汚積層体である。
<5> 前記基材が、ガラス製基材である前記<1>から<4>のいずれかに記載の防曇防汚積層体である。
<6> 前記防曇防汚層の平均厚みが、10μm〜100μmである前記<1>から<5>のいずれかに記載の防曇防汚積層体である。
<7> 前記プライマー層の平均厚みが、1μm〜10μmである前記<1>から<6>のいずれかに記載の防曇防汚積層体である。
<8> 前記<1>から<7>のいずれかに記載の防曇防汚積層体を表面に有することを特徴とする物品である。
<9> 前記<1>から<7>のいずれかに記載の防曇防汚積層体の製造方法であって、
前記プライマー層上の、前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物から形成される未硬化層に対して、酸素濃度0.1体積%未満の雰囲気下で紫外線照射を行い、前記防曇防汚層を形成する工程を含む、ことを特徴とする防曇防汚積層体の製造方法である。
<10> 前記<1>から<7>のいずれかに記載の防曇防汚積層体を常温以上に加温することにより、前記防曇防汚層の防曇性を向上させることを特徴とする防曇方法である。
<11> 前記<1>から<7>のいずれかに記載の防曇防汚積層体の前記防曇防汚層を清掃することにより、前記防曇防汚層の防曇性を維持させることを特徴とする防曇方法である。
<12> 親水性モノマーと、撥水性モノマーと、非脂環式の架橋剤と、光重合開始剤とを含有する活性エネルギー線硬化性樹脂組成物であって、
前記親水性モノマーの、アルキレンオキシド当量が100未満でありかつアクリル当量が200〜500であり、
前記撥水性モノマーが、フッ素及びケイ素の少なくともいずれかを有し、
前記架橋剤の、アルキレンオキシド当量が100以上でありかつアクリル当量が400未満であり、
前記親水性モノマーの含有量が、前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の不揮発分に対して、0.001質量%〜10質量%であり、
前記架橋剤の含有量が、前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の不揮発分に対して、5質量%〜40質量%である、ことを特徴とする活性エネルギー線硬化性樹脂組成物である。
<13> 前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物が、活性エネルギー線により硬化して得られる表面が平滑な防曇防汚層の表面のマルテンス硬度が10N/mm以上であり、動摩擦係数が0.40以下である前記<12>に記載の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物である。
<14> 前記防曇防汚層の表面の純水接触角が、80°以上であり、かつヘキサデカン接触角が、35°以上である前記<13>に記載の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物である。
<15> 前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物における前記親水性モノマーの含有量が、前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の不揮発分に対して、55質量%〜90質量%である前記<12>から<14>のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物である。
<16> 沸点80℃以上の溶剤を含有する前記<12>から<15>のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、従来における前記諸問題を解決し、前記目的を達成することができ、外観、防汚性、及び耐久性に優れ、更に高温高湿状態でも外観の低下が生じずかつ防曇性に優れる防曇防汚積層体、及びその製造方法、前記防曇防汚積層体を用いた物品、前記防曇防汚積層体を用いた防曇方法、並びに前記防曇防汚積層体の防曇防汚層の形成に適用可能な活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本発明の防曇防汚積層体の一例の概略断面図である。
図2A図2Aは、インモールド成形により本発明の物品を製造する一例を説明するための工程図である。
図2B図2Bは、インモールド成形により本発明の物品を製造する一例を説明するための工程図である。
図2C図2Cは、インモールド成形により本発明の物品を製造する一例を説明するための工程図である。
図2D図2Dは、インモールド成形により本発明の物品を製造する一例を説明するための工程図である。
図2E図2Eは、インモールド成形により本発明の物品を製造する一例を説明するための工程図である。
図2F図2Fは、インモールド成形により本発明の物品を製造する一例を説明するための工程図である。
図3図3は、本発明の物品の一例の概略断面図である(その1)。
図4図4は、本発明の物品の一例の概略断面図である(その2)。
図5図5は、本発明の物品の一例の概略断面図である(その3)。
図6図6は、本発明の物品の一例の概略断面図である(その4)。
図7A図7Aは、蒸気による曇り性試験の方法を説明するための模式図である。
図7B図7Bは、蒸気による曇り性試験の方法を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(防曇防汚積層体)
本発明の防曇防汚積層体は、基材と、プライマー層と、防曇防汚層とを少なくとも有し、更に必要に応じて、その他の部材を有する。
【0011】
<防曇防汚積層体の特徴>
前記防曇防汚積層体は、以下の特徴を兼ね備える。
前記プライマー層の平均厚みは、0.5μm超である。
前記防曇防汚層の動摩擦係数は、0.40以下である。
前記防曇防汚層の平均厚みは、10μm以上である。
前記防曇防汚層のマルテンス硬度は、10N/mm以上である。
前記防曇防汚層は、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の硬化物である。
前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、アルキレンオキシド当量が100未満でありかつアクリル当量が200〜500である親水性モノマーと、アルキレンオキシド当量が100以上でありかつアクリル当量が400未満である非脂環式の架橋剤と、フッ素及びケイ素の少なくともいずれかを有する撥水性モノマーとを含有する。
前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物における前記架橋剤の含有量は、前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の不揮発分に対して、5質量%〜40質量%である。
前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物における前記撥水性モノマーの含有量は、前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の不揮発分に対して、0.001質量%〜10質量%である。
【0012】
前記防曇防汚積層体は、上記特徴を兼ね備えることにより、外観、防汚性、及び耐久性に優れ、更に高温高湿状態でも外観の低下が生じずかつ防曇性に優れる。
ここで、「耐久性」とは、耐傷性、耐薬品性、コート密着性、及び鉛筆硬度の総称であり、「耐久性に優れる」とは、後述する実施例に記載の、耐傷性、耐薬品性、コート密着性、及び鉛筆硬度の各評価において良好な結果を示すことを意味する。
【0013】
<基材>
前記基材としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、樹脂製基材、無機製基材などが挙げられる。
【0014】
<<無機製基材>>
前記無機製基材としては、例えば、ガラス製基材、石英製基材、サファイア製基材などが挙げられる。
【0015】
前記ガラス製基材としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ケイ酸ガラス(ケイ酸塩ガラス)、ソーダ石灰ガラス、カリガラスなどが挙げられる。
また、前記ガラス製基材は、強化ガラス、合せガラス、耐熱ガラスなどであってもよい。
前記ガラス製基材は、自動車用の窓ガラス、建築用の窓ガラス、レンズ、鏡、ゴーグルなどいずれの用途に用いられるものであってもよい。
前記ガラス製基材の形状は、通常、板状であるが、シート状、湾曲状等のどのような形状であってもよい。
【0016】
<<樹脂製基材>>
前記樹脂製基材の材質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリエステル(TPEE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリイミド(PI)、ポリアミド(PA)、アラミド、ポリエチレン(PE)、ポリアクリレート、ポリエーテルスルフォン、ポリスルフォン、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン、ジアセチルセルロース、ポリ塩化ビニル、アクリル樹脂(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、エポキシ樹脂、尿素樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体、シクロオレフィンポリマー(COP)、シクロオレフィンコポリマー(COC)、PC/PMMA積層体、ゴム添加PMMAなどが挙げられる。
【0017】
前記基材は、透明性を有することが好ましい。
【0018】
前記基材の形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、フィルム状であることが好ましい。
前記基材がフィルム状の場合、前記基材の平均厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、5μm〜1,000μmが好ましく、50μm〜500μmがより好ましい。
【0019】
前記基材の表面には、文字、模様、画像などが印刷されていてもよい。
【0020】
前記基材の表面には、前記防曇防汚積層体を成形加工時、前記基材と成形材料との密着性を高めるため、又は成形加工時の成形材料の流動圧から前記文字、前記模様、及び前記画像を保護するために、バインダー層を設けてもよい。前記バインダー層の材質としては、アクリル系、ウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、エチレンブチルアルコール系、エチレン酢酸ビニル共重合体系等の各種バインダーの他、各種接着剤を用いることができる。なお、前記バインダー層は2層以上設けてもよい。使用するバインダーは、成形材料に適した感熱性、感圧性を有するものを選択できる。
【0021】
前記防曇防汚層側と反対側の前記基材の表面は、シワ模様を有していてもよい。そうすることで、複数の前記防曇防汚積層体を重ねたときのブロッキングが防止され、後工程でのハンドリング性が向上し、物品を効率よく製造できる。
前記シワ模様は、例えば、シボ加工により形成できる。
ここで、ブロッキングとは、複数のシートを重ねた際に、各シートの引き離しが困難になることをいう。
【0022】
<プライマー層>
前記防曇防汚層は、前記基材との密着性が十分ではない。そこで、前記防曇防汚積層体においては、前記基材と、前記防曇防汚層との間に、前記基材への前記防曇防汚層の密着性を向上させるプライマー層が配されている。
【0023】
前記プライマー層は、薄いと密着性向上効果が不十分であることから、前記プライマー層の平均厚みは、0.5μm超である。
前記プライマー層の平均厚みとしては、0.5μm超であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1μm〜20μmが好ましく、1μm〜10μmがより好ましく、2μm〜5μmが特に好ましい。
前記プライマー層の平均厚みが好ましい範囲内であることで、高温蒸気(例えば、60℃以上)、熱衝撃(例えば、−20℃から80℃への急激な変化)、アルカリ性洗剤に曝されても、密着性が低下しにくく、前記防曇防汚層の剥離を防止できる。
【0024】
平均厚みは、以下の方法により求められる。
防曇防汚層の厚みは、防曇防汚積層体の断面を、電界放出形走査電子顕微鏡S−4700(商品名;株式会社日立ハイテクノロジーズ製)で観察することで測定できる。任意の10箇所で測定し、その平均値を、平均厚みとする。
また、フィルメトリクス株式会社製F20膜厚測定システムで測定してもよい。
【0025】
前記プライマー層は、例えば、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を塗布することにより形成できる。即ち、前記プライマー層は、例えば、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物が活性エネルギー線により硬化した硬化物である。前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物としては、例えば、ウレタン(メタ)アクリレートと、光重合開始剤とを少なくとも含有し、更に必要に応じて、溶剤などのその他の成分を含有する活性エネルギー線硬化性樹脂組成物などが挙げられる。
【0026】
前記ウレタン(メタ)アクリレートとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、脂肪族ウレタン(メタ)アクリレート、芳香族ウレタン(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらの中でも、脂肪族ウレタン(メタ)アクリレートが好ましい。
前記光重合開始剤の具体例としては、例えば、後述する前記防曇防汚層の説明において例示する前記光重合開始剤の具体例が挙げられる。
前記溶剤の具体例としては、例えば、後述する前記防曇防汚層の説明において例示する前記溶剤の具体例が挙げられる。
【0027】
前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、更に、エチレンオキサイド構造を有する(メタ)アクリレートを含有することが好ましい。前記エチレンオキサイド構造を有する(メタ)アクリレートとしては、例えば、例えば、ペンタエリスリトールエトキシテトラ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエトキシトリ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0028】
前記塗布の方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ワイヤーバーコーティング、ブレードコーティング、スピンコーティング、リバースロールコーティング、ダイコーティング、スプレーコーティング、ロールコーティング、グラビアコーティング、マイクログラビアコーティング、リップコーティング、エアーナイフコーティング、カーテンコーティング、コンマコート法、ディッピング法などが挙げられる。
【0029】
<防曇防汚層>
前記防曇防汚層の動摩擦係数は、0.40以下である。
前記防曇防汚層の平均厚みは、10μm以上である。
前記防曇防汚層のマルテンス硬度は、10N/mm以上である。
前記防曇防汚層は、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の硬化物である。
前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、アルキレンオキシド当量が100未満でありかつアクリル当量が200〜500である親水性モノマーと、アルキレンオキシド当量が100以上でありかつアクリル当量が400未満である非脂環式の架橋剤と、フッ素及びケイ素の少なくともいずれかを有する撥水性モノマーとを含有する。
前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物における前記架橋剤の含有量は、前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の不揮発分に対して、5質量%〜40質量%である。
前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物における前記撥水性モノマーの含有量は、前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の不揮発分に対して、0.001質量%〜10質量%である。
前記防曇防汚層の表面の純水接触角は、80°以上が好ましい。
前記防曇防汚層の表面のヘキサデカン接触角は、35°以上が好ましい。
【0030】
前記防曇防汚層は、前記プライマー層上に配されている。
前記防曇防汚層は、表面が平滑である。ここで、表面が平滑であるとは、意図的に形成された凸部又は凹部を表面に有さないことを意味する。例えば、前記防曇防汚積層体においては、前記防曇防汚層を形成する際(前記硬化物を形成する際)に、物理的な加工による微細な凸部又は凹部が表面に形成されていない。
前記防曇防汚層が表面に微細な凸部又は凹部を有さないことで、マジックインキ、指紋、汗、化粧品(ファンデーション、UVプロテクターなど)等の水性汚れ及び/又は油性汚れが付着し難い。また、例えそれらの汚れが付着した場合でもティッシュなどで容易に除去できる。
【0031】
<<マルテンス硬度>>
前記防曇防汚層のマルテンス硬度は、PICODENTOR HM500(商品名;フィッシャー・インストルメンツ社製)を用いて測定できる。その際、荷重1mN/20sとし、針としてダイアモンド錐体を用い、面角136°で測定する。
【0032】
前記防曇防汚層のマルテンス硬度は、10N/mm以上であり、20N/mm以上が好ましい。前記マルテンス硬度が、10N/mm未満であると、前記防曇防汚層が傷つきやすい。
前記防曇防汚層のマルテンス硬度の上限値としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記防曇防汚層のマルテンス硬度は、例えば、40N/mm以下、50N/mm以下、100N/mm以下などが挙げられる。
【0033】
<<動摩擦係数>>
動摩擦係数は、以下の方法により求められる。
動摩擦係数は、Triboster TS501(商品名;協和界面科学株式会社製)を用いて測定する。面接触子にBEMCOT(登録商標) M−3II(商品名;旭化成株式会社製)を両面テープで貼り付け、測定荷重50g/cm、測定速度1.7mm/s、測定距離20mmとし、任意の12箇所で測定し、その平均値を動摩擦係数とする。
【0034】
前記防曇防汚層の動摩擦係数は、0.40以下であり、0.37以下が好ましく、0.30以下がより好ましい。前記動摩擦係数が、0.40以下であることで、払拭材料のすべり性がよく汚れが付着しても拭き取りやすい。また、力を逃がす効果が生じ、前記防曇防汚層が傷つきにくい。
前記防曇防汚層の動摩擦係数の下限値としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記防曇防汚層の動摩擦係数は、例えば、0.10以上が好ましい。
【0035】
<<平均厚み>>
平均厚みは、以下の方法により求められる。
防曇防汚層の厚みは、防曇防汚積層体の断面を、電界放出形走査電子顕微鏡S−4700(商品名;株式会社日立ハイテクノロジーズ製)で観察することで測定できる。任意の10箇所で測定し、その平均値を、平均厚みとする。
また、フィルメトリクス株式会社製F20膜厚測定システムで測定してもよい。
【0036】
高温高湿度(たとえば35℃85%RH)の雰囲気で一定時間以上(たとえば10分以上)曇りを抑えるには、防曇防汚層の厚みを一定以上にすることが有効である。
その観点から、前記防曇防汚層の平均厚みは、10μm以上であり、20μm以上が好ましく、26μm以上がより好ましい。
前記防曇防汚層の平均厚みは、厚い分には、払拭時に加わった圧力で防曇防汚層が変形を受けた際の高い復元性に悪影響を与えないため、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。前記防曇防汚層の平均厚みの上限値としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記平均厚みは、30μm以下、40μm以下、100μm以下などが挙げられる。
【0037】
<<純水接触角>>
前記防曇防汚層の表面の純水接触角は、80°以上が好ましく、90°以上がより好ましく、100°以上が特に好ましい。前記純水接触角の上限値としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、前記純水接触角は、例えば、130°以下、150°以下、170°以下などが挙げられる。
【0038】
前記純水接触角は、接触角計であるPCA−1(協和界面化学株式会社製)を用いて、下記条件で測定する。蒸留水をプラスチックシリンジに入れて、その先端にステンレス製の針を取り付けて評価面(防曇防汚層表面)に滴下する。
水の滴下量:2μL
測定温度:25℃
水を滴下して5秒経過後の接触角を、防曇防汚層表面の任意の10か所で測定し、その平均値を純水接触角とする。
【0039】
<<ヘキサデカン接触角>>
前記防曇防汚層の表面のヘキサデカン接触角は、35°以上が好ましく、40°以上がより好ましく、60°以上が特に好ましい。前記ヘキサデカン接触角の上限値としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、前記純水接触角は、例えば、100°以下、120°以下、150°以下などが挙げられる。
【0040】
前記ヘキサデカン接触角は、接触角計であるPCA−1(協和界面化学株式会社製)を用いて、下記条件で測定する。ヘキサデカンをプラスチックシリンジに入れて、その先端にテフロンコートステンレス製の針を取り付けて評価面(防曇防汚層表面)に滴下する。
ヘキサデカンの滴下量:1μL
測定温度:25℃
ヘキサデカンを滴下して20秒経過後の接触角を、防曇防汚層表面の任意の10か所で測定し、その平均値をヘキサデカン接触角とする。
【0041】
純水接触角が上記好ましい範囲内であり、且つヘキサデカン接触角が上記好ましい範囲内であると、マジックインキ、指紋、汗、化粧品(ファンデーション、UVプロテクターなど)等の水性汚れ及び/又は油性汚れが付着した場合でも、それらの汚れがバルクの下層に浸透することが防止され、防曇性に加え、防汚性にも優れる。
【0042】
<<活性エネルギー線硬化性樹脂組成物>>
前記防曇防汚層は、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の硬化物である。
前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、親水性モノマーと、架橋剤と、撥水性モノマーとを含有し、更に必要に応じて、光重合開始剤、溶剤などのその他の成分を含有する。
【0043】
−親水性モノマー−
前記親水性モノマーは、アルキレンオキシド当量が100未満でありかつアクリル当量が200〜500である。
【0044】
ここで、アルキレンオキシド当量とは、アルキレンオキシド基1molあたりのモノマー質量であり、モノマーの分子量を、当該モノマー1分子当りのアルキレンオキシドの数で除して得られる。
アクリル当量とは、(メタ)アクリル基1molあたりのモノマー質量であり、モノマーの分子量を、当該モノマー1分子当りの(メタ)アクリル基〔(メタ)アクリロイル基ともいう〕の数で除して得られる。
【0045】
前記アルキレンオキシドにおけるアルキレン基の炭素数としては、1〜12が好ましく、1〜4がより好ましい。
前記アルキレンオキシドとしては、例えば、メチレンオキシド(炭素数1)、1,2−エチレンオキシド(炭素数2)、1,3−プロピレンオキシド(炭素数3)、1,2−プロピレンオキシド(炭素数3)、1,4−ブチレンオキシド(炭素数4)などが挙げられる。
【0046】
前記親水性モノマーにおける前記アルキレンオキシド当量の下限値としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、前記アルキレンオキシド当量としては、例えば、30以上、40以上などが挙げられる。
【0047】
前記親水性モノマーは、(メタ)アクリロイル基を有する。前記親水性モノマーにおける前記(メタ)アクリロイル基の数としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、2〜6が好ましく、2〜4がより好ましい。
前記(メタ)アクリロイル基は、アクリロイル基又はメタクリロイル基を意味する。
【0048】
前記親水性モノマーとしては、アルキレンオキシド当量が100未満でありかつアクリル当量が200〜500であるかぎり、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アルコキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、アルコキシ化グリセリントリ(メタ)アクリレート、アルコキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、及びポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0049】
前記親水性モノマーの分子量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、300〜2,500が好ましく、400〜2,000がより好ましく、600〜1,500が特に好ましい。
【0050】
前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物における前記親水性モノマーの含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の不揮発分に対して、55質量%〜90質量%が好ましい。前記含有量が、好ましい範囲内であると、前記防曇防汚層は、より曇りにくくなり、より傷つきにくくなり、より薬品におかされにくくなる。
【0051】
−架橋剤−
前記架橋剤は、前記親水性モノマーとは異なり、アルキレンオキシド当量が100以上である。更に、前記架橋剤は、アクリル当量が400未満である。
本発明においては、アルキレンオキシドを有していない架橋剤も、前記架橋剤に含まれる。
前記架橋剤は、非脂環式である。即ち、前記架橋剤は、脂環式構造を有さない。脂環式構造とは、3つ以上の炭素からなる環構造である。
【0052】
前記アルキレンオキシドとしては、エチレンオキシド、1,2−プロピレンオキシドなどが挙げられる。
【0053】
前記架橋剤における前記アクリル当量の下限値としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、前記アクリル当量としては、例えば、100以上などが挙げられる。
【0054】
前記架橋剤は、(メタ)アクリロイル基を有する。前記架橋剤における前記(メタ)アクリロイル基の数としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、2〜6が好ましい。
【0055】
前記架橋剤としては、アルキレンオキシド当量が100以上でありかつアクリル当量が400未満であるかぎり、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ペンタエリスリトールアルコキシテトラ(メタ)アクリレート、脂肪族ウレタン(ウレタン)アクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジアクリレートなどが挙げられる。
【0056】
前記架橋剤の分子量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、300〜2,500が好ましく、400〜2,000がより好ましく、500〜1,900が特に好ましい。
【0057】
前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物における前記架橋剤の含有量は、前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の不揮発分に対して、5質量%〜40質量%であり、20質量%〜35質量%が好ましく、20質量%〜30質量%が特に好ましい。前記含有量が、5質量%未満であると、耐傷性、耐薬品性が低下する。前記含有量が、40質量%を超えると、防曇性が低下する。
【0058】
ここで、前記親水性モノマー及び前記架橋剤の一例と、それらのアルキレンオキシド当量、及びアクリル当量を以下に挙げる。
【0059】
【表1】
【0060】
表1中「AO」はアルキレンオキシドを表す。
表1に記載のモノマーの詳細は以下の通りである。
〔親水性モノマー〕
・SR9035:サートマー社製、エトキシ化(15)トリメチロールプロパントリアクリレート
なお、(15)は、1モルあたりに含まれるエチレンオキサイド基の平均数が15であることを表す。
・ATM−35E:新中村化学工業株式会社製、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート
・A−GLY−20E:新中村化学工業株式会社製、エトキシ化グリセリントリアクリレート
・A−600:新中村化学工業株式会社製、ポリエチレングリコールジアクリレート
・A−GLY−9E:新中村化学工業株式会社製、エトキシ化グリセリントリアクリレート
・A−400:新中村化学工業株式会社製、ポリエチレングリコールジアクリレート
〔架橋剤〕
・EBECRYL40:ダイセルオルネクス株式会社製、ペンタエリスリトールアルコキシテトラアクリレート
・PU610:Miwon社製、脂肪族ウレタンアクリレート(アクリル基数6、分子量:1800)
・ABE−300:新中村化学工業株式会社製、エトキシ化ビスフェノールAジアクリレート
〔その他〕
・A−1000:新中村化学工業株式会社製、ポリエチレングリコールジアクリレート
・A−DCP:新中村化学工業株式会社製、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート
【0061】
−撥水性モノマー−
前記撥水性モノマーは、前記親水性モノマー、及び前記架橋剤と異なり、フッ素及びケイ素の少なくともいずれかを有する。
言い換えれば、前記撥水性モノマーは、フッ素及びケイ素の少なくともいずれかを有する一方で、前記親水性モノマー、及び前記架橋剤は、フッ素及びケイ素を有しない。
【0062】
前記撥水性モノマーは、 例えば、フルオロアルキル基、フルオロアルキルエーテル基、ジメチルシロキサン基などを有する。
【0063】
前記撥水性モノマーは、(メタ)アクリロイル基を有する。前記撥水性モノマーにおける前記(メタ)アクリロイル基の数としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、2〜6が好ましい。
【0064】
前記撥水性モノマーとしては、例えば、フルオロアルキル基、又はフルオロアルキルエーテル基を有するフッ化(メタ)アクリレート、ジメチルシロキサン基を有するシリコーン(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
前記フッ化(メタ)アクリレートの市販品としては、例えば、信越化学工業株式会社製KY−1200シリーズ、DIC株式会社製メガファックRSシリーズ、ダイキン工業株式会社製オプツールDACなどが挙げられる。
前記シリコーン(メタ)アクリレートの市販品としては、例えば、信越化学工業株式会社製X−22−164シリーズ、エボニック社製TEGO Radシリーズなどが挙げられる。
【0065】
前記撥水性モノマーの分子量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0066】
前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物における前記撥水性モノマーの含有量は、前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の不揮発分に対して、0.001質量%〜10質量%であり、0.001質量%〜5.0質量%が好ましく、0.01質量%〜5.0質量%がより好ましく、0.01質量%〜4.0質量%が特に好ましい。前記含有量が、0.001質量%未満であると、防汚性が劣る。前記含有量が、10質量%を超えると、前記防曇防汚層に外観の低下(白化、曇り)が生じる。
【0067】
−光重合開始剤−
前記光重合開始剤としては、例えば、光ラジカル重合開始剤、光酸発生剤、ビスアジド化合物、ヘキサメトキシメチルメラミン、テトラメトキシグリコユリルなどが挙げられる。
前記光ラジカル重合開始剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、以下の化合物が挙げられる。
・1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン
・2−ヒロドキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン
・2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン
・2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン
・1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン
・オキシフェニル酢酸、2−[2−オキソ−2−フェニルアセトキシエトキシ]エチルエステルと、オキシフェニル酢酸、2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチルエステルの混合物
・2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド
【0068】
前記光重合開始剤は、外観における黄変を防止する点から、構成元素に窒素原子を含まないことが好ましい。
他方、前記光重合開始剤は、外観における黄変を防止する点から、C、H、及びOのみを構成元素とするか、又はC、H、P、及びOのみを構成元素とすることが好ましい。
【0069】
前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物における前記光重合開始剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.1質量%〜10質量%が好ましく、0.1質量%〜5質量%がより好ましく、1質量%〜5質量%が特に好ましい。
【0070】
−溶剤−
前記溶剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、有機溶剤が挙げられる。
前記有機溶剤としては、例えば、芳香族系溶媒、アルコール系溶媒、エステル系溶媒、ケトン系溶媒、グリコールエーテル系溶媒、グリコールエーテルエステル系溶媒、塩素系溶媒、エーテル系溶媒、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミドなどが挙げられる。
【0071】
前記溶剤としては、より良好な外観の防曇防汚層を得る観点から、沸点が80℃以上の溶剤が好ましい。
沸点が80℃以上の溶剤としては、例えば、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−2−プロパノール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2−エチル−1−ヘキサノール、酢酸ノルマルプロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、ジイソブチルケトン、ジアセトンアルコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、1,4−ジオキサン、メチルカルビトール、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、エチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテートなどが挙げられる。
【0072】
前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物における前記溶剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0073】
前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、活性エネルギー線が照射されることにより硬化する。前記活性エネルギー線としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、電子線、紫外線、赤外線、レーザー光線、可視光線、電離放射線(X線、α線、β線、γ線等)、マイクロ波、高周波などが挙げられる。
【0074】
前記防曇防汚積層体は、下記評価方法により防曇性を評価した際の結果が、◎となることが好ましい。
<防曇性の評価方法>
常温環境下に2時間放置後、35℃85%RH(高温高湿環境)に15分間暴露する。高温高湿環境へ暴露している間、表面を目視で観察し、下記評価基準で防曇性を評価する。
〔評価基準〕
◎: 15分後も曇る面積が3割以下。
○: 10分後まで曇る面積が3割以下。
△: 5分後まで曇る面積が3割以下。
×: 5分で曇る面積が3割より大きい。
【0075】
前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物が、前記撥水性モノマーと、前記親水性モノマーとを有することにより、得られる防曇防汚層においては、低表面エネルギー成分が表面に局在化する一方で、前記防曇防汚層中には、親水性成分(吸水性成分)が存在する。そうすることにより、水滴は、前記防曇防汚層の表面において撥水化され、水蒸気は、防曇防汚層中に捕捉されやすくなる。その結果、より優れた防曇性が得られる。
【0076】
前記防曇防汚積層体の製造方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記防曇防汚層は、前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物から形成される未硬化層に対して、酸素濃度0.1体積%未満の雰囲気下で紫外線照射を行って得られることが好ましい。そうすることにより、硬化性が優れる結果、低い動摩擦係数、及び高い接触角の防曇防汚層が得られる。
前記酸素濃度0.1体積%未満の雰囲気としては、例えば、窒素雰囲気などの不活性ガス雰囲気が挙げられる。
【0077】
ここで、前記防曇防汚積層体の一例を説明する。
図1は、本発明の防曇防汚積層体の一例の概略断面図である。
図1の防曇防汚積層体は、樹脂製基材11と、プライマー層12と、防曇防汚層13とを有する。
【0078】
(防曇防汚積層体の製造方法)
本発明の防曇防汚積層体の製造方法は、防曇防汚層形成工程を少なくとも含み、好ましくは、プライマー層形成工程を含み、更に必要に応じて、その他の工程を含む。
【0079】
前記防曇防汚積層体の製造方法は、本発明の前記防曇防汚積層体の好適な製造方法である。
【0080】
<プライマー層形成工程>
前記プライマー層形成工程としては、前記プライマー層を形成する工程であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記基材上に、プライマー層形成用活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を塗布し、紫外線照射を行って前記プライマー層を形成する工程などが挙げられる。
【0081】
<防曇防汚層形成工程>
前記防曇防汚層形成工程としては、前記プライマー層上の、前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物から形成される未硬化層に対して、酸素濃度0.1体積%未満の雰囲気下で紫外線照射を行い、前記防曇防汚層を形成する工程であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記防曇防汚層を形成する際に、酸素濃度0.1体積%未満の雰囲気下で紫外線照射を行うことで、硬化性が優れる結果、低い動摩擦係数、及び高い接触角の防曇防汚層が得られる。
前記酸素濃度0.1体積%未満の雰囲気としては、例えば、窒素雰囲気などの不活性ガス雰囲気が挙げられる。
【0082】
(活性エネルギー線硬化性樹脂組成物)
本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、親水性モノマーと、撥水性モノマーと、架橋剤と、光重合開始剤とを少なくとも含有し、更に必要に応じて、溶剤などのその他の成分を含有する。
【0083】
前記親水性モノマー、前記撥水性モノマー、前記架橋剤、前記光重合開始剤、及び前記溶剤の詳細は、前記防曇防汚積層体の前記防曇防汚層の説明における前記親水性モノマー、前記撥水性モノマー、前記架橋剤、前記光重合開始剤、及び前記溶剤の詳細と同じであり、好ましい態様も同じである。
【0084】
前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物が活性エネルギー線により硬化して得られる表面が平滑な防曇防汚層の表面のマルテンス硬度は、10N/mm以上であることが好ましい。
前記防曇防汚層の表面の動摩擦係数は、0.40以下であることが好ましい。
前記防曇防汚層の表面の純水接触角は80°以上が好ましく、ヘキサデカン接触角は35°以上が好ましい。
前記マルテンス硬度、前記動摩擦係数、前記純水接触角、及び前記ヘキサデカン接触角の測定方法、好ましい範囲などは、前記防曇防汚層の説明における測定方法、好ましい範囲などと同じである。
【0085】
(物品)
本発明の物品は、本発明の前記防曇防汚積層体を表面に有し、更に必要に応じて、その他の部材を有する。
前記物品としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ガラス窓、冷蔵・冷凍ショーケース、自動車のウインドウ等の窓材、浴室内の鏡、自動車サイドミラー等の鏡、浴室の床及び壁、太陽電池パネル、防犯監視カメラなどが挙げられる。
また、前記物品は、眼鏡、ゴーグル、ヘルメット、レンズ、マイクロレンズアレイ、自動車のヘッドライトカバー、フロントパネル、サイドパネル、リアパネルなどであってもよい。これらは、インモールド成形、インサート成形、オーバーレイ成形により形成されることが好ましい。
【0086】
前記防曇防汚積層体は、前記物品の表面の一部に形成されていてもよいし、全面に形成されていてもよい。
【0087】
前記物品の製造方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、後述する本発明の物品の製造方法が好ましい。
【0088】
(物品の製造方法)
本発明に関する物品の製造方法は、加熱工程と、防曇防汚積層体成形工程と、を少なくとも含み、更に必要に応じて、射出成形工程やキャスト成形工程などのその他の工程を含む。
前記物品の製造方法は、本発明の前記物品の製造方法である。
【0089】
<加熱工程>
前記加熱工程としては、防曇防汚積層体を加熱する工程であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記防曇防汚積層体は、本発明の前記防曇防汚積層体である。
【0090】
前記加熱としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、赤外線加熱或いは高温雰囲気への暴露であることが好ましい。
前記加熱の温度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記樹脂製基材のガラス転移温度近傍若しくはガラス転移温度以上であることが好ましい。
前記加熱の時間としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0091】
<防曇防汚積層体成形工程>
前記防曇防汚積層体成形工程としては、加熱された前記防曇防汚積層体を所望の形状に成形する工程であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、所定の金型に密着させて、空気圧により、所望の形状に成形する工程などが挙げられる。
【0092】
<射出成形工程>
前記防曇防汚積層体成形工程の後、必要に応じて、射出成形工程を行ってもよい。
前記射出成形工程としては、所望の形状に成形された前記防曇防汚積層体の樹脂製基材側に成形材料を射出し、前記成形材料を成形する工程であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0093】
前記成形材料としては、例えば、樹脂などが挙げられる。前記樹脂としては、例えば、オレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、ABS樹脂(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体)、AS樹脂(アクリロニトリル−スチレン共重合体)、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリフェニレンオキシド・ポリスチレン系樹脂、ポリカーボネート、ポリカーボネート変性ポリフェニレンエーテル、ポリエチレンテレフタレート、ポリスルホン、ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニレンオキシド、ポリエーテルイミド、ポリイミド、ポリアミド、液晶ポリエステル、ポリアリル系耐熱樹脂、各種複合樹脂、各種変性樹脂などが挙げられる。
【0094】
前記射出の方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、所定の金型に密着させた前記防曇防汚積層体の樹脂製基材側に、溶融した前記成形材料を流し込む方法などが挙げられる。
【0095】
<キャスト成形工程>
前記防曇防汚積層体成形工程の後、必要に応じて、キャスト成形工程を行ってもよい。
前記キャスト成形工程としては、所望の形状に成形された前記防曇防汚積層体の樹脂製基材側に、溶液に溶解させた樹脂材料を流し込み、前記樹脂材料を固化させて成形する工程であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0096】
前記物品の製造方法は、インモールド成形装置、インサート成形装置、オーバーレイ成形装置を用いて行うことが好ましい。
【0097】
ここで、本発明の物品の製造方法の一例を、図を用いて説明する。この製造方法はインモールド成形装置を用いた製造方法である。
まず、防曇防汚積層体500を加熱する。加熱は、赤外線加熱、或いは高温雰囲気への暴露が好ましい。
続いて、図2Aに示すように、加熱した防曇防汚積層体500を、第1金型501と第2金型502との間の所定の位置に配置する。このとき、防曇防汚積層体500の樹脂製基材が第1金型501を向き、防曇防汚防汚層が第2金型502を向くように配置する。図2Aにおいて、第1金型501は、固定型であり、第2金型502は、可動型である。
【0098】
第1金型501と第2金型502との間に防曇防汚積層体500を配置した後、第1金型501と第2金型502とを型締めする。続いて、第2金型502のキャビティ面に開口されている吸引穴504で防曇防汚積層体500を吸引して、第2金型502のキャビティ面に防曇防汚積層体500を装着する。そうすることにより、キャビティ面が防曇防汚積層体500で賦形される。また、このとき、図示されていないフィルム押さえ機構で防曇防汚積層体500の外周を固定し位置決めしてもよい。その後、防曇防汚積層体500の不要な部位をトリミングする(図2B)。
なお、第2金型502が吸引穴504を有さず、第1金型501に圧空孔(図示せず)を有する場合には、第1金型501の圧空孔から防曇防汚積層体500に圧空を送ることにより、第2金型502のキャビティ面に防曇防汚積層体500を装着する。
【0099】
続いて、防曇防汚積層体500の樹脂製基材に向けて、第1金型501のゲート505から溶融した成形材料506を射出し、第1金型501と第2金型502を型締めして形成したキャビティ内に注入する(図2C)。これにより、溶融した成形材料506がキャビティ内に充填される(図2D)。更に、溶融した成形材料506の充填完了後、溶融した成形材料506を所定の温度まで冷却して固化する。
【0100】
その後、第2金型502を動かして、第1金型501と第2金型502とを型開きする(図2E)。そうすることにより、成形材料506の表面に防曇防汚積層体500が形成され、かつ所望の形状にインモールド成形された物品507が得られる。
最後に、第1金型501から突き出しピン508を押し出して、得られた物品507を取り出す。
【0101】
前記オーバーレイ成形装置を用いる場合の製造方法は、下記の通りである。これは、防曇防汚積層体を成形材料の表面に直接加飾する工程であり、その一例としては、TOM(Three dimension Overlay Method)工法が挙げられる。前記TOM工法を用いた本発明の物品の製造方法の一例を下記に説明する。
まず、固定枠に固定された防曇防汚積層体によって分断された装置内の両空間について、真空ポンプ等で空気を吸引し、前記両空間内を真空引きする。
この時、片側の空間に事前に射出成形した成形材料を設置しておく。同時に、防曇防汚積層体が軟化する所定の温度になるまで赤外線ヒーターで加熱する。防曇防汚積層体が加熱され軟化したタイミングで、装置内空間の成形材料がない側に大気を送り込むことにより真空雰囲気下で、成形材料の立体形状に、防曇防汚積層体をしっかりと密着させる。必要に応じ、さらに大気を送り込んだ側からの圧空押付けを併用してもよい。防曇防汚積層体が成形体に密着した後、得られた加飾成形品を固定枠から外す。真空成形は、通常80℃〜200℃、好ましくは110℃〜160℃程度で行われる。
【0102】
オーバーレイ成形の際には、前記防曇防汚積層体と前記成形材料とを接着するために、前記防曇防汚積層体の防曇防汚層面とは反対側の面に粘着層を設けてもよい。前記粘着層としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アクリル系粘着剤、ホットメルト接着剤などが挙げられる。前記粘着層の形成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記樹脂製基材上に前記防曇防汚層を形成後に、前記樹脂製基材の前記防曇防汚層側とは逆側に、粘着層用塗工液を塗工して、前記粘着層を形成する方法などが挙げられる。また、剥離シート上に粘着層用塗工液を塗工して前記粘着層を形成した後に、前記樹脂製基材と前記剥離シート上の前記粘着層とをラミネートして、前記樹脂製基材上に前記粘着層を積層してもよい。
【0103】
ここで、本発明の物品の一例を図を用いて説明する。
図3図6は、本発明の物品の一例の概略断面図である。
【0104】
図3の物品は、成形材料506と、樹脂製基材211と、プライマー層212と、防曇防汚層213とを有し、成形材料506上に、樹脂製基材211と、プライマー層212と、防曇防汚層213とがこの順で積層されている。
この物品は、例えば、インサート成形により製造できる。
【0105】
図4の物品は、成形材料506と、樹脂製基材211と、プライマー層212と、防曇防汚層213と、ハードコート層600とを有し、成形材料506上に、樹脂製基材211と、プライマー層212と、防曇防汚層213とがこの順で積層されている。また、成形材料506の樹脂製基材211側と反対側には、ハードコート層600が形成されている。
この物品は、例えば、図3の物品を製造後、防曇防汚層213上に保護層を形成した後で、成形材料506の表面にハードコート層600を、成形材料506をハードコート液に浸漬、その後乾燥、硬化させること等により形成し、更に、保護層を剥離することで製造できる。なお、防曇防汚層が平滑面であり、純水接触角が80°より大きく、且つヘキサデカン接触角が35°より大きい場合、防曇防汚層がハードコート液をはじくため、保護層を形成せずとも、防曇防汚層上にはハードコートが形成されず、成形材料506の樹脂製基材211側と反対側にのみハードコート層600が形成されるため、生産性に優れる。
【0106】
図5の物品は、成形材料506と、樹脂製基材211と、プライマー層212と、防曇防汚層213とを有し、成形材料506の両側に、樹脂製基材211と、プライマー層212と、防曇防汚層213とがこの順に積層されている。
【0107】
図6の物品は、成形材料506と、樹脂製基材211と、プライマー層212と、防曇防汚層213と、光学フィルム601とを有し、成形材料506上に、樹脂製基材211と、プライマー層212と、防曇防汚層213とがこの順で積層されている。成形材料506の樹脂製基材211側と反対側には、光学フィルム601が形成されている。光学フィルム601としては、例えば、ハードコートフィルム、反射防止フィルム、防眩フィルム、偏光フィルムなどが挙げられる。
図5又は図6に示す物品は、例えば、ダブルインサート成形により製造できる。ダブルインサート成形は、両面積層フィルム一体品を成形する方法であって、例えば、特開平03−114718号公報に記載の方法などを用いて行うことができる。
【0108】
(防曇方法)
<防曇方法(その1)>
本発明の防曇方法の一態様は、本発明の前記防曇防汚積層体を常温以上に加温することにより、前記防曇防汚層の防曇性を向上させる防曇方法である。
【0109】
前記防曇防汚層を常温以上に加温することで防曇性が向上し、前記防曇防汚層の曇りを一定時間以上防ぐことができる。
加温することにより防曇性が向上する理由は、加温により防曇防汚層表面への結露が抑制され水分が効率的に繰り返し吸収放出されるためと考えられる。
【0110】
加温の方法としては、例えば、雰囲気を30℃以上に保つ方法、30℃以上のお湯を防曇防汚層にかける方法などが挙げられる。
【0111】
<防曇方法(その2)>
本発明の防曇方法の他の一態様は、本発明の防曇防汚積層体の前記防曇防汚層を清掃することにより、前記防曇防汚層の防曇性を維持させる防曇方法である。
【0112】
前記防曇防汚層の表面に水垢や油汚れが付着すると防曇性が低下する。そこで、前記防曇防汚層を清掃することにより、前記防曇防汚層の防曇性を維持させることができる。
【0113】
清掃の方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、スポンジで払拭することなどが挙げられる。前記スポンジとしては、例えば、市販のウレタンスポンジやメラミンスポンジなどが挙げられる。前記スポンジを用いて払拭する際は、前記スポンジを水道水で湿らせてもよいし、前記スポンジに、洗剤(例えば、市販の中性洗剤、アルカリ性洗剤、酸性洗剤)を付与してもよい。
【実施例】
【0114】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0115】
<外観>
目視で観察し、下記評価基準で外観を評価した。
〔評価基準〕
○: 無色透明できれいな面状であった。
×: 白化、黄変あるいはムラが確認された。
【0116】
<平均厚み>
防曇防汚層の厚みは、防曇防汚積層体の断面を、電界放出形走査電子顕微鏡S−4700(商品名;株式会社日立ハイテクノロジーズ製)で観察することで測定した。任意の10箇所で測定し、その平均値を、平均厚みとした。
【0117】
<純水接触角>
純水接触角は、接触角計であるPCA−1(協和界面化学株式会社製)を用いて、下記条件で測定した。蒸留水をプラスチックシリンジに入れて、その先端にステンレス製の針を取り付けて評価面(防曇防汚層表面)に滴下した。
水の滴下量:2μL
測定温度:25℃
水を滴下して5秒経過後の接触角を、防曇防汚層表面の任意の10か所で測定し、その平均値を純水接触角とした。
【0118】
<ヘキサデカン接触角>
ヘキサデカン接触角は、接触角計であるPCA−1(協和界面化学株式会社製)を用いて、下記条件で測定した。ヘキサデカンをプラスチックシリンジに入れて、その先端にテフロンコートステンレス製の針を取り付けて評価面(防曇防汚層表面)に滴下した。
ヘキサデカンの滴下量:1μL
測定温度:25℃
ヘキサデカンを滴下して20秒経過後の接触角を、防曇防汚層表面の任意の10か所で測定し、その平均値をヘキサデカン接触角とした。
【0119】
<動摩擦係数>
Triboster TS501(商品名;協和界面科学株式会社製)を用いて測定した。面接触子にBEMCOT(登録商標) M−3II(商品名;旭化成株式会社製)を両面テープで貼り付け、測定荷重50g/cm、測定速度1.7mm/s、測定距離20mmとし、任意の12箇所で測定し、その平均値を動摩擦係数とした。
【0120】
<マルテンス硬度>
防曇防汚層のマルテンス硬度は、PICODENTOR HM500(商品名;フィッシャー・インストルメンツ社製)を用いて測定した。荷重1mN/20sとし、針としてダイアモンド錐体を用い、面角136°で測定した。
【0121】
<防曇性>
常温環境下に2時間放置後、35℃85%RH(高温高湿環境)に15分間暴露した。高温高湿環境へ暴露している間、表面を目視で観察し、下記評価基準で防曇性を評価した。
〔評価基準〕
◎: 15分後も曇る面積が3割以下。
○: 10分後まで曇る面積が3割以下。
△: 5分後まで曇る面積が3割以下。
×: 5分で曇る面積が3割より大きい。
【0122】
<加温後の防曇性>
容器の約半分に水を入れた。入れた水をヒーターにより加熱して55℃に保持し、かつ、容器内の上部空間の大気温度を35℃に保持した。その容器に、防曇防汚積層体(サンプル)を、水(お湯)に接しないように設置した(図7A)。そして、防曇防汚積層体(サンプル)の防曇防汚層に約40℃のお湯をかけた(図7B)。その後、図7Aの状態に戻し、30分後に目視で曇りの様子を観察した。下記評価基準で評価した。
〔評価基準〕
◎: 防曇防汚層表面に外観変化が全くなかった。
○: 防曇防汚層表面の一部において、白い曇り、水膜形成などの、外観変化が確認された。
×: 防曇防汚層表面が全体的に、白い曇り、水膜形成など、外観変化した。
【0123】
<防汚性>
Sharpie PROFESSIONAL(黒の油性マジック、商品名、Newell Rubbermaid社製)で防曇防汚層の表面を汚した。その後、これをティッシュ(大王製紙株式会社製、エリエール)で10回、円を描くように払拭後に、目視で表面を観察し、下記評価基準で評価した。
〔評価基準〕
○: よくはじき2〜5回の払拭で汚れがなくなっていた。
△: 弱くはじく。6〜10回の払拭で汚れがなくなっていた。
×: はじかず10回払拭しても汚れが残っていた。
【0124】
<耐傷性>
メラミンスポンジ(商品名:劇落ちくん)を水道水で湿らせ防曇防汚層の表面に置き、荷重300gf/cmにて10,000往復摺動(摺動ストローク:3cm、摺動速度:6cm/s)した後、下記評価基準で耐傷性を評価した。
〔評価基準〕
○: 外観に傷付きや白濁などの変化がなかった。
×: 外観に傷付きや白濁などの変化があった。
【0125】
<耐薬品性>
アセトンで10分間湿布した後、下記評価基準で耐薬品性を評価した。
〔評価基準〕
○: 外観に変化がなかった。
×: 外観にただれや白濁などの変化があった。
【0126】
<コート密着性>
防曇防汚積層体を下記のそれぞれの環境に曝した後、それぞれについてJIS K5600−5−6(クロスカット試験法)に準拠してクロスカット密着試験を行い、下記評価基準でコート密着性を評価した。
〔暴露条件〕
1: 80℃のお湯からでる蒸気に5分間さらす。
2: 0.5%水酸化ナトリウム水溶液に1時間浸漬する。
〔評価基準〕
○: いずれの条件ののちも剥がれなかった。
×: 1つ以上の条件で剥がれてしまった。
【0127】
<鉛筆硬度>
JIS K 5600−5−4に従って測定した。
【0128】
(実施例1)
<プライマー層の形成>
ガラス製基材上(日本板硝子(株)製、フロート板ガラス、平均厚み5mm)に、下記プライマー層形成用樹脂組成物を、乾燥及び硬化後平均厚みが1μmとなるように塗布した。塗布後、80℃のオーブンで2分間乾燥させた。高圧水銀ランプを用いて、空気雰囲気下、照射量500mJ/cmで紫外線を照射して、プライマー層を得た。
【0129】
−プライマー層形成用樹脂組成物−
・UT5181(日本合成株式会社製、ウレタンアクリレート) 65.0質量部
・EBECRYL 40(ダイセルオルネクス株式会社製) 35.0質量部
・イルガキュア 184(BASF社製) 3.0質量部
・溶剤 PGME(プロピレングリコールモノメチルエーテル) 900質量部
【0130】
<防曇防汚層の形成>
次にプライマー層上に、表2−1に記載の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を、乾燥及び硬化後の平均厚みが26μmとなるように塗布した。塗布後、80℃のオーブンで2分間乾燥させた。メタルハライドランプを用いて、窒素雰囲気下(酸素濃度0.1体積%未満)、照射量500mJ/cmで紫外線を照射して防曇防汚層を硬化させ防曇防汚積層体を得た。
【0131】
得られた防曇防汚積層体について、上記の評価を行った。結果を表2−1に示した。
【0132】
(実施例2〜3)
実施例1において、プライマー層の平均厚みを、表2−1に記載の平均厚みに変更した以外は、実施例1と同様にして、積層体を得た。
得られた積層体について、実施例1と同様に評価を行った。結果を表2−1に示した。
【0133】
(比較例1)
実施例1において、プライマー層の平均厚み、及び防曇防汚層の平均厚みを、表2−1に記載の平均厚みに変更した以外は、実施例1と同様にして、積層体を得た。
得られた積層体について、実施例1と同様に評価を行った。結果を表2−1に示した。
【0134】
(比較例2、実施例4〜5、比較例3〜4)
実施例2において、防曇防汚層を形成するための活性エネルギー線硬化性樹脂組成物における親水性モノマー、及び架橋剤の含有量を、表2−2に記載の含有量に変更した以外は、実施例2と同様にして、積層体を得た。
得られた積層体について、実施例1と同様に評価を行った。結果を表2−2に示した。
【0135】
(比較例5)
実施例2において、防曇防汚層を形成するための活性エネルギー線硬化性樹脂組成物における架橋剤の種類を、表2−2に記載の架橋剤に変更した以外は、実施例2と同様にして、積層体を得た。
得られた積層体について、実施例1と同様に評価を行った。結果を表2−2に示した。
【0136】
(実施例6〜8、比較例6)
実施例2において、防曇防汚層の平均厚みを、表2−3に記載の平均厚みに変更した以外は、実施例2と同様にして、積層体を得た。
得られた積層体について、実施例1と同様に評価を行った。結果を表2−3に示した。
【0137】
(実施例9〜16)
実施例2において、防曇防汚層を形成するための活性エネルギー線硬化性樹脂組成物における光重合開始剤を、表2−4に記載の光重合開始剤に変更し、更に防曇防汚層の平均厚みを30μmに変更した以外は、実施例2と同様にして、積層体を得た。
得られた積層体について、実施例1と同様に評価を行った。結果を表2−4に示した。
【0138】
(比較例7)
実施例9において、防曇防汚層の硬化の際の雰囲気を、空気雰囲気に変更した以外は、実施例9と同様にして、積層体を得た。
得られた積層体について、実施例1と同様に評価を行った。結果を表2−5に示した。
【0139】
(比較例8)
実施例2において、防曇防汚層を形成するための活性エネルギー線硬化性樹脂組成物における撥水性モノマーを0質量部に変え、更に防曇防汚層の平均厚みを35μmに変更した以外は、実施例2と同様にして、積層体を得た。
得られた積層体について、実施例1と同様に評価を行った。結果を表2−6に示した。
【0140】
(実施例17)
実施例2において、防曇防汚層を形成するための活性エネルギー線硬化性樹脂組成物における撥水性モノマーの含有量を、表2−6に記載の含有量に変更し、更に防曇防汚層の平均厚みを表2−6に記載の平均厚みに変更した以外は、実施例2と同様にして、積層体を得た。
得られた積層体について、実施例1と同様に評価を行った。結果を表2−6に示した。
【0141】
(実施例18〜21)
実施例2において、防曇防汚層を形成するための活性エネルギー線硬化性樹脂組成物における撥水性モノマーの含有量を、表2−6に記載の含有量に変更した以外は、実施例2と同様にして、積層体を得た。
得られた積層体について、実施例1と同様に評価を行った。結果を表2−6に示した。
【0142】
(実施例22〜25、比較例9)
実施例2において、防曇防汚層を形成するための活性エネルギー線硬化性樹脂組成物における親水性モノマー、架橋剤、及び撥水性モノマーの含有量を、表2−7に記載の含有量に変更した以外は、実施例2と同様にして、積層体を得た。
得られた積層体について、実施例1と同様に評価を行った。結果を表2−7に示した。
【0143】
(実施例26〜28、比較例10)
実施例2において、防曇防汚層を形成するための活性エネルギー線硬化性樹脂組成物における親水性モノマーの種類及び含有量、並びに架橋剤の含有量を、表2−8に記載の通りに変更した以外は、実施例2と同様にして、積層体を得た。
得られた積層体について、実施例1と同様に評価を行った。結果を表2−8に示した。
【0144】
(実施例29)
実施例2において、防曇防汚層を形成するための活性エネルギー線硬化性樹脂組成物における架橋剤を、表2−8に記載の架橋剤に変更した以外は、実施例2と同様にして、積層体を得た。
得られた積層体について、実施例1と同様に評価を行った。結果を表2−8に示した。
【0145】
(実施例30)
実施例2において、基材を、PET基材(東洋紡株式会社製、A4300、平均厚み75μm)に変更した以外は、実施例2と同様にして、積層体を得た。
得られた積層体について、実施例1と同様に評価を行った。結果を表2−8に示した。
【0146】
【表2-1】
【0147】
【表2-2】
【0148】
【表2-3】
【0149】
【表2-4】
【0150】
【表2-5】
【0151】
【表2-6】
【0152】
【表2-7】
【0153】
【表2-8】
【0154】
表2−1〜表2−8において、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の各成分の含有量の単位は質量部である。
表2−1〜表2−8に記載の材料の詳細は以下の通りである。
なお、比較例において「−」となっている箇所については、他の評価において結果が不十分であったことから、評価を行っていない。
【0155】
<親水性モノマー>
・SR9035:サートマー社製、エトキシ化(15)トリメチロールプロパントリアクリレート
・ATM−35E:新中村化学工業株式会社製、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート
・A−GLY−20E:新中村化学工業株式会社製、エトキシ化グリセリントリアクリレート
・A−600:新中村化学工業株式会社製、ポリエチレングリコールジアクリレート
<<その他>>
・A−1000:新中村化学工業株式会社製、ポリエチレングリコールジアクリレート
【0156】
<架橋剤>
・EBECRYL40:ダイセルオルネクス株式会社製、ペンタエリスリトールアルコキシテトラアクリレート
・PU610:Miwon社製、脂肪族ウレタンアクリレート(アクリル基数6、分子量:1800)
<<その他>>
・A−DCP:新中村化学工業株式会社製、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート
【0157】
<撥水性モノマー>
・オプツールDAC−HP:ダイキン工業株式会社製、末端(メタ)アクリル変性パーフルオロポリエーテル系添加剤
【0158】
<光重合開始剤>
・イルガキュア184:BASF社製、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン
・イルガキュア127:BASF社製、2−ヒロドキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン
・イルガキュア651:BASF社製、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン
・イルガキュア1173:BASF社製、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン
・イルガキュア2959:BASF社製、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン
・イルガキュアMBF:BASF社製、フェニル グリオキシリック アシッド メチル エステル
・イルガキュア754:BASF社製、オキシフェニル酢酸、2−[2−オキソ−2−フェニルアセトキシエトキシ]エチルエステルと、オキシフェニル酢酸、2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチルエステルの混合物
・イルガキュア TPO:BASF社製、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド
【0159】
<溶剤>
PGME:プロピレングリコールモノメチルエーテル
【0160】
実施例1〜30の防曇防汚積層体は、以下の特徴を兼ね備える結果、防汚性及び耐久性に優れ、更に高温高湿状態でも外観の低下が生じずかつ防曇性に優れていた。
<防曇防汚積層体の特徴>
前記防曇防汚積層体は、以下の特徴を兼ね備える。
前記プライマー層の平均厚みは、0.5μm超である。
前記防曇防汚層の動摩擦係数は、0.40以下である。
前記防曇防汚層の平均厚みは、10μm以上である。
前記防曇防汚層のマルテンス硬度は、10N/mm以上である。
前記防曇防汚層は、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の硬化物である。
前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、アルキレンオキシド当量が100未満でありかつアクリル当量が200〜500である親水性モノマーと、アルキレンオキシド当量が100以上でありかつアクリル当量が400未満である非脂環式の架橋剤と、フッ素及びケイ素の少なくともいずれかを有する撥水性モノマーとを含有する。
前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物における前記架橋剤の含有量は、前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の不揮発分に対して、5質量%〜40質量%である。
前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物における前記撥水性モノマーの含有量は、前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の不揮発分に対して、0.001質量%〜10質量%である。
【0161】
一方、比較例1の積層体は、プライマー層の平均厚みが、0.5μmと薄いため、コート密着性が不十分であった。
比較例2の積層体は、防曇防汚層を形成するための活性エネルギー線硬化性樹脂組成物における架橋剤の含有量が少ないため、耐傷性、及び耐薬品性が不十分であった。
比較例3及び4の積層体は、防曇防汚層を形成するための活性エネルギー線硬化性樹脂組成物における架橋剤の含有量が多すぎるため、防曇性が不十分であった。
比較例5の積層体は、防曇防汚層を形成するための活性エネルギー線硬化性樹脂組成物における架橋剤が脂環式構造を有するため、防曇性が不十分であった。
比較例6の積層体は、防曇防汚層が5μmと薄いため、防曇性が不十分であった。
比較例7の積層体は、防曇防汚層を形成する際に、空気雰囲気でUV照射を行った結果、動摩擦係数が高くなったため、防汚性、及び耐傷性が不十分であった。
比較例8の積層体は、防曇防汚層を形成するための活性エネルギー線硬化性樹脂組成物が撥水性モノマーを含有しないため、防汚性が不十分であった。
比較例9の積層体は、防曇防汚層を形成するための活性エネルギー線硬化性樹脂組成物における撥水性モノマーの含有量が多すぎるため、外観が不十分であった。
比較例10の積層体は、防曇防汚層を形成するための活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の親水性モノマーのアクリル当量が大きいため、耐傷性、及び硬度が不十分であった。また、ガラス基材を用い、親水性モノマーの種類のみが異なる実施例5、実施例28と対比すると、鉛筆硬度が低くなった。
【産業上の利用可能性】
【0162】
本発明の防曇防汚積層体は、ガラス窓、冷蔵・冷凍ショーケース、自動車のウインドウ等の窓材、浴室や洗面など水廻りの鏡、自動車サイドミラー等の鏡、浴室の床及び壁、太陽電池パネル表面、防犯監視カメラなどに用いることができる。また、本発明の防曇防汚積層体は、成形加工が容易であることから、インモールド成形、インサート成形を利用して、眼鏡、ゴーグル、ヘルメット、レンズ、マイクロレンズアレイ、自動車のヘッドライトカバー、フロントパネル、サイドパネル、リアパネルなどに用いることができる。
【符号の説明】
【0163】
11 樹脂性基材
12 プライマー層
13 防曇防汚層

【要約】
【課題】外観、防汚性、及び耐久性に優れ、更に高温高湿状態でも外観の低下が生じずかつ防曇性に優れる防曇防汚積層体などの提供。
【解決手段】基材と、プライマー層と、表面が平滑な防曇防汚層とを有し、
前記プライマー層の平均厚みが、0.5μm超であり、
前記防曇防汚層が、10N/mm以上のマルテンス硬度と、0.40以下の動摩擦係数と、10μm以上の平均厚みとを有し、
前記防曇防汚層が、親水性モノマーと、架橋剤と、撥水性モノマーとを含有する活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の硬化物であり、
前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物における前記架橋剤の含有量が、不揮発分に対して、5質量%〜40質量%であり、前記撥水性モノマーの含有量が、不揮発分に対して、0.001質量%〜10質量%である、防曇防汚積層体である。
【選択図】図1
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図2F
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B