特許第6298198号(P6298198)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6298198
(24)【登録日】2018年3月2日
(45)【発行日】2018年3月20日
(54)【発明の名称】粉体塗料組成物
(51)【国際特許分類】
   C09D 127/12 20060101AFI20180312BHJP
   C09D 5/03 20060101ALI20180312BHJP
   C09D 7/40 20180101ALI20180312BHJP
   C09D 167/00 20060101ALI20180312BHJP
   C09D 175/04 20060101ALI20180312BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20180312BHJP
【FI】
   C09D127/12
   C09D5/03
   C09D7/12
   C09D167/00
   C09D175/04
   B05D7/24 301A
【請求項の数】3
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2017-104866(P2017-104866)
(22)【出願日】2017年5月26日
【審査請求日】2017年5月26日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001409
【氏名又は名称】関西ペイント株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】591038303
【氏名又は名称】久保孝ペイント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川本 酉元
(72)【発明者】
【氏名】野浦 公介
(72)【発明者】
【氏名】市川 綾
(72)【発明者】
【氏名】小林 紘太郎
【審査官】 仁科 努
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−041383(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0043062(US,A1)
【文献】 国際公開第2016/139966(WO,A1)
【文献】 国際公開第2013/186832(WO,A1)
【文献】 特開2011−012119(JP,A)
【文献】 特開2011−011117(JP,A)
【文献】 特開2014−218671(JP,A)
【文献】 特開2013−076019(JP,A)
【文献】 特開2016−068432(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 127/12
B05D 7/24
C09D 5/03
C09D 167/00
C09D 175/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水酸基含有フッ素樹脂(A)、酸価10mgKOH/g以下かつ水酸基価10〜100mgKOH/gのポリエステル樹脂(B)、及びブロック化ポリイソシアネート(C)を含むバインダ成分、体積平均粒子径21〜45μmのアクリル系微粒子(D)並びに着色顔料(E)を含有する粉体塗料組成物であって、該バインダ成分の固形分合計100質量部に対して、成分(A)を20〜55質量部、成分(B)を20〜55質量部、成分(C)を10〜40質量部、アクリル系微粒子(D)を1〜40質量部、着色顔料(E)を0.5〜100質量部含有し、成分(A)、成分(B)及び成分(C)を含むバインダ成分の固形分合計100質量部に対して、体積平均粒子径0.1〜20μmの硫酸バリウムを1〜50質量部含有することを特徴とする粉体塗料組成物。
【請求項2】
アクリル系微粒子(D)の体積平均粒子径が、25〜40μmである請求項1に記載の粉体塗料組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の粉体塗料組成物の硬化物からなる60度鏡面光沢度が50以下である塗膜を有する塗装物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、仕上り性、塗膜硬度、耐候性及び密着性に優れ、かつ艶消し塗膜が得られる粉体塗料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、塗料業界において従来の有機溶剤型塗料に代わり得るものとして、揮発性有機化合物を全く含まず、排気処理や廃水処理が不要で回収再利用も可能な粉体塗料への要望が高まっている。
【0003】
例えば、特許文献1には、(A)フッ素樹脂、(B)ポリエステル樹脂、(C)顔料、(D)架橋樹脂粒子、(E)エポキシ樹脂及び(F)イソシアネート化合物を含有する艶消し粉体塗料組成物が開示されている。また、上記(D)架橋樹脂粒子を使用することによって、艶消し塗膜や仕上り性に優れる塗膜を得ることが開示されている。しかし、特許文献1に記載の粉体塗料組成物から得られた艶消し塗膜は、基材への密着性に優れるものの、耐候性が不十分なことがあった。また、上記粉体塗料組成物から得られた艶消し塗膜は、ユズ肌を生じることがあった。
【0004】
他に、特許文献2には、(A)フッ素樹脂、(B)ポリエステル樹脂、(C)顔料及び(D)表面に官能基を有したコア−シェル型アクリル樹脂粒子を含有する粉体塗料組成物が開示されている。しかし、特許文献2に記載の粉体塗料組成物では、ユズ肌のない仕上り性が良好な艶消し塗膜を得ることができなかった。このような背景から、仕上り性、塗膜硬度、耐候性及び基材への密着性に優れた艶消し塗膜を形成できる粉体塗料組成物が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012−41383号公報
【特許文献2】特開2013−76019号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
発明が解決しようとする課題は、仕上り性、塗膜硬度、耐候性及び密着性に優れ、かつ艶消し塗膜を形成できる粉体塗料組成物を見出し、上記塗膜性能に優れた塗装物品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解消するために鋭意検討した結果、水酸基含有フッ素樹脂(A)、酸価10mgKOH/g以下かつ水酸基価10〜100mgKOH/gのポリエステル樹脂(B)、及びブロック化ポリイソシアネート(C)を含むバインダ成分、体積平均粒子径21〜45μmのアクリル系微粒子(D)並びに着色顔料(E)を含有する粉体塗料組成物によって、課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、本発明は、以下の態様に関する。
項1. 水酸基含有フッ素樹脂(A)、酸価10mgKOH/g以下かつ水酸基価10〜100mgKOH/gのポリエステル樹脂(B)、及びブロック化ポリイソシアネート(C)を含むバインダ成分、体積平均粒子径21〜45μmのアクリル系微粒子(D)並びに着色顔料(E)を含有する粉体塗料組成物であって、該バインダ成分の固形分合計100質量部に対して、成分(A)を20〜55質量部、成分(B)を20〜55質量部、成分(C)を10〜40質量部、アクリル系微粒子(D)を1〜40質量部、着色顔料(E)を0.5〜100質量部含有することを特徴とする粉体塗料組成物。
項2. アクリル系微粒子(D)の体積平均粒子径が、25〜40μmである項1に記載の粉体塗料組成物。
項3. 水酸基含有フッ素樹脂(A)、該ポリエステル樹脂(B)及びブロック化ポリイソシアネート(C)を含むバインダ成分の固形分合計100質量部に対して、体積平均粒子径0.1〜20μmの硫酸バリウムを1〜50質量部含有する項1または2に記載の粉体塗料組成物。
項4. 項1〜3のいずれか1項に記載の粉体塗料組成物を塗装して得られた60度鏡面光沢度が50以下である塗装物品。
項5. 項1〜3のいずれか1項に記載の粉体塗料組成物の硬化物からなる60度鏡面光沢度が50以下である塗膜を有する塗装物品。
【発明の効果】
【0009】
本発明の粉体塗料組成物は、仕上り性、塗膜硬度、耐候性及び密着性に優れ、かつ、60度鏡面光沢度が50以下、好ましくは30以下の艶消し塗膜を有する塗装物品を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の粉体塗料組成物は、水酸基含有フッ素樹脂(A)、酸価10mgKOH/g以下かつ水酸基価10〜100mgKOH/gのポリエステル樹脂(B)、及びブロック化ポリイソシアネート(C)を含むバインダ成分、体積平均粒子径21〜45μmのアクリル系微粒子(D)並びに着色顔料(E)を含有する。以下、詳細に説明する。
【0011】
[本発明の粉体塗料組成物]
水酸基含有フッ素樹脂(A)
水酸基含有フッ素樹脂(A)(以下、「(A)成分」ということもある。)は、フルオロオレフィンに基づく重合単位を有する重合体である。(A)成分は、塗料用として公知の各種水酸基含有フッ素樹脂を用いることができる。水酸基含有フッ素樹脂(A)は、フルオロオレフィンと水酸基を有するモノマーとの共重合体でもよいが、フルオロオレフィン及び水酸基を有するモノマーに基づく重合単位の他に、これらのモノマーと共重合可能な単量体に基づく重合単位を含む共重合体であってもよい。
【0012】
水酸基含有フッ素樹脂(A)は、該樹脂に含まれる水酸基と、ブロック化ポリイソシアネート(C)との反応により架橋結合を形成することが可能である。水酸基含有フッ素樹脂(A)は、水酸基の他に、チオール基、カルボキシル基、アミノ基、アミド基、エポキシ基、イソシアネート基、アリル基などの基を有していてもよい。
【0013】
水酸基含有フッ素樹脂(A)の水酸基価は、10〜200mgKOH/g、好ましくは20〜150mgKOH/g、数平均分子量は1,000〜30,000、好ましくは3,000〜15,000の範囲が望ましい。
【0014】
水酸基含有フッ素樹脂(A)は1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。水酸基含有フッ素樹脂(A)が2種以上の混合物である場合、該混合物を構成している各フッ素樹脂の水酸基価および数平均分子量が上記範囲内であることが、仕上り性、耐候性の為に好ましい。
【0015】
なお、本明細書において、数平均分子量は、ゲルパーミュエーションクロマトグラフ(GPC)を用いて測定した数平均分子量を、標準ポリスチレンの分子量を基準にして換算した値である。具体的には、ゲルパーミュエーションクロマトグラフの測定において、「HLC8120GPC」(東ソー社製、商品名)を使用し、カラムとして、「TSKgel G−4000HXL」、「TSKgel G−3000HXL」、「TSKgel G−2500HXL」及び「TSKgel G−2000HXL」(以上、東ソー社製、商品名)の4本を使用し、移動相テトラヒドロフラン、測定温度40℃、流速1mL/min及び検出器RIの条件下で測定することができる。
【0016】
本発明における水酸基含有フッ素樹脂(A)は、フルオロオレフィンに基づく重合単位および水酸基を有するモノマーに基づく重合単位を含有する含フッ素共重合体である。
【0017】
フルオロオレフィンとしては、例えば、テトラフルオロエチレン、フッ化ビニリデン、クロロトリフルオロエチレン、トリフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、ペンタフルオロプロピレン等を挙げることができる。フルオロオレフィンは、1種を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0018】
水酸基含有フッ素樹脂(A)におけるフルオロオレフィンに基づく重合単位の含有量は全重合単位に対して30〜70モル%が好ましい。
【0019】
水酸基を有するモノマーとしては、例えば、アリルアルコール、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、3−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、4−ヒドロキシシクロヘキシルビニルエーテル、2−ヒドロキシエチルアリルエーテル、3−ヒドロキシプロピルアリルエーテル、4−ヒドロキシブチルアリルエーテル、4−ヒドロキシシクロヘキシルアリルエーテル、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、無水マレイン酸、ヒドロキシ酢酸ビニル、ヒドロキシイソ酪酸ビニル、ヒドロキシプロピオン酸ビニル、ヒドロキシ酪酸ビニル、ヒドロキシ吉草酸ビニル、4−ヒドロキシシクロヘキシルカルボン酸ビニル等のヒドロキシ置換の脂肪酸のビニルエステル類等を挙げることができる。
【0020】
水酸基含有フッ素樹脂(A)における水酸基を有するモノマーに基づく重合単位の含有量は、全重合単位に対して1〜50モル%が好ましい。
【0021】
水酸基含有フッ素樹脂(A)には、上記以外の単量体Hを共重合してもよい。単量体Dとしては、例えば、シクロアルキル基または分岐アルキル基を有するアルキルビニルエーテル、直鎖アルキル基を有するアルキルビニルエーテル、グリシジルビニルエーテル等のビニルエーテル類、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のビニルシラン類、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル等の有機酸のビニルエステル類、エチルアリルエーテル、プロピルアリルエーテル、ブチルアリルエーテル等のアルキルアリルエーテル類、エチレン、プロピレン、ブチレン等のオレフィン類等を挙げることができ、これらの単量体は1種または2種類以上を用いてもよい。
【0022】
前記シクロアルキル基または分岐アルキル基を有するアルキルビニルエーテルとしては、シクロヘキシルビニルエーテル、シクロペンチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、tert−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、3−メチルブチルビニルエーテル等が挙げられる。
【0023】
前記直鎖アルキル基を有するアルキルビニルエーテルとしては、例えば、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、ペンチルビニルエーテル等を挙げることができる。
【0024】
水酸基含有フッ素樹脂(A)は、市販品から入手することができ、「ルミフロン」(商品名、旭硝子社製)などのフルオロオレフィン類とビニルエーテル類との共重合体は、良好な塗料安定性および耐候性が得られる点で好ましい。
【0025】
ポリエステル樹脂(B)
本発明の粉体塗料組成物に使用する酸価10mgKOH/g以下かつ水酸基価10〜100mgKOH/gのポリエステル樹脂(B)(以下、「ポリエステル樹脂(B)」と略することがある)は、通常、多塩基酸成分及び多価アルコール成分とのエステル化反応又はエステル交換反応によって製造することができる。上記多塩基酸成分としては、例えば、脂環族多塩基酸成分、脂肪族多塩基酸成分、芳香族多塩基酸成分等を使用することができる。
【0026】
上記脂環族多塩基酸成分としては、一般に、1分子中に1個以上の脂環式構造(主として4〜6員環)と2個以上のカルボキシル基を有する化合物、該化合物の酸無水物及び該化合物のエステル化物である。該脂環族多塩基酸成分としては、例えば、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、3−メチル−1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、4−メチル−1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、1,3,5−シクロヘキサントリカルボン酸等の脂環族多価カルボン酸;これら脂環族多価カルボン酸の無水物;これら脂環族多価カルボン酸の低級アルキルエステル化物等が挙げられる。脂環族多塩基酸成分は、単独でもしくは2種以上を組合せて使用することができる。
【0027】
脂環族多塩基酸成分としては、特に、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸無水物、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物を好適に使用することができる。上記のうち、耐加水分解性の観点から、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸無水物を特に好適に使用することができる。
【0028】
上記脂肪族多塩基酸成分は、一般に、1分子中に2個以上のカルボキシル基を有する脂肪族化合物、該脂肪族化合物の酸無水物及び該脂肪族化合物のエステル化物であって、例えば、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、ブラシル酸、オクタデカン二酸、クエン酸等の脂肪族多価カルボン酸;これら脂肪族多価カルボン酸の無水物;これら脂肪族多価カルボン酸の低級アルキルエステル化物等が挙げられる。脂肪族多塩基酸成分は、単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0029】
上記脂肪族多塩基酸成分としては、炭素数4〜18のアルキレン鎖を有するジカルボン酸を使用することが好ましい。上記炭素数4〜18のアルキレン鎖を有するジカルボン酸としては、例えば、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、ブラシル酸、オクタデカン二酸等が挙げられ、なかでもアジピン酸を好適に使用することができる。
【0030】
上記芳香族多塩基酸成分としては、一般に、1分子中に2個以上のカルボキシル基を有する芳香族化合物、該芳香族化合物の酸無水物及び該芳香族化合物の低級アルキルエステル化物であって、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等の芳香族多価カルボン酸;これら芳香族多価カルボン酸の無水物;これら芳香族多価カルボン酸の低級アルキルエステル化物等が挙げられる。芳香族多塩基酸成分は、単独でもしくは2種以上組合せて使用することができる。
【0031】
前記多価アルコール成分としては、1分子中に2個以上の水酸基を有する多価アルコールを好適に使用することができる。上記多価アルコールとしては、例えば、脂環族ジオール、脂肪族ジオール、芳香族ジオール及び3価以上の多価アルコール等を挙げることができる。
【0032】
上記脂環族ジオールは、一般に、1分子中に1個以上の脂環式構造(主として4〜6員環)と2個の水酸基を有する化合物である。該脂環族ジオールとしては、例えば、1,4−シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールF等の2価アルコール;これらの2価アルコールにε−カプロラクトン等のラクトン化合物を付加したポリラクトンジオール等が挙げられ、これらは単独でもしくは2種以上組合せて使用することができる。
【0033】
上記脂肪族ジオールは、一般に、1分子中に2個の水酸基を有する脂肪族化合物である。該脂肪族ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、3−メチル−1,2−ブタンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,4−ペンタンジオール、2,4−ペンタンジオール、2,3−ジメチルトリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,5−ヘキサンジオール、1,4−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−ドデカンジオール、ネオペンチルグリコール;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール及びポリブチレングリコール等のポリエーテルジオール化合物等が挙げられ、これらは単独でもしくは2種以上組合せて使用することができる。
【0034】
上記芳香族ジオールは、一般に、1分子中に2個の水酸基を有する芳香族化合物である。該芳香族ジオールとしては、例えば、ビス(ヒドロキシエチル)テレフタレート等のエステルジオール化合物;ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物等が挙げられ、これらは単独でもしくは2種以上組合せて使用することができる。
【0035】
3価以上の多価アルコールとしては、例えば、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ジグリセリン、トリグリセリン、1,2,6−ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ソルビトール、マンニット等の3価以上のアルコール;これらの3価以上のアルコールにε−カプロラクトン等のラクトン化合物を付加させたポリラクトンポリオール化合物;トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、トリス(2−ヒドロキシプロピル)イソシアヌレート、トリス(2−ヒドロキシブチル)イソシアヌレート等のトリス(ヒドロキシアルキル)イソシアヌレート等が挙げることができる。これらのうち、特に、トリメチロールプロパンが好ましい。
【0036】
本発明に使用するポリエステル樹脂(B)の製造は、特に限定されるものではなく、通常の方法に従って行なうことができる。例えば、前記多塩基酸成分を必須成分とする酸成分と多価アルコール成分とを窒素気流中、150〜250℃で5〜10時間反応させて、エステル化反応又はエステル交換反応を行なうことにより製造することができる。
【0037】
上記エステル化反応又はエステル交換反応では、上記酸成分及びアルコール成分を一度に添加してもよいし、数回に分けて添加してもよい。また、はじめにカルボキシル基含有ポリエステル樹脂を合成した後、上記アルコール成分を用いて、該カルボキシル基含有ポリエステル樹脂中のカルボキシル基の一部をエステル化してもよい。さらに、はじめに水酸基含有のポリエステル樹脂を合成した後、酸無水物を反応させて、水酸基含有のポリエステル樹脂をハーフエステル化させてもよい。
【0038】
前記エステル化又はエステル交換反応の際には、反応を促進させるために、触媒を用いてもよい。触媒としては、ジブチル錫オキサイド、三酸化アンチモン、酢酸亜鉛、酢酸マンガン、酢酸コバルト、酢酸カルシウム、酢酸鉛、テトラブチルチタネート、テトライソプロピルチタネート等の既知の触媒を使用することができる。
【0039】
また、ポリエステル樹脂(B)は、該樹脂の調製中、もしくはエステル化反応後又はエステル交換反応後に、脂肪酸、油脂、モノエポキシ化合物、モノアルコール化合物、ポリイソシアネート化合物等で変性することができる。
【0040】
上記脂肪酸としては、例えば、ヤシ油脂肪酸、綿実油脂肪酸、麻実油脂肪酸、米ぬか油脂肪酸、魚油脂肪酸、トール油脂肪酸、大豆油脂肪酸、アマニ油脂肪酸、桐油脂肪酸、ナタネ油脂肪酸、ヒマシ油脂肪酸、脱水ヒマシ油脂肪酸、サフラワー油脂肪酸等の脂肪酸;ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸等を挙げることができる。
【0041】
油脂としては、例えば、ヤシ油、綿実油、麻実油、米ぬか油、魚油、トール油、大豆油、アマニ油、桐油、ナタネ油、ヒマシ油、脱水ヒマシ油、サフラワー油等が挙げられる。
【0042】
上記変性に用いられるポリイソシアネート化合物としては、例えば、リジンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート化合物;水素添加キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、メチルシクロヘキサン−2,4−ジイソシアネート、メチルシクロヘキサン−2,6−ジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、1,3−(イソシアナトメチル)シクロヘキサン等の脂環族ジイソシアネート化合物;トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート化合物;リジントリイソシアネート等の3価以上のポリイソシアネート等の有機ポリイソシアネートそれ自体、又はこれらの各有機ポリイソシアネートと多価アルコール、低分子量ポリエステル樹脂もしくは水等との付加物、あるいは上記した各有機ジイソシアネート同士の環化重合体(例えば、イソシアヌレート)、ビゥレット型付加物等を挙げることができる。これらは、単独でもしくは2種以上組合せて使用することができる。
【0043】
ポリエステル樹脂(B)の数平均分子量は、得られる塗膜の塗膜硬度、加工性、仕上り性の観点から、2,000〜30,000が好ましく、特に3,000〜25,000の範囲内が好適である。
【0044】
ポリエステル樹脂(B)の酸価は、仕上り性の点から10mgKOH/g以下、好ましくは1〜6mgKOH/gの範囲内である。水酸基価は、塗膜硬度、密着性の点から10〜100mgKOH/g、好ましくは20〜70mgKOH/gの範囲内である。ここで酸価とは、樹脂1g中に含まれる酸性遊離官能基を中和するのに必要な水酸化カリウムのmg数を、アルカリ中和滴定に基づく常法により求めたものである。また、水酸基価の測定は、JISK−0070(1992)に準拠して行うことができる。具体的には、試料にアセチル化試薬(無水酢酸25gにピリジンを加えて全体が100mlになるように調整した無水酢酸ピリジン溶液)を5ml加えてグリセリン浴中で加熱した後、水酸化カリウム溶液でフェノールフタレインを指示薬として滴定し、下記式により算出することができる。
水酸基価(mgKOH/g)=〔V×56.1×C/m〕+D
V:滴定量(ml)、
C:滴定液の濃度(mol/l)、
m:試料の固形分質量(g)、
D:試料の酸価(mgKOH/g)。
【0045】
ブロック化ポリイソシアネート(C)
本発明の粉体塗料組成物におけるブロック化ポリイソシアネート(C)は、例えば、1分子中に2個以上のイソシアネート基を有する化合物、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネート;テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、リジンジイソシアネートなどの脂肪族ジイソシアネート;メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、イソホロンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート及びシクロペンタンジイソシアネートなどの脂環族ジイソシアネート;該ポリイソシアネートのビウレットタイプ付加物、アロファネートタイプ付加物、イソシアヌレート環タイプ付加物;これらのポリイソシアネートと低分子量もしくは高分子量のポリオール化合物(例えば、アクリルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオールなど)とをイソシアネート基過剰で反応させてなるイソシアネート基含有プレポリマーなどのポリイソシアネートを、ブロック剤により遊離のイソシアネート基を封鎖したブロック化ポリイソシアネート化合物を挙げることができる。
【0046】
上記ブロック剤としては、例えば、フェノール化合物、オキシム化合物、活性メチレン化合物、ラクタム化合物、アルコール化合物、メルカプタン化合物、酸アミド系化合物、イミド系化合物、アミン系化合物、イミダゾール系化合物、尿素系化合物、カルバミン酸系化合物、イミン系化合物などを挙げることができる。
【0047】
なお、本発明の粉体塗料組成物は、水酸基含有フッ素樹脂(A)、ポリエステル樹脂(B)、及びブロック化ポリイソシアネート(C)を含むバインダ成分の固形分合計100質量部に対して、成分(A)20〜55質量部、好ましくは30〜45質量部、成分(B)20〜55質量部、好ましくは30〜45質量部、及び成分(C)10〜40質量部、好ましくは15〜30質量部であることが、塗膜硬度及び密着性の面から好適である。
【0048】
アクリル系微粒子(D)
本発明の粉体塗料組成物は、艶消剤として、体積平均粒子径21〜45μmのアクリル系微粒子(D)を含有することによって、仕上り性、塗膜硬度、耐候性及び密着性に優れ、かつ艶消し塗膜を得ることができる。
【0049】
上記アクリル系微粒子(D)の製造方法としては、特に限定されるものではなく、それ自体既知の重合方法、例えば、懸濁重合、溶液重合、乳化重合法、塊状重合等によって、重合性不飽和モノマーを反応させることによって得ることができる。これらの重合方法の中でも、特に、懸濁重合が好ましい。
【0050】
上記重合性不飽和モノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート等の炭素数1〜24のアルキル(メタ)アクリレート;スチレン、酢酸ビニル;アクリル酸、メタアクリル酸、アクリロニトリル、メタクリロニトリル;マレイン酸、無水マレイン酸、クロトン酸、イタコン酸などのカルボキシル基含有モノマー;N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N−t−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレートなどの含窒素アルキル(メタ)アクリレート;アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド等の重合性アミド類;2−ビニルピリジン、1−ビニル−2−ピロリドン、4−ビニルピリジン、アリルアミンなどの窒素含有モノマー;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2,3−ジヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート及びポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等の多価アルコールとアクリル酸又はメタクリル酸とのモノエステル化物;上記多価アルコールとアクリル酸又はメタクリル酸とのモノエステル化物にε−カプロラクトンを開環重合した化合物などの水酸基含有モノマー;1分子中に2個以上の重合性不飽和基を有するモノマー類等を挙げることができる。
【0051】
これらの重合性不飽和モノマーは、1種で、又は2種以上を組合せて使用することができる。
【0052】
本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、アクリレート又はメタアクリレートを意味し、「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸又はメタクリル酸を意味し、「(メタ)アクリルアミド」は、アクリルアミド又はメタクリルアミドを意味する。
【0053】
本発明の粉体塗料組成物に使用するアクリル系微粒子(D)は、メチル(メタ)アクリレートを含むモノマー混合物の共重合体を含むアクリル系微粒子であることが、耐候性向上の為に望ましい。また、アクリル系微粒子(D)は架橋したものであってもよい。
【0054】
アクリル系微粒子(D)の体積平均粒子径は、21〜45μm、さらに25〜40μmであることが、60度鏡面光沢度が50以下、好ましくは30以下の仕上り性に優れた艶消し塗膜を得るために好適である。なお本明細書中におけるアクリル系微粒子(D)の体積平均粒子径は、マイクロトラックMT3300(マイクロトラック・ベル、湿式粒度分布測定装置)を用いて測定した。
【0055】
上記アクリル系微粒子(D)の市販品としては、具体的には、ガンツパールGB−22S(アイカ工業株式会社製、商品名、体積平均粒子径22μm、アクリル樹脂粒子)、テクポリマーSSX−127(積水化成品工業株式会社製、商品名、体積平均粒子径27μm、ポリメタクリル酸メチル樹脂粒子)、テクポリマーMBX−30(積水化成品工業株式会社製、商品名、体積平均粒子径30μm、ポリメタクリル酸メチル樹脂粒子)、テクポリマーMBX−40(積水化成品工業株式会社製、商品名、体積平均粒子径40μm、ポリメタクリル酸メチル樹脂粒子)、テクポリマーMB20X−30(積水化成品工業株式会社製、商品名、体積平均粒子径30μm、ポリメタクリル酸メチル樹脂粒子)、タフチックAR−650M(東洋紡績株式会社製、商品名、体積平均粒子径30μm、ポリメタクリル酸メチル樹脂粒子)、タフチックAR−650MX(東洋紡績株式会社製、商品名、体積平均粒子径40μm、ポリメタクリル酸メチル樹脂粒子)等が挙げられる。
【0056】
なお、アクリル系微粒子(D)の配合割合は、水酸基含有フッ素樹脂(A)、ポリエステル樹脂(B)及びブロック化ポリイソシアネート(C)を含むバインダ成分の固形分合計100質量部に対して、アクリル系微粒子(D)を1〜40質量部、さらに5〜25質量部の範囲であることが、仕上り性、塗膜硬度、耐候性及び基材への密着性に優れた艶消し塗膜を得るために好適である。
【0057】
また、アクリル系微粒子(D)の配合量が1質量部未満では、艶消し塗膜を得ることができない場合があり、またアクリル系微粒子(D)の配合量が20質量部を超えると、仕上り性や耐候性を損う場合がある。
【0058】
着色顔料(E)
上記着色顔料(E)としては、例えば、二酸化チタン、カーボンブラック、キナクリドン、ジケトピロロピロール、イソインドリノン、インダンスロン、ペリレン、ペリノン、アントラキノン、ジオキサジン、ベンゾイミダゾロン、トリフェニルメタンキノフタロン、アントラピリミジン、黄鉛、パールマイカ、透明パールマイカ、着色マイカ、干渉マイカ、フタロシアニン、ハロゲン化フタロシアニン、アゾ顔料(アゾメチン金属錯体、縮合アゾ等)、酸化鉄、銅フタロシアニン、縮合多環類顔料等を挙げることができる。
【0059】
上記二酸化チタン顔料(e)の市販品としては、具体的には、Ti−Pure R960 (DuPont社製、商品名)、タイペークCR−95(石原産業社製、商品名)等が挙げられる。
【0060】
なお着色顔料(E)の配合量は、水酸基含有フッ素樹脂(A)、ポリエステル樹脂(B)及びブロック化ポリイソシアネート(C)を含むバインダ成分の固形分合計100質量部に対して、着色顔料(E)を0.5〜100質量部、好ましくは1〜60質量部含有することが、仕上り性及び耐候性の面から好ましい。
【0061】
体質顔料
本発明の粉体塗料組成物は、必要に応じて、公知の体質顔料を含んでもよい。前記体質顔料としては、例えば、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、含水珪酸マグネシウム(タルク)、炭酸マグネシウム、硫酸カルシウム(石膏)、珪藻土、マイカ(雲母粉)、ネフェリンサイナイト、シリカ、ノイブルグ珪土等が挙げられる。上記ネフェリンサイナイトの市販品としては、ミネックスEX(白石カルシウム社製、商品名)等が挙げられる。塗膜硬度の観点から体質顔料としては特に硫酸バリウムが好ましい。上記硫酸バリウムの体積平均粒子径は、0.1μm以上が好ましく、0.3μm以上がより好ましく、0.5μm以上がさらに好ましい。また、上記硫酸バリウムの体積平均粒子径は、20μm以下が好ましく、10.0μm以下がより好ましく、3.0μm以下がさらに好ましい。例えば、上記硫酸バリウムの体積平均粒子径の範囲としては、0.1〜20μmの範囲内、好ましくは、0.1〜10.0μmの範囲内、より好ましくは0.3〜10.0μm(好ましくは0.5〜10.0μm)、さらに好ましくは、0.3〜3.0μm(好ましくは0.5〜3.0μm)の範囲内で適宜設定できる。上記の範囲の体積平均粒子径を有する硫酸バリウムを用いることが、塗膜硬度および塗膜の仕上り性の点で特に好ましい。
【0062】
前記硫酸バリウムの市販品としては、具体的には、TS−1(竹原化学工業社製、商品名、体積平均粒子径0.6μm)、TS−2(竹原化学工業社製、商品名、体積平均粒子径0.3μm)、P−30(竹原化学工業社製、商品名、体積平均粒子径1.0μm)、W−1(竹原化学工業社製、商品名、体積平均粒子径1.5μm)、W−6(竹原化学工業社製、商品名、体積平均粒子径4.5μm)、W−10(竹原化学工業社製、商品名、体積平均粒子径10.0μm)、AC−200(竹原化学工業社製、商品名、体積平均粒子径15.0μm)等が挙げられる。なお、前記体積平均粒子径は、マイクロトラックMT3300(マイクロトラック・ベル、湿式粒度分布測定装置)を用いて測定した。
【0063】
なお硫酸バリウムを配合する場合、その配合量は、水酸基含有フッ素樹脂(A)、ポリエステル樹脂(B)及びブロック化ポリイソシアネート(C)を含むバインダ成分の固形分合計100質量部に対して、硫酸バリウムを1〜50質量部、好ましくは2〜30質量部含有することが、得られる艶消し塗膜の仕上り性向上の面から望ましい。
【0064】
その他の成分
本発明の粉体塗料組成物は、その他の成分として、必要に応じて、防錆顔料、表面調整剤、流動性調整剤、アクリル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、硬化触媒、消泡剤、顔料分散剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、磁性粉、レベリング剤、ベンゾインなどのワキ防止剤、可塑剤、帯電制御剤、シランカップリング剤等を含有することができる。
【0065】
前記防錆顔料としては、例えば、酸化亜鉛、亜リン酸塩化合物、リン酸塩化合物、モリブテン酸塩系化合物、ビスマス化合物、金属イオン交換シリカなどが挙げられる。
【0066】
前記硬化触媒としては、例えば、スズ、ビスマス等の金属化合物、有機酸化合物、有機塩基化合物等が挙げられる。
【0067】
前記エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型ジグリシジルエーテル樹脂、ビスフェノールF型ジグリシジルエーテル樹脂、アミノグリシジルエーテル樹脂、ビスフェノールAD型ジグリシジルエーテル樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられる。上記ノボラック型エポキシ樹脂としては、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂などを挙げることができる。得られる塗膜の耐候性の観点から、本発明の粉体塗料組成物100質量部に対して、エポキシ樹脂は1質量部未満の含有量が好ましい。本発明の組成物においては、エポキシ樹脂を含まない場合においても、基材に対する十分な密着性を有する塗膜を得ることができる。
【0068】
前記表面調整剤の市販品としては、アクロナール4F(BASF社製、商品名)、ポリフローS(共栄社化学社製、商品名)、レジフローLV、レジフローP67(以上、ESTRONCHEMICAL社製、商品名)、モダフローIII(モンサント社製、商品名)等が好適に用いられる。
【0069】
上記流動性調整剤としては、疎水性シリカ、親水性シリカや酸化アルミニウム等が適用できる。
【0070】
本発明の粉体塗料組成物の製造方法としては、特に限定されず、公知の方法を採用できる。例えば、水酸基含有フッ素樹脂(A)、ポリエステル樹脂(B)、ブロック化ポリイソシアネート(C)、アクリル系微粒子(D)、着色顔料(E)、および必要に応じて、体質顔料及びその他の成分を、ミキサー、ブレンダー等でドライブレンドした後、加熱溶融混練し、冷却、粗粉砕、微粉砕、濾過することにより製造することができる。
【0071】
また、例えば、水酸基含有フッ素樹脂(A)、ポリエステル樹脂(B)、ブロック化ポリイソシアネート(C)、着色顔料(E)、および必要に応じて、体質顔料及びその他の成分を、ミキサー、ブレンダー等でドライブレンドした後、加熱溶融混練し、冷却後、アクリル系微粒子(D)をドライブレンドし、粗粉砕、微粉砕、濾過することにより製造してもよい。
【0072】
塗膜形成方法について
本発明の粉体塗料組成物は、従来から使用されている基材に塗装することができる。該基材としては、例えば、亜鉛、鉄、アルミニウム、マグネシウム、鋼およびこれらの合金、亜鉛めっき鋼板等の金属基材、これらの金属表面に化成処理被膜が形成されたもの、これらの金属表面を陽極酸化処理したもの、これらの金属基材に必要に応じてプライマー塗装や電着塗装等を施した塗装金属基材等が挙げられる。上記化成処理被膜を形成するために用いる化成処理液としては、例えば、りん酸塩処理液、ジルコニウム処理液及びクロメート処理液等が挙げられる。
【0073】
本発明の粉体塗料組成物の塗装は、静電粉体塗装方法、具体的には、コロナ帯電式、摩擦帯電式等によって行うことができ、乾燥膜厚で20〜150μm、好ましくは乾燥膜厚で30〜80μmの範囲で塗装することができる。本発明の粉体塗料組成物の焼き付けは、150〜250℃で10分間〜60分間、好ましくは170〜230℃で10〜30分間の条件で行うことができる。本発明の粉体塗料組成物を塗装し焼き付けることにより、当該粉体塗料組成物が硬化してなる塗膜を得ることができる。
【実施例】
【0074】
以下、製造例、参考例、実施例及び比較例により、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。各例中の「部」は質量部、「%」は質量%を示す。
【0075】
(製造例1) アクリル微粒子No.1の製造例
以下の工程1〜工程2によって、アクリル微粒子No.1を得た。
【0076】
工程1:粉砕前のポリアクリロニトリル系樹脂の合成
脱イオン水778部に、ポリビニルアルコール(クラレ製PVA217)10部、硫酸ナトリウム10部、硫酸銅・5水和物1部を溶解した水溶液をガラス製反応槽に仕込む。次いで単量体として、アクリロニトリルを160部、メタアクリル酸メチルを40部、触媒として2,2’―アゾビス(2−メチルバレロニトリル)2部を溶解したものを反応槽に添加し、攪拌しながら液温度を50℃に上昇させ5時間温度保持させることでポリアクリロニトリル系樹脂の水分散体を得た。その後、ポリアクリロニトリル系樹脂の水分散体を固液分離し、70℃の熱風乾燥機で乾燥し、ポリアクリロニトリル系樹脂を得た。
【0077】
工程2:粉砕による樹脂のアクリル系微粒子の製造
工程1で得られたポリアクリロニトリル系樹脂を竪型ミル(石川島播磨重工業製、SH−75型)で粉砕し、体積平均粒子径24μmのアクリル微粒子No.1を得た。
【0078】
(製造例2) アクリル微粒子No.2の製造例
以下の工程1〜工程2によって、アクリル微粒子No.2を得た。
【0079】
工程1:粉砕前のポリメタクリル酸メチル系樹脂の合成
脱イオン水831部にポリビニルアルコール(クラレ製、PVA217)7部、硫酸ナトリウム10部、硫酸銅・5水和物1部を溶解した水溶液をガラス製反応槽に仕込む。次いで単量体として、メタクリル酸メチルを135部、エチレングリコールジメタクリレートを15部、触媒として2,2’―アゾビス(2−メチルバレロニトリル)1部を溶解したものを反応槽に添加し、攪拌しながら液温度を50℃に上昇させ5時間温度保持させることで、ポリメタクリル酸メチル系樹脂の水分散体を得た。その後、ポリメタクリル酸メチル系樹脂を70℃の熱風乾燥機で乾燥し、ポリメタクリル酸メチル系樹脂を得た。
【0080】
工程2:粉砕による樹脂のアクリル系微粒子の製造
工程1で得られたポリメタクリル酸メチル系樹脂を竪型ミル(石川島播磨重工業製、SH−75型)で粉砕し、体積平均粒子径18μmのアクリル微粒子No.2を得た。
【0081】
参考例、実施例及び比較例
(参考例1)粉体塗料組成物No.1の製造
ルミフロン710(注1)41部(固形分)、ユピカコートGV−560(注2)を41部(固形分)、ベスタゴンB1530(注5)を18部(固形分)、タフチックAR−650M(注9)を10部(固形分)、Ti−PureR960(注16)35部、ポリフローS(注25)0.8部及びベンゾイン0.6部を、ハイスピードミキサー(深江工業株式会社製、商品名、容量2リットル)に投入し、アジテーター500rpm、チョッパー4000rpmの条件で1分間攪拌して均一に混合した。
【0082】
次に、押し出し混練機(ブスコニーダーPR46、Buss AG社製、商品名)を用いて上記混合物を120℃で溶融混練し、金属製バットに排出した。50℃以下に冷却後ハンマー式衝撃粉砕機で微粉砕し、150メッシュの金網で分級することにより、平均粒子径40μmの粉体塗料組成物No.1を作成した。
【0083】
(参考例2、実施例1〜20)粉体塗料組成物No.2〜No.22の製造
表1及び表2の配合内容とする以外は、参考例1と同様の操作にて、粉体塗料組成物No.2〜No.22を作成した。
【0084】
【表1】
【0085】
【表2】
【0086】
比較例1〜14 粉体塗料組成物No.23〜No.36の製造
表3の配合内容とする以外は、参考例1と同様の操作にて、粉体塗料組成物No.23〜No.36を作成した。
【0087】
【表3】
【0088】
(注1)ルミフロン710F:旭硝子社製、商品名、フルオロオレフィン類とビニルエーテル類の共重合体である水酸基含有フッ素樹脂、水酸基価46mgKOH/g
(注2)ユピカコートGV−560:日本ユピカ社製、商品名、ポリエステル樹脂、酸価5mgKOH/g、水酸基価50mgKOH/g
(注3)ファインデックA−239−X:DIC社製、商品名、ポリエステル樹脂、酸価14mgKOH/g、水酸基価22mgKOH/g
(注4)ポリエステル樹脂A:自社製、酸価20mgKOH/g、水酸基価50mgKOH/g
(注5)ベスタゴンB1530:デグサ社製、商品名、ε−カプロラクタムでブロック化されたイソホロンジイソシアネート
(注6)JER 1001:三菱化学製 ビスフェノールA型 エポキシ当量450〜500、軟化点64℃
JER 1004:三菱化学製 ビスフェノールA型 エポキシ当量875〜975、軟化点97℃
(注7)ガンツパールGB−22S:アイカ工業株式会社製、商品名、体積平均粒子径22μm、アクリル系架橋樹脂粒子
(注8)テクポリマーSSX−127:積水化成品工業株式会社製、商品名、体積平均粒子径27μm、ポリメタクリル酸メチル系架橋樹脂粒子
(注9)テクポリマーMBX−30:積水化成品工業株式会社製、商品名、体積平均粒子径30μm、ポリメタクリル酸メチル系架橋樹脂粒子
(注10)テクポリマーMBX−40:積水化成品工業株式会社製、商品名、体積平均粒子径40μm、ポリメタクリル酸メチル系架橋樹脂粒子
(注11)タフチックAM:東洋紡績株式会社製、商品名、体積平均粒子径10μm、ポリアクリルニトリル樹脂粒子
(注12)ガンツパール GM10K:アイカ工業社製、商品名、体積平均粒子径10μm、ポリポリメタクリル酸メチル樹脂粒子
(注13)タフチックAR650ML:東洋紡績株式会社製、商品名、平均粒径80μm、ポリメタクリル酸メチル樹脂粒子
(注14)タフチックAR650L:東洋紡績株式会社製、商品名、平均粒径100μm、ポリメタクリル酸メチル樹脂粒子
(注15)タフチックFH−S005:東洋紡績株式会社製、商品名、体積平均粒子径 5μm
(注16)Ti−PureR960:DuPont株式会社製、商品名、チタン白
(注17)タイぺークCR−97:石原産業株式会社製、商品名、チタン白
(注18)バリファインBF−20:堺化学工業社製、商品名、硫酸バリウム、平均粒子径0.03μm
(注19)沈降性硫酸バリウムTS−1:竹原化学工業社製、商品名、体積平均粒子径0.6μm
(注20)ポリフローS:共栄社化学社製、商品名、表面調整剤
【0089】
試験板の作成
冷延鋼板(70mm×150mm×0.8mm)にジルコニウム系化成処理液を施して化成処理皮膜を形成した。次いで、該化成処理皮膜上に、各粉体塗料組成物を、静電塗装機PG−1(旭サナック社製、商品名)を使用して乾燥膜厚が40μmになるように静電粉体塗装した。次いで、被塗物表面温度200℃で保持時間20分間の条件で加熱乾燥を行って各試験板を得た。
【0090】
塗膜性能試験
上記試験板を用い、後記の試験条件に従って塗膜性能試験に供した。結果を表1〜3に併せて示す。
【0091】
(注21)仕上り性:
塗膜の仕上り性を下記基準によって評価した:
◎は、ユズ肌、ツヤムラ、ハジキ、ブツ、ヘコミのいずれもなく塗面状態が良好である
○は、ユズ肌、ツヤムラ、ハジキ、ブツ、ヘコミのいずれかが少し認められるが、実用上問題なし。
【0092】
△は、ユズ肌、ツヤムラ、ハジキ、ブツ、ヘコミのいずれかがみられる
×は、ユズ肌、ツヤムラ、ハジキ、ブツ、ヘコミのいずれかが著しい。
【0093】
(注22)塗膜硬度(鉛筆硬度):
試験板の塗膜硬度について、JIS K 5600−5−4(1999)に規定する鉛筆引っかき試験を行い、塗膜の破れによる評価を行った:
◎は、塗膜が破れる鉛筆硬度が2Hである
○は、塗膜が破れる鉛筆硬度がHである
△は、塗膜が破れる鉛筆硬度がFである
×は、塗膜が破れる鉛筆硬度がB以下である。
【0094】
(注23)耐候性:
カーボンアーク灯式促進耐候性試験機サンシャインウェザオメーター(JIS K 5600−7−7に準拠)を使用して暴露試験を行い、暴露試験前の塗膜光沢に対する光沢保持率が80%となる時間により、塗膜の耐候性を評価した:
◎は、光沢保持率が80%を下回る時間が5,000時間以上
○は、光沢保持率が80%を下回る時間が3,500時間以上、かつ5,000時間未満
△は、光沢保持率が80%を下回る時間2,000時間以上、かつ3,500時間未満、
×は、光沢保持率が80%を下回る時間2,000時間未満。
【0095】
(注24)密着性:
上記試験板を用い、JIS K 5600−6−2(1999)に準じて、40℃の温水に浸漬して240時間後に引き上げた。次いで、JIS K 5600−5−6(1999)碁盤目−テープ法に準じて、塗装板の塗膜面に素地に達するようにナイフを使用して約2mmの間隔で縦、横それぞれ平行に11本の切目を入れてゴバン目を形成し、その表面にセロハン(登録商標)粘着テープを貼着し、テープを急激に剥離した後のゴバン目塗面を下記基準にて評価した:
◎は、塗膜の剥離が全く認められない
○は、ナイフ傷の角の塗膜の一部にわずかに剥離が認められる
△は、100個のゴバン目のうち全てが剥離したものが1〜20個である
×は、100個のゴバン目のうち全てが剥離したものが21個以上である。
【0096】
(注25)60度鏡面光沢度:
試験板の光沢の程度を、JIS K 5600−4−7(1999)の60度鏡面光沢度に従い、入射角が60度のときの反射率を測定して、鏡面光沢度の基準面の光沢度を100としたときの百分率で表した:
◎は、60度鏡面光沢度が1以上で、かつ30以下である
○は、60度鏡面光沢度が30を超えて、かつ50以下である
△は、60度鏡面光沢度が50を超えて、かつ70以下である
×は、60度鏡面光沢度が70を超える。
【0097】
尚、本発明の属する技術分野においては、仕上がり性、塗膜硬度、耐候性、密着性及び光沢度が全て優れた艶消し塗膜が得られることが好ましい。従って、上記仕上がり性、塗膜硬度、耐候性、密着性及び光沢度が全て◎又は○評価であることが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0098】
仕上り性、塗膜硬度、耐候性及び密着性に優れ、かつ艶消し塗膜を有する塗装板を提供できる。
【要約】
【課題】
仕上り性、塗膜硬度、耐候性及び基材への密着性に優れた艶消し塗膜を形成できる粉体塗料組成物を提供すること。
【解決手段】
水酸基含有フッ素樹脂(A)、酸価10mgKOH/g以下かつ水酸基価10〜100mgKOH/gのポリエステル樹脂(B)、及びブロック化ポリイソシアネート(C)を含むバインダ成分、体積平均粒子径21〜45μmのアクリル系微粒子(D)並びに着色顔料(E)を含有する粉体塗料組成物であって、該バインダ成分の固形分合計100質量部に対して、成分(A)を20〜55質量部、成分(B)を20〜55質量部、成分(C)を10〜40質量部、アクリル系微粒子(D)を1〜40質量部、着色顔料(E)を0.5〜100質量部含有することを特徴とする粉体塗料組成物。
【選択図】 なし