(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6298209
(24)【登録日】2018年3月2日
(45)【発行日】2018年3月20日
(54)【発明の名称】収容ボックスの施錠装置
(51)【国際特許分類】
E05B 65/02 20060101AFI20180312BHJP
E05C 1/16 20060101ALI20180312BHJP
A47G 29/12 20060101ALI20180312BHJP
【FI】
E05B65/02 B
E05C1/16
A47G29/12
【請求項の数】9
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2017-217713(P2017-217713)
(22)【出願日】2017年11月10日
【審査請求日】2017年11月15日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000152169
【氏名又は名称】株式会社栃木屋
(73)【特許権者】
【識別番号】517218549
【氏名又は名称】株式会社ナスタ
(74)【代理人】
【識別番号】100066267
【弁理士】
【氏名又は名称】白浜 吉治
(74)【代理人】
【識別番号】100134072
【弁理士】
【氏名又は名称】白浜 秀二
(72)【発明者】
【氏名】小松 悟
(72)【発明者】
【氏名】岡田 康浩
【審査官】
小澤 尚由
(56)【参考文献】
【文献】
登録実用新案第3040325(JP,U)
【文献】
特開2005−213770(JP,A)
【文献】
特許第3929059(JP,B2)
【文献】
特開2000−199360(JP,A)
【文献】
特開2006−217867(JP,A)
【文献】
国際公開第2016/076726(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 65/02
A47G 29/12
E05C 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向、前後方向及び横断方向を有する、扉に取り付けられた収容ボックスの施錠装置において、
前面壁部と前記横断方向において互いに対向する第1及び第2側壁部とを有するケースと、前記ケース内に収容された、前記第1側壁部から前記収容ボックスの筐体に位置するラッチ受け部に進退出可能なラッチを有するラッチ部材と、前記第1側壁部側へばね付勢された前記ラッチ部材を前記第2側壁部側へ移動可能なスライド部材と、前記スライド部材の移動を規制するための規制ロック部材と、前記規制ロック部材による規制を解除するための錠本体とを有し、
前記スライド部材が前記ケースの前記前面壁部から突出して前記横断方向へスライド移動可能な操作レバーを有し、
前記ケースは、前記横断方向において離間対向して位置する一対の分離壁部を介して上方収容スペースと下方収容スペースとに区分された収容スペースを有し、
前記上方収容スペースには前記規制ロック部材が収容され、
前記下方収容スペースには、前記スライド部材と前記スライド部材の後方に位置する前記ラッチ部材とが収容されており、
前記規制ロック部材は、後方壁部から後方へ突出する規制レバーと、底壁部から下方へ延びている前記スライド部材の移動を規制するための閂部とを有し、
前記閂部が前記分離壁部間に位置する離間部分と前記上下方向において対向して位置することを特徴とする施錠装置。
【請求項2】
前記スライド部材は、前記ラッチ部材に当接される、前記横断方向へ延びた一対のガイド壁部と、前記ガイド壁部間において前記上下方向へ延びる縦断部分と、前記縦断部分を貫通する突子受孔とをさらに有し、前記規制ロック部材の前記閂部が、前記突子受孔に前記離間部分を介して挿入されることによって前記スライド部材の移動が規制される請求項1に記載の施錠装置。
【請求項3】
前記錠本体は、キーが挿通される鍵孔とフランジ部とを有する前面部と、前記前面部から後方へ延びる円筒状部と、前記円筒状部から後方へ延びる、前記キーによって回転操作される回転体と、前記回転体に取り付けられた係止板とを有し、前記キーを回転操作して前記係止板を前記規制ロック部材の被係止部分に係止させて前記規制ロック部材を上方へ移動させることによって、前記閂部が前記スライド部材の前記突子受孔から退出して前記スライド部材の移動規制が解除される請求項2に記載の施錠装置。
【請求項4】
前記スライド部材の前記ガイド壁部の前記上下方向の寸法が、前記ガイド壁部に当接される前記ラッチ部材の当接面の前記上下方向の寸法よりも小さい請求項2又は3に記載の施錠装置。
【請求項5】
前記分離壁部の下面には、前記横断方向において間隔を空けて配置された複数の突起が位置する請求項1〜4のいずれかに記載の施錠装置。
【請求項6】
前記ケースの後面側に取り付けられる蓋体をさらに有し、前記蓋体は上方開口と下方開口とを有し、前記上方開口から前記規制ロック部材の前記規制レバーが後方へ延出し、前記下方開口から前記ラッチ部材の後面から延びる後方突起が後方へ延出している請求項1〜5のいずれかに記載の施錠装置。
【請求項7】
前記規制ロック部材の前記後方壁部から上方へ延びる突出部分の係合突起と前記蓋体の前記上方開口の上方に位置する係合凹部とから構成された係合手段を有する請求項6に記載の施錠装置。
【請求項8】
前記規制ロック部材は、前記前後方向において前記ケースの前記前面壁部と対向して位置する前面部分を有し、前記前面部分に位置する施錠・解錠を知らせるための表示部が前記ケースの前記前面壁部に位置する窓孔から露出される請求項1〜6のいずれかに記載の施錠装置。
【請求項9】
前記前面壁部から前方へ突出する指当て部をさらに有し、前記操作レバーの前記第1側壁部側の側面と前記指当て部の前記第2側壁部側の側面とが凹面状である請求項1〜8のいずれかに記載の施錠装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、収容ボックスの開閉可能な扉を施錠するための施錠装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、収容ボックスの開閉可能な扉を施錠するための施錠装置は公知である。特許文献1には、収容ボックス、例えば、戸建て住宅の宅配ボックスやマンション等の集合ポスト・ロッカー等に取り付けられる施錠装置が開示されている。特許文献1に係る施錠装置は、収容ボックスの扉に取り付けられる電気錠であって、前面に位置する0〜9までの数字キーと、入力キーと、設定キーとを備えてなる錠を操作する回転式のつまみを有する。
【特許文献1】特開2008−150880号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1に開示された施錠装置においては、住人の不在時において、宅配業者や郵便配達員等の配達人が、収容ボックスに荷物を収容した後に、扉を閉じて回転つまみを操作して「開」から「閉」に回して施錠し、設定キーを押して4桁の暗証番号を数字キーで設定する。その後、入力キーを押すことによって収容ボックスを施錠することができる。荷物が収容された後、帰宅した住人が、入力キーを押して、暗証番号4桁の数字を押した後に、もう一度入力キーを押すことによって解錠され、回転つまみを操作することによって、扉を開けることができる。このように、鍵による施錠のみならず、暗証番号を使用したロック機構を備えることによって、収容ボックス内に安全に荷物を一時収容することができる。なお、暗証番号は、防犯上の観点から、施錠操作ごとに又は一定期間ごとに変更することが好ましい。
【0004】
かかる施錠装置の施錠から解錠までの一連の操作において、解錠操作をする住人に施錠操作をした宅配業者等が設定した暗証番号をメモ用紙等を使用して知らせる必要があり手間である。また、施錠装置は電気錠であって、電源を要し、かつ、ケース内に演算処理部やキーボード等を構成する複数の電気部品を配置する必要があることから、内部構造が複雑であって製造コストが比較的に高くなる。
【0005】
本発明は、従来の収容ボックスの施錠装置の改良であって、簡易な構成によって、収容ボックスの扉を施錠することのできる施錠装置の提供に関する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために本発明は、上下方向、前後方向及び横断方向を有する、扉に取り付けられた収容ボックスの施錠装置に関する。
【0007】
本発明に係る収容ボックスの施錠装置は、前面壁部と前記横断方向において互いに対向する第1及び第2側壁部とを有するケースと、前記ケース内に収容された、前記第1側壁部から前記収容ボックスの筐体に位置するラッチ受け部に進退出可能なラッチを有するラッチ部材と、前記第1側壁部側へばね付勢された前記ラッチ部材を前記第2側壁部側へ移動可能なスライド部材と、前記スライド部材の移動を規制するための規制ロック部材と、前記規制ロック部材による規制を解除するための錠本体とを有し、前記スライド部材が前記装置本体の前面壁部から突出して前記横断方向へスライド移動可能な操作レバーを有
し、前記ケースは、前記横断方向において離間対向して位置する一対の分離壁部を介して上方収容スペースと下方収容スペースとに区分された収容スペースを有し、前記上方収容スペースには前記規制ロック部材が収容され、前記下方収容スペースには、前記スライド部材と前記スライド部材の後方に位置する前記ラッチ部材とが収容されており、前記規制ロック部材は、後方壁部から後方へ突出する規制レバーと、底壁部から下方へ延びている前記スライド部材の移動を規制するための閂部とを有し、前記閂部が前記分離壁部間に位置する離間部分と前記上下方向において対向して位置することを特徴とする。
【0008】
本発明には、次のような好ましい実施態様がある。
(
1)前記スライド部材は、前記ラッチ部材に当接される、前記横断方向へ延びた一対のガイド壁部と、前記ガイド壁部間において前記上下方向へ延びる縦断部分と、前記縦断部分を貫通する突子受孔とをさらに有し、前記規制ロック部材の前記閂部が、前記突子受孔に前記離間部分を介して挿入されることによって前記スライド部材の移動が規制される。
(
2)前記錠本体は、キーが挿通される鍵孔とフランジ部とを有する前面部と、前記前面部から後方へ延びる円筒状部と、前記円筒状部から後方へ延びる、前記キーによって回転操作される回転体と、前記回転体に取り付けられた係止板とを有し、前記キーを回転操作して前記係止板を前記規制ロック部材の被係止部分に係止させて前記規制ロック部材を上方へ移動させることによって、前記閂部が前記スライド部材の前記突子受孔から退出して前記スライド部材の移動規制が解除される。
(
3)前記スライド部材の前記ガイド壁部の前記上下方向の寸法が、前記ガイド壁部に当接される前記ラッチ部材の当接面の前記上下方向の寸法よりも小さい。
(
4)前記分離壁部の下面には、前記横断方向において間隔を空けて配置された複数の突起が位置する。
(
5)前記ケースの後面側に取り付けられる蓋体をさらに有し、前記蓋体は上方開口と下方開口とを有し、前記上方開口から前記規制ロック部材の前記規制レバーが後方へ延出し、前記下方開口から前記ラッチ部材の後面から延びる後方突起が後方へ延出している。
(
6)前記規制ロック部材の後方壁部から上方へ延びる突出部分の係合突起と前記蓋体の前記上方開口の上方に位置する係合凹部とから構成された係合手段を有する。
(
7)前記規制ロック部材は、前記前後方向において前記前面壁部と対向して位置する前面部分を有し、前記前面部分に位置する施錠・解錠を知らせるための表示部が前記ケースの前記前面壁部に位置する窓孔から露出される。
(
8)前記前面壁部から前方へ突出する指当て部をさらに有し、前記操作レバーの前記第1側壁部側の側面と前記指当て部の前記第2側壁部側の側面とが凹面状である。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る収容ボックスの施錠装置は、暗証番号等を介して荷物の収容・取出しをする必要がないので、スムーズに収容・取出し操作を行うことができる。また、装置本体内に収容された部品点数が比較的に少なく簡易に構成されていることから製造コストを抑えることができ、かつ、電源を要するものではないので、戸建住宅への後付けによる設置が容易である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
以下の図面は、本発明の実施態様のほかに、選択的に実施することのできる構成および組み合わせて実施することのできる構成を含んでいる。
【
図1】施錠装置の使用状態を示す、収容ボックスを正面から視た斜視図。
【
図2】収容ボックスの扉を開いた状態における、扉を背面から視た斜視図。
【
図3】収容ボックスの筐体の一部を仮想線で示した、施錠装置の斜視図。
【
図4】施錠装置を背面側から視た、装置本体から蓋体を取り外した状態における斜視図。
【
図7】(a)ケースの内部機構を正面側から視た図。(b)ケースの内部機構を背面側から視た斜視図。
【
図8】(a)扉の施錠状態における、
図3のVIII(a)−VIII(a)線に沿う断面図。(b)
図8(a)のVIII(b)−VIII(b)線に沿う断面図。
【
図9】(a)扉の解錠状態における、
図8(a)と同様の断面図。(b)
図9(a)のIX(b)−IX(b)線に沿う断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明にかかる下記の各実施の形態は、発明の不可欠な構成ばかりではなく、選択的に採用できる構成及び好ましい構成を含む。
【0012】
図1〜
図4を参照すると、収容ボックス1は、筐体2と、ヒンジ部4を介して筐体2に開閉自在に取り付けられた扉3とを有し、施錠装置10は、扉3の正面視において後方へ凹となる配置凹部5に配置されている。施錠装置10は、前後方向Xと、上下方向Yと、それらに交差する横断方向Zとを有し、装置本体11と、装置本体11の背面にビス13を介して取り付けられる蓋体12とを含む。なお、施錠装置10の前後方向X、上下方向Y及び横断方向Zは、収容ボックス1の前後方向、上下方向及び横断方向にそれぞれ対応する。
【0013】
本発明に係る収容ボックス1は、戸建て住宅の宅配ボックスやマンション等の集合ポスト等として好適に使用される。収容ボックス1の大きさ及び形状は、大小様々な荷物を収容できる限りにおいて図示した態様に限定されるものではない。また、施錠装置10についても、後記の本願発明の効果を奏する限りにおいて、図示例のように断面矩形状ではなく、その外形が円形、楕円形、扁平形等の各種公知の形状であってもよい。施錠装置10の操作者は、住人のほかに、住人が不在時に収容ボックス1に荷物を入れる郵便・宅配業者等を含む。
【0014】
装置本体11は、前面壁部21、上壁部22、下壁部23及び第1及び第2側壁部24,25から外形が画成されたボックス形状を有する。前面壁部21は、上下壁部22,23からさら上下方向Yの外側へ延出し、かつ、第1及び第2側壁部24,25からさらに横断方向Zの外側に延出する外周フランジ部21aを有する。装置本体11は、収容ボックス1の筐体2の扉枠に位置する凹状のラッチ受け部2aに進入・退出可能なラッチ15と、ラッチ15を装置本体11の第1側壁部24から進退出可能に操作するための操作レバー16と、操作レバー16と横断方向Zにおいて並ぶ指当て部17とをさらに有する。操作レバー16と指当て部17とは、装置本体11の前面壁部21から前方へ突出している。
【0015】
施錠装置10のラッチ15は、横断方向Zへスライド移動可能な操作レバー16と連動しており、施錠状態において、操作レバー16の移動は錠本体30によって規制されている。したがって、扉3の施錠状態(規制ロック部材60によるスライド部材50の移動が規制された状態)においては、キー33を所持していない第三者が操作レバー16をスライド操作しようとしても操作レバー16を移動させることはできない。キー33を所持した操作者(主として住人)が、鍵孔30aにキー33を挿入して回転操作することによって、操作レバー16の移動規制が解除(解錠)される。解錠後、操作者が操作レバー16を横断方向Zの内方へ向かう方向P1へ、すなわち、指当て部17へ接近する方向へスライドさせることによって、ラッチ15がラッチ受け部2aから退出して扉を開放することができる。
【0016】
図2及び
図4を参照すると、施錠装置10は、錠本体30以外の構成部品がプラスチック製であって、上下壁部22,23には複数の弾性係合爪18,19を有する。施錠装置10を扉3に取り付ける際には、蓋体12から後方へ延出する後方突起49をスライド操作して、ばね付勢に抗してラッチ15を装置本体11の内部に移動させた状態で施錠装置10を配置凹部5の取付孔の開口縁部に前面壁部21の外周フランジ部21aを前側から押し当てるように嵌挿させる。それによって、弾性係合爪18,19が弾性変形するとともにその弾性反撥力によって取付孔から後方へ突出する矩形状の取付枠5aに係止され、施錠装置10が扉3に安定的に取り付けられる。このように、施錠装置10を扉3の取付枠5aに前面側からワンタッチで取り付けることができるので、ドライバー等の固定具を使用する場合に比べて、取付操作が簡易である。
【0017】
施錠装置10は、扉3の正面視において後方へ凹となる配置凹部5に配置されており、前面壁部21から前方へ突出する操作レバー16及び指当て部17が、扉3の前面から前方へ突出していない。したがって、操作レバー16及び/又は指当て部17が収容ボックス1の前の通路を歩行する歩行者に当たって邪魔になることはなく、また、それらが扉からさらに前方へ突出する場合に比べて見た目にも好ましい。
【0018】
図3−5を参照すると、装置本体11は、前面に表示窓を有するケース20と、ケース20内にそれぞれ収容された、錠本体30と、ラッチ15を有するラッチ部材40と、ケース20の前面から前方へ突出する操作レバー16を有するスライド部材50と、蓋体12の後面から後方へ突出する規制レバーを有する規制ロック部材60とを含む。
【0019】
ケース20は、後面側が開口した装置本体11の外形をなすボックス状であって、前面壁部21、上壁部22、下壁部23及び第1及び第2側壁部24,25とから構成された周壁と、周壁に囲まされた収容スペースSを有する。前面壁部21の上方には、錠本体30が嵌挿される透孔26が位置し、透孔26の斜め下方には、施錠・解錠を外部に知らせるインジケータとして機能する表示部80が露出される窓孔27が位置する。前面壁部21の下方には、スライド部材50の操作レバー16が挿通され、かつ、操作レバー16が安定して横断方向Zへ移動するためのガイド溝として機能するレバー挿通孔28が位置する。
【0020】
ケースの上壁部22及び下壁部23には、弾性係合爪18,19が配置されている。具体的には、ケース20の上壁部22に横断方向Zへ互いに間隔を空けて配置された一対の弾性係合爪18が配置され、下壁部23には横断方向Zの中央部分に1つの弾性係合爪19が配置されている(
図8(a)参照)。第1側壁部24の下方には、ラッチ部材40のラッチ15が挿通されるラッチ挿通孔29が位置する。上壁部22の後面の上方部分と第1及び第2側壁部24,25の後面の上方部分とが交差する隅部には、蓋体12をケース20に取り付けるためのビス13が挿入されるビス孔83が位置する。また、下壁部23は上壁部22並びに第1及び第2側壁部24,25の後面よりも後方へ延出しており、下壁部23の後方延出部には蓋体12の下端から突出する複数の係合爪81が係合される係合凹部82が位置している。
【0021】
ケース20は、その内部に第1及び第2側壁部24,25間において、横断方向Zへ互いに離間対向する分離壁部84a,84bをさらに有し、収容スペースSは、説明の便宜上、分離壁部84a,84bの上方に位置する上方収容スペースS1と、分離壁部84a,84bの下方に位置する下方収容スペースS2とに区分される。上方収容スペースS1と下方収容スペースS2とは、分離壁部84a,84b間に位置する離間部分85を介して互いに連通している。
図8(a)を参照すると、分離壁部84a,84bの下面には、下方へ突出する、横断方向Zへ間隔を空けて配置された複数の突起88が位置する。
【0022】
図5,6を参照すると、錠本体30は、鍵孔30aとフランジ部とを有する前面部31と、前面部31から後方へ延びる円筒状部32と、円筒状部32から後方へ延びる、キー33によって回転操作される回転体34とを有する。回転体34の一部は面取りされて平坦状になっており、円筒状部32と回転体34の外周面とには、螺旋溝が形成されている。前面部31のフランジをケース20の前面壁部21の透孔26の開口縁部に当接させた状態において、六角ナット35を円筒状部32の螺旋溝に螺合して、前面壁部21の透孔26から後方へ延びる後方延出部分26aの後端に接触するまで前方へ移動させて締め付けることによって、錠本体30がケース20に取り付けられる。
【0023】
錠本体30の回転体34には、それを貫通するワッシャ(図示せず)とナット36とを介して係止板37が取り付けられている。係止板37は、回転体34の扁平状の外形に沿う透孔37bが位置する基端部と、基端部から延出する係止端37aとを有する。係止板37の透孔の平坦部分と回転体34の平坦部分とが互いに面状に接触することによって、係止板37は回転体34とともに安定して旋回される。
【0024】
図5−7を参照すると、ラッチ部材40は、前面部41、上下面部42,43及び両面部44を有するベース部45と、前面部41から前方へ突出し、かつ、横断方向Zへ延びる横断部46とを有する。横断部46は、ケース20の第1側壁部24の側へ、ベース部45からさらに横断方向Zの外側へ延出するラッチ15と、ラッチ15の反対側に位置する、さらに前方へ突出した係止端部47とを有する。横断部46は、係止端部47側において開口して横断部46内を横断方向Zへ延びる、コイルばね86を収容するための有底のばね収容孔48をさらに有する。コイルばね86は、一方端がばね収容孔48の底に当接し、かつ、他方端がケース20の第2側壁部25の内面に当接することによって蓄勢状態でばね収容孔48に収容されており、ラッチ部材40をケース20の第1側壁部24側へ常時付勢している。ベース部45の後面の略中央部分には、後方へ延びる角柱状の後方突起49が位置している。
【0025】
図7(a)を参照すると、ラッチ部材40におけるベース部45の前面部41は、横断部46の上方に位置する第1当接面(当接面)41aと、横断部46の下方に位置する第2当接面(当接面)41bとを有する。第1当接面41aの幅寸法(上下方向Yにおける寸法)は、第2当接面42bの幅寸法よりも大きくなっている。
【0026】
スライド部材50は、前面壁部51と、前面壁部51の上下端から後方へ延びる一対のガイド壁部(上下側部分)52a,52bと、ガイド壁部52a,52bの対向面間において上下方向Yへ延びる縦断部分54とを有する。スライド部材50は、さらに、縦断部分54を貫通する突子受孔55と、前面壁部51から前方へ突出する操作レバー16とを有する。操作レバー16は、縦断部分54よりも僅かにケース20の第2側壁部25側に位置しており、
図3を参照すると、第2側壁部25側の側面(指当て面)16aが凹曲状を有している。
【0027】
図5,7(a),(b)を参照すると、ラッチ部材40とスライド部材50とは、ケース20内に収容された状態において、ケース20の下方収容スペースS2において前後方向Xへ対向して配置されている。具体的には、スライド部材50のガイド壁部52a,52bがそれぞれラッチ部材40の第1及び第2当接面41a,41bに当接されており、かつ、スライド部材50の縦断部分54の平坦状の当接面54aとラッチ部材40の横断部46の係止端部47とが横断方向Zにおいて互いに対向又は当接される。閉扉状態において、ラッチ部材40はコイルばね86の付勢によって第1側壁部24側へ移動し、ラッチ15がラッチ受け部2aに進入しているところ、操作者が操作レバー16を摘持して第2側壁部25側へ移動させることによって、縦断部分54の当接面54aがラッチ部材40の係止端部47に当接してそれを第2側壁部25側へ移動させて、ラッチ15がラッチ受け部2aから退出して開扉される。
【0028】
規制ロック部材60は、底壁部61と、底壁部61の側縁から上方へ延びる、第1側壁部24側に位置する第1サイド壁部62と第2側壁部25側に位置する第2サイド壁部63と、底壁部61の後端縁から上方へ延びる後方壁部64を有する。第1及び第2サイド壁部62,63は、後方壁部64側に位置する段差部分を有している。第2サイド壁部63は、底壁部61の前端縁から上方へ延びる、ケース20の前面壁部21と前後方向Xにおいて対向して位置する前面部分63aをさらに有し、前面部分63aには、施錠装置10の施錠・解錠を外部に知らせるためのインジケータとして機能する表示部80が位置する。
【0029】
表示部80は、施錠を知らせるための第1表示部80aと、第1表示部80aの下方に位置する、解錠を知らせるための第2表示部80bとを有する。第1表示部80aは、施錠時にケース20の前面壁部21の窓孔27から外部に露出される部分であって、例えば赤色が付されている。一方、第2表示部80bは解錠時に窓孔27から外部に露出される部分であって、第1表示部80aと異なる色、例えば、青色が付されている。第1及び第2表示部80a,80bは、施錠・解錠を外部に認識させるインジケータとして機能する限りにおいて、互いに相異する色が着色されていてもよいし、「開(OPEN)」・「閉(CLOSE)」等の標識文字、数字、模様等の識別要素が単独又は複数を組み合わせて使用されていてもよい。また、夜間でも容易に視認することができるように、蛍光塗料が塗布されていることが好ましい。
【0030】
規制ロック部材60は、第2側壁部25側において底壁部61から下方へ延びる円筒状の閂部67をさらに有する。規制ロック部材60の後方壁部64は、上端の中央部分から上方への延びる突出部分と、横断方向Zへ延び、かつ、後方へ突出する規制レバー68とを有する。規制ロック部材60は、第1サイド壁部62から横断方向Zの内方へ屈曲し、かつ、上下方向Yにおいて底壁部61と対向するように前後方向Xへ延びる被係止部分69をさらに有する。
【0031】
再び、
図2、4を参照すると、蓋体12は、ケース20(又は、装置本体11)のビス孔83とビス孔12aとが連通するようにケース20の背面側から宛がわれて、かつ、下端から下方へ延びる複数の係合爪81をケース20の後方延出部に位置する係合凹部82に係合させた状態でビス孔12a,83にビス13が挿通されて締め付けられることによって装置本体11に固定される。蓋体12が装置本体11に固定された状態において、規制ロック部材60の規制レバー68とラッチ部材40の後方突起49とは、それぞれ、蓋体12の上下方開口12b,12cから後方へ延出している。
【0032】
蓋体12は、上端縁部と上方開口12bとの間に位置する後方へ凹となる係合凹部12dを有する。係合凹部12dは、規制ロック部材60の後方壁部64において上方へ延びる突出部分の先端に位置する、後方へ突出した係合突起64aとともに係合手段89を構成する。すなわち、キー33による回転操作又は規制レバー68を引き上げることによって規制ロック部材60が上方へ移動してスライド部材50の移動規制が解除された状態において、規制ロック部材60は係合手段89を介して蓋体12に掛止される。
【0033】
図8(a)は、施錠装置10の施錠状態(ラッチ15がラッチ受け部2aに進入し、かつ、ロックされた状態)における、
図3のVIII(a)−VIII(a)線に沿う縦断面図であって、
図8(b)は、
図8(a)のVIII(b)−VIII(b)線に沿う横断面図である。一方、
図9(a)は、施錠装置10の解錠状態(ラッチ15がラッチ受け部2aから退出した状態)における、
図8(a)と同様の縦断面図、
図9(b)は、
図9(a)のIX(b)線に沿う横断面図である。
【0034】
図2、
図8(a),(b)を参照すると、住人の不在時に荷物を収容ボックス1に収容する宅配業者等の配達人が、荷物を収容して施錠装置10を施錠するときには、まず、収容ボックス1に荷物を収容した後に、規制ロック部材60が係合手段89によって蓋体12の内面に掛止された状態にあるので、扉2の背面側に手を伸ばして規制レバー68を把持したまま引き下げて規制ロック部材60を下方へ移動させる。それによって、底壁部61から下方へ延びる閂部67がスライド部材50の突子受孔55に挿入され、スライド部材50の移動が規制される。かかる状態においては、錠本体30の係止板37の係止端37aが規制ロック部材60の被係止部分69に当接される。
【0035】
次に、扉2を閉扉操作することによって、凸曲状の先端部を有するラッチ15が、扉枠の突出部2bに摺接される。それによって、コイルばね86が圧縮されて、ラッチ15は僅かに横断方向Zの内側へ後退しながら前方へ移動し、ラッチ受け部2aに進入して施錠される。施錠状態において、キー33を所持していない第三者が、操作レバー16を摘持してスライド操作しようとしても規制ロック部材60によって施錠されているので、操作レバー16が移動することはない。また、窓孔27には、施錠を知らせる第1表示部80aが露出されているので、操作者等は、施錠装置10が施錠状態であることを確認することができる。
【0036】
図9(a),(b)を参照すると、帰宅した住人が収容ボックス1を開扉するときには、前面壁部21に位置する鍵孔30aにキー33を挿入して係止板37が上方R1へ旋回するように回転操作し、規制ロック部材60を上方へ移動させることによって閂部67が突子受孔55から退出し、規制ロック(施錠)が解除される。規制ロック部材60は引き上げられた状態で蓋体12に係合手段89を介して掛止されるので、住人は、キー33から手を離した状態で操作レバー16を指当て部17に接近するようにスライド操作することによって、ラッチ15をラッチ受け部2aから退出させて扉3を開放することができる。住人が荷物を取り出した後、規制ロック部材60が上方に掛止された状態のまま扉を閉めることによって、配達人が施錠する前の状態に戻る。
【0037】
本実施形態に係る施錠装置10においては、電気錠等のように電源を必要としないので、戸建住宅の門扉や玄関口の近傍に後付けで設置することができる。また、電気部品を必要とせず、かつ、ケース20に収容される部材が主としてラッチ部材40、スライド部材50、規制ロック部材60から構成されていることから従来の収容ボックス用の施錠装置に比べて簡易な構成を有し、低コストで製造することができる。さらに、従来の電気錠等のように配達人がメモ用紙等によって暗証番号を残す必要がなく、住人がメモ用紙に従って暗証番号を入力する等の手間が不要であって、すばやく解錠することができる。なお、図示していないが、収容ボックス1の筐体2内に、配達人が住人の不在時に荷物を配達したことの証明を得るために配達伝票に押印する手段として、住人の印鑑を配置する配置台を設置してもよい。
【0038】
加えて、ラッチ15とスライド移動可能な操作レバー16とが別体の部材から形成されておらず、一体の部材から形成されていることによって、スライド操作によって確実にラッチ15をラッチ受け部2aから退出させることができる。さらに、操作レバー16と横断方向Zにおいて並ぶように前面壁部21から突出した指当て部17が位置することによって、例えば、人差し指で指当て部17を抑えながらそれに接近するように親指で操作レバー16をスライド移動させればよいので、片手でスムーズに操作を行うことができる。操作レバー16は、その一部をレバー挿通孔28の開口縁部をガイドとしてそれに摺接しながら移動してもよい。
【0039】
再び、
図7(a),(b)を参照すると、ラッチ部材40の当接面41a,41bに当接されるスライド部材50のガイド壁部52a,52bの幅寸法(上下方向Yの寸法)は、当接面41a,41bの幅寸法(上下方向Yの寸法)に比べて小さい。すなわち、ガイド壁部52a,52bは幅狭のリブ状であって面状に当接面41a,41bに当接されるものではないから、摺接するときに摩擦抵抗が小さくなって、比較的に小さな力でスライド操作を行うことができる。また、スライド部材50のガイド壁部52aが摺接されるケース20の分離壁部84a,84bの下面の前方側には、横断方向Zへ間隔を空けて位置する複数の突起88が設けられていることによって、スライド部材50が分離壁部84a,84bと摺接するときに摩擦抵抗が低減される。
【0040】
図3を参照すると、装置本体11の前面壁部21には、緊急的に施錠を解除するための破壊ポイント90が位置する。破壊ポイント90は、前面壁部21のレバー挿通孔28の第1側壁部24側の上方に位置しており、ケース20内部においてスライド部材50の突子受孔55に挿入された閂部67の基端部近傍を含む領域である。例えば、住人がキー33を喪失した場合において、非常の施錠装置10の開錠手段として、前面壁部21の破壊ポイント90をドリル等の工具を使用して穴を開けて破壊する。破壊ポイント90を破壊することによって、ケース20内の規制ロック部材60の閂部67が破壊されてスライド部材50の移動規制が解除され、扉を開放することができる。第三者に破壊ポイント90の位置を把握されないようにするために、前面壁部21には、しるし等を付さないことが好ましいが、一見してそれが破壊ポイント90であると認識されない限りにおいて、円形の溝を施したり、シールを貼付したりする等の住人のみが認識しうる方法でしるしを付すことによって、破壊操作を容易に行うことができる。
【0041】
また、スライド部材50の操作レバー16の第1側壁部24側の側面16aと前面壁部21の指当て部17の第2側壁部25側の側面17aとが凹面状を有している。操作レバー16の側面16aと指当て部17の側面17aとがかかる形状を有することによって、操作者は親指と人差指とを安定的に押し当てることができるので、スムーズに操作レバー16のスライド操作を行うことができる。
【0042】
施錠装置10を構成する部材には、特に明記されていない限りにおいて、本明細書に記載されている材料のほかに、この種の分野において通常用いられている公知の材料を制限なく用いることができる。また、本明細書において使用されている「第1」、「第2」等の用語は、同様の要素、位置等を単に区別するために用いられている。
【符号の説明】
【0043】
1 収容ボックス
2 筐体
2a ラッチ受け部
3 扉
10 施錠装置
11 装置本体
12 蓋体
12b 上方開口
12c 下方開口
12d 係合凹部
15 ラッチ
16 操作レバー
16a 操作レバーの側面
17 指当て部
17a 指当て部の側面
21 前面壁部
24 第1側壁部
25 第2側壁部
27 窓孔
30 錠本体
30a 鍵孔
31 前面部
32 円筒状部
34 回転体
37 係止板
37a 係止端
40 ラッチ部材
41a,41b ラッチ部材の当接面
50 スライド部材
52a,52b ガイド壁部
54 縦断部分
55 突子受孔
60 規制ロック部材
61 底壁部
64a 係合突起
67 閂部
68 規制レバー
69 被係止部分
80a 第1表示部(表示部)
80b 第2表示部(表示部)
83 ビス孔
84a,84b 分離壁部
85 離間部分
89 係合手段
S 収容スペース
S1 上方収容スペース
S2 下方収容スペース
X 前後方向
Y 上下方向
Z 横断方向
【要約】
【課題】簡易な構成によって、収容ボックスの扉を施錠することのできる施錠装置の提供。
【解決手段】収容ボックスの施錠装置10は、前面壁部21と横断方向Zにおいて互いに対向する第1及び第2側壁部24,25とを有するケース20と、ケース20内に収容された、第1側壁部24から収容ボックス10の筐体2に位置するラッチ受け部2aに進退出可能なラッチ15を有するラッチ部材40と、第1側壁部24側へばね付勢されたラッチ部材40を第2側壁部25側へ移動可能なスライド部材50と、スライド部材50の移動を規制するための規制ロック部材60と、規制ロック部材60による規制を解除するための錠本体30とを有する。スライド部材50がケース20の前面壁部21から突出して横断方向Zへスライド移動可能な操作レバー16を有する。
【選択図】
図3