【実施例】
【0030】
以下、本発明の実施形態を記載するが、実施例に特に限定されるものではない。実施例内において特に説明がない場合には、「%」は「質量%」を意味する。
【0031】
(実施例1)
ワキシータピオカ澱粉を水に懸濁して35質量%の澱粉スラリー液とした後、消石灰を用いてpH6.0に調整し、α−アミラーゼ(クライスターゼSD−KM、天野エンザイム社製)を原料の固形分に対して0.1質量%添加した。この澱粉スラリー液を、80℃に保温された加熱加圧蒸煮釜へ投入して反応を行った。反応の途中で、反応液の一部を95℃以上に加熱して失活し、25質量%の濃度に調整して70℃における粘度を測定し、粘度が20〜250mPa・sであることを確認して反応を終了した。反応液を0.2MPaにて酵素を失活して液化液を得た。酵素失活させた反応液の一部を25質量%の濃度に調整して70℃における粘度を測定したところ、49.8mPa・sであった。この液化液(固形分22質量%)を60℃に冷却後、シュウ酸を用いてpH4.5に調整し、グルコアミラーゼ(グルクザイムNL4.2、天野エンザイム社製)を原料の固形分に対して0.04質量%添加して、60℃で反応後、90℃以上で10分間保持し、酵素を失活させて糖化液を得た。得られた糖化液を、珪藻土によるろ過及びイオン交換樹脂による脱塩によって精製した後、25質量%まで濃縮し、噴霧乾燥により粉末化してDE値が26.0、30℃における30質量%水溶液の粘度が60.5mPa・sの澱粉分解物を得た。
【0032】
(実施例2〜9及び比較例1〜8)
実施例1における原料澱粉を表1に記載のものに変え、表1及び表2に記載した条件を用いて実施例1と同様の手順で澱粉分解物を調製し、表1および表2に記載される各DE値及び30℃における30質量%水溶液の粘度を有する各澱粉分解物を得た。
【0033】
(DE値測定)
実施例及び比較例のDE値をレインエイノン法(「澱粉糖関連工業分析法」、食品化学新聞社発行(平成3年11月1日発行))により測定した。
【0034】
(粘度測定)
(i)液化液
実施例及び比較例の液化液の粘度を、液化工程後の澱粉分解物の25質量%水溶液の70℃における粘度計(BM形 東機産業社製)により測定した。より具体的には、25質量%の液化液を70℃に調整し、60回転/分、ローター1または2を用いて30秒間測定した。
(ii)糖化液及び澱粉分解物
実施例及び比較例の糖化液及び澱粉分解物の粘度を、糖化液又は澱粉分解物の30質量%水溶液の30℃における粘度計(BM形 東機産業社製)により測定した。より具体的には、30質量%の糖化液又は澱粉分解を30℃に調整し、60回転/分、ローター1または2を用いて30秒間測定した。
【0035】
(濁度測定)
実施例及び比較例の澱粉分解物の30質量%水溶液を、30mlのガラス製のバイアル瓶に入れ、品温4℃で3日間保存した後、10cmの厚さのプラスティック材質のセルに移し、分光光度計(U−2900、日立ハイテクノロジーズ社製)を用いて、720nmの波長における吸光度を測定した。
【0036】
【表1】
【0037】
【表2】
【0038】
(官能評価)
実施例1〜9及び比較例1〜8で得られた澱粉分解物の10質量%水溶液について、よく訓練されたパネラー9名により官能評価を行い、官能評価項目は、先味としての「濃厚感」と後味としての「味切れ」に加えて、「甘味」そのものとした。なお、先味の「濃厚感」は、試料溶液を口に含んだ瞬間に感じるコクの強さを、後味の「味切れ」は、試料溶液を飲み込んだあとに濃厚感が喉に残らない度合を、「甘味」は、甘味の強さそのものを評価した。また、その評価基準は、
図1に示すとおり、パインデックス#100及びパインデックス#3の各水溶液を基準とする「5段階のスケール」における位置付け(但し、整数)をもって行い、その9名の平均値を評価結果とした。評価結果は、3.0以上で目標に合致するパインデックス#100に近い濃厚感、パインデックス#3に近い味切れ、およびパインデックス#100に近い甘味のものとし、3.0未満では各項目において目標に合致しないものとした。
【0039】
(老化耐性評価)
各澱粉分解物の30質量%水溶液を4℃で3日間保存した後の濁度が1.0以下の場合、老化耐性があるとした。
【0040】
(分子量5,000以上の糖組成物含有量)
分子量5,000以上の糖組成物含有量は、ゲルろ過によるHPLCより得られる分子量分布から求めた。HPLCの分析条件は以下であり、プルラン標準品、マルトトリオースおよびグルコースを用いて検出時間に対する分子量の検量線を作成し、この検量線より分子量5,000の検出時間を算出したのち、算出された検出時間より前に検出されるピークの面積%を分子量5,000以上の糖組成物含有量とした。
[カラム]:TSKgel G2500PWXL,G3000PWXL、
G6000PWXL(東ソー(株)製)
[カラム温度]:80℃、
[移動相]:蒸留水、
[流速]:0.5ml/min、
[検出器]:示差屈折率計、
[サンプル注入量]:1質量%水溶液100μL、
[検量線]:プルラン標準品(昭和電工(株)製)、マルトトリオースおよびグルコース
以上の各澱粉分解物の官能評価及び目視評価の結果並びに分析値を、以下の表3及び4に示す。
【0041】
【表3】
【0042】
【表4】
【0043】
表3の実施例の結果より、ワキシー種を原料とし、DE値が18を超え27以下、30℃における30質量%水溶液の粘度が50〜200mPa・sの範囲にある澱粉分解物は、老化耐性が高く、官能評価においては濃厚感及び味切れが良好であり、さらに甘味が低い結果となった。すなわち、上記のDE値及び粘度の範囲内にある本発明の澱粉分解物にあっては、飲食品の風味や味質に影響を与えることなく濃厚感と味切れがよくさらに高い老化耐性を有することがわかった。
【0044】
表4の比較例の結果からわかるように、30℃における30質量%水溶液の粘度が50mPa・s未満では、濃厚感が弱く(比較例1〜3)、250mPa・sを超える範囲では、DE値が高い場合であっても、味切れが悪かった(比較例7、8)。また、DE値が18以下の場合も味切れが悪かった(比較例4、8)。一方、DE値が27を超えると甘さを感じた(比較例3、6)。原料がタピオカの場合は濁度が大きく上がってしまい、老化耐性が非常に低いことがわかった(比較例2、5)。
【0045】
(食品例1:コーヒー飲料)
実施例4及び比較例1の各澱粉分解物と、対照としてパインデックス#100及びパインデックス#3を用いて、表5に示した処方でコーヒー飲料を調製した。具体的には、コーヒー豆を10倍量の85℃熱水で5分間抽出し、冷却後ろ過しコーヒー抽出液を調製した。このコーヒー抽出液に他の原料を加えて混合溶解した後、水を加えて全量補正した。60℃まで加熱した後、ホモジナイザーで5000rpm、5分間処理し、次いで200kgf/cm2の圧力にて均質化処理し、缶に充填後、125℃、20分間レトルト殺菌を行い、コーヒー飲料を調製した。
【0046】
【表5】
※1 ユニカフェ社製
※2 三菱化学フーズ社製(シュガーエステルP−1670、S−570)
【0047】
得られたコーヒー飲料について、訓練されたパネラー6名の官能評価により、先味としての「濃厚感」、後味としての「味切れ」について評価を行った。評価結果を表6に示す。
なお、以降の食品の評価は、前述した澱粉分解物の評価方法に準じて行っている。
【0048】
【表6】
【0049】
その結果、実施例4の澱粉分解物を使用したコーヒー飲料は、濃厚感がありながらも、後味の味切れが良かった。一方、比較例1の澱粉分解物を使用したコーヒー飲料は後味の味切れは良好であったが、濃厚感が弱かった。
【0050】
(食品例2:アイスクリーム)
実施例4及び比較例1の澱粉分解物、対照としてパインデックス#100及びパインデックス#3を用いて、表7に示した処方でアイスクリームを調製した。具体的には無塩バター、生クリーム、バニラフレーバー以外の原料を加えて撹拌しながら内容物の温度が60℃に達するまで加熱した後、無塩バターと生クリームを加えて85℃に達するまで加熱撹拌した。続いてホモミキサーで8000rpm、5分間処理した後、高圧ホモジナイザーで150kgf/cm2の圧力にて均質化処理した。これをさらに冷水を用いて5℃まで冷却した後、庫内温度5℃の冷蔵庫に12時間保存したものにバニラフレーバーを添加し、アイスクリームフリーザーを用いてフリージングした後、−4℃で取り出してカップに充填し、−30℃の急速冷凍庫中で1時間硬化させ、アイスクリームを調製した。
【0051】
【表7】
※3 キユーピータマゴ社製(加糖凍結卵黄20)
※4 三栄源エフ・エフ・アイ社製(サンベストNN−749)
※5 高田香料社製(カスタードワニラエッセンスT−484)
【0052】
得られたアイスクリームについて、訓練されたパネラー6名の官能評価により、先味としての「濃厚感」及び後味としての「味切れ」について評価を行った。評価結果を表8に示す。
【0053】
【表8】
【0054】
その結果、実施例4の澱粉分解物を使用したアイスクリームは、濃厚感がありながらも味切れが良く、味切れが良い結果として後に風味が立つものであった。一方、比較例1の澱粉分解物を使用したアイスクリームは、味切れは良かったものの濃厚感が弱かった。
【0055】
(食品例3:めんつゆ)
実施例4及び比較例1の澱粉分解物、対照としてパインデックス#100及びパインデックス#3を用いて、表9に示した処方でめんつゆを調製した。具体的には、水以外の原料を混合したものを90℃まで加熱し、冷却後、水を加えて全量補正して調製した。
【0056】
【表9】
※6 富士食品工業社製
【0057】
得られためんつゆについて、訓練されたパネラー5名の官能評価により、先味としての「濃厚感」、後味としての「味切れ」について評価を行った。評価結果を表10に示す。
【0058】
【表10】
【0059】
その結果、実施例4の澱粉分解物を使用しためんつゆは、濃厚感がありながらも味切れが良く、味切れが良い結果として後に風味が立つものであった。一方、比較例1の澱粉分解物を使用しためんつゆは、味切れは良かったものの、濃厚感が弱かった。
【0060】
(食品例4:ミルクプリン)
実施例4及び比較例1の澱粉分解物、対照としてパインデックス#100及びパインデックス#3を用いて、表11に示した処方でミルクプリンを調製した。具体的には、原料を混合し、撹拌しながら70℃まで加熱した後、150kgf/cm2の圧力にて均質化処理し、カップに充填後、90℃、10分間殺菌を行い、ミルクプリンを調製した。
【0061】
【表11】
※7 DSP五協フード&ケミカル社製(ゲルメイトPC)
【0062】
得られたミルクプリンについて、訓練されたパネラー6名の官能評価により、先味としての「濃厚感」、後味としての「味切れ」について評価を行った。評価結果を表12に示す。
【0063】
【表12】
【0064】
その結果、実施例4の澱粉分解物を使用したミルクプリンは、濃厚感がありながらも味切れが良く、味切れが良い結果として後に風味が立つものであった。一方、比較例1の澱粉分解物を使用したミルクプリンは、味切れは良かったものの、濃厚感が弱かった。
【0065】
(食品例5:蒲焼きのたれ)
実施例4及び比較例1の澱粉分解物、対照としてパインデックス#100及びパインデックス#3を用いて、表13に示した処方で蒲焼きのたれを調製した。
【0066】
【表13】
【0067】
得られた蒲焼きのたれについて、訓練されたパネラー5名の官能評価により、先味としての「濃厚感」、後味としての「味切れ」について評価を行った。評価結果を表14に示す。
【0068】
【表14】
【0069】
その結果、実施例4の澱粉分解物を使用した蒲焼のたれは、濃厚感があり、味切れが良かった。一方、比較例1の澱粉分解物を使用した蒲焼のたれは、味切れは良かったものの、濃厚感が弱かった。
【0070】
(食品例6:ドレッシング)
実施例4及び比較例1の澱粉分解物、対照としてパインデックス#100及びパインデックス#3を用いて、表15に示した処方でドレッシングを調製した。具体的には、ごま油、サラダ油以外の原料を加えて溶解し、撹拌しながら80℃まで加熱した。冷却後、ごま油及びサラダ油を添加して容器に充填し、ドレッシングを調製した。
【0071】
【表15】
【0072】
得られたドレッシングについて、訓練されたパネラー5名の官能評価により、先味としての「濃厚感」、後味としての「味切れ」について評価を行った。評価結果を表16に示す。
【0073】
【表16】
【0074】
その結果、実施例4の澱粉分解物を使用したドレッシングは、濃厚感がありながらも味切れが良く、味切れが良い結果として後に風味が立つものであった。一方、比較例1の澱粉分解物を使用したドレッシングは、味切れは良かったものの、濃厚感が弱かった。
【0075】
(食品例7:マヨネーズ)
実施例4及び比較例1の澱粉分解物、対照としてパインデックス#100及びパインデックス#3を用いて、表16に示した処方でマヨネーズを調製した。具体的には、サラダ油以外の原料にサラダ油を少量ずつ添加して混合・撹拌し、コロイドミル(「MILL MIX」、(株)日本精機製作所)の4,000rpm、クリアランス0.3mmにて乳化し、マヨネーズを調製した。
【0076】
【表17】
【0077】
得られたマヨネーズについて、訓練されたパネラー5名の官能評価により、先味としての「濃厚感」、後味としての「味切れ」について評価を行った。評価結果を表16に示す。
【0078】
【表18】
【0079】
その結果、実施例4の澱粉分解物を使用したマヨネーズは、濃厚感があり、味切れが良かった。一方、比較例1の澱粉分解物を使用したマヨネーズは、味切れは良かったものの、濃厚感が弱かった。