特許第6298239号(P6298239)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6298239リチウムイオン電池のセル用のアノード、その製造方法およびそれを組み込んだ電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6298239
(24)【登録日】2018年3月2日
(45)【発行日】2018年3月20日
(54)【発明の名称】リチウムイオン電池のセル用のアノード、その製造方法およびそれを組み込んだ電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/133 20100101AFI20180312BHJP
   H01M 4/131 20100101ALI20180312BHJP
   H01M 4/136 20100101ALI20180312BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20180312BHJP
   H01M 4/485 20100101ALI20180312BHJP
   H01M 4/58 20100101ALI20180312BHJP
   H01M 4/587 20100101ALI20180312BHJP
   H01M 4/1393 20100101ALI20180312BHJP
   H01M 4/1391 20100101ALI20180312BHJP
   H01M 4/1397 20100101ALI20180312BHJP
   H01M 10/0567 20100101ALI20180312BHJP
   H01M 10/0525 20100101ALI20180312BHJP
【FI】
   H01M4/133
   H01M4/131
   H01M4/136
   H01M4/62 Z
   H01M4/485
   H01M4/58
   H01M4/587
   H01M4/1393
   H01M4/1391
   H01M4/1397
   H01M10/0567
   H01M10/0525
【請求項の数】20
【外国語出願】
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-45323(P2013-45323)
(22)【出願日】2013年3月7日
(65)【公開番号】特開2013-191557(P2013-191557A)
(43)【公開日】2013年9月26日
【審査請求日】2016年2月22日
(31)【優先権主張番号】1252252
(32)【優先日】2012年3月13日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】591136931
【氏名又は名称】ハッチンソン
【氏名又は名称原語表記】HUTCHINSON
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヴォワルカン バプティスト
(72)【発明者】
【氏名】エイム−ペロ ダヴィド
(72)【発明者】
【氏名】デュフール ブリュノ
(72)【発明者】
【氏名】ソンタグ フィリップ
【審査官】 前田 寛之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−152932(JP,A)
【文献】 特表2004−511887(JP,A)
【文献】 特表2001−516496(JP,A)
【文献】 特開2000−348710(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00 − 4/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウム塩および非水性電解質溶媒をベースとする電解質を備えるリチウムイオン電池のセルにおいて使用可能なアノードであって、活性材料と、ポリマー結合剤と、導電性充填剤とを含み、かつ、前記活性材料、前記ポリマー結合剤及び前記導電性充填剤が溶解又は分散する溶媒を含まない架橋ポリマー組成物から形成される少なくとも1種のポリマーフィルムを含むアノードにおいて、
前記活性材料は、黒鉛、リチウム化酸化チタン、式LiCuVO、LiSnO、LiMoOおよびLiMoS(式中、0<x<5である)のリチウム化化合物、ならびに式LiVSまたはLiTiのリチウム化金属硫化物からなる群から選択される少なくとも1種の化合物であり、
前記結合剤は、前記架橋ポリマー組成物中で架橋した状態で存在する少なくとも1種のジエンエラストマーをベースとすること、および前記組成物は、前記電解質溶媒中で使用可能な少なくとも1種の不揮発性有機化合物をさらに含み、該不揮発性有機化合物は、1.013×10Paの大気圧で150℃を超える沸点を有し、かつ、カーボネートを含み、
前記組成物は、85%以上の質量分率で前記活性材料を含むことを特徴とする、アノード。
【請求項2】
前記組成物が、90%以上の質量分率で前記活性材料を含むことを特徴とする、請求項1に記載のアノード。
【請求項3】
前記活性材料が、式LiTi12またはLiTiO(式中、0<x<5である)のリチウム化酸化チタンから選択されることを特徴とする、請求項1または2に記載のアノード。
【請求項4】
前記少なくとも1種のジエンエラストマーが、前記架橋ポリマー組成物中で過酸化物架橋されていることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載のアノード。
【請求項5】
前記少なくとも1種のジエンエラストマーが、水素化ニトリルゴム(HNBR)であり、該水素化ニトリルゴム(HNBR)が有機過酸化物および架橋助剤により前記架橋ポリマー組成物中で架橋されていることを特徴とする、請求項4に記載のアノード。
【請求項6】
前記少なくとも1種のジエンエラストマーが、1%から10%の間の質量分率で前記組成物中に存在することを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載のアノード。
【請求項7】
前記少なくとも1種の有機化合物が、少なくとも1種のオレフィンのカーボネートを含むことを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載のアノード。
【請求項8】
前記少なくとも1種のオレフィンのカーボネートがエチレンカーボネートであることを特徴とする、請求項7に記載のアノード。
【請求項9】
前記少なくとも1種の有機化合物が、0.1%から5%の間の質量分率で前記組成物中に存在することを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載のアノード。
【請求項10】
前記組成物が、さらに架橋系を含み、該架橋系は0.05%から0.20%の間の質量分率で前記組成物中に存在する、請求項1から9のいずれか一項に記載のアノード。
【請求項11】
前記導電性充填剤が、カーボンブラック、黒鉛、膨張黒鉛、炭素繊維、カーボンナノチューブ、グラフェンおよびそれらの混合物からなる群から選択され、1%から6%の間の質量分率で前記組成物中に存在することを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載のアノード。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか一項に記載のアノードを製造するための方法において、
a)架橋可能な状態の混合物を得るために、内部混合器または押出機内で、前記活性材料、前記ポリマー結合剤及び前記導電性充填剤が溶解又は分散する溶媒を使用せずに、前記活性材料と、前記ポリマー結合剤と、前記導電性充填剤と、固体状態の前記有機化合物とを溶融配合するステップであって、この活性材料は、少なくとも1種の化合物を含む、ステップと、
b)この混合物を、前記架橋ポリマー組成物を得るために架橋するステップとを含むことを特徴とする方法。
【請求項13】
ステップa)が、内部混合器内で、前記結合剤を前記混合物の他の成分の粉末プレミックスに配合することにより行われることを特徴とする、請求項12に記載の製造方法。
【請求項14】
ステップa)が、80℃から120℃の間の温度で行われることを特徴とする、請求項13に記載の製造方法。
【請求項15】
ステップb)が、前記架橋可能な混合物をホットプレスすることにより行われることを特徴とする、請求項12から14のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項16】
次いで、前記アノードが備える金属電流コレクタ上に堆積させるように、前記架橋可能な混合物を圧延するステップc)を含む、請求項12から15のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項17】
アノードと、カソードと、リチウム塩および非水性電解質溶媒をベースとする電解質とを備える少なくとも1つのセルを備えるリチウムイオン電池において、前記アノードが、請求項1から11のいずれか一項に記載のアノードであることを特徴とする、リチウムイオン電池。
【請求項18】
前記非水性電解質溶媒が、アノードの前記少なくとも1種の不揮発性有機化合物を含むことを特徴とする、請求項17に記載のリチウムイオン電池。
【請求項19】
前記アノードが、前記架橋ポリマー組成物で作製された少なくとも1つのフィルムと接触する金属電流コレクタを備えることを特徴とする、請求項17または18に記載のリチウムイオン電池。
【請求項20】
前記カソードが、4V未満の動作電圧を有し、少なくとも1種のリチウム化ポリアニオン化合物を含む活性材料をベースとすることを特徴とする、請求項17から19のいずれか一項に記載のリチウムイオン電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン電池のセルにおいて使用することができるアノード、このアノードを製造するための方法、およびこのアノードを組み込んだ1つまたは複数のセルを有するリチウムイオン電池に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウム蓄電池には、陰極がリチウム金属(この材料は液体電解質の存在下では安全性の問題をもたらす)で作製されているリチウム金属電池、およびリチウムがイオン状態を維持しているリチウムイオン電池の主に2つの種類がある。
【0003】
リチウムイオン電池は、異なる極性の少なくとも2つの導電性クーロン電極である、陰極またはアノードおよび陽極またはカソードからなり、その電極間にはセパレータが位置し、このセパレータは、イオン伝導性を確実とするLi陽イオンをベースとする非プロトン性電解質が含浸した電気絶縁体からなる。これらのリチウムイオン電池において使用される電解質は、通常、例えば式LiPF、LiAsF、LiCFSOまたはLiClOのリチウム塩からなり、これは、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、またはより頻繁には、例えばエチレンもしくはプロピレンのカーボネート等の非水性溶媒の混合物に溶解している。
【0004】
リチウムイオン電池のアノードの活性材料は、典型的には黒鉛(370mAh/gの容量およびLi/Li対に対して0.05Vの酸化還元電位)、または変形形態として混合金属酸化物であり、これには、式LiTi12、LiTiOのリチウム化酸化チタン、またはさらに、例えば式LiCuVO、LiSnO、LiMoO、LiMoS(式中、0<x<5である)の化合物が含まれる。これらの活性アノード材料への/からのリチウムの可逆的な挿入/除去は、黒鉛の電気化学ポテンシャルよりも概して高い電気化学ポテンシャルにわたって生じる。
【0005】
リチウムイオン電池のカソードの活性材料は、慣用的には、バナジウム、ニッケル、マンガンもしくはコバルトの酸化物等の遷移金属の酸化物であり、または、変形形態として、リチウム化リン酸鉄であってもよい。
【0006】
リチウムイオン電池のカソードおよびアノードのそれぞれの活性材料は、これらの電極への/からのリチウムの可逆的な挿入/除去を可能とし、電極中の活性材料の質量分率が高いほど、その容量が高い。これらの電極はまた、カーボンブラック等の導電性化合物を含有しなければならず、また、それらに十分な機械的結束性を提供するために、ポリマー結合剤を含有しなければならない。したがって、リチウムイオン電池は、電池の充電および放電中のアノードとカソードとの間のリチウムイオンの可逆的交換に基づいており、また、非常に低重量である割には、リチウムの物理的特性により、そのような電池は高いエネルギー密度を有する。
【0007】
リチウムイオン電池のアノードは、アノードの各種成分を溶媒に溶解または分散させるステップと、得られた溶液またはディスパーションを金属電流コレクタ上に展着するステップと、次いで最後にこの溶媒を蒸発させるステップとを連続して含む方法を使用して製造されることが最も多い。
【0008】
有機溶媒を使用するリチウムイオン電池のアノードを製造するための方法は、環境および安全性に関して多くの欠点を有する。特に、この場合、有毒または可燃性である大量のそのような溶媒を蒸発させる必要がある。
【0009】
これらのアノードを製造するために水性溶媒を使用する方法に関しては、その大きな欠点は、アノードを、使用可能となるまでに極めて徹底的に乾燥しなければならないことであり、微量の水は、リチウム蓄電池の耐用年数を制限することが知られている。例えば、黒鉛およびエラストマー結合剤をベースとするアノードを製造するための、水性溶媒を使用する方法を記載した、文献EP−B1−1489673を挙げることができる。
【0010】
したがって、リチウムイオン電池用に、溶媒を使用せずに製造されるアノードを調製することが極めて望ましい。これに関して、溶融加工技術(例えば押出)を使用してリチウムイオン電池用アノードを製造するための方法が、文献に記載されている。
【0011】
残念ながら、これらの溶融プロセスは、リチウムイオン電池の場合、知られているように、アノードがリチウムイオン電池内で十分な容量を有するためには、アノードのポリマー混合物中の活性材料の質量分率が少なくとも85%でなければならないという大きな問題をもたらす。しかしながら、活性材料のそのような含量では、アノードポリマー混合物の粘度が非常に高くなり、使用されると、混合物の過熱、およびその機械的結束性の喪失の危険性がもたらされる。
【0012】
文献US−B2−6939383は、リチウムポリマー電池用のアノードまたはカソードの無溶媒加工のための、イオン伝導性ポリマーとしてポリ(エチレンオキシド)−ポリ(プロピレンオキシド)−ポリ(グリシジルエーテル)コポリマーを含むポリマー組成物の押出を記載している。しかしながら、この文献において調製された単一ポリマー組成物中の活性材料の質量分率はわずか64.5%であり、さらに、これはカソードに関するものである。
【0013】
文献US−A−5749927は、押出によるリチウムポリマー電池の連続調製のための方法を開示しているが、この方法は、アノードまたはカソード活性材料を、導電体、ならびにポリマー、リチウム塩およびこのポリマーよりはるかに過剰のプロピレンカーボネート/エチレンカーボネート混合物を含む固体電解質組成物と配合するステップを含む。この文献において、得られたアノードポリマー組成物中にのみ存在する活性材料の質量分率もまた、70%を下回る。
【0014】
したがって、リチウム蓄電池用アノードを製造するためのこれらの既知の溶融加工の大きな欠点は、アノードポリマー組成物中の活性材料の質量分率が、リチウムイオン電池専用の高性能アノードを得るためには不十分であるという点である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】EP−B1−1489673
【特許文献2】US−B2−6939383
【特許文献3】US−A−5749927
【特許文献4】FR1250457
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
したがって、本発明の1つの目的は、上述の欠点の全てを克服するアノードを製造するための方法を提供することであり、この目的は、本出願人が、驚くべきことに、活性材料、ならびに架橋可能なエラストマーマトリックス、導電性充填剤および不揮発性(すなわち、1.013×10Paの大気圧で150℃を超える沸点を有する)有機化合物を含む添加剤を、溶融加工により溶媒蒸発なしに高温配合する場合、架橋後に、リチウム塩および非水性溶媒をベースとする電解質を備えるリチウムイオン電池において使用可能なアノードポリマー組成物が得られることを発見したことから達成され、組成物中のこの活性材料の分率は、従来溶融加工により得られていた分率より明らかに高く、有利には85%以上であり、1種または複数種の有機化合物が、有利には電解質の溶媒として使用される。
【課題を解決するための手段】
【0017】
したがって、リチウム塩および非水性溶媒をベースとする電解質を備えるリチウムイオン電池のセルにおいて使用可能な本発明によるアノードは、活性材料と、ポリマー結合剤および導電性充填剤を含む添加剤との間の高温配合反応の生成物である、溶融加工により溶媒蒸発なしに得られるポリマー組成物をベースとし、アノードは、結合剤が、少なくとも1種の架橋エラストマーをベースとするような、およびこれらの添加剤が、この電解質溶媒中で使用可能な少なくとも1種の不揮発性有機化合物をさらに含むようなアノードであり、組成物は、有利には85%以上の質量分率で活性材料を含む。
【0018】
さらにより有利には、前記組成物は、90%以上、またはさらに93%以上の質量分率で前記活性材料を含んでもよい。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明によるアノード中の活性材料のこの非常に高い質量分率により、その得られるセルまたは各セルが高性能セルであること、したがってそれらを組み込んだリチウムイオン電池が高性能電池であることが確実となることが分かるであろう。
【0020】
また、組成物中の前記少なくとも1種の架橋エラストマーの均一な分布により、アノードの機械的強度が確実となることが分かるであろう。
【0021】
さらに、本発明によるアノードは、上述の文献EP−B1−1489673のアノードとは対照的に、全く水を含まないことが分かるであろう。
【0022】
有利には、前記活性材料は、黒鉛、リチウム化酸化チタン、式LiCuVO、LiSnO、LiMoOおよびLiMoS(式中、0<x<5である)のリチウム化化合物、ならびに式LiVSまたはLiTiのリチウム化金属硫化物からなる群から選択される、また好ましくは式LiTi12またはLiTiOのリチウム化酸化チタンから選択される、少なくとも1種の化合物または複合物を含んでもよい。
【0023】
有利には、170mAh/gの容量を有するリチウム化酸化チタンLiTi12は、充電/放電サイクル(すなわち、Liの挿入/除去のサイクル)中にその体積が大きく変化しないことによる非常に高いサイクル性、高い率に耐える容量、および高い熱安定性を有することが分かるであろう。さらに、Li/Li対に対し1.5Vというその高い酸化還元電位により、このリチウム化酸化チタンは、使用される電解質が、それを組み込んだアノードと接触する際に十分な安定性を示し、アノードと電解質との間に固体界面相が形成されないことを確実とする。
【0024】
好ましくは、前記少なくとも1種のエラストマーは、過酸化物架橋ジエンエラストマーであり、さらにより好ましくは、水素化ニトリルゴム(HNBR)である。また好ましくは、前記少なくとも1種のエラストマーは、1%から10%の間の質量分率で前記組成物中に存在してもよい。
【0025】
有利には、前記少なくとも1種の不揮発性有機化合物は、好ましくは電解質組成物中に使用される、カーボネート、好ましくは、エチレン等の少なくとも1種のオレフィンのカーボネートを含んでもよい。
【0026】
エチレンカーボネート等のそのようなカーボネートの使用は、有利には、
− 組成物中の充填剤含量を増加させること、
− このカーボネートは、室温で固体であり、取扱い上はるかに有害でないため、アノードを製造するための従来の方法において使用される揮発性有機化合物(VOC)の毒性に関する固有の危険性を回避すること、ならびに
− このカーボネートは、現在リチウムイオン電池において使用される電解質の主要構成物質の1つであるため、カーボネートを事前に蒸発させることなくアノードポリマー組成物を使用すること、およびアノードへの電解質の組込みをより容易に行うこと
を可能にすることが分かるであろう。
【0027】
また有利には、前記少なくとも1種の有機化合物は、0.1%から5%の間の質量分率で前記組成物中に存在してもよい。
【0028】
好ましくは、結合剤の揮発性有機化合物(複数種可)/架橋エラストマーの質量比は、1未満である。
【0029】
本発明は、アノードの動作に必要な塩が、その製造中に組み込まれることを可能にすることが分かるであろう。
【0030】
本発明の別の特徴によれば、前記添加剤は、0.05%から0.20%の間の質量分率で組成物中に存在し、前記少なくとも1種のエラストマーが水素化ニトリルゴム(HNBR)等のジエンエラストマーである場合には、好ましくは、有機過酸化物および架橋助剤を含む、架橋系をさらに含んでもよい。
【0031】
本発明の別の特徴によれば、前記導電性充填剤は、カーボンブラック、黒鉛、膨張黒鉛、炭素繊維、カーボンナノチューブ、グラフェンおよびそれらの混合物からなる群から選択されてもよく、1%から6%の間の質量分率で組成物中に存在する。
【0032】
上に定義されたようなアノードを製造するための本発明による方法は、
a)架橋可能な状態の前記組成物を得るために、内部混合器または押出機内で、溶媒蒸発なしに、前記活性材料と、固体状態の前記結合剤および前記有機化合物を含む前記添加剤とを溶融配合するステップであって、この活性材料は、好ましくは、黒鉛またはリチウム化酸化チタン等の少なくとも1種の化合物または複合物を含む、ステップと、
b)この組成物を、前記架橋組成物を得るために架橋および任意選択で加熱成形するステップと
を含むことを特徴とする。
【0033】
本発明の別の特徴によれば、ステップa)は、内部混合器内で、例えば80℃から120℃の間の温度で、前記結合剤を組成物の他の成分の粉末プレミックスに配合することにより行ってもよい。
【0034】
本発明の別の特徴によれば、ステップb)は、前記架橋可能な組成物をホットプレスすることにより行ってもよい。
【0035】
有利には、本発明の方法は、次いで、前記アノードが備える金属電流コレクタ上に堆積させるように、前記架橋可能な組成物を圧延するステップc)を含んでもよい。
【0036】
本発明によるリチウムイオン電池は、上に定義されたようなアノードと、カソードと、リチウム塩および非水性溶媒をベースとする電解質とを備える少なくとも1つのセルを備える。
【0037】
本発明の別の有利な特徴によれば、前記電解質溶媒は、アノードの前記少なくとも1種の不揮発性有機化合物を含んでもよい。
【0038】
本発明の別の態様によれば、前記アノードは、前記ポリマー組成物で作製された少なくとも1つのフィルムと接触する金属電流コレクタを備える。
【0039】
有利には、この電池のカソードは、4V未満の動作電圧を有し、好ましくは炭素コーティングされた、少なくとも1種のリチウム化ポリアニオン化合物または複合物を含む活性材料、例えば式LiMPO(式中、Mは、例えば鉄原子である)のリチウム化金属Mリン酸塩をベースとしてもよい。さらにより有利には、このカソードは、本出願人の名前で2012年1月17日に出願された特許出願FR1250457に記載の方法に従って得ることができる。
【実施例】
【0040】
本発明の他の特徴、利点および詳細は、例示を目的として示される以下の本発明のいくつかの例示的実施形態の限定されない説明を読めば明確となるであろう。
【実施例1】
【0041】
アノードポリマー組成物をHaake内部混合器内で90℃で調製したが、組成物は、質量分率(%)で表される以下の配合組成を有していた。
HNBR結合剤(「Therban 4307」) 2.82
カーボンブラック 2.72
エチレンカーボネート 0.52
活性材料LiTi12 93.84
架橋系:
過酸化ジクミル 0.04
トリアリルシアヌレート(TAC) 0.05
この内部混合器に様々な化合物を連続して導入したが、架橋可能なジエンエラストマーとしての水素化ニトリルゴム(HNBR結合剤)から開始して、次いで上記の他の成分の粉末形態でのプレミックスを導入した。この配合および同時に結合剤を架橋させる170℃で15分間のホットプレス後、アノードが備える電流コレクタへの堆積後にそれぞれリチウムイオン電池のセル内にこのアノードを形成することができる、0.4mmから2mmの範囲の厚さを有するいくつかの電極が直接得られた。
【実施例2】
【0042】
実施例1において使用したものと同じ成分をベースとする別のアノードポリマー組成物をHaake内部混合器内で110℃で調製したが、組成物は、質量分率(%)で表される以下の異なる配合組成を有していた。
HNBR結合剤(「Therban 4307」) 8.23
カーボンブラック 4.15
エチレンカーボネート 1.64
活性材料LiTi12 85.69
架橋系:
過酸化ジクミル 0.12
トリアリルシアヌレート(TAC) 0.15
この内部混合器に様々な化合物を連続して導入したが、架橋可能なジエンエラストマーとしての水素化ニトリルゴム(HNBR結合剤)から開始して、次いで上記の他の成分の粉末形態でのプレミックスを導入した。この配合および同時に結合剤を架橋させる170℃で15分間のホットプレス後、アノードが備える電流コレクタへの堆積後にそれぞれリチウムイオン電池のセル内にこのアノードを形成することができる、0.4mmから2mmの範囲の厚さを有するいくつかの電極が、直接得られた。
【実施例3】
【0043】
実施例1および2において使用された活性材料以外の活性材料、およびこれらの実施例において使用されたのと同じ他の成分をベースとする別のアノードポリマー組成物を、Haake内部混合器内で110℃で調製したが、組成物は、質量分率(%)で表される以下の異なる配合組成を有する。
HNBR結合剤(「Therban 4307」) 5.17
カーボンブラック 2.28
エチレンカーボネート 1.19
活性材料(「Timrex KS 6L」黒鉛) 91.17
架橋系:
過酸化ジクミル 0.08
トリアリルシアヌレート(TAC) 0.11
この内部混合器に様々な化合物を連続して導入したが、架橋可能なジエンエラストマーとしての水素化ニトリルゴム(HNBR結合剤)から開始して、次いで上記の他の成分の粉末形態でのプレミックスを導入した。この配合および同時に結合剤を架橋させる170℃で15分間のホットプレス後、アノードが備える電流コレクタへの堆積後にそれぞれリチウムイオン電池のセル内にこのアノードを形成することができる、0.4mmから2mmの範囲の厚さを有するいくつかの電極が直接得られた。
【0044】
これらの本発明の例示的実施形態を参照すると、このアノード中の活性材料の非常に高い質量分率(85%超、さらには実に90%超)により、その得られるセルまたは各セルが高性能セルであること、したがってそれらを組み込んだリチウムイオン電池が高性能電池であることが確実となることが分かるであろう。