特許第6298246号(P6298246)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6298246
(24)【登録日】2018年3月2日
(45)【発行日】2018年3月20日
(54)【発明の名称】連続熱処理炉における搬送装置
(51)【国際特許分類】
   F27B 9/24 20060101AFI20180312BHJP
   B65G 23/36 20060101ALI20180312BHJP
【FI】
   F27B9/24 E
   B65G23/36
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-124308(P2013-124308)
(22)【出願日】2013年6月13日
(65)【公開番号】特開2015-1306(P2015-1306A)
(43)【公開日】2015年1月5日
【審査請求日】2016年3月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000167200
【氏名又は名称】光洋サーモシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】特許業務法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川合 貴之
(72)【発明者】
【氏名】青海 元
【審査官】 田口 裕健
(56)【参考文献】
【文献】 実開平05−094695(JP,U)
【文献】 実開昭55−153897(JP,U)
【文献】 米国特許第5816387(US,A)
【文献】 特開平04−227467(JP,A)
【文献】 特開昭55−054504(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F27B 9/00− 9/40
B65G 23/00−23/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スプロケット状の主駆動輪及びこの主駆動輪を回転駆動する主駆動部を有する主駆動手段と、従動輪と、前記主駆動輪及び前記従動輪に巻き掛けられる無端状の搬送チェーンとを備え、前記搬送チェーンは、前記主駆動輪と前記従動輪との間の一側部が、前記主駆動輪で牽引されることによって連続熱処理炉内で被処理物を搬送する搬送部とされ、同他側部が、前記主駆動輪側から前記従動輪側に回送されるリターン部とされている連続熱処理炉における搬送装置であって、
前記主駆動輪側から前記従動輪側へ回送させるための駆動力を前記リターン部に付与する補助駆動手段を備え、
前記補助駆動手段と前記主駆動輪との間に、前記リターン部を部分的に弛ませた第1弛み部が設けられ、
前記補助駆動手段と前記従動輪との間に、前記リターン部を部分的に弛ませた第2弛み部が設けられ、
前記第2弛み部における弛み量を測定する弛み測定部をさらに備え、
前記補助駆動手段は、前記主駆動手段が前記搬送チェーンを連続的に回送させているときに、前記搬送チェーンを間欠的に回送させ
さらに、前記補助駆動手段は、前記弛み測定部によって測定された弛み量が所定の最小限に達すると作動することを特徴とする連続熱処理炉における搬送装置。
【請求項2】
前記補助駆動手段は、前記弛み測定部によって測定された弛み量が所定の最大限に達すると停止する、請求項に記載の連続熱処理炉における搬送装置。
【請求項3】
前記弛み測定部は、第2弛み部の弛み量の最小限及び最大限を検出する検出器を含む、請求項に記載の連続熱処理炉における搬送装置。
【請求項4】
前記補助駆動手段は、前記第2弛み部が維持されるように前記主駆動手段よりも高速で前記搬送チェーンを回送させる、請求項1〜のいずれか1項に記載の連続熱処理炉における搬送装置。
【請求項5】
前記補助駆動手段が、前記搬送チェーンのリターン部が巻き掛けられるスプロケット状の補助駆動輪と、この補助駆動輪を回転駆動する補助駆動部とを備え、
前記補助駆動輪は、前記主駆動輪よりも小径である、請求項に記載の連続熱処理炉における搬送装置。
【請求項6】
前記主駆動手段に対する負荷を検出する負荷検出部をさらに備え、
前記補助駆動手段は、当該負荷検出部によって検出された負荷が所定の最大限に達したときに作動する、請求項1〜のいずれか1項に記載の連続熱処理炉における搬送装置。
【請求項7】
前記搬送チェーンがセラミック製である、請求項1〜のいずれか1項に記載の連続熱処理炉における搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連続熱処理炉における搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、加熱装置によって加熱された炉内に被処理物を搬送し、当該炉内において被処理物に対して熱処理を行う連続熱処理炉が開示されている。また被処理物を搬送する搬送装置として、発塵が少なく、熱処理炉内の高温環境に十分に耐え得るセラミックチェーンを用いたチェーン搬送機構が適用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−298163号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のようなセラミックチェーンは、金属製のチェーンに比べて軽量であるものの強度が低いため、被処理物の積載重量を高めるのが困難であった。チェーンの強度を高めるためにチェーンの構成部品の寸法を大きくすることも考えられるが、チェーン自体の重量が増えるためそれほど被処理物の積載重量を大きくすることができず、また、熱容量も増大するために熱処理炉における熱効率に悪影響を与える可能性がある。
【0005】
本発明は、上記のような実情に鑑みてなされたものであり、搬送チェーンの強度を高めなくても被処理物の積載重量を好適に高めることができる連続熱処理炉における搬送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、スプロケット状の主駆動輪及びこの主駆動輪を回転駆動する主駆動部を有する主駆動手段と、従動輪と、前記主駆動輪及び前記従動輪に巻き掛けられる無端状の搬送チェーンとを備え、前記搬送チェーンは、前記主駆動輪と前記従動輪との間の一側部が、前記主駆動輪で牽引されることによって連続熱処理炉内で被処理物を搬送する搬送部とされ、同他側部が、前記主駆動輪側から前記従動輪側に回送されるリターン部とされている連続熱処理炉における搬送装置であって、
前記主駆動輪側から前記従動輪側へ回送させるための駆動力を前記リターン部に付与する補助駆動手段を備え、
前記補助駆動手段と前記主駆動輪との間に、前記リターン部を部分的に弛ませた第1弛み部が設けられ、
前記補助駆動手段と前記従動輪との間に、前記リターン部を部分的に弛ませた第2弛み部が設けられ、
前記第2弛み部における弛み量を測定する弛み測定部をさらに備え、
前記補助駆動手段は、前記主駆動手段が前記搬送チェーンを連続的に回送させているときに、前記搬送チェーンを間欠的に回送させ
さらに、前記補助駆動手段は、前記弛み測定部によって測定された弛み量が所定の最小限に達すると作動することを特徴とする。
【0007】
搬送チェーンに生じる最大の張力は、主駆動輪への巻き掛け開始部分、すなわち、搬送部の終端位置に生じ、その大きさは、搬送部に積載された被処理物の重量と、主駆動手段によって回送される搬送チェーンの重量とに概ね比例する。そのため、搬送チェーンの強度を高めることなく積載重量を高めるには、主駆動手段によって回送される搬送チェーンの重量を小さくすることが有効となる。
従来の搬送装置は、一つの主駆動手段によって搬送チェーン全体を回走させていたので、当該主駆動輪への巻き掛け開始部分に生じる最大の張力が、被処理物の重量と搬送チェーン全体の重量とに応じた大きな値となり、それ故に被処理物の積載重量を増やすのは困難であった。
これに対して本発明では、主駆動手段とは別に、搬送チェーンのリターン部に駆動力を付与する補助駆動手段を備えているので、搬送チェーンの回送を主駆動手段と補助駆動手段とで分担することができる。したがって、主駆動手段によって回送される搬送チェーンの重量を小さくし、搬送部の終端位置に生じる最大張力を低減することができ、その分、被処理物の積載重量を増大させることが可能となる。
また、前記補助駆動手段と前記主駆動輪との間に、前記リターン部を部分的に弛ませた第1弛み部が設けられているので、主駆動手段と補助駆動手段との双方によって同時に搬送チェーンを回送させているときに、両者の回送速度の相違等によって搬送チェーンが引っ張られてしまうのを防止することができる。
更に、前記補助駆動手段と前記従動輪との間に、前記リターン部を部分的に弛ませた第2弛み部が設けられ、前記補助駆動手段は、前記主駆動手段が前記搬送チェーンを連続的に回送させているときに、前記搬送チェーンを間欠的に回送させている。
補助駆動手段と従動輪との間に第2弛み部が設けられていると、主駆動手段のみによって搬送チェーンを回送させたとしても、第2弛み部が存在する限りは搬送チェーン全体が回送されることはなく、搬送チェーンに生じる最大の張力も、被処理物の積載重量と搬送チェーンの一部の重量に応じた大きさとなる。また、補助駆動手段を間欠的に作動させることによって、補助駆動手段を常時作動させる場合に比べて運転コストや騒音等を低減することができる。
前記搬送装置は、前記第2弛み部における弛み量を測定する弛み測定部をさらに備え、前記補助駆動手段は、前記弛み測定部によって測定された弛み量が所定の最小限に達すると作動するので、補助駆動手段を間欠的に作動させつつ第2弛み部が消失するのを防止することができる。
【0008】
前記補助駆動手段は、前記搬送チェーンのリターン部が巻き掛けられるスプロケット状の補助駆動輪と、この補助駆動輪を回転駆動する補助駆動部とを備えていることが好ましい。また、前記補助駆動輪は、前記主駆動輪よりも小径であることが好ましい。
主駆動手段は、被処理物の重量と搬送チェーンの一部の重量とを受け持つため、主駆動輪の径を大きくすることによって搬送チェーンに噛み合う歯の数を多くし、各歯にかかる負荷を分散して小さくすることができる。これに対して補助駆動輪は、搬送チェーンの他の一部の重量を受け持つだけであるため、径を小さくすることができ、これによって搬送装置の大型化を抑制することができる。
【0009】
前記補助駆動手段は、前記主駆動輪と前記従動輪との中間位置よりも当該従動輪寄りに設けられていることが好ましい。
このような構成によって、補助駆動手段が受け持つ搬送チェーンの重量を可及的に大きくし、これに相対して主駆動手段が受け持つ搬送チェーンの重量を小さくすることができる。したがって、被処理物の積載重量をより増大することができる。
【0011】
記補助駆動手段は、前記第2弛み部が維持されるように前記主駆動手段よりも高速で前記搬送チェーンを回送させることが好ましい。
【0012】
駆動手段のみによって搬送チェーンを回送させると第2弛み部における弛み量が次第に小さくなり、完全に第2弛み部が消失してしまうと搬送チェーンに生じる張力が大きくなってしまう。そのため、第2弛み部が完全に消失してしまう前に補助駆動手段を作動させ、主駆動手段よりも高速で搬送チェーンを回送させることによって、第2弛み部における弛み量を再び大きくし、第2弛み部を維持することが可能となる
【0013】
記補助駆動手段は、前記弛み測定部によって測定された弛み量が所定の最大限に達すると停止することが好ましい。
この構成によれば、弛み測定部の測定結果に応じて補助駆動手段を作動及び停止させることで、補助駆動手段を間欠的に作動させつつ第2弛み部が消失するのを防止することができる。
【0014】
前記弛み測定部は、第2弛み部の弛み量の最小限及び最大限を直接的に検出する検出器を含むことが好ましい。
このように第2弛み部の弛み量の最小限及び最大限を直接的に検出器によって検出することで、補助駆動手段の作動及び停止のタイミングを正確に判断することができる。
【0015】
前記搬送装置は、前記主駆動手段に対する負荷を検出する負荷検出部をさらに備え、
前記補助駆動手段は、当該負荷検出部によって検出された負荷が所定の最大限に達したときに作動するものであってもよい。
この構成によれば、主駆動手段における負荷が所定の最大限に達した場合、例えば、搬送チェーンに対する被処理物の積載重量が増えた場合に、搬送チェーンに生じる最大張力が過度にならないように補助駆動手段を作動させて、当該最大張力を低下させることができる。したがって、被処理物の最大積載量を増大させることが可能となる。
【0016】
前記搬送チェーンは、セラミック製であることが好ましい。
搬送チェーンがセラミック製である場合、被処理物の積載重量を高めることが困難となるが、上記のような本発明の各構成を適用することによって、当該積載重量を効果的に高めることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、搬送チェーンの強度を高めなくても被処理物の積載重量を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態に係る連続熱処理炉を示す側面説明図である。
図2図1に示される連続熱処理炉の搬送装置における主駆動手段を拡大して示す側面図である。
図3図1に示される連続熱処理炉の搬送装置における補助駆動手段を拡大して示す側面図である。
図4】搬送装置の搬送チェーンに生じる張力を概略的に示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態について説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る連続熱処理炉を示す側面説明図である。
本実施形態の連続熱処理炉10は、搬送装置11によって被処理物Wを搬送しつつ、加熱室12において被処理物Wを加熱し、その後、冷却室13において被処理物Wを冷却するように構成されている。搬送装置11における搬送始端位置P1側には、被処理物Wを供給する供給装置(図示省略)が設けられ、搬送終端位置P2には被処理物Wを排出する排出装置(図示省略)が設けられる。図1において被処理物Wの搬送方向を矢印Xで示している。
【0020】
搬送装置11は、無端状に形成された搬送チェーン21と、この搬送チェーン21を回送させる回送機構20とを備えている。搬送チェーン21は、多数のリンクをピンによって屈曲可能に接続することによって構成されている。また、搬送チェーン21は、幅方向に複数列(例えば、2列)設けられている。本実施形態の搬送チェーン21は、セラミックによって形成されており、高い耐熱性と低発塵性とを有している。
【0021】
回送機構20は、搬送チェーン21が巻き掛けられる複数の輪体22〜25,32,42と、搬送チェーン21を回送駆動する2つの駆動手段31,41とを備えている。
本実施形態では、駆動手段として主駆動手段31と、補助駆動手段41とを備えている。各駆動手段31,41は、駆動輪(主駆動輪32及び補助駆動輪42)を備えている。また、回送機構20には、従動輪22と、ガイド輪23,24,25とが含まれている。そして、搬送チェーン21は、駆動輪32,42、従動輪22、及びガイド輪23,24,25に巻き掛けられている。駆動輪32,42は、スプロケット状に形成され、搬送チェーン21に噛み合う複数の歯を有している。ガイド輪23,24,25や従動輪22は、スプロケット状に形成されていてもよいし、ローラ状(プーリ状)に形成されていてもよい。
【0022】
図2は、主駆動手段31を拡大して示す側面図である。
図1及び図2に示されるように、主駆動手段31は、主駆動輪32と、この主駆動輪32を回転駆動する主駆動モータ(主駆動部)33とを備えている。主駆動輪32と主駆動モータ33とは、チェーンやベルトを用いた巻き掛け伝動機構34等によって動力伝達可能に連結されている。主駆動輪32は、搬送装置11における搬送終端位置P2に配置されている。また、従動輪22は、搬送装置11における搬送始端位置P1に配置されている。そして、主駆動輪32と従動輪22との間における搬送チェーン21の上部側が、被処理物Wを積載した状態で搬送始端位置P1から搬送終端位置P2へ搬送する搬送部26を構成している。主駆動輪32は、搬送終端位置P2において搬送チェーン21を牽引することによって被処理物Wを搬送するように構成されている。
【0023】
また、主駆動輪32と従動輪22との間における搬送チェーン21の下部側は、主駆動輪32側から従動輪22側へ回送されるリターン部27を構成している。リターン部27には、複数のガイド輪23,24,25が配置されている。
なお、搬送チェーン21の搬送部26は、連続熱処理炉10の装置フレーム10aに設けられた上側ガイド部材10a1によって下側から支持されており、リターン部27におけるガイド輪24,25間も、装置フレーム10aに設けられた下側ガイド部材10a2によって下側から支持されている。
【0024】
主駆動輪32よりも搬送方向Xの上流側(図2において右側)における主駆動輪32の近傍位置には、第1ガイド輪23が配置され、さらに、この第1ガイド輪23よりも搬送方向Xの上流側には、第2ガイド輪24が配置されている。そして、第1ガイド輪23と第2ガイド輪24との間において搬送チェーン21のリターン部27は部分的に弛んだ状態とされている。本実施形態では、第1ガイド輪23と第2ガイド輪24との間におけるリターン部27の弛んだ部分を第1弛み部28という。
【0025】
図3は、補助駆動手段41を拡大して示す側面図である。
図3に示されるように、補助駆動手段41は、搬送チェーン21のリターン部27に巻き掛けられる補助駆動輪42と、この補助駆動輪42を回転駆動する補助駆動モータ(補助駆動部)43とを備えている。補助駆動モータ43と補助駆動輪42とは、チェーンやベルトを用いた巻き掛け伝動機構44等によって動力伝達可能に連結されている。補助駆動輪42は、従動輪22よりも搬送方向Xの下流側における従動輪22の近傍位置に配置されている。補助駆動輪42と従動輪22との間の搬送チェーン21のリターン部27は部分的に弛んだ状態とされている。本実施形態では、補助駆動輪42と従動輪22との間におけるリターン部27の弛んだ部分を第2弛み部29という。
【0026】
補助駆動輪42よりも搬送方向Xの下流側における補助駆動輪42の近傍には第3ガイド輪25が配置されており、補助駆動輪42と第3ガイド輪25との間で搬送チェーン21が挟まれた状態で配策されている。
搬送装置11は、第2弛み部29における弛み量を測定する弛み測定部51を備えている。具体的に、弛み測定部51は、第2弛み部29における弛み量が、予め設定した最小限(最小限界量)L1に達していることを検出する最小弛み検出器52と、予め設定した最大限(最大限界量)L2に達していることを検出する最大弛み検出器53とを備えている。最小弛み検出器52及び最大弛み検出器53は、例えば、反射型又は透過型の光学センサからなり、各検出器52,53が発する光線を第2弛み部29の下端部が遮蔽するか否かによって第2弛み部29の弛み量が最小限L1又は最大限L2に達しているか否かを検出するように構成されている。
【0027】
以上の構成を有する搬送装置11において、主駆動手段31は、連続熱処理炉10の運転中、被処理物Wを搬送するために常時作動し、連続的に搬送チェーン21を回送させる。これに対して、補助駆動手段41は、弛み測定部51による測定結果に応じて間欠的に作動し、搬送チェーン21のリターン部27に回送のための駆動力を付与するようになっている。
【0028】
そして、補助駆動手段41が停止している状態で主駆動手段31が作動すると、搬送チェーン21の搬送部26が、主駆動輪32によって牽引されて搬送始端位置P1から搬送終端位置P2へ向けて回送され、さらに搬送チェーン21の第2弛み部29が順次搬送部26へ引き込まれる。したがって、第2弛み部29の弛み量は次第に小さくなっていく。また、第1弛み部28の弛み量は、第2弛み部29の弛み量が小さくなるのに伴って、次第に大きくなっていく。
【0029】
第2弛み部29における弛み量が最小限L1に達すると、その状態を最小弛み検出器52が検出し、補助駆動手段41における補助駆動モータ43が作動する。これにより、搬送チェーン21のリターン部27が補助駆動輪42によって回送される。補助駆動手段41による搬送チェーン21の回送速度は、主駆動手段31による搬送チェーン21の回送速度よりも高速に設定されている。例えば、補助駆動手段41による回送速度は、主駆動手段31による回送速度の約1.5倍程度とされる。そのため、補助駆動手段41が作動すると、第2弛み部29の弛み量は次第に増大する。そして、第2弛み部29の弛み量が最大限L2に達すると、その状態を最大弛み検出器53が検出し、補助駆動モータ43が停止する。これにより、補助駆動輪42による搬送チェーン21の回送が停止する。以上のような動作を繰り返し行うことによって補助駆動手段41が間欠的に作動し、第2弛み部29が常に維持されるようになっている。
【0030】
主駆動手段31は、搬送チェーン21のうち搬送部26とリターン部27の第2弛み部29とを牽引し、リターン部27における主駆動輪32から第1ガイド輪23までの間を押動して第1弛み部28に送り出している。したがって、主駆動手段31は、補助駆動手段41が作動するか否かに関わらず、搬送チェーン21の一部のみを回走させるようになっている。
【0031】
このとき、主駆動手段31によって牽引される搬送チェーン21の一部には当然に張力が発生する。この張力は、搬送部26に積載された被処理物Wの重量と搬送部26自体の重量とが上側ガイド部材10a1に付与されることによって生じる摩擦力と、第2弛み部29の重量とに応じた大きさとなる。したがって、この張力は、搬送終端位置P2において最大となる。
【0032】
このような張力の変化を図4に概略的に示している。この図4に実線で示されるように、搬送部26に生じる張力は、搬送終端位置P2において最大となり、搬送始端位置P1に向かうに従って比例的に小さくなり、搬送始端位置P1を超えて補助駆動輪42の位置P3では張力が最小となる。
一方、補助駆動手段41は、搬送チェーン21のリターン部27のうち、補助駆動輪42の位置P3から第1ガイド輪23までの間の部分を牽引する。そして、当該部分に生じる張力は、当該部分の重量が下側ガイド部材10a2に付与されることによって生じる摩擦力と、第1弛み部28の重量とに応じた大きさとなる。したがって、リターン部27における補助駆動輪42の位置P3から主駆動輪32の位置P2までに生じる張力は、図4の右側に示されるように変化する。
【0033】
また、図4には、本実施形態に対する比較例として、補助駆動手段41や第2弛み部29を備えない場合(従来の場合)に搬送部26に付与される張力を2点鎖線で示している。補助駆動手段41や第2弛み部29を備えない場合、主駆動手段31によって搬送チェーン21の全体が回送されることになるため、搬送チェーン21の搬送部26には、リターン部27の重量に応じた張力も加わり、最大の張力が過大となる。
したがって、本実施形態では、補助駆動手段41や第2弛み部29を備えることによって搬送チェーン21に付与される最大の張力を低減することが可能となる。このように搬送チェーン21に生じる負担を軽減することによって、搬送チェーン21によって搬送可能な被処理物Wの積載重量を高めることができる。
【0034】
特に、本実施形態のように搬送チェーン21がセラミック製である場合、金属製である場合に比べて強度が低下するため積載重量を高めるのが困難であり、強度を高めるために搬送チェーン21の構成部材の寸法を大きくすると、搬送チェーン21自体の重量増によって積載重量をそれほど高めることができず、しかも搬送チェーン21の熱容量の増大によって連続熱処理炉10における熱効率に悪影響を与える可能性がある。この点において、本実施形態では、搬送チェーン21の強度を高めることなく被処理物Wの積載重量を高めることができるので、セラミック製の搬送チェーン21を用いた搬送装置11に対して非常に有用である。
【0035】
また、本実施形態では、補助駆動手段41が間欠的に作動するので、補助駆動手段41が常時作動する場合に比べて、運転コストや騒音の低減等を図ることができる。
主駆動手段31と補助駆動手段41との間には、第1弛み部28が設けられているので、主駆動手段31と補助駆動手段41とがともに作動しているときに、両者の回送速度差によって搬送チェーン21を引っ張り合わないようにすることができる。
【0036】
また、本実施形態では、最小弛み検出器52及び最大弛み検出器53によって第2弛み部29の弛み量の最小限L1及び最大限L2を検出し、その検出結果に基づいて補助駆動手段41が作動するので、第2弛み部29の弛み量を正確にコントロールし、第2弛み部29を確実に維持することができる。
また、補助駆動手段41は、主駆動輪32と従動輪22との中間位置よりも従動輪22寄りに配置され、より詳しくは、被処理物Wの搬送始端位置P1の近傍に配置されているので、当該補助駆動手段41によって回送される搬送チェーン21の重量を大きくし、相対的に主駆動手段31によって回送される搬送チェーン21の重量を小さくすることができる。したがって、被処理物Wの積載重量を容易に高めることができる。
【0037】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内において適宜変更することができる。
例えば、第2弛み部29における弛み量を測定する弛み測定部51は、最小弛み検出器52及び最大弛み検出器53のいずれか一方のみを備えていてもよい。最小弛み検出器52のみを備える場合は、第2弛み部29における弛み量が最小限L1に達したことを最小弛み検出器52が検出したときに補助駆動手段41を作動させ、弛み量が最大限L2に達すると想定される時間が経過したタイミングで補助駆動手段41を停止させればよい。最大弛み検出器53のみを備える場合は、第2弛み部29における弛み量が最大限L2に達したことを最大弛み検出器53が検出したときに補助駆動手段41を停止させ、その後、弛み量が最小限L1に達すると想定される時間が経過したタイミングに補助駆動手段41を作動させればよい。一方の検出部のみを備えることによって部品点数を減らすことができ、製造コストを低減することができる。
【0038】
また、弛み測定部51は、第2弛み部29の重量に基づいて弛み量を測定するものであってもよい。この場合、従動輪22又は補助駆動輪42の支持部分等にロードセル等の重量センサを設けておき、この重量センサの検出結果に応じて補助駆動手段41を作動させればよい。
また、第2弛み部29や検出器52,53を省略するとともに、主駆動手段31における主駆動モータ33にかかる負荷を検出する負荷検出部を設け、その負荷が所定の最大限を超えたときに補助駆動手段41を作動させるように構成してもよい。この場合、主駆動モータ33にかかる負荷は、当該主駆動モータ33に供給される電流値等を計測することによって検出することが可能である。また、補助駆動手段41における補助駆動輪42は、停止中であっても搬送チェーン21の回送に追従して空転できるように一方向クラッチを介して支持すればよい。
【0039】
補助駆動手段41は、主駆動手段31とともに常時作動するものであってもよい。この場合、補助駆動手段41と主駆動手段31とは、同じ速度で搬送チェーン21を回送するものとすればよい。また、搬送チェーン21は、セラミック製に限らず金属製等であってもよい。
本発明の搬送装置11は、被処理物Wの表面処理を行う熱処理炉や、乾燥処理を行う熱処理炉等、あらゆる連続熱処理炉に適用することができる。
【符号の説明】
【0040】
10:連続熱処理炉
11:搬送装置
21:搬送チェーン
22:従動輪
26:搬送部
27:リターン部
28:第1弛み部
29:第2弛み部
31:主駆動手段
32:主駆動輪
33:主駆動モータ(主駆動部)
41:補助駆動手段
42:補助駆動輪
43:補助駆動モータ(補助駆動部)
51:弛み測定部
52:最小弛み検出器
53:最大弛み検出器
L1:最小限
L2:最大限
W :被処理物
図1
図2
図3
図4