(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0022】
図1は、リバースTN型液晶素子の原理を概略的に示す模式図である。リバースTN型液晶素子は、基本的な構成として、対向配置された上側基板1および下側基板2と、それらの間に設けられた液晶層3を備える。上側基板1と下側基板2のそれぞれの表面にはラビング処理に代表される配向処理が施される。これらの配向処理方向(図中に矢印で示す)が互いに交差するようにして上側基板1と下側基板2とが相対的に配置される。液晶層3は、ネマチック液晶材料を上側基板1と下側基板2の間の注入することによって形成される。この液晶層3には、液晶分子をその方位角方向において特定の方向(図示の例では右旋回方向)にねじれさせる作用を生じるカイラル材が添加された液晶材料が用いられる。上側基板1と下側基板2の相互間隔(セル厚)をd、カイラル材のカイラルピッチをpとすると、これらの比d/pの値は、例えば0.04〜0.75程度に設定される。このようなリバースTN型液晶素子は、カイラル材の作用により、初期状態においては液晶層3がスプレイ配向しながら捻れるスプレイツイスト状態(第2配向状態)となる。このスプレイツイスト状態の液晶層3に対してその層厚方向に飽和電圧を超える電圧を印加すると、液晶分子が左旋回方向に捻れるリバースツイスト状態(第1配向状態)に遷移する。このようなリバースツイスト状態の液晶層3にあっては、バルク中の液晶分子が傾いているために液晶素子の駆動電圧を低減する効果が現れる。
【0023】
図2(A)は、リバースツイスト状態からスプレイツイスト状態へ遷移させる際の液晶層の配向状態と電界方向の関係について説明するための概念図である。なお、ここでは誘電率異方性Δεが正の液晶材料を考える。
図2(A)の左側に示すように、基板面に水平な方向の電界(Electric field)に対して、リバースツイスト状態における液晶層の層厚方向の略中央の液晶分子(図中、模様を付した液晶分子)の長軸方向がなるべく平行ではなく、直交またはそれに近い状態となるように電界の印加方向を設定する。これにより、液晶層の層厚方向の略中央の液晶分子が電界方向に沿って再配向するため、
図2(A)の右側に示すように液晶層の配向状態はリバースツイスト状態(R-t states)からスプレイツイスト状態(S-t states)へ遷移する。なお、リバースツイスト状態の液晶層に対して、その層厚方向の略中央の液晶分子の長軸方向と平行かそれに近い状態となるようにして電界を印加した場合には、リバースツイスト状態からスプレイツイスト状態への遷移はほとんど生じない。これは、液晶層の層厚方向の略中央において電界による液晶分子の再配向がほとんど生じないからである。
【0024】
以上のことから、リバースTN型液晶素子において2つの配向状態間を自在に遷移させるためには、液晶層の層厚方向に対する電界(縦電界)とこれに直交する方向の電界(横電界)を発生させる必要がある。ただし、後述する中間調表示を考えた場合、必ずしもスプレイツイスト状態の液晶層の層厚方向の略中央における液晶分子の長軸方向と横電界の方向を完全に平行とすることが最適ではなく、平行(0°)から45°の範囲であればリバースツイスト状態からスプレイツイスト状態への遷移は可能である。
【0025】
図2(B)は、スプレイツイスト状態からさらに配向変化させる際の概念図である。上記したリバースTN型液晶素子においては、スプレイツイスト状態の液晶層に対してさらに横電界を与えてもリバースツイスト状態へ遷移することはないが、液晶層の基板との界面付近を除いたバルクでは液晶分子が電界方向へ揃うように配向変化する。この場合、電界の大きさに応じて連続的に液晶層の配向状態を変化させることができ、電界をある程度以上大きくすればホモジニアス配向に近い配向状態にできるため、透過光または反射光の制御をすることが可能である。また、液晶層の配向状態は電界を解除すれば元のスプレイツイスト状態に復元する。すなわち、ここでの配向変化は弾性変形であり、これを利用することにより中間調表示や動画表示に対応可能な光制御が可能となる。
【0026】
原理上、スプレイツイスト状態での液晶層の層厚方向における略中央の液晶分子の配向方向が横電界の方向と平行かそれに近い方向であるほど、横電界を印加した際に液晶層の液晶分子が電界方向と揃いやすい。この点からは、
図3(A)に示すように、液晶層3の層厚方向の略中央における液晶分子の配向方向は、上側基板1の配向処理方向R
Uと下側基板2の配向処理方向をR
Lのなす角φの二等分線の方向にほぼ一致するので、この液晶分子の配向方向と横電界の方向のなす角度が0°、すなわち両者が平行とすることが好ましいといえる。他方で、前述したように中間調表示も考慮すると、
図3(B)、
図3(C)に示すように、スプレイツイスト状態の液晶層の層厚方向の略中央における液晶分子の長軸方向と横電界の方向の関係は0°より大きく45°以下の範囲で好適な条件を適宜選択することができる。
図3(A)に示した場合における液晶層3の配向状態は、スプレイツイスト状態でのねじれ配向がくずれた(ねじれがほどけた)状態である。これに対して、
図3(B)、
図3(C)に示した場合における液晶層3の配向状態は、液晶分子のダイレクタ方向がスプレイツイスト状態とは異なる状態となっており、具体的にはねじれ配向がくずれた状態とダイレクタ方向が異なった状態が混在している状態である。
【0027】
なお、
図2(A)および
図2(B)は、図示の便宜上、基板界面付近の液晶分子も電界方向へ配向しているように描かれているが、実際には基板界面におけるアンカリングエネルギーにより基板界面付近の液晶分子は電界方向へ配向していないと考えられる。そして、基板界面付近から少し離れた位置(概ね分子が数個分)の液晶分子は電界方向へ少しずつ傾いて配向していると考えられ、液晶層の層厚方向の略中央における液晶分子はほぼ電界方向へ配向していると考えられる。
【0028】
次に、液晶素子の正面方向からのコントラスト比を向上させる観点から、プレティルト角およびねじれ角の好適な範囲について計算機シミュレーションによって検討した結果を説明する。計算条件としては、上記した
図1に示した構造の液晶素子を前提にして、セル厚dを6.5μm、屈折率異方性Δnを0.066に設定するとともに、ねじれ角を0°〜90°の範囲で設定し、カイラル材の添加量をd/pが0〜0.5の範囲となるように設定した。また、各偏光板の配置については、
図3(A)に示したように液晶層の層厚方向の略中央における液晶分子の配向方向に対して各偏光板の吸収軸A,Pの少なくとも一方が0°または90°の角度をもち、かつ各偏光板の吸収軸同士が交差するように設定した。また、プレティルト角についても種々の値に設定した。
【0029】
図4は、リバースTN型液晶素子の透過率およびコントラストのねじれ角依存性のシミュレーション結果を示す図である。ここでいう「ねじれ角」とはスプレイツイスト状態におけるねじれ角である(以下においても同様)。なお、図中「S−t」はスプレイツイスト状態を示し、「R−t」はリバースツイスト状態を示し、「CR」は液晶素子の基板面法線方向からのコントラスト比を示す(以下においても同様)。また、ここではリバースTN型液晶素子のプレティルト角を45°に設定し、d/pを0.1に設定し、ねじれ角を0°〜90°の範囲で設定した。図示のように、全体的にはねじれ角が小さいほどコントラスト比が高くなる傾向にあることが分かる。また、コントラスト比が特に高くなるねじれ角の数値範囲が存在することも分かる。
【0030】
図5は、リバースTN型液晶素子の透過率およびコントラストのd/p依存性のシミュレーション結果を示す図である。ここではリバースTN型液晶素子のプレティルト角を40°に設定し、ねじれ角を70°に設定し、d/pを0.05〜0.45の範囲で設定した。図示のように、この条件下ではd/pが低いほどコントラスト比が高くなることが分かる。
【0031】
図6は、種々のプレティルト角設定値におけるねじれ角とコントラスト比の関係のシミュレーション結果を示す図である。ここでは、d/pを0.1に設定した(ピッチは65μm)。また、プレティルト角については20°、30°、35°、40°、45°、47°のそれぞれに設定した。また、
図7(A)は、プレティルト角40°のときのシミュレーション結果を詳細に示す図であり、
図7(B)は、プレティルト角45°のときのシミュレーション結果を詳細に示す図であり、
図7(C)は、プレティルト角47°のときのシミュレーション結果を詳細に示す図である。各図に示すように、全体的にはプレティルト角を高くするほどコントラスト比が高くなる傾向が見られた。詳細には、プレティルト角の設定値が35°および40°のときはねじれ角が20°のときに最もコントラスト比が高くなり、プレティルト角の設定値が45°および47°のときはねじれ角が30°のときに最もコントラスト比が高くなることが分かった。また、ねじれ角が0°〜40°の範囲でいずれのプレティルト角の設定値でも比較的高いコントラスト比を得られることが分かる。また、ねじれ角が70°に達するとコントラスト比が4を下回ることが分かる。ここでコントラスト比4とは、新聞紙における代表的なコントラスト比である。コントラスト比が4を上回ることで実用上好ましいコントラスト比が得られていると判断できる。なお、プレティルト角の設定値をさらに高く設定したところ、概ね48°より高い設定値では双安定性を得られにくくなり、プレティルト角を50°にした場合には双安定性を得ることができなかった。このことから好適なプレティルト角の上限値は47°であるといえる。
【0032】
以上のようなシミュレーション結果から、プレティルト角を35°〜47°と比較的高く設定し、かつスプレイツイスト状態における液晶層60のねじれ角を0°〜70°未満(より好ましくは0°〜40°、さらに好ましくは20°〜30°)にすることで正面方向からのコントラスト比を向上させる効果が得られることが分かった。なお、特性の面から理想的なプレティルト角は45°付近であるが液晶素子を再現性よく(すなわち高い歩留まりで)作製するという観点からは35°〜40°程度のプレティルト角が好ましい。
【0033】
なお、上記のようにねじれ角0°の場合についても比較的に好適な結果が得られた理由について、シミュレーション結果に基づいて液晶層内における液晶分子の配向分布を確認した。
図8は、ねじれ角0°の場合の配向分布のシミュレーション結果を示す図である。図示のように、各基板の配向処理方向の関係から規定される見かけ上のねじれ角としては0°であっても、液晶層のバルク中では液晶分子の配向にねじれを生じていることが分かった(d/p=0の場合を除く)。具体的には、一方の基板側ではねじれ角がマイナスの値をとり、液晶層の層厚方向の略中央においてはねじれ角が0°になり、他方の基板側ではねじれ角がプラスの値をとる配向分布が得られている。なお、
図8に示す結果を得たシミュレーション条件としては、上記した条件のほか、弾性定数をK11=11.4(pN)、K22=5.7(pN)、K33=16.2(pN)とし、界面アンカリングエネルギーはいわゆるストロングアンカリング条件とし、プレティルト角は45°としたが、これは一例であり、他の数値条件でも同様の傾向が得られる。
【0034】
次に、リバースTN型液晶素子のより詳細な実施形態について説明する。
【0035】
(第1実施形態)
図9は、第1実施形態のリバースTN型液晶素子の構成例を示す断面図である。また、
図10は、
図9に示すリバースTN型液晶素子の平面図である。なお、
図9は
図10に示すa−a線における断面を示している。各図に示す本実施形態のリバースTN型液晶素子は、第1基板(下側基板)11、第2基板(上側基板)12、第1電極13、コモン線14、走査線15、絶縁膜16、半導体膜17、ソース電極18、ドレイン電極19、第2電極20、第1配向膜21、第2配向膜22、共通電極23、液晶層24、信号線25、絶縁膜26、第1偏光板(下側偏光板)31および第2偏光板(上側偏光板)32を含んで構成されている。
【0036】
第1基板11および第2基板12は、相互に対向配置されており、それぞれ例えばガラス基板、プラスチック基板等の透明基板である。第1基板11と第2基板12の相互間には、例えば多数のスペーサー(粒状体)が分散して配置されており(図示せず)、それらのスペーサーによって第1基板11と第2基板12との相互間隔が保たれる。
【0037】
第1電極13は、第1基板11の一面側に設けられている。この第1電極13は、
図10に示すように例えば略矩形状に形成されており、かつ一部がドレイン電極19と接続されている。この第1電極13は、例えばインジウム錫酸化物(ITO)などの透明導電膜をパターニングすることによって得られる。
【0038】
コモン線14は、第1基板11の一面側の絶縁膜26上に設けられており、一方向(
図10に示すY方向)に延在する。このコモン線14は、
図10に示すように第2電極20と接続されており、このコモン線14を介して第2電極20に対して所定の電位が与えられる。コモン線14としては、例えば、アルミニウムとモリブデンの積層膜などの金属膜が用いられる。なお、コモン線14は絶縁膜16の一面側に設けられ、信号線25と平行かつ走査線15と略直交する一方向(
図10に示すX方向)に延在してもよい。この場合、信号線25とコモン線14は交差することがないため、コモン線14は信号線25およびソース電極18と一体に形成してもよい。これらの配線としては、信号線25と同様に例えば、アルミニウムとモリブデンの積層膜などの金属膜が用いられる。また、この場合、後述する絶縁膜26の形成を省略し得る。
【0039】
走査線15は、第1基板11の一面側に設けられており、一方向(
図10に示すY方向)に延在する。
図10に示すように本例の走査線15は、平面視においてコモン線14との間に第1電極13を挟んで配置されている。走査線15としては、例えば、アルミニウムとモリブデンの積層膜などの金属膜が用いられる。
【0040】
絶縁膜16は、第1基板11の一面側に、第1電極13および走査線15を覆って設けられている。この絶縁膜16としては、例えば窒化シリコン膜、酸化シリコン膜あるいはこれらの積層膜が用いられる。
【0041】
半導体膜17は、絶縁膜16上であって走査線15と重畳する所定位置に設けられている。この半導体膜17は、
図10に示すように島状にパターニングされている。半導体膜17としては、例えばアモルファスシリコン膜が用いられる。走査線15の半導体膜17と重なる部分は薄膜トランジスタのゲート電極として機能する。また、絶縁膜16の半導体
膜17と重なる部分は薄膜トランジスタのゲート絶縁膜として機能する。
【0042】
ソース電極18は、絶縁膜16上の所定位置に設けられており、一部が半導体膜17と接続されている。本例のソース電極18は、
図10に示すように信号線25と一体に形成されている。これらのソース電極18および信号線25としては、例えばアルミニウムとモリブデンの積層膜などの金属膜が用いられる。
【0043】
ドレイン電極19は、絶縁膜16上の所定位置に設けられており、かつ一部が絶縁膜16を貫通して第1電極13と接続されている。このドレイン電極19としては、例えばアルミニウムとモリブデンの積層膜などの金属膜が用いられる。
【0044】
第2電極20は、絶縁膜26上であって、少なくとも一部が上記した第1電極13と重畳する所定位置に設けられている。この第2電極20は、
図10に示すように複数の開口部(スリット)20aを有する。この第2電極20は、
図10に示すようにコモン線14と接続されている。本例では、第2電極30は、コモン線14と一体に形成されており、例えばインジウム錫酸化物(ITO)などの透明導電膜をパターニングすることによって得られる。第2電極20のサイズは、例えば各開口部20aの間に存在する直線部の幅(
図10のX方向における長さ)が約20μm、各開口部20aの幅(
図10のX方向における長さ)を約20μmとすることができる。この第2電極20と上記の第1電極13の間に電圧を印加することにより、液晶層24に横電界を与えることができる。
【0045】
第1配向膜21は、第1基板11の一面側であって絶縁膜26上に、半導体膜17、ソース電極18、ドレイン電極19および第2電極20を覆って設けられている。同様に、第2配向膜22は、第2基板12の一面側に共通電極23を覆って設けられている。第1配向膜21と第2配向膜22のそれぞれに対しては、一軸配向処理(例えば、ラビング処理、光配向処理等)が施されている。本実施形態の第1配向膜21および第2配向膜22としては、比較的に高いプレティルト角(20°以上、より好ましくは35°±10°程度)を発現させるものが用いられる。第1配向膜21の配向処理方向と第2配向膜22の配向処理方向は、液晶層24の配向状態がリバースツイスト状態であるときの層厚方向の略中央における液晶分子の配向方向Dが第1電極13と第2電極20によって発生する電界方向Eと略直交するように設定されている(
図10参照)。
【0046】
共通電極23は、第2基板12の一面側に設けられている。この共通電極23は、少なくとも一部が第1電極13および第2電極20と重畳するように形成されている。この共通電極23は、例えばインジウム錫酸化物(ITO)などの透明導電膜をパターニングすることによって得られる。この共通電極23と上記の第1電極13(または第2電極20)の間に電圧を印加することにより、液晶層24に対して縦電界を与えることができる。
【0047】
液晶層24は、第1基板11の一面と第2基板12の一面の相互間に設けられている。本実施形態においては、誘電率異方性Δεが正(Δε>0)のネマチック液晶材料を用いて液晶層24が構成されている。液晶層24に図示された太線は、液晶層24内の液晶分子を模式的に示したものである。電圧無印加時における液晶分子は、第1基板11および第2基板12の各基板面に対して所定のプレティルト角を有して配向する。また、第1配向膜21と第2配向膜22の各々の配向処理方向RU、RL(
図10参照)のなす角度が例えば0°〜40°前後に設定されることにより、電圧無印加時における液晶層24の液晶分子は第1基板11と第2基板12の間で方位角方向にねじれて配向する。
【0048】
信号線25は、絶縁膜16の一面側に設けられており、コモン線14および走査線15と略直交する一方向(
図10に示すX方向)に延在する。
図10に示すように本例の信号線25は、ソース電極18と一体に形成されている。信号線25としては、例えば、アルミニウムとモリブデンの積層膜などの金属膜が用いられる。なお、信号線25は、絶縁膜16の一面側に設けられ、コモン線14および走査線15と略直交する一方向(
図10に示すX方向)に延在する場合について述べたが、信号線25は、絶縁膜16の一面側に設けられ、コモン線14と平行かつ走査線15と略直交する一方向(
図10に示すX方向)に延在してもよい。この場合、信号線25とコモン線14は交差することがないため、コモン線14は信号線25およびソース電極18と一体に形成してもよい。これらの配線としては、コモン線14と同様に例えば、アルミニウムとモリブデンの積層膜などの金属膜が用いられる。また、この場合、後述する絶縁膜26の形成を省略し得る。
【0049】
絶縁膜26は、第1基板11の一面側の絶縁膜16上に、半導体膜17、ソース電極18およびドレイン電極19を覆って設けられている。この絶縁膜26としては、例えば窒化シリコン膜、酸化シリコン膜あるいはこれらの積層膜が用いられる。
【0050】
第1偏光板31は、第1基板11の外側に配置されている。第2偏光板32は、第2基板12の外側に配置されている。本実施形態ではこの第2偏光板32側から利用者によって視認される。これらの第1偏光板31と第2偏光板32は、例えば互いの透過軸を略直交させて配置される(クロスニコル配置)。
【0051】
次に、第1実施形態に係るリバースTN型液晶素子の製造方法の一例について
図11、
図12を参照しながら説明する。
【0052】
まず、第1基板11および第2基板12として用いるためのガラス基板を用意する。例えば、板厚が0.7mmの無アルカリガラスからなるガラス基板が用いられる。そして、第1基板11の一面上に、所定の金属膜からなる走査線15を形成する(
図11(A))。具体的には、例えばスパッタ法などの成膜法により、第1基板11の一面全体にわたってアルミニウム膜を形成し、さらにその上にモリブデン膜を形成する。その後、アルミニウム膜およびモリブデン膜の積層膜をドライエッチング法などによってパターニングする。
【0053】
次に、第1基板11の一面側の所定位置にITO膜などからなる第1電極13を形成する(
図11(B))。具体的には、例えばスパッタ法などの成膜法により、第1基板11の一面全体にわたってインジウム錫酸化物膜(ITO膜)を形成する。その後、このITO膜をウェットエッチング法などによってパターニングする。
【0054】
次に、第1基板11の一面側に、第1電極13および走査線15を覆うようにして絶縁膜16を形成する(
図11(C))。具体的には、例えばスパッタ法やプラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)法などの成膜法によって窒化シリコン膜を形成する。
【0055】
次に、第1基板11の絶縁膜16上の所定位置に半導体膜17を形成する(
図11(D))。具体的には、例えばプラズマCVD法などの成膜法によってアモルファスシリコン膜を第1基板11の一面全体にわたって形成する。その後、このアモルファスシリコン膜をドライエッチング法などによって島状にパターニングする。
【0056】
次に、第1基板11の絶縁膜16上の所定位置にソース電極18、ドレイン電極19および信号線25を形成する(
図11(E))。具体的には、例えばスパッタ法などの成膜法により、第1基板11の一面全体にわたってモリブデン膜/アルミニウム膜/モリブデン膜の積層膜を形成する。その後、この積層膜をドライエッチング法などによってパターニングする。ドレイン電極19については、予め絶縁膜16の所定位置に第1電極13の一部を露出させる開口部を設けておき、その後にスパッタ法等によって金属膜を成膜し、パターニングすることによって形成可能である。
【0057】
次に、第1基板11の絶縁膜16上に、半導体膜
17、ソース電極18、ドレイン電極19aおよび信号線25を覆う絶縁膜26を形成する(
図11(F))。具体的には、例えばスパッタ法やプラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)法などの成膜法によって窒化シリコン膜を形成する。
【0058】
次に、第1基板11の絶縁膜26上の所定位置に、コモン線14および第2電極20を形成する(
図11(G))。具体的には、例えばスパッタ法などの成膜法により、第1基板11の一面全体にわたってITO膜を形成する。その後、このITO膜をウェットエッチング法などによってパターニングする。なお、さらに絶縁膜26上にパッシベーション膜を設けてもよい(図示せず)。
【0059】
一方、第2基板12の一面上には共通電極23を形成する(
図12(A))。具体的には、例えばスパッタ法などの成膜法により、第2基板12の一面全体にわたってITO膜を形成する。なお、実際の製造工程においては、基板全面に共通電極23が存在した場合には、メインシール部によるショート、スクライブからブレイキング時の膜剥離などを生じる可能性があるため、スパッタリング時にメタルマスクなどで外周を遮蔽(規制)することが好ましい。
【0060】
次に、第1基板11の絶縁膜16上の全体にわたって第1配向膜21を形成し(
図12(B))、第2基板12の共通電極23上の全体にわたって第2配向膜22を形成する(
図12(C))。ここでは例えば、一般的には垂直配向膜として用いられる材料の側鎖密度を低くしたポリイミド膜を用いて各配向膜を形成する。フレキソ印刷法、インクジェット法、スピンコート法、スリットコート法、スリット法とスピンコート法の組みあわせ等の適宜の方法で配向膜材料を第1基板11上、第2基板12上にそれぞれ適当な膜厚(例えば500〜800Å程度)で塗布し、熱処理(例えば160〜250℃、1時間焼成)を行う。その後、第1配向膜21、第2配向膜22のそれぞれに対して配向処理を行う。ここでは、例えばラビング処理を行い、その条件である押し込み量を0.8mmとする(ストロングラビング条件)。ここでは、第1基板11と第2基板12とを重ね合わせたときに各基板上の液晶分子のツイスト角が所定角度となるようにラビング方向を設定する。
【0061】
次に、一方の基板(例えば第1基板11)上にギャップコントロール剤を適量(例えば2〜5wt%)含んだメインシール剤を形成する。メインシール剤の形成は、例えばスクリーン印刷やディスペンサーによる。また、ギャップコントロール剤の径は液晶層24の厚さが4μm程度となるようにした。また、他方の基板(例えば第2基板12)上にはギャップコントロール剤を散布する。例えば本実施形態では、粒径4μmのプラスチックボールを乾式のギャップ散布機によって散布する。その後、第1基板11と第2基板12を重ね合わせ、プレス機などで圧力を一定に加えた状態で熱処理することにより、メインシール剤を硬化させる。ここでは、例えば150℃で3時間の熱処理を行う(
図12(D))。
【0062】
次に、第1基板11と第2基板12の間隙に液晶材料を充填することにより液晶層24を形成する(
図12(E))。液晶材料の充填は、例えば真空注入法によって行う。本実施形態では、誘電率異方性△εが正であり、かつカイラル材を添加した液晶材料を用いる。カイラル材の添加量は、d/pが0.04以上0.6以下となるように設定することが好ましく、例えばd/pが0.16となるように設定する。このような液晶材料の注入後、その注入口にエンドシール剤を塗布し封止する。そして、(液晶材料の相転移温度以上の温度で適宜熱処理(例えば120℃で1時間)を行うことにより、液晶層24の液晶分子の配向状態を整える。
【0063】
次に、第1基板11の外側に第1偏光板31を貼り合わせ、第2基板12の外側に第2偏光板32を貼り合わせる。これら第1偏光板31と第2偏光板32は、互いの透過軸を略直交配置(クロスニコル配置)とされる。以上のようにして第1実施形態のリバースTN型液晶素子が完成する(
図9参照)。
【0064】
以上のような工程を経て完成したリバースTN型液晶素子について、各電極を用いて液晶層に電圧を印加し、スプレイツイスト状態とリバースツイスト状態を相互に遷移させたときの様子を確認は以下の通りである。
【0065】
本実施形態のリバースTN型液晶素子は、初期状態において液晶層24の液晶分子がスプレイツイスト状態に配向する。このスプレイツイスト状態においては、外観上、比較的に明るい状態の白表示(明表示)が得られる。これに対し、上記したように第1電極13と共通電極23を用いて縦電界を発生させる。例えば、10V、100Hzの交流電圧(矩形波)を約0.01〜0.5秒間印加し、その後すぐに電圧の印加を止める。これにより、液晶層24の配向状態がリバースツイスト状態へ遷移する。このリバースツイスト状態においては、外観上、比較的に暗い状態の黒表示(暗表示)が得られる。例えば、このリバースTN型液晶素子をマトリクス状に配列して液晶表示装置を構成したとすると、このスプレイツイスト状態からリバースツイスト状態への遷移時は個別の画素ごと(各素子ごと)に制御することができる。このとき、第1電極13は電気的にフリーな状態であることが求められる。
【0066】
次に、走査線15に所定の電圧を印加することにより薄膜トランジスタを導通状態とし、かつ信号線25に所定の電圧を印加することにより第2電極20に電圧を与える。これにより、第1電極13と第2電極20の間に相対的な電位差が生じるので液晶層24には横電界が印加されることになり、液晶層24の配向状態はリバースツイスト状態からスプレイツイスト状態へ遷移する。走査線15へ印加する電圧(ゲート電圧)は例えば10Vのパルス波、信号線25に印加する電圧は例えば±10Vをフレーム毎に反転させた電圧とする。横電界を印加する時間は例えば約0.01〜0.5秒間程度である。
【0067】
上記したスプレイツイスト状態、リバースツイスト状態のいずれについても、電圧印加を解除した後にもその配向状態が維持されるため、表示を書き換えた後は全く電圧を印加する必要がなく、消費電力を極めて低く抑えることができる。例えば、このリバースTN型液晶素子をマトリクス状に配列して液晶表示装置を構成したとすると、本実施形態では、スプレイツイスト状態からリバースツイスト状態への遷移、およびリバースツイスト状態からスプレイツイスト状態への遷移のいずれも各画素ごとに制御することができる。したがって、後述する第2実施形態と比較して表示書き換えの自由度はより高くなる。例えば、現在提案されている電気泳動方式の電子ペーパーディスプレイではいずれも一旦画面全体を白表示または黒表示にリセットする必要があり、これを行わないと所望の位置に全ての電気泳動粒子を移動させることができなくなったり、繰り返し表示切り替えを行っていると電気泳動粒子が偏ったりする場合があるが、本実施形態によればそのような不都合を生じ得ない。
【0068】
一方、スプレイツイスト状態の液晶層に対してさらに横電界を印加すると、上記したように液晶層ではねじれ配向がほどけるように配向状態が変化し、かつこの配向状態の変化は電界の大きさに応じて連続的に生じる。詳細には、液晶層のバルクでは電界方向に沿ってほぼ一様に液晶分子が配向するが、基板との界面付近では配向膜による配向規制力を受けて配向方向がほとんど変化しない。その結果、スプレイツイスト状態のねじれ配向がくずれ、この液晶層を通過する光の偏光状態も変化する。
【0069】
(第2実施形態)
図13は、第2実施形態のリバースTN型液晶素子の構成例を示す断面図である。また、
図14は、
図13に示すリバースTN型液晶素子の平面図である。なお、
図13は
図14に示すb−b線における断面を示している。各図に示す本実施形態のリバースTN型液晶素子は、第1基板(下側基板)11、第2基板(上側基板)12、第1電極13、コモン線14a、走査線15、絶縁膜16、半導体膜17、ソース電極18、ドレイン電極19a、第2電極(画素電極)20、第1配向膜21、第2配向膜22、共通電極23、液晶層24、信号線25、第1偏光板(下側偏光板)31および第2偏光板(上側偏光板)32を含んで構成されている。なお、第1実施形態と共通する構成要素については同一符号を用いており、それらの詳細な説明は省略する。
【0070】
コモン線14aは、第1基板11の一面側に設けられており、一方向(
図14に示すY方向)に延在する。このコモン線14aを介して第1電極13に対して所定の電位が与えられる。コモン線14aとしては、例えば、アルミニウムとモリブデンの積層膜などの金属膜が用いられる。
【0071】
絶縁膜16は、第1基板11の一面側に、第1電極13、コモン線14aおよび走査線15を覆って設けられている。この絶縁膜16としては、例えば窒化シリコン膜、酸化シリコン膜あるいはこれらの積層膜が用いられる。
【0072】
ドレイン電極19aは、絶縁膜16上の所定位置に設けられており、一部が半導体膜17と接続されている。このドレイン電極19aとしては、例えばアルミニウムとモリブデンの積層膜などの金属膜が用いられる。
【0073】
第2電極20は、絶縁膜16上であって、少なくとも一部が上記した第1電極13と重畳する所定位置に設けられている。この第2電極20は、
図14に示すように複数の開口部(スリット)20aを有する。この第2電極20は、例えばインジウム錫酸化物(ITO)などの透明導電膜をパターニングすることによって得られる。第2電極20のサイズは、例えば各開口部20aの間に存在する直線部の幅(
図14のX方向における長さ)が約20μm、各開口部20aの幅(
図14のX方向における長さ)を約20μmとすることができる。この第2電極20と上記の第1電極13の間に電圧を印加することにより、液晶層24に横電界を与えることができる。
【0074】
第1配向膜21は、第1基板11の一面側であって絶縁膜16上に、半導体膜17、ソース電極18、ドレイン電極19aおよび第2電極20を覆って設けられている。同様に、第2配向膜22は、第2基板12の一面側に共通電極23を覆って設けられている。
【0075】
次に、第2実施形態に係るリバースTN型液晶素子の製造方法の一例について
図15、
図16を参照しながら説明する。
【0076】
まず、第1基板11および第2基板12として用いるためのガラス基板を用意する。次に、第1基板11の一面上にコモン線14aおよび走査線15を形成し(
図15(A))さらに、第1基板11の一面側の所定位置に第1電極13を形成する(
図15(B))。
【0077】
次に、第1基板11の一面側に、第1電極13、コモン線14aおよび走査線15を覆うようにして絶縁膜16を形成し(
図15(C))、さらに、第1基板11の絶縁膜16上の所定位置に半導体膜17を形成する(
図15(D))。
【0078】
次に、第1基板11の絶縁膜16上の所定位置にソース電極18、ドレイン電極19aおよび信号線25を形成し(
図15(E))、さらに、第1基板11の絶縁膜16上の所定位置に第2電極20を形成する(
図15(F))。なお、さらに絶縁膜16上にパッシベーション膜を設けてもよい(図示せず)。一方で、第2基板12の一面上に共通電極23を形成する(
図15(G))。
【0079】
次に、第1基板11の絶縁膜16上の全体にわたって第1配向膜21を形成し(
図16(A))、第2基板12の共通電極23上の全体にわたって第2配向膜22を形成する(
図16(B))。
【0080】
次に、一方の基板上にメインシール剤を形成し、他方の基板上にはギャップコントロール剤を散布した後に、第1基板11と第2基板12を重ね合わせ、プレス機などで圧力を一定に加えた状態で熱処理することにより、メインシール剤を硬化させる(
図16(C))。次に、第1基板11と第2基板12の間隙に液晶材料を充填することにより液晶層24を形成する(
図16(D))。
【0081】
次に、第1基板11の外側に第1偏光板31を貼り合わせ、第2基板12の外側に第2偏光板32を貼り合わせる。これら第1偏光板31と第2偏光板32は、互いの透過軸を略直交配置(クロスニコル配置)とされる。以上のようにして第2実施形態のリバースTN型液晶素子が完成する(
図13参照)。
【0082】
以上のような工程を経て完成したリバースTN型液晶素子について、各電極を用いて液晶層に電圧を印加し、スプレイツイスト状態とリバースツイスト状態を相互に遷移させたときの様子を確認は以下の通り確認される。
【0083】
本実施形態のリバースTN型液晶素子は、初期状態において液晶層24の液晶分子がスプレイツイスト状態に配向する。このスプレイツイスト状態においては、外観上、比較的に明るい状態の白表示(明表示)が得られる。これに対し、第1電極13と共通電極23のそれぞれに電圧を与えることにより縦電界を発生させる。例えば、10V、100Hzの交流電圧(矩形波)を約0.5〜1秒間印加し、その後すぐに電圧印加を解除する。これにより、液晶層24の配向状態がリバースツイスト状態へ遷移する。このリバースツイスト状態においては、外観上、比較的に暗い状態の黒表示(暗表示)が得られる。例えば、このリバースTN型液晶素子をマトリクス状に配列して液晶表示装置を構成したとすると、このスプレイツイスト状態からリバースツイスト状態への遷移時は個別の画素ごと(各素子ごと)に制御することが難しいため、状態遷移は全画素同時に、またはコモン線14を共有する複数の第1電極13のラインごとに制御される。
【0084】
次に、走査線15に所定の電圧を印加することにより薄膜トランジスタを導通状態とし、かつ電圧印加手段から信号線25に所定の電圧を印加することにより薄膜トランジスタを介して第2電極20に電圧を与える。これにより、第1電極13と第2電極20の間に相対的な電位差が生じるので液晶層24には横電界が印加されることになり、液晶層24の配向状態はリバースツイスト状態からスプレイツイスト状態へ遷移する。走査線15へ印加する電圧(ゲート電圧)は例えば10Vのパルス波、信号線25に印加する電圧は例えば±10Vをフレーム毎に反転させた電圧とする。横電界を印加する時間は例えば約0.01から0.5秒間程度である。
【0085】
上記したスプレイツイスト状態、リバースツイスト状態のいずれについても、電圧印加を解除した後にもその配向状態が維持されるため、表示を書き換えた後は基本的に電圧を印加する必要がなく、消費電力を極めて低く抑えることができる。例えば、このリバースTN型液晶素子をマトリクス状に配列して液晶表示装置を構成したとすると、再び表示を書き換えたい場合には、全画素同時またはコモン線14を共有する複数の第1電極13のラインごとに制御して縦電界を印加し、続いて薄膜トランジスタを用いて第2電極20への電圧印加/非印加を制御することで各画素ごとに横電界を選択的に印加することで所望の画像表示を行うことができる。ラインごとに表示を書き換える方式は小説などの文章を読む場合には読み終わったラインを順に書き換えていけばよいので切り替えに多少の時間を要したとしても読者のストレスを軽減できる。
【0086】
一方、スプレイツイスト状態の液晶層に対してさらに横電界を印加すると上記したように液晶層ではねじれ配向がほどけるように配向状態が変化し、かつこの配向状態の変化は電界の大きさに応じて連続的に生じる。詳細には、液晶層のバルクでは電界方向に沿ってほぼ一様に液晶分子が配向するが、基板との界面付近では配向膜による配向規制力を受けて配向方向がほとんど変化しない。その結果、スプレイツイスト状態のねじれ配向がくずれ、この液晶層を通過する光の偏光状態も変化する。
【0087】
(第3実施形態)
図17(A)は、第3実施形態のリバースTN型液晶素子の構成例を模式的に示す断面図である。
図17(A)に示す第3実施形態のリバースTN型液晶素子は、外部からの光を利用して表示を行う反射型の液晶素子であり、液晶パネル50と、この液晶パネル50の下面側に配置される反射板51と、液晶パネル50の上面側に配置される散乱板52、この散乱板52に重ねて配置されるλ/4波長板53、このλ/4波長板53に重ねて配置される偏光板54を備える。反射板51としては、例えば銀フィルムを用いることができる。また、散乱板52としては、例えばヘイズ値が43%〜45%のものを複数枚重ねたものを用いることができる。また、λ/4波長板53としては、例えば位相差が約137nmのものを用いることができる。なお、散乱板
52は液晶パネル50の下面側に配置されてもよい。この場合には反射板51と液晶パネル50の相互間に散乱板53が配置される。
【0088】
図17(B)に示すように、液晶パネル50における下側基板のラビング方向R
L、上側基板のラビング方向R
Uのなす角度φは、例えば30°に設定される。液晶層の液晶材料には、例えばd/p=0.1となるようにカイラル材が添加される。液晶層の液晶材料のΔnの値は例えば0.065〜0.15程度である。λ/4波長板53の位相差軸P’は偏光板54の透過軸と略45°の角度に設定される。液晶パネル50の内部構造については、上記した第1実施形態または第2実施形態の液晶素子と同様である(いずれも偏光板を除く)。
【0089】
図18は、第3実施形態のリバースTN型液晶素子の構成例を示す断面図である。ここでは一例として、液晶パネル50として第1実施形態の液晶素子を採用した場合について図示するが、第2実施形態の液晶素子を採用した場合も同様である。この液晶パネル50における第1電極13bは、金属膜からなり、さらに表面に凹凸が設けられている。これにより、第1電極13bは、反射板51および散乱板52の機能も兼ねることができる。第3実施形態のリバースTN型液晶素子の製造方法については上記した第1実施形態または第2実施形態と同様であり、例えば第1電極13bの形成工程を走査線15の形成工程と共通化すれば、それ以外は共通の工程を採用することができる。なお、第1電極13bが反射板51の機能のみを兼ね、散乱板52については上記のように外付けとしてもよい。
【0090】
(第4実施形態)
次に、上記した第1〜第3実施形態のいずれかの液晶素子の有するメモリー性を利用した低消費電力駆動が可能な液晶表示装置の構成例について説明する。
【0091】
図19は、第4実施形態の液晶表示装置の構成例を模式的に示す図である。
図19に示す液晶表示装置は、複数の画素部100をマトリクス状に配列して構成されるアクティブマトリクス型の液晶表示装置であり、各画素部100として上記したいずれかの実施形態の液晶素子が用いられている。具体的には、液晶表示装置は、第1方向に延びる複数の走査線101と、各走査線101に対して電圧を供給するドライバー104と、各々が走査線101と直交して第2方向に延びる複数の信号線102ならびにコモン線103と、各信号線102に対して電圧を供給するドライバー105と、各コモン線103に対して電圧を供給するドライバー106と、各走査線101と各信号線102の交点に設けられた画素部100を含んで構成されている。各画素部100は、第1電極または第2電極の一方がコモン線103に接続され、他方が薄膜トランジスタに接続される。また、共通電極については各画素部100に共通に設けられる。
【0092】
以上のような各実施形態によれば、2つの配向状態間の遷移を生じさせるのに適したスイッチング素子および電極の構造を有する新規な液晶素子が得られる。また、液晶素子の2つの配向状態の双安定性(メモリー性)を利用することにより表示書き換え時以外には基本的に電力を必要しない低消費電力な液晶表示装置が得られる。さらに、中間調表示や動画表示にも対応可能な液晶表示装置が得られる。また、コントラスト比も向上させることができる。
【0093】
なお、本発明は上述した内容に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内において種々に変形して実施をすることが可能である。
【0094】
例えば、上記した実施形態では第1偏光板と第2偏光板の各透過軸のなす角度を90°程度としたノーマリーホワイト状態の液晶素子について例示していたが、ノーマリーブラック状態の液晶素子としても構わない。また、配向処理方法についてはラビング法に限定されない。
【0095】
また、スイッチング素子の一例としての薄膜トランジスタの構造は例示のボトムゲート型に限定されず、トップゲート型であってもよい。
【0096】
また、第2電極は上記のような複数のスリットを有するものに限定されず、例えば複数の電極枝(直線部)を有する櫛歯状電極であってもよい。さらに、第1電極についても櫛歯状電極とし、第2電極の各電極枝と第1電極の各電極枝とを互い違いに配置してもよい。この場合には、第1電極と第2電極を同一面上に配置して横電界を発生させることが可能となる(IPSモード)。