(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態に係る車両用ドアロック装置(以下、単に「ドアロック装置」ともいう)を複数の図面を参照しながら説明する。なお、当該図面では、車両又はドアロック装置のハウジングについての前方及び後方をそれぞれ矢印X1及び矢印X2で示し、車両又はドアロック装置のハウジングについての左方及び右方をそれぞれ矢印Y1及び矢印Y2で示し、車両又はドアロック装置のハウジングについての上方及び下方をそれぞれ矢印Z1及び矢印Z2で示している。車両ドアに組付けられる前の状態のドアロック装置に対して、また車両ドアに組付けられた後の状態のドアロック装置に対して、これらの方向を適用することができる。
【0013】
図1に示されるように、本実施の形態のドアロック装置100は、車両ドアDRを構成する車両外側のドアアウタパネルと車両内側のドアインナパネルとによって区画される領域に配置されている。
図1にはこの車両ドアDRの典型例として後席右側の車両ドアが記載されている。
【0014】
ドアロック装置100のハウジング101は、いずれも樹脂材料からなる車外側構成部材101a及び車内側構成部材101bが互いに接合されることによって構成されている。ハウジング101はハウジング表面から延出する凸部102を備えている。この凸部102は、典型的には車外側構成部材101aの縁部に沿って立設する第1リブ102aと車内側構成部材101bの縁部に沿って立設する第2リブ102bとがレーザー溶着によって互いに接合されることによって形成される。この凸部102は、車外側から車内側に浸入しようとする水の流れを阻止する止水機能を果たす。ハウジング101は、ラッチ機構110及びロック機構120を含む複数の構成要素を収容するための収容空間を有する。即ち、このハウジング101は、少なくともラッチ機構110及びロック機構120を収容する収容体として構成される。このハウジング101では、典型的には、ラッチ機構110のための収容空間は車体BDに固定されたストライカSTに対向するように車両後方側に設けられ、その収容空間よりも車両前方側にロック機構120のための収容空間が設けられる。このハウジング101が本発明の「ハウジング」に相当する。
【0015】
ハウジング101の下部には樹脂材料によって構成された保護部材(「プロテクター」ともいう)130が取付けられている。この保護部材130は、ハウジング101の保護のためにハウジング101に取付けられる、ハウジング101とは別体構造の部材である。この保護部材130によれば、ハウジング101に収容された、ドアロック装置100の構成要素はハウジング101外に存在する水から保護される。この保護部材130が本発明の「保護部材」に相当する。
【0016】
ラッチ機構110は、車体BDに取付けられたストライカSTとの係合によって車両ドアDRを閉止状態に保持可能である。ロック機構120は、ラッチ機構110をストライカSTとの係合が解除可能なアンロック状態、或いはストライカSTとの係合が解除不能なロック状態に設定する。ラッチ機構110及びロック機構120がそれぞれ、本発明の「ラッチ機構」及び「ロック機構」に相当する。これらラッチ機構110及びロック機構120の更なる具体的な構造については、例えば特開2013−167145号公報に開示のドアロック装置の構造が参照される。
【0017】
図2に示されるように、ロック機構120は、インサイドオープンレバー121、アウトサイドオープンレバー(図示省略)、アクティブレバー122を備えている。インサイドオープンレバー121は、車両ドアDRに設けられたインサイドドアハンドル121aにインサイドオープンケーブルW1を介して接続されている。このため、インサイドオープンレバー121は、インサイドドアハンドル121aの操作によって回転動作する。アウトサイドオープンレバーは、車両ドアDRに設けられたアウトサイドドアハンドル(図示省略)に接続されている。このため、アウトサイドオープンレバーは、アウトサイドドアハンドルの操作によって回転動作する。アクティブレバー122は、車両ドアDRに設けられたドアロックノブ122aにロッキングケーブルW2を介して接続されている。このため、アクティブレバー122は、ドアロックノブ122a及びキーシリンダ(図示省略)の操作によって回転動作する。
【0018】
インサイドオープンケーブルW1及びロッキングケーブルW2はいずれも、中空構造のアウターケーブルの内側にインナーケーブルが移動可能に挿入されたコントロールケーブルである。インサイドオープンケーブルW1では、アウターケーブルの端部から露出したインナーケーブルがインサイドオープンレバー121に係止される。同様に、ロッキングケーブルW2では、アウターケーブルの端部から露出したインナーケーブルがアクティブレバー122に係止される。これらインサイドオープンケーブルW1及びロッキングケーブルW2はいずれも、ハウジング101に設けられた立設壁106と、保護部材130に設けられた2つの立設壁136,137とに架設されて保持されることによってハウジング101に組み付けられる。インサイドオープンケーブルW1は、保護部材130に設けられた開口部(
図1中のケーブル導出開口部130a)を通じて保護部材130外に導出されている。同様に、ロッキングケーブルW2は、保護部材130に設けられた開口部(
図1中のケーブル導出開口部130b)を通じて保護部材130外に導出されている。
【0019】
図2及び
図3に示されるように、保護部材130は、第1カバー部131及び第2カバー部141を備えている。第1カバー部131は、前記の立設壁136,137を備えている。この第1カバー部131は、立設壁136,137にケーブルW1,W2が架設される前にハウジング101に取り付けられる。この第1カバー部131は、2つのヒンジ部150,150を介して第2カバー部141に連結されている。この場合、ヒンジ部150,150は、いずれも樹脂材料からなる第1カバー部131と第2カバー部141との間に設けられた薄肉部分であり、この薄肉部分の柔軟性を利用してヒンジ機能を生じさせる、所謂「インテグラルヒンジ」として構成されている。従って、作業者は、第2カバー部141を把持した状態で、当該第2カバー部141を第1カバー部131に対してヒンジ部150,150(ヒンジ線150a)を中心に回動させることができる。
【0020】
保護部材130は、第1カバー部131、第2カバー部141及びヒンジ部150,150が樹脂材料によって一体成型されている。これにより保護部材130の構造を簡素化することができる。また、この保護部材130では、第1カバー部131の立設壁136から突出する突出壁136aと、第2カバー部141の立設壁148からそれぞれ突出する2つの突出壁148a,148aとによって、上記のケーブル導出開口部130a,130bが取り囲まれている。この場合、突出壁136aと突出壁148a,148aとの協働によって、ケーブル導出開口部130a,130bに流入しようとする水の流れを阻止することができる。ここでいう第1カバー部131及び第2カバー部141がそれぞれ、本発明の「第1カバー部」及び「第2カバー部」に相当する。
【0021】
保護部材130の1つの態様では、第2カバー部141は第1カバー部131の延在面に沿って水平状に延在する所定の展開位置(
図2及び
図3に示す位置)に設定される。第2カバー部141が展開位置にある場合、第1カバー部131に対して第2カバー部141が概ね180°開いた状態が形成される。一般的には、保護部材130の樹脂成型後に一度もヒンジ部150,150での折り曲げがなされていない初期状態では、第2カバー部141が前記の展開位置にある。
【0022】
保護部材130の別の態様では、第2カバー部141は第1カバー部131の立設壁136,137を車内側から完全に被覆する閉鎖位置(
図1に示す位置)に設定される。この閉鎖位置では、第1カバー部131のカバー内面と第2カバー部141のカバー内面とが互いに対向する状態にある。また、第2カバー部141を展開位置と閉鎖位置との間の任意の位置に設定できることは勿論である。このため、第1カバー部131がハウジング101に取り付けられ、且つ立設壁136,137にケーブルW1,W2が架設される前に、第2カバー部141を展開位置に設定することができる。その後、立設壁136,137にケーブルW1,W2が架設された後に、第2カバー部141をヒンジ部150,150を中心に展開位置から閉鎖位置まで回動させることができる。
【0023】
立設壁136は、保護部材130のうち外面に露出した外壁として構成されている。これにより、車両前方から保護部材130内に浸入しようとする水の流れが立設壁136によって阻止される。これに対して、立設壁137は保護部材130の内部に設けられた内壁として構成されている。これにより、車両前方から保護部材130内に浸入し更にハウジング101に向けて流れようとする水の流れが立設壁137によって阻止される。即ち、ハウジング101に向けて流れようとする水の流れが2つの立設壁136,137によって二段階で阻止される。
【0024】
立設壁136は、
図4に示されるように、ハウジング101の取付け面(
図4では車内側構成部材101bの取付け面101c)に向けて延出する板状の延出片として構成される。この立設壁136の延出先端部136bは、先端に向かうにつれて板厚が漸減するように傾斜した傾斜面136cを有し、この傾斜面136cが取付け面101cに沿った形状をなしている。この場合、立設壁136の傾斜面136cは、取付け面101cと面当たりする当接面として構成される。例えば、ハウジング101の取付け面101cが平坦面である場合には、立設壁136の傾斜面136cを当該平坦面に倣った平坦面にすることができ、ハウジング101の取付け面101cが湾曲面である場合には、立設壁136の傾斜面136cを当該湾曲面に倣った湾曲面にすることができる。この面当たり構造によれば、保護部材130の第1カバー部131に設けられた立設壁136とハウジング101の取付け面との間で高い水シール効果を得ることができる。特に、立設壁136の延出先端部136bに傾斜面136cを設けることによって、立設壁136の板厚が一定であっても延出先端部136bと取付け面101cとの当接面積を増やすことができ、水シール効果を高めるのに有利である。
【0025】
また、立設壁136は、保護部材130がハウジング101に取付けられた状態で、第1基準線L1に対して予め定められた角度θをなす第2基準線L2に沿って延在するように角度設定がなされている。この場合、第1基準線L1は、典型的にはドアロック装置の搭載車両が平地に設置された状態で鉛直方向に延びる線として規定される。角度θは、この搭載車両が坂道走行等において傾斜した場合でも、第2基準線L2が水平方向に延在する位置まで達しないような値(典型的には15〜20度までの範囲内の値)に設定されるのが好ましい。これにより、ハウジング101に対して立設壁136を鋭角に当てることができ、搭載車両の走行状況によらず立設壁136の表面に沿って水を流下させることができる。その結果、立設壁136の傾斜面136cが取付け面101cと面当たりした部位に水溜まりが形成されて当該部位から水が浸入するのを阻止することができる。
【0026】
なお、立設壁136の延出先端部136bについては、
図4に示される構造に代えて
図5に示される構造を採用することもできる。
図5中の立設壁136の延出先端部136bに設けられた傾斜面136cは、ハウジング101の取付け面101cに押し当てられて撓み変形した状態で当該取付け面101cと面当たりする当接面として構成されている。この目的のために、立設壁136では、傾斜面136cが撓み変形し易くなるように延出先端部136bを他の部位に比べて薄肉化するのが好ましい。この場合も、
図4に示す構成と同様に、簡単な構造によって立設壁136とハウジング101の取付け面との間で高い水シール効果を得ることができる。特に、保護部材130の傾斜面136cが撓み変形することによってハウジング101の取付け面101cに対する押し付け力が高まるため、水シール効果を高めるのに有利である。また、立設壁136の延出先端部136bと取付け面101cとの当接面積を増やすことができる。
【0027】
保護部材130の第1カバー部131は、ハウジング101に取付けられる。この目的のために、特に
図6が参照されるように、第1カバー部131には、当該第1カバー部131をハウジング101に係止可能な係止手段(係止爪132、係止凹部(係止スリット)138,139)が設けられている。係止爪132は、ハウジング101の凸部102のうち車両下方(ハウジング下方)Z2に向けて延出する延出領域103に係合可能な爪形状を有する。係止凹部138は、第1カバー部131の立設壁136に設けられ、ハウジング101の凸部102のうち車両前方(ハウジング前方)X1に向けて延出する延出領域104に係合可能な凹部として構成されている。係止凹部139は、第1カバー部131の立設壁137に設けられ、ハウジング101の凸部102の延出領域104に係合可能な凹部として構成されている。
【0028】
従って、保護部材130の第1カバー部131の上記係止手段によれば、第1カバー部131がハウジング101に取付けられた状態では、
図6が参照されるように、ハウジング101の延出領域103に係止爪132が係合し、且つハウジング101の延出領域104に係止凹部138,139がそれぞれ係合する。なお、この
図6では、便宜上、第2カバー部141が除去された状態の保護部材130を示している。また、第1カバー部131は、第2カバー部141が閉鎖位置に設定されたときに当該第2カバー部141に係合するように構成されている。この目的のために、第1カバー部131には、第2カバー部141の開口部(
図3中の開口部144)に係合可能な係合突起135が設けられている。この係合突起135は、材料の弾性を利用して開口部144に嵌め込まれる構造、所謂「スナップフィット構造」を有する。
【0029】
一方で、
図7に示されるように、第2カバー部141には、当該第2カバー部141をハウジング101に係止可能な係止手段(係止爪142、係止凹部(係止スリット)149)が設けられている。なお、この
図7では、便宜上、第1カバー部131が除去された状態の保護部材130を示している。係止爪142は、ハウジング101の凸部102のうち車両後方(ハウジング後方)X2に向けて延出する領域(
図2中の延出領域105)に係合可能な爪形状を有する。係止凹部149は、第2カバー部141の立設壁148に設けられ、第1カバー部131の係止凹部138,139と同様に、ハウジング101の凸部102の延出領域104に係合可能な凹部として構成されている。ここでいう凸部102及び係止凹部138,139,149がそれぞれ本発明の「凸部」及び「係止凹部」に相当する。
【0030】
従って、保護部材130の第2カバー部141の上記係止手段によれば、第2カバー部141が閉鎖位置に設定された状態では、
図8が参照されるように、ハウジング101(
図2中の延出領域105)に係止爪142が係合し、且つハウジング101の延出領域104に係止凹部149が係合する。更に、前述のように、第2カバー部141の開口部144に第1カバー部131の係合突起135が嵌め込まれる。
【0031】
詳細については後述するが、この第2カバー部141のカバー表面には、
図8に示されるように干渉壁145、対向壁146及び水誘導スリット147が設けられている。干渉壁145は、車両左方(ハウジング左方)Y1に向けて突出する凸部が車両上下方向(ハウジング上下方向)Z1,Z2に沿って連続状に延在することによって形成されている。対向壁146は、車両左方(ハウジング左方)Y1に向けて突出する凸部が車両前後方向(ハウジング前後方向)X1,X2に沿って連続状に延在することによって形成されている。水誘導スリット147は、干渉壁145と対向壁146との境界部分に形成されている。
【0032】
上記構成の保護部材130では、ハウジング101に収容された構成要素が凍結したり錆びたりするのを防止するために、当該保護部材130に開口形成された開口部への水の浸入を阻止する構造が必要になる。これに関し、
図8に示されるように、第2カバー部141の開口部144は、前記のケーブル導出開口部130a,130bよりもハウジング上方に設けられており、ハウジング101のハウジング表面を流下する水に対しては優先して浸水保護を図りたい部位である。そこで、本実施の形態のドアロック装置100は、少なくともこの開口部144を浸水保護対象とした水誘導構造を備えている。
【0033】
この水誘導構造は、保護部材130に開口形成された開口部144を回避するように水を誘導する機能を果たす。この目的のために、この水誘導構造は、ハウジング101のハウジング表面(車内側構成部材101bの側面)にハウジング上下方向について互いに離間して配置された2つの水誘導リブ107,108と、保護部材130の第2カバー部141に設けられた干渉壁145と、を備えている。
【0034】
水誘導リブ107は、開口部144よりも上方において車内側構成部材101bの側面にハウジング前後方向X1,X2に沿って長尺状に立設されている。この水誘導リブ107は、車両ドア内に侵入した水をそのリブ上面に沿って開口部144よりも上方の、予め定められた水誘導領域107aへと誘導する機能を果たす。
【0035】
水誘導リブ108は、水誘導リブ107よりも下方において車内側構成部材101bの側面にハウジング前後方向X1,X2に沿って長尺状に立設されている。この水誘導リブ108は、車両ドア内に侵入した水をそのリブ上面に沿って開口部144よりも下方の、予め定められた水誘導領域108aへと誘導する機能を果たす。
【0036】
干渉壁145は、水誘導リブ107の水誘導領域107aと開口部144との間に介在し、且つ水誘導リブ108の水誘導領域108aと開口部144との間にハウジング上下方向Z1,Z2に沿って介在している。従って、この干渉壁145は、水誘導領域107a,108aのそれぞれから開口部144へと向かう水の流れと干渉する機能を果たす。従って、水誘導領域107a,108aのそれぞれから開口部144へと向かう水の流れを干渉壁145によってブロックして邪魔することができ、開口部144に水が浸入し難くなる。また、干渉壁145は、水誘導リブ107及び水誘導リブ108の双方に対向して長尺状に延在しており、水誘導領域107aに誘導された水を更に合流領域107bまで誘導するように構成されている。
【0037】
この場合、合流領域107bは、開口部144よりもハウジング下方において水誘導リブ108のリブ上面に位置し、且つハウジング前後方向X1,X2について水誘導領域107aよりも開口部144から離間している。従って、水誘導リブ107によって合流領域107bまで誘導した水を、更に干渉壁145によって開口部144から離間する方向に誘導しつつ、水誘導リブ108によって合流領域107bまで誘導した水と合流させることができる。その結果、保護部材130の開口部144の上方領域から下方領域までの範囲にわたって開口部144に向けて水が流れ難い専用の誘導経路を形成することができ、開口部144に対する浸水防止効果を高めることができる。
【0038】
上記構成の水誘導構造によれば、
図9に示されるような水の誘導流れを形成させることができる。具体的に説明すると、車両ドア内に侵入した水は、重力にしたがって矢印f1で示す方向に流れたのち水誘導リブ107のリブ上面に到達する。或いは、車両ドア内に侵入した水は、重力にしたがって矢印f2で示す方向に流れたのち水誘導リブ108のリブ上面に到達する。
【0039】
水誘導リブ107では、水がリブ上面に沿って矢印f3で示す方向に流れることによって水誘導領域107aまで誘導される。水誘導領域107aでは、開口部144へと向かう水の流れと干渉壁145とが干渉することによって、当該水の流れ方向が変わり、干渉壁145に沿って合流領域107bに向け矢印f4で示す方向に誘導される。このとき、干渉壁145は、水誘導領域107aに誘導された水を更に開口部144から離間する方向に誘導するような湾曲形状であるのが好ましい。これにより、水誘導領域107aに誘導された水を開口部144からより遠ざけることができる。その結果、開口部144に対する浸水防止効果を更に高めることができる。
【0040】
水誘導リブ108は、水誘導スリット147に嵌め込まれる。この水誘導スリット147は、水誘導リブ108との間に隙間が形成されるようなスリット幅を有する。このため、水誘導リブ108によって矢印f5で示す方向に誘導された水は、干渉壁145に沿って合流領域107bまで誘導された水と合流した後、水誘導リブ108と水誘導スリット147との間の隙間を通じて水誘導領域108aに誘導される。その後、水誘導領域108aに誘導された水は、重力にしたがって矢印f6で示す方向に浸水に対する影響の少ない排水領域109へと流下する。
【0041】
図10に示すように、第2カバー部141の干渉壁145は、ハウジング後方X2側に先端部145aを備えており、この先端部145aはハウジング後方X2に向けて板厚が漸減するテーパー形状を有する。この場合、干渉壁145の先端部145aは、水誘導リブ107の水誘導領域107aに対向するように構成されている。従って、このテーパー形状によれば、干渉壁145の先端部145aまで流れた水(
図10中の矢印参照)が、水誘導領域107aと先端部145aとの間の領域145bに溜まり難くなる。
【0042】
図11に示すように、第2カバー部141の対向壁146は、水誘導リブ108の下方に対向配置され、且つ水誘導リブ108のリブ下面に沿って長尺状に延在する構成であるのが好ましい。この対向壁146は、水誘導リブ108の立設高さ方向についての壁高さがリブ下面に近接した近接領域146aにおいて水誘導リブ108の立設高さdを下回り、且つ近接領域146aから下方に離間した離間領域146bに向かうにつれて漸減し離間領域146bにおいて水誘導リブ108の立設高さdを上回るように構成されている。本構成は、典型的には対向壁146の板厚を近接領域146aから離間領域146bまで漸増させることによって実現できる。
【0043】
本構成によれば、水誘導リブ108を越えて車両下方(ハウジング下方)Z2へと流下した水(
図11中の矢印参照)は対向壁146に沿って流れる。このとき、対向壁146では近接領域146aの壁高さが相対的に低いため、水誘導リブ108のリブ下面と対向壁146の近接領域146aとの境界を越えて下向きに水が誘導され易くなる。その結果、水誘導リブ108のリブ下面と対向壁146の近接領域146aとの境界からの水の浸入を阻止することができる。即ち、この対向壁146は、水誘導リブ108の本来の誘導経路を外れて流れる水をハウジング101側に浸入させないようにして円滑に流下させる機能を有する。なお、この対向壁146は、その近接領域146aにおいて水誘導リブ108のリブ下面に当接する構成であるのが好ましい。この場合、水誘導リブ108のリブ下面と対向壁146の近接領域146aとの境界からの水の浸入をより確実に阻止することができる。
【0044】
なお、水誘導リブ108のリブ下面と対向壁146の近接領域146aとの境界からの水の浸入が発生しない場合や発生し難い場合には、上記構成の対向壁146において近接領域146aから離間領域146bまで壁高さが一定である構造や、上記構成の対向壁146自体が省略された構造を採用することもできる。
【0045】
図12に示されるように、上記構成の保護部材130は、車両左右方向(ハウジング左右方向)Y1,Y2についてハウジング101を第1カバー部131及び第2カバー部141によって両側から挟み込んでハウジング101に取付けられる(
図12中の矢印参照)。保護部材130がハウジング101に取付けられた状態では、第1カバー部131はハウジング101の車外側構成部材101aに被着され、且つ第2カバー部141はハウジング101の車内側構成部材101bに被着される。この挟み込み構造によれば、第1カバー部131及び第2カバー部141をそれぞれ独立してハウジング101の側面に被着させることができるため、各カバー部の被着面を既存のハウジング101の外形に沿わせ易くなる。その結果、ハウジング101の側面と保護部材130の被着面との境界部分からハウジング101内に水が浸入するのを阻止するのに有効な水シール性能が得られる。
【0046】
この場合、保護部材130は、第1カバー部131及び第2カバー部141のそれぞれをハウジング101の大きさ(以下、「幅寸法」ともいう)に応じて車両左右方向Y1,Y2にスライド移動させることが可能な構造(以下、「スライド構造」ともいう)を有する。このスライド構造によれば、ハウジング101に収容される構成要素の組付け状態等の影響によってハウジング101の幅寸法が変化した場合であっても、ハウジング101に対する保護部材130の被着状態を維持したままで、保護部材130の形状をハウジング101の既存形状に追従させることができる。その結果、ハウジング101の幅寸法が変化した場合に、保護部材130の被着面がハウジング101の側面から離間するような現象、所謂「口開き」が発生することがなく、上記の水シール性能を維持することができる。この場合、ハウジング101の側面と保護部材130の被着面との境界部分に不織布等のシール部材を取付けることなく所望の水シール性能を得ることができるため、当該シール部材の省略によってドアロック装置100の構造の簡素化を図ることができる。また、保護部材130はそのスライド構造によって車両左右方向Y1,Y2の寸法についてのみ変化するため、ドアロック装置100の公差の管理が容易になる。
【0047】
また、
図12に示されるように、上記構成の保護部材130は、ハウジング101に取付けられた状態において、第1カバー部131から第2カバー部141に向けて延出する立設壁136と第2カバー部141から第1カバー部131に向けて延出する立設壁148とが、車両前面側の重なり領域151においてこれら立設壁136,148の厚み方向(板厚方向)、即ち車両前後方向について、互いに当接しつつ部分的に重なり合う構造(以下、「オーバーラップ構造」ともいう)を有する。ここでいう立設壁136及び立設壁148がそれぞれ、本発明の「第1延出片」及び「第2延出片」に相当する。このオーバーラップ構造によれば、保護部材130の車両前面側の部位において保護部材130とハウジング101との境界から水が浸入するのを阻止する効果が得られる。
【0048】
更に、
図13〜
図15に示されるように、上記構成の保護部材130は、凸部102を利用してハウジング101に係止される係止構造を有している。
【0049】
この係止構造について具体的に説明すると、保護部材130の第1カバー部131は、立設壁136の係止凹部138が凸部102(延出領域104)に引っ掛けられ(
図13参照)、且つ立設壁137の係止凹部139が凸部102(延出領域104)に引っ掛けられることによって(
図14参照)、ハウジング101に係止されて保持される。この場合、係止凹部138,139のスリット幅寸法はいずれも凸部102の幅寸法に概ね合致するように構成されている。同様に、
図15が参照されるように、保護部材130の第2カバー部141は、立設壁148の係止凹部149が凸部102(延出領域104)に引っ掛けられることによって、ハウジング101に係止され保持される。この場合、係止凹部149のスリット幅寸法は凸部102の幅寸法に概ね合致するように構成されている。
【0050】
この係止構造によれば、保護部材130の第1カバー部131及び第2カバー部141はそれぞれ凸部102を介してハウジング101に係止されるため、保護部材130をハウジング101に取付け易くなり取付けのための作業性を向上させることができる。特に、第1カバー部131は、2つの係止凹部138,139が凸部102に引っ掛けられており係止力が高まる。また、ハウジング101の凸部102、保護部材130の立設壁136,137,148は、ハウジング101に保護部材130を係止するための係止手段として兼務されるため、専用の係止手段を設ける必要がなく、ドアロック装置100の外形が大きくなるのを抑えることができる。
【0051】
上記の係止構造では、保護部材130がハウジング101に係止された状態で、第1カバー部131は
図13及び
図14中の矢印で示されるように車両右方(ハウジング右方)Y2に付勢され、且つ第2カバー部141は
図15中の矢印で示されるように車両左方(ハウジング左方)Y1に付勢されるのが好ましい。即ち、保護部材130がハウジング101に取付けられた状態、即ち第1カバー部131及び第2カバー部141がともに凸部102に引っ掛けられた状態で、第1カバー部131及び第2カバー部141はそれぞれ、車両左右方向Y1,Y2について互いに離間するように付勢される。
【0052】
この場合、第1カバー部131では、係止凹部138の2つのスリット面138a,138bのうちの一方のスリット面138aが第2リブ102bに押し付けられ、且つ係止凹部139の2つのスリット面139a,139bのうちの一方のスリット面139aが第2リブ102bに押し付けられる。また、第2カバー部141では、係止凹部149の2つのスリット面149a,149bのうちの一方のスリット面149bが第1リブ102aに押し付けられる。その結果、保護部材130の第1カバー部131及び第2カバー部141はそれぞれハウジング101の凸部102に強く係止される。
【0053】
本発明は、上記の典型的な実施形態のみに限定されるものではなく、種々の応用や変形が考えられる。例えば、上記実施の形態を応用した次の各形態を実施することもできる。
【0054】
上記のドアロック装置100では、ハウジング101の1つの凸部102に第1カバー部131の係止凹部138,139と第2カバー部141の係止凹部149が係止される構成について記載したが、本発明では、各カバーの係止凹部が、ハウジングに設けられた専用の凸部によって係止されてもよい。
【0055】
上記のドアロック装置100の保護部材130では、第1カバー部131から第2カバー部141に向けて延出する立設壁136と第2カバー部141から第1カバー部131に向けて延出する立設壁148とが部分的に重なり合う構造について記載したが、本発明では、この構造に代えて、立設壁136の延出端部と立設壁148の延出端部とが互いに当接する構造によって水シール性を維持するようにしてもよい。
【0056】
上記のドアロック装置100では、第1カバー部131、第2カバー部141及びヒンジ部150が樹脂材料によって一体成型された保護部材130について記載したが、これら3つの構成要素がそれぞれ別体構造であってもよく、またこれら3つの構成要素のうちの少なくとも1つが金属材料によって構成されてもよい。
【0057】
本発明では、上記のドアロック装置100の本質的な構造を車両の各車両ドアに適用することができる。例えば、車両前席用の左右のドアや、車両後席用の左右のドア、更には車両後部のバックドア等に、車両用ドアロック装置100の本質的な構造を適用することができる。車両後部のバックドアに対する適用例では、保護部材130がハウジング101に取付けられた状態で、第1カバー部131及び第2カバー部141はそれぞれ、車両前後方向について互いに離間するように付勢される。また、この適用例では、保護部材130は、その立設壁136,148がこれら厚み方向(板厚方向)、即ち車両左右方向について、互いに当接しつつ部分的に重なり合うオーバーラップ構造を備える。