【実施例】
【0026】
以下に、
図1〜
図3に基づいて、本発明の実施例に係るヘッドホン装置について説明する。なお、第2実施例以降においては、第1実施例と同様ないし類似の構成部分に便宜上、第1実施例と同じ符号を用いて説明する。第2実施例以降の図示は省略する。
【0027】
(第1実施例)
図1は、本発明の第1実施例のヘッドホン装置1を示すものである。
図2は、同じくヘッドホン装置1の要部を示し、
図3は、
図2のA−A断面の概略形状を示している。
【0028】
図1の如く、このヘッドホン装置1は、左右一対の放音部2と、各放音部2のケース3を上下方向に貫通して、上下方向スライド移動可能に設けられた合成樹脂製の硬質な各アーム部4と、各アーム部4の上端部に各回転機構5を介して連結された合成樹脂製のヘッドバンド部6とを備えている。
【0029】
各放音部2は、合成樹脂製の硬質な略カップ状のケース3と、ケース3の内側端3aに設けられた合成樹脂製等の柔軟なイヤパッド7とを備えている。ケース3の「内側端」とは、使用者の耳(図示せず)に近い側の端部である。
【0030】
ケース3は、円形環状の周壁3bと、周壁3bから外側の略テーパ状の壁部を経て続く平坦な外側壁(底壁)3cとを備えている。ケース3の内部には、振動板や、振動板に接続されたボイスコイル等といった不図示の部品が配設されている。ボイスコイルに接続されるケーブルは図示を省略している。ケース3には、ケーブルを電気的に接続するための孔状のコネクタ24が設けられている。
【0031】
各アーム部4は細長板状のもので、各アーム部4の内側面4aには断面三角形状の突起4bがアーム長手方向に複数並列に設けられている。アーム部4の「内側面」とは、使用者の耳に近い側の面である。また、突起4bに弾性的に嵌合する位置決め用の固定部(図示せず)が、各ケース3の上下方向に貫通した孔部3d内に設けられている。これにより、アーム部4に対して放音部2を上下方向にスライド式に位置決め自在である。アーム部4はケース3の孔部3dから上向きに抜き出し可能である。
【0032】
アーム部4の上端部すなわちアーム部側回転部8はその他のアーム部分よりも前後方向に幅広で且つ略円形状に形成されている。放音部2はアーム部4を介してヘッドバンド部6に接続されている。
【0033】
ヘッドバンド部6は、使用者の頭部(図示せず)の形状に沿うように湾曲状に形成されている。ヘッドバンド部6の内側(下側)面に湾曲状のクッション材9が設けられている。クッション材9よりも下方に延長されたバンド部分6aには、下方に向かうにつれて漸次幅広となった正面視で三角形状のリブ10が前後に設けられると共に、前後の補強リブ10の下端を連結して上向きに凸となった湾曲状の底壁11が設けられている。底壁11は上側のバンド部分6bよりも左右方向に幅広に形成されている。
【0034】
さらに、
図2にも示す如く、底壁11から下向きに左右一対(内外)の壁部12,13が対向して設けられ、左右一対の壁部12,13の間にスリット状の隙間14が形成されている。一対の壁部12,13はヘッドバンド部6の下端部を成し、一対の壁部12,13の下半部は側面視で略半円状に形成されている。一対の壁部12,13の間の隙間14に、アーム部4の上端部(アーム部側回転部)8が下から上向きに挿入されて回転自在となっている。ヘッドバンド部6に対してアーム部4は放音部2の径方向(使用者の前後方向)に回転移動自在である。
【0035】
ヘッドバンド部6の下端部における少なくとも左右一対の壁部12,13とその間の隙間14とその上側の底壁(連結壁)11とでヘッドバンド部側回転部15を構成し、アーム部4の略円形状の上端部がアーム部側回転部8を構成している。アーム部側回転部8の上端側の周面8aは、ヘッドバンド部側回転部15の底壁11の円弧状の下面11aに沿って回転自在に位置している。
【0036】
ヘッドバンド部側回転部15の左右一対の壁部12,13のうちの内側(使用者の頭部に近い側)の壁部12の内側の面に円形の浅い凹部16が形成されている。左右一対の壁部1,13のうちの外側の壁部13の外側の面にも同様の浅い凹部17(
図3参照)が形成されている。内側の壁部12の凹部16には内側カバー部材18が嵌まり、外側の壁部13の凹部17(
図3)には外側カバー部材19が嵌まる。
【0037】
各凹部16,17と同心に左右一対の壁部12,13の中央に孔部20が設けられている。孔部20は少なくとも内側の壁部12において段差状(異形)に形成され、段差状の孔部は内側(使用者の頭部に近い側)の大径孔20aと外側の小径孔20bとで成り、左右(内外)の壁部12,13の各孔部20は、上下の平行な各平坦面20cと、各平坦面20cを結ぶ前後の円弧面20dとで構成されている。孔部20と同軸(同心)に、アーム部側回転部8に円形の孔部21が設けられている。円形の孔部21の内径と異形の孔部20の内径とは同一である。
【0038】
また、上記孔部20,21よりも下側すなわちアーム部側回転部8の付根8b寄り(放音部2寄り)の位置において、ヘッドバンド部側回転部15の左右一対の壁部12,13とアーム部側回転部8とに同心に貫通して、上記孔部20,21よりも小径な断面円形の孔部22,23が設けられている。この小径な孔部22,23にはロックピン25が挿入される。
【0039】
ロックピン25とそれを挿入する各孔部22,23とで、ヘッドバンド部6に対するアーム部4の回転移動(又はアーム部4に対するヘッドバンド部6の回転移動)を阻止するための制御部26が構成されている。この制御部26は、左右両方のチャンネル(伝送路)における各ヘッドバンド部側回転部15と各アーム部側回転部8に設けられている。ヘッドバンド部側回転部15の孔部22を第一の孔部、アーム部側回転部8の孔部23を第二の孔部と呼称する。
【0040】
ロックピン25は、ヘッドバンド部側回転部15の内側の壁部12の孔部22からアーム部側回転部8の孔部23を経てヘッドバンド部側回転部15の外側の壁部13の孔部22にかけて挿入される。外側カバー部材19をヘッドバンド部側回転部15の外側の壁部13に組み付けた後、ロックピン25が挿入される。ロックピン25は例えば使用者によって適宜、右側の回転機構5及び/又は左側の回転機構5に組み付けられる。
【0041】
ロックピン25は例えば金属又は硬質な合成樹脂で均一な外径の円柱状に形成されている。ロックピン25の外径は各孔部22,23の内径よりも若干小さく規定されている。ロックピン25の長さは、内側の壁部12の凹部16の表面16aから外側の壁部13の凹部17(
図3)の表面17aまでの距離と同等ないしそれよりも若干短い。ロックピン25の左右の各端部にはテーパ面取り25aが形成されている。
【0042】
ロックピン挿入用の孔部22,23をアーム部側回転部8の上端側ではなく下端側すなわちアーム部側回転部8の付根8b寄りに配置した理由は、例えば孔部22,23をアーム部側回転部8の上端側(自由端側)に設けた場合は、ロックピン25と孔部22,23にかかる回転方向の力でアーム部側回転部8の上端側の部分が脆くなって破損し兼ねないからである。
【0043】
孔部22はヘッドバンド部側回転部15の下端側(自由端側)に設けられているが、ヘッドバンド部側回転部15は左右一対の壁部12,13を備え、両壁部12,13に孔部22が貫通して設けられているので、孔部22における強度は確保されており、問題はない。
【0044】
孔部22,23をアーム部側回転部8の下端側に配置したことで、回転方向の強い力がロックピン25と孔部22,23に作用した場合でも、孔部22,23がガイドピン25をしっかりと受け止めて、両回転部8,15が破損等を起こすことなく、ヘッドバンド部6に対するアーム部4の回転、又はアーム部4に対するヘッドバンド部6の回転を確実に阻止する。
【0045】
外側カバー部材(キャップ)19は合成樹脂で硬質に形成され、テーパ状の壁部27と、テーパ状の壁部27の内側を補強する放射状のリブ28と、テーパ状の壁部27の内側端の円形環状の面27aと、テーパ状の壁部27の中心から内向きに突出した軸部29とを備えている。軸部29は、回り止め用の上下の平行な平坦面29aと、上下の平坦面29aを結ぶ前後の円弧面29bとを有している。
【0046】
軸部29の上下の平坦面29aが、ヘッドバンド部側回転部15の孔部20の上下の平坦面20cに接することで、ヘッドバンド部側回転部15に対して外側カバー部材19が回転不能に固定され、軸部29の前後の円弧面29bが、ヘッドバンド部側回転部15とアーム部側回転部8との各孔部20,21の前後の円弧面20d,21aに接することで、アーム部側回転部8がヘッドバンド部側回転部15に対して前後方向回転自在に支持される。
【0047】
外側カバー部材19の軸部29の中心には、軸部先端面29cから軸方向に小さな孔部30が設けられ、孔部30に内側カバー部材18側の金属製のボルト(固定部材ないし雄ねじ部材ないし回転軸体)31がねじ込まれる。孔部30には予め雌ねじを形成しておくか、あるいは孔部30をボルト31よりも小径に形成して、ボルト31をタッピングねじとして作用させて孔部30にねじ込む。孔部30の内側において軸部29にナット(図示せず)を埋設することも可能である。ボルト31は雄ねじ軸部31aと円形の頭部31bとで成り、頭部31bはマイナスドライバ等を嵌める溝31cを有する。
【0048】
内側カバー部材18は合成樹脂で硬質に形成され、ヘッドバンド部側回転部15の内側の壁部12の凹部16よりも少し小径な円形の周部18aを有し、中心に円形のボルト挿通孔32を有している。内側カバー部材18の内端側(使用者の頭部に近い側)にはボルト31の頭部31bを嵌める凹部18bが形成されている。内側カバー部材31の外側端には、ヘッドバンド部側回転部15の内側の壁部12の段差状の孔部20の大径部分20aに嵌まる回り止めの凸部(図示せず)を設けることが好ましい。
【0049】
内側のカバー部材18の外側(使用者の頭部から遠い側)の面はヘッドバンド部側回転部15の内側の壁部12のロックピン挿入用の孔部22の開口を覆い、外側のカバー部材19の内側の環状面27aは外側の壁部13のロックピン挿入用の孔部22の開口を覆う。両カバー部材18,19は、ロックピン25に対する抜け出し防止用の部材としても作用する。
【0050】
ヘッドバンド部側回転部15とアーム部側回転部8と、軸部29を有する外側カバー部材19と、内側カバー部材18とボルト31とで、回転機構5が構成されている。この回転機構5はヘッドホン装置1の左右両側のチャンネルにおいて対称に配設されている。
【0051】
図3に示す如く、ヘッドバンド部側回転部15の左右(内外)の壁部12,13の間にアーム部側回転部8が挿入配置され、外側カバー部材19がヘッドバンド部側回転部15の外側の壁部13に組み付けられ、外側カバー部材19の軸部29が外側の壁部13とアーム部側回転部8と内側の壁部12との各孔部20,21を貫通し、外側カバー部材19の内端面27aが外側の壁部13の凹部17の外面17aに接触する。
【0052】
軸部29によってヘッドバンド部側回転部15とアーム部側回転部8とが回転自在に支持される。軸部29の先端29cは内側の壁部12の内端面16aよりも外側(
図3で右側)に位置する(内側の壁部12の内端面16aから突出しない)。
【0053】
この状態で、ロックピン25が内側から外側に向けてヘッドバンド部側回転部15とアーム部側回転部8との小径な各孔部22,23に沿って挿入される。ロックピン25の挿入先端(外側端)25bは外側カバー部材19の内端面27aに接触してそれ以上の挿入が阻止される。
【0054】
次いで、内側カバー部材18が内側の壁部12の凹部16に組み付けられ、ボルト(
図2)31が矢印Bの如く内側カバー部材18の孔部32を通って、ヘッドバンド部側回転部15とアーム部側回転部8との大径な孔部20,21内に嵌合した外側カバー部材19の軸部29の中心の孔部30にねじ込まれる。
【0055】
これにより、ヘッドバンド部側回転部15とアーム部側回転部8との大径な孔部20,21からの軸部29の抜け出しが阻止される。また、内側カバー部材18の外端面18cがロックピン25の内端面25aに近接ないし接触して、ロックピン25の内外方向への抜け出しが阻止される。
【0056】
ロックピン25がヘッドバンド部側回転部15とアーム部側回転部8との各孔部22,23に嵌まることで、ヘッドバンド部側回転部15とアーム部側回転部8との回転移動(ヘッドバンド部側回転部15に対するアーム部側回転部8の回転や、アーム部側回転部8に対するヘッドバンド部側回転部15の回転)が阻止される。
【0057】
前述の如く、ロックピン挿入用の孔部23をアーム部側回転部8の上端側(剛性の低い部位)ではなく、中心の孔部21よりも下側の位置(剛性の高い部位)に設けたことで、ロックピン25に強い回転力が作用した場合におけるアーム部側回転部8の上端側の破損の心配が解消される。
【0058】
上記実施例のヘッドホン装置1は左右のロックピン25を挿入する前の状態で使用者に提供される。例えば、DJ(使用者)が左右何れか一方のチャンネルの回転機構5のボルト31を緩め外して、内側カバー部材18を外し、ロックピン25を孔部22,23に挿入して、内側カバー部材18をボルト18で締め直し、ヘッドバンド部側回転部15とアーム部側回転部8とをロックピン25で回動不能にロックさせる。
【0059】
この状態で、使用者が左右両側の放音部2を左右の各耳に当てて音楽等を聞くこともできるが、左右何れか他方のチャンネルの放音部2を他方の耳から外して、
図1の左側に示す放音部2のように前後方向(前方又は後方)に回転移動させて(跳ね上げて)会場等といったホール内の音を直接他方の耳で聞くことが多い。
【0060】
例えば、DJ(使用者)が一方の手で一方の放音部2とその上側の一方のアーム部4ないしヘッドバンド部分6aとを同時に掴んで作業を行っている際に、従来においては、一方のヘッドバンド部分6aに対して一方の放音部2がアーム部4と共に前後方向に回転移動してしまい、一時的に音楽等を聞けなくなってしまうことがあったが、一方の放音部2側のアーム部4とヘッドバンド部6とを連結する回転機構5がロックピン25でロック(固定)されているので、一方の放音部2が前後方向に回転移動することが防止されて、音楽等の聞き逃しが防止される。
【0061】
また、従来においては、例えば、他方の放音部2を跳ね上げた勢いでヘッドバンド部6が意に反して前後方向に回転移動したりしやすいが、一方の放音部2側のアーム部4とヘッドバンド部6とを連結する回転機構5がロックピン25でロック(固定)されているので、ヘッドバンド部6の回転移動が防止されて、DJ(使用者)が作業に集中することができる。
【0062】
また、例えば、DJ(使用者)が一方の放音部2を一方の手で一方の耳に押し当てて音楽等を聞いている際に、従来においては、ヘッドバンド部6が意に反して前後方向に回転してDJの頭部から脱落してしまうことがあったが、一方の放音部2側のアーム部4とヘッドバンド部6とを連結する回転機構5がロックピン25でロック(固定)されているので、ヘッドバンド部6の回転移動による頭部からの脱落が防止されて、一方の手を一方の放音部2から離した状態でも、頭部に保持されたヘッドバンド部6で一方の放音部2を一方の耳に当てた状態に維持できる(音楽等を聞き続けることができる)。
【0063】
また、使用者としてDJ以外であっても、音楽を静的に聴く場合には、ヘッドホン装置1の左右両方の回転機構5をロックピン25でロック(固定)しておけば、ヘッドバンド部6に対する左右の各放音部2の意に反する回転移動や、各放音部2に対するヘッドバンド部6の意に反する回転移動が防止されて、音楽をじっくりと鑑賞することができる。
【0064】
また、従来のように、ヘッドバンド部6に対して左右の各放音部2を自由に回転移動させたい場合は、ヘッドピン25を挿入しない状態でヘッドホン装置1を使用すればよい。なお、左右どちらの放音部2を耳に当て、左右どちらの放音部2を耳から外すかは、使用者(個人)によって異なる。
【0065】
上記したように、例えばDJ用ヘッドホン等のプロ用ヘッドホンにおいては、左右の放音部2を左右の耳に装着したままじっと音楽を聞くという静的な使われ方をするだけではない。DJの現場におけるヘッドホン装置1の使われ方の例としては、例えば以下に示すようなものが挙げられる。
【0066】
・ヘッドホン装置1を片耳に装着している使用者が周囲の音を聞くために、片方の放音部2を手で耳に固定し、もう片方の放音部2を手で例えば前後方向に押して耳から離脱させる。
・ヘッドホン装置1を使用者の首に掛けたまま片方の放音部2のみを耳に当てる。
・ヘッドホン装置1の片方の放音部2のみを片手で掴んで頻繁に耳に当てたり耳から離したりする。
・置いた状態のヘッドホン装置1の片方の放音部2を手で掴んで耳に当て、すぐに置いた状態にする。
【0067】
上記のように、極めて動的な使われ方がされる場合がある。このように、ヘッドホン装置1の放音部2を素早く動かしたり、耳への装着・非装着を頻繁に切り替えたりする動的な使われ方がなされる。
【0068】
本実施例のヘッドホン装置1によって、これら動的な使われ方がなされた場合でも、ヘッドバンド部6に対する何れか片方の放音部2の意に反する回転移動や、何れか片方の放音部2に対するヘッドバンド部6の意に反する回転移動を確実に防止することができる。また、使用者の好みやニーズに合わせて、左側又は右側、あるいは両方の回転機構5が制御部26によって回転不能に固定される。これによって、DJ操作を集中して正確に行わせることができる。
【0069】
(第2実施例) 上記第1実施例のヘッドホン装置1においては、アーム部4の回転を制御するための制御部26として、ロックピン25とそれを挿入する孔部22,23とを用いたが、第2実施例ではそれ以外の制御部の構成について説明する。
【0070】
図4(a)に示す如く、制御部として、金属製の球体73と、球体73を付勢するばね部材(圧縮コイルばねが好ましい)74と、これら球体73とばね部材74とを収容し、球体73をばね部材74で付勢した状態で半分程度露出(突出)させる筒状のケース75とを備えるプランジャ76を用いる。
【0071】
さらに、プランジャ76の球体73を嵌合させる断面半円状の凹部77ないし貫通孔(図示せず)をアーム部4のアーム部側回転部8に設ける。プランジャ76と凹部77ないし貫通孔とで制御部78が構成される。例えば、プランジャ76をヘッドバンド部側回転部15の内側の壁部12の孔部22内に固定し、凹部77(
図2の孔部23でも可)をアーム部4のアーム部側回転部8に設ける。あるいは、プランジャ76をアーム部側回転部8の孔部23(
図2)内に固定し、凹部77(孔部22でも可)をヘッドバンド部側回転部15に設ける。球体73を凹部77に嵌合させた状態で、容易にアーム部4を回転させることができない位に強いばね部材74を用いることが好ましい。
図4(a)で、符号18は内側カバー部材、符号19は外側カバー部材を示す。
【0072】
また、
図4(b)に示す如く、プランジャ76のケース75(
図4(a))を排除して、例えばアーム部側回転部8に設けた有底の穴部79に、ばね部材74を収容すると共に、例えば球体73よりも長いピン状の部材80を進退可能に収容する。符号80aはばね固定部を示す。ヘッドバンド部側回転部15の例えば内側の壁部12に、ピン状の部材80を進入させる貫通孔81を設ける。ピン状の部材80の方が球体73よりも貫通孔81又は凹部に深く進入するので、回動機構5の回転抑止力が高まる。貫通孔81を用いれば、貫通孔81に治具棒等を挿入してピン状の部材80の先端をばね部材79の付勢力に抗して押すことで、貫通孔81とピン状の部材80とのロックを容易に解除することができる。
【0073】
(第3実施例)
図5に示す如く、制御部として、第1実施例のロックピン25に代えてボルト82を用いる。内側カバー部材18(
図2)の中心のボルト挿通用の孔部32の下側に設けたボルト挿通孔83を経て、ボルト82の雄ねじ部分82aないし軸部をヘッドバンド部側回転部15の内側の壁部12の孔部22とアーム部側回転部8の孔部23とに順次挿通して、ヘッドバンド部側回転部15の外側の壁部13の孔部22aにねじ込んで固定する。孔部22aは他の孔部22,23よりも小径に形成されている。孔部22aに雌ねじ部を予め形成してもよい。ボルト82の着脱作業は、内側カバー部材18や外側カバー部材19を外すことなく容易に行うことができる。
【0074】
(第4実施例)
図6aに示す如く、制御部として、第1実施例のロックピン25等を用いずに、例えば、アーム部4の上部4c(
図1)又はヘッドバンド部6の下部6aに、矩形筒状のスライド部材84を上下方向スライド自在に装着する。ヘッドバンド部6の下部6aの前後の面6c(
図1)と、アーム部4の上部4cの前後の面4d(
図1)とを同時に覆う(各前後の面4d,6cに接触する)前後一対の壁部84aをスライド部材84が有している。アーム部4は伸縮可能で放音部2(
図1)から上方への突出長さが変動するので、スライド部材84はヘッドバンド部6に装着することが好ましい。
【0075】
スライド部材84をヘッドバンド部側回転部15とアーム部側回転部8とに向けて矢印のようにスライド移動させ、スライド部材84の前後一対の壁部84aをヘッドバンド部6の下部6aとアーム部4の上部4cとの各前後の面4d,6cに接触させることで、両回転部8,15の回転を阻止(ロック)させる。スライド部材84はアーム部4又はヘッドバンド部6から外れないので、使用者が紛失する心配がない。回転部8,15のロックを解除する場合は、スライド部材84をヘッドバンド部6に沿って移動させて、ヘッドバンド部6の一部として使用することが好ましい。
【0076】
(第5実施例)
図6(b)に示す如く、制御部として、
図6(a)の第4実施例の矩形筒状のスライド部材84の左右(内外)何れかの壁部84bの前後方向中央に縦方向の一本の広めのスリット84cを設けて、断面不完全環状とし、且つ上記スライド部材84よりも前後方向に少し幅狭に形成して、アーム部4の上部4cとヘッドバンド部6の下部6aとにスライド不能に嵌合させる嵌合部材84Aを用いる。嵌合部材84Aは、アーム部4の上部4cの前後の面4dとヘッドバンド部6の下部6aの前後の面6cとを同時に覆う長さを有している。
【0077】
嵌合部材84Aをスリット84cから矢印のように前後に撓ませて開いて、
図6(a)のヘッドバンド部側回転部15とアーム部側回転部8に外側から被せ着けることで、嵌合部材84Aの前後の壁部84aがアーム部4の上部4cとヘッドバンド部6の下部6aとの各前後の面4d,6cに同時に接触して、両回転部8,15の回転を阻止する。両回転部8,15のロックを解除する場合は、嵌合部材84Aをスリット84cから前後に撓ませて開いて回転部8,15から脱出させる。嵌合部材84Aの前後方向幅を上記スライド部材85と同程度に設定して、スライド部材としてヘッドバンド部6にスライド移動させて着けたままにしておくことも可能である。
【0078】
(第6実施例) 上記第1実施例のヘッドホン装置1は、ヘッドバンド部6を使用者の頭部の上部(頂部)から耳に向けて下向きに掛けるタイプのものであるが、第6実施例は、ヘッドバンド部6を使用者の頭部の後部から耳に向けて前向きに略水平に掛けるタイプ(耳掛けタイプ)のヘッドホン装置に関するものである(例えば前記特許文献1のヘッドホン装置を参照)。
【0079】
例えば、
図1の左側に示す放音部2のように、ヘッドバンド部6に対して略直交する方向に(90°ないしその近傍の角度に)回転移動させ、その状態で、ヘッドバンド部側回転部15とアーム部側回転部8との各孔部22,23にロックピン25を挿入して、両回転部8,15をロックさせる。
【0080】
図2において、第1実施例ではヘッドバンド部側回転部15とアーム部側回転部8との各下側位置にロックピン挿入用の孔部22,23を設けたが、第6実施例では、ヘッドバンド部側回転部15とアーム部側回転部8との各前側位置又は/及び後側位置にロックピン挿入用の孔部22,23を設ける。
【0081】
(第7実施例) 上記第6実施例における制御部として、例えば、ロックピン25に代えて、上記第3実施例におけるボルト82を用いることも可能である。また、
図7に示す如く、第5実施例における嵌合部材84Aを略L字状に折り曲げ形成して成る嵌合部材85を第6実施例における制御部として用いることができる。この嵌合部材85は、上下の壁部85a,85bと前後の壁部85c,85dと左右(内外)の壁部85eと、左右何れかの壁部85eに設けられた略L字状の幅広のスリット85fとで構成されている。嵌合部材85の上下の壁部85a,85bがヘッドバンド部6の付根側部分6aの上下の面6cに接触し、それと同時に嵌合部材85の前後の壁部85c,85dがアーム部4の上部4cの前後の面4dに接触することで、アーム部側回転部8とヘッドバンド部側回転部15の回転が阻止される。
【0082】
(第8実施例)
図8に示す如く、上記第1実施例におけるアーム部4を放音部2のケース3に一体に且つスライド不能に設ける(一体樹脂成形する)。放音部2と一体のアーム部4がヘッドバンド部6に回転機構5で回転移動自在に接続される。
図1のケース3のアーム部貫通用の孔部3dや、ケース3の下部から突出したアーム部分(符号4aの部分)はなくなる。第8の実施例のアーム部4には上記第1〜第7の実施例の制御部を適用可能である(
図8では第1実施例を適用している)。
【0083】
(第9実施例) 上記第1実施例においては、ヘッドバンド部側回転部15が左右(内外)一対の壁部12,13を有し、アーム側回転部8が、ヘッドバンド部側回転部15の一対の壁部12,13の間に挿入される一枚の壁部で構成されているが、第9実施例においては、
図9に示す如く、アーム部側回転部8が左右(内外)一対の壁部86,87を有し、ヘッドバンド部側回転部15が、アーム部側回転部8の一対の壁部86,87の間に挿入される一枚の壁部で構成される。
【0084】
このアーム部側回転部8の一対の壁部86,87とヘッドバンド部側回転部15とにロックピン挿入用の孔部22,23が貫通して設けられる。アーム部側回転部8の一対の壁部86,87とヘッドバンド部側回転部15との中心には、外側カバー部材19の軸部29を挿入するための孔部20,21が設けられ、ロックピン挿入用の孔部22,23は、軸部挿入用の孔部20,21よりもヘッドバンド部側回転部15の付根15a寄りの位置に設けられる。