(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記配線側グリーンシート及び前記裏側グリーンシートを、それぞれ階段状に厚みが変化するようにずらして、複数枚積層する請求項1に記載のセラミックヒーターの製造方法。
第1面側と第2面側に積層するグリーンシートの厚さの合計が同じになるように、前記配線側グリーンシート及び前記裏側グリーンシートを積層する請求項1又は2に記載のセラミックヒーターの製造方法。
前記配線パターン付きグリーンシートの作製に用いるグリーンシート、前記配線側グリーンシート及び前記裏側グリーンシートの1枚あたりの材質及び厚さは全て同じである請求項1〜3のいずれかに記載のセラミックヒーターの製造方法。
前記配線パターン付きグリーンシートの作製に用いるグリーンシート、前記配線側グリーンシート及び前記裏側グリーンシートの1枚あたりの厚さは焼成後に30〜500μmとなる厚さである請求項1〜4のいずれかに記載のセラミックヒーターの製造方法。
さらに、前記配線パターン付き被覆用シートを前記芯材の側面に巻き付けた後、脱脂工程及び焼成工程を行い、前記ヒーター部及び前記給電部を形成するとともに、絶縁層を形成する請求項1〜5のいずれかに記載のセラミックヒーターの製造方法。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1(a)は、本発明のセラミックヒーターの製造方法により得られるセラミックヒーターを模式的に示した斜視図であり、
図1(b)は、
図1(a)に示した上記セラミックヒーターのA−A線断面図である。
【
図2】
図2は、本発明のセラミックヒーターの製造方法により得られるセラミックヒーターの別の一例を模式的に示す斜視図である。
【
図3】
図3(a)は、配線パターン付きグリーンシート作製工程を模式的に示す側面図であり、
図3(b)は、上記工程を模式的に示す平面図である。
【
図4】
図4(a)は配線側グリーンシート及び裏側グリーンシートを積層した状態を模式的に示す側面図であり、
図4(b)は、プレス工程により作製された平板形状の配線パターン付き被覆用シートを模式的に示す側面図であり、
図4(c)は
図4(b)に示す一点鎖線で両端のグリーンシートをカットした後の平板形状の配線パターン付き被覆用シートを模式的に示す側面図である。
【
図5】
図5(a)は配線側グリーンシート及び裏側グリーンシートを積層した状態の他の一例を模式的に示す側面図であり、
図5(b)は、プレス工程により作製された平板形状の配線パターン付き被覆用シートの他の一例を模式的に示す側面図であり、
図5(c)は
図5(b)に示す一点鎖線で両端のグリーンシートをカットした後の平板形状の配線パターン付き被覆用シートを模式的に示す側面図である。
【
図6】
図6(a)は、配線パターン付き被覆用シートを芯材に巻き付ける工程を模式的に示す側面図であり、
図6(b)は、上記工程を模式的に示す平面図である。
【
図7】
図7(a)は、比較例1に係るセラミックヒーターの一製造工程を示す側面図であり、
図7(b)は、比較例1に係るセラミックヒーターの一製造工程を示す正面図である。
【
図8】
図8(a)は、比較例1に係るセラミックヒーターの一製造工程を示す側面図であり、
図8(b)は、比較例1に係るセラミックヒーターの一製造工程を示す正面図である。
【
図9】
図9(a)は、比較例1に係るセラミックヒーターの一製造工程を示す側面図であり、
図9(b)は、比較例1に係るセラミックヒーターの一製造工程を示す正面図である。
【
図10】
図10(a)は、比較例1に係るセラミックヒーターの一製造工程を示す側面図であり、
図10(b)は、比較例1に係るセラミックヒーターの一製造工程を示す正面図である。
【0019】
(発明の詳細な説明)
まず、最初に本発明のセラミックヒーターの製造方法により得られるセラミックヒーターについて説明する。
本発明のセラミックヒーターの製造方法により得られるセラミックヒーターは、芯材と、該芯材の側面に形成された絶縁層と、上記芯材と上記絶縁層との間に介在された所定パターンのヒーター部及び給電部とからなる。
【0020】
図1(a)は、本発明のセラミックヒーターの製造方法により得られるセラミックヒーターを模式的に示した斜視図であり、
図1(b)は、
図1(a)に示した上記セラミックヒーターのA−A線断面図である。
【0021】
図1(a)及び
図1(b)に示したように、本発明のセラミックヒーターの製造方法により得られるセラミックヒーター10においては、円筒形状の芯材11の側面を被覆するように絶縁層12が形成されている。絶縁層12の内部にはヒーター部13の全部が埋め込まれており、給電部14はその一部が絶縁層の内部に埋め込まれていて、給電部14の一部は外部に露出している。また、芯材11は、中心部分に開口19が形成されている。
【0022】
給電部14は、
図1(a)において一番右側の部分が外部に露出した給電部14の一部である接続端子部15を有しており、この露出した接続端子部15を電源に接続することにより、ヒーター部13が発熱し、ヒーターとして機能する。
図2は、本発明のセラミックヒーターの製造方法により得られるセラミックヒーターの別の一例を模式的に示す斜視図であるが、
図2に示すように、露出した接続端子部15にろう材を介してリード端子16を接続、固定してもよい。
【0023】
絶縁層は、焼成後の厚さが100〜500μmとなる厚さであり、絶縁層の組成は特に限定されないが、Al
2O
3を88〜95重量%、焼結助剤として、SiO
2を3〜10重量%、MgOを0.4〜1.0重量%、CaOを1.0〜2.5重量%を含有するアルミナセラミックからなることが好ましい。また、上記組成はアルミナを主原料とする例であるが、アルミナに代わる主原料としてジルコニア、ムライト、コージェライト等の酸化物セラミック、窒化アルミニウム、窒化ケイ素等の窒化物セラミック、炭化ケイ素等の炭化物セラミックを用いてもよい。
【0024】
絶縁層中に焼結助剤として、上記SiO
2等が含有されているのは、アルミナセラミックの焼結温度をあまり上げずに緻密な焼結体を形成するために、上記した量のSiO
2、MgO等の焼結助剤が必要となるからである。
【0025】
芯材を構成する材料は、酸化物セラミック、窒化物セラミック、炭化物セラミック等が挙げられる。
窒化物セラミックとしては、例えば、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、窒化ホウ素、窒化チタン等が挙げられ、炭化物セラミックとしては、例えば、炭化珪素、炭化ジルコニウム、炭化チタン、炭化タンタル、炭化タングステン等が挙げられ、酸化物セラミックとしては、例えば、アルミナ、ジルコニア、コージェライト、ムライト等が挙げられる。これらの中では、絶縁層と同じ材料であるアルミナを含むセラミックが好ましい。熱膨張率が同じであるので、温度が変化してもクラック等が発生しにくい。
図1では、芯材11の形状は、中心部分に開口19が形成された円筒形状であるが、芯材11の形状は、円柱形状、円筒形状のいずれでもよい。芯材の直径は、2.5〜4.0mmであることが好ましい。また、円筒形状の中心に形成される開口19は、直径0.5〜1.5mmの間であることが好ましい。
【0026】
ヒーター部の抵抗発熱体を構成する高融点金属としては、例えば、W、Mo、Ta、Nb、Ti、Re、Ni、Cr等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらのなかでは、W、Reが好ましい。さらに、上記以外の成分として、Al
2O
3等のセラミックが少量含まれていてもよい。
【0027】
給電部を構成する部材もヒーター部を構成する部材と同じ組成となっており、給電部では、線幅を広げるか、複数本の線を並列で接続することにより、抵抗を低くしているため、発熱量は低い。
【0028】
次に、本発明のセラミックヒーターの製造方法について説明する。
本発明のセラミックヒーターの製造方法は、グリーンシート上に導体ペーストを印刷することにより、ヒーター部及び給電部となる配線パターンを形成して、配線パターン付きグリーンシートを作製する工程と、上記配線パターン付きグリーンシートの配線パターンが形成された側の面である第1面の一部に、上記給電部となる部分の一部が露出するように配線側グリーンシートを積層する工程と、上記配線パターン付きグリーンシートの配線パターンが形成されていない側の面である第2面の一部であって、少なくとも第1面において露出した、給電部となる部分の裏側にあたる位置に、裏側グリーンシートを積層する工程と、積層したグリーンシートを平板形状にプレス成形するプレス工程と、により、上記ヒーター部となる部分が埋め込まれ、上記給電部となる部分の一部が露出した平板形状の配線パターン付き被覆用シートを作製し、上記配線パターン付き被覆用シートを円柱形状又は円筒形状の芯材の側面に巻き付けてセラミックヒーターを製造することを特徴とする。
【0029】
図3(a)は、配線パターン付きグリーンシート作製工程を模式的に示す側面図であり、
図3(b)は、上記工程を模式的に示す平面図である。
(1)配線パターン付きグリーンシート作製工程
まず、グリーンシートを準備する。
グリーンシートの原料組成物として、Al
2O
3粒子を88〜95重量%、焼結助剤として、SiO
2粒子を3〜10重量%、MgO粒子を0.4〜1.0重量%、CaO粒子を1.0〜2.5重量%を含有し、さらにバインダー樹脂と溶剤とを含有するペースト状のものを用いることができる。バインダー樹脂としては、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂等が挙げられ、溶剤としては、アセトン、トルエン、エタノール、プロパノール、キシレン、酢酸エチル等が挙げられる。
これらの原料組成物を混合し、シート状に成形した後、乾燥してグリーンシートを得る。
グリーンシートをシート状に成形する際には、スクリーン印刷法を用いることができる。具体的には、メッシュを有し、グリーンシートの形に孔が形成されたマスクを用い、ベタのパターンであるグリーンシートを形成する。
このようにして作製したグリーンシートは、配線パターン付きグリーンシートの作製に用いるグリーンシート、配線側グリーンシート及び裏側グリーンシートのいずれのグリーンシートとしても使用することができる。いずれのグリーンシートも、材質及び寸法(厚さ、幅、奥行き)が同じものを使用することが望ましい。
また、サイズが大きく厚さが一定のグリーンシートを作製し、後述する積層工程において各グリーンシートを使用する位置に応じて、奥行き方向(
図3(b)における両矢印bで定める方向)の寸法は同じで、幅方向(
図3(b)における両矢印aで定める方向)の寸法が異なるようにグリーンシートを上面視長方形に切断して各グリーンシートを作製しておいてもよい。異なる寸法のグリーンシートを使う場合、プレス工程後にグリーンシートの両端をカットする必要はなくなる。
また、配線パターン付きグリーンシートの作製に用いるグリーンシート、配線側グリーンシート及び裏側グリーンシートの1枚あたりの厚さは、焼成後に30〜500μmとなる厚さが好ましい。
【0030】
別途、導体ペーストを準備する。
導体ペーストは、W、Mo、Ta、Nb、Ti、Re、Ni及びCrの高融点金属からなる群から選ばれた少なくとも1種と、Al
2O
3等のセラミック成分とバインダー樹脂と溶剤とを含んでいることが望ましい。バインダー樹脂と溶剤とは、グリーンシートの原料組成物を調製する際に用いたものを用いることができる。
導体ペーストに含まれるWの平均粒径は、0.5〜10μmが好ましく、導体ペーストの粘度は、10〜200Pa・sが望ましい。
【0031】
続いて、
図3(a)及び
図3(b)に示すように、配線パターン付きグリーンシートの作製に用いる大きさで作製したグリーンシート21上に、導体ペーストを用い、スクリーン印刷によりヒーター部となる配線パターン23及び給電部となる配線パターン24(以下、配線パターン23、24ともいう)を印刷する。
グリーンシート21上に配線パターン23、24が形成されて、配線パターン付きグリーンシート20が得られる。配線パターン付きグリーンシート20において、配線パターン23、24が形成された面が第1面26となり、配線パターン23、24が形成されていない面が第2面27となる。
【0032】
(2)乾燥工程
この乾燥工程では、グリーンシート21上に形成された配線パターン23、24を構成する導体ペーストを乾燥させる。乾燥工程は、必要に応じて行えばよい。
乾燥条件は、40〜180℃、1〜30分が好ましく、60〜100℃、1〜5分がより好ましい。
【0033】
(3)配線側グリーンシート積層工程及び裏側グリーンシート積層工程
図4(a)は配線側グリーンシート及び裏側グリーンシートを積層した状態を模式的に示す側面図である。
配線側グリーンシート及び裏側グリーンシートを積層する前に、必要に応じて、配線パターン付きグリーンシートの第2面に、配線パターン付きグリーンシートの作製に用いたグリーンシートと同じ幅及び奥行きを有するグリーンシートをさらに積層して、グリーンシートの厚さを増した配線パターン付きグリーンシートを作製してもよい。この場合、グリーンシートの厚さを増した配線パターン付きグリーンシートを1枚の配線パターン付きグリーンシートと考えることができる。
この場合、配線パターン付きグリーンシートの第2面は、厚さを増すために積層されたグリーンシートのうち、最も外側に位置するグリーンシートの表面になる。
図4(a)には、配線パターン付きグリーンシートとして、
図3(a)及び
図3(b)に示す配線パターン付きグリーンシート20の第2面27にさらにグリーンシート21aを1枚積層してなる配線パターン付きグリーンシート20aを示している。
図4(a)にはこの配線パターン付きグリーンシート20aを使用して配線側グリーンシート積層工程及び裏側グリーンシート積層工程を行った様子を模式的に示しており、配線パターン付きグリーンシート20aの第2面27aに裏側グリーンシートが積層される。
なお、配線パターン付きグリーンシートの作製に最初に用いたグリーンシート21と、厚さを増すために積層されるグリーンシート21aの材質及び厚さは同じであることが望ましいが、異なっていてもよい。
【0034】
第2面側のグリーンシートの厚さを増すことなく、
図3(a)及び
図3(b)に示す配線パターン付きグリーンシート20をそのまま配線側グリーンシート積層工程及び裏側グリーンシート積層工程に用いても何ら問題はない。この場合、下記に示す
図4(a)の構造に沿った説明における配線パターン付きグリーンシート20aを配線パターン付きグリーンシート20に、第2面27aを第2面27にそれぞれ読み替えればよい。
【0035】
配線パターン付きグリーンシート20aの、配線パターン23、24が形成された側の面である第1面26に、配線側グリーンシート50を積層する。
図4(a)では、配線側グリーンシート50a、50bを積層している。配線側グリーンシート50aと配線側グリーンシート50bは同じ材質及び厚さのグリーンシートであることが望ましい。配線側グリーンシート50は、給電部となる配線パターン24の一部24aが露出するように積層する。また、ヒーター部となる配線パターン23が配線側グリーンシート50で全て隠れるように積層する。
一方、配線パターン付きグリーンシート20aの、配線パターン23、24が形成されていない側の面である第2面27aに、裏側グリーンシート60を積層する。
図4(a)では裏側グリーンシート60a、60bを積層している。裏側グリーンシート60aと裏側グリーンシート60bは同じ材質及び厚さのグリーンシートであることが望ましい。裏側グリーンシート60は、少なくとも第1面において給電部となる配線パターン24の一部が露出した部分24aの裏側にあたる位置を含む位置に積層される。
【0036】
配線側グリーンシート及び裏側グリーンシートは、それぞれ階段状に厚みが変化するようにずらして積層することが望ましい。
図4(a)では、第1面26に近い側に積層する配線側グリーンシート50aが配線パターン付きグリーンシート20aと重なる部分の幅を、その上に積層する配線側グリーンシート50bが配線パターン付きグリーンシート20aと重なる部分の幅よりも大きくしており、かつ、第2面27aに近い側に積層する裏側グリーンシート60aが配線パターン付きグリーンシート20aと重なる部分の幅を、その下に積層する裏側グリーンシート60bが配線パターン付きグリーンシート20aと重なる部分の幅よりも大きくして、第1面側及び第2面側で階段状に積層構造を形成している。
図4(a)には、配線側グリーンシート50a、50b、裏側グリーンシート60a、60bをそれぞれ2枚ずつ積層した様子を図示しているが、各グリーンシートを1枚ずつ積層しても良く、3枚以上積層してもよい。
図4(a)に示すグリーンシートの積層枚数は計10枚である。各グリーンシートの積層枚数は好ましくは1〜5枚であり、グリーンシートの合計積層枚数は好ましくは5〜20枚である。
また、階段状に厚みを変化させる際の段数は、
図4(a)に示す2段に限定されるものではなく、
配線側グリーンシート及び裏側グリーンシートとしてその幅が異なる3種類以上のグリーンシートを使用することによって、段数を3段以上にしてもよい。好ましい段数は2〜4段である。
【0037】
また、第1面側と第2面側に積層するグリーンシートの厚さの合計が同じになるように各グリーンシートの厚さ、寸法及び積層枚数が調整されていることが望ましい。
図4(a)に示す構造では、配線側グリーンシート50a、50b、裏側グリーンシート60a、60bの1枚あたりの厚さ及び寸法は全て同じであり、積層枚数を同じにすることで第1面側と第2面側に積層するグリーンシートの厚さの合計が同じになるように調整可能である。
【0038】
裏側グリーンシート60bが配線パターン付きグリーンシート20aと重なる部分の幅は、配線側グリーンシートが第1面側で積層されていない部位の幅(
図4(a)に両矢印cで定める長さ)と同じである。そのため、この部位のグリーンシートの厚さの合計は、配線パターン付きグリーンシート20aのグリーンシート21、21a、裏側グリーンシート60a(2枚分)、裏側グリーンシート60b(2枚分)の厚さの合計である。
一方、配線側グリーンシート50bが配線パターン付きグリーンシート20aと重なる部分の幅は、裏側グリーンシートが第2面側で積層されていない部位の幅(
図4(a)に両矢印dで定める長さ)と同じである。そのため、この部位のグリーンシートの厚さの合計は、配線パターン付きグリーンシート20aのグリーンシート21、21a、配線側グリーンシート50a(2枚分)、配線側グリーンシート50b(2枚分)の厚さの合計である。
そして、上記2つの部位の間にある、配線側グリーンシート50aと裏側グリーンシート60aが積層されている部位の厚さの合計は、配線パターン付きグリーンシート20aのグリーンシート21、21a、配線側グリーンシート50a(2枚分)、裏側グリーンシート60a(2枚分)の厚さの合計である。
従って、配線パターン付きグリーンシートと重なっているどの部位においても第1面側と第2面側に積層するグリーンシートの厚さの合計が同じになっているといえる。
【0039】
(4)プレス工程
図4(b)は、プレス工程により作製された平板形状の配線パターン付き被覆用シートを模式的に示す側面図であり、
図4(c)は
図4(b)に示す一点鎖線で両端のグリーンシートをカットした後の平板形状の配線パターン付き被覆用シートを模式的に示す側面図である。
プレス工程では、積層したグリーンシートを平板形状にプレス成形して、ヒーター部となる配線パターン23が埋め込まれ、給電部となる配線パターン24の一部24aが露出した平板形状の配線パターン付き被覆用シート70を作製する。
プレス工程により、各グリーンシートが実質的に区別できなくなり、一体化されたグリーンシート層25が形成される。
そして、
図4(c)に示すように、配線パターン付きグリーンシート20aと重なっていない両端のグリーンシートをカットして、セラミックヒーター1本分のサイズにする。
上述したように、積層したグリーンシートの厚さはどの部位においても同じであるので、プレス工程後に形成される被覆用シートの厚さは均一となり、平板形状となる。
また、配線側グリーンシート及び裏側グリーンシートが、それぞれ階段状に厚みが変化するようにずらして積層されているため、プレス工程後に被覆用シート内に埋め込まれた配線が表面に露出するまでの傾きが緩やかとなり、プレス工程での断線の可能性が減少する。
プレス成形の装置は任意のプレス装置を使用することができる。
プレス条件は、特に限定されるものではないが、圧力を5〜15MPa、温度30〜50℃、プレス時間5分以上とすることが望ましい。
【0040】
なお、プレス工程を経て得られる配線パターン付き被覆用シートの厚さは必ずしも均一でなくてもよく、芯材に巻き付けてセラミックヒーターとして使用可能な範囲の平板形状が得られれば問題ない。
図5(a)は配線側グリーンシート及び裏側グリーンシートを積層した状態の他の一例を模式的に示す側面図であり、
図5(b)は、プレス工程により作製された平板形状の配線パターン付き被覆用シートの他の一例を模式的に示す側面図であり、
図5(c)は
図5(b)に示す一点鎖線で両端のグリーンシートをカットした後の平板形状の配線パターン付き被覆用シートを模式的に示す側面図である。
図5(a)に示すように、第1面側と第2面側に積層するグリーンシートの厚さの合計が異なるように積層した場合、プレス工程を経て、
図5(b)及び
図5(c)に示すような平板形状の配線パターン付き被覆用シート80が得られる。
図5(a)には、配線側グリーンシート50bを3枚積層し、配線側グリーンシート50a、裏側グリーンシート60a、60bをそれぞれ2枚ずつ積層した様子を示している。配線側グリーンシート50bの枚数が1枚多い分だけ、プレス工程を経て得られる配線パターン付き被覆用シートの厚さは
図5(b)及び
図5(c)の左側で相対的に厚くなっている。
なお、配線パターン付き被覆用シートの厚さの均一性については、最も厚い部位の厚さを100%として、最も薄い部位の厚さが70〜100%となるように定めておくことが好ましい。
最も薄い部位の厚さが70%未満であると、プレス工程において厚さが薄い部位に圧力が加わりにくいため、平板形状が得られにくくなる。
【0041】
(5)接着剤層形成工程
配線パターン付き被覆用シートの、給電部が露出していない側の面(配線パターン付きグリーンシートの第2面側の面)に、接着剤層を形成する。
接着剤としては、セラミックからなるスラリーを用いることができ、グリーンシートの材料に近い材質のものを使用することが望ましい。具体的には、グリーンシートの原料組成物として上述したペースト状の組成物を使用し、これを塗布することによって接着剤層を形成することができる。接着剤層の厚さは1〜10μmであることが望ましい。
また、シート状の接着剤シートを貼り付けることにより接着剤層を形成してもよい。
【0042】
(6)配線パターン付き被覆用シート巻き付け工程
図6(a)は、配線パターン付き被覆用シートを芯材に巻き付ける工程を模式的に示す側面図であり、
図6(b)は、上記工程を模式的に示す平面図である。
この工程では、平板72の上に、配線パターン付き被覆用シート70をその接着剤層71が上面になるように載置し、その上に円筒形状の芯材11を載置し、芯材11を転動させることにより、配線パターン付き被覆用シート70を芯材11に巻き付ける。
図6(a)には配線パターン付き被覆用シート70を芯材11に途中まで巻き付けた状態を示しており、給電部となる配線パターン24の一部24aが巻き付け後にグリーンシート層25から露出した様子を示している。
この際、芯材11の両端面に、芯材11を軸支し、回転させることが可能な軸支部材(図示せず)を当接させて軸支し、配線パターン付き被覆用シート70の表面を転動させることにより配線パターン付き被覆用シート70を芯材11の側面に巻き付ける方法を用いることができる。
この後、巻き付けられた配線パターン付き被覆用シートを必要により乾燥させる。
芯材11は円柱形状であってもよい。
また、芯材11は、グリーンシート層を形成するための材料と同じ材料を用いて形成した焼成前の成形体であってもよい。この場合には、押出成形等により円筒状の成形体を作製した後、乾燥させることにより、転動可能な硬さを有するものとし、これを用いる。
また、芯材11は、グリーンシート層を形成するための材料と同じ材料を用いて製造したセラミック製のものであってもよい。
【0043】
(7)脱脂工程及び焼成工程
この後、巻き付けられた配線パターン付き被覆用シート70の脱脂、焼成を行う。脱脂、焼成により、ヒーター部となる配線パターン23がヒーター部13となり、給電部となる配線パターン24が給電部14となる。
また、被覆用シート70のグリーンシート層25が絶縁層12となる。
芯材11がセラミック製である場合には、上記脱脂、焼成による変化はないが、芯材がグリーンシート層を形成するための材料と同じ材料を用いて形成した焼成前の成形体である場合、上記脱脂、焼成によりセラミック製の芯材となる。
脱脂条件としては、200〜800℃、1〜15時間が挙げられ、焼成条件としては、1000〜1600℃、1〜40時間が挙げられる。上記脱脂工程は、酸素含有雰囲気で行うことが好ましく、上記焼成工程は、不活性雰囲気で行うことが好ましい。
上記工程により、ヒーター部が絶縁層内に埋め込まれ、給電部の一部が絶縁層から露出するように、芯材上に絶縁層が形成されて、ヒーターとして機能するセラミックヒーターを製造することができる。
【0044】
(8)不動態層形成工程
絶縁層から露出した給電部に、給電部を構成する電極の劣化を防止するために、めっき法等の方法を用い、Ni、Cr、Au、Ag、Pd等からなる不動態層を形成し、
図1又は
図2に示すセラミックヒーターの製造を終了する。
【0045】
製造されたセラミックヒーターは、通電することにより、ヒーター部を構成する抵抗発熱体が発熱し、目的の温度になるように対象となる部材を加熱することができる。
【0046】
(実施例)
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0047】
(実施例1)
(1)配線パターン付きグリーンシート作製工程
(1−1)グリーンシートの作製
セラミック粒子として、Al
2O
3を92.5重量部、焼結助剤として、SiO
2を5.8重量部、MgOを0.5重量部、CaOを1.2重量部含有し、さらに上記セラミック粒子100重量部に対し、バインダー樹脂としてポリ塩化ビニル系樹脂を10重量部、溶剤としてトルエンを50重量部含有するペースト状の原料組成物を用い、シート状に成形した後、乾燥して焼成後の厚さが50μmとなるようなグリーンシートを得た。
このグリーンシートを切断し、配線パターン付きグリーンシートの作製に用いるグリーンシートAを2枚(幅37mm)、配線側グリーンシートB(幅37mm)を2枚、配線側グリーンシートC(幅37mm)を2枚、裏側グリーンシートD(幅37mm)を2枚、裏側グリーンシートE(幅37mm)を2枚作製した。
【0048】
(1−2)導体ペーストの準備
Wを78重量部、Reを19重量部、Al
2O
3を3重量部、これら導電体成分100重量部に対して、バインダー樹脂としてアクリル樹脂を6重量部、溶剤としてアセトン等を7重量部含有する導体ペーストを調製した。
【0049】
(1−3)配線パターンの印刷
図3(b)に示す配線パターンが描画されたマスクを用意し、配線パターン付きグリーンシートの作製に用いるグリーンシート(2枚作製したうちの1枚のみ)の上に、導体ペーストを用い、スクリーン印刷によりヒーター部となる配線パターン及び給電部となる配線パターンを印刷し、配線パターン付きグリーンシートを作製した。印刷された導体ペースト層の厚さは、25μmであった。
【0050】
(2)乾燥工程
配線パターン付きグリーンシートを100℃で10分間乾燥させた。
【0051】
(3)配線側グリーンシート積層工程及び裏側グリーンシート積層工程
乾燥した配線パターン付きグリーンシートの第2面に、配線パターン付きグリーンシートの作製に用いるグリーンシートAを1枚重ねて、グリーンシートの厚さをグリーンシート2枚分の厚さに増した配線パターン付きグリーンシートを作製した。この配線パターン付きグリーンシートに対し、
図4(a)に示すように、配線側グリーンシート及び裏側グリーンシートを積層した。
具体的には、配線側グリーンシートBを
図4(a)の配線側グリーンシート50aの位置に2枚積層し、配線側グリーンシートCを
図4(a)の配線側グリーンシート50bの位置に2枚積層し、裏側グリーンシートDを
図4(a)の裏側グリーンシート60aの位置に2枚積層し、裏側グリーンシートEを
図4(a)の裏側グリーンシート60bの位置に2枚積層した。
積層したグリーンシートの厚さの合計は、配線パターン付きグリーンシートと重なっているどの部分でもグリーンシート10枚分の厚さであり、同じになっていた。
【0052】
(4)プレス工程
積層したグリーンシートをプレス装置を用いて平板形状にプレス成形して、
図4(b)に示す平板形状の配線パターン付き被覆用シートを作製した。配線パターン付き被覆用シートにおいては、ヒーター部となる配線パターンが埋め込まれ、給電部となる配線パターンの一部が露出していた。
プレス条件は圧力10MPa、温度40℃、プレス時間10分とした。多数個取りしたプレス後の配線パターン付き被覆用シートをセラミックヒーター1本分のサイズにカットをした(
図4(c)参照)。
【0053】
(5)接着剤層形成工程
(1−1)グリーンシートの作製の工程で用いたペースト状の原料組成物を、配線パターン付き被覆用シートの給電部が露出していない側の面に塗布して接着剤層を形成した。接着剤層の厚さは5〜30μmであった。
【0054】
(6)配線パターン付き被覆用シート巻き付け工程
芯材として、直径が3.2mm、長さが65mmで、中心に直径が1.0mmの開口を有する円筒形状のものを用いた。芯材は、Al
2O
3を92.5重量%、焼結助剤として、SiO
2 を5.8重量%、MgOを0.5重量%、CaOを1.2重量%含有する密度率97%のセラミックからなる。
図6(a)及び
図6(b)に示すように、平板の上に、配線パターン付き被覆用シートをその接着剤層が上面になるように載置し、その上に円筒形状の芯材を載置し、芯材を転動させることにより、配線パターン付き被覆用シートを芯材に巻き付けた。
【0055】
(7)脱脂工程及び焼成工程
芯材の側面に配線パターン付き被覆用シートを巻き付けたものを、酸素雰囲気中、450℃で1時間加熱して脱脂した。その後、不活性ガス雰囲気中、1600℃で1時間焼成し、ヒーター部及び給電部を形成するとともに、厚さが300μmの絶縁層を形成した。
【0056】
(8)不動態層形成工程
この後、外部に露出した給電部を構成する接続端子部に対し、無電解Niめっきを施した面に給電用リード端子を接続させ、その上に、電解Ni及び電解Crめっきを施し、不動態層を形成した。
【0057】
(比較例1)
図7(a)〜
図10(a)は、比較例1に係るセラミックヒーターの一製造工程を示す側面図であり、
図7(b)〜
図10(b)は、比較例1に係るセラミックヒーターの一製造工程を示す正面図である。
【0058】
まず、
図7(a)及び
図7(b)に示すように、離型性を有するプラスチックフィルム41上に、スクリーン印刷により、アルミナ粉末とバインダー樹脂と溶剤とを含むペーストを用いて接着用グリーンシート層47を形成した。接着用グリーンシート層47の組成は、実施例1の(1−1)グリーンシートの作製工程で使用した原料組成物と同様であり、その厚さは、焼成後に300μmとなる厚さであった。
【0059】
接着用グリーンシート層47の乾燥後、導体ペースト印刷工程として、スクリーン印刷によりヒーター部となる導体ペースト層43aと給電部となる導体ペースト層43bと(以下、導体ペースト層43a、43bともいう)をプラスチックフィルム41上及び接着用グリーンシート層47上に形成した。このとき、導体ペースト層43a、43bの印刷方向、すなわち、スキージを走らせる方向は、長手方向の導体ペースト層43axに平行な方向であった。
導体ペースト層43a、43bは、実施例1で使用した導体ペーストと同様のものを使用した。
【0060】
次に、
図8(a)及び
図8(b)に示したように、グリーンシート印刷工程として、上記導体ペースト印刷工程で印刷された導体ペースト層43a、43bを含む領域に、導体ペースト層43a、43bを覆うように、セラミック粉末とバインダー樹脂と溶剤とを含む絶縁層用のペーストを重ねてスクリーン印刷し、グリーンシート層44を形成した。このとき、焼成後に外部に露出する部分の導体ペースト層430は、グリーンシート層44で覆わず、露出させた。
このときに用いるグリーンシート層44の組成も、実施例1の(1−1)グリーンシートの作製工程で使用した原料組成物と同様であった。また、グリーンシート層44の厚さは焼成後に300μmとなる厚さであった。
【0061】
この後、このグリーンシート層44の乾燥を行った。なお、これら接着用グリーンシート層47、導体ペースト層43a、43b及びグリーンシート層44が積層されたものを積層体40とする。
【0062】
次に、
図9(a)に示したように、グリーンシート層44が下側にくるように
図8(a)に示した積層体40を反転させ、所定の台45の上に載置した後、台45に形成された貫通孔(図示せず)を介した空気の吸引力を利用して台45に固定し、プラスチックフィルム41を剥離した。なお、
図9(b)は、プラスチックフィルム41を剥離した後の積層体40を表している。
【0063】
続いて、巻き付け工程として、
図10(a)及び
図10(b)に示したように、積層体40の上に円筒形状の芯材11となる生成形体46を載置し、生成形体46の側面に積層体40を巻き付けることにより、焼成用の原料成形体を作製した。なお、生成形体46を構成するセラミック粒子や焼結助剤の割合は、グリーンシート層44と同様である。
【0064】
その後、脱脂・焼成工程として、酸素の存在下、450℃の温度で脱脂を行い、接着用グリーンシート層47、生成形体46、導体ペースト層43a、43b及びグリーンシート層44中の有機物を除去し、続いて、不活性雰囲気中、1600℃で3時間焼成を行ってセラミック粉末や高融点金属等を焼結させた。
これにより、接続端子部を除いてヒーター部及び端子部が絶縁層に埋設された、
図1に示したセラミックヒーター10とほぼ同様の構成のセラミックヒーターを製造した。
【0065】
(評価)
次に、実施例1及び比較例1で製造したセラミックヒーターを、500℃に加熱した後、室温まで冷却する冷熱サイクルを繰り返すヒートサイクル試験を行ったところ、実施例1では、サイクル数500回まで良好に加熱、冷却を繰り返すことができた。また、このヒートサイクル試験と同時に、ヒーター部の発熱状態をサーモビュアを用いて観察したが、ヒーター部の全域にわたって、略均一に発熱していた。
しかしながら、比較例1は、サイクル数300回を超えた時点で、加熱しにくくなることが確認された。また、実施例1は工程が簡略化でき、作製時間が比較例1と比較し短かったことも確認された。