(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1〜
図3に示されるように、電磁弁10は樹脂製のバルブハウジング11を有している。バルブハウジング11は、
図3に示されるように、正面壁12と背面壁13と側面壁14,15とを有し、全体的にほぼ直方体となっている。バルブハウジング11の長手方向の一端部には、
図1および
図2に示されるように、流路部16が設けられており、他端部は開口端17となっている。このように、バルブハウジング11は、横断面形状が四辺形となる4つの壁体を有し、底部が流路部16により閉塞されている。バルブハウジング11の内部には、電磁弁10を構成する部品を収容するための収容空間18が設けられている。
【0014】
流路部16には、第1のポート21と第2のポート22と第3のポート23とが設けられており、電磁弁10は3ポート電磁弁である。それぞれのポート21〜23は、バルブハウジング11内に前後方向に延びており、また、バルブハウジング11の背面壁13側に隣り合って開口されている。第2のポート22は第1のポート21よりも開口端17側に設けられ、第3のポート23は第2のポート22よりも開口端17側に設けられている。
【0015】
流路部16の正面壁12側には、第1の弁座部24が設けられている。この弁座部24には第1のポート21に連通する第1の連通孔25が設けられ、この連通孔25はバルブハウジング11の長手方向に延びている。連通孔25は、バルブハウジング11の流路部16に設けられた弁体収容孔26の底部に開口しており、弁体収容孔26の内周面には第2のポート22が開口している。これにより、第1のポート21は、連通孔25および弁体収容孔26を介して第2のポート22に連通する。
【0016】
バルブハウジング11の開口端17側から、流路ブロック27がバルブハウジング11内に挿入される。
図7に示すように、流路ブロック27は、流路部16に設けられた突き当て面16aに流路ブロック27の底面が当接した状態となって組み付けられ、流路ブロック27はバルブハウジング11の一部を構成する。流路ブロック27は、弁体収容孔26を開口端17側と底部側とに仕切るように区画する。流路ブロック27を突き当て面16aに当接させることにより、流路ブロック27が位置決めされる。
【0017】
流路部16には、第2のポート22と第3のポート23の間に嵌合孔28が形成され、さらに、流路部16には、第3のポート23よりも開口端17側に嵌合孔29が形成されている。それぞれの嵌合孔28,29は、ほぼ四辺形の内周面を有している。流路ブロック27は、嵌合孔28に嵌合される第1の流路形成部31と、嵌合孔29に嵌合される第2の流路形成部32とを有し、両方の流路形成部31,32の間にはスペーサ33が設けられている。両方の流路形成部31,32とスペーサ33は一体となって樹脂により成形される。
【0018】
第1の流路形成部31には第2の弁座部34が、第1の弁座部24に対向して設けられている。第2の弁座部34には、第1の連通孔25と同軸となって第2の連通孔35が設けられ、第2の連通孔35は、弁体収容孔26に開口している。流路ブロック27のスペーサ33には、第2の連通孔35と第3のポート23とを連通させる連通路36が設けられている。これにより、第2のポート22は、弁体収容孔26、第2の連通孔35および連通路36を介して第3のポート23に連通する。流路ブロック27の第1の流路形成部31とバルブハウジング11との間は、シール部材37によりシールされている。第2の流路形成部32とバルブハウジング11との間は、シール部材38によりシールされている。
【0019】
弁体収容孔26にはゴム製の弁体であるポペット弁41が収容されている。ポペット弁41は、金属製または樹脂製の弁駆動部材42の円筒部43内に下方から挿入されて装着されている。弁駆動部材42は、
図3および
図5に示されるように、円筒部43と一体となった2つの駆動片44を有している。駆動片44は、流路ブロック27に形成された2つの貫通孔45に軸方向に移動自在に挿入される。駆動片44の先端部44aには円弧面が形成されており、
図8に示されるように、先端部44aは流路ブロック27からバルブハウジング11の開口端17に向けて突出する。
【0020】
ポペット弁41と円筒部43が収容される弁体収容孔26は、嵌合孔28,29を介してバルブハウジング11の開口端17に向けて開口されている。したがって、弁駆動部材42と流路ブロック27は、駆動片44が貫通孔45に挿入された状態で、開口端17側からバルブハウジング11内に挿入されて流路部16に組み込まれ、ポペット弁41は弁体収容孔26内に配置される。
【0021】
ポペット弁41の両端面は弁座部24,34に当接する当接面となっている。
図1に示されるように、ポペット弁41が、第2の弁座部34から離れて第1の弁座部24に当接する位置になると、ポペット弁41は、第1の連通孔25を閉じて、第1のポート21と第2のポート22との連通を遮断する閉塞位置となり、第2のポート22と第3のポート23とを連通させる開放位置となる。一方、
図2に示されるように、ポペット弁41が第1の弁座部24から離れて第2の弁座部34に当接する位置になると、ポペット弁41は、第2の連通孔35を閉じて、第1のポート21と第2のポート22とを連通させる開放位置になり、第2のポート22と第3のポート23との連通を遮断する閉塞位置になる。このように、ポペット弁41は、第1の弁座部24に当接して第1の連通孔25を閉じる位置と、第2の弁座部34に当接して第2の連通孔35を閉じる位置とに作動する。ポペット弁41と流路部16との間には、ばね部材として圧縮コイルばね46が装着されている。このコイルばね46により、ポペット弁41には、第2の弁座部34に向かう方向のばね力が付勢されている。
【0022】
バルブハウジング11内には、磁性材料からなる固定鉄心50が組み込まれる。固定鉄心50は、
図3および
図6に示されるように、相互に平行に延びる駆動脚51と支持脚52とを有し、駆動脚51と支持脚52がバルブハウジング11の長手方向に沿うようにして固定鉄心50はバルブハウジング11内に組み込まれる。駆動脚51と支持脚52の基端部はヨーク部53を介して一体となっており、固定鉄心50はU字形状となっている。このように、固定鉄心50を、駆動脚51と支持脚52とヨーク部53が一体となったU字形状の一体構造とすることにより、固定鉄心50を2つの部材により形成した場合に比して、電磁弁10の部品点数を低減することができ、電磁弁10の小型化と組立作業性を向上することができる。駆動脚51と支持脚52とヨーク部53は、それぞれ横断面が四辺形となっている。
図6に示されるように、支持脚52の幅寸法W1は、駆動脚51の幅寸法W2よりも大きく、ヨーク部53の幅寸法は支持脚52の幅寸法とほぼ同一となっている。
【0023】
また、支持脚52よりも奥行き寸法が大きいシールフランジ78が支持脚52の先端部に設けられている。さらに、支持脚52のシールフランジ78よりも先端側には、当接突起67が形成されている。
図6に示されるように、支持脚52の幅寸法W1は、ヨーク部53およびシールフランジ78の幅寸法と同一である。それに対して、駆動脚51の幅寸法W2は支持脚52の幅寸法W1よりも小さい。同様に、当接突起67の幅寸法W3も支持脚52の幅寸法W1よりも小さい。また、当接突起67の奥行き寸法D2は、シールフランジ78の奥行き寸法D1より小さい。これにより、シールフランジ78の流路ブロック27側の面には、当接突起67を囲むシール面が形成されている。また、ヨーク部53の流路ブロック27側の面には、駆動脚51を囲むシール面が形成されている。
【0024】
固定鉄心50には、樹脂材料からなるボビン54が装着される。ボビン54は駆動脚51が貫通する筒状本体55を有し、筒状本体55の外側にはマグネットワイヤが巻き付けられてコイル56が形成される。筒状本体55の一端には、ヨーク部53の内面に突き当てられる当接フランジ57が設けられ、当接フランジ57は筒状本体55と一体となっている。筒状本体55の他端には、バルブハウジング11の内面に嵌合される固定フランジ58が設けられ、固定フランジ58は筒状本体55に一体となっている。駆動脚51の先端部の駆動突起66と支持脚52の先端部の当接突起67は、固定フランジ58から流路ブロック27に向けて突出している。
【0025】
固定フランジ58の先端面には嵌合突起77が設けられており、嵌合突起77の外側には密閉用の第1のシール部材81が装着される。支持脚52の先端の当接突起67には、当接突起67を囲むようにシールフランジ78が設けられており、シールフランジ78と固定フランジ58の間には、密閉用の第2のシール部材82が装着される。さらに、当接フランジ57とヨーク部53の間には、気密用のシール部材83が駆動脚51を囲むように装着される。第1のシール部材81は固定フランジ58の嵌合突起77とバルブハウジング11の内面との間をシールし、第2のシール部材82は固定フランジ58の内面に形成された溝に収容されてシールフランジ78の先端面と固定フランジ58との間をシールする。さらに、シール部材83は当接フランジ57の内面に形成された溝に収容されてヨーク部53と当接フランジ57との間のシール面をシールする。
【0026】
当接突起67のシール面にシール部材82を嵌め込み、駆動脚51の基端部のシール面にシール部材83を嵌め込めば、それぞれのシール部材82,83は固定鉄心50から脱落することがない。つまり、それぞれのシール面にシール部材82,83を取り付けた状態で、固定鉄心50をボビン54に挿入すれば、これらを容易に組み立てることができる。
【0027】
固定フランジ58と流路ブロック27の間には、鉄心収容室59が形成され、この鉄心収容室59内には可動鉄心60が設けられている。可動鉄心60は、
図1および
図2に示されるように、駆動脚51の先端と支持脚52の先端の間を延びるように、固定鉄心50の先端に沿って配置される。可動鉄心60の一端部には、可動鉄心60の長手方向に沿って湾曲した円弧状の摺動接触面61が設けられている。この摺動接触面61に対応して支持脚52の先端には、円弧状の摺動当接面62が設けられている。可動鉄心60は、摺動接触面61が支持脚52の摺動当接面62に突き当てられ、一端部を中心として揺動する。摺動接触面61は凹面となっており、
図3に示されるように、可動鉄心60の幅方向に直線状に延びている。また、摺動当接面62は凸面となっており、
図3および
図6に示されるように、支持脚52の幅方向に直線状に延びている。可動鉄心60は、凸面となった摺動当接面62の円弧面の中心点を中心として揺動する。
【0028】
このように、可動鉄心60は、支持脚52に突き当てられる一端部が揺動中心となり、他端部は駆動脚51に接触する位置と、離れる位置との間で揺動する揺動端部となっている。支持脚52の先端面に設けられた円弧状の摺動当接面62に当接する摺動接触面61が、可動鉄心60に設けられているので、可動鉄心60を支持脚52に固定するための軸部材等の部材を用いることなく、可動鉄心60を揺動運動させることができる。これにより、軸部材等が不要となることから、電磁弁10の部品点数を低減することができ、電磁弁10を小型化することができ、組立作業も容易となる。しかも、可動鉄心60は、揺動中心を確保するための部材を用いることなく、常に一定の揺動中心を中心として揺動することになり、一定の開閉精度を維持することができる。摺動接触面61を凸面とし、摺動当接面62を凹面とした形態においては、凸面となった摺動接触面61の円弧面の中心点を中心として、可動鉄心60は揺動する。
【0029】
駆動脚51の先端面は磁気吸着面63となっており、可動鉄心60の他端部は被吸着面64となっている。被吸着面64は、磁気吸着面63に対向しており、可動鉄心60の長手方向にV字形状に形成された凹溝65により形成される。磁気吸着面63は、凹溝65内に入り込むV字形状の駆動突起66により形成される。このように、磁気吸着面63と被吸着面64をV字形状とすると、磁気吸着面63と被吸着面64を平坦面とした場合に比して、可動鉄心60を大型化することなく、それぞれの面積を大きくすることができる。磁気吸着面63と被吸着面64のそれぞれを、摺動接触面61と摺動当接面62と同様に円弧面としても、同様に、それぞれの面積を大きくすることができる。
【0030】
可動鉄心60の摺動接触面61と被吸着面64は、固定鉄心50に対向する面つまり鉄心対向面60aに設けられており、この鉄心対向面60aはバルブハウジング11の開口端17側に向いている。
【0031】
鉄心収容室59内には、可動鉄心60と流路ブロック27の間に位置させて、ばね部材として鋼材製の板ばね70が設けられている。
図3および
図4に示されるように、板ばね70は2つの支持片71を有している。可動鉄心60は、鉄心対向面60aと、鉄心対向面60aに対して反対側の面である底面つまり弁駆動面60bを有している。板ばね70の2つの支持片71は、弁駆動面60bに沿って延びる。それぞれの支持片71は、可動鉄心60の側面側を弁駆動面60bに沿って延びており、それぞれの支持片71には、装着爪72が設けられている。
図3に示すように、装着爪受部95がボビン54の固定フランジ58の下側に2箇所設けられている。板ばね70の装着爪72は、ボビン54の装着爪受部95に係合する。両方の支持片71の間には、支持片71に沿って延びる引っ張り片73が設けられており、引っ張り片73と支持片71の基端部は連結部74により一体となっている。引っ張り片73は、可動鉄心60の弁駆動面60bに沿って延びる。係合突起76が可動鉄心60の揺動端部に設けられており、引っ張り片73の先端部には可動鉄心60の係合突起76に係合する係合爪75が設けられている。
【0032】
このように、電磁弁用の板ばね70の引っ張り片73は、可動鉄心60の一端部側に対向する連結部74から可動鉄心60の揺動端部側まで延びている。さらに、引っ張り片73の両側には、支持片71が連結部74から揺動端部側に延びている。
【0033】
可動鉄心60は、係合突起76と板ばね70の係合爪75の係合により、板ばね70に装着される。さらに、可動鉄心60が装着された板ばね70は、板ばね70の装着爪72とボビン54の装着爪受部95の係合により、ボビン54に装着される。このように、可動鉄心60と板ばね70とボビン54は係合により仮組立され、板ばね70はバルブハウジング11の一部を構成する流路ブロック27とボビン54との間に挟み込まれて固定される。引っ張り片73は、支持片71よりも可動鉄心60から離れる方向、つまり流路ブロック27に接近する方向のばね力を有している。したがって、板ばね70は可動鉄心60に対して、2つの力を加える。1つは、可動鉄心60の一端部側の摺動接触面61を支持脚52の摺動当接面62に押し付ける力であり、もう1つは、可動鉄心60の他端部の被吸着面64を駆動脚51の磁気吸着面63から離す方向の力である。
【0034】
このように、ポペット弁41に第1の弁座部24に向かう方向のばね力を付勢するためのばね部材を、板ばね70とすることで、係合爪75と装着爪72の2つを除く板状の部分は、可動鉄心60の弁駆動面60bと流路ブロック27の間の隙間に配置される。したがって、板ばね70を収容するためのスペースを小さくすることができる。配置された状態のもとでは、板ばね70は、流路ブロック27の開口端側の表面と、ボビン54とに当接する。
【0035】
弁駆動部材42の駆動片44の先端部44aは、可動鉄心60に当接する当接部となっている。つまり、板ばね70は可動鉄心60にばね力を付勢する。ばね力によって、可動鉄心60の揺動端部は、ポペット弁41を第1の弁座部24に向けて押しつける。したがって、コイル56に駆動電流が供給されない非通電時には、
図1に示されるように、板ばね70のばね力により、被吸着面64が磁気吸着面63から離れた状態となる。可動鉄心60は、弁駆動部材42を介して、圧縮コイルばね46のばね力に抗してポペット弁41を第1の弁座部24に押圧する。これにより、第1のポート21と第2のポート22の連通は遮断される。
【0036】
このように、コイル56への非通電時には、ポペット弁41が弁座部24に押し付けられて、弁駆動部材42は下限位置に位置し移動が規制された状態となっている。したがって、弁駆動部材42の駆動片44の当接部つまり先端部44aが可動鉄心60への引っ張り力の支点となり、係合突起76が引っ張り力の力点となり、摺動接触面61が作用点となって、板ばね70は摺動接触面61を摺動当接面62に押し付ける。これにより、非通電時には、摺動接触面61を摺動当接面62に接触させた状態が保持され、摺動接触面61が摺動当接面62からずれることがない。つまり、板ばね70は、被吸着面64を磁気吸着面63から離す方向に可動鉄心60に対してばね力を加える機能と、摺動接触面61を摺動当接面62に固定するための部材としての機能を有している。
【0037】
コイル56へ通電すると、ループ状の磁気回路が固定鉄心50と可動鉄心60に生成され、
図2および
図7に示されるように、可動鉄心60の揺動端部が駆動脚51に引き寄せられる。このときに、可動鉄心60は、摺動接触面61が摺動当接面62に摺動しながら、板ばね70のばね力に抗して揺動運動する。この揺動運動時には、円弧状の摺動接触面61と摺動当接面62との間には磁束が流れて吸引力が生じるから、可動鉄心60は固定鉄心50の支持脚52からずれることが防止される。なお、
図8においては、弁駆動部材42と可動鉄心60との当接状態を明瞭に示すために、流路ブロック27は二点鎖線で示されている。
【0038】
電磁弁10を組み立てるときには、弁駆動部材42には、予め、ポペット弁41とコイルばね46とが装着される。続いて、弁駆動部材42が組み付けられた流路ブロック27がバルブハウジング11内に開口端17から挿入され、流路ブロック27がバルブハウジング11の流路部16に取り付けられる。固定鉄心50には、予め、ボビン54が装着され、ボビン54にはコイル56が巻き付けられている。次いで、係合により仮組立された可動鉄心60と板ばね70とボビン54が、バルブハウジング11内に開口端17から挿入される。可動鉄心60は弁駆動部材42の先端部44aに突き当てられる。
【0039】
流路ブロック27の第1の流路形成部31の底面は、バルブハウジング11の、第2のポート22と弁体収容孔26を除く底の部分に当接するので、流路ブロック27とバルブハウジング11との上下位置が定まる。板ばね70の底面の周辺部分は、流路ブロック27の上面部分に当接するので、板ばね70と流路ブロック27の上下位置が定まる。ボビン54の嵌合突起77の底面96,97は、板ばね70の支持片71の縁部98と連結部74の縁部99に当接するので、ボビン54と板ばね70の上下位置が定まる。固定鉄心50のヨーク部53の下面はボビン54の当接フランジ57の上面に当接するので、固定鉄心50とボビン54の上下位置が定まる。このように、バルブハウジング11、流路ブロック27、板ばね70、ボビン54、固定鉄心50は、相互に当接する当接面を有しているので、順番にバルブハウジング11に入れてゆけば上下位置が定まる。これにより、バルブハウジング11に挿入される全ての部品が位置決め固定された仮組立状態となる。
【0040】
電磁弁10は、底部に流路部16が設けられたバルブハウジング11を有し、バルブハウジング11の流路部16にポペット弁41が配置されるとともに、固定鉄心50および可動鉄心60等のポペット弁41を駆動するための部品が組み込まれる。このように、単一のバルブハウジング11に、ポペット弁41とこれを駆動する部材とを組み込むようにした。したがって、弁体を収容する部材と、弁体を駆動するための部品を収容するハウジングとを設けるようにした場合に比して、本発明では部品点数を低減することができ、電磁弁10の組立作業性を向上させることができる。
【0041】
流路部16はバルブハウジング11の開口端17に向けて開口され、電磁弁10を構成する部材が収容される収容空間18は開口端17に開口されている。したがって、電磁弁10を構成する可動鉄心60等の全ての部品を、開口端17側から一方向に挿入することにより、電磁弁10を組み立てることができる。固定鉄心50とコイル56はボビン54に取り付けられる。板ばね70の係合爪75に固定鉄心50が係合して固定され、板ばねの装着爪72はボビン54の装着爪受部95に係合して固定される。このように、固定鉄心50とコイル56とボビン54と板ばね70と可動鉄心60は、バルブハウジング11に入れられる前に仮組立されて一体となっている。可動鉄心60は、固定鉄心50に対して、円弧状の摺動当接面62と摺動接触面61との当接により、確実に位置決めされる。これにより、小型の電磁弁10を容易に組み立てることができる。
【0042】
固定鉄心50がバルブハウジング11内に挿入された状態のもとで、バルブハウジング11内には液状の樹脂84が注入されて硬化される。これにより、固定鉄心50とボビン54がバルブハウジング11に固定される。電磁弁10の製造時に、液状の樹脂84を注入したとき、ボビン54の固定フランジ58とバルブハウジング11との間の隙間から樹脂84が鉄心収容室59に向けて流入することが、シール部材82により防止される。さらに、支持脚52と固定フランジ58との間から液状の樹脂84が鉄心収容室59に向けて流入することが、シール部材82により防止される。
【0043】
液状の樹脂84をバルブハウジング11内に注入する前の状態は、電磁弁10は仮組立の状態である。この仮組立状態のもとでは、バルブハウジング11内に組み込まれる全ての部品が所定の位置に位置決めされている。しかも、シール部材81により固定フランジ58とバルブハウジング11との間がシールされ、シール部材82により固定フランジ58とシールフランジ78との間がシールされ、さらにシール部材83によりヨーク部53と当接フランジ57との間がシールされている。したがって、仮組立の状態のもとで、第1のポート21に加圧空気を供給しコイル56に駆動電流を供給すると、電磁弁10を作動させて、電磁弁10の特性検査を行うことができる。この特性検査において、所定の作動特性が得られない場合や作動不良となった場合には、コイル56が組み付けられた固定鉄心50等の部品をバルブハウジング11から取り外して不具合部品を交換することができる。したがって、例えば、コイル56のみに不良があっても、固定鉄心50を再利用することができ、電磁弁10の製造歩留まりを向上させることができる。
【0044】
第1のポート21等から貫通孔45を介して鉄心収容室59内に流入し、駆動脚51とボビン54の隙間に流入した圧縮空気は、気密用のシール部材83によりシールされ、バルブハウジング11から外部に洩れることが防止される。
【0045】
バルブハウジング11の正面壁12には、基板85が装着される。基板85を支持するために、正面壁12には複数の基板支持爪86が設けられており、基板85は基板支持爪86によりバルブハウジング11に取り付けられる。当接フランジ57に設けられた通電端子87は、コイル56の巻き線に接続されており、基板85を正面壁12に装着すると、通電端子87は基板85に設けられたスルーホールに接続される。基板85には外部からコイル56に駆動電流を供給するための給電端子88が設けられている。
【0046】
バルブハウジング11の開口端17には、
図1および
図2に示されるように、端面カバー91が着脱自在に装着される。端面カバー91には、図示しないコネクタが装着されるソケット部92が設けられている。ソケット部92に装着されるコネクタは、給電端子88に接続される。バルブハウジング11の正面壁12には正面カバー93が装着され、基板85は正面カバー93により覆われる。
【0047】
仮組立状態のもとで、電磁弁10を作動させるときには、端面カバー91をバルブハウジング11に装着せず外部から固定鉄心50を下に向けて押さえることにより、組立寸法を設計通りに管理し、また圧縮空気に対抗する。
【0048】
この電磁弁10においては、基板85が設けられる側をバルブハウジング11の正面とし、これに対向する側を背面とし、各ポート21〜23が形成される部分をバルブハウジング11の底部としている。さらに、バルブハウジング11のうち端面カバー91が取り付けられる部分を開口端17としている。
【0049】
電磁弁10が空気圧源からの圧縮空気を被供給機器としての空気圧シリンダに供給するようにした空気圧回路に使用される場合には、第1のポート21は空気圧源に給気配管により接続される給気ポートとなる。第2のポート22は空気圧シリンダの圧力室に圧縮空気を供給する出力ポートとなり、第3のポート23は圧力室から戻される圧縮空気を排気する排気ポートとなる。したがって、コイル56への非通電時には、
図1に示されるように、可動鉄心60が板ばね70のばね力により弁駆動部材42を押圧し、ポペット弁41は弁座部24に当接する。これにより、ポペット弁41は、ポート21とポート22との連通を遮断する閉塞位置となり、かつ、ポート22とポート23とを連通させる開放位置となる。この状態のもとでは、空気圧シリンダの圧力室から排出される空気が第3のポート23から外部に排出される。
【0050】
一方、コイル56へ駆動電流が供給されると、
図2に示されるように、可動鉄心60が板ばね70のばね力に抗して駆動脚51の磁気吸着面63に引き寄せられて被吸着面64が磁気吸着面63に吸着される。これにより、ポペット弁41は、第2のポート22と第3のポート23との連通を遮断する閉塞位置となり、かつ、第1のポート21と第2のポート22とを連通させる開放位置となる。この状態のもとでは、第1のポート21から第2のポート22を介して空気圧シリンダの圧力室に圧縮空気が供給される。
【0051】
それぞれのポート21〜23がブロック状の部材に形成される場合には、ブロック状の部材と各ポート21〜23の外部との間をシールするために、バルブハウジング11の底部側の背面壁13にはシール部材との間には、シール部材94が装着される。
【0052】
電磁弁10を上述した3ポート弁に代えて、2つのポート21,22を有する2ポート弁とすると、ポペット弁41は、ポート21から供給された圧縮空気を被供給部材に供給する開放位置と、供給を停止する閉鎖位置とに作動し、被供給機器に対する圧縮空気の供給が制御される。その場合には、流路ブロック27としては第1の流路形成部31のみを有するものが使用される。そのような形態においても、電磁弁10を構成する部材を開口端17側から一方向に挿入することにより、小型の電磁弁10を容易に組み立てることができる。
【0053】
図9〜
図12は、それぞれ変形例である電磁弁10を示す断面図である。これらの図においては、上述した電磁弁10を構成する部材と共通性を有する部材には、同一の符号が付されている。
【0054】
図9および
図10に示す電磁弁10においては、第1のポート21〜第3のポート23がそれぞれバルブハウジング11の長手方向に延びており、バルブハウジング11の底面に開口されている。この電磁弁10においては、第1のポート21が弁座部24に設けられ、弁体収容孔26の底面に開口しており、第2のポート22も弁体収容孔26の底面に開口している。各ポート21〜23の形態としては、
図1および
図2に示されるように、背面形成形態と、
図9に示されるように底面形成形態とがある。
【0055】
図11に示す電磁弁10においては、流路部16には
図1および
図2に示した第3のポート23は設けられておらず、第1のポート21と第2のポート22が設けられている。したがって、この電磁弁は2ポート電磁弁となっており、コイル56に駆動電流が供給されていない非通電時には、
図11に示されるようにポペット弁41が弁座部24に接触して第1のポート21と第2のポート22との連通が遮断される。一方、通電時には、ポペット弁41が弁座部24から離れて第1のポート21と第2のポート22とが連通状態となる。
【0056】
図12に示す電磁弁10は、
図11と同様の2ポート電磁弁であり、第1のポート21と第2のポート22がそれぞれバルブハウジング11の長手方向に延びており、バルブハウジング11の底面に開口されている。したがって、両方のポート21,22は、底面形成形態となっている。
【0057】
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。