【文献】
J. AM. CHEM. SOC.,2010年,132,p.17961-17972
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
架橋部が、(a)ポリマーリンカー、化学的リンカー、ポリヌクレオチドまたはポリペプチドを含むか、(b)DNA、RNA、修飾DNAもしくはRNA、PNA、LNAまたはPEGを含むか、または(c)ヘアピンループである、請求項1に記載の方法。
(a)コンストラクトが標的ポリヌクレオチドの架橋部とは反対側の端に少なくとも1つのポリマーをさらに含むか、または(b)コンストラクトが標的ポリヌクレオチドの架橋部とは反対側の端に少なくとも1つのポリマーをさらに含み、かつ標的ポリヌクレオチドの一方の鎖にポリマーリーダーを含み、かつ標的ポリヌクレオチドの他方の鎖にポリマーテールを含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
膜貫通ポアが、(a)タンパク質ポアまたはソリッドステートポアであるか、または(b)Mspまたはα−ヘモリジン(α−HL)由来である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0012】
配列表の説明
配列番号1は、NNN−RRK変異MspA単量体をコードするコドン最適化ポリヌクレチド配列を示す。
【0013】
配列番号2(「B1」とも称する)は、MspA単量体のNNN−RRK変異体の成熟形態のアミノ酸配列を示す。変異体は、シグナル配列を欠失しており、以下の変異:D90N、D91N、D93N、D118R、D134RおよびE139Kを含む。これらの変異はMspAポアを通るDNA移行を可能にする。
【0014】
配列番号3は、α−ヘモリジン−E111N/K147N(α−HL−NN;Stoddartら、PNAS、2009;106(19):7702-7707)の1つのサブユニットをコードするポリヌクレオチド配列を示す。
【0015】
配列番号4は、α−HL−NNの1つのサブユニットのアミノ酸配列を示す。
【0016】
配列番号5は、Phi29DNAポリメラーゼをコードするコドン最適化ポリヌクレオチド配列を示す。
【0017】
配列番号6は、Phi29DNAポリメラーゼのアミノ酸配列を示す。
【0018】
配列番号7から9は、MspB、CおよびD変異体の成熟形態のアミノ酸配列をそれぞれ示す。成熟形態は、シグナル配列を欠失している。
【0019】
配列番号10から15は、ホモポリマー読み取りを例示するために用いられる配列を示す。
【0020】
配列番号16から36は、実施例で用いられた配列を示す。
【0021】
発明の詳細な説明
本開示の生成物および方法のさまざまな応用が当技術分野における具体的な必要性に適合され得ることは理解される。本明細書で用いられる用語は本発明の詳細な実施形態を記載する目的のためのみであり、限定されることを意図しないことも理解される。
【0022】
付加的に、本明細書および添付の特許請求の範囲で用いられる場合、単数形「a」、「an」および「the」は、内容が他を明確に記す場合を除いて複数の参照物を含む。したがって、例えば「1つのポア(a pore)」を参照することは、2個以上のそのようなポアを含み、「1つの核酸配列(a nucleic acid sequence)」は、2個以上のそのような配列を含むなど。
【0023】
本明細書に引用するすべての刊行物、特許および特許出願は(上記または下記に関わらず)それら全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0024】
本発明の方法
本発明は、二重鎖標的ポリヌクレオチドを配列決定するための方法を提供する。方法は、標的ポリヌクレオチドの2本鎖を架橋部によって連結するステップを含む。標的ポリヌクレオチドの2本鎖は、一重鎖ポリヌクレオチドを提供するために標的ポリヌクレオチドを含むコンストラクトをポリヌクレオチド結合タンパク質と接触させるステップによって分離される。一重鎖ポリヌクレオチドは、膜貫通ポアを通って移動する。一重鎖ポリヌクレオチド中のヌクレオチドの一部はポアと相互作用する。各相互作用の際にポアを通過する電流が測定され、標的ポリヌクレオチドの配列が推定または決定される。したがって標的ポリヌクレオチドは、鎖配列決定を用いて配列決定される。本方法は、本明細書において「MONO」法と称される場合がある。
【0025】
上に考察のとおり、標的ポリヌクレオチドの2本鎖を架橋部によって連結するステップは、標的ポリヌクレオチドの両鎖が膜貫通ポアによって配列決定されることを可能にする。本方法は、単一の二重鎖標的ポリヌクレオチドコンストラクトから得られる情報の量を二倍にすることから有利である。さらに相補的「アンチセンス」鎖中の配列が「センス」鎖の配列に対して必然的に直交性であることから、2本鎖の情報は情報科学的に組合せることができる。したがって本機序は、より高い信頼度の観察結果をもたらす直交性校正(proof-reading)能力を提供する。
【0026】
さらに、本発明の方法の他の主な有利点は、
(1)欠損ヌクレオチドの補償(coverage):一方の鎖において欠損され得る場合があるいかなる状態もその相補性領域から得られる直交性情報によって補償される可能性が高いことから、方法はいかなる欠損ヌクレオチドまたはヌクレオチド群の課題(例えば、鎖がポアを滑り通るなどの移動課題による)も実質的に最小化する。
(2)疑わしい配列モチーフの補償:配列モチーフのいかなる困難も相補鎖における直交性および対立性の情報によって補償される(異なる配列を有するものは同じ配列依存課題を有さない)。例えばこれは、電流にわずかな変化だけを生じるか、または同様の電流レベルを有する配列モチーフ(すなわち、ナノポアを通って移動する際に同様の電流遮断を生じ、それにより電流における段階変化が無いことから観察されない連続的塩基モチーフ)に特に関連する。1つの配列モチーフ由来のいかなる同様の電流レベルも、相補鎖におけるその直交性配列から得られる全く異なる電流レベルによって補償される。
【0027】
上に考察した有利点に加えて、二重鎖ポリヌクレオチドの両鎖を読み取る概念がさらなる利益をもたらすように利用され得る多数の特別な例がある。
【0028】
1.エピジェネティック情報
エピジェネティック情報(5−ヒドロキシメチルシトシンヌクレオチドの5−メチルシトシンなど)または天然DNA鎖内の損傷塩基を同定できるようにすることは、幅広い応用において望ましい。現在、この情報を抽出することは、DNA配列決定技術の大部分がその配列決定化学の一端としてDNA増幅に依存していることから困難である。この情報は、抽出され得るが、化学的処置に続く増幅を必要とし、その両方が誤りを生じる場合がある。
【0029】
ナノポア配列決定は単一分子配列決定技術でもあり、したがってDNA増幅の必要が無く実施され得る。ナノポアは標準4DNAヌクレオチドへの修飾を検出できることが示されている。ポリヌクレオチドの両鎖を読み取るステップは、修飾塩基が別の塩基と同様に振る舞う(同様の電流シグナルを生じる)場合に、DNA修飾を検出するステップにおいて有用であり得る。例えばメチルシトシン(mC)がチミジンと同様に振る舞う場合、mCをTと決めることに関連する誤りがある。センス鎖では、塩基がmCまたはTと称される可能性がある。しかしアンチセンス鎖では対応する塩基は高い可能性を有してGとして現れる場合がある。それにより、アンチセンス鎖を「校正」するステップによってセンス鎖中の塩基はTであるよりもmCであった可能性が高い。
【0030】
センス鎖およびアンチセンス鎖を読み取るステップは、増幅または複製の必要なく実施され得る。しかし増幅または複製は、エピジェネティック情報の検出を補助するために試料調製の一部として加えられる場合がある。ヌクレオチド鎖は、以下の情報がナノポアを通して以下の順序:センス(オリジナル)、アンチセンス(オリジナル)、−架橋部−、センス(相補)、アンチセンス(相補)で読み取られる場合に構築され得る(下に詳細に記載される)(
図15)。
【0031】
このスキームでは、メチル化塩基についての情報は4回得られる。エピジェネティック塩基がオリジナルセンス鎖にある場合(この場合mC)、以下の情報が高い可能性で得られる:センス(オリジナル)−mC、アンチセンス(オリジナル)−G、センス(相補)−Cおよびアンチセンス(相補)−G。オリジナルセンス読み取りと複製センス読み取りとが異なる結果をもたらすことは明らかであるが、両アンチセンス読み取りは同じ塩基決定をもたらす。この情報は、オリジナルセンス鎖中のエピジェネティック塩基の位置を示すために用いられ得る。
【0032】
2.RNA−DNA二重読み取り
同様のスキームがRNAを配列決定するために用いられ得る。架橋部は、RNAの一片に付着されることができ、DNA逆相補物は逆転写酵素を介してRNAに付加される(
図16に示すコンストラクトを生じる)。
【0033】
このスキームでは、RNAは読み取られ、逆相補物のDNA読み取りが続く。RNAおよびDNA読み取りの両方由来の情報は、RNA配列の決定または推定の確度を上昇させるために組み合わされ得る。例えばRNA中のウラシル塩基(U)がシトシンと類似の読み取りをもたらす場合、次に対応する塩基はこの誤りを解決するために用いられ得る。対応するDNA塩基がGである場合、RNA塩基はCであった可能性は高いが、しかしDNA塩基がAと決定される場合、RNA塩基はUであった可能性が高い。
【0034】
3.ホモポリマー読み取り
ホモポリマー読み取りは、単一分子ナノポア配列決定に関する問題になる可能性がある。ホモポリマー領域がポアの読み取りセクションより長い場合、ホモポリマーセクションの長さを決定することは困難である。
【0035】
Phi29がヘアピン周辺を読み取るために用いられ得ることは既に示されており、センス鎖およびアンチセンス鎖が読み取られることを可能にする。増幅は、ポリメラーゼおよび通常のDNA三リン酸のセット;dTTP、dGTP、dATP、dCTPを用いてアンチセンス鎖を作製するために用いられ得る。ホモポリマー読み取りの問題を克服するためにアンチセンス鎖は、オリジナルdTTP、dGTP、dATP、dCTPと組み合わされた異なる塩基を添加して合成され得る。これは、イノシン(I)などの天然塩基類似物であってもよい。塩基は、正規の天然塩基と比較して偶然の取り込みを有し、挿入率は三リン酸種の濃度を変更するステップによって制御され得る。
【0036】
代替塩基の付加を通じて、代替塩基がホモポリマー領域の逆相補物に挿入される可能性がある。この結果が、ホモポリマーの連続がナノポアの読み取りセクションによって読み取られ得るポイントまで長さが短くなることである。例えばAAAAAAAAAAAA(配列番号10)のホモポリマー群は代替塩基の無作為挿入を有し、TTTITTIITTTI (配列番号11)(Iはイノシン)をもたらし得る。
オリジナルDNA+ヘアピン(配列番号12):
(脱塩基=X)
通常の転換(配列番号13):
(脱塩基=X)
提案されたスキーム1(G、T、A、Cは類似物Iによって無作為に置換される)(配列番号14):
(脱塩基=X)
塩基類似物は一般的であってよく(T、G、AまたはCを置換)、または1つの塩基に特異的であってもよい(例えばデオキシウリジン(U)はTだけを置換する)。
提案されたスキーム2(Tは類似物Uによって無作為に置換される)(配列番号15):
(脱塩基=X)
【0037】
スキーム1および2の両方で、ホモポリマーストレッチは、個々のヌクレオチドまたはヌクレオチド群が推定または決定され得るように低減されていた。センス鎖は、天然DNA鎖であってよく、一方アンチセンス鎖は天然塩基と塩基類似物との混合物を含有する。センスおよびアンチセンス読み取り由来のデータの組合せは、オリジナルDNAセクション中のホモポリマー連続の長さを推定するために用いられ得る。
【0038】
二重鎖標的ポリヌクレオチド
本発明の方法は、二重鎖ポリヌクレオチドを配列決定するためのものである。核酸などのポリヌクレオチドは、2個以上のヌクレオチドを含む巨大分子である。ポリヌクレオチドまたは核酸は、任意のヌクレオチドの任意の組合せを含み得る。ヌクレオチドは、天然に存在するものまたは人工的であってよい。ヌクレオチドは、酸化またはメチル化されてよい。ヌクレオチドは、典型的には、核酸塩基、糖および少なくとも1つのリン酸基を含有する。核酸塩基は典型的には複素環である。核酸塩基は、これだけに限らないがプリンおよびピリミジンならびにより具体的にはアデニン、グアニン、チミン、ウラシルおよびシトシンを含む。糖は典型的には五炭糖である。ヌクレオチド糖は、これだけに限らないがリボースおよびデオキシリボースを含む。ヌクレオチドは、典型的にはリボヌクレオチドまたはデオキシリボヌクレオチドである。ヌクレオチドは典型的には一リン酸、二リン酸または三リン酸を含有する。リン酸は、ヌクレオチドの5’または3’側に付着できる。
【0039】
ヌクレオチドは、これだけに限らないがアデノシン一リン酸(AMP)、アデノシン二リン酸(ADP)、アデノシン三リン酸(ATP)、グアノシン一リン酸(GMP)、グアノシン二リン酸(GDP)、グアノシン三リン酸(GTP)、チミジン一リン酸(TMP)、チミジン二リン酸(TDP)、チミジン三リン酸(TTP)、ウリジン一リン酸(UMP)、ウリジン二リン酸(UDP)、ウリジン三リン酸(UTP)、シチジン一リン酸(CMP)、シチジン二リン酸(CDP)、シチジン三リン酸(CTP)、5−メチルシチジン一リン酸、5−メチルシチジン二リン酸、5−メチルシチジン三リン酸、5−ヒドロキシメチルシチジン一リン酸、5−ヒドロキシメチルシチジン二リン酸、5−ヒドロキシメチルシチジン三リン酸、環状アデノシン一リン酸(cAMP)、環状グアノシン一リン酸(cGMP)、デオキシアデノシン一リン酸(dAMP)、デオキシアデノシン二リン酸(dADP)、デオキシアデノシン三リン酸(dATP)、デオキシグアノシン一リン酸(dGMP)、デオキシグアノシン二リン酸(dGDP)、デオキシグアノシン三リン酸(dGTP)、デオキシチミジン一リン酸(dTMP)、デオキシチミジン二リン酸(dTDP)、デオキシチミジン三リン酸(dTTP)、デオキシウリジン一リン酸(dUMP)、デオキシウリジン二リン酸(dUDP)、デオキシウリジン三リン酸(dUTP)、デオキシシチジン一リン酸(dCMP)、デオキシシチジン二リン酸(dCDP)およびデオキシシチジン三リン酸(dCTP)、5−メチル−2’−デオキシシチジン一リン酸、5−メチル−2’−デオキシシチジン二リン酸、5−メチル−2’−デオキシシチジン三リン酸、5−ヒドロキシメチル−2’−デオキシシチジン一リン酸、5−ヒドロキシメチル−2’−デオキシシチジン二リン酸および5−ヒドロキシメチル−2’−デオキシシチジン三リン酸を含む。ヌクレオチドは、好ましくはAMP、TMP、GMP、CMP、UMP、dAMP、dTMP、dGMPまたはdCMPから選択される。
【0040】
ヌクレオチドは、糖および少なくとも1つのリン酸基を含有する場合がある(すなわち核酸塩基を欠失している)。
【0041】
ポリヌクレオチドは、デオキシリボ核酸(DNA)またはリボ核酸(RNA)などの核酸であってよい。標的ポリヌクレオチドは、DNAの1本鎖にハイブリダイズしたRNAの1本鎖を含む場合がある。ポリヌクレオチドは、ペプチド核酸(PNA)、グリセロール核酸(GNA)、トレオース核酸(TNA)、ロックド核酸(LNA)またはヌクレオチド側鎖を有する他の合成ポリマーなどの当技術分野において公知の任意の合成核酸であってよい。
【0042】
標的ポリヌクレオチドは、任意の長さであってよい。例えばポリヌクレオチドは、長さ少なくとも10、少なくとも50、少なくとも100、少なくとも150、少なくとも200、少なくとも250、少なくとも300、少なくとも400または少なくとも500ヌクレオチド対であってよい。ポリヌクレオチドは、1000ヌクレオチド対以上、長さ5000ヌクレオチド対以上または長さ100000ヌクレオチド対以上であってよい。
【0043】
標的ポリヌクレオチドは、任意の好適な試料中に存在する。本発明は、標的ポリヌクレオチドを含有することが公知であるまたは含有すると考えられる試料について典型的には実行される。代替的に本発明は、1つまたは複数の標的ポリヌクレオチドの同一性を確認するために試料中でのその存在が公知であるまたは期待される試料について実行され得る。
【0044】
試料は生物学的試料であってよい。本発明は、任意の生物または微生物から得られたまたは抽出された試料についてin vitroで実行されてよい。生物または微生物は典型的には始生代のもの、原核性または真核性であり、典型的には五界:植物界、動物界、菌界、モネラ界および原生生物界に属する。本発明は、任意のウイルスから得られたまたは抽出された試料についてin vitroで実行されてよい。試料は、好ましくは液体試料である。試料は典型的には、患者の体液を含む。試料は尿、リンパ液、唾液、粘液または羊水であってよいが、好ましくは血液、血漿または血清である。典型的には試料は、ヒト由来であるが、代替的に、ウマ、ウシ、ヒツジまたはブタなどの商業的に飼育される動物由来などの別の哺乳動物由来であってもよく、代替的にネコまたはイヌなどの愛玩動物であってもよい。代替的に植物由来の試料は、穀類、マメ、果実または野菜などの商品作物(例えばコムギ、オオムギ、カラスムギ、セイヨウアブラナ、トウモロコシ、ダイズ、イネ、バナナ、リンゴ、トマト、ジャガイモ、ブドウ、タバコ、マメ、レンズマメ、サトウキビ、ココア、ワタ、チャ、コーヒー)から典型的には得られる。
【0045】
試料は、非生物学的試料であってよい。非生物学的試料は、好ましくは液体試料である。非生物学的試料の例は、手術用液(surgical fluids)、水(飲料水、海水または河川水など)および検査室検査のための試薬を含む。
【0046】
試料は、典型的にはアッセイされる前に例えば遠心分離によってまたは、不要の分子または細胞(赤血球細胞など)をろ過して除く膜を通すことによって処理される。試料は採取されてから直ちに測定されてよい。試料は、典型的にはアッセイの前に好ましくは−70℃より低くで、保存されてもよい。
【0047】
下により詳細に考察されるとおり標的ポリヌクレオチドが膜にカップリングされる場合、ヒトの血液からは少量の精製DNAしか得られないため、本発明の方法はヒトDNA配列決定のために特に有利である。方法は、1pM未満、10pM未満または100pM未満などの約0.1pMから約1nMまでの濃度で存在する標的ポリヌクレオチドの配列決定を好ましくは可能にする。
【0048】
コンストラクト(構築物)
本発明の方法は、配列決定される二重鎖標的ポリヌクレオチドを含むコンストラクトを提供するステップを含む。コンストラクトは、標的ポリヌクレオチドの両鎖が膜貫通ポアによって配列決定されることを典型的には可能にする。
【0049】
コンストラクトは、標的ポリヌクレオチドの2本鎖の連結を可能にする架橋部を含む。典型的には架橋部は、標的ポリヌクレオチドの2本鎖を共有結合で連結する。架橋部が膜貫通ポアを通る一重鎖ポリヌクレオチドの移動を干渉しない限り、架橋部は標的ポリヌクレオチドの2本鎖を連結できる任意のものであってよい。好適な架橋部は、これだけに限らないがポリマーリンカー、化学的リンカー、ポリヌクレオチドまたはポリペプチドを含む。好ましくは架橋部は、DNA、RNA、修飾DNA(脱塩基DNAなど)、RNA、PNA、LNAまたはPEGを含む。架橋部はより好ましくはDNAまたはRNAである。
【0050】
架橋部は、最も好ましくはヘアピンループである。ヘアピンループは典型的には長さ4から100ヌクレオチド、好ましくは長さ4から8ヌクレオチドである。
【0051】
架橋部は、当技術分野において公知の任意の好適な手段によって標的ポリヌクレオチドコンストラクトに連結される。架橋部は、別に合成されてよく、標的ポリヌクレオチドに化学的に付着または酵素的にライゲーションされてよい。代替的に架橋部は、標的ポリヌクレオチドのプロセシングにおいて作製されてよい。
【0052】
架橋部は、標的ポリヌクレオチドの一方の端またはその付近で標的ポリヌクレオチドに連結される。架橋部は、標的ポリヌクレオチドの末端から10ヌクレオチド以内で標的ポリヌクレオチドに好ましくは連結される。
【0053】
標的ポリヌクレオチドを含むコンストラクトは、標的ポリヌクレオチドの架橋部とは反対側の端に少なくとも1つのポリマーも好ましくは含む。そのようなポリマー(複数可)は、下により詳細に考察される通り本発明の配列決定法を補助する。好適なポリマーは、ポリヌクレオチド(DNA/RNA)、修飾DNAなどの修飾ポリヌクレオチド、PNA、LNA、PEGまたはポリペプチドを含む。
【0054】
コンストラクトは、リーダーポリマーを好ましくは含む。リーダーポリマーは、標的ポリヌクレオチドの架橋部とは反対側の端に連結される。リーダーポリマーは、二重鎖標的ポリヌクレオチドが膜貫通ポアとまたは、Phi29DNAポリメラーゼなどのポリヌクレオチド結合タンパク質と会合することを補助し、2本鎖を分離することを補助するおよび/またはポアを通る一重鎖ポリヌクレオチドの移動を制御する。膜貫通ポアおよびポリヌクレオチド結合タンパク質は、下により詳細に考察される。
【0055】
リーダーポリマーは、ポリヌクレオチド(DNAもしくはRNAなど)、修飾ポリヌクレオチド(脱塩基DNAなど)、PNA、LNA、PEGまたはポリペプチドであってよい。リーダーポリマーは、好ましくはポリヌクレオチドであり、より好ましくは一重鎖ポリヌクレオチドである。リーダーポリマーは、上に考察されたいずれのポリヌクレオチドであってもよい。一重鎖リーダーポリマーは最も好ましくはDNAの一重鎖である。リーダーポリマーは、任意の長さであってよいが、典型的には、長さ50から150ヌクレオチドなどの長さ27から150ヌクレオチドである。
【0056】
二重鎖ポリヌクレオチドへの一重鎖ポリヌクレオチドのセクションの付加は、種々の方法で実施され得る。化学的または酵素学的ライゲーションは、行われ得る。付加的にEpicentreによるNextera法は好適である。本発明者らは、従来通りゲノムDNAの標的領域の開始部分に相補的なセクションを含有するだけでなく、50ポリTセクションが付加的に先行したセンスプライマーを用いるPCR法を開発した。ポリメラーゼがポリTセクションとは反対側の相補鎖を伸長し、それにより(通常通り)平滑末端PCR産物が生じることを防ぐために、4個の脱塩基部位がポリTセクションと相補的プライミングセクションとの間に付加された。これらの脱塩基部位は、ポリメラーゼがこの領域を超えて伸長することを防ぎ、そのためポリTセクションは5’一重鎖DNAとして各増幅複製物中に残る。ポリメラーゼ伸長を停止できる可能性がある他の修飾は、RNA、PNAまたはモルホリノ塩基、iso−dCもしくはiso−dGを含む。
【0057】
コンストラクトは、ポリマーテール(架橋部とは反対側の端で標的ポリヌクレオチドとも連結された)を好ましくはさらに含む。ポリマーテールは、膜貫通ポアによる標的コンストラクトの配列決定を補助する。詳細にはポリマーテールは、二重鎖ポリヌクレオチドの全体(すなわち両鎖のすべて)が膜貫通ポアによって読み取られ、配列決定され得ることを典型的には確実にする。下に考察するとおりPhi29DNAポリメラーゼなどのポリヌクレオチド結合タンパク質は、膜貫通ポアを通る一重鎖ポリヌクレオチドの移動を制御できる。典型的にはタンパク質は、ポアを通るポリヌクレオチドの移動を遅くする。例えばPhi29DNAポリメラーゼは、膜全体に印加される電位に沿ってポアを通るポリヌクレオチドの移動を遅くするブレーキのように作用する。ポリヌクレオチドは、結合タンパク質との接触がなくなると配列情報を得ることが困難であるような速度で自由にポアを通って移動する。タンパク質からポアまでに通常短い距離があることから、典型的にはおよそ20ヌクレオチドなど(その距離におよそ等しい)の配列情報が失われる場合がある。テールポリマーは、一重鎖ポリヌクレオチドの長さをその移動が核酸結合タンパク質によって制御され得る一方で、標的ポリヌクレオチドの両鎖すべてがポアを通り、配列決定されるように「伸長」する。そのような実施形態は、配列情報が標的ポリヌクレオチド中の両鎖全体から得られ得ることを確実にする。テールポリマーは、プライマーが結合するための部位も提供し、核酸結合タンパク質が標的ポリヌクレオチドの2本鎖を分離することを可能にする。
【0058】
テールポリマーは、ポリヌクレオチド(DNAもしくはRNAなど)、修飾ポリヌクレオチド(脱塩基DNAなど)、PNA、LNA、PEGまたはポリペプチドであってよい。テールポリマーは、好ましくはポリヌクレオチドであり、より好ましくは一重鎖ポリヌクレオチドである。テールポリマーは、上に考察された任意のポリヌクレオチドであってよい。
【0059】
コンストラクトは、1つまたは複数のマーカーも好ましくは含み、膜貫通ポアを通るときに特有の電流(特徴的なサイン電流)を生じる。マーカーは、ポアとの関連における一重鎖ポリヌクレオチドの位置を推定または決定することを可能にするために典型的には用いられる。例えば標的ポリヌクレオチドの両鎖の間に位置するマーカー由来のシグナルは、一方の鎖が配列決定され、他方がポアに入ろうとしていることを示す。したがってそのようなマーカーは、標的DNAのセンス鎖とアンチセンス鎖とを識別するために用いられ得る。マーカー(複数可)は標的ポリヌクレオチドの供給源を同定するためにも用いられ得る。好適なマーカーは、これだけに限らないが脱塩基領域、ヌクレオチドの特異的配列、非天然ヌクレオチド、フルオロフォア(fluorophore)またはコレステロール(cholesterol)を含む。マーカーは、好ましくは脱塩基領域またはヌクレオチドの特異的配列である。
【0060】
マーカー(複数可)は、コンストラクトのいずれの場所にも位置し得る。マーカー(複数可)は、架橋部内に位置し得る。マーカー(複数可)は、架橋部付近にも位置し得る。架橋部付近は、架橋部の10から100ヌクレオチド以内を好ましくは意味する。
【0061】
マーカーは、リーダーポリマーまたはテールポリマー内にも位置し得る。
【0062】
コンストラクトは、任意の公知の方法を用いて膜にカップリングされ得る。膜が脂質二重層などの両親媒性層である場合は(下に詳細に考察されるとおり)、コンストラクトは、膜に存在するポリペプチドまたは膜に存在する疎水性アンカーを介して膜に好ましくはカップリングされる。疎水性アンカーは、好ましくは脂質、脂肪酸、ステロール、カーボンナノチューブまたはアミノ酸である。
【0063】
コンストラクトは膜に直接カップリングされ得る。コンストラクトは好ましくは膜にリンカーを介してカップリングされる。好ましいリンカーは、これだけに限らないがポリヌクレオチド、ポリエチレングリコール(PEG)およびポリペプチドなどのポリマーを含む。ポリヌクレオチドが膜に直接カップリングされる場合、膜と検出器との間の距離のためにポリヌクレオチドの末端まで配列決定が継続できないことから、いくらかの配列データが失われる。リンカーが用いられる場合、ポリヌクレオチドは完了まで処理され得る。リンカーが用いられる場合、リンカーはコンストラクトの任意の位置に付着され得る。リンカーは、テールポリマーでポリヌクレオチドに好ましくは付着される。
【0064】
カップリングは、安定または一過的であってよい。ある種の応用に関してカップリングの一過的な性質は好ましい。安定カップリング分子がポリヌクレオチドの5’末端または3’末端のいずれかに直接付着された場合、二重層と酵素活性部位との間の距離のためにポリヌクレオチドの末端まで配列決定が継続できないことから、いくらかの配列データが失われる。カップリングが一過的である場合、カップリングされた端は無作為に二重層から遊離し、ポリヌクレオチドは完了まで処理され得る。安定なまたは一過的連結を膜と形成する化学基は、下により詳細に考察される。コンストラクトは、コレステロール(cholesterol)または脂肪酸アシル鎖を用いて両親媒性層または脂質二重層に一過的にカップリングされ得る。ヘキサデカン酸などの長さ6から30までの炭素原子を有する任意の脂肪酸アシル鎖は用いられ得る。
【0065】
好ましい実施形態では、コンストラクトは、脂質二重層などの両親媒性層にカップリングされる。合成脂質二重層へのポリヌクレオチドのカップリングは、種々の異なるテザーリング戦略で既に実行されている。これらを下の表1に要約する。
【0067】
ポリヌクレオチドは、合成反応において修飾ホスホラミダイトを用いて官能基化されることができ、チオール、コレステロール(cholesterol)、脂質およびビオチン基などの反応基の付加に容易に適合される。これらのさまざまな付着化学物質は、ポリヌクレオチドに一連の付着選択肢をもたらす。さまざまな各修飾基は、わずかに異なる方法でポリヌクレオチドを繋ぎ止め、カップリングは常に永久的ではなく、二重層へのさまざまな残存時間をポリヌクレオチドにもたらす。一過的カップリングの有利点は、上に考察される。
【0068】
ポリヌクレオチドのカップリングは、反応基がポリヌクレオチドに付加され得る限り多数の他の手段によっても達成され得る。DNAのいずれかの端への反応基の付加は既に報告されている。チオール基はポリヌクレオチドキナーゼおよびATPγSを用いてssDNAの5’に付加され得る(Grant,G.P.およびP.Z.Qin (2007) "A facile method for attaching nitroxide spin labels at the 5' terminus of nucleic acids." Nucleic Acids Res 35(10):e77)。ビオチン、チオールおよびフルオロフォア(fluorophore)などの化学基のより多様な選択は、修飾オリゴヌクレオチドをssDNAの3’に組み込むためにターミナルトランスフェラーゼを用いて付加され得る(Kumar,A.,P.Tchenら、(1988)."Nonradioactive labeling of synthetic oligonucleotide probes with terminal deoxynucleotidyl transferase." Anal Biochem 169(2):376-82)。
【0069】
代替的に反応基は、二重層に既にカップリングされたものに相補的なDNAの短片の付加のために考慮される場合があり、付着はハイブリダイゼーションを介して達成され得る。ssDNAの短片のライゲーションは、T4RNAリガーゼIを用いて報告されている(Troutt,A.B.,M.G.McHeyzer-Williamsら、(1992)."Ligation-anchored PCR: a simple amplification technique with single-sided specificity." Proc Natl Acad Sci U S A 89(20):9823-5)。代替的にssDNAまたはdsDNAのいずれかは、天然dsDNAにライゲーションされることができ、次いで2本鎖は熱的または化学的変性によって分離された。天然dsDNAについて、ssDNAの1片を二重鎖の1つもしくは両方の端に、またはdsDNAを1つまたは両方の端へのいずれかで付加できる。次いで、二重鎖が融解される際に、ssDNAが5’末端、3’末端もしくは両端でのライゲーションもしくは修飾のために用いられ、dsDNAがライゲーションのために用いられた場合、各一重鎖は5’または3’修飾のいずれかを有する。ポリヌクレオチドが合成鎖である場合、カップリング化学はポリペプチドの化学合成の際に組み込まれ得る。例えばポリヌクレオチドは、反応基が付着されたプライマーを用いて合成され得る。
【0070】
ゲノムDNAのセクションの増幅のための一般的技術は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を用いている。本明細書では、2個の合成オリゴヌクレオチドプライマーを用いてDNAの同じセクションの多数の複製物が作製される場合があり、各複製物について二重鎖中の各鎖の5’は合成ポリヌクレオチドである。コレステロール(cholesterol)、チオール(thiol)、ビオチン(biotin)または脂質などの反応基を有するアンチセンスプライマーを用いるステップによって、増幅された標的DNAの各複製物は、カップリングのための反応基を含有する。
【0071】
分離
標的ポリヌクレオチドの2本鎖は、ポリヌクレオチド結合タンパク質を用いて分離される。
【0072】
ポリヌクレオチド結合タンパク質は、好ましくはポリヌクレオチドハンドリング酵素由来である。しかし酵素は、反応を触媒しない条件下で用いられ得る。例えばPhi29DNAポリメラーゼ由来のタンパク質は、下により詳細に考察されるとおりアンジッピングモードで用いられる場合がある。
【0073】
ポリヌクレオチドハンドリング酵素は、ポリヌクレオチドの少なくとも1つの特性と相互作用し、修飾できるポリペプチドである。酵素は、個々のヌクレオチドまたはジ−またはトリヌクレオチドなどのヌクレオチドの短い鎖を形成するように切断するステップによってポリヌクレオチドを修飾できる。酵素は特定の位置に方向付けるステップまたは移動させるステップによってポリヌクレオチドを修飾できる。ポリヌクレオチドハンドリング酵素は、標的ポリヌクレオチドに結合でき、好ましくはポアを通るその移動を制御できる限り酵素活性を表す必要がない。例えば酵素は、その酵素活性を除去するように修飾されてよく、または酵素として作用することを妨げる条件下で用いられ得る。そのような条件は、下により詳細に考察される。
【0074】
ポリヌクレオチド結合タンパク質は、典型的にはピコウイルス亜科(Picovirinae)ウイルス科由来である。好適なウイルスは、これだけに限らないがAHJD様ウイスルおよびPhi29様ウイルスを含む。ポリヌクレオチド結合タンパク質は、好ましくはPhi29DNAポリメラーゼまたはヘリカーゼ由来である。
【0075】
Phi29DNAポリメラーゼ由来のタンパク質は、配列番号6に示される配列またはその変種を含む。野生型Phi29DNAポリメラーゼは、ポリメラーゼ活性およびエキソヌクレアーゼ活性を有する。適正条件下で二重鎖ポリヌクレオチドをアンジップもできる。それ故に酵素は3種のモードで作動できる。これは下により詳細に考察される。配列番号6の変種は、配列番号6のアミノ酸配列から変化しており、ポリヌクレオチド結合活性を保持するアミノ酸配列を有する酵素である。変種は、下に考察する3種のモードの少なくとも1つで作動しなければならない。好ましくは変種は、3種すべてのモードで作動する。変種は、ポリヌクレオチドの操作を促進するならびに/または高塩濃度および/もしくは室温でのその活性を促進する修飾を含む場合がある。変種は、酵素耐塩性を改善するFidelity SystemsのTOPO修飾を含む場合がある。
【0076】
配列番号6のアミノ酸配列全長にわたって変種は、アミノ酸同一性に基づいてその配列に好ましくは少なくとも40%相同である。より好ましくは変種ポリペプチドは、配列全体にわたって配列番号6のアミノ酸配列にアミノ酸同一性に基づいて少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%およびより好ましくは少なくとも95%、97%または99%相同であり得る。少なくとも80%、例えば少なくとも85%、90%または95%のアミノ酸同一性が200以上(例えば230、250、270もしくは280またはそれ以上)のストレッチの連続アミノ酸にわたってある場合がある(「高い相同性(hard homology)」)。相同性は、下に記載のとおり決定される。変種は、配列番号2に関連して下に考察する任意の方法で野生型配列と異なっていてよい。酵素は、下に考察するとおりポアに共有結合的に付着されてよい。
【0077】
方法は、アンジッピングモードでPhi29DNAポリメラーゼ由来のタンパク質を用いて好ましくは実行される。本実施形態ではステップ(b)、(c)および(d)は、遊離ヌクレオチド非存在下および酵素補因子非存在下で、ポリメラーゼが印加された電圧から生じる場を伴うポアを通る一重鎖ポリヌクレオチドの移動を制御するように(アンジップされるように)実行される。本実施形態ではポリメラーゼは、一重鎖ポリヌクレオチドが印加された電圧の影響下でポアをあまりにも速く通って移動することを妨げるブレーキのように作用する。方法は、(e)ポア全体に印加される電圧を、一重鎖ポリヌクレオチドがステップ(c)および(d)におけるものとは反対方向に(すなわち再アニールするように)ポアを通って移動し、ポリヌクレオチド中のヌクレオチドの一部がポアと相互作用するように低下させるステップ、ならびに(f)各相互作用の際にポアを通過する電流を測定し、それによりステップ(d)で得られた標的ポリヌクレオチドの配列を校正するステップを好ましくはさらに含み、ステップ(e)および(f)はポア全体に電圧が印加されて実行される。
【0078】
標的ポリヌクレオチドの2本鎖は、分離されることができ、配列決定が実行される前の任意の段階で必要に応じて何度でも複製され得る。例えば、上に記載の第一標的ポリヌクレオチドコンストラクトの2本鎖を分離するステップ後に、得られた一重鎖ポリヌクレオチドに相補的な鎖は別の二重鎖ポリヌクレオチドを形成するために作製され得る。次いでこの二重鎖ポリヌクレオチドの2本鎖は、第二コンストラクトを形成するために架橋部を用いて連結され得る。これは、本明細書において「DUO」法と称される場合がある。次いでこのコンストラクトは、本発明において用いられ得る。そのような実施形態では、生じたコンストラクト中の二重鎖ポリヌクレオチドの1本鎖は、架橋部によって連結されたオリジナル標的二重鎖ポリヌクレオチド(第一コンストラクト中)の両鎖を含有する。オリジナル標的二重鎖ポリヌクレオチドまたは相補鎖の配列は、推定または決定され得る。複製のこのプロセスは、必要に応じて何度でも反復されることができ、標的ポリヌクレオチドが実際に複数回読み取られることから追加的校正を提供する。
【0079】
膜
任意の膜が本発明により用いられ得る。好適な膜は、当技術分野において周知である。膜は、好ましくは両親媒性層である。両親媒性層は、親水性および親油性特性の両方を有するリン脂質などの両親媒性分子から形成される層である。両親媒性分子は、合成または天然に存在するものであってよい。天然に存在しない両親媒性物質および単層を形成する両親媒性物質は当技術分野において公知であり、例えばブロックコポリマーを含む(Gonzalez-Perezら、Langmuir、2009、25、10447-10450)。ブロックコポリマーは、1本のポリマー鎖を作出するように2つ以上の単量体サブユニットが共に重合されるポリマー材料である。ブロックコポリマーは、各単量体サブユニットによって寄与される特性を典型的には有する。しかしブロックコポリマーは、個々のサブユニットから形成されたポリマーが保有しない独特の特性を有する場合もある。ブロックコポリマーは、単量体サブユニットの1つが疎水性(すなわち親油性)であるが、他のサブユニット(複数可)が水性媒体中で親水性であるように操作され得る。この場合、ブロックコポリマーは、両親媒特性を保有する場合があり、生物学的膜を模倣する構造を形成できる。ブロックコポリマーは、ジブロック(2個の単量体サブユニットからなる)である場合があるが、両親媒性物質として振る舞うさらに複雑な配置を形成するように2個を超える単量体サブユニットから構築されてもよい。コポリマーは、トリブロック、テトラブロックまたはペンタブロックコポリマーであってもよい。
【0080】
古細菌(Archaebacterial)双極性テトラエーテル(tetraether)脂質は、天然に存在する脂質であり、脂質が単層膜を形成するように構築される。これらの脂質は一般に厳しい生物学的環境に生存する好極限性細菌、好熱菌、好塩菌および好酸菌において見出される。それらの安定性は、最終二重層の融合された性質から由来すると考えられている。一般的モチーフ親水性−疎水性−親水性を有するトリブロックポリマーを作出するステップによってこれらの生物学的実体を模倣するブロックコポリマー材料を構築することは簡単である。この材料は、脂質二重層と同様に振る舞う単量体膜を形成でき、小胞から層状膜までのさまざまな相の挙動を包含できる。これらのトリブロックコポリマーから形成される膜は、生物学的脂質膜を超えるいくつかの有利点を保持する。トリブロックコポリマーは合成されることから、正確な構築は、膜を形成するためおよびポアならびに他のタンパク質と相互作用するために必要な正確な鎖長および特性を提供するために慎重に制御され得る。
【0081】
ブロックコポリマーは、脂質サブ材料として分類されないサブユニットから構築されてもよい、例えば疎水性ポリマーは、シロキサンまたは他の炭化水素に基づかない単量体からも作られる場合がある。ブロックコポリマーの親水性サブセクションは、低いタンパク質結合特性を有する場合もあり、未加工の生物学的試料に暴露される場合に高度に耐性である膜の作出を可能にする。頭部群ユニットは、非古典的脂質頭部群に由来することもできる。
【0082】
トリブロックコポリマー膜は、生物学的脂質膜と比較して増大した機械的および環境的安定性、例えば作動可能なより高い温度またはpHの範囲も有する。ブロックコポリマーの合成特性は、幅広い応用のためにポリマーに基づく膜をカズタマイズするためのプラットホームを提供する。
【0083】
両親媒性分子は、分析物のカップリングを促進するために化学的に修飾または官能基化され得る。
【0084】
両親媒性層は、単層または二重層であってよい。両親媒性層は、典型的には平面状である。両親媒性層は、曲面などの非平面状であってもよい。
【0085】
両親媒性層は、典型的には脂質二重層である。脂質二重層は細胞膜のモデルであり、さまざまな実験研究のための優れたプラットホームとして役立つ。例えば、脂質二重層は、単一チャネル記録による膜タンパク質のin vitro調査のために用いられ得る。代替的に脂質二重層は、さまざまな物質の存在を検出するためのバイオセンサーとして用いられ得る。脂質二重層は、任意の脂質二重層であってよい。好適な脂質二重層は、これだけに限らないが平面状脂質二重層、支持された二重層またはリポソームを含む。脂質二重層は好ましくは平面状脂質二重層である。好適な脂質二重層は国際出願第PCT/GB08/000563号(WO2008/102121として公開)、国際出願第PCT/GB08/004127号(WO2009/077734として公開)、および国際出願第PCT/GB2006/001057号(WO2006/100484として公開)に開示されている。
【0086】
脂質二重層を形成するための方法は、当技術分野において公知である。好適な方法は実施例に開示される。脂質二重層は、脂質単層が水性溶液/空気界面にその界面に垂直である開口部のいずれかの端を通って運ばれる、モンタルおよびミューラーの方法(Proc.Natl.Acad.Sci.USA.、1972;69:3561-3566)によって一般的には形成される。
【0087】
モンタルおよびミューラーの方法は、それがタンパク質ポア挿入のために好適である良質な脂質二重層を形成する対費用効果が高くて比較的簡単な方法であることから一般的である。二重層形成の他の一般的方法は、チップディッピング、ペインティング二重層およびリポソーム二重層のパッチクランピングを含む。
【0088】
好ましい実施形態では、脂質二重層は、国際出願第PCT/GB08/004127号(WO2009/077734として公開)に記載のとおり形成される。本方法において有利には、脂質二重層は乾燥脂質から形成される。最も好ましい実施形態では、脂質二重層は、WO2009/077734(第PCT/GB08/004127号)に記載のとおり開口部で形成される。
【0089】
別の好ましい実施形態では、膜は、ソリッドステート層である。ソリッドステート層は生物由来ではない。換言するとソリッドステート層は、生物または細胞などの生物学的環境由来でなく、またはそれから単離されず、生物学的に入手可能な構造の合成的に製造されたバージョンでもない。ソリッドステート層は、これだけに限らないがミクロ電子材料、Si3N4、A1203およびSiOなどの絶縁材料、ポリアミドなどの有機および無機ポリマー、Teflon(登録商標)などのプラスチックまたは2要素添加硬化シリコンゴム(two-component addition-cure silicone rubber)などのエラストマーならびにガラスを含む有機材料ならびに無機材料の両方から形成され得る。ソリッドステート層はグラフェン(graphene)から形成され得る。好適なグラフェン(graphene)層は国際出願第PCT/US2008/010637号(WO2009/035647として公開)に開示されている。
【0090】
膜貫通ポア
膜貫通ポアは、水和イオンが印加された電位によって膜の一方の側から膜の他方の側へ流れるように駆動されるようにする構造である。
【0091】
膜貫通ポアは、好ましくは膜貫通タンパク質ポアである。膜貫通タンパク質ポアは、分析物などの水和イオンが膜の一方の側から膜の他方の側へ流れるようにするポリペプチドまたはポリペプチドの集積物である。本発明では膜貫通タンパク質ポアは、水和イオンが印加された電位によって膜の一方の側から他方へ流れるように駆動されるようにするポアを形成できる。膜貫通タンパク質ポアは、ヌクレオチドなどの分析物が膜(脂質二重層など)の一方の側から他方へ流れるように好ましくはする。膜貫通タンパク質ポアは、DNAまたはRNAなどのポリヌクレオチドがポアを通って移動されることを可能にする。
【0092】
膜貫通タンパク質ポアは、単量体またはオリゴマーであってよい。ポアは、いくつかの反復サブユニット(6、7または8サブユニット)から好ましくは作られる。ポアはより好ましくは七量体または八量体ポアである。
【0093】
膜貫通タンパク質ポアは、イオンが通って流れることができるバレルまたはチャネルを典型的には含む。ポアのサブユニットは、典型的には中央軸を取り囲み、膜貫通βバレルもしくはチャネルまたは膜貫通αヘリックス束もしくはチャネルに鎖を供する。
【0094】
膜貫通タンパク質ポアのバレルまたはチャネルは、ヌクレオチド、ポリヌクレオチドまたは核酸などの分析物との相互作用を促進するアミノ酸を典型的には含む。これらのアミノ酸は、バレルまたはチャネルの狭窄部付近に好ましくは位置する。膜貫通タンパク質ポアは、アルギニン、リシンもしくはヒスチジンなどの1つもしくは複数の正に荷電したアミノ酸またはチロシンもしくはトリプトファンなどの芳香族アミノ酸を典型的には含む。これらのアミノ酸は、ポアとヌクレオチド、ポリヌクレオチドまたは核酸との間の相互作用を典型的には促進する。
【0095】
本発明による使用のための膜貫通タンパク質ポアは、β−バレルポアまたはα−ヘリックス束ポアから生じ得る。β−バレルポアは、β−鎖から形成されるバレルまたはチャネルを含む。好適なβ−バレルポアは、これだけに限らないが、α−ヘモリジン(hemolysin)、炭疽毒素およびロイコシジン(leukocidin)などのβ−毒素、スメグマ菌(Mycobacterium smegmatis)ポリン(porin)(Msp)、例えばMspA、外膜ポリン(porin)F(OmpF)、外膜ポリン(porin)G(OmpG)、外膜ホスホリパーゼAおよびナイセリア(Neisseria)オートトランスポーターリポタンパク質(NalP)などの細菌の外膜タンパク質/ポリン(porin)を含む。α−ヘリックス束ポアは、α−ヘリックスから形成されたバレルまたはチャネルを含む。好適なα−ヘリックス束ポアは、これだけに限らないが内膜タンパク質ならびに、WZAおよびClyA毒などのα外膜タンパク質を含む。膜貫通ポアは、Msp由来またはα−ヘモリジン(α−HL)由来である場合がある。
【0096】
膜貫通タンパク質ポアは、好ましくはMspに由来し、好ましくはMspAに由来する。そのようなポアはオリゴマーであり、典型的にはMsp由来の7、8、9または10個の単量体を含む。ポアは、同一の単量体を含むMsp由来のホモオリゴマーポアであってよい。代替的にポアは、少なくとも1個の他とは異なる単量体を含むMsp由来のヘテロオリゴマーポアであってもよい。ポアは、Msp由来の共有結合で付着した2個以上の単量体を含む1個または複数のコンストラクトも含む場合がある。好適なポアは、米国仮特許出願第61/441,718号(2011年2月11日出願)に開示されている。好ましくはポアは、MspAまたはその相同体もしくはパラログ由来である。
【0097】
Msp由来の単量体は、配列番号2に示す配列またはその変種を含む。配列番号2はMspA単量体のNNN−RRK変異体である。それは次の変異:D90N、D91N、D93N、D118R、D134RおよびE139Kを含む。配列番号2の変種は、配列番号2のものから変化し、ポアを形成する能力を保持しているアミノ酸配列を有するポリペプチドである。ポアを形成する変種の能力は、当技術分野において公知の任意の方法を用いてアッセイされ得る。例えば変種は、他の適切なサブユニットと共に脂質二重層に挿入されることができ、ポアを形成するためにオリゴマー化するその能力は測定され得る。サブユニットを脂質二重層などの膜に挿入するための方法は、当技術分野において公知である。例えばサブユニットは、脂質二重層に拡散し、脂質二重層に結合するステップおよび機能的状態に会合するステップによって挿入されるように脂質二重層を含有する溶液中に精製された形態で懸濁され得る。代替的にサブユニットは、M.A.Holden,H.Bayley.J.Am.Chem.Soc.2005、127、6502-6503および国際出願第PCT/GB2006/001057号(WO2006/100484として公開)に記載の「ピックアンドプレース」法を用いて膜に直接挿入され得る。
【0098】
好ましい変種は、国際出願第PCT/GB2012/050301号(米国仮特許出願第61/441,718号から優先権を主張する)に開示されている。特に好ましい変種は、これだけに限らないが次の置換(複数可):L88N;L88S;L88Q;L88T;D90S;D90Q;D90Y;I105L;I105S;Q126R;G75S;G77S;G75S、G77S、L88NおよびQ126R;G75S、G77S、L88N、D90QおよびQ126R;D90QおよびQ126R;L88N、D90QおよびQ126R;L88SおよびD90Q;L88NおよびD90Q;E59R;G75Q;G75N;G75S;G75T;G77Q;G77N;G77S;G77T;I78L;S81N;T83N;N86S;N86T;I87F;I87V;I87L;L88N;L88S;L88Y;L88F;L88V;L88Q;L88T;I89F;I89V;I89L;N90S;N90Q;N90L;N90Y;N91S;N91Q;N91L;N91M;N91I;N91A;N91V;N91G;G92A;G92S;N93S;N93A;N93T;I94L;T95V;A96R;A96D;A96V;A96N;A96S;A96T;P97S;P98S;F99S;G100S;L101F;N102K;N102S;N102T;S103A;S103Q;S103N;S103G;S103T;V104I;I105Y;I105L;I105A;I105G;I105Q;I105N;I105S;I105T;T106F;T106I;T106V;T106S;N108P;N108S;D90QおよびI105A;D90SおよびG92S;L88TおよびD90S;I87QおよびD90S;I89YおよびD90S;L88NおよびI89F;L88NおよびI89Y;D90SおよびG92A;D90SおよびI94N;D90SおよびV104I;L88DおよびI105K;L88NおよびQ126R;L88N、D90QおよびD91R;L88N、D90QおよびD91S;L88N、D90QおよびI105V;D90Q、D93SおよびI105A;N91Y;N90YおよびN91G;N90GおよびN91Y;N90GおよびN91G;I05G;N90R;N91R;N90RおよびN91R;N90K;N91K;N90KおよびN91K;N90QおよびN91G;N90GおよびN91Q;N90QおよびN91Q;R118N;N91C;N90C;N90W;N91W;N90K;N91K;N90R;N91R;N90SおよびN91S;N90YおよびI105A;N90GおよびI105A;N90QおよびI105A;N90SおよびI105A;L88AおよびI105A;L88SおよびI105S;L88NおよびI105N;N90GおよびN93G;N90G;N93G;N90GおよびN91A;I105K;I105R;I105V;I105P;I105W;L88R;L88A;L88G;L88N;N90RおよびI105A;N90SおよびI105A;L88AおよびI105A;L88SおよびI105S;L88NおよびI105N;L88C;S103C;I105C;D134Rを含むものを含む。
【0099】
上に考察した具体的な変異に加えて、変種は他の変異も含み得る。配列番号2のアミノ酸配列の全長にわたって変種は、アミノ酸同一性に基づいてその配列に好ましくは少なくとも50%相同である。より好ましくは変種は、配列全体にわたって配列番号2のアミノ酸配列にアミノ酸同一性に基づいて少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%およびより好ましくは少なくとも95%、97%または99%相同である。少なくとも80%、例えば少なくとも85%、90%または95%のアミノ酸同一性が100以上(例えば125、150、175もしくは200またはそれ以上)のストレッチの連続アミノ酸にわたってある場合がある(「高い相同性」)。
【0100】
相同性を決定するために当技術分野における標準的方法が用いられ得る。例えばUWGCGパッケージは、相同性を算出するために用いられ得るBESTFITプログラム(例えばその初期設定で用いられる)を提供する(Devereuxら、(1984) Nucleic Acids Research 12、387-395頁)。PILEUPおよびBLASTアルゴリズムは、相同性を算出するためまたは配列を列挙するために(等価残基または対応する配列を同定するステップなど(典型的にはその初期設定で))用いられ得る、例えばAltschul S.F.(1993)J Mol Evol 36:290-300;Altschul,S.Fら、(1990) J Mol Biol 215:403-10に記載のとおり。BLAST分析を実施するためのソフトウエアは、the National Center for Biotechnology Information(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)を通じて公開で入手可能である。
【0101】
配列番号2は、MspA単量体のNNN−RRK変異体である。変種は、MspAと比較してMspB、CまたはD単量体中の任意の変異を含み得る。MspB、CおよびDの成熟形態は配列番号7から9に示される。詳細には変種は、MspBに存在する次の置換:A138Pを含む場合がある。変種は、MspCに存在する次の置換:A96G、N102EおよびA138Pの1つまたは複数を含む場合がある。変種はMspDに存在する次の置換:G1の欠失、L2V、E5Q、L8V、D13G、W21A、D22E、K47T、I49H、I68V、D91G、A96Q、N102D、S103T、V104I、S136KおよびG141Aの1つまたは複数を含む場合がある。変種は、MspB、CおよびD由来の1つまたは複数の変異および置換の組合せを含み得る。
【0102】
アミノ酸置換は、上に考察したものに加えて配列番号2のアミノ酸配列に作出され得る(例えば1、2、3、4、5、10、20または30置換まで)。保存的置換は、アミノ酸を同様の化学構造、同様の化学的特性または同様の側鎖容積を有する他のアミノ酸で置き換える。導入されるアミノ酸は、それらが置き換えるアミノ酸と同様の極性、親水性、疎水性、塩基性度、酸性度、中性度または電荷を有してよい。代替的に保存的置換は、既存の芳香族または脂肪族アミノ酸の代わりに芳香族または脂肪族である別のアミノ酸を導入する場合がある。保存的アミノ酸変更は、当技術分野において周知であり、下の表2に定義のとおり20種の主なアミノ酸の特性に従って選択され得る。アミノ酸が同様の極性を有する場合、これは表3におけるアミノ酸側鎖についてのハイドロパシースケールを参照することによっても決定され得る。
【0105】
配列番号2のアミノ酸配列の1つまたは複数のアミノ酸残基は、上に記載のポリペプチドから追加的に欠失され得る。1、2、3、4、5、10、20または30残基までまたはそれ以上が欠失され得る。
【0106】
変種は、配列番号2の断片を含み得る。そのような断片は、ポア形成活性を保持する。断片は、長さ少なくとも50、100、150または200アミノ酸であってよい。そのような断片は、ポアを生成するために用いられ得る。断片は、配列番号2のポア形成ドメインを好ましくは含む。断片は、配列番号2の残基88、90、91、105、118および134の1つを含まなければならない。典型的には断片は、配列番号2の残基88、90、91、105、118および134のすべてを含む。
【0107】
1つまたは複数のアミノ酸は、上に記載のポリペプチドに代替的または追加的に付加され得る。伸長は、配列番号2のアミノ酸配列またはそのポリペプチド変種もしくは断片のアミノ末端またはカルボキシ末端に与えられ得る。伸長は極めて短い(例えば長さ1から10アミノ酸)場合がある。代替的に伸長はより長くても(例えば50または100アミノ酸まで)よい。担体タンパク質は、本発明によるアミノ酸配列に融合され得る。他の融合タンパク質は、下により詳細に考察される。
【0108】
上に考察したとおり変種は、配列番号2から変更され、ポアを形成する能力を保持しているアミノ酸配列を有するポリペプチドである。変種は、ポア形成に関与する配列番号2の領域を典型的には含有する。β−バレルを含有するMspのポア形成能力は、各サブユニットのβシートによって与えられる。配列番号2の変種は、β−シートを形成する配列番号2中の領域を典型的には含む。1つまたは複数の修飾が、得られる変種がポアを形成する能力を保持する限り、β−シートを形成する配列番号2の領域に作出され得る。配列番号2の変種は、置換、付加または欠失などの1つまたは複数の修飾をα−ヘリックスおよび/またはループ領域内に好ましくは含む。
【0109】
Msp由来の単量体は、それらの同定または精製を支援するために、例えばヒスチジン残基(histタグ)、アスパラギン酸残基(aspタグ)、ストレプトアビジンタグもしくはフラッグタグの付加によって、または(細胞からのそれらの分泌を促進するためのシグナル配列の付加によってポリペプチドが天然でそのような配列を含有しない場合に)修飾され得る。遺伝子タグを導入するための別法は、ポア上の天然のまたは操作された位置にタグを化学的に反応させることである。この例は、ポアの外側に操作されたシステインにゲルシフト試薬を反応させることである。これは、ヘモリジンヘテロ−オリゴマーを分離するステップのための方法として実証されている(Chem Biol.1997 Jul;4(7):497-505)。
【0110】
Msp由来の単量体は、明示標識(revealing label)で標識され得る。明示標識は、ポアが検出されるようにする任意の好適な標識であってよい。好適な標識は、これだけに限らないが蛍光分子、放射性同位元素(例えば
125I、
35S)、酵素、抗体、抗原、ポリヌクレオチドおよびリガンド(ビオチンなど)を含む。
【0111】
Msp由来の単量体は、D−アミノ酸を用いても生成され得る。例えばMsp由来の単量体は、L−アミノ酸とD−アミノ酸との混合物を含み得る。これは、そのようなタンパク質またはペプチドを生成するための当技術分野における従来法である。
【0112】
Msp由来の単量体は、ヌクレオチド識別を促進するために1つまたは複数の特異的修飾を含有する。Msp由来の単量体は、他の非特異的な修飾をそれらがポア形成を干渉しない限り含有できる。多数の非特異的側鎖修飾が当技術分野において公知であり、Msp由来の単量体の側鎖に作出され得る。そのような修飾は、例えばアルデヒドとの反応に続くNaBH
4での還元によるアミノ酸の還元的アルキル化、メチルアセトイミデート(methylacetimidate)でのアミジン化または無水酢酸でのアシル化を含む。
【0113】
Msp由来の単量体は、当技術分野において公知の標準的方法を用いて生成され得る。Msp由来の単量体は、合成的にまたは組換え手段によって作出され得る。例えばポアはin vitro翻訳および転写(IVTT)によって合成され得る。ポアを生成するための好適な方法は、国際出願第PCT/GB09/001690号(WO2010/004273として公開)、第PCT/GB09/001679号(WO2010/004265として公開)または第PCT/GB10/000133号(WO2010/086603として公開)に考察されている。ポアを膜に挿入するための方法は考察されている。
【0114】
膜貫通タンパク質ポアは、好ましくはα−ヘモリジン(α−HL)由来でもある。野生型α−HLポアは、7個の同一単量体またはサブユニットから形成される(すなわち七量体である)。α−ヘモリジン−NNの1個の単量体またはサブユニットの配列は配列番号4に示されている。膜貫通タンパク質ポアは、配列番号4に示す配列またはその変種をそれぞれ含む7個の単量体を好ましくは含む。配列番号4のアミノ酸1、7から21、31から34、45から51、63から66、72、92から97、104から111、124から136、149から153、160から164、173から206、210から213、217、218、223から228、236から242、262から265、272から274、287から290および294はループ領域を形成する。配列番号4の残基113および147はα−HLのバレルまたはチャネルの狭窄の一部を形成する。
【0115】
そのような実施形態では、配列番号4に示す配列またはその変種をそれぞれ含む7個のタンパク質または単量体を含むポアは、本発明の方法において好ましくは用いられる。7個のタンパク質は、同じ(ホモ七量体)または異なっていて(ヘテロ七量体)よい。
【0116】
配列番号4の変種は、配列番号4のものから変化したアミノ酸配列を有し、ポア形成能力を保持しているタンパク質である。ポアを形成する変種の能力は、当技術分野において公知の任意の方法を用いてアッセイされ得る。例えば変種は、他の適切なサブユニットと共に脂質二重層に挿入されることができ、ポアを形成するためにオリゴマー化するその能力は決定され得る。サブユニットを脂質二重層などの膜に挿入するための方法は当技術分野において公知である。好適な方法は上に考察されている。
【0117】
変種は、核酸結合タンパク質への共有結合付着または相互作用を促進する修飾を含み得る。変種は、核酸結合タンパク質への付着を促進する1つまたは複数の反応性システイン残基を好ましくは含む。例えば変種は、配列番号4の位置8、9、17、18、19、44、45、50、51、237、239および287ならびに/またはアミノ末端もしくはカルボキシ末端の1つまたは複数にシステインを含み得る。好ましい変種は、配列番号4の位置8、9、17、237、239および287の残基のシステインでの置換を含む(A8C、T9C、N17C、K237C、S239CまたはE287C)。変種は、好ましくは国際出願第PCT/GB09/001690号(WO2010/004273として公開)、第PCT/GB09/001679号(WO2010/004265として公開)、または第PCT/GB10/000133号(WO2010/086603として公開)に記載の変種のいずれか1つである。
【0118】
変種は、ヌクレオチドとの任意の相互作用を促進する修飾も含み得る。
【0119】
変種は、生物(例えば細菌ブドウ球菌(Staphylococcus))によって天然で発現される天然に存在する変種であってよい。代替的に変種は、大腸菌(Escherichia coli)などの細菌によってin vitroでまたは組換え的に発現されてもよい。変種は、組換え技術によって生成される天然に存在しない変種も含む。配列番号4のアミノ酸配列の全長にわたって変種は、アミノ酸同一性に基づいてその配列に好ましくは少なくとも50%相同である。より好ましくは変種ポリペプチドは、配列全体にわたって配列番号4のアミノ酸配列にアミノ酸同一性に基づいて少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%およびより好ましくは少なくとも95%、97%または99%相同である。少なくとも80%、例えば少なくとも85%、90%または95%のアミノ酸同一性が200以上(例えば230、250、270もしくは280またはそれ以上)のストレッチの連続アミノ酸にわたってある場合がある(「高い相同性」)。相同性は上に考察のとおり決定され得る。
【0120】
アミノ酸置換は、上に考察したものに加えて配列番号4のアミノ酸配列に作出され得る(例えば1、2、3、4、5、10、20または30置換まで)。保存的置換は、上に考察の通り作出され得る。
【0121】
配列番号4のアミノ酸配列の1つまたは複数のアミノ酸残基は、上に記載のポリペプチドから追加的に欠失され得る。1、2、3、4、5、10、20または30残基までまたはそれ以上が欠失され得る。
【0122】
変種は、配列番号4の断片を含み得る。そのような断片はポア形成能力を保持する。断片は、長さ少なくとも50、100、200または250アミノ酸であってよい。断片は、配列番号4のポア形成ドメインを好ましくは含む。断片は典型的には配列番号4の残基119、121、135、113および139を含む。
【0123】
1つまたは複数のアミノ酸は、上に記載のポリペプチドに代替的にまたは追加的に付加され得る。伸長は、配列番号4のアミノ酸配列またはその変種もしくは断片のアミノ末端またはカルボキシ末端に与えられ得る。伸長は極めて短い(例えば長さ1から10アミノ酸)場合がある。代替的に伸長は、より長くても(例えば50または100アミノ酸まで)良い。担体タンパク質は、ポアまたは変種に融合されてもよい。
【0124】
上に考察したとおり、配列番号4の変種は、配列番号4のものから変更され、ポアを形成する能力を保持しているアミノ酸配列を有するサブユニットである。変種は、ポア形成に関与する配列番号4の領域を典型的には含有する。β−バレルを含有するα−HLのポア形成能力は、各サブユニットのβシートによって与えられる。配列番号4の変種は、β鎖を形成する配列番号4の領域を典型的には含む。β鎖を形成する配列番号4のアミノ酸は上に考察されている。1つまたは複数の修飾が、得られる変種がポアを形成する能力を保持する限りβ−鎖を形成する配列番号4の領域に作出され得る。配列番号4のβ鎖領域に作られ得る具体的な修飾は、上に考察されている。
【0125】
配列番号4の変種は、置換、付加または欠失などの1つまたは複数の修飾をα−ヘリックスおよび/またはループ領域内に好ましくは含む。α−ヘリックスおよびループを形成するアミノ酸は、上に考察されている。
【0126】
変種は、上に考察のとおり、その同定または精製を支援するために修飾され得る。
【0127】
α−HL由来のポアは、Msp由来のポアに関連して上に考察のとおり作出され得る。
【0128】
いくつかの実施形態では膜貫通タンパク質ポアは、化学的に修飾される。ポアは、任意の方法および任意の部位で化学的に修飾され得る。膜貫通タンパク質ポアは、1つもしくは複数のシステインへの分子の付着(システイン連結)、1つもしくは複数のリシンへの分子の付着、1つもしくは複数の非天然アミノ酸への分子の付着、エピトープの酵素修飾または末端の修飾によって好ましくは化学的に修飾される。そのような修飾を実行するための好適な方法は、当技術分野において周知である。膜貫通タンパク質ポアは、任意の分子の付着によって化学的に修飾され得る。例えばポアは、色素またはフルオロフォアの付着によって化学的に修飾され得る。
【0129】
ポア中の任意の数の単量体は、化学的に修飾され得る。1つまたは複数(2、3、4、5、6、7、8、9または10個など)の単量体は、上に考察のとおり好ましくは化学的に修飾される。
【0130】
システイン残基の反応性は、隣接残基の修飾によって増強され得る。例えば近接アルギニン、ヒスチジンまたはリシン残基の塩基性基は、システインチオール基のpKaをより反応性のS
−基のものに変化させる。システイン残基の反応性は、dTNBなどのチオール保護基によって保護され得る。これらは、リンカーが付着する前にポアの1つまたは複数のシステイン残基と反応できる。
【0131】
(ポアが化学的に修飾される)分子は、国際出願第PCT/GB09/001690号(WO2010/004273として公開)、第PCT/GB09/001679号(WO2010/004265として公開)または第PCT/GB10/000133号(WO2010/086603として公開)に開示のとおりポアに直接付着され得るか、またはリンカーを介して付着され得る。
【0132】
移動
本発明の方法では一重鎖ポリヌクレオチドは、膜貫通ポアを通って移動される。膜貫通ポアを通って一重鎖ポリヌクレオチドが移動するステップは、ポリペプチドがポアの一方の側から他方へ移動するステップを意味する。ポアを通る一重鎖ポリヌクレオチドの移動は、電位もしくは酵素作用または両方によって駆動または制御され得る。移動は、一方向性であってよく、後退および前進の両方が可能であってもよい。
【0133】
ポリペプチド結合タンパク質は、ポアを通る一重鎖ポリヌクレオチドの移動を制御するために好ましくは用いられる。このタンパク質は、ポリヌクレオチドの2本鎖を分離する好ましくは同じタンパク質である。より好ましくはこのタンパク質は、Phi29DNAポリメラーゼである。Phi29DNAポリメラーゼの3種のモードは、上に考察のとおり、ポアを通る一重鎖ポリヌクレオチドの移動を制御するために用いられ得る。好ましくはPhi29DNAポリメラーゼは、標的ポリヌクレオチドを分離し、生じた一重鎖ポリヌクレオチドの膜貫通ポアを通る移動を制御する。
【0134】
いくつかの実施形態では標的ポリヌクレオチド全体(架橋部によって標的ポリヌクレオチドの他方の鎖に連結された標的ポリヌクレオチドの一方の鎖を含む一重鎖ポリヌクレオチドとして)がポアを通って移動する。それ故に標的ポリヌクレオチド全体がポアを通って移動され、配列決定される。他の実施形態では標的ポリヌクレオチドの一部だけがポアを通って移動する。標的ポリヌクレオチドの一部だけがポアを通って移動するそのような実施形態は、次の:
(i)標的ポリヌクレオチドの一方の鎖の一部(例えばDNAのセンス鎖の一部)
(ii)標的ポリヌクレオチドの一方の鎖のすべて(例えばDNAのセンス鎖のすべて)
(iii)一方の鎖のすべて(例えばDNAのセンス鎖のすべて)および第二鎖の一部(例えばDNAのアンチセンス鎖の一部)
のとおりであってよい。
【0135】
一方の鎖の一部だけ、または一方の鎖のすべておよび他方の鎖の一部がポアを通って移動する実施形態では、オリジナル2本鎖(すなわちセンス鎖およびアンチセンス鎖)のどちらが完全にまたは部分的にポアを通って移動するかは重要ではない。さらにセンス鎖およびアンチセンス鎖がポアを通る移動の順序は問題ではない。
【0136】
いくつかの実施形態では、上に考察および
図13に示すとおり、二重鎖分析物の2本鎖を連結するステップ、および2本の連結された鎖を一重鎖標的ポリヌクレオチドに分離するステップの後に一重鎖標的ポリヌクレオチドに対する相補鎖が第二コンストラクトを形成するように作製される。第二コンストラクトの2本鎖は、本明細書に記載のとおり一緒に連結され得る。第二コンストラクトの相補鎖は、次いで一重鎖標的ポリヌクレオチドから分離される。この状況では、オリジナル一重鎖標的ポリヌクレオチドは、ポアを通って移動でき、および/または相補鎖はポアを通って移動できる。いくつかの例では相補鎖だけが配列決定される。上に記載のとおり、分離および相補鎖作製のこのプロセスは、必要に応じて何度でも反復され得る。これは、本明細書において「DUO」法と称される場合がある。
【0137】
コンストラクトがリーダーポリマーおよびテールポリマーをさらに含む場合、標的ポリヌクレオチドの2本鎖が分離されるステップの後に作出された一重鎖標的ポリヌクレオチドは、(1)リーダーポリマー;(2)標的ポリヌクレオチドの一方の鎖;(3)架橋部;(4)標的ポリヌクレオチドの他方の鎖;および(5)テールポリマーの順序でポアを通って好ましくは移動する。これは、「MONO」法により作出されたコンストラクトを配列決定するステップの例である。
【0138】
代替的実施形態ではDUO法により生成されたコンストラクトは、(1)リーダーポリマー;(2)標的ポリヌクレオチドの第一鎖;(3)第一架橋部;(4)標的ポリヌクレオチドの第二鎖;(5)第二架橋部;(6)標的ポリヌクレオチドの第二鎖の相補物;(7)第一架橋部の相補物;(8)標的ポリヌクレオチドの第一鎖の相補物;および(9)テールポリマーの順序でポアを通る。0
【0139】
二重鎖標的ポリヌクレオチドを配列決定する方法
本発明の方法は、一重鎖ポリヌクレオチド中のヌクレオチドの一部が膜貫通ポアと相互作用するように一重鎖ポリヌクレオチドを膜貫通ポアを通して移動させるステップを含む。
【0140】
方法は、上に考察したとおり任意の好適な膜、好ましくは脂質二重層系(ポアが脂質二重層中に挿入されている)を用いて実行され得る。方法は、(i)ポアを含む人工二重層、(ii)ポアを含む単離された天然に存在する脂質二重層、または(iii)挿入されたポアを有する細胞を用いて典型的には実行される。方法は、人工脂質二重層を用いて好ましくは実行される。二重層は、ポアに加えて他の膜貫通タンパク質および/または膜内タンパク質ならびに他の分子を含んでもよい。好適な装置および条件は、本発明の配列決定実施形態に関連して下に考察される。本発明の方法は、典型的にはin vitroで実行される。
【0141】
本発明は、二重鎖標的ポリヌクレオチドを配列決定する方法を提供する。上に考察のとおりポリヌクレオチドは、2対以上のヌクレオチドを含む巨大分子である。ヌクレオチドは、上に考察した任意のものであってよい。ポリヌクレオチドは好ましくは核酸である。
【0142】
これらの方法は、ポアを通過する電流について有する異なる影響に基づいて類似する構造のヌクレオチドを識別するために膜貫通タンパク質ポアが用いられ得ることから可能である。個々のヌクレオチドは、ポアと相互作用する際のそれらの電流振幅から一分子レベルで同定され得る。ヌクレオチドは、電流がそのヌクレオチドについて特異的な様式でポアを通って流れる場合(すなわちヌクレオチドに関連する特有の電流がポアを通って流れることが検出される場合)にポアに存在する。標的ポリヌクレオチド中のヌクレオチドの逐次的同定は、ポリヌクレオチドの配列が推定または決定されることを可能にする。
【0143】
方法は、(a)標的ポリヌクレオチドを含むコンストラクトを提供するステップであって、標的ポリヌクレオチドの2本鎖が架橋部によって連結されるステップ;(b)コンストラクトを核酸結合タンパク質と接触させることによって標的ポリヌクレオチドの2本鎖を分離するステップ;(c)得られた一重鎖ポリヌクレオチドを膜貫通ポアを通して移動させるステップ;ならびに(d)各相互作用の際にポアを通過する電流を測定し、それにより標的ポリヌクレオチドの配列を決定するまたは推定するステップを含む。それにより方法は、標的ポリヌクレオチドを配列決定するために、ヌクレオチドが個々にバレルまたはチャネルを通る際の標的ポリヌクレオチド中のヌクレオチドの一部の膜貫通ポアセンシングを含む。上に考察のとおりこれは鎖配列決定である。
【0144】
標的ポリヌクレオチドの全体または一部だけが本方法を用いて配列決定され得る。ポリヌクレオチドは任意の長さであってよい。例えばポリヌクレオチドは、長さ少なくとも10、少なくとも50、少なくとも100、少なくとも150、少なくとも200、少なくとも250、少なくとも300、少なくとも400または少なくとも500ヌクレオチド対であってよい。ポリヌクレオチドは、長さ1000ヌクレオチド対以上、5000ヌクレオチド対以上または100000ヌクレオチド対以上であってよい。ポリヌクレオチドは天然に存在するまたは人工的であってよい。例えば本方法は、製造されたオリゴヌクレオチドの配列を変化させるために用いられ得る。方法は、典型的にはin vitroで実行される。
【0145】
一重鎖ポリヌクレオチドは、膜のいずれの側でポアと相互作用してもよい。一重鎖ポリヌクレオチドはポアと任意の方法および任意の部位で相互作用してよい。
【0146】
一重鎖ポリヌクレオチド中のヌクレオチドとポアとの間の相互作用の際に、ヌクレオチドはヌクレオチドに特異的な様式でポアを通って流れる電流に影響を与える。例えば特定のヌクレオチドは、特定の平均時間について特定の程度にポアを通って流れる電流を低下させる。換言すると、ポアを通って流れる電流は、特定のヌクレオチドに特有である。対照実験は、特定のヌクレオチドがポアを通って流れる電流に有する効果を決定するために実行され得る。試験試料について本発明の方法を実行するステップから得られる結果は、次いで標的ポリヌクレオチドの配列を決定または推定するために、そのような対照実験由来のものと比較され得る。
【0147】
配列決定法は、任意の好適な膜/ポア系(ポアは膜に挿入されている)を用いて実行され得る。方法は、天然に存在するまたは合成の脂質を含む膜を用いて典型的には実行される。膜は典型的にはin vitroで形成される。好ましくは方法は、ポアを含む単離された、天然に存在する膜またはポアを発現している細胞を用いては実行されない。好ましくは方法は、人工膜を用いて実行される。膜は、ポアに加えて他の膜貫通および/または膜内タンパク質ならびに他の分子を含み得る。
【0148】
膜は、イオン、ヌクレオチドおよびポリヌクレオチドの流れに障害を形成する。好ましくは膜は、脂質二重層などの両親媒性層である。本発明による使用のために好適な脂質二重層は上に記載されている。
【0149】
本発明の配列決定法は、典型的にはin vitroで実行される。
【0150】
配列決定法は、ポアが膜に挿入されている膜/ポア系を調査するために好適である任意の装置を用いて実行され得る。方法は、膜貫通ポアセンシングに好適である任意の装置を用いて実行され得る。例えば装置は、水性溶液および、チャンバーを2つのセクションに分離する障壁を含むチャンバーを含む。障壁はポアを含有する膜が形成される開口部を有する。
【0151】
配列決定法は、国際出願第PCT/GB08/000562号に記載の装置を用いて実行され得る。
【0152】
本発明の方法は、ヌクレオチド(複数可)との相互作用の際にポアを通過する電流を測定するステップを含む。したがって装置は、電位を印加でき、膜およびポアを通る電気シグナルを測定できる電気回路も含む。方法は、パッチクランプまたは電圧クランプを用いても実行され得る。方法は、電圧クランプの使用を好ましくは含む。
【0153】
本発明の配列決定方法は、ヌクレオチドとの相互作用の際にポアを通過する電流の測定を含む。膜貫通タンパク質ポアを通るイオン電流を測定するための好適な条件は、当技術分野において公知であり、実施例で開示される。方法は、膜およびポア全体に印加される電圧と共に典型的には実行される。用いられる電圧は典型的には、−400mVから+400mVまでである。好ましくは用いられる電圧は、−400mV、−300mV、−200mV、−150mV、−100mV、−50mV、−20mVおよび0mVから選択される下限値および+10mV、+20mV、+50mV、+100mV、+150mV、+200mV、+300mVおよび+400mVから独立に選択される上限値を含む範囲内である。用いられる電圧は、より好ましくは100mVから240mVまでの範囲内、最も好ましくは160mVから240mVまでの範囲内である。印加される電位を増加させることによってポアによるさまざまなヌクレオチド間の識別を向上させることは可能である。
【0154】
配列決定方法は、任意のアルカリ金属塩化物塩の存在下で典型的には実行される。上に考察した例示的装置では、塩はチャンバー中の水性溶液中に存在する。塩化カリウム(KCl)、塩化ナトリウム(NaCl)、塩化セシウム(CsCl)またはフェロシアン化カリウムとフェリシアン化カリウムとの混合物が典型的には用いられる。KCl、NaClおよびフェロシアン化カリウムとフェリシアン化カリウムとの混合物は好ましい。塩濃度は飽和であってよい。塩濃度は、典型的には0.1から2.5Mまで、0.3から1.9Mまで、0.5から1.8Mまで、0.7から1.7Mまで、0.9から1.6Mまでまたは1Mから1.4Mまでである。塩濃度は、好ましくは150mMから1Mまでである。高塩濃度は、高い信号対雑音比を提供し、通常の電流変動のバックグラウンドに対してヌクレオチドの存在を示す電流が同定されることを可能にする。低塩濃度は、ヌクレオチド検出が酵素の存在下で実行される場合に用いられる場合がある。これは以下により詳細に考察される。
【0155】
方法は、緩衝剤の存在下で典型的には実行される。上に考察した例示的装置では、緩衝剤はチャンバー中の水性溶液に存在する。任意の緩衝剤が本発明の方法において用いられ得る。典型的には、緩衝剤はHEPESである。別の好適な緩衝剤はTris−HCl緩衝剤である。方法は、4.0から12.0まで、4.5から10.0まで、5.0から9.0まで、5.5から8.8まで、6.0から8.7までまたは7.0から8.8までまたは7.5から8.5までのpHで典型的には実行される。用いられるpHは好ましくは約7.5である。
【0156】
方法は、0
oCから100
oCまで、15
oCから95
oCまで、16
oCから90
oCまで、17
oCから85
oCまで、18
oCから80
oCまで、19
oCから70
oCまでまたは20
oCから60
oCまでで実行され得る。方法は典型的には室温で実行される。方法は、約37℃などの酵素機能を支持する温度で場合により実行される。
【0157】
上に記載のとおり、良好なヌクレオチド識別は温度が上昇すると低塩濃度で達成され得る。溶液温度の上昇に加えて、酵素活性に好適である条件を維持しながら溶液のコンダクタンスを増加させるために使用され得る多数の他の戦略がある。そのような1つの戦略は、塩溶液の2つの異なる濃度(酵素側に塩の低塩濃度および反対側に高濃度)を分割するために脂質二重層を用いることである。この手法の一例は膜のcis側に200mM KClおよびtransチャンバーに500mM KClを用いることである。これらの条件では、ポアを通るコンダクタンスは、通常条件下でのおよそ400mM KClに相当すると予測され、酵素はcis側に置かれた場合に200mMを経験するだけである。非対称性塩条件を用いることで考えられる別の利益は、ポアにわたって導入される浸透圧傾斜である。水のこの基本的な流れは、検出のためにポア内へヌクレオチドを引くために用いられ得る。同様の効果が、ショ糖、グリセロールまたはPEGなどの中性浸透圧調節物質を用いて達成され得る。別の可能性は、比較的低いレベルのKClを含む溶液を用い、酵素活性を破壊しにくい追加的電荷輸送種(charge carrying species)に依存することである。
【0158】
分析される標的ポリヌクレオチドは、大量の溶液中で結合タンパク質によって作用されることからポリヌクレオチドを保護するために公知の保護化学物質と組み合わされ得る。次いでポアは、保護化学物質を除去するために用いられ得る。これは電位が印加された下で、ポア、結合タンパク質もしくは酵素にハイブリダイズされない保護基を用いるステップ(WO2008/124107)によって、またはポアにごく接近して保持された場合に結合タンパク質もしくは酵素によって除去される保護化学物質を用いるステップ(J Am Chem Soc. 2010 Dec 22;132(50):17961-72)のいずれかによって達成され得る。
【0159】
本発明の鎖配列決定法は、標的ポリヌクレオチドの2本鎖を分離するためにポリヌクレオチド結合タンパク質を用いる。より好ましくはポリヌクレオチド結合タンパク質は、ポアを通る標的ポリヌクレオチドの移動も制御する。そのようなタンパク質の例は上に示され、考察される。
【0160】
一重鎖配列決定のための2つの戦略は、印加される電位に沿ってまたは反対に、cisからtransへのおよびtransからcisへの両方で膜貫通ポアを通る一重鎖ポリヌクレオチドの移行である。鎖配列決定のための最も有利な機構は、印加された電位の下でのナノポアを通る一重鎖ポリヌクレオチドの制御された移行である。二重鎖ポリヌクレオチドに進行性または前進的に作用するエキソヌクレアーゼは、印加される電位下で残存する1本鎖を供給するためにポアのcis側で、または逆電位下でtrans側で用いられ得る。同様に、二重鎖ポリヌクレオチドを巻き戻すヘリカーゼも同様の様式で用いられ得る。印加された電位に対する鎖移行を必要とする配列決定応用にも可能性があるが、ポリヌクレオチドは逆電位または無電位で酵素によって最初に「捕捉」されなければならない。電位をかけ、次いで結合後に切り換えると鎖はcis からtransへポアを通過し、電流によって伸長された配置で維持される。一重鎖ポリヌクレオチドエキソヌクレアーゼまたは一重鎖ポリヌクレオチド依存性ポリメラーゼは、印加される電位とは反対にtransからcisへ制御された段階的様式で、直近に移行された一重鎖をポアを通して後ろへ引く分子モーターとして作用できる。代替的に一重鎖DNA依存性ポリメラーゼは、ポアを通るポリヌクレオチドの移動を遅くする分子ブレーキとして作用できる。
【0161】
最も好ましい実施形態では鎖配列決定は、Msp由来のポアおよびPhi29DNAポリメラーゼを用いて実行される。方法は、(a)二重鎖標的ポリヌクレオチドコンストラクトを提供するステップ;(b)鎖が分離され、ポリメラーゼがMspポアを通る標的ポリヌクレオチドの移動を制御し、標的ポリヌクレオチド中のヌクレオチドの一部がポアと相互作用するように、標的ポリヌクレオチドをPhi29DNAポリメラーゼと相互作用させるステップ;および(c)各相互作用の際にポアを通過する電流を測定し、それにより標的ポリヌクレオチドの配列を推定または決定するステップを含み、ステップ(b)および(c)はポア全体に電圧を印加して実行される。
【0162】
標的ポリヌクレオチドがPhi29DNAポリメラーゼおよびMsp由来のポアと接触される場合、標的ポリヌクレオチドは最初にPhi29DNAポリメラーゼと複合体を形成する。電圧がポア全体に印加されると、標的ポリヌクレオチド/Phi29DNAポリメラーゼ複合体は、ポアと複合体を形成し、ポアを通る一重鎖ポリヌクレオチドの移動を制御する。
【0163】
本実施形態は、3つの予測外の有利点を有する。第一に標的ポリヌクレオチドが商業的に価値のある速度でポアを通って移動し、有効な配列決定を可能にする。標的ポリヌクレオチドは、Mspポアをヘモリジンポアを通るよりもより速く移動する。第二に、増大した電流範囲がポリヌクレオチドがポアを通って移動する際に観察され、より容易に配列が推定または決定されるようにする。第三に、特定のポアおよびポリメラーゼが一緒に用いられる場合に減少した電流変動が観察され、それにより信号対雑音比を増加させる。
【0164】
上に記載の任意のポリヌクレオチドが配列決定され得る。
【0165】
ポアは、上に考察の任意のポアであってよい。ポアは、配列番号2に示す配列またはその変種を含む8個の単量体を含む場合がある。
【0166】
上に考察のとおり、野生型Phi29DNAポリメラーゼは、ポリメラーゼ活性およびエキソヌクレアーゼ活性を有する。それは適正な条件下で二重鎖ポリヌクレオチドをアンジップもできる。それ故に酵素は、3種のモード(上に考察のとおり)で作動できる。本発明の方法は、MspポアおよびPhi29DNAポリメラーゼを好ましくは含む。Phi29DNAポリメラーゼは、二重鎖標的ポリヌクレオチドを好ましくは分離し、得られた一重鎖ポリヌクレオチドのポアを通る移動を制御する。
【0167】
上に考察した任意の系、装置または条件は、この好ましい実施形態により用いられ得る。塩濃度は、典型的には0.15Mから0.6Mまでである。塩は好ましくはKClである。
【0168】
キット
本発明は、配列決定のために二重鎖標的ポリヌクレオチドを調製するためのキットも提供する。キットは、(a)標的ポリヌクレオチドの2本鎖を連結できる架橋部および(b)少なくとも1つのポリマーを含む。
【0169】
好ましい実施形態ではキットは、リーダーポリマーおよびテールポリマーをさらに含む。リーダーポリマーおよびテールポリマーは、上に詳細に記載されている。リーダーポリマーおよびテールポリマーがポリヌクレオチドである場合、リーダーポリマーおよびテールポリマーは単一ユニットとして提供され得る。このユニットでは、リーダーポリマーの一部およびテールポリマーの一部は二重鎖を形成する。この二重鎖領域は、典型的には長さ5から20ヌクレオチド対であってよい。このユニットの二重鎖部分の端は二重鎖標的ポリヌクレオチドに連結される。2個の二重鎖ポリヌクレオチドを連結するための好適な方法は、当技術分野において公知である。リーダーポリマーおよびテールポリマーの残部は、一重鎖ポリヌクレオチドのままである。
【0170】
キットは、膜貫通ポアと相互作用する場合に特有の電流を生成する1つまたは複数のマーカーも好ましくはさらに含む。そのようなマーカーは上に詳細に記載されている。
【0171】
キットは、標的ポリヌクレオチドを膜にカップリングさせる手段も好ましくは含む。標的ポリヌクレオチドを膜にカップリングさせる手段は上に記載されている。カップリングさせる手段は、反応基を好ましくは含む。好適な反応基は、これだけに限らないがチオール、コレステロール、脂質およびビオチン基を含む。
【0172】
キットは、脂質二重層を形成するために必要なリン脂質などの膜の構成部をさらに含んでよい。
【0173】
本発明の方法に関連して上に考察された任意の実施形態は、本発明のキットに等しく適用可能である。
【0174】
本発明のキットは、上に述べた任意の実施形態が実行されるようにする1つまたは複数の他の試薬または器具を追加的に含んでよい。そのような試薬または器具は、次の:好適な緩衝剤(複数可)(水性溶液)、対象から試料を得るための手段(容器もしくは、針を含む器具など)、ポリヌクレオチドを増幅および/もしくは発現するための手段、上に定義の膜または電圧もしくはパッチクランプ装置、の1つまたは複数を含む。試薬は、液体試料が試薬を再懸濁するように乾燥状態でキット中に存在する場合がある。キットは、キットが本発明の方法において用いられ得るようにする説明書、またはいずれの患者に方法が用いられ得るかに関する詳細も場合により含む場合がある。キットは、場合によりヌクレオチドを含み得る。
【0175】
配列決定のための標的ポリヌクレオチドを調製する方法
本発明は、配列決定のための二重鎖標的ポリヌクレオチドを調製する方法も提供する。本方法は、標的ポリヌクレオチドを配列決定することができるコンストラクトを作製する。本方法では標的ポリヌクレオチドの2本鎖が架橋部によって連結され、ポリマーは標的ポリヌクレオチドの一方の鎖の他の端に付着される。ポリマーは、好ましくはリーダーポリマーであり、方法は標的ポリヌクレオチドの他方の鎖に(すなわちリーダーポリマーと同じ端に)テールポリマーを付着させるステップも好ましくはさらに含む。リーダーポリマーおよびテールポリマーは、上に詳細に考察されている。
【0176】
方法は、コンストラクトに膜をカップリングさせる手段をコンストラクトに付着させるステップも好ましくはさらに含む。そのような手段は上に記載されている。
【0177】
架橋部は、別に合成されることができ、次いで標的ポリヌクレオチドに化学的に付着または酵素的にライゲーションされ得る。そのようにするための手段は当技術分野において公知である。代替的に架橋部は、標的ポリヌクレオチドのプロセシングにおいて作製され得る。再度、好適な手段は当技術分野において公知である。
【0178】
配列決定のための標的ポリヌクレオチドを調製する好適な方法は、実施例3で例示される。
【0179】
装置
本発明は、二重鎖標的ポリヌクレオチドを配列決定するための装置も提供する。装置は、(a)膜;(b)膜中の複数の膜貫通ポア;(c)標的ポリヌクレオチドの2本鎖を分離できる複数のポリヌクレオチド結合タンパク質;および(d)本発明の方法を実行するための説明書を含む。装置は、アレイまたはチップなどのポリヌクレオチド分析のための任意の従来装置であってよい。本発明の方法に関連して上に考察された任意の実施形態は、本発明のキットに等しく適用可能である。
【0180】
装置は、本発明の方法を実行するために好ましくはセットアップされている。
【0181】
Phi29DNAポリメラーゼなどの好適な核酸結合タンパク質は、上に記載されている。
【0182】
装置は、
膜および複数のポアを支持でき、ポアおよびタンパク質を用いてポリヌクレオチド配列決定を実施するために作動可能であるセンサーデバイス;
配列決定を実施するための材料を保持するための少なくとも1つのリザーバー;
少なくとも1つのリザーバーからセンサーデバイスに材料を制御可能に供給するように構成された流体系;および
各試料を受けるための複数の容器を好ましくは含み、
流体系は、容器からセンサーデバイスに試料を選択的に供給するように構成されている。装置は、国際出願第PCT/GB08/004127号(WO2009/077734として公開)、第PCT/GB10/000789号(WO2010/122293として公開)、国際出願第PCT/GB10/002206号(未公開)または国際出願第PCT/US99/25679号(WO00/28312として公開)において記載の任意のものであってよい。
【実施例1】
【0184】
dsDNAヘアピン周辺読み取り
ssDNAに沿って分子ブレーキとして作用するだけでなく、dsDNAセクションに沿っても機能的にも通過するPhi29DNAポリメラーゼなどの酵素の能力は、dsDNAコンストラクトのヘアピンターン周辺を読み取るために利用されることができ、センス鎖およびアンチセンス鎖両方のDNA/RNA配列決定を可能にする。
図3は、ヘアピンターンを有するdsDNAコンストラクトのセンス鎖およびアンチセンス鎖両方がPhi29DNAポリメラーゼなどの酵素でどのように配列決定され得るかを例示する。Phi29DNAポリメラーゼに基づくこの実行では、dsDNAコンストラクトは、印加された電場の下でのナノポアによる捕捉を可能にするために5’−ssDNAリーダーを含有する。これには、ヘアピンターンによって連結されたdsDNAセクションが続く。ヘアピンターンは、アンチセンス鎖領域からのセンス鎖領域の同定を補助するために特徴的な電流サインを作るマーカー(
図3の×)を場合によりターンに含有し得る。現在の実行では、読み取りヘッドが酵素の約20塩基下方にありDNAの端からそれが外れる場合に、最後の約20塩基は配列決定されないことから、コンストラクトはアンチセンス鎖領域の末端までの読み取りを可能にするために3’−ssDNA伸長も場合により含有し得る。
【0185】
2個のdsDNAセクションを連結するヘアピンターンは、これだけに限らないがDNA/RNAのセクション、修飾DNAもしくはRNA、PNA、LNA、PEG、他のポリマーリンカーまたは短い化学的リンカーで作出できる。ヘアピンリンカーを別に合成し、dsDNAに化学的に付着もしくは酵素的にライゲーションできる、またはゲノムDNAのプロセシングにおいて作製できる。
【0186】
方法
DNA:4個の別々のDNAコンストラクトを
図4〜7に示すとおり合成DNAから調製した(表4)。
【0187】
【表4】
【0188】
すべてのDNAはPAGE精製乾燥ペレットとしてIntegrated DNA Technologies(IDT)から購入し、純水中に最終濃度100μMに溶解した。短いdsDNAコンストラクトをUZ08をUZ12にハイブリダイズするステップによって調製した(表4)。ハイブリダイズするために等量の100μM DNA溶液を合わせて混合し、ホットプレートで95℃に加熱し、10分間、95℃に保持し、次いで約2時間かけてゆっくり室温に冷却した。これは、50μMのハイブリダイズしたDNA複合体の最終溶液をもたらす。UZ07、UA02およびMS23DNAコンストラクトは4Tターンを有するヘアピンである(表4)。センス領域とアンチセンス領域とをハイブリダイズするために、100μM DNA溶液をホットプレートで95℃に加熱し、10分間、95℃に保持し、次いで試料を冷蔵庫に置くステップによって急速に4℃に冷却した。急速冷却は、分子間ハイブリダイゼーションを超えて分子内ヘアピン形成を増強する。プロセスは、100μMのハイブリダイズしたDNAヘアピンの最終溶液をもたらす。
【0189】
MspA生成:精製MspA(NNNRRK)オリゴマーをcell−free Escherichia coli in vitro transcription translation system(Promega)で作出した。精製したオリゴマーを、SDS−PAGE後のゲルから適切なオリゴマーバンドを切断するステップによって得て、次いでTE緩衝液中に再溶媒和した。
【0190】
アンジッピング実験:1,2−ジフィタノイル−グリセロ−3−ホスホコリン脂質(Avanti Polar Lipids)二重層に挿入された単一のMspAナノポアから電気計測値を得た。二重層は、モンタル−ミューラー技術によって開口部直径約100μm、厚さ20μmのPTFEフィルム(Delrin chambers注文生産)で形成され、2個の1mL緩衝溶液に分けた。すべての実験は、400mM KCl、10mM Hepes、1mM EDTA、1mM DTT、pH8.0のStrand EP緩衝液中で実行した。単一チャネル電流を1440Aデジタイザーを備えたAxopatch 200B amplifiers(Molecular Devices)で測定した。Ag/AgCl電極を緩衝溶液に繋ぎ、cisコンパートメント(ナノポアおよび酵素/DNAの両方が添加されている)をAxopatch headstageのアースに繋ぎ、transコンパートメントをheadstageの探査電極に繋ぐ。
【0191】
DNAコンストラクトおよびPhi29DNAポリメラーゼ(Enzymatics;150μM)をstrand EP緩衝液100μLに添加し、5分間予備インキュベートした(DNA=1μM、酵素=2μM)。MspAナノポアでの複合体の捕捉およびアンジッピングを開始するためにこの予備インキュベーション混合物を電気生理学チャンバーのcisコンパートメント中の緩衝液900μLに添加した(DNA=0.1μM、酵素=0.2μM最終濃度をもたらす)。1回の実験では1種類のDNAだけを系に添加した。アンジッピング実験を+180mVの一定電位で実行した。
【0192】
結果:
ヘアピンを有するまたは有さないdsDNAコンストラクトをPhi29DNAポリメラーゼを用いてMspAナノポアを通してアンジッピングした際に、特徴的で一致しているポリメラーゼ制御DNA移動を観察した(
図4〜7)。
図4〜7は、ナノポアを通る分析物の複数の単一移行から得られた)示した各DNAコンストラクトについての共通DNA配列プロファイルを示す。
【0193】
ヘアピンを有さないdsDNAコンストラクト(UZ08+UZ12)は、小数の配列依存状態(典型的には約10、
図4)を示す。これは、酵素がDNAの3’−末端から外れる(読み取りヘッドの約20塩基上方)前に、ナノポアの読み取りヘッドを通過するdsDNAセクション中の31塩基の内の約10〜15塩基と一致し、最後の約20塩基はブレーキが掛からずにナノポアを通って移行する(解読には速すぎる)。
【0194】
UZ07(表4)は、UZ08+UZ12と同じDNA配列を含有するが、センス鎖とアンチセンス鎖とを繋ぐ4Tターンを有するヘアピンコンストラクトである。UZ07から得られた共通配列(
図5)は、UZ08+UZ12と同じ初期プロファイルを共有するが、UZ08+UZ12 dsDNAについてよりも多くの配列状態(典型的には>30)を示す(
図4)。これは、酵素がセンス鎖のヘアピンを回り、アンチセンス鎖に沿って進んでいること示す。これはセンス鎖全体およびアンチセンス鎖の一部の下方読み取りを可能にする(3’−末端から酵素が外れる前の最後の約20塩基は除く)。
【0195】
UA02(表4)は、UZ07と同じ配列を有するが、コンストラクトの3’−末端に非相補性ssDNAの追加の25塩基の付加を有する。UA02(
図6)から得られた共通配列は、UZ07によくマッチする配列プロファイルを示す(
図5)が、末端に追加的な約20個の状態を有する。3’−末端の追加的な25塩基は、DNAの末端(読み取りヘッドの約20塩基上方)から上鎖酵素が外れる前にアンチセンスの全長が読み取られるようにする。
図8は、UA02からの共通配列、最初にナノポアにあるホモポリマー5’−オーバーハング(セクション1)、センス(セクション2)、ターン(セクション3)およびアンチセンス(セクション4)領域を示す。
【0196】
マーカーは、ヘアピンターン内または付近に置かれることができ、配列決定される際に特徴的なシグナルを生成し、未知のDNA配列のセンス領域およびアンチセンス領域の簡便な同定をできるようにする。MS23(表4)は、UZ07と同じ配列を有するだけでなく、センス鎖とアンチセンス鎖とを分離するヘアピンの4Tターン中に脱塩基マーカーの付加を有する。MS23から得られた共通配列(
図7)は、UZ07によくマッチする配列プロファイルを示すが(
図5)、脱塩基がナノポア読み取りヘッドをこの時点で通過することの結果として、ターン領域中で電流が変化した大きな上向きスパイクを有する(*で示す)。電流におけるこの大きな上向きスパイクは、通常の塩基と比較してナノポア狭窄における脱塩基の低下したイオン遮断の特徴であり、それによってセンス領域とアンチセンス領域とが分離される明確なシグナルを提供する。
【0197】
要約:
これらの実験は、Phi29DNAポリメラーゼが、ssDNAセクションに沿う効率的な分子ブレーキとして作用するその能力によってdsDNAコンストラクトのヘアピンターン周辺を読み取れることを実証する。
【0198】
本実行におけるMspAナノポアの読み取りヘッドは、Phi29酵素への入口のDNAから約20塩基下方にある。結果として酵素がDNA鎖の末端に至って基質を放出すると、残りの約20塩基は解析/配列決定されるには速すぎる未制御の様式でナノポアを通って移行する。しかし場合により3’−伸長(5’から3’読み取り方向で)を、アンチセンス鎖全体の完全な配列決定をできるようにする読み取り距離を伸長するためにDNAコンストラクトに付加できる。
【0199】
特徴的な電流サインを生成するマーカーを、配列のセンス領域およびアンチセンス領域の同定を補助するために場合によりDNAコンストラクトのヘアピンターン中または付近に置くことができる。マーカーは、これだけに限らないが、通常塩基の独自の未知の配列モチーフまたは代替的電流サインを生成する非天然もしくは修飾塩基であってよい。
【実施例2】
【0200】
ゲノムDNAのdsDNAヘアピン周辺読み取り
Phi29DNAポリメラーゼを用いるヘアピン周辺の読み取りは、ライゲーションされたヘアピンを有する長いゲノムdsDNAに拡大適用できる(
図9)。
図9は、ヘアピン周辺の読み取りのために好適なdsDNAを作出するための一般的設計概要を示す。コンストラクトは、リーダー配列を有し、場合によりナノポアでの捕捉のためのマーカー(例えば脱塩基DNA)、および場合によりマーカーを伴うヘアピン、およびアンチセンス鎖での読み取りを伸長するためのテールを(場合によりマーカーを伴って)有する。
【0201】
方法:
DNA:PhiX174RF1ゲノムDNAの400塩基対セクションを、定義された制限部位を含有するPCRプライマーを用いて増幅した。400bp断片のKasIおよびMluI制限エンドヌクレアーゼ消化後に、相補的末端を含有するDNAアダプターをライゲーションした(
図10)。望ましい生成物はPAGE精製によって最終的に単離し、A260nmでの吸光度によって定量した。
【0202】
分析の簡易化のために、各アダプター片は規定の脱塩基マーカーを含有し、それによりDNAのナノポアを通る進行は追跡できた。すべてのプライマーおよびアダプターの配列を表5に示す。
【0203】
【表5】
【0204】
MspA生成:実施例1を参照されたい。
【0205】
アンジッピング実験:実施例1を参照されたい。
【0206】
ゲノムDNAコンストラクトを、strand EP緩衝液100μL中のPhi29DNAポリメラーゼ(Enzymatics、150μM)とインキュベートし、5分間予備インキュベートした(DNA=5nM、酵素=2μM)。この予備インキュベーション混合物を、MspAナノポア中の複合体の捕捉およびアンジッピングを開始するために電気生理学チャンバーのcisコンパートメント中の緩衝液900μLに添加した(DNA=0.5nM、酵素=0.2μMの最終濃度をもたらす)。1回の実験では1種類のDNAだけを系に加えた。アンジッピング実験は、+180mVの一定電位で実行した。
【0207】
結果;
Phi29DNAポリメラーゼを含むMspAナノポアに加えた400塩基長−No3(3’コレステロールTEGを有する)(表6)は、DNAのアンジッピングおよび、多数の配列依存的状態を有する1〜3分間継続したポリメラーゼ制御DNA移動を生じた(
図11および12)。センス鎖の先端、ヘアピンターンの中央、およびアンチセンス鎖の末端の脱塩基マーカーは、配列の別々のセクションを容易に同定できるようにする。
図11および12は、明確な3個の脱塩基ピークを示し、長いゲノムDNAにライゲーションしたヘアピン周辺を読み取る能力を実証し、それによりdsDNAのセンス鎖およびアンチセンス鎖両方を配列決定する。
【0208】
【表6】
【実施例3】
【0209】
配列決定のための試料調製
PhiX174RF1ゲノムDNAの400塩基対セクションを、定義された制限部位を含有するPCRプライマーを用いて増幅した。400bp断片のKasIおよびMluI制限エンドヌクレアーゼ消化後に、相補的末端を含有するDNAアダプターをライゲーションした。所望の生成物をPAGE精製によって最終的に単離し、A260nmでの吸光度によって定量した。
【0210】
分析の簡便のために、各アダプター片は規定の脱塩基マーカーを含有し、それによりDNAのナノポアを通る進行を追跡できた。すべてのプライマーおよびアダプターの配列を下に示す(X=脱塩基修飾)。
KasIセンスプライマー
TTTTTTTTTTGGCGCCCTGCCGTTTCTGATAAGTTGCTT(配列番号21)
MluIアンチセンスプライマー
AAAAAAAAAAACGCGTAAACCTGCTGTTGCTTGGAAAG(配列番号22)
KasIセンスアダプター
TTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTXXXXTTTTTTTTTTGGCTAACAAACAAGAAACATAAACAGAATAG(配列番号23)
KasIアンチセンスアダプター
GCGCCTATTCTGTTTATGTTTCTTGTTTGTTAGCCTTTTTTXXXXTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTT(配列番号24)
MluI HP
CGCGCTATTCTGTTTATGTTTCTTGTTTGTTAGCCXXXXGGCTAACAAACAAGAAACATAAACAGAATAG(配列番号25)
コンストラクトは
図10に示す。
【0211】
上のアダプターが脱塩基部位の代わりに非相補性塩基を含有する場合、アンチセンスY型アダプターのssDNAセクションに相補的なプライマーおよび鎖置換ポリメラーゼ(Phi29またはクレノウなど)を用いて分析物を開くことが可能である。プライマーおよびY型アダプター相補性領域が制限部位も含有する場合、増幅後に別のヘアピンをライゲーショすることができ、テンプレートをさらに拡大するためにプロセスを反復できる。これは、分子を2回配列決定する能力を与える;完全なdsDNAアンジッピングモードでのオリジナルセンス−アンチセンス、次いで完全なssDNAアンジッピングモードでの増幅されたセンス鎖−アンチセンス鎖。
【0212】
DNAアダプターの標的DNAへのライゲーションは、既に十分に記載されており、これは未だに最も良く知られた技術である。アダプターのライゲーションは、T4 RNAリガーゼ1を用いる一重鎖ライゲーションによってまたはT4DNAリガーゼを用いるアニールされたアダプターの二重鎖ライゲーションによってのいずれかで生じ得る。標的二量体およびアダプター二量体の形成を防ぐために、標的は最初にクレノウexo−などのポリメラーゼを用いてdAテール化されてよい。
【0213】
より近年では、人工トランスポゾン(Nextera systemなど)での進歩は、DNAを断片化しながら同時に急速に高速化するアダプター付着に将来性を示し始めている。理論では同様の手法が、DNA内に合致する配列がある限りCre LoxP system(NEB)などの相同的組換えを用いて達成できる。化学的ライゲーションにおける進歩も近年改善され、非天然トリアゾール連結を含有するDNA鎖の順調な増幅による最大の成功を実証している(SagheerおよびBrown、2009)。化学的ライゲーションについて、DNAの5’または3’のいずれかの修飾は、好適な反応基を含むために通常最初に必要とされる。基は、修飾dNTPおよびターミナルトランスフェラーゼを用いて3’に容易に付加できる。DNAの5’末端の修飾も実証されているが、T4ポリヌクレオチドキナーゼを用いるチオール基にこれまで限定されてきた。化学的手段を介したDNAの5’への分子の直接カップリングに関するいくつかの成功は、カルボイイミドカップリングを用いて実証され、そのようなキットは商業的に入手可能である。しかし副生物がこの化学に伴ってしばしば問題になる。
【実施例4】
【0214】
ヘリカーゼを用いるゲノムDNAのdsDNAヘアピン周辺読み取り
ヘアピンによってライゲーションされた、繋がれた長いゲノムdsDNAからなるDNA鎖周辺の読み取りをヘリカーゼ酵素を用いて調査した(
図17)。用いたコンストラクトは、ナノポアでの捕捉のための任意選択マーカーを含むリーダー配列、任意選択マーカーを含むヘアピン、ならびに伸長された読み取り配列および末端に付着されたコレステロールテザーを有するテールを有する。
【0215】
方法:
センス鎖とアンチセンス鎖とを連結するために架橋ヘアピン(配列番号32)を一方の端にライゲーションした。合成Yアダプターを酵素がナノポアに結合し、通り抜けられるようにライゲーションした:このアダプターのセンス鎖(4個の脱塩基DNA塩基を介して配列番号30に付着した配列番号29、
図18を参照されたい)は5’リーダー、テザー配列に相補的である配列(配列番号35、配列の3’末端に2個のチミジン残基および3’コレステロールTEGに付着した6個のiSp18スペーサーを有する)および4個の脱塩基を含有する。アダプターのアンチセンス半分も、後のDUO分析物への転換のための分子内プライマーとして作用する3’ヘアピン(配列番号31、
図22開始テンプレートを参照されたい)を有する。MONO分析物DNAをPhiX174の約400bp領域(センス鎖配列=配列番号33およびアンチセンス鎖配列=配列番号34)を用いて調製した。目的の領域をSacIおよびKpnI制限部位を含有するプライマー(それぞれ配列番号27および28)でPCR増幅した。次いで精製PCR生成物をSacIおよびKpnI消化し、Y型アダプター(センス鎖配列(4個の脱塩基DNA塩基を介して配列番号30に付着した配列番号29)を配列番号33の5’末端にライゲーションし、アンチセンス鎖(配列番号31)を配列番号34の3’末端にライゲーションする)およびヘアピン(配列番号33と34とを合わせるために用いられた配列番号32)をT4DNAリガーゼを用いていずれかの末端にライゲーションした(最終DNAコンストラクトに関して
図18を参照されたい)。生成物は5%TBE PAGEゲルから精製し、破砕および浸漬法(crush and soak method)によってTE緩衝液に溶出した。
【0216】
MspA生成:変異体MspAポアMS(B1−G75S−G77S−L88N−Q126R)8MspA(変異G75S/G77S/L88N/Q126Rを有する配列番号2)の精製MspAオリゴマーをcell−free Escherichia coli in vitro transcription translation system(Promega)で作出した。精製したオリゴマーを、SDS−PAGE後のゲルから適切なオリゴマーバンドを切断するステップ、次いでTE緩衝液中に再溶媒和させるステップによって得た。
【0217】
ヘリカーゼ実験−1,2−ジフィタノイル−グリセロ−3−ホスホコリン脂質(Avanti Polar Lipids)二重層に挿入された単一のMspAナノポア(MS(B1−G75S−G77S−L88N−Q126R)8MspA(変異G75S/G77S/L88N/Q126Rを有する配列番号2))から電気計測値を得た。二重層は、モンタル−ミューラー技術によって開口部直径約100μm、厚さ20μmのPTFEフィルム(Delrin chambers注文生産)で形成し、2個の1mL緩衝溶液に分けた。すべての実験は、400mM NaCl、100mM Hepes、10mMフェロシアン化カリウム、10mMフェリシアン化カリウム、pH8.0で印加電位+140mVで実行した。単一チャネル電流を1440Aデジタイザーを備えたAxopatch 200B amplifiers(Molecular Devices)で測定した。白金電極を緩衝溶液に繋ぎ、cisコンパートメント(ナノポアおよび酵素/DNAの両方が添加されている)をAxopatch headstageのアースに繋ぎ、transコンパートメントをheadstageの探査電極に繋ぐ。
【0218】
MgCl2およびdTTPをそれぞれ10mMおよび5mMの最終濃度を得るようにcisチャンバーに添加する前に単一ポアを得た。DNA(
図18に示すとおり繋いだ配列番号29〜35)をcisチャンバーに0.1nMの最終濃度に添加する前にデータを5分間、+140mVで取り、さらに5分間データを取った。ヘリカーゼをcisチャンバーに100nMの最終濃度で添加し、すべてのヘリカーゼ制御DNA移動を+140mVで記録した。
【0219】
結果:
400bpセンス/アンチセンスヘアピンコンストラクト(
図18に示すとおり繋いだ配列番号29〜35)は、MspAナノポア(MS(B1−G75S−G77S−L88N−Q126R)8MspA(変異G75S/G77S/L88N/Q126Rを有する配列番号2))にヘリカーゼと共に添加された場合、DNAのアンジッピングおよびヘリカーゼ制御DNA移動を多数の配列依存状態と共にもたらした(
図19から21)。400bpセンス/アンチセンスヘアピンコンストラクト(
図18に示すとおり繋いだ配列番号29〜35)は、センス鎖の先端のポリT領域および脱塩基DNA塩基(
図20においてそれぞれ*および#で強調される)が観察され得るように、配列の先端の容易な同定をできるようにするヘリカーゼ制御DNA移動を生成する。したがってヘリカーゼが400bpヘアピンの移動およびアンジッピングを制御できたことを示すことができた。センス領域とアンチセンス領域との間の速度における明確な変化は、酵素がコーナーを通り過ぎた点を強調し、これらの領域間(
図21、センス領域(1)読み取りからアンチセンス領域(2)読み取りでの変化を*で示す)の有用なマーカーである。速度におけるこの変化はヘアピンターンに印をつけるためのマーカーの必要性を排除する。これは、ヘリカーゼで長いゲノムDNAにライゲーションされたヘアピン周辺を読み取る能力、およびそれによりdsDNAのセンス鎖およびアンチセンス鎖両方を配列決定する能力を実証する。
【実施例5】
【0220】
DUOポリヌクレオチドヘアピン鎖の生成
センス鎖およびアンチセンス鎖由来の情報を連結させるステップがDNAの一方の端に合成ヘアピンをライゲーションするステップによって可能であることは既に実証されている。これは、同時に1個の分子から天然センス鎖およびアンチセンス鎖の読みをもたらすために役立ち、単一の位置を判定するために2回の機会を得ることから塩基判定をより正確にする。
【0221】
センス鎖とアンチセンス鎖とを連結するために架橋ヘアピン(配列番号32)を一方の端にライゲーションできる。酵素結合およびナノポアへの通り抜けを可能にするために合成Y−アダプターにライゲーションすることもできる:このアダプターのセンス鎖(4個の脱塩基DNA塩基を介して配列番号30に付着した配列番号29、
図22開始テンプレートを参照されたい)は、5’リーダー、テザー配列に相補的である配列(配列番号35、チミン残基2個および3’コレステロールTEGに付着したiSp18スペーサー6個を配列の3’末端に有する)および脱塩基4個を含有し、アダプターのアンチセンス半分は後のDUO分析物への転換のために分子内プライマーとして作用する3’ヘアピン(配列番号31)も含有する(
図22開始テンプレートを参照されたい)。
【0222】
架橋ヘアピン(配列番号32)がライゲーションされる場合、合成Y−アダプターにライゲーションすることもできる:このアダプターのセンス鎖(4個の脱塩基DNA塩基を介して配列番号30に付着した配列番号29、
図22開始テンプレートを参照されたい)は、5’リーダー、テザー配列に相補的である配列(配列番号35、チミン残基2個および3’コレステロールTEGに付着したiSp18スペーサー6個を配列の3’末端に有する)および脱塩基4個を含有し、アダプターのアンチセンス半分は分子内プライマーとして作用する3’ヘアピン(配列番号31図、
図22の開始テンプレートを参照されたい)を含有し、これは、Yアダプターの3’末端に結合する鎖置換ポリメラーゼを用いて全体(センスおよびアンチセンスに連結している)を複製するステップによってテンプレートをさらに伸長する好機を本発明者らにもたらす(
図22のステップ2)。Y型およびヘアピンアダプターは、不適正塩基対制限部位(制限消化に非感受性、
図23の上図を参照されたい)を含有する。分析物が次に充填され、伸長される場合(
図22ステップ2から3を参照されたい)、制限部位は完了し(
図23の下図を参照されたい)、それにより完全に充填された分析物(
図25に示すとおり繋いだ配列番号29〜36)は順調な充填を確認するために部位特異的制限エンドヌクレアーゼを用いて消化できる。
【0223】
DUO分析物は、上の実施例4に開示したMONO分析物から調製した。二重ライゲーションMONO PAGE精製分析物(
図18に示すとおり繋いだ配列番号29〜35)を、クレノウDNAポリメラーゼ、SSBおよびヌクレオチドとさらにインキュベートし、Y型アダプターヘアピン(配列番号31)からの伸長を可能にした。順調なDUO生成物(
図25に示すとおり繋いだ配列番号29〜36)について選別するために、一連の不適正塩基対制限部位をアダプター配列に組み込み、それによりDUO伸長プロセスによって制限部位複製が順調に複製された場合にだけ酵素は分析物を切断する(
図23を参照されたい、MONO分析物を上図およびDUO分析物を下図)。
【0224】
図24は、
図23上図に示すとおり互いに不適正塩基対であることから、ポリメラーゼの非存在下でアダプター修飾分析物(MONO、配列番号29〜35)は制限酵素で消化されないことを示す(
図24の左のゲルを参照されたい、記号:M=MfeI、A=AgeI、X=XmaI、N=NgoMIV、B=BspEI)。しかしポリメラーゼとのインキュベーションでは、注目すべき大きさの変化があり、変化した生成物(DUO)は各制限酵素で予測されるとおり消化される(
図24の右のゲルを参照されたい、記号:M=MfeI、A=AgeI、X=XmaI、N=NgoMIV、B=BspEI)。これは、記載の方法を用いてDUO生成物を生成できることを示す(
図25に示すとおり繋いだ配列番号29〜36)。
【実施例6】
【0225】
ヘリカーゼを用いるdsDNA DUOポリヌクレオチドヘアピン周辺読み取り
オリジナルセンス鎖(配列番号33)およびアンチセンス鎖(配列番号34)ならびに複製センス鎖および複製鎖(配列番号36)からなるDUOヘアピンコンストラクト(
図25に示すとおり繋いだ配列番号29〜36)周辺のヘリカーゼ酵素を用いる読み取りを調査した。
【0226】
方法:本実験において用いたDNAコンストラクトは上の実施例5に開示の方法によって生成した。
【0227】
MspA生成:MspAポアMS(B1−G75S−G77S−L88N−Q126R)8MspA(変異G75S/G77S/L88N/Q126Rを有する配列番号2)を実施例4に記載の方法によって生成した。
【0228】
アンジッピング実験:1,2−ジフィタノイル−グリセロ−3−ホスホコリン脂質(Avanti Polar Lipids)二重層に挿入された単一のMspAナノポア(MS(B1−G75S−G77S−L88N−Q126R)8MspA(変異G75S/G77S/L88N/Q126Rを有する配列番号2)から、緩衝液(400mM NaCl、100mM Hepes、10mMフェロシアン化カリウム、10mMフェリシアン化カリウム、pH8.0)中、印加電位+140mVで実施例4に記載のとおり電気計測を得た。
【0229】
最初に、MgCl2(10mM)およびdTTP(5mM)をcisコンパートメントに加え、対照実験を5分間行った。2番目に、DNAコンストラクト(0.1nN、
図25に示すとおり繋いだ配列番号29〜36)をcisコンパートメントに加え、対照実験をさらに5分間行った。最後にヘリカーゼ(100nM)を電気生理学チャンバーに加えてヘリカーゼ活性を開始させた。すべてのアンジッピング実験は一定電位+140mVで実行した。
【0230】
結果:
ヘリカーゼと共にMspAナノポア(MS(B1−G75S−G77S−L88N−Q126R)8MspA(変異G75S/G77S/L88N/Q126Rを有する配列番号2))に加えた場合にDUOヘアピンコンストラクト(
図25に示すとおり繋いだ配列番号29〜36)は、DNAのアンジッピングおよびヘリカーゼ制御DNA移動を多数の配列依存状態と共にもたらした(
図26から28)。
図26は、2つの典型的なヘリカーゼ制御DNA移動を示し、オリジナルセンスセクション、オリジナルアンチセンスセクション、複製センス領域および複製アンチセンスセクションに対応する領域は1から4とそれぞれ表示される。
図27は
図26からのヘリカーゼ制御DNA移動の内の1つの拡大図を示し、
図28はオリジナルセンス鎖とアンチセンス鎖との間の移行の別の拡大図を示す。アンチセンス鎖と比較したセンス鎖のヘリカーゼ制御移動での速度の変化は、明確に観察できる(
図26〜28)。速度のこの変化は、ヘアピンターンに印をつけるためのマーカーの必要性を排除する。これは、DUOヘアピンコンストラクト(
図25に示すとおり繋いだ配列番号29〜36)周辺を、およびそれによりdsDNAのセンス鎖およびアンチセンス鎖両方の配列を2回読み取る能力を実証する。単一の位置を判定するために4回の機会を得ることからこれは塩基判定をより正確にする。
本発明は以下の態様を含み得る。
[1]
二重鎖標的ポリヌクレオチドを配列決定する方法であって、
(a)標的ポリヌクレオチドを含むコンストラクトを提供するステップであり、標的ポリ
ヌクレオチドの2本鎖が標的ポリヌクレオチドの一方の端またはその付近で架橋部(moie
ty)によって連結されているステップ;
(b)標的ポリヌクレオチドの2本鎖を分離して、標的ポリヌクレオチドの他方の鎖と架
橋部によって連結されている標的ポリヌクレオチドの一方の鎖を含む一重鎖ポリヌクレオ
チドを提供するステップ;
(c)一重鎖ポリヌクレオチド中のヌクレオチドの一部が膜貫通ポアと相互作用するよう
に一重鎖ポリヌクレオチドを膜貫通ポアを通して移動させるステップ;および
(d)各相互作用の際にポアを通過する電流を測定し、それにより標的ポリヌクレオチド
の配列を決定するステップ
を含み、ステップ(b)の分離ステップが、標的ポリヌクレオチドの2本鎖を分離するポ
リヌクレオチド結合タンパク質とコンストラクトを接触させるステップを含む、方法。
[2]
架橋部がポリマーリンカー、化学的リンカー、ポリヌクレオチドまたはポリペプチドを
含む、請求項1に記載の方法。
[3]
架橋部がDNA、RNA、修飾DNAもしくはRNA、PNA、LNAまたはPEGを
含む、請求項2に記載の方法。
[4]
架橋部がヘアピンループである、請求項2または3に記載の方法。
[5]
一重鎖ポリヌクレオチド全体がポアを通って移動し、標的ポリヌクレオチド全体が配列
決定される、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
[6]
ポリヌクレオチド結合タンパク質が膜貫通ポアを通る一重鎖ポリヌクレオチドの移動を
制御する、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
[7]
ポリヌクレオチド結合タンパク質が標的ポリヌクレオチドの2本鎖を分離し、ポアを通
る一重鎖ポリヌクレオチドの移動を制御する、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
[8]
前記タンパク質が
(a)ピコウイルス亜科(Picovirinae family)のウイスル由来である;
(b)Phi29DNAポリメラーゼ由来である;または
(c)ヘリカーゼ由来である、
前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
[9]
コンストラクトが標的ポリヌクレオチドの架橋部とは反対側の端に少なくとも1つのポ
リマーをさらに含む、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
[10]
コンストラクトが標的ポリヌクレオチドの一方の鎖にポリマーリーダーを含み、標的ポ
リヌクレオチドの他方の鎖にポリマーテールを含む、請求項9に記載の方法。
[11]
一重鎖ポリヌクレオチドが(1)リーダーポリマー、(2)標的ポリヌクレオチドの一
方の鎖、(3)架橋部、(4)標的ポリヌクレオチドの他方の鎖、および(5)テールポ
リマーの順序でポアを通って移動する、請求項10に記載の方法。
[12]
コンストラクトがコンストラクトを膜にカップリングする手段をさらに含む、前記請求
項のいずれか一項に記載の方法。
[13]
膜貫通ポアがタンパク質ポアまたはソリッドステートポアである、前記請求項のいずれ
か一項に記載の方法。
[14]
タンパク質ポアがMspまたはα−ヘモリジン(α−HL)由来である、請求項13に
記載の方法。
[15]
膜が両親媒性層またはソリッドステート層である、前記請求項のいずれか一項に記載の
方法。
[16]
膜が脂質二重層である、請求項15に記載の方法。
[17]
コンストラクトが、ポアと相互作用するときに特有の電流を生じる1つまたは複数のマ
ーカーをさらに含む、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
[18]
1つまたは複数のマーカーが脱塩基またはヌクレオチドの特異的配列である、請求項1
7に記載の方法。
[19]
1つまたは複数のマーカーが架橋部の中または付近にある、請求項17または19に記
載の方法。
[20]
1つまたは複数のマーカーがポリマーリーダーまたはポリマーテール内に位置する、請
求項17または18に記載の方法。
[21]
1つまたは複数のマーカーが標的ポリヌクレオチドの供給源を同定する、請求項19か
ら20のいずれか一項に記載の方法。
[22]
(a)標的ポリヌクレオチドの2本鎖を一方の端またはその付近で連結できる架橋部;
および
(b)少なくとも1つのポリマー
を含む、配列決定のための二重鎖標的ポリヌクレオチドを調製するためのキット。
[23]
リーダーポリマーおよびテールポリマーを含む、請求項22に記載のキット。
[24]
リーダーポリマーおよびテールポリマーがポリヌクレオチドであり、リーダーポリマー
の一部およびテールポリマーの一部が二重鎖配列を形成する、請求項23に記載のキット
。
[25]
標的ポリヌクレオチドを膜にカップリングする手段をさらに含む、請求項22から24
のいずれか一項に記載のキット。
[26]
膜貫通ポアと相互作用するときに特有の電流を生じる1つまたは複数のマーカーをさら
に含む、請求項22から25のいずれか一項に記載のキット。
[27]
(a)標的ポリヌクレオチドの2本鎖を一方の端またはその付近で架橋部に連結するス
テップ;および
(b)1つのポリマーを標的ポリヌクレオチドの一方の鎖に他方の端で付着させ、それに
より膜貫通ポアを用いて標的ポリヌクレオチドを配列決定することができるコンストラク
トを形成するステップ
を含む、配列決定のための二重鎖標的ポリヌクレオチドを調製する方法。
[28]
ポリマーがリーダーポリマーであり、方法が標的ポリヌクレオチドの他方の鎖のリーダ
ーポリマーと同じ端にテールポリマーを付着させるステップをさらに含む、請求項27に
記載の方法。
[29]
コンストラクトを膜にカップリングする手段をコンストラクトに付着させるステップを
さらに含む、請求項28に記載の方法。
[30]
(a)架橋部が別に合成され、標的ポリヌクレオチドに化学的に付着されるもしくは酵
素的にライゲーションされる;または
(b)架橋部が標的ポリヌクレオチドのプロセシングにおいて作製される、
請求項27から29のいずれか一項に記載の方法。
[31]
二重鎖標的ポリヌクレオチドを配列決定する方法であって、
(a)標的ポリヌクレオチドを含むコンストラクトを提供するステップであり、標的ポリ
ヌクレオチドの2本鎖が標的ポリヌクレオチドの一方の端またはその付近で架橋部によっ
て連結されているステップ;
(b)標的ポリヌクレオチドの2本鎖を分離して、標的ポリヌクレオチドの他方の鎖と架
橋部によって連結されている標的ポリヌクレオチドの一方の鎖を含む一重鎖ポリヌクレオ
チドを提供するステップ;
(c)一重鎖ポリヌクレオチドと相補物とが二重鎖ポリヌクレオチドを形成するように一
重鎖ポリヌクレオチドの相補物を合成するステップ;
(d)架橋部を用いて二重鎖ポリヌクレオチドの2本鎖を二重鎖ポリヌクレオチドの一方
の端またはその付近で連結するステップ;
(e)二重鎖ポリヌクレオチドの2本鎖を分離して、架橋部によって相補物に連結されて
いるオリジナル一重鎖ポリヌクレオチドを含むさらなる一重鎖ポリヌクレオチドを提供す
るステップ;
(f)相補物中のヌクレオチドの一部が膜貫通ポアと相互作用するように相補物を膜貫通
ポアを通して移動させるステップ;および
(g)各相互作用の際にポアを通過する電流を測定し、それにより標的ポリヌクレオチド
の配列を決定するステップ
を含み、ステップ(e)の分離ステップが、標的ポリヌクレオチドの2本鎖を分離するポ
リヌクレオチド結合タンパク質とコンストラクトを接触させるステップを含む、方法。
[32]
(a)膜;(b)前記膜中の複数の膜貫通ポア;(c)標的ポリヌクレオチドの2本鎖
を分離できる複数のポリヌクレオチド結合タンパク質;および(d)請求項1に記載の方
法を実行するための説明書を含む、二重鎖標的ポリヌクレオチドを配列決定するための装
置。
[33]
(a)膜;(b)前記膜中の複数の膜貫通ポア;および(c)標的ポリヌクレオチドの
2本鎖を分離できる複数のポリヌクレオチド結合タンパク質を含み、請求項1に記載の方
法を実行するためにセットアップされている、二重鎖標的ポリヌクレオチドを配列決定す
るための装置。
[34]
前記膜および複数のポアを支持でき、前記ポアおよびタンパク質を用いてポリヌクレオ
チド配列決定を実施するために作動可能であるセンサーデバイス;
配列決定を実施するための材料を保持するための少なくとも1つのリザーバー;
前記少なくとも1つのリザーバーから前記センサーデバイスに材料を制御可能に供給する
ように構成された流体系;および
各試料を受けるための複数の容器
を含み、前記流体系が前記容器から前記センサーデバイスに前記試料を選択的に供給する
ように構成されている、請求項32または33に記載の装置。
[35]
ステップ(b)の後でステップ(c)の前に、
(m)一重鎖ポリヌクレオチドと相補物とが二重鎖ポリヌクレオチドを形成するように一
重鎖ポリヌクレオチドの相補物を合成するステップ;
(n)架橋部を用いて二重鎖ポリヌクレオチドの2本鎖を二重鎖ポリヌクレオチドの一方
の端またはその付近で連結するステップ;
(o)二重鎖ポリヌクレオチドの2本鎖を分離して、架橋部によって相補物に連結されて
いるオリジナル一重鎖ポリヌクレオチドを含むさらなる一重鎖ポリヌクレオチドを提供す
るステップ
を場合によりさらに含む、請求項1から21のいずれか一項に記載の方法。