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特許6298406ワイヤレス・ネットワークのためのノード測位の方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6298406
(24)【登録日】2018年3月2日
(45)【発行日】2018年3月20日
(54)【発明の名称】ワイヤレス・ネットワークのためのノード測位の方法
(51)【国際特許分類】
   G01S 5/02 20100101AFI20180312BHJP
   G01S 5/14 20060101ALI20180312BHJP
   H04W 84/18 20090101ALI20180312BHJP
   H04W 64/00 20090101ALI20180312BHJP
【FI】
   G01S5/02 Z
   G01S5/14
   H04W84/18
   H04W64/00 110
【請求項の数】12
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2014-535122(P2014-535122)
(86)(22)【出願日】2012年10月16日
(65)【公表番号】特表2014-534425(P2014-534425A)
(43)【公表日】2014年12月18日
(86)【国際出願番号】EP2012070490
(87)【国際公開番号】WO2013057104
(87)【国際公開日】20130425
【審査請求日】2015年10月5日
(31)【優先権主張番号】11290480.0
(32)【優先日】2011年10月17日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】506423291
【氏名又は名称】コミサリア ア レネルジィ アトミーク エ オ ゼネ ルジイ アルテアナティーフ
【氏名又は名称原語表記】COMMISSARIAT A L’ENERGIE ATOMIQUE ET AUX ENERGIES ALTERNATIVES
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】特許業務法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】デニス,ベヌア
(72)【発明者】
【氏名】ウブリー,ローラン
【審査官】 中村 説志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−047487(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/077166(WO,A1)
【文献】 国際公開第2010/113829(WO,A1)
【文献】 特開2010−187359(JP,A)
【文献】 特表2008−537653(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0059851(US,A1)
【文献】 特表2009−545755(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0074569(US,A1)
【文献】 特表2010−539483(JP,A)
【文献】 特開2005−348418(JP,A)
【文献】 特表2014−534426(JP,A)
【文献】 特表2014−534427(JP,A)
【文献】 Andrea Goldsmith[原著]、小林岳彦[監訳],ゴールドスミス ワイヤレス通信工学,丸善株式会社,2007年 8月10日,p.70-72,102-106
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 5/00− 5/14
G01S11/00−11/16
G01S19/00−19/55
H04B 7/24− 7/26
H04W 4/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤレス・ネットワークのノード測位方法であって、前記ネットワークは、アンカー・ノードと呼ばれる、その位置が知られているノードと、通常ノードと呼ばれる、その位置を決定する必要があるノードとを含み、
(a)各ノードは、それぞれ隣接するノードから受信した信号のそれぞれの強度を測定し、ノードiにおける前記隣接するノードは、ノードiによってノードjから受信された信号の強度が所定の検出しきい値(Pth)よりも大きい、前記ネットワークのノードjのセット(H(i))として定義され、
(b)任意の隣接するノードをリンクするチャネルは、異なるチャネル・カテゴリに分類され、
(c)経路損失パラメータは、前記チャネルが分類されるカテゴリにより前記チャネルのそれぞれに割り当てられ、
(d)その隣接するノードのそれぞれから各通常ノードを分割する距離、および当該距離のそれぞれの分散は、その隣接するノードからそれぞれ受信された信号の測定された強度およびその隣接するノードのそれぞれにリンクするチャネルに割り当てられた経路損失パラメータに基づいて推定され、
(e)通常ノードの位置は、その隣接するノードから各通常ノードを分離する距離と、ステップ(d)から推定された同じ距離との間の重み付けされた二次差に依存して、費用関数を最小化することによって推定され、ステップ(d)から推定されるように、前記重みはこれらの距離のそれぞれの分散に反比例し、
第1の試みにおいて、ステップ(b)で、ライン・オブ・サイト・カテゴリに前記チャネルをすべて分類し、ステップ(c)、(d)、(e)が完了した後に、ステップ(e)で推定された通常ノードの位置に依存して、第2の試みにおいて、この第1のチャネル分類を更新する
ノード測位方法。
【請求項2】
チャネル(Cij)に割り当てられた前記経路損失パラメータは、基準距離の経路損失
値(PL0,ij)、経路損失減衰指数(αij)、およびシャドウイング係数(σ2z,ij)であり、前記経路損失値、前記経路損失減衰指数、および前記シャドウイング係数は、前記チャネルが分類されているカテゴリに依存する請求項1に記載のノード測位方法。
【請求項3】
通常ノードおよびその隣接するノードの1つをリンクする各チャネルについて、ステップ(d)で推定された距離と、ステップ(e)で推定された前記通常ノードの位置および前記隣接するノードの位置(アンカー・ノードであるか、または、ステップ(e)で知られる位置)から計算された、精度を上げた推定された距離との間の差を示す最適化誤差が計算される請求項1又は2に記載のノード測位方法。
【請求項4】
チャネルに対する最適化誤差が事前に定めた第1のしきい値(δ)を超える場合、それは非ライン・オブ・サイト・カテゴリに分類され、そうでない場合は、ライン・オブ・サイト・カテゴリに維持される請求項に記載のノード測位方法。
【請求項5】
チャネルに対する前記最適化誤差が、前記第1のしきい値より高い事前に定めた第2のしきい値(Δ)を超える場合、それは重大な減衰を持つ非ライン・オブ・サイトのカテゴリに分類される請求項に記載のノード測位方法。
【請求項6】
前記非ライン・オブ・サイト・カテゴリに分類され、前記最大の最適化誤差を示すチャネルの事前に定めた割合は、重大な減衰を持つ非ライン・オブ・サイトのカテゴリに分類される請求項に記載のノード測位方法。
【請求項7】
ステップ(b)、(c)、(d)、および(e)は反復され、ステップ(c)の経路損失パラメータの割り当ては、ステップ(b)のチャネルの更新された分類を考慮し、各通常ノードをその隣接するノードのそれぞれから分割する距離、およびその分散は、ステップ(c)で割り当てられた前記経路損失パラメータに基づいて、ステップ(d)で推定され、通常ノードの位置は、ステップ(d)で推定された距離および距離の分散で計算された費用関数を最小化することによって取得される請求項5又は6に記載のノード測位方法。
【請求項8】
第1の実行で、前記経路損失パラメータは、各チャネル・カテゴリに対して事前に定めた値でステップ(c)において初期化され、ステップ(d)、(e)が完了した後に、
(f)精度を上げた距離推定は、ステップ(e)で推定された通常ノードの位置に基づいて計算され、
(g)前記精度を上げた距離推定は、各チャネル・カテゴリの更新された経路損失パラメータを推測するために使用され、
ステップ(c)の第2の実行で、前記チャネルは、それらがそれぞれ分類されるカテゴ
リにより前記更新された経路損失パラメータが割り当てられる
請求項1に記載のノード測位方法。
【請求項9】
ステップ(c)、(d)、(e)、(f)、および(g)は反復され、前記更新された経路損失パラメータに基づいて、ステップ(d)で、前記距離および当該距離の分散は、各チャネル・カテゴリに対して推定され、前記通常ノードの位置は、ステップ(e)でちょうど推測された距離および当該距離の分散を用いて計算された費用関数を最小化することによって取得される請求項に記載のノード測位方法。
【請求項10】
ステップ(d)で推定された前記距離および当該距離の分散は、以下のステップ(d’1)および(d’2)を実行することによって修正され、
(d’1)任意の通常ノードとその各隣接するノードとの間の距離推定は、前記通常ノードを装備する受信機の検出しきい値(Pth)、経路損失減衰指数、および前記通常ノードと前記隣接するノードとをリンクするチャネルのシャドウイング係数に依存して系統的バイアス(μd,ij)に対して修正され、
(d’2)前記距離の分散は、前記通常ノードの受信機の検出しきい値(Pth)、経路損失減衰指数、および前記通常ノードと前記隣接するノードとをリンクするチャネルのシャドウイング係数に基づいて修正され、
通常ノードの位置は、その隣接するノードから各通常ノードを分離する距離と、ステップ(d’1)で修正された対応する推定された距離との間の重み付けされた二次差に依存して、前記費用関数を最小化することによってステップ(e)で推定され、前記重みは、ステップ(d’2)で修正された、これらの距離の前記それぞれの推定された分散に反比例する
請求項1に記載のノード測位方法。
【請求項11】
【請求項12】
前記費用関数は、最急降下アルゴリズムによって最小化され、前記ノード位置は、レンジ・フリー方式の測位アルゴリズムによって供給される大まかなノード位置によって最初に初期化される請求項1、9、10、又は11に記載のノード測位方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、ワイヤレス・ネットワークの分野に関し、特にワイヤレス・センサ・ネットワーク(WSN)に関する。本出願は、そのようなネットワークにおいてノードを測位するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ワイヤレス・センサ・ネットワーク(WSN)は、軍事、商業、医療、環境の監視など様々な領域に適用することができ、過去数年にわたって集中的な研究の対象となってきた。ワイヤレス・センサ・ネットワーク(WSN)では、ノード(センサ)によって収集されたデータは、典型的には、1つまたは複数の制御ノードによって収集および処理される。多くの用途(たとえば環境監視)において、データの処理は、これらのデータが収集されたノードのそれぞれの位置を認識することなく実行することができない。
【0003】
WSNにおいてノードの場所を決定するために、従来技術において、多くの測位アルゴリズムが提案されてきた。これらのアルゴリズムは、一般的に、アンカー・ノードまたはランドマークとも呼ばれる、特定のノードの位置は、たとえば、GPS測位によって、それらの座標について先験的な情報を持っていることを想定している。通常ノードとも呼ばれる、他のノードの(絶対)位置は、アンカー・ノードの位置から推測される。
【0004】
基本的に、WSNの測位アルゴリズムは、レンジ・フリー方式およびレンジ・ベース方式という2つのカテゴリに分類される。
【0005】
レンジ・フリー方式の測位アルゴリズムは、接続情報に基づいて通常ノードからアンカー・ノードへの距離を概算する。レンジ・フリー方式の測位アルゴリズムの代表は、DV−Hop、アモルファス、およびセントロイド・アルゴリズムである。たとえば、DV−Hopアルゴリズムの記述は、D.Niculescuら、「Ad Hoc positioning system」、Global Telecommunications Conferenceの議事録に公開、2001年、GLOBECOM’01、サンアントニオ、テキサス、アメリカ合衆国、pp.2926〜2931の記事(非特許文献1)に見つけることができる。
【0006】
基本的に、DVHopでは、各通常ノードは、(ホップの数に関して)十分な数のアンカーへのその最短経路を決定する。同様に、各アンカー・ノードは、その位置を配信し、(ここでもホップの数に関して)残りのアンカー・ノードへのその最短経路を決定する。アンカー・ノードは、他のすべてのアンカー・ノードへのその最短経路を決定すると、距離の比としての平均ホップ・サイズ(1ホップ当たりの平均距離)および他のすべてのアンカー・ノードへのホップの数を計算する。次に、各通常ノードは、このノードへのホップの数に平均ホップ・サイズをかけることによって、アンカー・ノードへの距離の大まかな推定を簡単に取得することができる。3つのアンカー・ノードへの距離が推定されたら、ノードの大まかな位置を従来の三辺測量によって取得することができる。
【0007】
レンジ・ベースの測位アルゴリズムは、隣接するノード間のポイントツーポイントの距離情報を取得し、そこから通常ノードの場所を導き出す。WLSアルゴリズムとして知られているレンジ・ベースの測位アルゴリズムは、M.Laaraiedhら、「Enhancing positioning accuracy through direct position estimators based on hybrid RSS data fusion」、IEEE VTC’09 Springの議事録に公開、バルセロナ、スペインの記事(非特許文献2)に記述されている。このアルゴリズムによると、通常ノードとアンカー・ノードとの間の距離は、受信された信号強度(RSS)の観測量から推定される。
【0008】
通常ノードは、必要最低限の観測量を測定したら、複数のアンカー・ノードへの距離を推定することができる。通常ノードの座標は、過剰決定された等式の組の加重最小二乗(WLS)解として決定され、重み付けは、以下にさらに説明するように、考えられる距離推定器の分散行列によって決定される。
【0009】
図1は、本発明によるノード測位方法を適用できる既知のワイヤレス・センサ・ネットワークを概略的に示す図である。
【0010】
図示するワイヤレス・センサ・ネットワークは、2次元領域に空間的に分散されたN個のノードを含み、既知の場所を用いるN個のアンカー・ノード110であって、それらの1つは、ネットワーク・コントローラとも呼ばれることがある、ネットワーク・コーディネータ(NC)の役割を果たし、他のアンカーは、強化された機能を備えた固定されたルータまたは単純な端末装置(たとえばGPS対応のノード)である、N個のアンカー・ノード110と、N個の通常ノード120とを含む。
【0011】
線130は、隣接するノード間の無線リンクを表している。各ノードは、他のノードによって送信された信号の強度を測定することができると想定すると、ノードの1ホップ隣は、以下のように規定された1組のノードである。
【数1】
ここで、PRX,ijは、ノードiによってノードjから受信された信号の強度を示し、Pthは、受信機の検出しきい値である(ここではすべてのノードで同一であると考える)。ノードは、i=1・・・Nとインデックス付けされ、ここで一般性を失うことなく、N個のアンカー・ノードは、第1のインデックスi=1・・・Nを担うと想定され、通常ノードは、残りのインデックスi=N+1・・・N(N=N+N)を担うと想定される。
【0012】
次に、WLSノードの測位アルゴリズムについて簡単に記述する。
【0013】
2つの隣接するノードiとjとの間の無線リンクを通じた経路損失は、以下のようにモデル化できることが思い出される。
【数2】
ここで、PL=20log10(4πf/c)は、基準距離dで無線信号が経験した経路損失であり、dは、2つのノード間の距離であり、fは、無線信号の搬送周波数であり、cは、光速度であり、αは、経路損失減衰指数である。
【0014】
経路損失減衰指数は、基本的に環境のタイプに依存している。たとえば、自由空間のライン・オブ・サイト(LOS)構成(無線が受信できる距離内)ではα=2だが、遮断された環境ではより高い値を持つ。
【0015】
式(2)は、無線リンクを通じて受信された電力の単純な指数関数的減衰モデルに基づいている。受信された信号の強度は、シャドウイングに対応するゼロ平均のガウス変数により実際に変動する。シャドウイングは、送信機と受信機との間の障害の存在による減衰の変動である。より具体的には、シャドウイングは、これらの障害による、吸収、反射、拡散、および回析を包含する。
【0016】
隣接するノードからノードが受信した信号の強度は、以下のように表すことができる。
【数3】
ここで、zは、分散σを持つ前述のガウスの変数である。シャドウイング係数とも呼ばれる分散αは、ネットワークが位置する環境のタイプに依存している。PRX(d)は、距離dで受信された信号の強度であり、PTXは、送信された信号の電力であり(たとえばdBmで表現)、GTXおよびGRXは、それぞれ送信機および受信機のアンテナ利得である(dBiで表現)。
【0017】
式(3)は、以下のように同等に再公式化することができる。
【数4】
【0018】
ノードiの受信機によって測定された所与の受信された信号強度PRX,ijに対して、ノードiとjとの間の距離dijは、たとえば、メジアン推定器によって(3)から推定することができる。
【数5】
【0019】
集中型のアルゴリズムにおける実施形態では、隣接するノードの間の距離がすべて推定されたら、通常ノードの座標は、WLS最適化を通じて取得することができる。より具体的には、X=(xNa+1...x)およびY=(yNa+1...y)がそれぞれ通常ノードの横座標および縦座標を示す場合、これらのノードの座標は、二次費用関数を最小限にすることによって推定することができる。
【数6】
【数7】
【0020】
【数8】
【0021】
【0022】
従来のWLS測位アルゴリズムは、複数の厳しい制限を受ける。
【0023】
【0024】
【0025】
図2Aは、それぞれ理想的な受信機、および検出しきい値Pthを持つ非理想的な受信機によって測定された、受信された信号強度(RSS)、PRXの確率密度関数を表している。
【0026】
理想的な受信機の受信された信号強度の確率密度関数は、ガウス曲線(210)によって表される一方、非理想的な受信機のもの(220)は同様の形状を持っているが、Pthを下回ると切り捨てられることに注目されるだろう。厳密に言えば、曲線(220)は条件付き確率密度関数(信号の本当の検出で条件付けされた受信された信号強度の確率)を表している。理解のために、および理想的な場合との比較を促進するために、条件付き確率密度は正規化されていない。
【0027】
【0028】
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0029】
【非特許文献1】D.Niculescuら、「Ad Hoc positioning system」、Global Telecommunications Conferenceの議事録、2001年、GLOBECOM’01、サンアントニオ、テキサス、アメリカ合衆国、pp.2926〜2931
【非特許文献2】M.Laaraiedhら、「Enhancing positioning accuracy through direct position estimators based on hybrid RSS data fusion」、IEEE VTC’09 Springの議事録、バルセロナ、スペイン
【非特許文献3】S.Al−Jazzarら、「New algorithms for NLOS identification」、IST Mobile and Wireless Comm. Summit、ドレスデン、2005年
【非特許文献4】K.Yuら、「Statistical NLOS identification based on AOA,TOA and signal strength」、IEEE Trans. on Vehicular Technology、vol.58、No.1、2009年1月1日、pp.274〜286
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0030】
本発明の目的は、環境およびチャネル構成についての情報を必要とせず、しかしながら正確であるWSNネットワークのためのノード測位アルゴリズムを提案することである。
【0031】
本発明の目的は、制限された電力感度を持つ実際の受信機の使用をさらに可能にするノード測位アルゴリズムを提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0032】
本発明の一実施形態は、ワイヤレス・ネットワークのノード測位方法であって、前記ネットワークは、アンカー・ノードと呼ばれる、その位置が知られているノードと、通常ノードと呼ばれる、その位置を決定する必要があるノードとを含み、(a)各ノードは、隣接するノードから受信した信号のそれぞれの強度を測定し、(b)任意の隣接するノードをリンクするチャネルは、異なるチャネル・カテゴリに分類され、(c)経路損失パラメータは、前記チャネルが分類されるカテゴリにより前記チャネルのそれぞれに割り当てられ、(d)その隣接するノードのそれぞれから各通常ノードを分割する距離、および当該距離のそれぞれの分散は、その隣接するノードからそれぞれ受信された信号の測定された強度およびその隣接するノードのそれぞれにリンクするチャネルに割り当てられた経路損失パラメータに基づいて推定され、(e)通常ノードの位置は、その隣接するノードから各通常ノードを分離する距離と、ステップ(d)から推定された同じ距離との間の重み付けされた二次差に依存して、費用関数を最小化することによって推定され、ステップ(d)から推定されるように、前記重みはこれらの距離のそれぞれの分散に反比例するノード測位方法である。
【0033】
ステップ(b)で、前記チャネルは、ライン・オブ・サイト(LOS)、非ライン・オブ・サイト(NLOS)、および重大な減衰を持つ非ライン・オブ・サイト(NLOS)というカテゴリに分類されてもよい。
【0034】
チャネル(Cij)に割り当てられた前記経路損失パラメータは、基準距離の経路損失値(PL0,ij)、経路損失減衰指数(αij)、およびシャドウイング係数(σij)であり、前記経路損失値、前記経路損失減衰指数、および前記シャドウイング係数は、前記チャネルが分類されていてもよい。
【0035】
ステップ(b)で、前記チャネルは、前記チャネルから受信された信号のパワー・エンベロープの統計に基づいて分類されてもよい。
【0036】
ステップ(b)で、前記チャネルは、前記チャネルから受信された信号のパワー・エンベロープの交差レートおよび/または平均フェード期間に基づいて分類されてもよい。
【0037】
第1の試みにおいて、ステップ(b)で、ライン・オブ・サイト・カテゴリに前記チャネルをすべて分類し、ステップ(c)、(d)、(e)が完了した後に、ステップ(e)で推定された通常ノードの位置に依存して、第2の試みにおいて、この第1のチャネル分類を更新してもよい。
【0038】
通常ノードおよびその隣接するノードの1つをリンクする各チャネルについて、ステップ(d)で推定された距離と、ステップ(e)で推定された前記通常ノードの位置および前記隣接するノードの位置(アンカー・ノードであるか、または、ステップ(e)で知られる位置)から計算された、精度を上げた推定された距離との間の差を示す最適化誤差が計算されてもよい。
【0039】
チャネルに対する最適化誤差が事前に定めた第1のしきい値(δ)を超える場合、それは非ライン・オブ・サイト・カテゴリに分類され、そうでない場合は、ライン・オブ・サイト・カテゴリに維持されてもよい。
【0040】
チャネルに対する前記最適化誤差が、前記第1のしきい値より高い事前に定めた第2のしきい値(Δ)を超える場合、それは重大な減衰を持つ非ライン・オブ・サイトのカテゴリに分類されてもよい。
【0041】
前記非ライン・オブ・サイト・カテゴリに分類され、前記最大の最適化誤差を示すチャネルの事前に定めた割合は、重大な減衰を持つ非ライン・オブ・サイトのカテゴリに分類されてもよい。
【0042】
ステップ(b)、(c)、(d)、および(e)は反復され、ステップ(c)の経路損失パラメータの割り当ては、ステップ(b)のチャネルの更新された分類を考慮し、各通常ノードをその隣接するノードのそれぞれから分割する距離、およびその分散は、ステップ(c)で割り当てられた前記経路損失パラメータに基づいて、ステップ(d)で推定され、通常ノードの位置は、ステップ(d)で推定された距離および距離の分散で計算された費用関数を最小化することによって取得されてもよい。
【0043】
第1の実行で、前記経路損失パラメータは、各チャネル・カテゴリに対して事前に定めた値でステップ(c)において初期化され、ステップ(d)、(e)が完了した後に、(f)精度を上げた距離推定は、ステップ(e)で推定された通常ノードの位置に基づいて計算され、(g)前記精度を上げた距離推定は、各チャネル・カテゴリの更新された経路損失パラメータを推測するために使用され、ステップ(c)の第2の実行で、前記チャネルは、それらがそれぞれ分類されるカテゴリにより前記更新された経路損失パラメータが割り当てられてもよい。
【0044】
ステップ(c)、(d)、(e)、(f)、および(g)は反復され、前記更新された経路損失パラメータに基づいて、ステップ(d)で、前記距離および当該距離の分散は、各チャネル・カテゴリに対して推定され、前記通常ノードの位置は、ステップ(e)でちょうど推測された距離および当該距離の分散を用いて計算された費用関数を最小化することによって取得されてもよい。
【0045】
ステップ(d)で推定された前記距離および当該距離の分散は、以下のステップ(d’1)および(d’2)を実行することによって修正され、(d’1)任意の通常ノードとその各隣接するノードとの間の距離推定は、前記通常ノードを装備する受信機の検出しきい値(Pth)、経路損失減衰指数、および前記通常ノードと前記隣接するノードとをリンクするチャネルのシャドウイング係数に依存して系統的バイアス(μd,ij)に対して修正され、(d’2)前記距離の分散は、前記通常ノードの受信機の検出しきい値(Pth)、経路損失減衰指数、および前記通常ノードと前記隣接するノードとをリンクするチャネルのシャドウイング係数に基づいて修正され、通常ノードの位置は、その隣接するノードから各通常ノードを分離する距離と、ステップ(d’1)で修正された対応する推定された距離との間の重み付けされた二次差に依存して、前記費用関数を最小化することによってステップ(e)で推定され、前記重みは、ステップ(d’2)で修正された、これらの距離の前記それぞれの推定された分散に反比例してもよい。
【0046】
【0047】
前記費用関数は、最急降下アルゴリズムによって最小化され、前記ノード位置は、レンジ・フリー方式の測位アルゴリズムによって供給される大まかなノード位置によって最初に初期化されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0048】
図1】アンカー・ノードおよび通常ノードを持つワイヤレス・センサ・ネットワークを概略的に示す図である。
図2A】理想的および非理想的な受信機の受信された信号強度(RSS)の確率分布を概略的に示す図である。
図2B】理想的および非理想的な受信機の距離推定誤差の確率分布を概略的に示す図である。
図3】本発明の第1の実施形態によるワイヤレス・ネットワークのノード測位の方法を概略的に示す図である。
図4】本実施形態の変形形態による、ワイヤレス・ネットワークのノード測位の方法を概略的に示す図である。
図5】本発明の第2の実施形態による、ワイヤレス・ネットワークのノード測位の方法を概略的に示す図である。
図6】本発明の第3の実施形態による、ワイヤレス・ネットワークのノード測位の方法を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
本発明は、限定を目的としない以下の実施形態の記述及び図面からより理解されるだろう。
【0050】
以下において、たとえば、アンカー・ノード(それぞれの位置が知られている)および通常ノード(それぞれの位置を決定する必要がある)を含むWSNネットワークなど、ワイヤレス・ネットワークについて考える。たとえば、WSNネットワークは、IEEE802.15.4標準に準拠してもよい。
【0051】
各通常ノードは、制限された感度を持つ受信機を装備している。一般化の偏見なく、以下において、すべての受信機が同じRSS検出しきい値Pthを持っていると想定する。
【0052】
本発明の基準の考え方は、チャネル構成分類器によって監視されるノード測位アルゴリズムを提案することである。チャネル構成によって、ここで、とりわけライン・オブ・サイト(LOS)または非ライン・オブ・サイト(NLOS)を意味する。NLOS(または重大な減衰を持つNLOS)と示される他のチャネル構成も考察することができ、それは、伝播チャネルが障害物による激しい減衰(ディープ・フェード:deep fade)を示すNLOS状況を示している。
【0053】
図3は、本発明の第1の実施形態によるノード測位アルゴリズムを図で表している。
【0054】
ネットワーク検出が完了した後、ノード測位アルゴリズムが実行される。好ましくは、ノードはクラスタへとグループ化され、ノード測位アルゴリズムは、各クラスタに対して個々に実行される。一般性を失うことなく、以下において、ネットワークは1つだけのクラスタを含むことを想定する。
【0055】
ステップ310で、ネットワークの各通常ノードiは、それがその隣接ノードjからそれぞれ受信する信号のそれぞれの受信された信号強度(RSS)を測定する。
【0056】
ステップ320で、隣接するノードをリンクする伝播チャネルは、異なるチャネル・カテゴリに分類される。たとえば、チャネルは、さらに下に記述するようにライン・オブ・サイト(LOS)および非ライン・オブ・サイト(NLOS)カテゴリに分類することができる。好ましくは、チャネルは、上に規定するように、LOS、NLOS、およびNLOSという3つのカテゴリに分類される。本発明の範囲から逸脱することなく、追加的なカテゴリを考察することができる。
【0057】
【0058】
【0059】
【0060】
【数9】
である。PRX,ijは、ノードiによってノードjから受信された信号のRSSであり、PL0,ijは、チャネルのカテゴリに依存して、基準距離d0,ij(ijによるインデックスは、ここでは、たとえば、d0,ij=d0,LOS、d0,ij=d0,NLOS、またはd0,ij=d0,NLOSなど、異なるチャネル・カテゴリに対して異なる基準距離が選択される場合に対応する)、αij=αLOS、αij=αNLOS、またはαij=αNLOSの経路損失データである。
【0061】
各チャネルに対して、距離推定器の分散は、以下の概算によって得られる。
【数10】
【0062】
ステップ350で、通常ノードの位置は、重み付き二次費用関数を最小化することによって推定される。
【数11】
【0063】
【0064】
【0065】
二次費用関数(11)の最小化は、たとえば、最急降下法のアルゴリズムを使用することによって、様々な方法で達成することができる。このアルゴリズムは、通常ノードの座標の最初の推測によって初期化することができる。有利なことに、上述のDV−hopなどレンジ・フリー方式のノード測位方法は、この最初の推測を提供することができる。
【0066】
【0067】
ステップ320のチャネル分類は、様々な方法で取得することができる。
【0068】
たとえば、チャネル分類は、受信された信号のパワー・エンベロープ(power envelope)の統計的性質に基づくことができる。
【0069】
LOS経路について、パワー・エンベロープはライス分布(Ricean distribution)を示すが、NLOS経路については、パワー・エンベロープはレイリー分布(Rayleigh distribution)を示す。1つの分散または他方への適合は、たとえば、コルモゴロフ−スミルノフ(Kolgomorov−Smirnov)検定を使用することによって決定することができる。
【0070】
あるいは、LOS/NLOSの区別は、パワー・エンベロープの交差レート(つまりパワー・エンベロープが所定レベルを横断するレート)、および/または平均フェード期間(つまり、パワー・エンベロープが、どれくらいの時間、所定レベルより下に維持されるか)に基づくことができる。
【0071】
前述のチャネル分類法の詳細な説明は、参照により本明細書に組み込まれているS.Al−Jazzarら、「New algorithms for NLOS identification」、IST Mobile and Wireless Comm. Summit、ドレスデン、2005年に公開された記事(非特許文献3)で見つけることができる。
【0072】
他の変形例によると、チャネル分類は、受信された信号(RSS)の強度の統計に基づくことができる。2つのチャネル分類法の詳細な説明は、参照によって本明細書に組み込まれている、K.Yuら、「Statistical NLOS identification based on AOA,TOA and signal strength」、IEEE Trans. on Vehicular Technology、vol.58、No.1、2009年1月1日、pp.274〜286に公開されている記事(非特許文献4)に見つけることができる。
【0073】
図4に示した好ましい変形例によると、チャネル分類は、WLS最適化誤差を利用することによって得られる。
【0074】
図4では、ステップ410、430から450は、図3の310、330から350と同一であるため、それらの記述はここでは繰り返さない。
【0075】
しかし、第1の変形例と比べると、チャネル分類手段420は、第1の試みでLOSカテゴリにチャネルを系統的に分類する。言い換えると、すべてのCijは最初、第1の実行でLOSであると想定される。
【0076】
【数12】
は、ノードの位置のWLS最適化に基づいて、ノードiおよびjを分割する距離の精度を上げた推定である。ここでも、iまたはjがアンカー・ノードである場合、WLS最適化誤差の計算のために式(12)の推定の代わりに、その実際の座標が使用される。
【0077】
費用関数に寄与する最適化誤差だけが実際に計算されることを理解されるだろう(隣接行列要素Iij≠0のもの、つまり、PRX,ij>Pthである少なくとも1つの通常ノードを含むもの)。
【0078】
これらの最適化誤差は、第2の実行で、以下のようにチャネルを分類するステップ420でチャネル分類手段に提供される。
【0079】
【0080】
そうでなければ、第1の推測は無効となり、CijはNLOSとして分類される。
【0081】
実際には、δ=0.25mの値は、典型的な50m*50mの状況においてIEEE802.15.4準拠のネットワークに受け入れ可能であることが分かっている。
【0082】
【0083】
【0084】
チャネル分類、経路損失に基づく距離推定、およびWLS最適化の協調プロセスは反復できることを理解されるだろう。より正確には、チャネル分類は、より正確な測位から利益を得て、WLS最適化は逆に、より正確なチャネル分類から利益を得るだろう。停止基準が満たされるまで、プロセスが反復される。停止基準は、たとえば、次式の連続する位置推定の間の距離に基づくことができる。
【数13】
ここで、εは、事前に定めた正の数であり、nは、最新の反復ステップである。あるいは、または補助的に、事前に定めた反復数に到達したら、反復プロセスは停止することができる。
【0085】
既に上に示したように、好ましい変形例のチャネル分類手段は、すべてのチャネルがLOSであることを最初に想定する。あるいは、しかし、たとえば、上に記述した分類法の1つによって提供されるように、チャネル分類が利用可能な場合(パワー・エンベロープの統計またはRSSI測定に基づく)、チャネル分類手段は、この利用可能な分類から開始することができる。所与のチャネルについて最初の推測が誤っていると証明された場合(たとえば、チャネルがLOSとして分類されたときに最適化誤差がδより大きい場合)、次に、チャネルは、他のカテゴリに一時的に分類することができる。
【0086】
【0087】
図5は、本発明の第2の実施形態によるノード測位アルゴリズムを示している。
【0088】
この実施形態では、チャネルは、上に記述した第1の変形例のようにそれらのCIRの統計により分類されるか、またはチャネル分類は個別かつ独立した分類手段によって提供されることが想定される。
【0089】
【0090】
ステップ510、520、540、550は、ステップ310、320、340、340と同一であるため、それらの記述は省略する。
【0091】
ステップ530で、LOS、NLOS、およびNLOSの経路損失パラメータは、事前に定めた値で初期化される。
【0092】
【0093】
【0094】
次に、経路損失パラメータは、精度を上げた距離推定に基づいて570で推定される。より具体的には、チャネルは、LOS、NLOS、およびNLOSというチャネルのグループへとクラスタ分けされ、各グループに対して、式(3)により1組の等式が解かれる。たとえば、LOSチャネルのグループについて、αLOS、PL0,LOSは、以下を解くことによって推定することができる。
【数14】
【0095】
【0096】
ステップ570で推定された経路損失パラメータは、ステップ540の第2の距離推定およびステップ550のノード測位に使用することができる。実際に、ノード測位および経路損失パラメータ推定の協調プロセスは反復することができる。つまり、より正確な測位により、より正確なパラメータが得られ、逆もまた同様である。
【0097】
事前に定めた停止基準が満たされるまでプロセスが反復される。停止条件式(13)に加えて、経路損失パラメータの連続する推定に関する他の条件は、以下などを考察することができる。
【数15】
【0098】
図6は、本発明の第3の実施形態によるノード測位アルゴリズムを示している。
【0099】
第3の実施形態は、ここでは受信機の感度制限の効果が考慮されるという点で第1の実施形態とは異なる。
【0100】
より具体的には、ステップ610から640は、ステップ310から340とそれぞれ同一である。
【0101】
ステップ645では、しかし、距離推定の系統的バイアスおよび感度制限によって引き起こされた距離分散項の変化が修正される。
【0102】
【0103】
【数16】
【数17】
【0104】
【数18】
【0105】
式(16)および(17)は、距離dのパラメータ関数であることに注目するべきである。これらのパラメータ関数は、dの様々な値について事前に計算することができ、その結果はルックアップ・テーブルに格納することができる。
【0106】
【数19】
【0107】
【0108】
ステップ650で、通常ノードの位置は、修正された費用関数を最小化することによって推定される。
【数20】
【0109】
以前の実施形態に関して、修正された費用関数(20)の最小化は、たとえば、最急降下アルゴリズムを使用することによって反復的に、様々な方法で達成することができる。
【0110】
【0111】
本実施形態は、また、第1の実施形態に関して記述された様々なチャネル分類と組み合わせられることを当業者は理解されるだろう。たとえば、ステップ620のチャネル分類は、修正された費用関数(20)の最適化誤差に基づいて実行することができる。チャネル分類およびノード測位の協調プロセスは、また、事前に定めた停止基準が満たされるまで、図4に関して記述したのと同じ方法で反復することができる。
【0112】
さらに、本実施形態は、また、図5に関して記述したチャネル・パラメータ・ブラインド推定と組み合わせることができる。より正確には、通常ノードの間の距離の精度を上げた推定は、式(12)と同様に、ステップ650で得られた位置によって得ることができる。
【数21】
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6