特許第6298439号(P6298439)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6298439容易に成形可能な平鋼製品の製造方法及び該平鋼製品から部品を製造する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6298439
(24)【登録日】2018年3月2日
(45)【発行日】2018年3月20日
(54)【発明の名称】容易に成形可能な平鋼製品の製造方法及び該平鋼製品から部品を製造する方法
(51)【国際特許分類】
   C21D 9/46 20060101AFI20180312BHJP
   C21D 1/26 20060101ALI20180312BHJP
   C21D 1/76 20060101ALI20180312BHJP
   C22C 38/00 20060101ALN20180312BHJP
   C22C 38/38 20060101ALN20180312BHJP
【FI】
   C21D9/46 W
   C21D1/26 E
   C21D1/76 U
   !C22C38/00 301S
   !C22C38/00 301T
   !C22C38/00 301W
   !C22C38/38
【請求項の数】8
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-235919(P2015-235919)
(22)【出願日】2015年12月2日
(62)【分割の表示】特願2012-542467(P2012-542467)の分割
【原出願日】2010年12月3日
(65)【公開番号】特開2016-117948(P2016-117948A)
(43)【公開日】2016年6月30日
【審査請求日】2015年12月24日
(31)【優先権主張番号】102009044861.6
(32)【優先日】2009年12月10日
(33)【優先権主張国】DE
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】510041496
【氏名又は名称】ティッセンクルップ スチール ヨーロッパ アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】ThyssenKrupp Steel Europe AG
(74)【代理人】
【識別番号】100095614
【弁理士】
【氏名又は名称】越川 隆夫
(72)【発明者】
【氏名】ヴィルヘルム ヴァルネッケン
(72)【発明者】
【氏名】マンフレート モイラー
(72)【発明者】
【氏名】イェンス コンドラタック
(72)【発明者】
【氏名】マルク ブルメナウ
(72)【発明者】
【氏名】マーチン ノルデン
(72)【発明者】
【氏名】セモ ウドケ
【審査官】 鈴木 葉子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−070328(JP,A)
【文献】 特開2002−088459(JP,A)
【文献】 特開平11−199991(JP,A)
【文献】 特開2005−273001(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/025042(WO,A1)
【文献】 特開平10−130782(JP,A)
【文献】 特開昭60−077956(JP,A)
【文献】 特開2000−290730(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/024472(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C21D 9/46− 9/48
C21D 8/00− 8/10
C21D 1/02− 1/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
部品の形成方法であって、0.1〜0.4重量%のC含量を有する容易に成形可能な平鋼製品を製造する作業ステップa)と、当該作業ステップa)において得られた前記平鋼製品をそのAc1温度より高い加熱温度に加熱し、引き続き熱間成形して前記部品を形成する作業ステップb)とを有し、
前記作業ステップa)においては、前記平鋼製品は連続炉内で焼きなまし処理に供され、前記焼きなまし処理を0.1〜25体積%のH、HOと、残余のN及び残りとして技術的に不可避の不純物とを含み、かつ−20℃〜+60℃の露点を有する焼きなまし雰囲気下で行い、この焼きなまし雰囲気の関係HO/Hが最大0.957であり、かつ前記焼きなまし処理の過程で、前記平鋼製品を600〜1100℃の保持温度に加熱し、この温度で10〜360秒の保持時間、前記平鋼製品を保持し、その結果、前記焼きなまし処理後に得られる前記平鋼製品は、10〜200μmの厚さであり、かつその自由表面に隣接する延性脱炭エッジ層を有し、前記焼きなまし処理における脱炭により得られる前記延性脱炭エッジ層(R)の硬度が、前記平鋼製品のコア領域(K)の硬度の最大75%であることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記焼きなまし処理後に前記平鋼製品を金属保護層で被覆することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記焼きなまし処理後に連続的に行われる操作順序で前記平鋼製品を熱浸漬被覆することを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記焼きなまし処理後に前記平鋼製品を高温被覆することを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記高温被覆前に前記平鋼製品の表面の酸化を行うことを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記平鋼製品を金属/有機コーティングで被覆することを特徴とする請求項2又は3に記載の方法。
【請求項7】
前記平鋼製品を金属/無機コーティングで被覆することを特徴とする請求項2又は3に記載の方法。
【請求項8】
前記平鋼製品のC含量が0.38重量%未満であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容易に成形可能であり、かつ0.1〜0.4重量%のC含量を有する平鋼製品の製造方法であって、平鋼製品を連続炉内で焼きなまし処理に供する方法に関する。
【0002】
本発明はさらに、それに応じて製造される平鋼製品から部品を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
この場合に問題のタイプの平鋼製品は、特に自動車用の車体及びシャーシ部品の製造に必要とされる。この場合、平鋼製品にはそれらの成形特性に関して極端に高い要求が置かれる。これは熱間成形性にも冷間成形性にも関係がある。
【0004】
高強度又は極高強度の鋼部品を形成するための亜鉛めっき平鋼製品の熱間成形が特に問題である。このような鋼部品では、一般的に亜鉛又は亜鉛合金をベースとする保護コーティングが十分な陰極防食を与える。
【0005】
しかし、金属防食コーティングが設けられている鋼板を、熱間成形及びその後又は熱間成形と共に行われことがある硬化操作のために保護コーティングの金属の融点より高い温度に加熱しなければならない場合、いわゆる「液体金属脆化」の危険がある。この鋼の脆化は、成形中にそれぞれの平鋼製品の表面に形成されるノッチにコーティングの溶融金属が入るときに起こる。液体金属は鋼基板に達すると、そこで粒界のため沈殿し、ひいては利用できる最大引張応力及び圧縮応力を減じる。
【0006】
限られた延性のみを有し、結果としてそれらが形成されるときに表面近傍にクラックを形成する傾向がある、より高い強度の鋼及び高強度鋼による液体金属脆化の危険が特に重要であることが分かっている。
【0007】
特許文献1から、脱炭処理を利用して鋼板の曲げ特性を改善できることが一般的に知られており、これを利用して、表面の近傍に、厚さが20〜100μmであり、かつ鋼板のコア領域に比べてC含量が少ないエッジ層が生成される。しかし、この従来技術におけるこの手段は、金属保護コーティングが施されている鋼板とは無関係であり、C含量が少なくとも0.1重量%のより高い強度の鋼又は高強度鋼にも関係がない。
【0008】
炭素含有鋼合金の脱炭の傾向は、放出される炭素の酸化挙動に起因する。格子内で放出される炭素は、その大きな可動性のため、熱処理中に噴散に向かう傾向を有する。脱炭は、同時スケーリングの有無にかかわらず、熱処理が行われる気相のC−ポテンシャルに応じて起こるので、鋼の製造及び加工における最も古い問題の一つである。
【0009】
原則として、脱炭は、以下の反応プロセスに従うブードア平衡反応(Boudouard equilibrium reactions, Boudouard-Gleichgewichtstreaktionen(英、独訳))に従って遂行される。
[C]+1/2O<−>CO
[C]+O<−>CO
[C]+CO<−>2CO
[C]+H<−>CH
ここで、[C]=放出される炭素
【0010】
水素、窒素及び水蒸気を含む典型的な保護ガス雰囲気を有する商業的な焼きなまし設備では、以下の平衡反応が起こる。
+1/2O<−>H
【0011】
水を含むガス雰囲気は、炭素に対して特に反応性であることが分かっている。従って、実際面で特に重要な下記のさらなる不均一系平衡反応が上記脱炭反応を補う。
[C]+HO<−>CO+H
【0012】
選択的様式で使用すると、脱炭を利用して決定される鋼製品の特性を改善することができる。
【0013】
この知識を実際面で有効に利用するため、特許文献2で「オープンコイル」法が提案されている。この方法では、硬磨(hard-rolled, walzhartes(英、独訳))冷間圧延ストリップを非常に緩く巻いてコイルを形成するので、コイルの個々の巻層間にいずれの場合も自由空間がもたらされる。フード型炉内では、その後の焼きなまし処理中に焼きなましガスがこの自由空間を通って流れ、ひいては均一様式で鋼の表面全体の上を流れるので、加工鋼ストリップの全長にわたって均一な脱炭という結果が得られる。しかしながら、この様式で行われる焼きなまし処理には、数時間かかる。
【0014】
連続炉内で還元性焼きなまし雰囲気下にて鋼ストリップの脱炭焼きなましをより経済的に実施できる方法が特許文献3に記載されている。この公知方法によれば、連続炉から出るときに鋼ストリップ内の炭素含量が0.01%未満になるまで十分に長い焼きなまし時間にわたって、780℃未満の焼きなまし温度でそれぞれの鋼ストリップを焼きなましする。引き続き、鋼ストリップにその耐食性を改善するため熱浸漬被覆(hot-dip coating, Schmelztauchbeschichtung(英、独訳))を施すことができる。このように製造された鋼板は特に良い成形性を有する。しかしながら、その強度値は、自動車の車体用部品を形成することを意図した平鋼製品に最近定期的に置かれている要求を満たさない。
【0015】
特許文献4から認められる示唆も「オープンコイル」法に言及しており、これによれば、工具鋼を構成し、特に切削工具などの製造を目的とし、かつ少なくとも0.4重量%のC含量を有する鋼ストリップが高レベルの硬度と良い成形性を兼ね備えるためにエッジ層の脱炭が提案されている。脱炭されたエッジ層の領域内では、それに応じて加工された鋼ストリップの成形性が基材に比べて高まり、これによって、高い外部荷重による脆性破壊の危険が減少する。
【0016】
特許文献4で考慮された用途とは対照的に、当業者は、高強度部品の製造を目的とする高強度鋼及び極高強度鋼では通常、焼きなましによって起こる脱炭又はエッジ脱炭をできれば回避しようとする。一般的に、脱炭は、これらの用途にとって重要な機械的材料特性に悪影響を及ぼすと考えられている。
【0017】
この概念に従い、特許文献5では焼き入れ合金元素の選択的酸化を行うことによって、成形に有利な延性エッジ層を鋼板上で作り出す方法が提案されている。この場合、いずれの脱炭も選択的に打ち消される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】特開昭60−159120号公報(JP 60−159120 A)
【特許文献2】英国特許第1189464号明細書(GB 1 189 464)
【特許文献3】独国特許第2105218号明細書(DE−OS 2 105 218)
【特許文献4】国際公開第2009/024472(A1)号(WO 2009/024472 A1)
【特許文献5】独国特許出願公開第102007061489(A1)号明細書(DE 102007061489 A1)
【非特許文献】
【0019】
【非特許文献1】VDI(Verein Deutscher Ingenieur:ドイツ技術者協会)辞典 材料技術[VDIレキシコンオブマテリアルズサイエンス(VDI Lexicon of Materials Science)]、フーベルト グレーフェン編、VDI出版 有限会社、デュッセルドルフ 1993年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
上で説明した従来技術の背景に対して、本発明の目的は、容易に成形可能な高強度又は極高強度鋼製品を経済的な様式で製造できる方法を提示することであった。さらに、熱間成形又は冷間成形に特に適した平鋼製品から部品を製造する方法を提示することを目的とした。
【課題を解決するための手段】
【0021】
製造方法に関して、上記目的は、請求項1に示す操作工程を平鋼製品の製造中に行うという点で本発明によって達成される。
【0023】
部品の製造方法に関して、上記目的は、請求項に示す方法により、本発明に従って最終的に達成される。
【0024】
本発明の有利な構成は、独立請求項に従属する請求項に示され、これについては以下に説明する。
【0025】
0.1〜0.4重量%、特に0.4重量%未満のC含量を有する容易に成形可能な平鋼製品を製造するための本発明の方法は、関連平鋼製品を連続炉内でエッジ層が脱炭される焼きなまし処理に供するという概念に基づいている。この目的を達成するため、本発明によれば、焼きなまし処理は、0.1〜25体積%のH、HOと、残余のN及び技術的に不可避の不純物とを含む焼きなまし雰囲気下で行われる。焼きなまし雰囲気の露点は、−20℃〜+60℃の範囲である。同時に、焼きなまし雰囲気内では、最適の脱炭効果を達成するため、関係HO/Hが最大0.957に調整されるように意図される。
【0026】
焼きなまし処理の過程で、平鋼製品は本発明に従ってさらに600〜1100℃の保持温度に加熱され、この温度で10〜360秒の保持時間、本発明に従って構成される雰囲気下で平鋼製品が保持される。
【0027】
結果として、本発明の焼きなまし処理後に得られる平鋼製品は、10〜200μmの厚さであり、かつその自由表面に隣接する延性エッジ層を有し、このエッジ層は、エッジ層で覆われている平鋼製品の内部コア層の延性より大きい延性を有する。従来技術に存する信念とは対照的に、本発明は、0.1〜0.4重量%の炭素、特に0.38重量%までの炭素を含有する鋼板において、鋼材料のエッジ脱炭をもたらす焼きなまし処理を利用して、高強度と良い成形性を含む特性の所望の組合せを調整することに成功する。このエッジ脱炭が表面近傍の構造領域の延性化をもたらし、この延性化が、そうでなければ成形によって生じるクラックのせいで該材料が破壊するのに対抗する。
【0028】
結果として、本発明は、冷間成形又は熱間成形用に提供される硬磨平鋼製品、すなわち、鋼ストリップ又は鋼板のエッジ脱炭を、焼きなまし処理後に得られる平鋼製品が、表面近傍の典型的にフェライトであり、かつ第1結晶粒層に固有の厚さを有する延性エッジ領域を有し、かつ低温状態の成形でも高温状態の成形でも鋼製品の成形特性を改善するような方法で行うという概念に基づいている。特に、その成形の場合に鋼製品の表面におけるクラック又はノッチの形成の危険が最小限に抑えられる。
【0029】
表面近傍の構造のエッジ脱炭は、その後の防食層適用のための鋼表面の焼きなまし状態調節と同時に起こり得るが、それがデカップル(decoupled, entkoppelten(英、独訳))反応機構を有することは、本発明の方法にとって重要である。
【0030】
例えば、表面近傍の構造領域のエッジ脱炭は以下の関係に従って起こる。
[C]+HO<−>CO+H
ここで、[C]=放出される炭素
一方、表面の酸化/還元反応は次のように起こる。
x[Me]+yHO<−>[Me]+yH
ここで、[Me]=それぞれの金属
x、y=化学量論係数
【0031】
驚くべきことに、本発明により提示される焼きなまし条件を適用すると、非常に短い状態調節時間で所望深さの脱炭を達成することもできる。例えば、本発明の方法は、連続炉を用いて特に経済的に実施できるという点で優れている。このため、例えば、鋼ストリップを連続的に移動させながら熱処理し、かつ防食コーティングで熱浸漬被覆する高温被覆導入(hot coating installation, Feuerbeschichtungsanlagen)(英、独訳))の場合のように、ハイバンドスピードを必要とする連続作動製造プロセスに本発明の方法を導入することができる。
【0032】
従って、本発明の特に有利な構成は、焼きなまし処理後に金属保護層で被覆される平鋼製品を提供する。本発明の方法のこの変形では、本発明は、液体金属脆化を受けやすい温度範囲を平鋼製品の表面近傍の領域の選択的改変によって移すことができ、結果として該温度範囲が高温成形に典型的な温度範囲と重ならないという点で、液体金属脆化の危険を最小限にできるという認識を特に利用する。
【0033】
本発明の製造方法がその後の熱浸漬被覆に先行する場合、本発明に従って行われる焼きなまし処理は、不均一の焼きなましガス/金属反応を利用して、表面近傍の炭素噴散を制御することによって、下流の表面改良のための表面状態調節と同時に行われる。
【0034】
高温被覆導入に本発明の方法を使用するのが特に有利である。この場合、焼きなまし処理がエッジ脱炭、表面状態調節及び基材の再結晶化を含むことができ、かつ焼きなまし処理後にインラインで連続法順序で引き続き熱浸漬被覆を行えるからである。
【0035】
本発明に従って製造される平鋼製品の表面改良の過程では、この改良は、好ましくは熱浸漬被覆によって行われ、コーティング系自体は既知であり、鋼基板に適用し得るZn、Al、Zn−Al、Zn−Mg、Zn−Ni、Al−Mg、Al−Si又はZn−Al−Mgをベースとする。
【0036】
インラインで行われる熱浸漬改良の代わり又はそれに加えて、本発明の様式で連続焼きなまし系内に延性脱炭エッジ層が設けられた鋼ストリップは、例えば、Zn、Zn−Ni又はZn−Feコーティングによる電解で、或いはPVD又はCVD沈着によって、或いは別の金属/有機又は金属/無機コーティング法によって被覆されるという点において、引き続き金属、金属/無機又は金属/有機コーティングを受けることができる。
【0037】
結果として、実際面で特に重要な方法の変形によれば、本発明は、焼きなまし処理に続くように連続して行われる操作工程で熱浸漬被覆される平鋼製品を提供する。熱浸漬被覆は、高温被覆、特に高温亜鉛めっきとしてそれ自体既知のやり方で行える。被覆の鋼基板への最適な接着を確実にするため、高温被覆前に平鋼製品の表面の酸化を行ってよい。
【0038】
機械的特性をさらに最適化するため、従来法で行われる過剰の時効硬化処理(ageing treatment, Ueberalterungsbehandlung(英、独訳))を本発明の焼きなまし処理後に行ってよい。
【0039】
上記説明に従い、本発明の方法を利用して製造される平鋼製品は、0.1〜0.4重量%のC含量及び10〜200μm厚さの延性エッジ層を有し、かつこの層は平鋼製品のコア層に比べて大きい延性を有する。
【0040】
この延性層の厚さは、DIN EN ISO 3887に示されている手順に準拠して従来どおりに定められる。従って、全脱炭深さは、表面から、炭素含量が影響を受けないコア領域の炭素含量に相当する位置までの間隔である。そのため、表面近傍領域の脱炭エッジ層領域内では、硬度がコア領域の硬度の75%以下、すなわち、Hv(脱炭領域)/Hv(コア領域)=3/4以下に調整される。
【0041】
本発明の平鋼製品の延性エッジ層は、典型的に、その自由表面に少なくとも近いフェライト構造により区別される。このことは、本発明により脱炭されたエッジ層の領域内で表面近傍のフェライト構造が調整される多相基材に当てはまり、本発明の脱炭が表面近傍のフェライトの延性化をもたらす単相の典型的にフェライト鋼にも同様に当てはまる。
【0042】
本発明により製造される平鋼製品は、冷間成形及び熱間成形に等しく適しており、金属保護層、特に亜鉛めっき(zinc-coating, Verzinkung(英、独訳))が設けられる鋼板又は鋼ストリップの熱間成形で特にその特定の利点が明白になる。冷間成形用に本発明に従って提供される鋼は典型的に500〜1500MPaの引張強度を有する。熱間成形のためには、本発明に従って熱間成形後に900〜200MPaの引張強度を有する鋼を使用することができる。
【0043】
本発明の平鋼製品を熱間成形により成形して部品を形成することを目的とする場合、本発明の平鋼製品をまず本発明に従ってそのAc1温度より高い加熱温度に加熱し、引き続き熱間成形して部品を形成することができる。
【0044】
例えば、硬化操作を熱間成形後に行う予定である場合、本発明の平鋼製品を平鋼製品のAc3温度に少なくとも等しい加熱温度に容易に加熱することもできる。このような高い加熱温度でさえ、その融点が該加熱温度以下である金属被覆が平鋼製品に設けられていれば、本発明に従って製造される平鋼製品においては脆化の危険も最小限に抑えられる。本発明に従ってエッジ層脱炭によって得られるエッジ層の延性は、クラック形成を防止し、これによって確実に、被覆の溶融金属が鋼基板のコア領域に導入されないようにする。
【0045】
結果として、本発明の方法は、特に高強度/極高強度平鋼製品の成形特性を改善し、平鋼製品は冷間成形でも熱間成形でも表面が改良され、金属保護コーティングで被覆された本発明の平鋼製品は特に有利な様式で熱間成形に適している。このことは、本発明により、エッジ脱炭(これによって延性の典型的にフェライトエッジ層が形成される)が連続炉内で選択的焼きなましガス/金属反応によって誘導されるという点で可能になる。これが、固体の脆性ベース鋼材を成形操作中に表面から広がるクラックの進行から保護する。
【0046】
以下、実施形態を参照して本発明をさらに詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0047】
図1】本発明に従ってエッジ層で脱炭された鋼サンプルの基底縦断面図を示す。
図2】比較用の従来の焼きなましサンプルの基底縦断面図を示す。
図3図1及び2に示したサンプルの炭素含量のGDOES深さプロファイルを示す。
図4図1及び2に示したサンプルを用いた三点曲げ試験の結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0048】
本発明の方法によって得られる効果を調べるため、熱間成形用に従来使用されている多相鋼「MP」及び鋼「WU」の硬磨冷間ストリップサンプルをそれぞれ作製した。鋼MP及びWUの組成を下表1に示す。
【0049】
【表1】
【0050】
鋼MP及びWUから作製した2つのサンプルを、エッジ層脱炭のため連続炉内で本発明の焼きなまし処理に供した。使用した焼きなましパラメーターを下表2の列「本発明に従う」に示す。
【0051】
比較のため、鋼MP及びWUから作製した2つの追加サンプルを、熱浸漬亜鉛めっきを施すために一般的に行われるように、連続炉内で従来の焼きなましに供した。
【0052】
サンプルの機械的特性を最適化するため、過剰時効硬化処理をさらに行った。これは脱炭エッジ層の形成に影響を及ぼさないが、その代わり単にストリップの特性を改善するため任意に行われた。
【0053】
過剰時効硬化処理で使用するパラメーターは両試験で同一であり、これらのパラメーターをも下表2に示す。
【0054】
【表2】
【0055】
図1は、鋼MPから作製し、本発明の焼きなましによって加工したサンプルの顕微鏡写真である。本発明の手順の結果として表面近傍に脱炭構造領域(エッジ層「R」)が調整されたことを明確に見ることができる。
【0056】
しかしながら、やはり鋼MPから作製したが、従来の焼きなまし処理に供したサンプルの顕微鏡写真は、いかなる脱炭領域をも示さない(図2)。
【0057】
さらに、鋼MPから作製し、従来の焼きなまし及び本発明の焼きなましにより加工したサンプルについて炭素含量のGDOES測定を行った。GDOES測定法(「GDOES」=グロー放電発光分析法)は、被覆の濃度プロファイルを迅速に検出するための標準的方法である。この方法は、例えば、非特許文献1に記載されている。
【0058】
GDOES測定の結果を図3に示す。図3中、破線は従来の加工サンプルの炭素分布を示し、実線は本発明に従って加工したサンプルの炭素分布を示している。
【0059】
図3は、本発明に従って加工したサンプルが顕著な脱炭エッジ層Rを有し、その厚さが約40μmであることをも明確に示している。しかし、従来の加工サンプルにはこのようなエッジ層が存在しない。
【0060】
微小硬度測定を利用して、鋼MPから作製し、本発明に従って熱加工したサンプルで脱炭されているエッジ領域Rは163HVの微小硬度を有し、非脱炭コア領域Kは255HVの硬度を有することを実証することができる。結果として、コア領域Kの硬度Hvに対する脱炭エッジ領域Rの硬度Hvを意味する関係Hv/Hv(%)は64%であり、本発明に従ってこの関係について提示した75%という値より明らかに小さかった。
【0061】
焼きなまし後、亜鉛を電解によりサンプルに適用する、サンプルの表面改良を行った。
【0062】
引き続き、圧力硬化の前後に被覆サンプルについて三点曲げ試験を行った。
【0063】
鋼MPから作製したサンプルについてこの試験の結果を図4に示す。図4では、本発明に従って作製したサンプルの曲げ角度Bwを黒棒で示し、従来法で作製したサンプルの曲げ角度Bwを白棒で示してある。この場合、本発明に従って作製かつ加工したサンプルは、従来法で加工したサンプルより大幅に良い成形特性及び曲げ特性を有することも明白である。
【0064】
本発明の焼きなましによって加工したサンプルと従来法の焼きなましによって加工したサンプルの比較結果は、焼きなましにより加工され、かつ鋼WUから作製された亜鉛めっきした成形サンプルについても実証することができる。
図1
図2
図3
図4