(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
電力系統から電力を受電する複数の需要家の複数の建物の各々に設けられた蓄電設備の電力および前記電力系統から受電した電力を、前記複数の建物の各々に敷設された電気配線を通して電気負荷に供給するにあたり、建物ごとに前記蓄電設備の充電および放電の制御内容を指示する電力管理装置であって、
前記複数の建物の各々において着目する電力を監視電力として、前記監視電力の時間経過に伴う変化を建物ごとに記憶する記憶部と、
前記記憶部が記憶している建物ごとの前記監視電力について所定の単位期間における変化を複数種類の電力パターンに類別する分類部と、
前記分類部が類別した前記複数種類の電力パターンを2つ以上のパターン型として、パターン型ごとに、前記電力系統から受電する電力量と前記電力系統から受電する電力量に対する対価と二酸化炭素の排出量とのいずれかを最小化するという条件で、前記蓄電設備の充電および放電の制御内容を定める計画部と、
前記計画部が定めたパターン型ごとの前記制御内容を、各パターン型が適合する建物の前記蓄電設備に指示する指示部とを備える
電力管理装置。
前記記憶部に記憶される前記監視電力は、過去の単位期間における実績値と、将来の単位期間における予測値との少なくとも一方である請求項1〜7のいずれか1項に記載の電力管理装置。
電力系統から電力を受電する複数の需要家の複数の建物の各々に設けられた蓄電設備の電力および前記電力系統から受電した電力を、前記複数の建物の各々に敷設された電気配線を通して電気負荷に供給するにあたり、建物ごとに前記蓄電設備の充電および放電の制御内容を指示する電力管理方法であって、
前記複数の建物の各々において着目する電力を監視電力として、前記監視電力の時間経過に伴う変化を建物ごとに記憶部が記憶し、
前記記憶部が記憶している建物ごとの前記監視電力について所定の単位期間における変化を分類部が複数種類の電力パターンに類別し、
前記分類部が類別した前記複数種類の電力パターンを2つ以上のパターン型として、パターン型ごとに、前記電力系統から受電する電力量と前記電力系統から受電する電力量に対する対価と二酸化炭素の排出量とのいずれかを最小化するという条件で、計画部が前記蓄電設備の充電および放電の制御内容を定め、
前記計画部が定めたパターン型ごとの前記制御内容を、各パターン型が適合する建物の前記蓄電設備に指示部が指示する
電力管理方法。
【背景技術】
【0002】
従来から、個々において分散電源装置(発電設備)やエネルギー貯蔵装置(蓄電設備)が電力系統に接続された多数の需要家からなるコミュニティーにおいて、コミュニティー全体のエネルギーバランスを考慮して制御する技術が提案されている(たとえば、日本国特許出願公開番号2005−102364参照(以下「文献1」と称する))。文献1には、分散電源装置の台数が増加しても、少ない計算量で最適な運用計画を作成するために、コミュニティーを複数の需要家グループに分け、需要家グループごとに運用計画を作成する技術が記載されている。
【0003】
また、太陽光発電手段(発電設備)の発電量と電力使用量に応じて、蓄電手段(蓄電設備)の蓄電量および放電量を制御する技術が提案されている(たとえば、日本国特許出願公開番号2012−27214参照(以下「文献2」と称する))。文献2では、蓄電池の最適な充放電スケジュールを決定するために、予測期間を定めて予測期間における蓄電池の充放電スケジュールを、混合整数計画問題に定式化して算出している。
【0004】
文献1に記載された技術は、コミュニティーを複数の需要家グループに分割しているから、コミュニティーの全体について計算する場合に比べると、計算量は低減される。しかしながら、需要家ごとのエネルギーの収支は考慮されていないから、文献1に記載された技術を用いて、需要家ごとにエネルギーの収支を最適化することはできない。
【0005】
一方、文献2に記載された技術は、需要家にとって電力の収支を適正化することが可能であるが、個々の需要家で充放電スケジュールを定めようとすれば、マイコンを備える程度の組み込み機器では処理能力が不足するから、高価なコンピュータが必要になる。一方で、複数の需要家の充放電スケジュールを定めるコンピュータを設けることが考えられる。つまり、コンピュータが、需要家ごとの充放電スケジュールを作成する作業をまとめて行うことが考えられる。この構成を採用すると、需要家では高価なコンピュータが不要であるが、需要家の数が増加した場合、充放電スケジュールを定めるための計算量が膨大になり、コンピュータには高い処理負荷がかかることになる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1に示すように、電力系統30から電力を受電する複数の需要家の複数の建物40の各々に設けられた蓄電設備20の電力および電力系統30から受電した電力が、複数の建物40の各々に敷設された電気配線41を通して電気負荷42に供給される。電力管理装置10は、建物40ごとに蓄電設備20の充電および放電の制御内容を指示する。
【0015】
電力管理装置10は、記憶部11と分類部12と計画部13と指示部14とを備える。記憶部11は、複数の建物40の各々において着目する電力を監視電力として、監視電力の時間経過に伴う変化を建物40ごとに記憶する。分類部12は、記憶部11が記憶している建物40ごとの監視電力について所定の単位期間における変化を複数種類の電力パターンに類別する。計画部13は、分類部12が類別した複数種類の電力パターンを2つ以上のパターン型として、パターン型ごとに、蓄電設備20の充電および放電の制御内容を定める。制御内容は、電力系統30から受電する電力量と電力系統30から受電する電力量に対する対価と二酸化炭素の排出量とのいずれかを最小化するという条件で定められる。指示部14は、計画部13が定めたパターン型ごとの制御内容を、各パターン型が適合する建物40の蓄電設備20に指示する。
【0016】
監視電力は、建物40ごとの電気負荷42が消費する電力である需要電力と、建物40ごとの蓄電設備20における残容量とを含むことが望ましい。この場合、記憶部11は、需要電力の時間経過に伴う変化と、残容量の時間経過に伴う変化とを、建物40ごとに記憶する。また、電力パターンは、単位期間における需要電力の変化を類別した需要パターンと、単位期間の開始時点における残容量を類別した残量パターンとを含むことが望ましい。この場合、分類部12は、記憶部11が記憶している複数の建物40にそれぞれ対応する複数の需要電力を2種類以上の需要パターンに類別し、かつ記憶部11が記憶している複数の建物40にそれぞれ対応する複数の残容量を2種類以上の残量パターンに類別する。この構成において、2つ以上のパターン型の各々は、需要パターンと残量パターンとの組み合わせを含むことが望ましい。
【0017】
自然エネルギーを用いて発電し、発電した電力を電気配線41を通して電気負荷42に供給する発電設備21が複数の建物40の各々に設けられている場合、監視電力は、建物40ごとの発電設備21が発電する電力である発電電力をさらに含むことが望ましい。この場合、記憶部11は、発電電力の時間経過に伴う推移を建物40ごとに記憶する。また、電力パターンは、単位期間における発電電力の変化を類別した発電パターンをさらに含むことが望ましい。この場合、分類部12は、記憶部11が記憶している複数の建物40にそれぞれ対応する複数の発電電力を2種類以上の発電パターンに類別する。この構成において、2つ以上のパターン型の各々は、需要パターンと残量パターンと発電パターンとの組み合わせを含むことが望ましい。
【0018】
分類部12は、2種類以上の発電パターンの類別に際して、発電電力の変化に加えて、発電設備21が設置されている地域を類別の条件に用いることが望ましい。また、分類部12は、2種類以上の発電パターンの類別に際して、発電電力の変化に加えて、発電設備21の定格電力を類別の条件に用いることが望ましい。
【0019】
ところで、分類部12は、クラスタ生成部121とパターン生成部122とを備えることが望ましい。クラスタ生成部121は、単位期間における複数の建物40にそれぞれ対応する複数の監視電力の変化を2つ以上のクラスタに分ける。また、パターン生成部122は、クラスタ生成部121に分けられた2つ以上のクラスタの各々について、1ないし複数の監視電力の変化の1の代表パターンを電力パターンに定める。この場合、計画部13は、パターン生成部122によって定められた2つ以上のクラスタにそれぞれ対応する2つ以上の代表パターンと、記憶部11に記憶されているある着目する建物40の監視電力の変化と、を比較し、類似度がもっとも高い代表パターンを、当該着目する建物40に対する電力パターンとするパターン決定部131とを備えることが望ましい。また、クラスタ生成部121は、複数の監視電力の変化を分ける2つ以上のクラスタの個数があらかじめ設定されていることが望ましい。
【0020】
記憶部11に記憶される監視電力は、過去の単位期間における実績値と、将来の単位期間における予測値との少なくとも一方であることが望ましい。
【0021】
ここに、電力管理装置10と蓄電設備20と制御装置22とにより電力管理システムが構成される。蓄電設備20は、電力系統30から電力を受電する複数の需要家の複数の建物40の各々に設けられ、複数の建物40の各々に敷設された電気配線41を通して、電力系統30から受電した電力と併せて電気負荷42に電力を供給する。制御装置22は、電力管理装置10から指示された制御内容に従って蓄電設備20の充電および放電を制御する。
【0022】
電力管理装置10は、以下の電力管理方法を採用している。すなわち、この電力管理方法は、複数の需要家の複数の建物40の各々に設けられた蓄電設備20の電力および電力系統30から受電した電力を、電気配線41を通して電気負荷42に供給するにあたり、建物40ごとに蓄電設備20の充電および放電の制御内容を指示する。まず、記憶部11は、複数の建物40の各々において着目する電力を監視電力として、監視電力の時間経過に伴う変化を建物40ごとに記憶する。次に、分類部12は、記憶部11が記憶している建物40ごとの監視電力について所定の単位期間における変化を複数種類の電力パターンに類別する。分類部12が類別した複数種類の電力パターンを2つ以上のパターン型として、計画部13は、パターン型ごとに、所定の条件で、蓄電設備20の充電および放電の制御内容を定める。所定の条件は、電力系統30から受電する電力量と電力系統30から受電する電力量に対する対価と二酸化炭素の排出量とのいずれかを最小化するという条件である。さらに、指示部14は、計画部13が定めたパターン型ごとの制御内容を、各パターン型が適合する建物40の蓄電設備20に指示する。
【0023】
以下、実施形態について詳述する。
図1に示す構成例では、各需要家の建物40は、発電設備21として太陽光発電設備を備えているが、発電設備21は省略可能である。すなわち、以下の実施形態において説明する技術は、蓄電設備20のみを備えている建物40であっても適用可能である。また、以下に説明する電力管理装置10は、プログラムに従って動作するプロセッサを備えたコンピュータを主なハードウェア要素として備える。この種のコンピュータは、メモリをプロセッサと一体に備えるマイコン、あるいはメモリが別に必要なプロセッサなどを備える。プログラムは、プロセッサとともにハードウェアとして実装されたROM(Read Only Memory)に書き込まれる。あるいはまた、プログラムは、インターネットのような電気通信回線を通して取得するか、コンピュータで読取可能な記録媒体から読み込んでもよい。
【0024】
図示例では、蓄電設備20と発電設備21とは、パワーコンディショナ23を共用している。すなわち、蓄電設備20は、蓄電池201とパワーコンディショナ23とにより構成されており、パワーコンディショナ23は蓄電池201の充電と放電とが可能になるように直流電力と交流電力との間で双方向に電力変換を行う。また、発電設備21は、太陽電池211とパワーコンディショナ23とにより構成されており、パワーコンディショナ23は太陽電池211から出力される直流電力を交流電力に変換する。パワーコンディショナ23は、蓄電池201と太陽電池211とに対して個別に電力変換を行う構成を備える。パワーコンディショナ23は、太陽電池211が発電した電力を蓄電池201の充電に用いる動作も可能である。パワーコンディショナ23の動作は、制御装置22が制御する。制御装置22の動作については後述する。
【0025】
建物40は、電力系統30から受電する分電盤43を備え、パワーコンディショナ23は分電盤43を介して電気配線41に接続される。すなわち、分電盤43は、電力系統30から受電した電力と、蓄電池201に蓄えた電力または太陽電池211が発電した電力とを、建物40に敷設された電気配線41を通して電気負荷42に供給する。
図1において、実線は電力用の配線を示し、破線は信号または情報の経路を示している。
【0026】
制御装置22は、建物40が電力系統30から受電する電力と、パワーコンディショナ23から出力される電力と、電気負荷42が消費する電力とを主な入力情報として、蓄電設備20の充電および放電の制御を行う。パワーコンディショナ23から出力される電力は、ここでは発電設備21が出力する電力を意味する。制御装置22は、蓄電設備20に設けられた蓄電池201の残容量についても管理する。以下では、電力系統30から受電した電力を「受電電力」、電気負荷42が消費する電力を「需要電力」、発電設備21が発電する電力を「発電電力」という。制御装置22は、受電電力、需要電力、残容量、発電電力を収集し、電力管理装置10から指示された制御内容に従って蓄電設備20の充電および放電の制御を行う。
【0027】
図示例において、電力管理装置10は、インターネットのような電気通信回線NTに接続されたサーバ50に設けられている。電力管理装置10がサーバ50に設けられているのは、複数の建物40から情報を収集し、収集した情報に基づいて制御装置22に与える制御内容を生成するのに都合がよいからである。ただし、サーバ50に設けられた電力管理装置10が集中処理を行うことは必須ではなく、建物40ごとに電力管理装置10の全部または一部の機能が設けられ、電力管理装置10が相互に通信することにより、分散処理を行う構成を採用してもよい。
【0028】
以下に説明するサーバ50は、電力管理装置10と通信インターフェイス部51とを備える。通信インターフェイス部51は、建物40に設けられた蓄電設備20の充電および放電を、電力管理装置10から指示した制御内容に従って制御する制御装置22との間で通信する。
【0029】
電力管理装置10は、複数の建物40について、需要電力と残容量と発電電力との時間経過に伴う変化を建物40ごとに記憶する記憶部11を備える。記憶部11は、所定の単位期間以上の長さの期間について需要電力と残容量と発電電力とを記憶する。需要電力、残容量、発電電力は、所定時間(たとえば、1分、5分、10分、30分などから選択される)ごとに制御装置22が取得し、電気通信回線NTを通して電力管理装置10が受け取る。
【0030】
単位期間は、通常は0:00〜24:00の1日間が望ましいが、2日間、1週間などに設定してもよい。また、1日を複数の期間に分割し、朝(6:00〜12:00)、昼(12:00〜18:00)、夜間(たとえば、18:00〜翌6:00)を、それぞれ単位期間としてもよい。あるいはまた、1日のうちの日中の時間帯のみを単位期間とすることが可能であり、この場合、日中の時間帯は季節や地域に応じて変化するから、季節や地域に応じて単位期間を変化させることも可能である。
【0031】
記憶部11が記憶する情報は、過去における実績値または将来の予測値であって、情報の発生時点で電力管理装置10に通知する必要はない。予測値は、実績値に他の情報(日時、季節、地域、天気予報など)を加味して算出される。したがって、予測値は、制御装置22で算出するほか、サーバ50で算出するようにしてもよい。
【0032】
以下では、説明を補助するために、4軒の建物40について需要電力と発電電力とに着目する事例を用いる。電力管理装置10が制御装置22に与える制御内容を定めるためには蓄電設備20の残容量が必要であるが、電力管理装置10の処理上は、需要電力、残容量、発電電力は同様に扱われるから、残容量について需要電力および発電電力と同様の処理を行えばよい。
【0033】
いま、4軒の建物40(40a〜40d)について、それぞれの需要電力と発電電力とが、同じ期間において
図2A〜2Dのように変化したと仮定する。すなわち、建物40aは
図2Aに、建物40bは
図2Bに、建物40cは
図2Cに、建物40dは
図2Dにそれぞれ対応する。図において、実線は需要電力、破線は発電電力を表している。4軒の建物40a〜40dから得られた発電電力を重ね合わせると、
図3Aのようになり、4軒の建物40a〜40dから得られた需要電力を重ね合わせると、
図4Aのようになる。
図3A〜3C、および
図4A〜4Cにおいて、符号40a〜40dは
図2A〜2Dの建物40a〜40dにそれぞれ対応する。
図2A〜2Dに示した事例では、建物40a〜40dにそれぞれ対応する複数の発電電力の変化において、直感的に、
図3Bに示す電力パターン(発電電力の変化の形態)と
図3Cに示す電力パターンとの2種類が見いだされる。また、
図2A〜2Dに示した事例では、建物40a〜40dに複数の需要電力の変化において、直感的に、
図4Bに示す電力パターン(需要電力の変化の形態)と
図4Cに示す電力パターンとの2種類が見いだされる。
【0034】
図2A〜2Dの事例は、一例であってさらに多数の建物40を対象にすれば、需要電力と発電電力の変化に関する電力パターンの数は増加するが、建物40の増加率に対して電力パターンの増加率は小さくなることが予想される。また、同じ地域の建物40を対象にしている場合、建物40の数が増加すると、電力パターンの数は飽和することが予想される。
【0035】
ここに、需要電力、残容量、発電電力が変化する電力パターンは、建物40における設備(電気負荷42、蓄電設備20、発電設備21)の規模によっても異なる。本実施形態では、需要電力、残容量、発電電力に関して、設備の規模による補正は行わず、需要電力、残容量、発電電力の絶対値のみで電力パターンに分ける。
【0036】
つまり、分類部12は、
図3Bおよび3Cのように発電電力の変化をクラスタに分け、
図4Bおよび4Cのように需要電力の変化をクラスタに分けるクラスタ生成部121を備える。さらに、分類部12は、需要電力の変化と発電電力の変化とについて、それぞれの電力パターンを類別する。
【0037】
クラスタ生成部121は、需要電力の変化と発電電力の変化とを類別するために、たとえば、k−平均法(k-means)法のようなクラスタリング手法を用いる。k−平均法は、クラスタをランダムに生成するから、クラスタの個数があらかじめ設定されていることが望ましい。クラスタの個数が設定されていれば、生成されるクラスタの組み合わせ数が制限され、電力パターンを分ける処理を比較的短い時間で終えることが可能である。また、クラスタの個数が決まっていることにより、クラスタに分ける処理の計算量が処理を開始する前に定まる。したがって、処理の遅れなどの障害が発生する可能性を低減できる。ここに、設定されたクラスタの個数は上限値とし、生成したクラスタを評価することによって、類似するクラスタを結合する処理を行うことが望ましい。なお、クラスタ生成部121は、需要電力の変化および発電電力の変化を他の方法でクラスタに分けてもよい。
【0038】
分類部12は、クラスタ生成部121が分けた2つ以上のクラスタのそれぞれについて、代表パターンを定めるパターン生成部122を備える。パターン生成部122は、
図3Bおよび3Cのような発電電力のクラスタからは、
図5Aおよび5Bに示す発電パターン(代表パターン)を生成し、
図4Bおよび4Cのような需要電力のクラスタからは、
図6Aおよび6Bに示す需要パターン(代表パターン)を生成する。クラスタの代表パターンは、たとえば、各時刻ごとにクラスタ内の需要電力あるいは発電電力の平均値を持つ電力パターンとすればよい。
【0039】
分類部12は、需要パターンと発電パターンとのそれぞれに識別用の情報を付与して出力する。つまり、分類部12は、需要電力の変化と発電電力の変化とをそれぞれ電力パターンに類別する。以下では、
図5Aおよび5Bに示す発電パターンにおいて上段をG1、下段をG2と呼ぶ。また、
図6Aおよび6Bに示す需要パターンにおいて上段をD1、下段をD2と呼ぶ。分類部12が類別した需要パターンおよび発電パターンは、計画部13に与えられ、計画部13は、需要パターンと発電パターンとを組み合わせたパターン型ごとに、各建物40における蓄電設備20の充電および放電の制御内容を定める。
【0040】
すなわち、計画部13は、建物40ごとの蓄電設備20について充電および放電の制御内容を定めるために、建物40ごとに需要パターンおよび発電パターンを当て嵌めるパターン決定部131を備える。パターン決定部131は、パターン生成部122によって定められた2つ以上のクラスタにそれぞれ対応する2つ以上の需要パターン(代表パターン)と、記憶部11に記憶されているある着目する建物40の需要電力の変化と、を比較評価し、類似度がもっとも高い需要パターンを当該着目する建物40に当て嵌める。また、パターン決定部131は、パターン生成部122によって定められた2つ以上のクラスタにそれぞれ対応する2つ以上の発電パターン(代表パターン)と、記憶部11に記憶されているある着目する建物40の発電電力の変化と、を比較評価し、類似度がもっとも高い発電パターンを、当該着目する建物40に当て嵌める。つまり、建物40ごとに、需要パターンと発電パターンとが当て嵌められる。
【0041】
図2A〜2Dに示す例では、
図2Aの建物40aは、需要パターンがD1であり、発電パターンがG1である。そこで、建物40aを、[D1,G1]と表すことにすると、
図2Bの建物40bは[D2,G1]と表され、
図2Cの建物40cは[D1,G2]と表され、
図2Dの建物40dは[D2,G2]と表される。したがって、建物40a〜40dの需要パターンと発電パターンとの組み合わせは、
図7A〜7Dのようになる。
【0042】
需要電力の変化および発電電力の変化を電力パターンの抽出に利用した建物40については、当該建物40には抽出した電力パターンを適用する。一方、電力パターンの抽出に利用していない建物40が参加する場合、パターン決定部131は、当該建物40から抽出された需要電力の変化と、定められている需要パターンとの類似度を評価し、類似度がもっとも高い需要パターンを当該建物40に当て嵌める。また、パターン決定部131は、当該建物40から抽出された発電電力の変化と、定められている発電パターンとの類似度を評価し、類似度がもっとも高い発電パターンを当該建物40に当て嵌める。パターン決定部131は、類似度をユークリッド距離のような評価値を用いて評価し、評価値が許容範囲を逸脱している場合には、当該建物40に対して、既存の電力パターンを当て嵌めず、新たな電力パターンを求める。
【0043】
計画部13は、建物40ごとに、需要パターンと発電パターンとを求めた後、所定の条件のもとで、蓄電設備20の充電および放電に関する制御内容を生成する。制御内容を生成する条件は、電力系統30から受電する電力量と、電力系統30から受電する電力量に対する対価と、二酸化炭素の排出量とのいずれかを最小化することである。この条件は、すべての建物40について共通に設定される。ただし、条件は、建物40の要求に従って、建物40ごとに定めてもよい。
【0044】
条件は効用を最大または最小にすることであるから、計画部13は、条件の制約下で制御内容の生成にあたり、たとえば、混合整数計画問題として扱うことにより、制御内容をよい精度で定めることが可能である。
【0045】
計画部13は、需要パターンと発電パターンとの組み合わせごとに、制御内容を生成する。上述した例では、4軒の建物40a〜40dに対して4種類の組み合わせが得られており、建物40の軒数とパターン型の総数とが等しくなっている。ただし、建物40の軒数とパターン型の総数とは、比例関係ではなく、建物40の軒数が増加するに従ってパターン型の種類(数)はしだいに飽和することが容易に推察される。
【0046】
たとえば、500軒の建物40であっても、需要パターンと発電パターンとは、それぞれが高々5種類程度に集約される可能性がある。この例では、500軒の建物40に対して、電力パターンの組み合わせ数は25種類である。したがって、500軒の建物40に対して最大でも25種類の制御内容を生成すればよく、制御内容を生成する処理負荷は、それぞれの需要電力の変化と発電電力の変化との組み合わせごとに制御内容を生成する場合よりも大幅に低減される。
【0047】
また、制御内容を定める条件を3種類から選択可能にしたとしても、最大で75種類の制御内容を生成すればよいから、この場合でも500軒の建物40ごとに制御内容を生成する場合よりも処理負荷が軽減される。建物40が10000軒であっても、パターン型の種類が大幅に増加することはないから、建物40が500軒の場合の処理負荷に対して処理負荷が20倍に増加することはなく、処理負荷は高々4〜5倍増加するにすぎないと推定される。
【0048】
表1にN軒の建物40(No. 1〜No. N)について、需要パターン、発電パターン、残量パターンを割り当てた例を示す。表1の例は、需要パターンが3種類(D1〜D3)、発電パターンが5種類(G1〜G5)、残量パターンが3種類(R1〜R3)である場合を想定している。
【0050】
計画部13が定めたパターン型ごとの制御内容は、指示部14に入力される。指示部14は、パターン型が適合する建物40の制御装置22に、通信インターフェイス部(以下、「通信I/F部」と呼ぶ)51を通して、制御内容を通知する。すなわち、指示部14は、電気通信回線NTを通して制御装置22に制御内容を通知する。一般に、建物40に設けられる通信機器は、電気通信回線NTを通して外部装置からアクセスされることを許容していないから、制御装置22は、電源投入時あるいは適宜のタイミングでサーバ50にアクセスし、制御内容を受け取ることが望ましい。
【0051】
制御装置22は、制御内容を受け取ると、上述したように、受電電力と需要電力と残容量と発電電力とを収集し、指示部14から与えられた制御内容に基づいて、蓄電設備20の充電および放電の制御を行う。上述した動作は、一定の時間間隔、あるいは適宜のタイミングで繰り返され、建物40ごとの需要パターンと発電パターンと(残量パターンと)を組み合わせたパターン型に応じて定める制御内容に従って蓄電設備20の充電および放電の制御がなされる。
【0052】
なお、残容量については、需要パターンや発電パターンのように時間経過に伴う電力の変化の形態が残量パターンとして用いられるのではなく、単位期間の開始時点の値が残量パターンとして用いられる。したがって、残量パターンは、たとえば、残容量が0%、50%、100%の3種類、あるいは20%刻みで6種類、10%刻みで11種類などに分類される。
【0053】
上述したように、建物40ごとの需要電力の変化と残容量の変化と発電電力の変化とを電力パターンに類型化し、電力パターンを組み合わせたパターン型によって、建物40ごとの制御内容を定めるから、制御内容を定める処理負荷が軽減される。すなわち、電力管理装置10を設けたサーバ50の処理負荷が軽減され、サーバ50の運営管理に必要な費用が低減される。また、制御内容を定めるための処理負荷が軽減されるから、短い時間間隔で制御内容を更新することが可能であり、予測誤差に起因する制御内容の誤差の影響が大きくなる前に、制御内容を修正することができる。その結果、建物40において蓄電設備20の充電および放電の制御が精度よく行われ、制御内容を定める際に設定した条件(目的)が達成されやすくなる。
【0054】
上述した構成例では、複数の需要電力の変化、複数の発電電力の変化、(残容量)について、クラスタ生成部121がそれぞれ2つ以上のクラスタに分ける際に、クラスタ生成部121は電力にのみ着目している。ここで、発電設備21が太陽電池211を備える太陽光発電設備である場合、発電電力は日射量、気温の気象条件に応じて変化する。また、気象条件は、太陽電池211が設置されている地域の影響を受ける。そのため、太陽光発電設備を用いている場合には、太陽光発電設備による発電電力の実績値と、建物40が存在する地域とを含めることが望ましい。2つ以上のクラスタに分ける際の初期条件に地域を用いると、複数の建物40にそれぞれ対応する複数の発電電力の変化を2つ以上のクラスタに分ける際に、要素数の低減が可能になり、結果的に2つ以上のクラスタを収束させやすくなる。
【0055】
また、複数の建物40の複数の太陽光発電設備にそれぞれ対応する複数の発電電力(実績値あるいは予測値)の変化を2つ以上のクラスタに分ける際に、太陽電池211の定格容量を初期条件に用いると、発電電力をクラスタに分ける際に、要素数の低減が可能になり、クラスタを収束させやすくなる。蓄電設備20の残容量をクラスタに分ける際も同様であって、蓄電設備20の最大容量を初期条件に用いてもよい。
【0056】
上述した構成例は、蓄電設備20が蓄電池201とパワーコンディショナ23とで構成されているが、建物40に設置される蓄電池201に代えて、電動車両に搭載された走行用の蓄電池を用いることが可能である。電動車両は、電気自動車、プラグインハイブリッド車、電動二輪車などから選択される。電動車両の蓄電池を蓄電設備20として用いる場合、パワーコンディショナ23に代わる装置は、蓄電池の充電および放電を行う電力変換装置になる。ここに、電動車両に搭載された蓄電池の残容量の変化は電動車両の使用の仕方によるが、建物40ごとに電力パターンを分類できることが予測されるから、上述した技術が適用可能である。
【0057】
電動車両のうち電気自動車、電動二輪車については、蓄電池の残容量について、上述した蓄電設備20の蓄電池201と同様に扱うことが可能である。この場合、残容量の予測値は、電動車両の走行予定に基づいて予測される。なお、プラグインハイブリッド車から放電可能な電力量は、電動車両に搭載された蓄電池の残容量では予測できないから、電動車両から走行可能距離を取得し、電動車両の走行予定を差し引いた距離を、放電可能な電力量に換算することが望ましい。電動車両が燃料電池車である場合、充電には寄与しないが、放電のみに着目して上述した技術を適用してもよい。
【0058】
本発明を幾つかの好ましい実施形態によって記述したが、この発明の本来の精神および範囲、即ち請求の範囲を逸脱することなく、当業者によって様々な修正および変形が可能である。