(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6298507
(24)【登録日】2018年3月2日
(45)【発行日】2018年3月20日
(54)【発明の名称】光ファイバユニット
(51)【国際特許分類】
G02B 6/44 20060101AFI20180312BHJP
G02B 6/04 20060101ALI20180312BHJP
【FI】
G02B6/44 366
G02B6/04 A
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-183433(P2016-183433)
(22)【出願日】2016年9月20日
【審査請求日】2017年5月12日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005186
【氏名又は名称】株式会社フジクラ
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100126882
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 光永
(74)【代理人】
【識別番号】100160093
【弁理士】
【氏名又は名称】小室 敏雄
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】梶 智晃
(72)【発明者】
【氏名】伊佐地 瑞基
(72)【発明者】
【氏名】富川 浩二
(72)【発明者】
【氏名】大里 健
【審査官】
奥村 政人
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2015/052951(WO,A1)
【文献】
特開2007−010917(JP,A)
【文献】
特開2012−088454(JP,A)
【文献】
特開2015−102581(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2003/0091307(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2017/0153403(US,A1)
【文献】
米国特許第05165003(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/02
G02B 6/04− 6/08
G02B 6/44
H01B 7/17− 7/28
H01B 11/00−11/22
H01B 13/02−13/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の光ファイバと、
複数の前記光ファイバを束ねる複数のテープ状の結束材と、を備え、
複数の前記結束材はSZ状に複数の前記光ファイバに巻き付けられ、それぞれの反転部において互いに融着され、
複数の前記結束材には、互いに幅の異なる2つの前記結束材が含まれている、光ファイバユニット。
【請求項2】
前記結束材は少なくとも、
前記光ファイバを構成する材質より融点が低い低融点材と、
前記低融点材より融点が高い高融点材と、
により形成されている、請求項1に記載の光ファイバユニット。
【請求項3】
前記結束材は、前記高融点材を前記低融点材が覆う2層構造に形成されている、請求項2に記載の光ファイバユニット。
【請求項4】
前記結束材は、断面形状が扁平な楕円形状である、請求項1から3のいずれか1項に記載の光ファイバユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、下記特許文献1に示されるように、複数の光ファイバ心線若しくは光ファイバ素線(以降、単に光ファイバという)に結束材を巻き付けた光ファイバユニットが知られている。この光ファイバユニットでは、結束材を巻き付けることで光ファイバ心線の束がばらばらになるのを抑制しつつ、結束材の色によって光ファイバユニット間の識別性を向上させることができる。
また、下記特許文献2には、光ファイバの束に複数の結束材をSZ状に巻きつけて、巻きつけ方向の反転箇所で2本の結束材を接着した光ファイバユニットが提案されている。この構成によれば、2本の結束材が接着された部分を剥離すると、その剥離した部分の周辺の結束が解除されるとともに、他の部分における結束は維持される。これにより、光ファイバユニットの中間後分岐作業などの作業性を良好にすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−26196号公報
【特許文献2】特開2012−88454号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記特許文献2に記載された光ファイバユニットでは、結束材の反転箇所同士を接着するため、この接着部が不意に剥離することで結束状態が不安定になりやすい。
【0005】
本発明はこのような事情を考慮してなされたもので、複数の光ファイバにSZ状に巻き付けられた結束材の結束状態を安定させられる光ファイバユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の実施形態に係る光ファイバユニットは、複数の光ファイバと、複数の前記光ファイバを束ねる複数のテープ状の結束材と、を備え、複数の前記結束材はSZ状に複数の前記光ファイバに巻き付けられ、それぞれの反転部において互いに融着され、複数の前記結束材には、互いに幅の異なる2つの前記結束材が含まれている。
【0007】
上記実施形態に係る光ファイバユニットによれば、複数のテープ状の結束材同士を融着させることにより、融着された部分の面積が確保される。これにより結束材同士の融着の強度が高められて、融着部が不意に剥離するのが抑止され、結束状態を安定させることができる。
さらに、例えば紐状の結束材を使用した場合と比較して、結束材の幅が広いため、視認性を向上させることができる。
これに加えて、複数の結束材には、互いに幅の異なる2つの結束材が含まれていることにより、例えば結束材の色の違いと、幅の違いとの組み合わせを変えることによって、光ファイバユニットの識別パターンを容易に増やすことができる。
【0008】
また、前記結束材は少なくとも、前記光ファイバを構成する材質より融点が低い低融点材と、前記低融点材より融点が高い高融点材と、により形成されていてもよい。
【0009】
この場合、結束材同士を融着する際に、結束材の全体が溶融して不意に破断するのが高融点材によって抑止されるとともに、低融点材を溶融させて結束材同士を確実に融着させることができる。なお、高融点材には、融点を有さず、低融点材の融点より高い温度で熱分解される材質も含まれる。
【0010】
また、前記結束材は、前記高融点材を前記低融点材が覆う2層構造に形成されていてもよい。
【0011】
この場合、例えばテープ状の低融点材内に複数の高融点材が配設された構造と比較して、結束材がその長手方向に裂けるのを抑制することができる。
【0012】
また、前記結束材は、断面形状が扁平な楕円形状であってもよい。
【0013】
この場合、例えば断面が長方形状である場合と比較して結束材を成形しやすい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の上記実施形態によれば、複数の光ファイバにSZ状に巻き付けられた結束材の結束状態を安定させられる光ファイバユニットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】第1実施形態に係る光ファイバユニットの構成を説明する概略図である。
【
図3】光ファイバユニットの結束装置の構成を示す図であって、(a)は結束装置を長手方向に直交する方向から見た側面図であり、(b)は(a)のA方向矢視図である。
【
図4】第2実施形態に係る光ファイバユニットの構成を説明する概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(第1実施形態)
本実施形態に係る光ファイバユニットの構成を、
図1〜3を参照しながら以下に説明する。
なお、以下の説明に用いる図については、発明を理解し易くするために、各構成部品の図示の省略、縮尺の変更、形状の簡略化等をしている場合がある。
【0017】
図1に示すように、光ファイバユニット10は、複数の光ファイバ1と、複数の光ファイバ1を束ねる複数の結束材2、3と、を備えている。
結束材2、3は、SZ状に複数の光ファイバ1に巻き付けられ、それぞれの反転部において互いに熱融着されている。光ファイバユニット10は、光ファイバケーブル内に複数ユニット配設される場合があるため、この光ファイバケーブル内における光ファイバユニット10間の識別のために、結束材2、3には着色がなされている。
なお、光ファイバユニット10は、複数枚の間欠固定型の光ファイバテープを束ねて構成されていてもよい。間欠固定型の光ファイバテープとは、複数の光ファイバ1を並列させ、隣り合う光ファイバ1同士を複数の連結部で間欠的に連結した光ファイバテープである。間欠固定型の光ファイバテープは、幅方向に丸めて筒状にしたり、折り畳んだりすることができる。このため、間欠固定型の光ファイバテープを用いることで、複数の光ファイバ1を高密度に束ねることができる。
【0018】
図2は結束材2、3の断面図である。
図2に示すように、結束材2、3はそれぞれ、幅広のテープ状に形成されている。結束材2、3の厚さは例えば0.1〜0.2mm程度であり、幅は例えば1.5mm程度である。結束材2、3の厚さおよび幅は、互いに同等に形成されている。結束材2、3の断面形状は偏平な楕円形状に形成されている。なお、
図2に示す断面形状や、上記した結束材2、3の厚さおよび幅は一例であり、適宜変更することが可能である。例えば、矩形の断面形状を有する結束材2、3を採用してもよい。
【0019】
図2に示すように、結束材2、3はそれぞれ、中心部に配設された高融点材層5と、高融点材層5を覆う低融点材層4と、による2層構造に形成されている。
低融点材層4は、光ファイバ1を構成する材質(例えば石英ガラスなど)より融点が低い低融点材により形成されている。低融点材としては、例えば融点が168℃のポリプロピレン(PP)などを用いることができる。なお、低融点材の具体的な材質はPPに限られず、光ファイバ1を構成する材質より融点が低く、熱融着が可能な材質であれば他の材質を用いてもよい。
【0020】
高融点材層5は、低融点材よりも融点が高い高融点材により形成されている。高融点材としては、例えば融点が260℃程度のポリエチレンテレフタレート(PET)を用いることができる。なお、高融点材の具体的な材質はPETに限られず、低融点材よりも融点が高い材質であれば他の材質を用いてもよい。また、高融点材にはポリイミドや綿など、融点を有さず、加熱すると低融点材の融点より高い温度で熱分解される材質も含まれる。
【0021】
次に、
図1に示す光ファイバユニット10の製造方法について説明する。
【0022】
光ファイバユニット10は、
図3(a)、(b)に示すような結束装置20を用いて、複数の光ファイバ1に結束材2、3を巻き付けることにより形成される。
図3(a)は、結束装置20を長手方向に直交する方向から見た側面図であり、
図3(b)は
図3(a)におけるA方向矢視図である。
【0023】
図3(a)、(b)に示すように、結束装置20は複数の円筒状の部材により構成されている。結束装置20は、内側から順にガイド筒21、第1内側筒22、第1外側筒23、第2内側筒24、および第2外側筒25を備えている。これらの部材は、それぞれの中心軸が共通の中心軸線O上に位置する状態で配設されている。ガイド筒21内には、複数の光ファイバ1が挿通される。
【0024】
第1内側筒22は、第1外側筒23に対して中心軸線O周りに回動可能な状態で、第1外側筒23内に嵌合されている。第1内側筒22の外周面には、その長手方向の全長にわたって延びる溝部22aが形成されている。溝部22a内には、結束材2が挿通される。
第2内側筒24は、第2外側筒25に対して中心軸線O周りに回動可能な状態で、第2外側筒25内に嵌合されている。第2内側筒24の外周面には、その長手方向の全長にわたって延びる溝部24aが形成されている。溝部24a内には、結束材3が挿通される。
【0025】
第1内側筒22および第2内側筒24は、共通する不図示の動力源に接続されており、動力の供給に伴って連動して中心軸線O周りに回動するように構成されている。光ファイバユニット10を形成する際は、複数の光ファイバ1がガイド筒21内を通過して下流側に繰り出されるのに伴い、溝部22a、24a内の結束材2、3が複数の光ファイバ1にSZ状に巻きつけられる。このとき、結束材2、3は溝部22a、24a内で、例えば200℃程度に加熱され、低融点材は溶融しており、高融点材は溶融していない状態となる。これにより、結束材2、3はSZ形状の反転部において、互いの低融点材同士が熱融着される。そして結束材2、3が熱融着される際、結束材2、3は幅広のテープ状に形成されているため、熱融着される部分の面積が大きくなり、より強固に熱融着させることができる。
なお、結束材2、3は溝部22a、24a内で加熱されず、結束装置20の下流に配設された加熱ダイス内で加熱されてもよい。この場合、結束材2、3は複数の光ファイバ1にSZ状に巻きつけられた状態で結束装置20を出た後、加熱ダイス内で熱融着される。
【0026】
なお、溝部22a、24a内に挿通される結束材2、3には、例えば1N程度の張力が加えられている。1N程度の張力を加えることで、結束材2、3が溝部22a、24a内の壁面に接触して確実に熱が伝えられ、低融点材を溶融させることができるとともに、大きすぎる張力によって結束材2、3が不意に断線するのを防止することができる。
また、結束装置20から繰り出される複数の光ファイバ1の長さに対する結束材2、3の長さ(以下、結束材余長率という)は、例えば0.1%以上に設定されている。結束材余長率を0.1%以上にすることで、形成された光ファイバユニット10内で光ファイバ1が蛇行して伝送損失が大きくなるのを抑止することができる。
【0027】
以上説明したように、本実施形態の光ファイバユニット10によれば、複数のテープ状の結束材2、3同士を融着させることにより、融着された部分の面積が確保される。これにより結束材2、3同士の融着の強度が高められて、融着部が不意に剥離するのが抑止され、結束状態を安定させることができる。
さらに、例えば紐状の結束材を使用した場合と比較して、結束材2、3の幅が広いため、視認性を向上させることができる。
【0028】
また、結束材2、3は少なくとも、光ファイバ1を構成する材質より融点が低い低融点材と、低融点材より融点が高い高融点材と、により形成されているため、結束材2、3同士を融着する際に、結束材2、3の全体が溶融して不意に破断するのが高融点材によって抑止されるとともに、低融点材を溶融させて結束材2、3同士を確実に融着させることができる。
【0029】
また、結束材2、3はそれぞれ、高融点材を低融点材が覆う2層構造に形成されているため、例えばテープ状の低融点材内に複数の高融点材が配設された構造と比較して、結束材2、3がその長手方向に裂けるのを抑制することができる。
なお、結束材2、3を複数の光ファイバ1にSZ状に巻きつけて、それぞれの反転部同士を熱融着させると、融着部近傍には結束材2、3を幅方向に広げる力が作用する。この力によって結束材2、3が裂けると、結束状態が不安定になる。従って、本実施形態のように結束材2、3が長手方向に裂けるのを抑制することで、結束状態を安定させることができる。
【0030】
また、結束材2、3はそれぞれ、断面形状が扁平な楕円形状に形成されているため、例えば断面が長方形状である場合と比較して結束材2、3を成形しやすい。
【0031】
(第2実施形態)
次に、本発明に係る第2実施形態について説明するが、第1実施形態と基本的な構成は同様である。このため、同様の構成には同一の符号を付してその説明は省略し、異なる点についてのみ説明する。
【0032】
第1実施形態の光ファイバユニット10は、幅が互いに同等の結束材2、3を備えていたが、本実施形態の光ファイバユニット30は、互いに幅の異なる2つの結束材2aおよび結束材3を備えている。
図4に示すように、結束材2aの幅は、結束材3の幅の2倍程度に形成されている。なお、結束材2aの幅はこれに限定されず、適宜変更することができる。
【0033】
本実施形態の光ファイバユニット30によれば、互いに幅の異なる2つの結束材2aおよび結束材3を備えているため、例えば結束材2a、3の色の違いと、幅の違いとの組み合わせを変えることによって、光ファイバユニット30の識別パターンを容易に増やすことができる。
【0034】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0035】
例えば、前記実施形態では高融点材層5を低融点材層4が覆う2層構造の結束材2、3について説明したが、結束材2、3の断面構造はこの形態に限られない。例えば、低融点材層4内に複数の高融点材層5が離散して配設されていてもよい。あるいは、高融点材層5および低融点材層4に加えて、他の材質による層が配設されている結束材2、3を採用してもよい。この場合には、低融点材層4が結束材2、3の最外層部に位置するように構成することで、結束材2、3同士を確実に熱融着させることができる。
【0036】
また、前記実施形態では、光ファイバユニット10、30は2つの結束材を備えていたが、本発明はこれに限られず、例えば3つ以上の結束材を備える光ファイバユニット10、30を採用してもよい。
【0037】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上記した実施形態や変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0038】
1…光ファイバ 10、30…光ファイバユニット 2、2a、3…結束材 4…低融点材層 5…高融点材層
【要約】
【課題】複数の光ファイバにSZ状に巻き付けられた結束材の結束状態を安定させられる光ファイバユニットを提供する。
【解決手段】光ファイバユニット10は、複数の光ファイバ1と、複数の光ファイバ1を束ねる複数のテープ状の結束材2、3と、を備える。複数の結束材2、3はSZ状に複数の光ファイバ1に巻き付けられ、それぞれの反転部において互いに融着されている。複数の結束材には、互いに幅の異なる2つの結束材が含まれている。
【選択図】
図1