(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記アルキルアルミニウム化合物が、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリn−ヘキシルアルミニウム、トリn−ブチルアルミニウム、トリn−オクチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロライド、エチルアルミニウムセスキクロライド、エチルアルミニウムジクロライド、およびジイソブチルアルミニウムハイドライドからなる群より選ばれる少なくとも一つである、請求項1または2に記載のポリエステルの製造方法。
開環重合触媒が、有機リチウム系開環重合触媒、有機ナトリウム系開環重合触媒、有機カリウム系開環重合触媒、ジアルキル亜鉛、ビス(2,2,6,6−テトラメチルピペリジニル)亜鉛、アルキル亜鉛ハライド、置換アルキル亜鉛ハライド、シクロアルキル亜鉛ハライド、アリール亜鉛ハライド、2−ノルボルニル亜鉛ブロミド、ジアルキルマグネシウム、有機マグネシウムハライド、スズアルコキシド、およびアミン系開環重合触媒からなる群より選ばれる少なくとも一つである、請求項1〜6のいずれか一つに記載のポリエステルの製造方法。
開環重合触媒が、ジアルキル亜鉛、ジアルキルマグネシウム、およびアミン系開環重合触媒からなる群より選ばれる少なくとも一つである、請求項1〜6のいずれか一つに記載のポリエステルの製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ポリエステルを製造するための開環重合反応において、反応系に環状エステルの原料であるヒドロキシカルボン酸が存在すると、ポリマーの分子量が大きくなりにくくなる。このためラクチド類と反応して開環させてしまう水やヒドロキシカルボン酸は反応系からできるかぎり取り除くことが必要である。反応原料から水やヒドロキシカルボン酸を取り除くための方法として、吸着、蒸留、再結晶などによる方法が一般的に知られているが、それらの方法を行うための設備を設ける必要がある。また、ラクチドを分解しない状態で水を完全に取り除くことは困難である。
本発明の課題は、脱水用の設備を特に設けなくても、簡便に水やヒドロキシカルボン酸を重合に影響しないように不活性化し、環状エステルを安定的に開環重合させてポリエステルを製造することができる方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、以下の形態を包含する本発明を完成するに至った。
【0008】
〔1〕 環状エステルと式〔I〕で表されるアルキルアルミニウム化合物とを有機溶媒中で混ぜ合わせ、次いで
有機リチウム系開環重合触媒、有機ナトリウム系開環重合触媒、有機カリウム系開環重合触媒、有機亜鉛系開環重合触媒、有機マグネシウム系開環重合触媒、有機スズ系開環重合触媒、有機カルシウム系開環重合触媒、有機チタン系開環重合触媒、およびアミン系開環重合触媒からなる群より選ばれる少なくとも一つの開環重合触媒を前記混合物に混ぜ合わせて環状エステルを開環重合させることを含む、ポリエステルの製造方法。
R
nAlX
3-n 〔I〕
(式〔I〕中、nは1〜3の整数を示し、Rは、それぞれ独立に、炭素数1〜20の直鎖または分岐のアルキル基を示し、Xは、それぞれ独立に、ハロゲン原子または水素原子を示す。)
【0009】
〔2〕 環状エステルと前記アルキルアルミニウム化合物とを混ぜ合わせる際の温度が、70℃以下である、〔1〕に記載のポリエステルの製造方法。
【0010】
〔3〕 前記アルキルアルミニウム化合物が、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリn−ヘキシルアルミニウム、トリn−ブチルアルミニウム、トリn−オクチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロライド、エチルアルミニウムセスキクロライド、エチルアルミニウムジクロライド、およびジイソブチルアルミニウムハイドライドからなる群より選ばれる少なくとも一つである、〔1〕または〔2〕に記載のポリエステルの製造方法。
【0011】
〔4〕 環状エステルがラクチド類である、〔1〕〜〔3〕のいずれか一つに記載のポリエステルの製造方法。
〔5〕 環状エステルが1,4−ジオキサン−2,5−ジオン構造を有する化合物である、〔1〕〜〔3〕のいずれか一つに記載のポリエステルの製造方法。
〔6〕 環状エステルが式〔III〕で表される化合物である、〔1〕〜〔3〕のいずれか一つに記載のポリエステルの製造方法。
(式〔III〕中、R
1およびR
2は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜20の直鎖または分岐のアルキル基、炭素数1〜20の直鎖または分岐のハロアルキル基、炭素数2〜20の直鎖または分岐のアルケニル基、炭素数2〜20の直鎖または分岐のアルキニル基、炭素数4〜6のシクロアルキル基、炭素数1〜20の直鎖または分岐のアルキルカルボニル基、炭素数1〜20の直鎖または分岐のアルコキシカルボニル基、炭素数1〜20の直鎖または分岐のハロアルキルカルボニル基、炭素数2〜20の直鎖または分岐のアルケニルカルボニル基、炭素数2〜20の直鎖または分岐のアルキニルカルボニル基、炭素数4〜6のシクロアルキルカルボニル基、2−(メチルチオ)エチル基、2−(メチルスルフィニル)エチル基、2−(メチルスルホニル)エチル基、ベンジル基、またはフェニル基で表される基を示す。)
【0012】
〔7〕 開環重合触媒が、有機リチウム系開環重合触媒、有機ナトリウム系開環重合触媒、有機カリウム系開環重合触媒、ジアルキル亜鉛、ビス(2,2,6,6−テトラメチルピペリジニル)亜鉛、アルキル亜鉛ハライド、置換アルキル亜鉛ハライド、シクロアルキル亜鉛ハライド、アリール亜鉛ハライド、2−ノルボルニル亜鉛ブロミド、ジアルキルマグネシウム、有機マグネシウムハライド、スズアルコキシド、およびアミン系開環重合触媒からなる群より選ばれる少なくとも一つである、〔1〕〜〔6〕のいずれか一つに記載のポリエステルの製造方法。
〔8〕 開環重合触媒が、ジアルキル亜鉛、ジアルキルマグネシウム、およびアミン系開環重合触媒からなる群より選ばれる少なくとも一つである、〔1〕〜〔6〕のいずれか一つに記載のポリエステルの製造方法。
【0013】
〔9〕 アルキルアルミニウム化合物の量が、環状エステル1モルに対して0.5モル〜5モルである、〔1〕〜〔8〕のいずれかひとつに記載のポリエステルの製造方法。
〔10〕 開環重合触媒の量が、環状エステル1モルに対して0.01モル〜10モルである、〔1〕〜〔9〕のいずれかひとつに記載のポリエステルの製造方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明の方法によれば、環状エステル中の重合に影響する不純物を除去する設備を特に設けなくとも、環状エステルを安定的に開環重合させてポリエステルを製造することができる。環状エステルなどの反応原料を吸着、蒸留、再結晶などの公知の方法で脱水するとさらに安定的に開環重合させてポリエステルを製造することができる。
詳細は不明だが、このような効果は、アルキルアルミニウム化合物が、環状エステルを含む有機溶媒中に含まれていることがある水やヒドロキシカルボン酸と反応して、開環重合反応を阻害する水やヒドロキシカルボン酸を不活性化するからであると推測する。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に係るポリエステルの製造方法は、環状エステルとアルキルアルミニウム化合物とを有機溶媒中で混ぜ合わせ、次いで開環重合触媒を前記混合物に混ぜ合わせて環状エステルを開環重合させることを含むものである。
【0016】
本発明に用いられる環状エステルは、式〔IIa〕に示すような、エステル結合を含む化合物である。式〔IIa〕に示す環状エステルは一つのエステル結合を含む化合物であるが、本発明に用いられる環状エステルは、2以上のエステル結合を含む化合物であってもよい。環状エステルは、一種を単独で若しくは二種以上を組み合わせて用いることができる。また、環状エステルは、吸着や蒸留などの公知の方法で脱水処理されたものであることが好ましい。
【0017】
本発明に用いられる環状エステルは、開環重合反応を阻害しないものであれば、任意の置換基を有してもよい。置換基としては、例えば、炭素数1〜20の直鎖または分岐のアルキル基、炭素数1〜20の直鎖または分岐のハロアルキル基、炭素数2〜20の直鎖または分岐のアルケニル基、炭素数2〜20の直鎖または分岐のアルキニル基、炭素数4〜6のシクロアルキル基、炭素数1〜20の直鎖または分岐のアルキルカルボニル基、炭素数1〜20の直鎖または分岐のアルコキシカルボニル基、炭素数1〜20の直鎖または分岐のハロアルキルカルボニル基、炭素数2〜20の直鎖または分岐のアルケニルカルボニル基、炭素数2〜20の直鎖または分岐のアルキニルカルボニル基、炭素数4〜6のシクロアルキルカルボニル基、2−(メチルチオ)エチル基、2−(メチルスルフィニル)エチル基、2−(メチルスルホニル)エチル基、ベンジル基、フェニル基などを挙げることができる。
【0018】
環状エステルの具体例としては、β−プロピオラクトン、β−ブチロラクトン、γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン、α,α−ジメチル−β−プロピオラクトン、β−メチル−δ−バレロラクトン、β−エチル−δ−バレロラクトン、α−メチル−ε−カプロラクトン、β−メチル−ε−カプロラクトン、γ−メチル−ε−カプロラクトン、3,3,5−トリメチル−ε−カプロラクトン、ω−ペンタデカラクトンなどのラクトン類;グリコリド、ジラクチド、3,6−ジエチル−1,4−ジオキサン−2,5−ジオン、1,4−ジオキセパン−2,5−ジオン、1,5−ジオキソカン−2,6−ジオン、1,5−ジオキソナン−2,6−ジオン、1,6−ジオキセカン−2,7−ジオン、3,6−ビス(2−(メチルチオ)エチル)−1,4−ジオキサン−2,5−ジオンなどのラクチド類を挙げることができる。
【0019】
本発明に好ましく用いられる環状エステルはラクチド類である。ラクチド類は、式〔IIb〕に示すような、二つのエステル結合を含む化合物である。
【0020】
本発明に用いられるラクチド類のうち、1,4−ジオキサン−2,5−ジオン構造を有する化合物が好ましく、式〔III〕で表される化合物がより好ましい。
式〔III〕中、R
1およびR
2は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜20の直鎖または分岐のアルキル基、炭素数1〜20の直鎖または分岐のハロアルキル基、炭素数2〜20の直鎖または分岐のアルケニル基、炭素数2〜20の直鎖または分岐のアルキニル基、炭素数4〜6のシクロアルキル基、炭素数1〜20の直鎖または分岐のアルキルカルボニル基、炭素数1〜20の直鎖または分岐のアルコキシカルボニル基、炭素数1〜20の直鎖または分岐のハロアルキルカルボニル基、炭素数2〜20の直鎖または分岐のアルケニルカルボニル基、炭素数2〜20の直鎖または分岐のアルキニルカルボニル基、炭素数4〜6のシクロアルキルカルボニル基、2−(メチルチオ)エチル基、2−(メチルスルフィニル)エチル基、2−(メチルスルホニル)エチル基、ベンジル基、またはフェニル基を示す。
式〔III〕で表される化合物は、R
1とR
2とが同じであるものが好ましい。本発明において最も好ましく用いられる環状エステルは、ジラクチドまたは3,6−ビス(2−(メチルチオ)エチル)−1,4−ジオキサン−2,5−ジオンである。
【0021】
環状エステルは、不斉炭素原子を有することがある。よって、本発明に用いられる環状エステルは、いずれか一つの異性体または少なくとも二つの異性体からなる混合物であることができる。より具体的に、式〔III〕で表される化合物は、二つの不斉炭素原子を有する。よって、式〔III〕で表される化合物は、(R,R)体、(S,S)体、(R,S)体、またはそれら異性体のうちの少なくとも二つからなる混合物であることができる。
【0022】
本発明に用いられる環状エステルは、市販されているものであってもよいし、公知の方法で合成したものであってもよい。ラクトン類はヒドロキシカルボン酸の分子内脱水縮合によって得ることができる。ラクチド類は、ヒドロキシカルボン酸の分子間脱水縮合により得られるオリゴマーを解重合することによって得ることができる。
1,4−ジオキサン−2,5−ジオン構造を有する化合物は、α−ヒドロキシカルボン酸の分子間脱水縮合により得られるオリゴマーを解重合することによって得ることができる。α−ヒドロキシカルボン酸としては、例えば、グリコール酸、L−乳酸、D−乳酸、α−ヒドロキシ酪酸、α−ヒドロキシイソ酪酸、α−ヒドロキシ吉草酸、α−ヒドロキシカプロン酸、α−ヒドロキシイソカプロン酸、α−ヒドロキシヘプタン酸、α−ヒドロキシオクタン酸、α−ヒドロキシデカン酸、α−ヒドロキシミリスチン酸、α−ヒドロキシステアリン酸、2−ヒドロキシ−4−(メチルチオ)ブタン酸、2−ヒドロキシ−4−(メチルスルフィニル)ブタン酸、2−ヒドロキシ−4−(メチルスルホニル)ブタン酸などを挙げることができる。
【0023】
本発明に用いられるアルキルアルミニウム化合物は、アルミニウムにアルキル基が結合した構造を有する化合物である。本発明に用いられるアルキルアルミニウム化合物は、好ましくは式〔I〕で表される化合物である。本発明において、アルキルアルミニウム化合物は、一種を単独で若しくは二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0024】
R
nAlX
3-n 〔I〕
式〔I〕中、Rは、それぞれ独立に、炭素数1〜20の直鎖または分岐状のアルキル基を示し、Xは、それぞれ独立に、ハロゲン原子または水素原子を示す。
式〔I〕中、nは1〜3の整数を示す。本発明においては、式〔I〕中のnが3であるアルキルアルミニウム化合物が好ましく用いられる。
【0025】
本発明に用いられるアルキルアルミニウム化合物の具体例としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリn−ヘキシルアルミニウム、トリn−ブチルアルミニウム、トリn−オクチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロライド、エチルアルミニウムセスキクロライド、エチルアルミニウムジクロライド、ジイソブチルアルミニウムハイドライドなどを挙げることができる。
【0026】
本発明に用いられる有機溶媒は、開環重合反応を阻害しないものであれば特に限定されない。係る有機溶媒の具体例としては、ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、シクロペンチルメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテルなどのエーテル系溶媒;トルエン、ベンゼン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒;n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタンなどの脂肪族炭化水素系溶媒;ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素系溶媒;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセタミド、N−メチルピロリドンなどのアミド系溶媒;アセトニトリル、ベンゾニトリルなどのニトリル系溶媒;酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチルなどのエステル系溶媒などを挙げることができる。有機溶媒は、一種を単独で若しくは二種以上を組み合わせて用いることができる。
これらのうち、エーテル系溶媒、芳香族炭化水素系溶媒、脂肪族炭化水素系溶媒が好ましく、エーテル系溶媒、芳香族炭化水素系溶媒がより好ましく、シクロペンチルメチルエーテル、トルエンがさらに好ましい。有機溶媒は、吸着や蒸留などの公知の方法で脱水処理されたものであることが好ましい。
【0027】
本発明に用いられる開環重合触媒は、有機リチウム系開環重合触媒、有機ナトリウム系開環重合触媒、有機カリウム系開環重合触媒、有機亜鉛系開環重合触媒、有機マグネシウム系開環重合触媒、有機スズ系開環重合触媒、有機カルシウム系開環重合触媒、有機チタン系開環重合触媒、およびアミン系開環重合触媒からなる群より選ばれる少なくとも一つであり、好ましくは有機リチウム系開環重合触媒、有機ナトリウム系開環重合触媒、有機カリウム系開環重合触媒、ジアルキル亜鉛、ビス(2,2,6,6−テトラメチルピペリジニル)亜鉛、アルキル亜鉛ハライド、置換アルキル亜鉛ハライド、シクロアルキル亜鉛ハライド、アリール亜鉛ハライド、2−ノルボルニル亜鉛ブロミド、ジアルキルマグネシウム、有機マグネシウムハライド、スズアルコキシド、およびアミン系開環重合触媒からなる群より選ばれる少なくとも一つであり、より好ましくはジアルキル亜鉛、ジアルキルマグネシウム、およびアミン系開環重合触媒からなる群より選ばれる少なくとも一つである。本発明において、開環重合触媒は、一種を単独で若しくは二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0028】
有機リチウム系開環重合触媒としては、メチルリチウム、エチルリチウム、イソプロピルリチウム、イソブチルリチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウム、n−ヘキシルリチウム、2−エチルヘキシルリチウムなどのアルキルリチウム;フェニルリチウムなどのアリールリチウム;リチウムビス(トリメチルシリル)アミド、リチウムジイソプロピルアミドなどのリチウムアミド;リチウムエトキシド、リチウムt−ブトキシドなどのリチウムアルコキシド、(トリメチルシリル)メチルリチウム;2−メトキシカルボニルイソプロピルリチウム;などを挙げることができる。
【0029】
有機ナトリウム系開環重合触媒としては、ナトリウムビス(トリメチルシリル)アミドなどのナトリウムアミド;ナトリウムエトキシド、ナトリウムt−ブトキシドなどのナトリウムアルコキシド;などを挙げることができる。
【0030】
有機カリウム系開環重合触媒としては、カリウムビス(トリメチルシリル)アミドなどのカリウムアミド;カリウムエトキシド、カリウムt−ブトキシドなどのカリウムアルコキシド;などを挙げることができる。
【0031】
有機亜鉛系開環重合触媒としては、ジメチル亜鉛、ジエチル亜鉛、ジイソプロピル亜鉛、ジシクロペンチル亜鉛、ジシクロヘキシル亜鉛などのジアルキル亜鉛;ビス(2,2,6,6−テトラメチルピペリジニル)亜鉛;メチル亜鉛クロリド、2−プロピル亜鉛ブロミド、n−プロピル亜鉛ブロミド、n−ブチル亜鉛ブロミド、イソブチル亜鉛ブロミド、sec−ブチル亜鉛ブロミド、tert−ブチル亜鉛ブロミド、1,1−ジメチルプロピル亜鉛ブロミド、1−エチルプロピル亜鉛ブロミド、1−メチルブチル亜鉛ブロミド、3−メチルブチル亜鉛ブロミド、n−ペンチル亜鉛ブロミド、1−エチルブチル亜鉛ブロミド、2−エチルブチル亜鉛ブロミド、n−ヘキシル亜鉛ブロミド、1−エチルペンチル亜鉛ブロミド、1−メチルヘキシル亜鉛ブロミド、1−プロピルブチル亜鉛ブロミド、n−ヘプチル亜鉛ブロミド、2−エチルヘキシル亜鉛ブロミドなどのアルキル亜鉛ハライド;3−シアノプロピル亜鉛ブロミド、2−シアノエチル亜鉛ブロミド、(1,3−ジオキソラン−2−イル)メチル亜鉛ブロミド、4−クロロブチル亜鉛ブロミド、4−シアノブチル亜鉛ブロミド、3−メトキシ−2−メチル−3−オキソプロピル亜鉛ブロミド、2−(1,3−ジオキソラン−2−イル)エチル亜鉛ブロミド、3−エトキシ−3−オキソプロピル亜鉛ブロミド、5−クロロペンチル亜鉛ブロミド、4−アセトキシブチル亜鉛ブロミド、4−エトキシ−4−オキソブチル亜鉛ブロミド、4−ペンテニル亜鉛ブロミド、5−ヘキセニル亜鉛ブロミド、6−クロロヘキシル亜鉛ブロミド、6−シアノヘキシル亜鉛ブロミド、(シクロヘキシルメチル)亜鉛ブロミド、5−アセトキシペンチル亜鉛ブロミド、5−エトキシ−5−オキソペンチル亜鉛ブロミド、ベンジル亜鉛ブロミド、フェネチル亜鉛ブロミド、α−メチルベンジル亜鉛ブロミド、6−アセトキシヘキシル亜鉛ブロミド、6−エトキシ−6−オキソヘキシル亜鉛ブロミド、(2−ナフチルメチル)亜鉛ブロミドなどの置換アルキル亜鉛ハライド;シクロプロピル亜鉛ブロミド、シクロブチル亜鉛ブロミド、シクロペンチル亜鉛ブロミド、シクロヘキシル亜鉛ブロミドなどのシクロアルキル亜鉛ハライド;フェニル亜鉛ブロミドなどのアリール亜鉛ハライド;2−ノルボルニル亜鉛ブロミド;乳酸亜鉛などを挙げることができる。
【0032】
有機マグネシウム系開環触媒としては、ジエチルマグネシウム、ジ−n−ブチルマグネシウムなどのジアルキルマグネシウム;マグネシウムジエトキシド、マグネシウムジtert−ブトキシドなどのマグネシウムアルコキシド;メチルマグネシウムブロミド、メチルマグネシウムクロリド、メチルマグネシウムヨージド、エチニルマグネシウムブロミド、エチニルマグネシウムクロリド、ビニルマグネシウムブロミド、ビニルマグネシウムクロリド、エチルマグネシウムブロミド、エチルマグネシウムクロリド、1−プロピニルマグネシウムブロミド、アリルマグネシウムブロミド、アリルマグネシウムクロリド、シクロプロピルマグネシウムブロミド、イソプロペニルマグネシウムブロミド、イソプロピルマグネシウムブロミド、イソプロピルマグネシウムクロリド、n−プロピルマグネシウムクロリド、2−チエニルマグネシウムブロミド、3−チエニルマグネシウムブロミド、1−メチル−1−プロペニルマグネシウムブロミド、2−メチル−1−プロペニルマグネシウムブロミド、2−メチルアリルマグネシウムブロミド、2−メチルアリルマグネシウムクロリド、3−ブテニルマグネシウムブロミド、(1,3−ジオキソラン−2−イルメチル)マグネシウムブロミド、1−メチル−2−プロペニルマグネシウムクロリド、2−ブテニルマグネシウムクロリド、イソブチルマグネシウムブロミド、イソブチルマグネシウムクロリド、n−ブチルマグネシウムクロリド、sec−ブチルマグネシウムクロリド、tert−ブチルマグネシウムクロリド、トリメチルシリルメチルマグネシウムクロリド、4−ペンテニルマグネシウムブロミド、シクロペンチルマグネシウムブロミド、シクロペンチルマグネシウムクロリド、2−ペンチルマグネシウムブロミド、3−ペンチルマグネシウムブロミド、イソペンチルマグネシウムブロミド、n−ペンチルマグネシウムブロミド、n−ペンチルマグネシウムクロリド、ペンタメチレンビス(マグネシウムブロミド) 、1,1−ジメチルプロピルマグネシウムクロリド、2,2−ジメチルプロピルマグネシウムクロリド、2,2−ジメチルプロピルマグネシウムクロリド、2−メチルブチルマグネシウムクロライド、(1,3−ジオキサン−2−イルエチル)マグネシウムブロミド、シクロヘキシルマグネシウムクロリド、n−ヘキシルマグネシウムブロミド、n−ヘキシルマグネシウムクロリド、2−エチルブチルマグネシウムクロライド、ベンジルマグネシウムクロリド、(シクロヘキシルメチル)マグネシウムブロミド、n−ヘプチルマグネシウムブロミド、シクロヘプチルマグネシウムブロミド、フェネチルマグネシウムクロリド、(2−エチルヘキシル)マグネシウムブロミド、n−オクチルマグネシウムブロミド、n−オクチルマグネシウムクロリド、n−ノニルマグネシウムブロミド、2−メチル−2−フェニルプロピルマグネシウムクロリド、3,7−ジメチルオクチルマグネシウムブロミド、n−デシルマグネシウムブロミド、(2−ナフチルメチル) マグネシウムブロミド、n−ドデシルマグネシウムブロミド、n−テトラデシルマグネシウムクロリド、n−ペンタデシルマグネシウムブロミド、n−オクタデシルマグネシウムクロリド、フェニルマグネシウムブロミド、フェニルマグネシウムクロライドなどの有機マグネシウムハライド;などを挙げることができる。
【0033】
有機スズ系開環重合触媒としては、ジメトキシスズ、ジエトキシスズ、tert−ブトキシスズ、ジイソプロポキシスズなどのスズアルコキシド;2−エチルヘキサン酸スズ(II)などを挙げることができる。
【0034】
有機カルシウム系開環重合触媒としては、カルシウムジメトキシド、カルシウムジエトキシド、カルシウムジイソプロポキシドなどのカルシウムアルコキシドなどを挙げることができる。
【0035】
有機チタン系開環重合触媒としては、テトラメトキシチタン、テトラプロポキシチタン、テトライソプロポキシチタン、テトラブトキシチタン、テトライソブトキシチタンなどのアルコキシチタン;チタニウムシクロヘキシド;チタニウムフェノキシドなどを挙げることができる。
【0036】
アミン系開環重合触媒としては、1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]−5−ドデセン、N−メチル−1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]−5−ドデセン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン、4−ジメチルアミノピリジンなどを挙げることができる。
【0037】
本発明のポリエステルの製造方法においては、先ず、環状エステルとアルキルアルミニウム化合物とを有機溶媒中で混ぜ合わせる。環状エステル、アルキルアルミニウム化合物および有機溶媒の混合順序は特に限定されない。例えば、有機溶媒に環状エステルを添加し次いでアルキルアルミニウム化合物を添加してもよいし、有機溶媒にアルキルアルミニウム化合物を添加し次いで環状エステルを添加してもよいし、有機溶媒に環状エステルとアルキルアルミニウム化合物とをほぼ同時に添加してもよい。
【0038】
本発明において、環状エステルと前記アルキルアルミニウム化合物とを混ぜ合わせる際の温度は、特に限定されないが、好ましくは75℃以下、より好ましくは70℃以下である。なお、環状エステルと前記アルキルアルミニウム化合物とを混ぜ合わせる際の温度の下限は、得られる混合物が液体状態になる温度であれば特に制限されない。
【0039】
混ぜ合わせられるアルキルアルミニウム化合物の量は、特に限定されないが、環状エステル1モルに対して、好ましくは0.5モル〜5モル、より好ましくは1モル〜3モルである。
【0040】
本発明のポリエステルの製造方法においては、次に、前記の開環重合触媒を前工程で得られた混合物に混ぜ合わせる。
本発明において、前記開環重合触媒と前記混合物との混ぜ合わせは、環状エステルと前記アルキルアルミニウム化合物との混ぜ合わせが完了した時から、好ましくは15分間〜10時間経過した時、より好ましくは30分間〜3時間経過した時に行うことができる。
【0041】
混ぜ合わせられる開環重合触媒の量は、特に制限されないが、環状エステル1モルに対して、好ましくは0.01モル〜10モル、より好ましくは0.1モル〜5モルである。
【0042】
前記開環重合触媒と前記混合物との混ぜ合わせによって、環状エステルを開環重合させることができる。開環重合の際の温度は、特に制限されないが、開環重合触媒の活性の強さに応じて調整することが好ましい。開環重合の際の温度は、例えば、常温以上還流温度以下が好ましく、常温以上100℃以下がより好ましく、常温以上70℃以下がさらに好ましい。
【0043】
開環重合が完了した後、公知の方法によって反応生成物であるポリエステルを精製することができる。精製方法は特に制限されない。例えば、反応生成物の溶液を、水酸化ナトリウム,水酸化カリウム等のアルカリ水溶液,塩酸,硝酸,リン酸等の酸水溶液,水等で洗浄した後、静置分離,遠心分離等により分液しても良い。また、反応生成物の溶液を貧溶媒に接触させて反応生成物を析出させる方法、反応生成物の溶液を温水中に分散させ溶媒を留去する方法、反応生成物の溶液を吸着カラム等に流通させる方法などが挙げられる。
【0044】
精製後の溶液中のポリエステルは、例えば、水、アルコールなどの貧溶媒によって析出させ、該析出物を温水、熱風、減圧などの手段で溶媒を留去することによって取り出すことができる。また、精製後の溶液を薄膜乾燥機、減圧乾燥機、ベント付押し出し機などを用いて該溶液から溶媒を除去してポリエステルを取り出すことができる。精製後の溶液中のポリエステルは、水、アルコールなどの貧溶媒によって析出させ、該析出物のスラリーを遠心分離器,濾過器等により固体として取り出すこともできる。
【0045】
溶液から取り出されたポリエステルは、ポリエステルの分解温度以下の温度で乾燥処理することができる。乾燥処理時に減圧して乾燥率を上げることができる。乾燥処理は、通常、残存溶媒が、好ましくは1000ppm以下、より好ましくは300ppm以下、さらに好ましくは100ppm以下になるまで行うことができる。
【0046】
本発明の製造方法によれば、一つの環状エステルから得られるホモポリエステル、二つ以上の環状エステルから得られるコポリエステルを、所望に応じて得ることができる。
本発明の製造方法によれば、高分子量のポリエステルも得ることができる。本発明の製造方法によれば、例えば、重量平均分子量が好ましくは1000〜1000000のポリエステルを得ることができる。
また、本発明の製造方法によれば、狭い分子量分布のものから広い分子量分布のものまで得ることができる。本発明の製造方法によれば、例えば、数平均分子量に対する重量平均分子量の比(Mw/Mn)が、好ましくは1.01〜3.00、より好ましくは1.01〜2.50のポリエステルを得ることができる。
なお、重量平均分子量および数平均分子量は、テトラヒドロフランを溶離液として用いたGPCによる測定結果を標準ポリスチレンの分子量に換算して得られる値である。
【0047】
本発明によって得られるポリエステルは生分解性ポリマーとして利用することができる。本発明によって得られるポリエステルは、公知の方法によって加工して、繊維、紡糸、不織布、カプセル、容器、管、チューブ、フィルム、シートなどにすることができる。本発明によって得られるポリエステルは、薬剤徐放システム材料、医療用材料、農業資材、漁業資材、汎用樹脂代替品、塗料、コーティング剤、接着剤、結着剤などとして用いることができる。
【0048】
以下に実施例を示して本発明をより具体的に説明する。なお、本発明は以下の実施例によって制限を受けるものではなく、本発明の趣旨に適合し得る範囲で適宜に変更を加えて実施することが勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0049】
本実施例において、重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)は、テトラヒドロフランを溶離液として用いたGPCによる測定結果を標準ポリスチレンの分子量に換算して得た値である。
【0050】
実施例1
200mLナスフラスコにジラクチド5.81g(40.3mmol)とトルエン27.83gを添加し、50℃に加温した。これに、50℃にて、1.0M トリエチルアルミニウムへキサン溶液(アルドリッチ社製、比重0.692)0.55gを添加し、50℃にて80分間攪拌した。該溶液を分析した。GPCにて検出できるポリマーは生成していなかった。
【0051】
この溶液に、50℃にて、1.0M ジブチルマグネシウムヘプタン溶液(アルドリッチ社製、比重0.713)0.20gを添加し、50℃にて5時間攪拌した。その後、室温まで放冷した。得られた溶液を分析した。重量平均分子量(Mw)24400、分子量分布(Mw/Mn)1.74であるポリエステルが検出された。
【0052】
実施例2
200mLナスフラスコにジラクチド5.95g(41.3mmol)とシクロペンチルメチルエーテル38.9gを添加し、60℃に加温した。これに、60℃にて、1.0M トリエチルアルミニウムへキサン溶液(アルドリッチ社製、比重0.692)0.34gを添加し、60℃で30分間攪拌した。該溶液を分析した。GPCにて検出できるポリマーは生成していなかった。
【0053】
この溶液に、60℃にて、1.0M ジエチル亜鉛へキサン溶液(アルドリッチ社製、比重0.726)0.27gを添加し、60℃にて30時間攪拌した。その後、室温まで放冷した。得られた溶液を分析した。重量平均分子量(Mw)27100、分子量分布(Mw/Mn)2.50であるポリエステルが検出された。
【0054】
実施例3
200mLナスフラスコにジラクチド5.82g(40.4mmol)とトルエン25.46gとテトラヒドロフラン15.12gを添加し、60℃に加温した。これに、60℃にて、1.0M トリエチルアルミニウムへキサン溶液(アルドリッチ社製、比重0.692)0.55gを添加し、60℃で30分間攪拌した。該溶液を分析した。GPCにて検出できるポリマーは生成していなかった。
【0055】
この溶液に、60℃にて、1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]−5−ドデセン0.517質量部をテトラヒドロフラン9.61質量部に溶解して成る溶液0.56gを添加し、60℃にて8時間攪拌した。その後、室温まで放冷した。得られた溶液を分析した。重量平均分子量(Mw)13800、分子量分布(Mw/Mn)1.54であるポリエステルが検出された。
【0056】
比較例1
200mLナスフラスコに3,6−ビス(2−(メチルチオ)エチル)−1,4−ジオキサン−2,5−ジオン10.71g(40.5mmol)とトルエン49.96gを添加し、50℃に加温した。これに、50℃にて、1.0M ジブチルマグネシウムヘプタン溶液(アルドリッチ社製、比重0.713)0.11gを添加し、50℃にて8時間攪拌した。その後、室温まで放冷した。得られた溶液を分析した。GPCにて検出できるポリマーは生成していなかった。
3,6−ビス(2−(メチルチオ)エチル)−1,4−ジオキサン−2,5−ジオン10.71g(40.5mmol)とトルエン49.96gとからなる溶液を得た。この溶液に含まれる水分量は110ppmであった。比較例1では、この水がジブチルマグネシウムを不活性化し、重合反応が阻害されて、ポリエステルを得ることができなかったものと思われる。
【0057】
実施例4
200mLナスフラスコに3,6−ビス(2−(メチルチオ)エチル)−1,4−ジオキサン−2,5−ジオン10.70g(40.5mmol)とトルエン50.02gを添加し、50℃に加温した。これに、50℃にて、1.0M トリエチルアルミニウムへキサン溶液(アルドリッチ社製、比重0.692)0.14gを添加し、50℃で8時間攪拌した。該溶液を分析した。GPCにて検出できるポリマーは生成していなかった。
【0058】
この溶液に、50℃にて、1.0M ジブチルマグネシウムヘプタン溶液(アルドリッチ社製、比重0.713)0.11gを添加し、50℃にて8時間攪拌した。その後、室温まで放冷した。得られた溶液を分析した。重量平均分子量(Mw)46300、分子量分布(Mw/Mn)1.68である、ポリエステルが検出された。
3,6−ビス(2−(メチルチオ)エチル)−1,4−ジオキサン−2,5−ジオン10.70g(40.5mmol)とトルエン50.02gとからなる溶液を得た。この溶液に含まれる水分量は110ppmであった。溶液中に含まれていたと思われる水がトリエチルアルミニウムによって捕捉され、重合反応が阻害されずに安定的に進んだからであると思われる。
【0059】
参考例1
200mLナスフラスコにジラクチド5.78g(40.10mmol)とトルエン25.73gを添加し、70℃に加温した。これに、70℃にて、1.0M トリエチルアルミニウムへキサン溶液(アルドリッチ社製、比重0.692)0.66gを添加し、70℃にて6時間攪拌した。該溶液を分析した。GPCにて検出できるポリマーは生成していなかった。