(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のような置換工法もしくは先行削孔工法では、地表面側からケーシングを回転圧入してその内部をケーソン躯体の沈設深さ分だけ掘削することになるので、対象となる硬質地盤のほかに置換の必要のない地盤まで置換土に置き換える必要がある。しかも、上記ケーシングの回転圧入と内部掘削および置換土との置き換えをケーソン構築領域のほぼ全域にわたって行わなければならないため、多大な工数と相応の工期を要することとなり、大幅なコストアップを招くこととなって好ましくない。
【0006】
また、従来の置換工法もしくは先行削孔工法は、オープンケーソン工法を実施する前に行わなければならず、例えばケーソン躯体の施工途中での追加施工は不可能であり、施工自由度に欠ける不具合がある。
【0007】
さらに、オープンケーソンの刃先下の掘削に特化した掘削装置として、例えば特許文献2に記載されたものが提案されているが、この特許文献2に記載された掘削装置では、掘削能力の不足により硬質地盤の掘削には対応することができない。
【0008】
本発明はこのような課題に着目してなされたものであり、ケーソン躯体の施工途中の特定深度で硬質地盤に到達したような場合に、少なくともその硬質地盤を掘削可能とした立て坑掘削装置および立て坑掘削方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、請求項1に記載のように、立て坑となるケーソン躯体の刃先下を含む底部の地盤を掘削する装置であって、吊り下げ母機からワイヤを介して吊り下げ支持された支持体と、
上記支持体に垂直姿勢で支持されているオーガスクリューと、上記オーガスクリューの両側で上記支持体に垂直姿勢で
支持されていると共に、少なくとも上下方向に周回移動する掘削刃を有し
、その掘削刃の周回移動面が互いに対向しているトレンチャー式の
二つの掘削ヘッドと、を備えている。
その上で、上記
二つの掘削ヘッドのうち少なくともいずれか一つの掘削ヘッドが、上部を揺動中心として上記垂直姿勢位置から外側に揺動変位可能な可動式のものとなっている。
【0010】
そして、上記
二つの掘削ヘッドが
上記オーガスクリューと共に上記垂直姿勢位置にある状態で、
上記オーガスクリューを回転させながら、上記二つの掘削ヘッドの掘削刃を周回移動させることで、下向きに掘進する下向き掘削が可能となっている一方、上記
二つの掘削ヘッドが
上記オーガスクリューと共に上記垂直姿勢位置のまま地中に貫入されている状態で、上記いずれか一つの可動式の掘削ヘッドの掘削刃を周回移動させながら、当該いずれか一つの可動式の掘削ヘッドを上記垂直姿勢位置から外側に揺動変位させることで、掘削すべき領域の上部よりも下部の方が拡幅される拡底掘削が可能となっていることを特徴とする。
【0011】
ここで、「掘削」の語は、掘り起こしたり掘りうがった土砂の除去(排土)を要する場合に多用されるが、本発明では、掘り起こしたり掘りうがった土砂の除去を要しない場合も含めて「掘削」と定義する。
【0012】
また、本発明に係る立て坑掘削装置は、既存のいわゆる床掘りのためのクラムシェル等のバケット系掘削手段と併用するものとし、バケット系掘削手段で掘削可能な部分は当該バケット系掘削手段で掘削する。その一方、例えばケーソン躯体の施工途中の特定深度で硬質地盤に到達したような場合には、上記バケット系掘削手段に代えて本発明に係る立て坑掘削装置を用いて、少なくともその特定深度の硬質地盤を掘削するものとする。
【0015】
この場合において、請求項
2に記載のように、上記二つの掘削ヘッドが上記オーガスクリューと共に上記垂直姿勢位置のまま地中に貫入されている状態で、上記オーガスクリューを反力受けとした上で、上記二つの掘削ヘッドの掘削刃を周回移動させながら、当該二つの可動式の掘削ヘッドを上記垂直姿勢位置から外側に揺動変位させつつ下向きに掘進させることで、上記下向き掘削時に比べて掘削すべき領域の上部よりも下部の方がさらに拡幅される下向き拡底掘削が可能となっていることが望ましい。
【0016】
さらに、請求項
3に記載のように、上記各掘削ヘッドは、上下方向に周回駆動される無端状のチェーンに複数の掘削刃を取り付けたものであることが望ましい。
【0017】
同様に、請求項
4に記載のように、上記可動式の掘削ヘッドは、上記支持体に搭載されたアクチュエータの作動により揺動変位するものであることが望ましい。
【0018】
本発明に係る立て坑掘削方法は、請求項
5に記載のように、
吊り下げ母機からワイヤを介して吊り下げ支持された支持体と、上記支持体に垂直姿勢で並んで配置されていると共に、少なくとも上下方向に周回移動する掘削刃を有しているトレンチャー式の複数の掘削ヘッドと、を備え、上記複数の掘削ヘッドのうち少なくともいずれか一つの掘削ヘッドが、上部を揺動中心として上記垂直姿勢位置から外側に揺動変位可能な可動式のものとなっている立て坑掘削装置を用いて、立て坑となるケーソン躯体の底部の地盤のうち少なくともケーソン躯体の刃先下を当該ケーソン躯体の内径よりも大径に掘削する方法とする。
【0019】
その上で、上記いずれか一つの可動式の掘削ヘッドの掘削刃の周回移動面が上記ケーソン躯体の刃先方向を指向しつつこれに接近するように、上記複数の掘削ヘッドを上記ケーソン躯体の底部の地盤に着底させて、上記各掘削ヘッドの掘削刃を周回移動させながら下向きに掘進させて、上記ケーソン躯体の刃先下の深度まで掘削を行う下向き掘削工程と、上記下向き掘削工程に続いて、上記いずれか一つの可動式の掘削ヘッド以外の各掘削ヘッドを反力受けとした上で、上記いずれか一つの可動式の掘削ヘッドの掘削刃を周回移動させながら、当該いずれか一つの可動式の掘削ヘッドを上記ケーソン躯体の刃先に接近する方向に揺動変位させることで、上記下向き掘削された領域の上部よりも下部の方が拡幅されるように上記ケーソン躯体の刃先下まで掘削する拡底掘削工程と、を含むことを特徴とする。
【0020】
この場合において、請求項
6に記載のように、上記下向き掘削工程とそれに続く上記拡底掘削工程とを1サイクルとする施工を上記ケーソン躯体の周方向で繰り返し行うものとする。
【0021】
より具体的には、請求項
7に記載のように、上記下向き掘削工程とそれに続く上記拡底掘削工程とを1サイクルとする施工を上記ケーソン躯体の周方向で連続的または間歇的に繰り返し行うものとする。
【発明の効果】
【0022】
請求項1,
5に記載の発明によれば、ケーソン躯体の施工途中の特定深度で硬質地盤に到達したような場合であっても、その時点から上記特定深度の硬質地盤での掘削が可能となるほか、ケーソン躯体の刃先下までも無理なく掘削することが可能となる。そのため、従来のような置換工法もしくは先行削孔工法が不要となって、工期が短く、経済性に優れた施工を行える。また、掘削装置そのものが小規模な設備で済むことから、機動性および取り扱い性、さらには汎用性にも優れると共に、コスト的にも有利となる。
【0023】
特に、請求項
1〜4に記載の発明によれば、トレンチャー式の二つの掘削ヘッドに加えてオーガスクリューを併用しているため、掘削効率が一段と向上する利点がある。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1〜5は本発明に係る立て坑掘削装置が適用されるオープンケーソン工法の概略を示す工程説明図である。そして、いずれの図においても、(A)は平面図を、(B)は縦断面説明図をそれぞれ示している。
【0026】
図1において、1はPCウェルあるいは鋼製セグメント等の環状ロットを複数段にわたって積み重ねて圧入沈設した構築途中の円形のケーソン躯体、1aはケーソン躯体1の最下段の刃口(刃口部または刃口リング)、2はケーソン躯体1の坑底部の地盤の掘削のための吊り下げ母機(ベースマシン)として機能するクローラクレーン(以下、単にクレーンと言う。)、3はクレーン2からワイヤ(ワイヤロープ)3aを介して吊り下げ支持されたバケット系掘削機としてのクラムシェルである。なお、ケーソン躯体1の周囲に設置される油圧ジャッキタイプの圧入沈設装置は図示を省略している。
【0027】
また、
図1の(B)において、4aはケーソン躯体1の坑底部でクラムシェル3による掘削が可能な比較的軟質の地盤を示し、4bは地盤4aの下側にあってクラムシェル3での掘削がとかく困難とされる硬質の地盤を示している。ここでは、ケーソン躯体1の刃口1aが既に硬質地盤4bに到達している例を示している。硬質地盤4bをクラムシェル3では掘削が困難な理由は、周知のように、自重のみで坑底に投入されるクラムシェル3は、それ自体では積極的な掘進能力がなく、土砂の掴み動作に主眼が置かれているためである。
【0028】
図1に示すように、比較的軟質の地盤4aについては、その下側の硬質地盤4bが露出するまでクラムシェル3で掘削を行うものとする。すなわち、地盤4aの掘削に際しては、ケーソン躯体1の坑底部へのクラムシェル3の投下と地盤4aでの土砂の掴み動作、およびクラムシェル3の吊り上げによるケーソン躯体1外部への土砂の搬出と掴み開放動作(排土)と、を繰り返し行うものとする。なお、必要に応じてクラムシェル3に代えてグラブバケットを用いることも可能である。
【0029】
比較的軟質の地盤4aの掘削を終え、その下側の硬質地盤4bが露出するようになったならば、
図2に示すように、クレーン2から吊り下げ支持されている
図1のクラムシェル3を、
図2に示した掘削装置5に持ち替えた上で、硬質地盤4bの掘削を行うものとする。なお、クラムシェル3から掘削装置5への持ち替えに代えて、掘削装置5を予め吊り下げ支持している別のクレーンを用いても良い。
【0030】
ここで、掘削装置5は、
図6の拡大図に示すように、クレーン2からワイヤ3a等を介して吊り下げ支持された支持体としてのベース部材6に、トレンチャー式の二つで一組の掘削ヘッド7A,7Bが垂直姿勢で並んで配置されているものである。そして、一方の掘削ヘッド7Bが他方の掘削ヘッド7Aから離間するように外側に揺動変位して展開可能となっている。なお、掘削装置5の詳細は後述する。
【0031】
掘削装置5による掘削は、最初に、
図2に示すように、硬質地盤4bが露出している坑底部の中央部分を所定間隔で間歇的に掘削するものとする。つまり、
図2の(A)に示すように、平面視で矩形状をなす掘削済み部分D1を単位要素とする掘削を坑底部の中央部分で掘削装置5により間歇的にn回繰り返し行う。その結果として、坑底部の中央部分では平面視で略格子状をなす掘り残し部分Q1が隔壁状に残されることになる。
【0032】
ここで、硬質地盤4bが露出している坑底部の中央部分を所定間隔で間歇的に掘削するようしているのは、坑底部を全面掘削するのでは効率が悪く、また、所定間隔で間歇的に掘削しておけば、掘り残し部分Q1は平面方向での地盤としての連続性が断たれていることで、後から掴み動作を主眼とするクラムシェル3でも掘削が可能となるとの知見に基づいている。なお、
図2の(A)では、掘削済み部分(ハッチングを施した部分)を符号D1で示し、同図の(B)では、坑底部の中央部分での掘り残し部分(同じくハッチングを施した部分)を符号Q1で示している。
【0033】
続いて、
図3に示すように、硬質地盤4bのうちケーソン躯体1の刃口1aの刃先下近くにケーソン躯体1の円周方向に沿って残された硬質地盤4bを、その周方向に沿って所定間隔で間歇的に掘削する。つまり、
図3の(A)に示すように、掘削済み部分D1とは別の掘削済み部分D2を単位要素とする掘削を掘削装置5によりケーソン躯体1の円周方向で間歇的にn回繰り返し行う。
【0034】
なお、
図3での掘削に際しては、
図2と比べて掘削装置5の姿勢を変更しているが、これについては後述する。また、
図3の(A)では掘削済み部分D2を単位要素する掘削をケーソン躯体1の円周方向に沿って間歇的に施すようにしているのは、次のような理由による。すなわち、掘削済み部分D2同士の間に円周方向に沿って掘り残し部分Q2が存在していても、間歇的な掘削済み部分D2の存在によって硬質地盤4bとしての強度が低下しているので、以降のケーソン躯体1の圧入沈設は可能であるとの知見に基づいている。
【0035】
その一方、地盤の性状等によっては、
図3の(A)に示した掘削済み部分D2を単位要素とする間歇的な掘削では、なおも以降のケーソン躯体1の圧入沈設が困難と判断される場合がある。このような場合には、
図4に示すように、硬質地盤4bのうちケーソン躯体1の刃口1aの刃先下近くにケーソン躯体1の円周方向に沿って残された硬質地盤4bを連続的に掘削するものとする。つまり、
図3の(A)に示したものと同様の掘削済み部分D2を単位要素として、ケーソン躯体1の円周方向に沿ってそれらの掘削済み部分D2,D2同士が連続するように掘削作業をn回繰り返すものとする。
【0036】
この後、
図3の(A)に示す掘削形態であるか
図4に示す掘削形態であるかにかかわらず、
図5に示すように、クレーン2側で掘削装置5から再び
図1に示したクラムシェル3に持ち替えて、掘り残し部分Q1,Q2を掘削しながら排土する作業をn回繰り返す。この場合において、ケーソン躯体1の坑底部分の硬質地盤4bには、掘り残し部分Q1,Q2が隔壁状に残されているだけあるので、掴み動作を主とするクラムシェル3による掘削であっても十分に対応可能である。そして、
図5に示した硬質地盤4bの掘削によって発生した土砂がある程度排土されたならば、以降のケーソン躯体1のさらなる圧入沈設が可能となる。
【0037】
図6は
図2,3に示した掘削装置5の詳細を示していて、同図(A)は下向き掘削時の姿勢を示す説明図、同図(B)は拡底掘削時の姿勢を示す説明図である。
図6の(A)に示すように、掘削装置5は、例えばボックス状のベース部材6と、このベース部材6に並んで配置された二つで一組のトレンチャー式の掘削ヘッド7A,7Bと、アクチュエータとしての油圧シリンダ8と、を備えて構成されている。ベース部材6は、
図2,3に示したワイヤ3aのほかフック9aや補助ワイヤ9b等を介して、水平状態を保つように
図2,3に示したクレーン2から吊り下げ支持される。
【0038】
図6に示したトレンチャー式の一対の掘削ヘッド7A,7Bは共に同じ構造のものである。各掘削ヘッド7A,7Bは、例えば堅牢な略角柱状のフレーム10の上下両端部にそれぞれにチェーンスプロケット11a,11bが軸受支持されていると共に、それら双方のチェーンスプロケット11a,11b間に無端状(エンドレスタイプ)のドライブチェーン12が巻き掛けられている。そして、一例として
図7に掘削ヘッド7A,7Bの先端部を拡大して示すように、ドライブチェーン12には、形状および向きが微妙に異なる複数の掘削刃(ビット)13が所定のピッチで長手方向に沿って装着されている。なお、
図6ではドライブチェーン12を含む複数の掘削刃を符号13で示している。また、
図7では、チェーンスプロケット11a,11bとそれらの間のフレーム10が外部に露出しないように両側が側板14で覆われている。
【0039】
その上で、
図6に示した例えば上側のチェーンスプロケット11aと同軸上に設けた図示外の油圧モータの起動により、各掘削刃13が周回駆動されるようになっている。このようなトレンチャー式の掘削ヘッド7A,7Bはいわゆる硬質地盤対応の重掘削タイプのものであり、その基本構造は古くから公知のものである。
【0040】
また、一対の掘削ヘッド7A,7Bは、双方の掘削刃13の周回移動面が近接しつつ互いに対向するように、共に垂直姿勢にてベース部材6に支持されている。一方の掘削ヘッド7Aはその垂直姿勢を維持するようにフレーム10がベース部材6に固定されていて、いわゆる定位置固定式のものとなっている。その一方、他方の掘削ヘッド7Bはそのフレーム10がベース部材6に対し軸部材10aを介して揺動可能に支持されていて、一方の掘削ヘッド7Aと平行となる垂直姿勢位置P1から外側に向かって離間する方向に、すなわち
図6の(B)に示す展開位置P2まで揺動変位可能な可動式のものとなっている。この他方の掘削ヘッド7Bの揺動変位動作(展開動作)は、ベース部材6に設けられた油圧シリンダ8の伸縮作動に基づいて行われる。
【0041】
図8〜11は、
図6に示した掘削装置5を用いた上で、
図2に示した刃口1aの刃先下近くに残された硬質地盤4bの掘削を行う場合の詳細な手順を示している。
【0042】
図8に示すように、クレーン2から吊り下げた掘削装置5をケーソン躯体1の坑内に投入し、ケーソン躯体1の刃口1aの近くに着底させる。この場合、双方の掘削ヘッド7A,7Bは共に垂直姿勢に維持しておくものとし、且つ可動式の掘削ヘッド7Bの掘削刃13の周回移動面が刃口1aのテーパ面Tを指向するように掘削装置5の姿勢を調整する。
【0043】
そして、
図9に示すように、
図8の状態から双方の掘削ヘッド7A,7Bの掘削刃13を互いに逆方向に周回駆動させると共に、ワイヤ3aで吊り下げられている掘削装置5全体を自重にて極低速で降下させ、双方の掘削ヘッド7A,7Bの掘削刃13の周回移動と掘削装置5全体の自重により掘進力を得て、硬質地盤4bを下向きに掘削する。この掘削形態を下向き掘削と言う。なお、
図9の符号M1,M2は掘削刃13の周回移動方向を示している。これにより、掘削ヘッド7A,7Bの掘削刃13の周回移動面を短辺とし、且つ二つ並んだ掘削ヘッド7A,7Bの並列幅を長辺とする平面視で矩形状をなす深溝状に下向きに掘削されることになる。
【0044】
この場合において、双方の掘削ヘッド7A,7Bの掘削刃13の周回移動方向M1,M2が互いに逆向きであることにより、それぞれの掘削ヘッド7A,7Bでの掘削に伴う反力は互いに相殺し合うかたとなる。そのため、それぞれの掘削ヘッド7A,7Bはその垂直姿勢を安定して維持することが可能である。
【0045】
図9の状態を経ることで刃口1aの刃先下に相当する深度まで掘削された状態を
図10に示す。掘削装置5が所定の深度に到達したならば、この状態では掘削ヘッド7A,7Bが共に地中に貫入された状態にあるので、先の下向き掘削に続いて、
図11に示すように、固定式の掘削ヘッド7Aの掘削刃13の周回駆動を停止させて、可動式の掘削ヘッド7Bの掘削刃13のみを周回駆動させた状態とする。
【0046】
その上で、掘削装置5全体をその位置に留めたままで、油圧シリンダ8を低速にて収縮動作させることで、可動式の掘削ヘッド7Bの掘削刃13の周回移動面が刃口1aのテーパ面Tに接近する方向に、すなわち可動式の掘削ヘッド7Bが当初の垂直姿勢位置P1(
図6参照)から外側に向かって離間する方向に、その可動式の掘削ヘッド7Bを低速にて
図11の展開位置P2まで揺動変位させる。なお、
図10,11の符号Q1は掘削ヘッド7Bの揺動方向を示す。
【0047】
可動式の掘削ヘッド7Bを展開位置P2まで揺動変位させた状態を
図11に示す。同図に示すように、可動式の掘削ヘッド7Bが展開位置P2まで展開する過程で、先に深溝状に掘削された部分が上部に比べて下部の方が幅広となるように拡底されるかたちで掘削される。この掘削形態を拡底掘削と言う。これにより、刃口1aの刃先下の深さまで掘削されたことになる。この場合において、拡底掘削には直接関与しない固定側の掘削ヘッド7Aも掘削された溝状空間に貫入されたままであり、この固定側の掘削ヘッド7Aは可動側の掘削ヘッド7Bの揺動変位に伴う反力を受け止めるいわゆる反力受けとして機能する。
【0048】
以上のような下向き掘削とそれに続く拡底掘削は、
図3,4に掘削済み部分D2として示したそれぞれについて繰り返し行うものとする。
【0049】
なお、
図2〜4において、坑底部の中央部分に掘削済み部分D1として示した部分を掘削する場合にも、
図9,10に示した下向き掘削と同様の形態で掘削を行う。
【0050】
したがって、本実施の形態によれば、例えばケーソン躯体1の施工途中の特定深度で硬質地盤4bに到達したような場合であっても、先に説明したような置換工法もしくは先行削孔工法によらずして、
図1に示したクラムシェル3に代えて掘削装置5を用いることで、硬質地盤4bに到達した時点からその硬質地盤4bでの掘削が可能となる。しかも、掘削装置5を用いることで、ケーソン躯体1の刃口1aの刃先下までも無理なく掘削することが可能となる。
【0051】
そのため、先に説明した置換工法もしくは先行削孔工法が不要となって、工期が短く、経済性に優れた施工を行える。また、掘削装置5そのものが小規模な設備で済むことから、機動性および取り扱い性、さらには汎用性にも優れると共に、掘削設備のコストの面でも著しく有利となる。
【0052】
図12,13は本発明に係る立て坑掘削装置の第2の実施の形態を示す図で、先に
図6,7に基づいて説明した第1の実施の形態と共通する部分には同一符号を付してある。そして、この第2の実施の形態では、掘削装置15に二つの掘削ヘッド7B,7Bに加えてオーガスクリュー17を併用していて、
図12は二つの掘削ヘッド7B,7Bが共に垂直姿勢位置にある状態を示し、
図13は二つの掘削ヘッド7B,7Bを共に揺動変位させた展開状態を示している。
【0053】
図12に示す第2の実施の形態の掘削装置15では、ベース部材6の中央部から、例えば油圧モータを主要素とする駆動機構16を含む螺旋羽根状のオーガスクリュー17が吊り下げ支持されている。オーガスクリュー17はそれ自体の軸心回りに駆動機構16にて回転駆動される。そして、オーガスクリュー17をはさんでその両側に掘削ヘッド7Bが一つずつ配置されていて、それぞれの掘削ヘッド7Bの掘削刃13の周回移動面が互いに対向している。
【0054】
双方の掘削ヘッド7B,7Bは、
図6に示した可動式の掘削ヘッド7Bと同じ構造のものであり、それぞれのフレーム10が軸部材10aを介してベース部材6に揺動可能に支持されている。したがって、それぞれの掘削ヘッド7Bは、アクチュエータとしての油圧シリンダ8の伸縮作動に応じて、
図12に示す垂直姿勢位置P1と
図13に示す展開位置P2との間で揺動変位可能となっている。
【0055】
このように構成された第2の実施の形態の掘削装置15では、
図9,10に示した下向き掘削と同等の掘削を行う際には、
図12に示すように、双方の掘削ヘッド7Bがオーガスクリュー17と平行となるように垂直姿勢位置P1に保持した上で、それらのオーガスクリュー17と双方の掘削ヘッド7B,7Bとを併用するかたちで掘削を行うものとする。双方の掘削ヘッド7B,7Bでの掘削刃13の周回移動方向は
図9の場合と同様に互いに逆向きとする。
【0056】
この場合において、双方の掘削ヘッド7B,7Bに先行してオーガスクリュー17が硬質地盤4bに食い込むかたちとなるので、先行して硬質地盤4bに食い込んだオーガスクリュー17が双方の掘削ヘッド7B,7Bでの掘削に伴う反力を受け止める反力受けとしても機能すると共に、下向きの掘進力がより安定したものとなる。そのため、第1の実施の形態の掘削装置5に比べて掘削効率が一段と向上する。なお、なお、
図2〜4において、坑底部の中央部分に掘削済み部分D1として示した部分を掘削する場合にも、
図12の姿勢のもとで下向き掘削を行う。
【0057】
また、
図10,11に示した拡底掘削と同等の掘削を行う際には、
図10と同様に、下向き掘削終了時点から、刃口1aに近い側の一方の掘削ヘッド7Bの掘削刃13のみを周回駆動させながら、その一方の掘削ヘッド7Bを
図11と同様に展開位置P2まで揺動変位させることで拡底掘削を行う。この場合において、拡底掘削には直接関与しない他方の掘削ヘッド7Bとオーガスクリュー17は、掘削動作中の一方の掘削ヘッド7Bの揺動変位に伴う反力受けとして機能する。
【0058】
したがって、この拡底掘削に際しても、他方の掘削ヘッド7Bとオーガスクリュー17が共に反力受けとして機能することで、一方の掘削ヘッド7Bの揺動変位に基づく掘削をより効率的に行えるようになる。
【0059】
さらに、
図12に示した掘削装置15は、先に述べたような下向き掘削と拡底掘削のほかに、第3の掘削形態での掘削が可能である。
【0060】
図12に示した掘削装置15において、
図2〜4の坑底部の中央部分に掘削済み部分D1として示された部分を掘削する場合にも、
図12に示した姿勢のもとで下向き掘削を行うことは先に述べた通りである。そして、その下向き掘削が所定深度まで到達した時点では、
図12に示した掘削装置15のオーガスクリュー17とその両側の可動式の掘削ヘッド7Bが共に垂直姿勢のまま硬質地盤4bに貫入された状態にあることも先に述べた通りである。
【0061】
そこで、
図12に示した掘削装置15が硬質地盤4bに貫入された状態で、双方の掘削ヘッド7Bの掘削刃13を周回駆動したままで、
図13に示すように、それら双方の掘削ヘッド7Bを展開位置P2まで揺動変位させながらさらに掘削を行うものとする。こうすることにより、
図12に示した掘削装置15の姿勢で掘削された領域が、
図13に示した掘削装置15の姿勢で掘削を終えるまで、拡大されるかたちで掘削されることになる。ここでは、この掘削形態を下向き拡底掘削と言う。
【0062】
したがって、
図2〜4の坑底部の中央部分に掘削済み部分D1として示された部分を掘削する場合に、上記のような下向き拡底掘削を併用するならば、一回の操作での掘削領域が拡大化されて、より効率的な掘削を行えると共に、
図2〜4の坑底部の中央部分での掘削済み部分D1の数を減らすことができる。
【0063】
図14,15は本発明に係る立て坑掘削装置の第3の実施の形態を示す図で、先に
図6に基づいて説明した第1の実施の形態と共通する部分には同一符号を付してある。そして、この第3の実施の形態では、掘削装置25に三つの可動式の掘削ヘッド7Bを併用していて、
図14の(A)は三つの可動式の掘削ヘッド7Bが共に垂直姿勢位置にある状態の平面図を、同図(B)は三つの可動式の掘削ヘッド7Bが共に垂直姿勢位置にある状態の正面説明図を示している。さらに、
図15は
図14に示した掘削装置の展開状態での正面説明図を示している。
【0064】
図14に示す第3の実施の形態では、平面視において三つの可動式の掘削ヘッド7Bの配置が均等なものとなるように、ベース部材6に対し三つの可動式の掘削ヘッド7Bを支持させたものである。なお、各掘削ヘッド7Bの支持形態およびアクチュエータとしての油圧シリンダ8が付帯するものであることは、
図12,13に示した可動式の掘削ヘッド7Bと同様である。なお、
図14の(A)では、ベース部材6を図示省略している。また、
図15では三つの掘削ヘッド7Bを共に展開位置P2まで揺動変位させた状態を示しているが、後述するように、三つの掘削ヘッド7Bを同時に展開させることはない。
【0065】
したがって、この第3の実施の形態の掘削装置25では、
図9,10に示した下向き掘削と同等の掘削を行う際には、それぞれの可動式の掘削ヘッド7Bが共に
図14に示すような垂直姿勢位置にある状態で、且つそれぞれの掘削ヘッド7Bの掘削刃13を共に同じ方向に周回駆動させることで掘削を行うものとする。また、
図2〜4の坑底部の中央部分に掘削済み部分D1として示された部分を掘削する場合にも、
図14に示した姿勢のもとで下向き掘削を行うものとする。
【0066】
さらに、
図10,11に示した拡底掘削と同等の掘削を行う際には、
図15に示すように、三つの可動式の掘削ヘッド7Bのうちいずれか一つの掘削ヘッド7Bのみを展開位置P2まで揺動変位させることで掘削を行うものとする。
【0067】
この場合において、
図10,11に示した拡底掘削と同等の掘削に際しては、刃口1aの刃先下の掘削を目的としていることから、三つの掘削ヘッド7Bが付帯している本実施の形態の掘削装置25では、仮にワイヤ3a等で吊り下げ支持されている掘削装置25の平面視での姿勢が変わっても、三つの可動式の掘削ヘッド7Bのうちいずれか一つをケーソン躯体1の刃口1aのテーパ面T(
図11参照)と対面する位置に容易に割り出すことができるようになる。
【解決手段】ケーソン躯体の刃先下を含む底部の地盤を掘削する装置である。ベース部材6と、ベース部材6に配置されたトレンチャー式の掘削ヘッド7A,7Bとを備える。可動式の掘削ヘッド7Bが可動式のものとなっていて、双方の掘削ヘッド7A,7Bが共に垂直姿勢位置にある状態で、下向きに掘進する下向き掘削が可能となっている。双方の掘削ヘッド7A,7Bが垂直姿勢位置のまま地中に貫入されている状態で、可動式の掘削ヘッド7Bを展開位置P2まで揺動変位させることで、掘削すべき領域の上部よりも下部の方が拡幅される拡底掘削が可能となっている。