(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6298570
(24)【登録日】2018年3月2日
(45)【発行日】2018年3月20日
(54)【発明の名称】パレット交換装置
(51)【国際特許分類】
B23Q 7/00 20060101AFI20180312BHJP
【FI】
B23Q7/00 G
【請求項の数】10
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-203627(P2017-203627)
(22)【出願日】2017年10月20日
【審査請求日】2017年10月27日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000146087
【氏名又は名称】株式会社松浦機械製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100084696
【弁理士】
【氏名又は名称】赤尾 直人
(72)【発明者】
【氏名】加藤 敏彦
(72)【発明者】
【氏名】為頭 孝諮
(72)【発明者】
【氏名】堀口 久介
【審査官】
宮部 菜苗
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−160601(JP,A)
【文献】
再公表特許第2015/177906(JP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 7/00−7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パレット段取り台と、テーブルとの間にてパレットを授受するパレット交換アームを、上下動自在であると共に、水平方向に静止した状態にて支持する旋回軸を配置しているパレット交換装置であって、前記テーブルは、前記旋回軸側に対して進退すると共に、当該旋回軸側の先端における立ち上がり部、及び当該立ち上がり部の揺動中心軸を介して揺動自在に支持され、かつパレットを介してワークを載置する揺動部を備えており、前記旋回軸は、両側にパレット交換アームを延設しており、前記パレット交換アームは、パレットを授受するために水平方向に延設されたパレット支持部と前記両側の位置とを架橋する架橋延設部を備えており、前記テーブルがパレットを授受する段階において、前記架橋延設部が、前記立ち上がり部を上側にて跨った配置状態を実現する形状を有しているパレット交換装置。
【請求項2】
前記旋回軸が、当該旋回軸の下端側に位置している旋回支持部を上側から被覆する被覆部を固着する一方、前記被覆部は、前記立ち上がり部を挿脱自在とする挿脱口を備えていることを特徴とする請求項1記載のパレット交換装置。
【請求項3】
前記旋回軸が、可動被覆部を固着する一方、当該可動被覆部の下側に、当該旋回軸の下端側に位置している旋回支持部を上側から被覆する静止被覆部が床面上に配置されており、前記静止被覆部においては、前記立ち上がり部を挿脱自在とする挿脱口を備えていることを特徴とする請求項1記載のパレット交換装置。
【請求項4】
前記挿脱口が、前記立ち上がり部及び当該立ち上がり部と接続するテーブルの一部領域を挿脱自在としていることを特徴とする請求項2、3の何れか一項に記載のパレット交換装置。
【請求項5】
前記挿脱口を開閉するドアを設けていることを特徴とする請求項2、3、4の何れか一項に記載のパレット交換装置。
【請求項6】
前記旋回軸が、当該旋回軸の下端側に位置している旋回支持部を上側から被覆する被覆部を固着しており、前記立ち上がり部に対する下側支持部が前記テーブルの長手方向に沿った断面が逆L字型を形成することによって、前記テーブルがパレットを授受する段階において、前記立ち上がり部及び前記下側支持部が前記被覆部に対し上下方向及び水平方向にて離れた配置状態を実現することを特徴とする請求項1記載のパレット交換装置。
【請求項7】
前記旋回軸が、可動被覆部を固着する一方、当該可動被覆部の下側に、当該旋回軸の下端側に位置している旋回支持部を上側から被覆する静止被覆部が床面上に配置されており、前記立ち上がり部に対する下側支持部が前記テーブルの長手方向に沿った断面が逆L字型を形成することによって、前記テーブルがパレットを授受する段階において、前記立ち上がり部及び前記下側支持部が前記可動被覆部及び前記静止被覆部に対し、上下方向及び水平方向にて離れた配置状態を実現することを特徴とする請求項1記載のパレット交換装置。
【請求項8】
前記旋回軸が、当該旋回軸の下端側に位置している旋回支持部を上側から被覆する被覆部を固着しており、前記立ち上がり部に対する下側支持部が、前記被覆部の曲率半径よりも大きな曲率半径を有した状態にて前記被覆部に比し高い領域及び同一の高さ領域を形成しており、前記高い領域が、前記被覆部の外側面の上側にて当該外側面と当接しない状態を形成しており、前記同一の高さ領域が前記旋回軸の旋回中心軸の位置を基準として、前記外側面よりも遠距離を形成することによって、前記テーブルがパレットを授受する段階において、前記立ち上がり部及び前記下側支持部が前記被覆部に対し上下方向及び水平方向にて離れた状態を実現することを特徴とする請求項1記載のパレット交換装置。
【請求項9】
前記旋回軸が、可動被覆部を固着する一方、当該可動被覆部の下側に、当該旋回軸の下端側に位置している旋回支持部を上側から被覆する静止被覆部が床面上に配置されており、前記立ち上がり部に対する下側支持部が、前記可動被覆部及び前記静止被覆部の曲率半径よりも大きな曲率半径を有した状態にて前記可動被覆部及び前記静止被覆部に比し高い領域及び同一の高さ領域を形成しており、前記高い領域が、前記可動被覆部及び前記静止被覆部の外側面の上側にて当該外側面と当接しない状態を形成しており、前記同一の高さ領域が前記旋回軸の旋回中心軸の位置を基準として、前記外側面よりも遠距離を形成することによって、前記テーブルがパレットを授受する段階において、前記立ち上がり部及び前記下側支持部が前記可動被覆部及び前記静止被覆部に対し上下方向及び水平方向にて離れた状態を実現することを特徴とする請求項1記載のパレット交換装置。
【請求項10】
前記テーブルがパレットを授受するために、旋回軸に最も近い状態にある段階において、前記立ち上がり部が旋回軸の表面近傍の位置にて配置された状態を実現していることを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9の何れか一項に記載のパレット交換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パレット段取り台と、テーブルとの間にてパレットを授受するパレット交換アームを、上下動自在であると共に、水平方向に静止した状態にて支持する旋回軸を配置しているパレット交換装置を対象としている。
【背景技術】
【0002】
パレット交換装置は、パレットを載置しているパレット段取り台、加工前又は加工後のワークを、パレットを介して載置しているテーブル、及び両側に延設されたパレット交換アームを保持し、かつ当該パレット交換アームと共に水平方向に沿って旋回を行う旋回軸を必要不可欠な構成要素としている。
【0003】
前記旋回軸においては、パレット交換アームを支持している部位の下側にボールベアリング装置等の円滑な旋回を可能とするための旋回支持部を備えているが、主軸によるワークに対する切削の結果発生する切削粉が前記旋回支持部に進入することを防止するために、旋回支持部の上側から被覆する被覆部を備える構成が近年好適に採用されている。
【0004】
一方、主軸による切削作業の便宜のために、テーブルにおいては、パレットを介してワークを載置している領域を揺動自在とするために、旋回軸側の先端に揺動中心軸を備えた立ち上がり部を備えると共に、上記領域を当該旋回軸によって支持された揺動部を備えた構成を採用する場合が多い。
【0005】
このような立ち上がり部を有するテーブルが前記被覆部を備えた旋回軸側に対して進退する場合には、当該立ち上がり部の存在は、パレット交換アームの旋回に対する支障とならざるを得ない。
しかも、旋回軸が被覆部を固着することによって、所定のスペースを占有していることは、上記支障を更に一層助長する。
【0006】
このような支障を避けるためには、立ち上がり部を有するテーブルが旋回軸側に対して進退することに代えて、
図5に示すように、被覆部2を固着している旋回軸1を揺動部41及び先端側の立ち上がり部42を備えているテーブル4が進退する方向の側部に配置し、更にパレット段取り台5を、テーブル4から更に離れた側部に配置し、かつ前記テーブル4が進退する方向と旋回軸1及び段取り台5の配置方向とを直交状態とする構成を想定することができる。
【0007】
しかしながら、このような配置構成の場合には、テーブル4が進退する方向の空間領域に加えて、パレットを交換するために当該側部の空間領域をも必要とし、コンパクトなパレット交換装置を実現することができない。
因みに、テーブルが旋回軸側に対して進退する構成と、上記の側部に配置する構成とを対比した場合、テーブルとパレット交換アームとが上下方向において重畳(オーバーラップ)する領域範囲は、前者の構成の方が後者の構成よりも大きいという関係にあり、前者の構成は、専らパレット交換アームの旋回のために必要な空間を小さく設定することができる。
【0008】
このような側部の配置構成に代えて、前記立ち上がり部及び前記揺動部を有するテーブルが旋回軸側に対して進退する構成を維持した場合には、旋回軸は、パレットをテーブル及び段取り台にて授受する際に、テーブルと段取り台との中間位置から前記授受に適合するような位置に移動するような構成を想定することができる。
【0009】
しかしながら、このような構成の場合には、テーブルの進退に加え、旋回軸の移動をも必要不可欠となり、煩雑な制御を必要不可欠とせざるを得ない。
【0010】
パレット交換装置については、様々な公知技術が開示されている。
【0011】
これらの公知技術のうち、特許文献1においては、揺動可能なテーブル6をテーブル用駆動装置30によって移動させているが、旋回軸に該当する支持軸42は、テーブル6の移動方向の斜方向側部に配置されている(
図1、3、4:尚、前記支持軸42は、被覆部を備えていない。)。
【0012】
しかしながら、このような配置構成の場合には、前記
図5の直交状態の場合に比し、パレットを交換するために必要な側部の空間領域がやや少なくなるという程度であって、コンパクトなパレット交換装置を実現できない点において変わりはない。
【0013】
特許文献2においては、立ち上がり部に該当する支持部17に設けた揺動軸19に沿って揺動可能なテーブル6の側方にパレット交換アームに該当する旋回部材34を設置し、かつテーブル6又は旋回部材34の何れか一方又は双方を相互に進退可能としている(
図2及び請求項1:尚、旋回部材34においても、被覆部は備えられていない。)。
【0014】
しかしながら、上記構成においても、コンパクトなパレット交換装置を実現できない点において、
図5に示す構成及び特許文献1の構成と変わりはない。
【0015】
のみならず、上記構成の場合には、テーブル6の主軸の下側領域に対する進退だけでなく、旋回部材34及び/又はテーブル6の相互間という上記進退と異なる方向の進退を必要とすることから、煩雑な制御を必要不可欠とする。
【0016】
このように、公知技術を参照するも、ワークをパレットを介して揺動可能な状態にて支持し、かつ旋回軸側に対して進退するテーブルの旋回軸の先端に揺動中心軸を有する立ち上がり部を備える一方、旋回軸の下端の旋回支持部を上側から被覆しているパレット交換装置については、コンパクトな構成は全く提唱されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】特開2004−160601号公報
【特許文献2】特開2015−205356号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明は、ワークを、パレットを介して揺動可能な状態にて支持し、かつ旋回軸側に対して進退するテーブルの先端に揺動中心軸を有する立ち上がり部を備えているパレット交換装置において、コンパクトな構成を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記課題を解決するため、本発明の基本構成は、パレット段取り台と、テーブルとの間にてパレットを授受するパレット交換アームを、上下動自在であると共に、水平方向に静止した状態にて支持する旋回軸を配置しているパレット交換装置であって、前記テーブルは、前記旋回軸側に対して進退すると共に、当該旋回軸側の先端における立ち上がり部、及び当該立ち上がり部の揺動中心軸を介して揺動自在に支持され、かつパレットを介してワークを載置する揺動部を備えており、前記旋回軸は、両側にパレット交換アームを延設しており、前記パレット交換アームは、パレットを授受するために水平方向に延設されたパレット支持部と前記両側の位置とを架橋する架橋延設部を備えており、前記テーブルがパレットを授受する段階において、前記架橋延設部が、前記立ち上がり部を上側にて跨った配置状態を実現する形状を有しているパレット交換装置からなる。
【発明の効果】
【0020】
前記基本構成に立脚している本発明は、旋回軸の両側に延設されているパレット交換アームの架橋延設部が、前記テーブルがパレットを交換する段階において、前記立ち上がり部を上側にて跨った配置状態を実現していることから、前記立ち上がり部の存在は、パレット交換アームの旋回に全く支障となり得ない。
【0021】
しかも、前記段階において、テーブルの先端に位置している立ち上がり部を旋回軸の表面近傍に配置された状態を実現する実施形態を採用した場合には、パレット交換アームの長さを従来技術の場合よりも短く設定することによって、コンパクトなパレット交換装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】基本構成の構成を示しており、(a)は、テーブルの進退方向に沿った側断面図を示し、(b)は、テーブルの進退方向に沿った正面図を示す。
【
図2】旋回軸が被覆部を固着し、かつ当該被覆部がテーブルの立ち上がり部を挿脱自在とする挿脱口を備えている実施形態の構成を示しており、(a)は、
挿脱口がテーブルの長手方向と直交状態にある場合の被覆部の正面図を示し、(b)は、
テーブルの立ち上がり部が挿脱口を介して被覆部内に挿入された後に、旋回軸が(a)の状態に比し、90度旋回した状態におけるテーブルの進退方向に沿った側断面図を示す(尚、被覆部及びパレット交換アームにつき、断面図を示し、他の構成要素については、側面図を示す。更には、斑点部分は、テーブルのうち、立ち上がり部及び揺動部以外の領域を示す。)。
【
図3】旋回軸が可動被覆部を備える一方、当該可動被覆部の下側に、静止被覆部を配置し、かつ当該静止被覆部にテーブルの立ち上がり部を挿脱自在とする挿脱口を備えている実施形態の構成を示しており、(a)は、テーブルの進退方向に沿った側断面図を示し(尚、可動被覆部並びに静止被覆部及びパレット交換アームにつき、断面図を示し、他の構成要素については、側面図を示す。更には、斑点部分は、テーブルのうち、立ち上がり部及び揺動部以外の領域を示す。)、(b)は、挿脱口が設けられた側の被覆部における正面図を示す。
【
図4】旋回軸が被覆部を固着しており、かつパレットを授受する段階において、テーブルの先端に位置している立ち上がり部に対する下側支持部が
前記テーブルの長手方向に沿った断面が逆L字型を形成することによって、前記テーブルがパレットを授受する段階において、前記立ち上がり部及び前記被覆部に対し離れた状態を実現する実施形態の構成を示しており、(a)は、テーブルの進退方向に沿った側断面図を示し(尚、被覆部及びパレット交換アームにつき、断面図を示し、他の構成要素については、側面図を示す。更には、斑点部分は、テーブルのうち、立ち上がり部及び揺動部以外の領域を示す。)、(b)は、被覆部及びテーブルの立ち上がり部並びに揺動部の上面図を示す(尚、円弧状の点線は、被覆部が立ち上がり部及び下側支持部の下側に配置された状態を示
し、上下両側のA点を結ぶ一点鎖線は、旋回軸の旋回中心軸を貫通し、かつテーブルの長手方向に沿った方向を示す。)。
【
図5】旋回軸が可動被覆部を固着する一方、可動被覆部の下側に静止被覆部が床面上に配置されており、パレットを授受する段階において、テーブルの先端に位置している立ち上がり部に対する下側支持部
が、前記可動被覆部及び前記静止被覆部の曲率半径よりも大きな曲率半径を有した状態にて前記可動被覆部及び前記静止被覆部に比し高い領域及び同一の高さ領域を形成しており、前記高い領域が、前記可動被覆部及び前記静止被覆部の外側面の上側にて当該外側面と当接しない状態を形成しており、前記同一の高さ領域が前記旋回軸の旋回中心軸の位置を基準として、前記外側面よりも遠距離を形成することによって、前記テーブルがパレットを授受する段階において、前記立ち上がり部及び前記下側支持部が前記可動被覆部及び前記静止被覆部に対し上下方向及び水平方向にて離れた状態を実現する実施形態の構成を示しており、(a)は、テーブルの進退方向に沿った側断面図を示し(尚、可動被覆部並びに静止被覆部及びパレット交換アームにつき、断面図を示し、他の構成要素については、側面図を示す。更には、斑点部分は、テーブルのうち、立ち上がり部及び揺動部以外の領域を示す。)、(b)は、被覆部及びテーブルの立ち上がり部並びに揺動部の上面図を示す(尚、円弧状の点線は、可動被覆部及び静止被覆部が立ち上がり部に対する下側支持部の下側に配置された状態を示
し、上下両側のA点を結ぶ一点鎖線は、旋回軸の旋回中心軸を貫通し、かつテーブルの長手方向に沿った方向を示す。)。
【
図6】基本構成において、パレットの授受のために、テーブルの旋回軸側の先端の立ち上がり部を旋回軸側に移動する工程を端緒として、パレットの交換の開始から終了に至るまでの工程を示すパレット交換装置の動作を示す説明図である。
【
図7】テーブルの進退方向と直交する方向に旋回軸及びパレット段取り台を配置した状態を示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1に示すように、基本構成においては、背景技術の項において説明したように、テーブル4は、旋回軸1側に対して進退すると共に、旋回軸1側の先端に位置している立ち上がり部42の揺動中心軸420を介して揺動自在に支持され、かつパレットP,P′を介してワークW,W′を載置する揺動部41を備えていることを技術的前提としている。
【0024】
基本構成においては、テーブル4内にて支持枠40を介してワークW,W′を支持している揺動部41、及び段取り台5内にて支持枠50を介してパレットP,P′を支持している支持面は、何れもパレット交換アーム3の支持部における旋回位置よりも下側に配置されていることから、前記支持部は、前記揺動部41及び段取り台5の前記支持面の上側に配置されている。
【0025】
基本構成のパレット交換アーム3は、
図1に示すように、旋回軸1に固着されかつ両側に延設される一方、先端の支持部は、各パレット支持枠40、50によって支持されているパレットP,P′の下側の位置まで旋回し、かつパレットP,P′を支持した状態にて、前記揺動部41及び段取り台5の前記支持面の上側領域に旋回軸1と共に移動することができる。
【0026】
そして、基本構成のパレット交換アーム3は、
図1(a)に示すように、水平方向に延設されている前記パレット支持部と旋回軸1の前記両側の位置とを架橋する架橋延設部31を備えており、当該架橋延設部31は、テーブル4がパレットP,P′を授受する段階において、立ち上がり部42を上側にて跨った形状を有している。
【0027】
その結果、立ち上がり部42の存在は、パレット交換アーム3がパレットP,P′の授受に際し、テーブル4側に旋回したとしても、当該旋回に支障は生じ得ない。
【0028】
図1(a)、(b)においては、架橋延設部31として、可動被覆部21の両側から斜方向に延設されてから略L字型を呈した形態を示すが、架橋延設部31については、様々な形態を採用することが可能である。
【0029】
例えば、
図2、
図4に示すように、可動被覆部21の両側から前記支持部に到るまで斜方向の直線状の形態、更には、
図3、
図5に示すように、可動被覆部21の両側から水平方向に延設してから前記支持部との接続に到るまでに、順次湾曲する形態等を採用することができる。
【0030】
基本構成においては、
図1(a)、(b)に示すように、旋回軸1の下端部の旋回支持部11を被覆することを必ずしも要件としていない。
但し、工作機械において、ワークに対する切削の結果、飛来する切削粉の到来を考慮し、大抵のパレット交換装置においては、
図2、3、4、5、6に示すように、前記被覆部2を備えている。
【0031】
旋回軸1の下端部における旋回支持部11を被覆している実施形態について、以下の通り説明する。
【0032】
図2(a)、(b)は、前記旋回軸1が、当該旋回軸1の下端側に位置している旋回支持部11を上側から被覆する被覆部2を固着する一方、前記被覆部2は、前記立ち上がり部42を挿脱自在とする挿脱口20を備えていることを特徴とする実施形態を示す。
【0033】
上記実施形態においては、テーブル4の先端に位置している立ち上がり部42を挿脱口20内に挿入することによって、テーブル4とパレット段取り台5との間に被覆部2が介在しているにも拘らず、テーブル4上に配置されているパレットP,P′を旋回軸1側に接近させた状態にて授受することができる。
【0034】
その結果、
図2(a)、(b)に示すような大型の被覆部2の存在にも拘らず、コンパクトなパレット交換装置を実現することができる。
【0035】
図3(a)、(b)は、前記旋回軸1が、可動被覆部21を固着する一方、当該可動被覆部21の下側に、当該旋回軸1の下端側に位置している旋回支持部11を上側から被覆する静止被覆部22が床面上に配置されており、前記静止被覆部22においては、前記立ち上がり部42を挿脱自在とする挿脱口20を備えていることを特徴とする実施形態を示す。
【0036】
上記実施形態においても、テーブル4の先端に位置している立ち上がり部42を挿脱口20内に挿入することによって、テーブル4とパレット段取り台5との間に、静止被覆部22が介在しているにも拘らず、テーブル4上に載置されているパレットP,P′を、旋回軸1側に接近した状態にて授受することができる。
【0037】
その結果、
図3(a)、(b)に示すような大型の可動被覆部21及び静止被覆部22の存在にも拘らず、コンパクトなパレット交換装置を実現することができる。
【0038】
上記実施形態においては、旋回軸1に固着された可動被覆部21が静止被覆部22と上下方向にて少なくとも部分的な重複領域を有した状態を形成しているが、その根拠は、可動被覆部21と静止被覆部22とが一体をなして、切削粉が旋回支持部11に飛来することを防止することにある。
【0039】
尚、挿脱口20は、実際には、単に立ち上がり部42だけでなく、揺動部41及び
図2(a)、
図3(a)の斑点領域に示す当該揺動部41を支える下側領域等のテーブル4の一部領域をも挿脱自在とする場合が多い。
【0040】
図4(a)、(b)は、前記旋回軸1が、当該旋回軸1の下端側に位置している旋回支持部11を上側から被覆する被覆部2を固着しており、
前記立ち上がり部42に対する下側支持部421が前記テーブル4の長手方向に沿った断面が逆L字型を形成することによって、前記テーブル4がパレットP,P′を授受する段階において、前記立ち上がり部42及び
前記立ち上がり部42が前記被覆部2に対し上下方向及び水平方向に
て離れた配置状態を実現することを特徴とする実施形態を示す。
【0041】
上記実施形態においては、テーブル4がパレットP,P′を授受する段階において、立ち上がり部42及び当該立ち上がり部42に対する下側支持部
421が被覆部2に対し、上下方向及び水平方向に離れた配置状態を実現するため、立ち上がり部42は、前記授受の段階にて、被覆部2の旋回に支障を生ぜずに、旋回軸1に接近した状態を形成することができ、その結果、コンパクトなパレット交換装置を実現することができる。
【0042】
しかも、上記実施形態の場合には、
図2(a)、(b)に示す実施形態のように、立ち上がり部42が挿脱口20内に挿入することを不要としていることから、被覆部2を、専ら旋回支持部11を被覆する程度という小型の設計を実現することができる。
【0043】
図5(a)、(b)は、前記旋回軸1が、可動被覆部21を固着する一方、当該可動被覆部21の下側に、当該旋回軸1の下端側に位置している旋回支持部11を上側から被覆する静止被覆部22が床面上に配置されており、
前記立ち上がり部42に対する下側支持部421が可動被覆部21及び静止被覆部22の曲率半径よりも大きな曲率半径を有した状態にて可動被覆部21及び静止被覆部22に比し高い領域及び同一の高さ領域を形成しており、前記高い領域が、可動被覆部21及び静止被覆部22の外側面の上側にて当該外側面と当接しない状態を形成しており、前記同一の高さ領域が旋回軸1の旋回中心軸の位置を基準として、前記外側面よりも遠距離を形成することによって、前記テーブル4がパレットP,P′を授受する段階において、
前記立ち上がり部42及び下側支持部421が前記可動被覆部21及び静止被覆部22に対し、上下方向及び水平方向にて離れた配置状態を実現する形状を有していることを特徴とする実施形態を示す。
【0044】
上記実施形態においても、テーブル4がパレットP,P′を授受する段階において、立ち上がり部42及び当該立ち上がり部42に対する下側支持部
421が可動被覆部21及び静止被覆部22に対し、上下方向及び水平方向にて離れた状態を実現する形状を有していることから、可動被覆部21の旋回に支障が生じない状態にて立ち上がり部42が旋回軸1に接近した状態を形成することができ、その結果、コンパクトなパレット交換アーム3を実現することができる。
【0045】
図4(a)、(b)
に示す実施形態のように、下側支持部
421が
逆L字型を形成することによって、被覆部2から上下方向及び水平方向に離れた配置状態を実現する構成を、図5(a)、(b)に示す実施形態に
転用し、可動被覆部21及び静止被覆部22
から上下方向及び水平方向にて離れた配置状態を実現する
ことは、当然実現可能である。
同様に、図5(a)、(b)
に示す実施形態のように、下側支持部
421が、可動被覆部21及び静止被覆部22の
曲率半径よりも大きな曲率半径を有した状態にて、可動被覆部21及び静止被覆部22に比し高い領域及び同一の高さ領域を形成しており、前記高い領域が可動被覆部21及び静止被覆部22の外側面の上側にて、当該外側面と当接しない状態を形成しており、前記同一の高い領域が旋回軸1の旋回中心軸の位置を基準として、前記外側面よりも遠距離を形成することによって、下側支持部421が可動被覆部21及び静止被覆部22に対し、上下方向及び水平方向に離れた配置状態を実現する構成を、図4(a)、(b)に示す実施形態に転用し、被覆部2から上下方向及び水平方向に離れた配置状態を実現することもまた、当然可能である。
【0046】
図2及び
図4に示す実施形態における被覆部2は、旋回軸1の下端に位置している旋回支持部11を被覆しているが、旋回軸1と一体をなして旋回する以上、床面に接触していない。
但し、被覆部2の下端が、パレット交換アーム3を延設している位置よりも下側であって、かつ床の近傍に配置されている構成を採用した場合には、切削粉の旋回支持部11への進入の防止という被覆部2の機能を十分発揮することができる。
【0047】
図3及び
図5に示す実施形態における静止被覆部22は、下側の床面に配置されていることから、旋回軸1の下端側に位置している旋回支持部11に対する切削粉の進入を十分防止することができる。
【0048】
特に、静止被覆部22の下端が床に固着されている構成を採用した場合には、飛来する切削粉の進入を完全に防止することができる。
【0049】
旋回軸1は、パレット交換アーム3と共に旋回する一方、上下動自在であることを不可欠としているが、このような旋回及び上下動を実現するための駆動部12は、
図1(a)、(b)、
図2(a)、(b)及び
図3(a)、(b)、
図4(a)、
図5(a)に示すように、旋回軸1に接続すると共に、床面又は壁部等に固着されることによって、固定状態にある固定枠13に固着されることによって旋回駆動及び上下駆動を実現することができる。
【0050】
図1に示す基本構成及び
図2、3、4、5に示す各実施形態において、テーブル4の立ち上がり部42及び当該立ち上がり部42と接続するテーブル4の一部領域の挿脱口20への挿入を端緒として、パレットP,P′の交換の開始から終了に至るまでの作業は、
図6に示すように、以下のようなプロセスによって実現することができる。
尚、
図6は、
図1に示すように、旋回支持部11を被覆していない実施形態に立脚しているが、以下のプロセスは、
図2、4のように、被覆部2を備えた実施形態の場合、及び
図3、5のように、可動被覆部21及び静止被覆部22を備えた実施形態においても変わりはない。
プロセス(a):テーブル4における立ち上がり部42の旋回軸1への接近(
図2、
図3の実施形態の場合には、立ち上がり部42又は当該立ち上がり部42と接続するテーブル4の一部領域の挿脱口20への挿入、
図4、
図5の実施形態の場合には、立ち上がり部42及び当該立ち上がり部42に対する下側支持部
421の被覆部2、又は可動被覆部21及び静止被覆部22の上下方向及び水平方向に離れた配置状態の実現)
プロセス(b):待機状態にあるパレット交換アーム3の旋回軸1と一体をなす旋回
プロセス(c):パレット交換アーム3の支持部の揺動部41における支持枠40に支持されているパレットP,P′及び段取り台5における支持枠50によって支持されるパレットP,P′の下方側への旋回による移行
プロセス(d):パレットP,P′を支持したパレット交換アーム3の旋回軸1の上方への移動(但し、
図2、
図4の実施形態の場合には、旋回軸1及び被覆部2の上方への移動が行われ、
図3、
図5の実施形態の場合には、可動被覆部21の上方への移動が行われる。)
プロセス(e):パレットP,P′を支持したパレット交換アーム3の180度の旋回
プロセス(f):パレットP,P′を支持したパレット交換アーム3の旋回軸1の下方への移動(但し、
図2、
図4の実施形態の場合には、旋回軸1及び被覆部2の下方への移動が行われ、
図3、
図5の実施形態の場合には、可動被覆部21の下方への移動が行われる。)、及び各パレットP,P′の揺動部41における支持枠40及び段取り台5における支持枠50に対する載置
プロセス(g):パレット交換アーム3の旋回による元の位置への復帰
このように、一連の旋回及び上下動によって、
図1に示す基本構成、
図2、3、4、5に示す実施形態においては、ワークW,W′をそれぞれ載置しているパレットP,P′を円滑に交換することができる。
【実施例1】
【0052】
実施例1は、
図2(a)、(b)に示す実施形態の被覆部2及び
図3(a)、(b)に示す実施形態の静止被覆部22において挿脱口20を開閉するドア(図示せず)を設けていることを特徴としている。
【0053】
このようなドアの設置によって、立ち上がり部42及びテーブル4の一部領域が挿脱口20から挿入された後においても、ドアを閉じることによって旋回支持部11に対する切削粉の進入を防止することができる。
尚、開閉に要するスペースを考慮するならば、ドアとしては、回転式ドアよりも、スライド式ドアが好ましい。
【実施例2】
【0054】
実施例2は、
図1に示す基本構成、及び
図2、3、4、5に示す各実施形態の場合に、前記テーブル4がパレットP,P′を授受するために、旋回軸1に最も近い状態にある段階において、前記立ち上がり部42が旋回軸1の表面近傍の位置にて配置された状態を実現していることを特徴としている。
【0055】
このような近傍における配置によって、実施例2においては、パレット交換アーム3を最小限の長さにすることができ、コンパクトなパレット交換装置を実現することができる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
このように、テーブルがパレットを授受する段階において、旋回軸から延設されたパレット交換アームの支持部を架橋する架橋延設部が、テーブルの立ち上がり部を上側に跨った形状を有している本発明においては、上記立ち上がり部の存在がパレット交換アームの旋回の支障とならない一方、コンパクトなパレット交換装置を実現している点において画期的であり、パレットの交換を必要とする工作機械の全分野において利用することができる。
【符号の説明】
【0057】
1 旋回軸
11 旋回支持部
12 旋回軸に対する駆動部
13 固定枠
2 被覆部
20 挿脱口
21 可動被覆部
22 静止被覆部
3 パレット交換アーム
31 架橋延設部
4 テーブル
40 揺動部に配置されているパレットに対する支持枠
41 テーブルにおける揺動部
42 テーブルにおける立ち上がり部
420 立ち上がり部における揺動中心軸
421 下側支持部
5 段取り台
50 段取り台に配置されているパレットに対する支持枠
6 主軸等を備えている工作機械
P,P′ パレット
W,W′ ワーク
【要約】
【課題】ワークを、パレットを介して揺動可能な状態にて支持し、かつ旋回軸側に対して進退するテーブルの先端に揺動中心軸を有する立ち上がり部を備えているパレット交換装置において、コンパクトな構成を提供すること。
【解決手段】旋回軸1側に進退可能であり、かつ先端の立ち上がり部42を介して揺動自在の状態にてパレットP,P′を介してワークW,W′を載置する揺動部41を備えるテーブル4を採用する一方、パレット交換アーム3におけるパレットP,P′に対する支持部と旋回軸1の両側とを架橋する架橋延設部31がテーブル4におけるパレットP,P′に対する授受の段階において、立ち上がり部42を上側にて跨った形態を有することによって、上記課題を達成し得るパレット交換装置。
【選択図】
図1