(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6298575
(24)【登録日】2018年3月2日
(45)【発行日】2018年3月20日
(54)【発明の名称】アルミニウム−プラスチック複合部品に対するアルミニウム合金またはこの種の合金から作られたアルミニウム平板製品の使用
(51)【国際特許分類】
C22C 21/00 20060101AFI20180312BHJP
B32B 15/08 20060101ALI20180312BHJP
B32B 15/20 20060101ALI20180312BHJP
【FI】
C22C21/00 M
C22C21/00 E
B32B15/08 P
B32B15/20
【請求項の数】15
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-501290(P2017-501290)
(86)(22)【出願日】2015年7月9日
(65)【公表番号】特表2017-526811(P2017-526811A)
(43)【公表日】2017年9月14日
(86)【国際出願番号】EP2015065670
(87)【国際公開番号】WO2016005484
(87)【国際公開日】20160114
【審査請求日】2017年3月7日
(31)【優先権主張番号】14176390.4
(32)【優先日】2014年7月9日
(33)【優先権主張国】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】513100910
【氏名又は名称】ハイドロ アルミニウム ロールド プロダクツ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Hydro Aluminium Rolled Products GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100095614
【弁理士】
【氏名又は名称】越川 隆夫
(72)【発明者】
【氏名】フォルカー デンクマン
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス ジーメン
【審査官】
鈴木 毅
(56)【参考文献】
【文献】
特開2001−288525(JP,A)
【文献】
特開2012−052158(JP,A)
【文献】
特開2002−038234(JP,A)
【文献】
特開2005−056729(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22C 21/00 − 21/18
C22F 1/04 − 1/057
B32B 15/08 − 15/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム−プラスチック複合部品またはその製造に対するアルミニウム合金の使用であって、前記アルミニウム合金は以下の組成を有し、
Si:0.05質量%から0.35質量%、
Fe:1.52質量%から1.75質量%、
Cu:≦0.02質量%、
Mn:0.015質量%から0.035質量%、
Mg:≦0.003質量%、
Cr:≦0.03質量%、
Ni:≦0.02質量%、
Zn:≦0.03質量%、
Ti:≦0.03質量%、
不純物は個々に最大0.05質量%、合計で最大0.15質量%であり、残部はアルミニウムであって、
前記アルミニウム合金のMn含有量に対するFe含有量の比率は50から80であることを特徴とする、使用。
【請求項2】
前記アルミニウム合金は、1.6質量%から1.7質量%のFe含有量、および/または0.15質量%から0.35質量%のSi含有量を有することを特徴とする、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記アルミニウム合金の前記Si含有量に対する前記Fe含有量の比率は4から10であることを特徴とする、請求項1または2に記載の使用。
【請求項4】
前記アルミニウム合金のMn含有量に対する前記Fe含有量の比率は50から60であることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の使用。
【請求項5】
アルミニウム−プラスチック複合部品またはその製造に対する、請求項1から4のいずれか一項に対応する合金から作られたアルミニウム平板製品の使用。
【請求項6】
前記アルミニウム平板製品はアルミニウムストリップ、アルミニウムホイル、またはアルミニウムシートであることを特徴とする、請求項5に記載の使用。
【請求項7】
前記アルミニウム平板製品は、0.02mmから0.7mmの範囲の厚さを有することを特徴とする、請求項5または6に記載の使用。
【請求項8】
前記アルミニウム平板製品は、EN546−2に従って軟質状態Oで測定された以下の機械的特性、すなわち
引張り強度Rm:>95MPa、
降伏強度Rp0.2:>45MPa、ならびに
破断伸びA100:サンプル本体の厚さが45μmの場合は>25%、
および/または
サンプル本体の厚さが100μmの場合は>30%
を有することを特徴とする、請求項5から7のいずれか一項に記載の使用。
【請求項9】
前記アルミニウム平板製品は、45MPaから90MPaの降伏強度Rp0.2を有することを特徴とする、請求項5から8のいずれか一項に記載の使用。
【請求項10】
前記アルミニウム平板製品は、接着性ワニス層で片側または両側をコートされることを特徴とする、請求項5から9のいずれか一項に記載の使用。
【請求項11】
前記接着性ワニス層は、3μmから30μmの範囲の厚さ、および/または3g/m2から30g/m2の範囲の坪量を有することを特徴とする、請求項10に記載の使用。
【請求項12】
前記アルミニウム−プラスチック複合部品は、少なくとも1つのアルミニウム層と少なくとも1つのプラスチック含有層とを有する多層複合部品であることを特徴とする、請求項1から11のいずれか一項に記載の使用。
【請求項13】
前記アルミニウム−プラスチック複合部品の少なくとも1つのプラスチック含有層は繊維含有層であることを特徴とする、請求項12に記載の使用。
【請求項14】
前記アルミニウム−プラスチック複合部品は少なくとも1つの内部アルミニウム層を有することを特徴とする、請求項12または13に記載の使用。
【請求項15】
アルミニウム−プラスチック複合部品またはその製造のためのアルミニウム合金であって、前記アルミニウム合金は以下の組成を有し、
Si:0.05質量%から0.35質量%、
Fe:1.52質量%から1.75質量%、
Cu:≦0.02質量%、
Mn:0.015質量%から0.035質量%、
Mg:≦0.003質量%、
Cr:≦0.03質量%、
Ni:≦0.02質量%、
Zn:≦0.03質量%、
Ti:≦0.03質量%、
不純物は個々に最大0.05質量%、合計で最大0.15質量%であり、残部はアルミニウムであって、
前記アルミニウム合金のMn含有量に対するFe含有量の比率は50から80である、アルミニウム合金。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミニウム−プラスチック複合部品に対するアルミニウム合金の使用に関する。本発明はさらに、アルミニウム−プラスチック複合部品に対するこの種の合金から作られたアルミニウム平板製品の使用に関する。本発明はさらに、この種の合金およびこの種の合金から作られたアルミニウム平板製品に関する。
【背景技術】
【0002】
アルミニウム−プラスチック複合部品は、特に自動車産業において軽量構成要素として、たとえばもっと重い鋼モジュールを置き換えるためなどに使用され得る。
【0003】
自動車産業においては、特に自動車のアンダーボディに関する適用に対して、たとえばAA1050タイプなどのできる限り純粋な合金から作られたアルミニウムホイルが、特に結合剤としてのプラスチックホイルでラミネートされた熱シールドのためのカバー層として使用される。一般的に、カロットまたは穿孔を有するアルミニウムホイルが使用される。
【0004】
より新しい複合部品の場合には、たとえば剛性または音響絶縁特性などに関する複合部品の特定の機能を達成するためにもアルミニウムホイルが使用される。
【0005】
自動車産業においては、最初は実質的に平坦なアルミニウム−プラスチック複合部品が使用されていたが、より複雑になる形状を伴うアルミニウム−プラスチック複合部品を製造するように開発が進んだ。よって、この種のアルミニウム−プラスチック複合部品の製造は、部分的に高度な成形を伴う成形ステップを必要とする。
【0006】
これまでにこうした高度な成形に使用されたアルミニウム合金は、限られた程度にしか好適ではなく、達成され得る構成要素の形状が制限されることが見出された。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
ここから進んで、本発明の基礎をなす目的は、有利な機械的特性を有する複雑な構成要素形状も達成できるようなアルミニウム−プラスチック複合部品またはその製造のための、アルミニウム合金またはこの種のアルミニウム合金から作られたアルミニウム平板製品を提供することである。
【0008】
本発明に従うと、この目的はアルミニウム合金によって達成され、ここでアルミニウム合金は以下の組成を有する。
Si:0.05質量%から0.35質量%、
Fe:1.3質量%から1.75質量%、好ましくは1.3質量%から1.7質量%、特に1.6質量%から1.7質量%、
Cu:≦0.02質量%、好ましくは≦0.01質量%、
Mn:0.015質量%から0.035質量%、好ましくは0.025質量%から0.034質量%、
Mg:≦0.003質量%、好ましくは≦0.001質量%、
Cr:≦0.03質量%、好ましくは≦0.02質量%、
Ni:≦0.02質量%、
Zn:≦0.03質量%、
Ti:≦0.03質量%、
不純物は個々に最大0.05質量%、好ましくは最大0.02質量%、合計で最大0.15質量%、好ましくは最大0.06質量%であり、残部はアルミニウムである。
【0009】
本発明に従うと、この目的はさらに、この種の合金から作られたアルミニウム平板製品によって達成される。
【0010】
本発明に従うと、この目的はさらに、アルミニウム−プラスチック複合部品またはその製造に対するアルミニウム合金の使用によって達成され、ここでアルミニウム合金は以下の組成を有する。
Si:0.05質量%から0.35質量%、
Fe:1.3質量%から1.75質量%、好ましくは1.3質量%から1.7質量%、特に1.6質量%から1.7質量%、
Cu:≦0.02質量%、好ましくは≦0.01質量%、
Mn:0.015質量%から0.035質量%、好ましくは0.025質量%から0.034質量%、
Mg:≦0.003質量%、好ましくは≦0.001質量%、
Cr:≦0.03質量%、好ましくは≦0.02質量%、
Ni:≦0.02質量%、
Zn:≦0.03質量%、
Ti:≦0.03質量%、
不純物は個々に最大0.05質量%、好ましくは最大0.02質量%、合計で最大0.15質量%、好ましくは最大0.06質量%であり、残部はアルミニウムである。
【0011】
驚くべきことに、高いFe含有量と、それに対応して選択されたSi含有量および最小化されたMg含有量とによって、アルミニウム−プラスチック複合部品またはその製造に対して特に好適な、非常に良好に成形可能な合金が達成されることが見出された。前述の合金は特に、自動車工学において一般的に用いられる合金EN AW−1050−AまたはEN−AW1200よりも高い破断伸びA100を有し、よってより良好な成形性を提供する。同時に前述の合金は良好な腐食抵抗性を有し、かつ加工が容易である。
【0012】
合金の高い破断伸びおよびそれによる良好な成形性は、特に1.3質量%から1.75質量%、好ましくは1.6質量%から1.7質量%の範囲のかなり高いFe含有量によって達成され、ここでは好ましいFe上限である1.7質量%によってより良好な微細構造が達成され得る。同時に、必要とされる0.05質量%から0.35質量%の範囲のSi含有量によって、良好な腐食挙動が達成される。Mn含有量によって合金のより大きい強度が達成され得るが、合金のMn含有量が高くなると温度上昇の場合の軟化が大きくなり、すなわち温度の関数としての軟化曲線が急勾配になるために合金の選択的熱処理が困難になるので、加工性が犠牲になる。ここでは0.015質量%から0.035質量%、好ましくは0.025質量%から0.034質量%の範囲の、請求されるMn含有量によって良好な妥協点が達成され得る。
【0013】
本発明に従うと、上述の目的はさらに、アルミニウム−プラスチック複合部品またはその製造に対して、前述の合金から作られたアルミニウム平板製品を使用することによって達成される。
【0014】
それによって、非常に良好な成形特性を有し、よってたとえばプラスチック層とともに複合部品を製造するときに成形され得る、極度に変形可能なアルミニウム平板製品が提供される。特に、全体的な製造中に、複合部品またはこの複合部品の予成形品を成形することが可能である。
【0015】
よって、前述の合金またはこの種の合金から作られたアルミニウム平板製品は、好ましくは少なくとも1つの成形ステップ、特にアルミニウム平板製品の30%より高い破断伸びA100を必要とする成形ステップを有する、アルミニウム−プラスチック複合部品の製造プロセスに使用される。
【0016】
本明細書において、アルミニウム−プラスチック複合部品とは、たとえばアルミニウム層などの少なくとも1つのアルミニウム構成要素と、たとえばプラスチック含有層などの少なくとも1つのプラスチック含有構成要素とを有する複合部品であるものとして理解される。
【0017】
プラスチック含有構成要素、特にプラスチック含有層は、好ましくは熱可塑性プラスチックをバインダとして含む。プラスチックに加えて、プラスチック含有構成要素またはプラスチック含有層は、たとえば無機充填剤または繊維などのさらなる添加剤を含んでもよい。
【発明を実施するための形態】
【0018】
前述の合金、アルミニウム平板製品、および前述の使用のさらなる実施形態を以下に記載しており、ここで個々の実施形態は所望のとおりに互いに組み合わされてもよく、かつそれぞれ合金、アルミニウム平板製品、および合金またはアルミニウム平板製品の使用に対して互いに独立に適用されてもよい。
【0019】
一実施形態に従うと、アルミニウム合金は1.4質量%から1.7質量%、好ましくは1.6質量%から1.7質量%のFe含有量を有する。こうしたFe含有量によって、特に良好な成形特性が達成されることが見出された。より複雑でない成形部品に対して特に好適な代替的実施形態に従うと、アルミニウム合金はより高い強度の利益のために最大1.6質量%のFe含有量、特に1.4質量%から1.6質量%の範囲のFe含有量を有してもよいが、成形性が犠牲になる。
【0020】
さらなる実施形態に従うと、アルミニウム合金は0.15質量%から0.35質量%のSi含有量を有する。こうしたSi含有量によって、成形特性に加えて腐食挙動が改善され得る。
【0021】
さらなる実施形態に従うと、アルミニウム平板製品はアルミニウムストリップ、アルミニウムホイル、またはアルミニウムシートである。この種の製品は、1つまたは複数のアルミニウム層を有する多層アルミニウム−プラスチック複合部品を製造するために特に好適である。
【0022】
さらなる実施形態に従うと、アルミニウム平板製品は0.02mmから0.7mmの範囲、好ましくは0.020mmから0.200mmの範囲、特に0.020mmから0.140mmの範囲の厚さを有する。この厚さの範囲は、対応するアルミニウム−プラスチック複合部品に良好な剛性特性、特に屈曲およびねじり剛性を提供すると同時に、重量および材料コストの最適化を提供する。
【0023】
さらなる実施形態に従うと、アルミニウム平板製品は、EN546−2に従って軟質状態Oで測定された以下の機械的特性を有する。
引張り強度Rm:>95MPa、好ましくは>100MPa、
降伏強度Rp0.2:>45MPa、ならびに
破断伸びA100:サンプル本体の厚さが45μmの場合は>25%
および/または
サンプル本体の厚さが100μmの場合は>30%、好ましくは>35%。
【0024】
引張り強度Rm、降伏強度Rp0.2、および破断伸びA100は、DIN EN ISO6892−1:2009に従って定められる。
【0025】
前述の合金によって、特にこの合金から作られるアルミニウム平板製品の良好な成形性を必要とする、上述の機械的特性が達成され得ることが見出された。よってこの種のアルミニウム平板製品は特に高度な成形を伴う成形を行うアルミニウム−プラスチック複合部品の製造プロセスにおいて用いられてもよく、この態様で複雑な形状を有するアルミニウム−プラスチック複合部品が製造され得る。
【0026】
さらなる実施形態に従うと、アルミニウム合金のSi含有量に対するFe含有量の比率は4から10、特に4から8である。Fe:Si比は、好ましくは少なくとも7である。この比率は質量%でのそれぞれの含有量から算出される。この範囲のFe:Si比によって、成形特性が過度に損なわれることなく腐食特性が正の影響を受ける。7よりも低く、特に4よりも低いFe:Si比では、もはや所望の成形特性が達成されない。これに対し、8よりも高く、特に10よりも高いFe:Si比では、腐食傾向の増加が起こり得る。
【0027】
さらなる実施形態に従うと、アルミニウム合金のMn含有量に対するFe含有量の比率は40から80、特に50から80である。Fe:Mn比は、好ましくは最大60である。この比率は質量%でのそれぞれの含有量から算出される。この範囲のFe:Mn比によって、十分な引張り強度(Rm)を有するとともに容易に加工され得る合金が達成される。50よりも低く、特に40よりも低いFe:Mn比の場合、合金の軟化曲線の急峻な落下によって、特定の程度の強度を達成するための定められた熱処理が困難になる。
【0028】
Fe含有量対Si含有量、およびFe含有量対Mn含有量の前述の好ましい比率、ならびにMg含有量を0.003質量%、好ましくは0.001質量%に制限することによって、アルミニウム平板製品の有利な機械的特性(Rm>95MPa、特に>100MPa、Rp0.2>45MPa、A100>30%、特に>35%(厚さ100μmの場合)および/または>25%(厚さ45μmの場合))を信頼性高く達成できることをテストが示した。
【0029】
さらなる実施形態に従うと、アルミニウム平板製品は45MPaから90MPaの降伏強度Rp0.2を有する。対応する熱処理によって、こうした有利な値に、つまり特に引張り強度および破断伸びを実質的に変更することなく、アルミニウム平板製品の降伏強度を調整できることが示されている。この範囲の降伏強度は、たとえば記載される合金の場合には195℃から260℃、特に195℃から240℃の範囲の温度での保持時間2時間、特に少なくとも5時間の熱処理によって達成され得る。
【0030】
さらなる実施形態に従うと、アルミニウム平板製品は接着性ワニス層、好ましくはエポキシド樹脂ベースのPP接着性ワニスで片側または両側をコートされる。たとえば、アルミニウム平板製品に対するコイルコーティングプロセスによって、接着性ワニス層が非常に効率的に施され得る。代替的には、接着性ワニス層が噴霧および浸漬によって施されてもよい。こうした接着性ワニス層は、アルミニウム−プラスチック複合部品のプラスチック、特にプラスチック含有層へのアルミニウム平板製品の接着の改善を可能にする。アルミニウム表面は接着性ワニスによって腐食からさらに保護されることによって協働効果が達成され、この場合に複合部品の複合物は強化されると同時にその腐食特性が改善される。
【0031】
好ましくは、ワニスはたとえば160℃を超える温度などの熱によって活性化される接着性ワニスコートに使用される。ワニスを活性化するとは、ワニスがたとえば製造されるアルミニウム−プラスチック複合部品のプラスチック層などの他の材料に結合される状態に移行され、任意にはその後の冷却によって硬化されることを意味するものと理解される。ワニスは特に、熱によって軟化し、任意にはプラスチック含有層と架橋することによって結合する熱可塑性プラスチックに基づくものであってもよい。この種のワニスの例は、たとえばエポキシベース(エポキシ系)、ポリエステルベース(ポリエステル系)またはアクリレートベース(アクリレート系)のワニスなどである。これらのワニスは、たとえばアルミニウム平板製品の、たとえばアクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリカーボネート(PC)、ポリアミド(PA)またはポリオレフィン、特にポリプロピレン(PP)などで作られたプラスチック層への接着を改善するためなどに好適である。
【0032】
熱活性化可能な接着性ワニスで作られた接着性ワニス層を有する、たとえばアルミニウムシートまたはホイルなどのアルミニウム平板製品は、有利には複合部品を成形するために1つまたは複数のプラスチック含有層とともに加熱可能プレス内で加圧されてもよい。加圧の際に、プレスはプラスチック含有層または接着性ワニスを、好ましくは使用されるプラスチックの軟化温度よりも高い温度または融解温度よりも高い温度に加熱する。それによってプラスチックとアルミニウム平板製品とが接着性ワニスを介して互いに結合することにより、複合部品の個々の構成要素の互いに対する固定された結合、すなわち非常に安定した複合部品が達成される。
【0033】
特に両側がコートされたアルミニウム平板製品は、少なくとも1つの内部アルミニウム層を有する複合部品の製造を可能にする。こうした内部アルミニウム層は、たとえば蒸気バリアなどとして使用されてもよい。
【0034】
記載されるアルミニウム平板製品の高い成形性は、こうした内部アルミニウム層に対しても有利である。なぜなら、この態様で配置されたアルミニウム層は、複合部品を成形するときに特に高い応力を受けるからである。したがって一実施形態に従うと、アルミニウム−プラスチック複合部品は少なくとも1つの内部アルミニウム層を有する。
【0035】
さらなる実施形態に従うと、接着性ワニス層は、3μmから30μm、好ましくは5μmから10μmの範囲の厚さ、および/または3g/m
2から30g/m
2、好ましくは5g/m
2から10g/m
2、さらに好ましくは6g/m
2から9g/m
2の範囲の坪量を有する。これらの厚さまたは坪量によって、複合部品のアルミニウム層とプラスチック含有層との間の非常に良好な接着と同時に接着性ワニスの低消費が達成された。本明細書において坪量とは、表面に関する乾燥接着性ワニス層の重量として理解される(面積当りの乾燥重量)。
【0036】
さらなる実施形態に従うと、アルミニウム−プラスチック複合部品は、少なくとも1つのアルミニウム層と少なくとも1つのプラスチック含有層とを有する多層複合部品である。アルミニウム−プラスチック複合部品は、たとえば互いの頂部の上に積層方向に交互に配置された複数のアルミニウム層および複数のプラスチック含有層を有してもよい。この種の部品の機械的特性は、特に個々の層の数および配置、プラスチック含有層の組成および厚さ、アルミニウム層の厚さおよび機械的特性、特に強度を選択することによってそれぞれの使用目的に対して広範囲に適応され得る。これらの複合部品によって、特に良好な機械的特性と同時に低い重量が達成され得る。
【0037】
アルミニウム−プラスチック複合部品がプラスチックとしてポリプロピレン(PP)を含み、特にPP含有層を含むことによって、複合部品におけるアルミニウム平板製品とプラスチックとの特に良好な接着が達成される。したがって、接着性ワニスは好ましくはPP接着性ワニスである。
【0038】
前述の多層複合部品は、たとえば個々の層を互いの頂部の上に積層方向に配置し、次いで加熱プレス内でともに加圧することなどによって製造され得る。これらの層は、好ましくは加熱プレス内で同時に複合部品の所望の目的形状に成形されてもよい。
【0039】
好ましくは、アルミニウム−プラスチック複合部品の少なくとも1つのプラスチック含有層は繊維含有層である。たとえば、プラスチック含有層はバインダとしてのプラスチック繊維および/またはたとえば強化のためのガラス繊維などの無機繊維を有してもよい。この種の層は、複合部品に高い剛性および良好な音響絶縁特性と同時に低密度を提供する。
【0040】
使用のさらなる実施形態1から14およびアルミニウム合金のさらなる実施形態15を以下に説明する。以下の実施形態は互いに組み合わされてもよいし、使用またはアルミニウム合金の前述の実施形態と組み合わされてもよい。
【0041】
1.アルミニウム−プラスチック複合部品またはその製造に対するアルミニウム合金の使用であって、ここでアルミニウム合金は以下の組成を有する。Si:0.05質量%から0.35質量%、Fe:1.3質量%から1.6質量%、Cu:<0.02質量%、Mn:0.015質量%から0.035質量%、Mg:<0.001質量%、Cr:<0.02質量%、Ni:<0.02質量%、Zn:<0.03質量%、Ti:<0.03質量%、不純物は個々に最大0.02質量%、合計で最大0.06質量%であり、残部はアルミニウムである。
【0042】
2.実施形態1に従う使用であって、ここでアルミニウム合金は1.4質量%から1.6質量%のFe含有量、および/または0.15質量%から0.35質量%のSi含有量を有する。
【0043】
3.実施形態1または2に従う使用であって、ここでアルミニウム合金のSi含有量に対するFe含有量の比率は4から8である。
【0044】
4.実施形態1から3のいずれか1つに従う使用であって、ここでアルミニウム合金のMn含有量に対するFe含有量の比率は40から80である。
【0045】
5.アルミニウム−プラスチック複合部品またはその製造に対する、実施形態1から4のうちの1つに対応する合金から作られたアルミニウム平板製品の使用。
【0046】
6.実施形態5に従う使用であって、ここでアルミニウム平板製品はアルミニウムストリップ、アルミニウムホイル、またはアルミニウムシートである。
【0047】
7.実施形態5または6に従う使用であって、ここでアルミニウム平板製品は0.02mmから0.7mmの範囲、好ましくは0.020mmから0.200mmの範囲の厚さを有する。
【0048】
8.実施形態5から7のいずれか1つに従う使用であって、ここでアルミニウム平板製品は、EN546−2に従って軟質状態Oで測定された以下の機械的特性を有する。引張り強度Rm:>95MPa、好ましくは>100MPa、降伏強度Rp0.2:>45MPa、ならびに破断伸びA100:サンプル本体の厚さが45μmの場合は>25%、および/または好ましくはサンプル本体の厚さが100μmの場合は>30%。
【0049】
9.実施形態5から8のいずれか1つに従う使用であって、ここでアルミニウム平板製品は45MPaから90MPaの降伏強度Rp0.2を有する。
【0050】
10.実施形態5から9のいずれか1つに従う使用であって、ここでアルミニウム平板製品は接着性ワニス層、好ましくはエポキシド樹脂ベースのPP接着性ワニスで片側または両側をコートされる。
【0051】
11.実施形態10に従う使用であって、ここで接着性ワニス層は3μmから30μm、好ましくは5μmから10μmの範囲の厚さ、および/または5g/m
2から10g/m
2、好ましくは6g/m
2から9g/m
2の範囲の坪量を有する。
【0052】
12.実施形態1から11のいずれか1つに従う使用であって、ここでアルミニウム−プラスチック複合部品は、少なくとも1つのアルミニウム層と少なくとも1つのプラスチック含有層、特にPP含有層とを有する多層複合部品である。
【0053】
13.実施形態12に従う使用であって、ここでアルミニウム−プラスチック複合部品の少なくとも1つのプラスチック含有層は繊維含有層である。
【0054】
14.実施形態12または13に従う使用であって、ここでアルミニウム−プラスチック複合部品は少なくとも1つの内部アルミニウム層を有する。
【0055】
15.特にアルミニウム−プラスチック複合部品またはその製造のためのアルミニウム合金であって、ここでアルミニウム合金は以下の組成を有する。Si:0.05質量%から0.35質量%、Fe:1.3質量%から1.6質量%、Cu:<0.02質量%、Mn:0.015質量%から0.035質量%、Mg:<0.001質量%、Cr:<0.02質量%、Ni:<0.02質量%、Zn:<0.03質量%、Ti:<0.03質量%、不純物は個々に最大0.02質量%、合計で最大0.06質量%であり、残部はアルミニウムである。
【実施例】
【0056】
本発明の状況において、前述の合金または対応するアルミニウム平板製品の特性を示すテストを行った。
【0057】
テストのために、下の表1に示される合金1から11よりバーを鋳造して均質化した。バーを最初に熱間圧延して4mmから5mmの範囲の厚さを有する高温ストリップにし、次いで冷間圧延して30μmから140μmの範囲の最終厚さを有する低温ストリップにした。合金11は比較合金である。追加の比較テストとして、自動車工学においてこれまで使用されてきた合金AA8079−D、AA8079−L、AA1200およびAA1050Aから作られたストリップを対応する態様で製造した。
【0058】
【表1】
【0059】
低温ストリップに対して、引張り強度Rm、降伏強度Rp0.2、および破断伸び(厚さ≧100μmに対してA50、または厚さ≦100μmに対してA100)を測定した。すなわち、圧延硬質状態H19(EN546−2)において1回、および280℃(No.1から4)または260℃(No.5から11)にて2時間の保持時間による熱処理後の軟質状態O(EN546−2)において1回行った。その結果を表2に示す。
【0060】
以下の表2の結果が示すとおり、本発明に従う合金によって、先行技術の合金よりも有意に高い軟質状態Oの破断伸び、すなわちより良好な成形性が達成される。テストはさらに、本発明に従う合金が満足できる腐食特性を有し、かつ容易に加工され得ることを示した。7から10の範囲の好ましいFe:Si比を有する合金9および10によって、特に良好な結果が達成される。
【0061】
【表2】
【0062】
前述の本発明に従う合金から作られたアニール低温ストリップ(状態O)は、室温に冷却された後に、コイルコーティングプロセスにおいて両側をエポキシド樹脂ベースのPP接着性ワニスで、すなわちポリプロピレン(PP)への接着に対して最適化され、かつ6g/m
2から9g/m
2の範囲の坪量(乾燥後のワニスの面積当りの重量)を有する接着性ワニスによってコートされた。
【0063】
このやり方で製造されたアルミニウム平板製品のアルミニウム−プラスチック複合部品製造に対する適合性を調べるために、それぞれに以下に説明するテストを受けさせた。
【0064】
コートされたアルミニウムストリップからストリップを切断し、厚さ2mm、幅20mmのポリプロピレンストリップ(Xenopren(登録商標)PP TD20、ケミスツ・コレクティブ・ゼノン社(Chemist’s Collective XENON)、所在地:ロンビエン,ポーランドより入手可能)に対してシールした。このために、1つのコートアルミニウムストリップをそれぞれ、アルミニウムストリップの接着性ワニス層がポリプロピレンストリップの側に配置されるようにして、ポリプロピレンストリップの1つに適用した。次いで、アルミニウムストリップ側の200℃に加熱された上側シーリングジョーと、ポリプロピレンストリップ側の下側未加熱シーリングジョーとによって、アルミニウムストリップとポリプロピレンストリップとをともに460Nの力で10秒間加圧(シール)した。このテストにおいて、アルミニウムストリップが10mm×20mmの大きさのシールシームにわたってポリプロピレンストリップに結合されるように、幅10mmのシーリングジョーが用いられた。
【0065】
冷却後、それぞれのアルミニウムストリップとポリプロピレンストリップとの複合接着を剥離テストによってテストした。この目的のために、アルミニウムストリップはシールシームの長さ20mmの側部端縁の一方に沿ったシールシームの一方側において180°曲げられ、ポリプロピレンストリップおよびアルミニウムストリップの屈曲部分はロードセルにクランプされ、このロードセルによって、ポリプロピレンストリップからアルミニウムストリップを離すために必要とされる力(剥離力)を定めることができた。これを行う際に、少なくとも90N、部分的には少なくとも130Nもの値が測定された(シールシームの幅および長さが10mm×20mmの場合)。
【0066】
前述のテストは、本発明に従うアルミニウム平板製品がプラスチック構成要素に対する非常に良好な接着性を示すために、それらがアルミニウム−プラスチック複合部品の製造に特に好適であることを示す。