(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6298577
(24)【登録日】2018年3月2日
(45)【発行日】2018年3月20日
(54)【発明の名称】溶接された層を分離するための剥離装置及び方法
(51)【国際特許分類】
G01N 3/00 20060101AFI20180312BHJP
【FI】
G01N3/00 Q
【請求項の数】24
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-512867(P2017-512867)
(86)(22)【出願日】2015年5月15日
(65)【公表番号】特表2017-517750(P2017-517750A)
(43)【公表日】2017年6月29日
(86)【国際出願番号】US2015030979
(87)【国際公開番号】WO2015175883
(87)【国際公開日】20151119
【審査請求日】2017年1月6日
(31)【優先権主張番号】61/994,181
(32)【優先日】2014年5月16日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】516343516
【氏名又は名称】アーコニック インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】ARCONIC INC.
(74)【代理人】
【識別番号】110001438
【氏名又は名称】特許業務法人 丸山国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】スピネッラ,ドナルド,ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアムス,ジャスティン,ケイ.
(72)【発明者】
【氏名】スピア,ロバート,ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ケリー,シーン
(72)【発明者】
【氏名】ダルスキ,リチャード,エス.
【審査官】
伊藤 昭治
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭61−155836(JP,A)
【文献】
特開平07−214557(JP,A)
【文献】
欧州特許出願公開第00185986(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 3/00 − 3/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の層を、1つの部材を形成するように結合された第2の層から分離するための装置であって、
ベース構造と、前記ベース構造に取り付けられ、前記第1の層及び前記第2の層を含む前記部材の第1の部分を保持することができる第1のクランプと、
前記第1のクランプから離間して前記ベース構造に取り付けられており、前記第1の層を含む前記部材の第2の部分を保持できる第2のクランプと、
前記第1のクランプと前記第2のクランプの間の位置で前記第2の層の一部を受け入れ可能なスロットを有する回転可能なスピンドルとを備えており、
前記スピンドルが回転しており、前記第1の層が、前記第1のクランプと前記第2のクランプとによってクランプされている間、前記スピンドル周りで前記第2の層がねじられて、前記第2の層が前記第1の層から分離する、装置。
【請求項2】
前記スピンドルに連結されており、前記スピンドルにトルクを与えることができる部材を更に備える、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記部材はプーリーである、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記プーリーはスプロケットである、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記プーリーは歯車である、請求項3に記載の装置。
【請求項6】
前記部材はバーである、請求項2に記載の装置。
【請求項7】
前記第2のクランプは移動可能であり、前記第2のクランプに結合されており、前記部材に張力を与えることができるテンショナを更に含んでいる、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記テンショナは液圧で作動する、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
スライド部を更に備えており、前記第2のクランプは、前記スライド部に取り付けられており、前記テンショナによって張力が加えられるとスライド部上を摺動することができる、請求項7に記載の装置。
【請求項10】
前記スピンドルを回転可能に支持できるスピンドルマウントと、前記第2のクランプに近接する第1の位置と前記第1のクランプに近接する第2の位置との間でスピンドルマウントを摺動可能に支持できるスピンドルスライド部とを更に含んでいる、請求項1に記載の装置。
【請求項11】
前記プーリーを回転させるエンジンを更に備えている、請求項3に記載の装置。
【請求項12】
前記プーリーは第1のプーリーであり、前記エンジンに連結された第2のプーリーと、前記第1のプーリーと前記第2のプーリーの間に延びる駆動連結部とを更に備えており、前記第1及び第2のプーリーと前記駆動連結部とは、前記エンジンが前記スピンドルを回転できるトルクをもたらす、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記部材の前記第1の層から前記第2の層を分離する際に費やされるエネルギーを測定できるトランスデューサを更に備えている、請求項10に記載の装置。
【請求項14】
前記第2の層が前記部材から分離される際に、前記部材が受ける張力を測定できるトランスデューサを更に含んでいる、請求項7に記載の装置。
【請求項15】
力データを生成するために前記第2の層が部材から分離される際に前記スピンドルによって加えられる力を測定できるトランスデューサと、前記力データを受け取って格納できるコンピュータとを更に備えている、請求項1に記載の装置。
【請求項16】
前記部材に対する前記スピンドルの位置を検知して、位置データを生成して、前記力データと前記位置データとを相関させることができるトランスデューサを更に備えている、請求項15に記載の装置。
【請求項17】
第1の層を、部材を形成するように結合された第2の層から分離する方法であって、
前記第1の層の端部を前記第2の層から分離して、前記第1の層の分離した端部と前記第2の層の分離した端部を形成する工程と、
第1のクランプにおいて、前記第1の層の分離された端部を固定する工程と、
第2のクランプにおいて、前記第1の層の分離された端部に対して遠位の位置にて前記部材を固定する工程と、
前記第2の層の分離された端部をスピンドルのスロットに挿入する工程と、
前記スピンドルを回転させて、前記第2の層をスピンドル周りにねじって、前記第2の層を前記第1の層から分離する工程と、を含む方法。
【請求項18】
前記スピンドルを回転させる前に前記第1の層に張力を加える工程を更に含んでいる、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
張力を加える工程は、前記第1のクランプを前記第2のクランプから引き離すことによって行われる、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記第1の層及び前記第2の層は、少なくとも1つの溶接部によって結合されており、分離する工程は、前記少なくとも1つの溶接部を破壊する工程を含んでいる、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
前記スピンドルを回転させる間に前記第1の層を前記第2の層から分離するのに必要な力を測定する工程を更に含んでいる、請求項17に記載の方法。
【請求項22】
前記第2の層をねじった後に結合アーチファクトを測定する工程を更に含んでいる、請求項17に記載の方法。
【請求項23】
測定する工程は、画像解析による、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記第2の層をねじった後に、且つ測定する工程の前に前記部材を真っ直ぐにする工程を更に含んでいる、請求項23に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本願は、2014年5月16日に出願された米国仮出願第61/994,181号の利益を主張するものであって、当該仮出願の全体は、参照により本明細書の一部となる。
【0002】
本発明は、溶接試験装置に関し、より詳細には、溶接部の破壊試験用の装置に関する。
【背景技術】
【0003】
品質保証のために、溶接されたパネルを剥離試験するための方法及び装置が知られている。これらの評価は一般的に、手動手法によって行われており、手動手法は、オペレーター間で技術と効率が異なり得る。例えば、AWS C1.1は、手で掴んだやっとこ(pincers)又はハンマーとのみとを使用して、互いに溶接された層を剥離することを説明している。得られた結果は、技能に依存しており、大抵の場合、かなり歪んだ分離パネルが生じることとなる。さらに、手作業による手法は、骨が折れ、且つ遅い場合がある。従って、剥離試験のための代替的な方法及び装置が依然として望まれている。
【0004】
開示される主題は、第1の層を、1つの部材を形成するように結合された第2の層から分離するための装置に関している。この装置は、ベース構造と、ベース構造に取り付けられ、第1の層及び第2の層を含む部材の第1の部分を保持することができる第1のクランプと、前記部材の長さの少なくとも一部に近接するように、第1のクランプから離間してベース構造に取り付けられており、第1の層を含む部材の第2の部分を保持できる第2のクランプと、第1のクランプと第2のクランプの間の位置で第2の層の一部を受け入れ可能なスロットを有する回転可能なスピンドルとを備えており、当該スピンドルが回転しており、前記第1の層が、第1のクランプと第2のクランプとによってクランプされている間、そのスピンドル周りで第1の層がねじられて、第2の層が第1の層から分離する。
【発明の概要】
【0005】
別の実施形態では、部材がスピンドルに連結されて、スピンドルにトルクを与えることができる。
【0006】
別の実施形態では、部材はプーリーである。
【0007】
別の実施形態では、プーリーはスプロケットである。
【0008】
別の実施形態では、プーリーは歯車である。
【0009】
別の実施形態では、部材はバーである。
【0010】
別の実施形態では、第2のクランプは移動可能であり、部材に張力を与えることができるテンショナを更に含んでいる。
【0011】
別の実施形態では、テンショナは液圧で作動する。
【0012】
別の実施形態は、スライド部を更に含んでいる。第2のクランプは、スライド部に取り付けられており、テンショナによって張力が加えられるとスライド部上を摺動することができる。
【0013】
別の実施形態は、スピンドルを回転可能に支持できるスピンドルマウントと、第2のクランプに近接する第1の位置と第1のクランプに近接する第2の位置との間でスピンドルマウントを摺動可能に支持できるスピンドルスライド部とを更に含んでいる。
【0014】
別の実施形態は、プーリーを回転させるエンジンを更に含んでいる。
【0015】
別の実施形態では、プーリーは第1のプーリーであり、エンジンに連結された第2のプーリーと、第1のプーリーと第2のプーリーの間に延びる駆動連結部とをさらに含み、第1及び第2のプーリーと駆動連結部とは、エンジンがスピンドルを回転できるトルクをもたらす。
【0016】
別の実施形態では、部材の第1の層から第2の層を分離する際に費やされるエネルギーを測定できるトランスデューサを更に含んでいる。
【0017】
別の実施形態では、第2層が部材から分離される際に、部材が受ける張力を測定できるトランスデューサを更に含んでいる。
【0018】
別の実施形態では、力データを生成するために第2の層が部材から分離される際にスピンドルによって加えられる力を測定できるトランスデューサと、力データを受け取って格納できるコンピュータとを更に含んでいる。
【0019】
別の実施形態では、部材に対するスピンドルの位置を検知して、位置データを生成して、力データと位置データとを相関させることができるトランスデューサを更に含んでいる。
【0020】
別の実施形態は、第1の層を、部材を形成するように結合された第2の層から分離する方法であって、当該方法は、第1の層の端部を第2の層から分離して、第1の層の分離した端部と第2の層の分離した端部とを形成する工程と、第1のクランプにおいて、部材の第1の層の分離された端部を固定する工程と、第2のクランプにおいて、第1の層の分離された端部に対して遠位の位置にて部材を固定する工程と、第2の層の分離された端部をスピンドルのスロットに挿入する工程と、スピンドルを回転させて、第2の層をスピンドル周りにねじって、第2の層を第1の層から分離する工程と、を含む。
【0021】
別の実施形態は、スピンドルを回転させる前に第1の層に張力を加える工程を更に含んでいる。
【0022】
別の実施形態では、張力を加える工程は、第1のクランプを第2のクランプから引き離すことによって行われる。
【0023】
別の実施形態は、第1の層及び第2の層は、少なくとも1つの溶接部によって結合されており、分離する工程は、少なくとも1つの溶接部を破壊する工程を含んでいる。
【0024】
別の実施形態は、スピンドルを回転させる間に第1の層を第2の層から分離するのに必要な力を測定する工程を更に含んでいる。
【0025】
別の実施形態は、第2の層をねじった後に結合アーチファクト(bonding artifacts)を測定する工程を更に含んでいる。
【0026】
別の実施形態では、測定する工程は、画像解析による。
【0027】
別の実施形態では、第2の層をねじった後であり、且つ測定する工程の前に部材を真っ直ぐにする工程を更に含んでいる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
本開示をより完全に理解するために、添付の図面と併せて検討される例示的な実施形態について、以下の詳細な説明が参照される。
【0029】
【
図1】
図1は、本開示の一実施形態に基づく剥離ツールの正面斜視図である。
【
図2】
図2は、結合した一対のシートを分離する3つのステージにおける
図1の剥離ツールの分離スピンドルの概略図である。
【
図3】
図3は、剥離機能が完了した状態に近づいた際における
図1の剥離ツールの正面斜視図である。
【
図4】
図4は、
図1の剥離ツールのピーラーサブアセンブリの背面斜視図である。
【
図5】
図5は、1対の結合されたシートの層間剥離後における第1のシートの斜視図である。
【
図6】
図6は、1対の結合されたシートの層間剥離後における第2のシートの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
手動剥離試験は、分離したパネルを非常に歪めるものであり、典型的には、例えば、キャリパス又はマイクロメーターのセットを用いて手で測定される接合部のアーチファクトを、例えば、スポット溶接された「ボタン」又穴を必要とする。本発明の一態様は、より歪みの少ないパネルをもたらす溶接パネルの剥離試験が、パネル及び溶接部を自動的に分析することを可能にするという認識による。同様に、本発明は、歪んだパネルを真っ直ぐにすることが自動検査を容易にすることができることを理解したものである。例えば、平坦な又は平坦にされたパネルは、本願の譲受人により所有されており、引用を以てその全体が本明細書の一部となる、溶接測定のための装置及び方法と題する2015年5月1日に出願された米国特許出願第14/702,204号に開示されているように、画像化及び画像分析に適している。本開示の別の態様において、剥離装置及びその方法は、従来の方法よりも一貫した結果をもたらし、手作業を顕著に省くことができる。
【0031】
図1は、中心部分12Cと、左側部分12L及び右側部分12Rとを備えるベースフレーム12を有する剥離ツール10を示す。右側部分12Rは、右側クランププラットフォーム14を支持しており、右側クランププラットフォーム14には、1又は複数のボルト18によって、1又は複数のクランププレート16A、16Bが取り付けられてよい。溶接により、例えば、スポット溶接20W(そのうちの2つは点線で概略的に示されている−任意の数又はパターンが可能である)により結合された層20A、20Bを有するラミネートサンプル20は、クランププレート16A、16Bの間(又は、クランププレート16Aと右側クランププラットフォーム14の間)に挿入されてよく、ボルト18が締め付けられて、フレーム12の右側部分12Rに取り付けられたクランププラットフォーム14にサンプル20をしっかりと保持する。ねじ付きクランプ機構が示されているが、液圧シリンダや空気圧シリンダが、クランププラットフォーム14にてサンプル20にクランプ力を及ぼすために使用できるであろう。フレーム12は、鋳鉄で作られてよく、或いは、鋼板、又は、剥離ツール10によって生成された力に耐えられる他の強力な材料で製作されてよい。フレーム12の中央部分12Cは、滑り路22を支持し、その上をピーラー24と可動クランプ台26とが独立にスライドする。可動クランププラットフォーム26は、1又は複数のクランププレート28A、28Bを支持する。1又は複数のクランププレート28A、28Bは、可動クランププラットフォーム26にサンプル20の他方の(左側)端部をクランプするボルト18によって可動クランププラットフォーム26に固定されてよい。クランププラットフォーム14と同様に、液圧クランプ機構又は空気圧クランプ機構が、可動クランププラットフォーム26で使用されてよい。フレーム12の左側部分12Lは、ピストンロッド28Pを有する液圧シリンダ28を支持しており、ピストンロッド28Pは、例えば貫通ピンを介して可動クランププラットフォーム26に取り付けられる。液圧シリンダは、液圧ライン28A、28Bによって給排される加圧作動液によって作動してよく、ピストンロッド28Pと連結された可動クランププラットフォーム26とを滑り路22に沿って張力方向Tに引っ張ってサンプル20に張力を加える。サンプル20の他端は、フレーム12にしっかりと保持されたクランププラットフォーム14にクランプされている。サンプル20を可動クランププラットフォーム26にクランプする前に、層の1つ20B、即ち下層のタブ部分20Tは、サンプル20の残りの部分に対してある角度で曲げられ、ピーラー24のスピンドル30のスロット30Sへと通される。その結果、サンプル20の上層20Aのみが、クランププラットフォーム14,26の間で緊張した状態で保持されて、下層20Bのタブ20Tは、可動クランププラットフォーム26にクランプされるのではなく、スピンドルスロット30Sに挿入される。ピーラー24は、以下でより詳細に説明するように、スピンドル30を回転させることができ、これによって、スロット30Sに挿入されたタブ部分20Tがスピンドル30によって回転させられて、スピンドル30の外部の周りに下層20Bが巻き付けられる。スピンドル30がスピンドル30の周りに下層20Bを徐々に巻き付けると、下層20Bがより大きな長さで上層20Aから引き離される。結合領域、例えば、層20A、20Bを結合するスポット溶接に遭遇すると、回転スピンドル30によって加えられる引っ張り力が、接合部を引き離す。これによって、接合部の溶接材料は、分離層20A、20Bの一方、他方、又は両方に保持され得る。層20A、20Bの1つ又は両方と、破壊された接合/溶接部20Wのアーチファクト、例えば溶接「ボタン」、穴又は窪みとは、その後、寸法及び特性について調べられる。
【0032】
図2は、上層20Aからの下層20Bの剥離を概略的に示す。上層20Aは、クランプ力C1、C2、C3、C4によって両端でクランプされ、その後、力T1、T2によって引っ張られる。下層20Bのタブ部分20Tは、位置P1にてスロット30S内に通される。スピンドル30が矢印の方向に回転すると、スピンドル30は、その周りに、層20Aから引き離され/剥離される層20Bの大半を徐々に巻き取る。スピンドル30が回転して層20Bを巻き取って剥離すると、ピーラー24は、滑り路22上を自由にスライドするので、層20Bを層20Aから裂くにつれて、スピンドル30は、ピーラー24を滑り路に沿って例えば位置P2及びP3に向けて引っ張る。層20Aは、クランププラットフォーム14とクランププラットフォーム26からそれを開放することで取り外されるまで、クランププラットフォーム14とクランププラットフォーム26の間で引き伸ばされたままである。トランスデューサ31は、例えば、液圧シリンダとクランププラットフォーム26の間に配置された歪ゲージであって、張力T1にさらされて、コンピュータ33又はデータキャプチャ装置によって監視されてよい。これによって、剥離ツール10が、層20A、20Bを結合する溶接部20W又は他の接合部を破壊する際に受ける力を、記録及び分析することができる。別の代替例では、トランスデューサ31は、例えばライン28Bの作動液と連通する液圧トランスデューサであってよく、作動液は、張力T1を及ぼし、従って、層20A、20B間の結合が破壊される際に、張力T1の変化レベルを反映するであろう。別の代替例では、スピンドル30によって与えられる機械的ひずみ又はスピンドル30を回転させるモータ46(
図4参照)によって与えられる力の何れかを検知する第2の又は代替的なトランスデューサ35が使用されて、結合破断力が検知されて、コンピュータ33によって記録及び分析されてよい。液圧モータ46の場合、液圧モータ又はそれを動かす液圧ライン内で起こる変動圧力が、液圧センサによって経時的に監視されてよい。電気モータ46が、層20A、20Bが分離される際にモータ46によって使用される電力を測定するトランスデューサ35によって監視されてよい。また、ピーラー24の位置が、トランスデューサ37によって検出されて、その位置がコンピュータ33に記録されてよい。経時的に記録された力と位置のデータを相関させて、ピーラー24の横断経路に対して既知の位置を有する所与の溶接部20W又は一組の溶接部20Wを破壊するのに必要な力が特定されてよい。或いは、力のピーク値が使用されて、溶接部20W又はそれらの組を破壊するのに必要な力が特定されてよい。
【0033】
図2はまた、本発明の簡略化された実施形態を示す。説明された他の実施形態は、スピンドル30を回転させる自動化手段を利用している一方で、バー又はハンドル36がスピンドル30に取り付けられてよい。バー又はハンドル36は、スピンドル30を回転させて、層20Bを巻いて、層20Aから離すためのトルクアームTA1をもたらす。バー36は、クランクの形態であって、手動での回転が容易にされてよい。手動で回されるバー36の場合、スピンドル30及びバー36は、以下にさらに説明するように、滑り路22に取り付けられても、取り付けられなくともよい。
【0034】
図3は、剥離/離層機能が完了した状態に近づいた際における剥離ツール10を示している。より詳細には、下層20Bのほぼ全体が、ピーラー24のスピンドル30の周りに巻き付けられており、以前に層20A、20Bを結合していた全ての溶接部20Wが破壊される。層20Aの上側のアーチファクトA1は、各溶接部20Wが以前に存在した位置で観察することができる。アーチファクトは、溶接部20Wの性質と、剥離ツール10にサンプル20が装填される方法とに依存して、溶接部20Wがピーラー24によって下方に引っ張られる箇所の窪みであってよく、穴であってもよい。
図3に示すように、ピーラー24は、スライド22に載って、クランププラットフォーム26に近接した初期位置から固定クランププラットフォーム16へと引っ張られる。層20と層20Bの剥離を完了した状態に達すると、層20A及び層20Bは、検査及び分析のために剥離ツール10から取り除かれてよい。
図3は、層20Aの張力が、液圧シリンダ28を減圧することによって緩和されることで、検査のためにサンプル20をクランププラットフォーム14,26から取り外すことができる状態を示している。
【0035】
図4は、
図1の剥離ツール10のピーラーサブアセンブリ24Sの背面斜視図である。このピーラーサブアセンブリは、スピンドル30を駆動するプーリー42を回転自在に支持するハウジング40を有している。 ハウジングはまた、フランジ(図示せず)を介してハウジング40にボルト止めされた、高トルク電気モータ又は液圧モータのようなモータ46を支持している。モータ46は、プーリー44を駆動し、プーリー44は、プーリー42と、それらの間に延びるベルト48を介して揃えられており、プーリー42の半径は、スピンドル30の回転に役立つトルクアームTA2をもたらす。プーリー42,44はスプロケットの形態であってよく、ベルト48は駆動チェーンの形態であってよい。或いは、プーリー42,44は、歯合した複数の歯車又は歯車列と置き換えられてよく、これらの歯車は、モータ46と駆動されるスピンドル30との間のトルクを適切にする点で有利である。アイドラ50が使用されて、駆動ベルト/チェーン48で張力が維持されてよい。モータ46、駆動プーリー42,44、及びスピンドル30が取り付けられたハウジング40は、トラッキングベース52に取り付けられてよい。トラッキングベース52は、例えばボールベアリング又はローラーベアリングを介して、或いは、単に滑り路22に係合するように相補的に形成されたグリース処理スロットを介して滑り路22に載っている。プーリー42,44の一方又は他方は、手動でスピンドル30を回転させるハンドル又はクランクに連結されてよい。
【0036】
図5は、サンプル20から剥離され、且つ剥離ツール10から除去された後の上層20Aの一部を示す。上層20Aの底面20ABは、複数のアーチファクトA2を示している。これらアーチファクトA2は、面20ABの残部20AR上に配置されている、盛り上がった溶接「ボタン」又は凹んだ穴であってよい。これらのアーチファクトは、例えば、参照によって本明細書の一部となった、溶接測定のための装置及び方法と題する出願に記載されているように、手動又は自動で測定されてよい。上層20Aは、剥離/離層中においてクランププラットフォーム14とクランププラットフォーム16との間で張力で引き伸ばされるので、剥離層20Aは、剥離/離層プロセスの間及びその後にて比較的直線状のままとされる。剥離層20Aのこの形状は、手動又は自動の何れかの検査を容易にする。ある代替例では、剥離層20Aは、例えば、プレスの平らなプレートの間でプレスすることによって、又は、ローラーの組を通るようにそれを走らせることによって、さらに真っ直ぐにされてよい。アーチファクトA2の乱れ/変形を避けるために、ローラー及び/又はプレートは、ゴム又はゴムで被覆されてよく、或いは、ゴムマットが、剥離層20Aが平坦化されるとアーチファクトA2を覆うために使用されてよい。剥離された層20Aをほぼ平坦な形状に直線状にすることは、例えば、視覚システム及び/又は画像分析を用いた自動測定/分析の助けになる。
【0037】
図6は、スピンドル30の回りに巻き付けられて剥離された後の下部層20Bを示す。スピンドル30のスロット30Sに入れられたタブ部分20Tは、コイル状の下層20Bの中心に向くように配置されている。複数の溶接アーチファクトA3は、表面20BRの残りの部分にわたって配置される。必要に応じて、コイル状の下側層20Bは、アーチファクトA3の分析/測定のために伸ばされ及び/又は平坦化されてよい。
【0038】
本明細書に記載された実施形態は単なる例示であって、当業者は特許請求の範囲に記載の主題の精神及び範囲から逸脱することなく多くの変形や変更を行ってよいことは、理解されるであろう。例えば、本明細書は、抵抗スポット溶接によって接合されたパネルを例として挙げているが、同じ装置及び方法が使用されて、溶融(GMAW、レーザビーム等)のようなその他の溶接プロセスで結合されたパネル、摩擦撹拌(スポット、ステッチ、スイングや摩擦ビット接合)や機械的締結(セルフピアリベット締め(self-pierce riveting)、一般的なリベット締め、ねじ式ファスナ、クリンチング(clinching)、フロードリルねじ等の使用、接着剤又ははんだによる接着)のようなその他の方法で固定されたパネルが分離されてよい。図示された実施形態は、クランププラットフォーム14,26を使用しており、クランプ圧力を加えるためにボルトを用いているが、液圧式、磁気式、空気圧式クランプ又はバイス状クランプを採用することは容易にできるであろう。そのような変形及び変更の全ては、本発明の範囲内に含まれるものである。