特許第6298596号(P6298596)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6298596
(24)【登録日】2018年3月2日
(45)【発行日】2018年3月20日
(54)【発明の名称】車両用シート
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/42 20060101AFI20180312BHJP
   B60N 2/68 20060101ALI20180312BHJP
   B60R 21/055 20060101ALI20180312BHJP
【FI】
   B60N2/42
   B60N2/68
   B60R21/055 A
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-99332(P2013-99332)
(22)【出願日】2013年5月9日
(65)【公開番号】特開2014-218185(P2014-218185A)
(43)【公開日】2014年11月20日
【審査請求日】2016年2月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】安田 賢三
(72)【発明者】
【氏名】西城戸 智
【審査官】 金丸 治之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−206555(JP,A)
【文献】 特開2012−232731(JP,A)
【文献】 特開2011−020659(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/42
B60N 2/68
B60R 21/055
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
着座乗員の背部を支えるシートバックの骨格を構成し、樹脂材によって形成されると共に、シート幅方向両側部分を構成する一対のサイドフレーム部と、一対の前記サイドフレーム部を連結しかつ板厚方向をシート前後方向にして配置された板状の背面パネル部と、を含んで構成されたシートバックフレームと、
前記シートバックの上端部に設けられ、着座乗員の頭部を支えるヘッドレストと、
前記背面パネル部に形成され、後面衝突時に前記背面パネル部に作用するシート後方側への荷重によって反転することで前記背面パネル部の一部がシート後方側へ変位される後方変位部と、
を備えた車両用シート。
【請求項2】
前記後方変位部が、前記背面パネル部の中央部においてシート前方側へ凸となるように湾曲され、
シート後方側への前記荷重によって前記後方変位部がシート後方側へ反転されてシート後方側へ変位する請求項1に記載の車両用シート。
【請求項3】
前記後方変位部の板厚が、前記背面パネル部の一般部における板厚に比して薄く設定された請求項2に記載の車両用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1に記載された車両用シートでは、シートバックに面ばね構体が設けられており、面ばね構体は接続ワイヤによってシートバックフレームに連結されている。そして、追突時(後面衝突時)に慣性力によって着座乗員がシート後方側へ移動してシート後方側への荷重がシートバックに作用すると、接続ワイヤと面ばね構体との間又は接続ワイヤとシートバックフレームとの間の連結状態が解除される。これにより、追突時に着座乗員の上半身がシートバック内に入り込んで、着座乗員の頭部がヘッドレストに速やかに支持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−107571号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年、車両用シートの軽量化等を目的としてシートバックフレーム全体を樹脂材で構成するものがある。この場合には、シートバックフレーム全体の剛性を確保するために、シートバックフレームを所謂シェル構造にすることが望ましい。具体的には、シートバックフレームが、一対のサイドフレーム部と、一対の当該サイドフレーム部を連結する背面パネル部と、を含んで構成される。これにより、着座乗員の背部が背面パネル部によって支持される。
【0005】
しかしながら、着座乗員の背部が背面パネル部によって支持されると、追突時に着座乗員のシート後方側への移動(シートバック内への入り込み)が抑制される。これにより、追突時に着座乗員の頭部をヘッドレストによって速やかに支持することができなくなり、着座乗員に対する鞭打ち障害が悪化する可能性がある。
【0006】
本発明は、上記事実を考慮し、背面パネル部を有する樹脂製のシートバックフレームでシートバックの骨格を構成した場合でも後面衝突時に着座乗員の頭部を速やかに支持できる車両用シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載された車両用シートは、着座乗員の背部を支えるシートバックの骨格を構成し、樹脂材によって形成されると共に、シート幅方向両側部分を構成する一対のサイドフレーム部と、一対の前記サイドフレーム部を連結しかつ板厚方向をシート前後方向にして配置された板状の背面パネル部と、を含んで構成されたシートバックフレームと、前記シートバックの上端部に設けられ、着座乗員の頭部を支えるヘッドレストと、前記背面パネル部に形成され、後面衝突時に前記背面パネル部に作用するシート後方側への荷重によって反転することで前記背面パネル部の一部がシート後方側へ変位される後方変位部と、を備えている。
【0008】
請求項1に記載された車両用シートでは、シートバックの骨格部材であるシートバックフレームが樹脂材によって形成されている。また、シートバックフレームのシート幅方向両側部分は、一対のサイドフレーム部で構成されている。そして、一対のサイドフレーム部は背面パネル部によって連結されており、背面パネル部は、板状に形成されて、板厚方向をシート前後方向にして配置されている。このため、着座乗員の背部が背面パネル部によって支持される。これにより、車両の後面衝突時に慣性力によって着座乗員の上半身がシート後方側へ移動されると、シート後方側への荷重が主として背面パネル部に作用する。
【0009】
ここで、背面パネル部には、後方変位部が形成されている。そして、後面衝突時に背面パネル部に作用するシート後方側への荷重によって後方変位部が反転することで、背面パネル部の一部がシート後方側へ変位される。このため、後面衝突時における着座乗員のシート後方側への移動が許容されて、着座乗員の上半身がシートバック内に入り込む。その結果、着座乗員の頭部がヘッドレスト側へ速やかに移動してヘッドレストによって支持される。これにより、背面パネル部を有する樹脂製のシートバックフレームでシートバックの骨格を構成した場合でも後面衝突時に着座乗員の頭部を速やかに支持できる。
【0010】
請求項2に記載の車両用シートは、請求項1に記載の車両用シートにおいて、前記後方変位部が、前記背面パネル部の中央部においてシート前方側へ凸となるように湾曲され、シート後方側への前記荷重によって前記後方変位部がシート後方側へ反転されてシート後方側へ変位する。
【0011】
請求項2に記載の車両用シートでは、背面パネル部の中央部に後方変位部が形成されており、後方変位部はシート前方側へ凸となるように湾曲されている。そして、後方変位部は、シート後方側への荷重によってシート後方側へ反転されてシート後方側へ変位する。すなわち、後面衝突時には、背面パネル部に作用するシート後方側への荷重によって背面パネル部の中央部がシート後方側へ変位する。このため、後面衝突時に着座乗員の胸部がシート後方側へ移動されるため、着座乗員の頭部をヘッドレスト側へ一層速やかに移動させることができる。また、背面パネル部が破断(破壊)されることなく後方変位部がシート後方側へ変位する。これにより、例えば、シート後方側へ変位した後方変位部を元の状態に戻すことでシートバックフレームを再利用することができる。
【0012】
請求項3に記載の車両用シートは、請求項2に記載の車両用シートにおいて、前記後方変位部の板厚が、前記背面パネル部の一般部における板厚に比して薄く設定されている。
【0013】
請求項3に記載の車両用シートでは、後方変位部の板厚が、前記背面パネル部の一般部における板厚に比して薄く設定されているため、簡易な構成で後方変位部をシート後方側へ変位させることができる。
【発明の効果】
【0024】
以上説明したように、本発明の車両用シートによれば、背面パネル部を有する樹脂製のシートバックフレームでシートバックの骨格を構成した場合でも後面衝突時に着座乗員の頭部を速やかに支持できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】第1の実施の形態に係る車両用シートに用いられるシートバックの骨格を構成するシートバックフレームを示すシート左斜め前方から見た斜視図である。
図2図1に示されるシートバックフレームをシート左斜め後方から見た斜視図である。
図3図1に示されるシートバックフレームをシート前方から見た正面図である。
図4】(A)は、シートバックフレームの背面パネル部が変形する前の状態を示すシート上方から見た断面図(図1の4−4線断面図)であり、(B)は、後面衝突時に後方変位部がシート後方側へ変位した状態を示す(A)に対応する断面図である。
図5】(A)は、第1の実施の形態に係る車両用シートに乗員が着座した状態を示すシート左方から見た側面図であり、(B)は、後面衝突時に着座乗員がシート後方側へ移動された状態を示すシート左方から見た側面図である。
図6】第2の実施の形態に係る車両用シートに用いられるシートバックの骨格を構成するシートバックフレームを示すシート前方から見た正面図である。
図7図6に示される脆弱部をシート上方から見た拡大した断面図(図6の7−7線断面図)である。
図8】第3の実施の形態に係る車両用シートに用いられるシートバックの骨格を構成するシートバックフレームを示すシート前方から見た正面図である。
図9】第4の実施の形態に係る車両用シートに用いられるシートバックの骨格を構成するシートバックフレームを示すシート前方から見た正面図である。
図10】第5の実施の形態に係る車両用シートに用いられるシートバックの骨格を構成するシートバックフレームを示すシート前方から見た正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
(第1の実施の形態)
【0027】
以下、図1図5を用いて第1の実施の形態に係る車両用シート10について説明する。なお、図面に適宜示される矢印FRはシート前方を示し、矢印UPはシート上方を示し、矢印RHはシート右方(シート幅方向一側)を示している。
【0028】
図5に示されるように、車両用シート10は、乗員Pが着座するシートクッション12を備えており、シートクッション12は、従来周知のスライド機構(図示省略)を介して車両の車体フロア(図示省略)に連結されている。また、車両用シート10は、着座乗員Pの背部を支えるシートバック20を備えており、シートバック20が起立した状態でシートクッション12の後端部にシートバック20の下端部が連結されている。さらに、シートバック20の上端部には、着座乗員Pの頭部を支えるヘッドレスト14が設けられている。
【0029】
図1図3に示されるように、シートバック20の内部には、シートバック20の骨格を構成するシートバックフレーム22が設けられている。シートバックフレーム22は、樹脂材(例えば、炭素繊維入り強化プラスチック)によって構成されると共に、全体として所謂シェル状に形成されている。また、シートバックフレーム22は、シートバックフレーム22の外周部を構成する枠フレーム部24と、枠フレーム部24の内側に配置された背面パネル部32と、を含んで構成されており、枠フレーム部24と背面パネル部32とが一体に形成されている。
【0030】
枠フレーム部24は、正面視でシート下方側へ開放された略逆U字形状に形成されている。そして、枠フレーム部24は、シートバックフレーム22のシート幅方向両側部分を構成する一対のサイドフレーム部26と、シートバックフレーム22の上部を構成するアッパフレーム部28と、を含んで構成されている。サイドフレーム部26は、略板状に形成されて、板厚方向をシート幅方向にしてシート上下方向に延在されている。そして、サイドフレーム部26の下端部には、従来周知のリクライニング機構16(図1参照)が取付けられており、前述したシートクッション12の骨格部材であるシートクッションフレーム(図示省略)にサイドフレーム部26がリクライニング機構16を介して連結されている。
【0031】
アッパフレーム部28は、シート幅方向に延びると共に、サイドフレーム部26の上端部を連結している。また、アッパフレーム部28には、一対の支持部30が形成されており、支持部30は軸方向をシート上下方向にした略矩形筒状に形成されている。そして、支持部30内には、ヘッドレスト14を支持するグロメット(図示省略)が挿入されるようになっており、これにより、ヘッドレスト14がシートバックフレーム22に支持されている。
【0032】
背面パネル部32は、略板状に形成されると共に、板厚方向をシート前後方向にして配置されている。この背面パネル部32の外周部は、枠フレーム部24の後端部に一体に結合されており、背面パネル部32と枠フレーム部24との結合部分(角部分)は、枠フレーム部24の長手方向から見た断面で略円弧状に形成される。そして、シートバックフレーム22のシート前方側には、シートバックパット(図示省略)が設けられており、これにより、着座乗員Pの背部が背面パネル部32によって支持されるようになっている。
【0033】
また、背面パネル部32の中央部には、後方変位部34が形成されている。後方変位部34は、シート前方側へ凸となる球面状に湾曲されると共に、正面視で円形状に形成されている。そして、後方変位部34の板厚寸法が、背面パネル部32の一般部32A(背面パネル部32における後方変位部34を除く部分)の板厚寸法に比して小さく設定されている。このため、シート前後方向において、後方変位部34の剛性が、背面パネル部32の一般部32Aの剛性に比して低く構成されている。そして、後面衝突時にシート後方側への荷重が後方変位部34(背面パネル部32)に作用すると、後方変位部34が、シート後方側へ反転してシート後方側へ変位するように設定されている(後方変位部34が、図4(A)の状態から図4(B)の状態へ変形するように設定されている)。
【0034】
次に本実施の形態の作用及び効果について説明する。
【0035】
上記のように構成された車両用シート10では、シートバック20の骨格を構成するシートバックフレーム22が樹脂材によって構成されている。また、シートバックフレーム22は背面パネル部32を備えており、着座乗員Pの背部が背面パネル部32によって支持される。
【0036】
そして、車両の後面衝突時には、慣性力によって乗員Pの身体がシート後方側へ移動してシートバック20を押圧する。これにより、シート後方側への荷重がシートバックフレーム22の背面パネル部32に作用する。
【0037】
ここで、背面パネル部32の中央部には、後方変位部34が形成されている。この後方変位部34は、シート前方側へ凸となる球面状に湾曲されており、後方変位部34の板厚寸法が背面パネル部32の板厚寸法に比して小さく設定されている。そして、後面衝突時にシート後方側への荷重が背面パネル部32に作用すると、後方変位部34が、シート後方側へ反転してシート後方側へ変位する(図4(B)参照)。このため、着座乗員Pの上半身のシート後方側への移動が許容されて、着座乗員Pの上半身がシートバック20内に入り込む。その結果、着座乗員Pの頭部が、ヘッドレスト14側へ移動してヘッドレスト14によって速やかに支持される(図5(B)参照)。したがって、背面パネル部32を有する樹脂製のシートバックフレーム22によってシートバック20の骨格を構成した場合でも後面衝突時に着座乗員Pの頭部を速やかに支持することができる。
【0038】
また、上述したように、後方変位部34が背面パネル部32の中央部においてシート前方側へ凸となる球面状に湾曲されており、シート後方側への荷重によって後方変位部34がシート後方側へ反転してシート後方側へ変位する。このため、後面衝突時に着座乗員Pの胸部がシート後方側へ移動されるため、着座乗員Pの頭部をヘッドレスト14側へ一層速やかに移動させることができる。また、背面パネル部32が破断(破壊)されることなく背面パネル部32の一部(後方変位部34)をシート後方側へ変位できる。これにより、例えば、シート後方側へ変位した後方変位部34を元の状態に戻すことでシートバックフレーム22を再利用することができる。
【0039】
さらに、後方変位部34の板厚が背面パネル部32の一般部32Aの板厚に比して薄く設定されている。このため、後面衝突時に背面パネル部32の一部(中央部)をシート後方側へ簡易な構成で変位させることができる。
【0040】
なお、第1の実施の形態では、後方変位部34が、シート前方側へ凸となる球面状に湾曲されると共に、正面視で円形状に形成されているが、後方変位部34の形状はこれに限らない。例えば、後方変位部34をシート前方側へ凸となるように湾曲させて正面視で楕円状に形成してもよい。
【0041】
また、第1の実施の形態では、背面パネル部32の中央部に後方変位部34が1箇所形成されているが、背面パネル部32に後方変位部34を複数形成してもよい。そして、この場合には、背面パネル部32における後方変位部34の位置を適宜変更して設定してもよい。
【0042】
次に、第2〜第5の実施の形態について説明するが、これらの実施の形態は参考例とする。
(第2の実施の形態)
【0043】
図6及び図7を用いて第2の実施の形態に係る車両用シート50について説明する。第2の実施の形態の車両用シート50では、以下に示すシートバックフレーム22の構成を除いて第1の実施の形態の車両用シート10と同様に構成されている。
【0044】
すなわち、第2の実施の形態では、第1の実施の形態の後方変位部34が省略されて、背面パネル部32が略平板状に形成されている。そして、背面パネル部32の後面には、一対のサイドフレーム部26の近傍において、それぞれ溝部52が形成されている。この溝部52は、シート後方側へ開放された断面略V字形状に形成されて(図7参照)、シート上下方向に延在されており、溝部52の下端がシート下方に開放されている。そして、背面パネル部32における溝部52が形成された部分が脆弱部54とされている。これにより、第2の実施の形態では、一対の脆弱部54が、一対のサイドフレーム部26の近傍において、それぞれ形成されている。そして、脆弱部54における機械的強度が、背面パネル部32の一般部32A(背面パネル部32における脆弱部54を除く部分)における機械的強度に比べて低く構成されており、後面衝突時に背面パネル部32に作用するシート後方側への荷重によって、背面パネル部32が脆弱部54の部位において破断するように設定されている。
【0045】
そして、車両の後面衝突時に慣性力によって着座乗員Pの身体がシート後方側へ移動する際には、主として着座乗員Pの腰部が背面パネル部32の下部を押圧する。すなわち、シート後方側への荷重が主として背面パネル部32の下部に入力される。このため、当該荷重によって脆弱部54を効率よく破断させることができる。そして、脆弱部54が破断されると、背面パネル部32の下部におけるシート幅方向中央部がシート後方側へ変位する。その結果、着座乗員Pの上半身がシートバック20内に入り込んで、着座乗員Pの頭部をヘッドレスト14によって速やかに支持することができる。したがって、背面パネル部32を有する樹脂製のシートバックフレーム22によってシートバック20の骨格を構成した場合でも後面衝突時に着座乗員Pの頭部を速やかに支持することができる。
【0046】
なお、第2の実施の形態では、シート上下方向に延びる一対の脆弱部54が、背面パネル部32に形成されているが、当該脆弱部54を背面パネル部32に3箇所以上形成してもよい。
【0047】
(第3の実施の形態)
【0048】
図8を用いて第3の実施の形態に係る車両用シート60について説明する。第3の実施の形態の車両用シート60では、以下に示すシートバックフレーム22の構成を除いて第2の実施の形態の車両用シート50と同様に構成されている。
【0049】
すなわち、第3の実施の形態では、第2の実施の形態と比べて一対の溝部52の位置が変更されている。具体的には、一対の溝部52が、背面パネル部32の後面における中央部に形成されると共に、正面視で十字形状に交差されている。すなわち、脆弱部54が、背面パネル部32の中央部に十字形状に形成されている。
【0050】
そして、車両の後面衝突時には、背面パネル部32に作用するシート後方側への荷重によって、脆弱部54が破断して背面パネル部32の中央部がシート後方側へ変位する。このため、後面衝突時に着座乗員Pの胸部がシート後方側へ移動されるため、着座乗員Pの頭部をヘッドレスト14側へ一層速やかに移動させてヘッドレスト14によって支持することができる。
【0051】
なお、第3の実施の形態では、脆弱部54が、背面パネル部32の中央部に十字形状に形成されているが、脆弱部54の形状はこれに限らない。例えば、脆弱部54を正面視でX字形状に形成してもよい。
【0052】
また、第3の実施の形態では、一対の脆弱部54が背面パネル部32に形成されているが、脆弱部54を背面パネル部32に3箇所以上形成してもよい。
【0053】
(第4の実施の形態)
【0054】
図9を用いて第4の実施の形態に係る車両用シート70について説明する。第4の実施の形態の車両用シート70では、以下に示すシートバックフレーム22の構成を除いて第2の実施の形態の車両用シート50と同様に構成されている。
【0055】
すなわち、第4の実施の形態では、背面パネル部32における一対の溝部52の一方が省略されると共に、他方の溝部52の位置が変更されている。具体的には、溝部52が、背面パネル部32の下部(背面パネル部32の上下方向中央部よりもシート下方側の部分)における後面に形成されると共に、シート幅方向に延在されている。すなわち、脆弱部54が、背面パネル部32の下部においてシート幅方向に延在されている。
【0056】
そして、上述したように、車両の後面衝突時に慣性力によって着座乗員Pの身体がシート後方側へ移動する際には、主として着座乗員Pの腰部が背面パネル部32の下部を押圧するため、シート後方側への荷重が主として背面パネル部32の下部に入力される。これにより、当該シート後方側への荷重によって脆弱部54を効率よく破断させることができる。そして、脆弱部54が破断されると、背面パネル部32が脆弱部54の部位でシート後方側へ屈曲するように変形するため、着座乗員Pの上半身がシートバック20内に入り込んで、着座乗員Pの頭部をヘッドレスト14によって速やかに支持することができる。
【0057】
(第5の実施の形態)
【0058】
図10を用いて第5の実施の形態に係る車両用シート80について説明する。第5の実施の形態の車両用シート80では、以下に示すシートバックフレーム22の構成を除いて第4の実施の形態の車両用シート70と同様に構成されている。
【0059】
すなわち、第5の実施の形態では、シート上下方向に延在された溝部52が、背面パネル部32の後面におけるシート幅方向中央部に形成されており、溝部52の下端がシート下方側へ開放されている。これにより、背面パネル部32の下部において脆弱部54がシート上下方向に延在されている。
【0060】
そして、上述したように、車両の後面衝突時に慣性力によって着座乗員Pの身体がシート後方側へ移動する際には、主として着座乗員Pの腰部が背面パネル部32の下部を押圧するため、シート後方側への荷重が主として背面パネル部32の下部に入力される。このため、当該シート後方側への荷重によって脆弱部54を効率よく破断させることができる。そして、脆弱部54が破断されると、背面パネル部32が脆弱部54の部位でシート後方側へ屈曲するように変形するため、着座乗員Pの上半身がシートバック20内に入り込んで、乗員Pの頭部をヘッドレスト14によって速やかに支持することができる。
【0061】
なお、第2の実施の形態〜第5の実施の形態では、脆弱部54が直線状に形成されているが、脆弱部54の形状はこれに限らない。例えば、脆弱部54をサイン波状に形成してもよい。
【0062】
さらに、第2の実施の形態〜第5の実施の形態では、溝部52が背面パネル部32の後面に形成されているが、溝部52を背面パネル部32の前面に形成して背面パネル部32における脆弱部54を構成してもよい。
【0063】
また、第2の実施の形態〜第5の実施の形態では、溝部52が断面略V字形状に形成されているが、溝部52の断面形状はこれに限らない。例えば、溝部52の断面形状を半円形状に形成してもよい。
【符号の説明】
【0064】
10 車両用シート
14 ヘッドレスト
20 シートバック
22 シートバックフレーム
26 サイドフレーム部
32 背面パネル部
32A 一般部
34 後方変位部
50 車両用シート
54 脆弱部
60 車両用シート
70 車両用シート
80 車両用シート
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10