特許第6298640号(P6298640)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6298640二輪車及び三輪車用アンダーブラケット並びにその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6298640
(24)【登録日】2018年3月2日
(45)【発行日】2018年3月20日
(54)【発明の名称】二輪車及び三輪車用アンダーブラケット並びにその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C22C 21/10 20060101AFI20180312BHJP
   C22F 1/053 20060101ALI20180312BHJP
   B62K 21/18 20060101ALI20180312BHJP
   C22F 1/00 20060101ALN20180312BHJP
【FI】
   C22C21/10
   C22F1/053
   B62K21/18
   !C22F1/00 602
   !C22F1/00 604
   !C22F1/00 612
   !C22F1/00 630A
   !C22F1/00 640A
   !C22F1/00 682
   !C22F1/00 683
   !C22F1/00 691A
   !C22F1/00 691B
   !C22F1/00 691C
   !C22F1/00 692A
   !C22F1/00 692B
   !C22F1/00 694B
   !C22F1/00 694Z
【請求項の数】2
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2014-8503(P2014-8503)
(22)【出願日】2014年1月21日
(65)【公開番号】特開2015-137377(P2015-137377A)
(43)【公開日】2015年7月30日
【審査請求日】2016年11月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】510132510
【氏名又は名称】株式会社UACJ押出加工
(73)【特許権者】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】KYB株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】514017806
【氏名又は名称】飯田軽金株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078190
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 三千雄
(74)【代理人】
【識別番号】100115174
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 正博
(72)【発明者】
【氏名】箕田 正
(72)【発明者】
【氏名】中井 康博
(72)【発明者】
【氏名】金兒 龍一
(72)【発明者】
【氏名】平野 克也
(72)【発明者】
【氏名】山本 信二
【審査官】 高木 康晴
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭63−297180(JP,A)
【文献】 特開2006−316303(JP,A)
【文献】 特開平10−030147(JP,A)
【文献】 特開平08−144031(JP,A)
【文献】 特開平11−071624(JP,A)
【文献】 特表昭55−500767(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0146183(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22C 21/10
B21C 23/00
B21K 7/12
B62K 21/18
C22F 1/053
C22F 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Zn:4.0〜5.0質量%、Mg:1.0〜2.0質量%、Cu:0.50質量%以下(但し、0質量%を含まない)、Mn:0.20〜0.70質量%、及びZr:0.25質量%以下(但し、0質量%を含まない)を含有し、残部がAl及び不可避的不純物である合金組成のAl合金押出材の熱間鍛造体からなり、ミクロ組織が繊維状組織であり、且つ表面の再結晶組織層の厚さが0.5mm以下である二輪車及び三輪車用アンダーブラケット。
【請求項2】
請求項1に記載の二輪車及び三輪車用アンダーブラケットの製造方法にして、
Zn:4.0〜5.0質量%、Mg:1.0〜2.0質量%、Cu:0.50質量%以下(但し、0質量%を含まない)、Mn:0.20〜0.70質量%、及びZr:0.25質量%以下(但し、0質量%を含まない)を含有し、残部がAl及び不可避的不純物である合金組成のAl合金からなり、ミクロ組織が繊維状組織であり、且つ表面の再結晶組織層の厚さが0.1mm以下である、400℃以上の熱間押出温度にて熱間押出されてなるAl合金押出材を準備する工程と、
400〜480℃の温度であって、且つ前記熱間押出温度との差の絶対値が20℃以内である温度を鍛造開始温度とする一方、380℃以上の温度であって、且つ前記鍛造開始温度以下の温度を鍛造終了温度とする条件の下、前記Al合金押出材を、所定の形状に熱間鍛造せしめる工程と、
前記熱間鍛造に引き続いて、該熱間鍛造にて得られた鍛造体の温度が200℃となるまで、3℃/秒以上の平均冷却速度にて焼入れ処理を施す工程と、
を有する二輪車及び三輪車用アンダーブラケットの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二輪車及び三輪車用アンダーブラケット並びにその製造方法に係り、特に、オンロード用自動二輪車において有利に採用されるアンダーブラケット及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
種々の二輪車や三輪車においては、ステアリングシャフトとフロントフォークとを連結せしめるための部材として、一般に、アンダーブラケット(及びアッパーブラケット)が採用されている。そのようなアンダーブラケットには、それが使用される二輪車又は三輪車の用途等に応じた特性が要求されることから、近年では、剛性の確保と軽量化の観点からアルミニウム合金(Al合金)製のアンダーブラケットが広く用いられている。また、アンダーブラケットに対しては靭性も要求されるところから、Al合金製アンダーブラケットにあっては、多くのものが鍛造加工によって製造されている。
【0003】
例えば、特にオンロード(舗装されている道路)での走行を前提とする自動二輪車(オンロード用自動二輪車)に使用されるAl合金製アンダーブラケットは、製造コストと強度のバランスに鑑み、その製造に際しては6000系Al合金(特に6061合金)が一般的に用いられている。そして、6000系Al合金の鋳造材又は押出材に対して、450℃程度の温度にて熱間鍛造を施すことにより、所望とするアンダーブラケット形状を有する鍛造体を作製し、その後、得られた鍛造体に溶体化処理、焼入れ及び人工時効処理等の熱処理を施すことにより、目的とするアンダーブラケットが製造されているのである。
【0004】
より具体的には、6000系Al合金の鋳造材等を用いてアンダーブラケットを製造するに際しては、熱間鍛造により得られた鍛造体に対して、500℃以上の温度にて溶体化処理を施し、その後、500℃以上の高温から室温まで急速に冷却することによって焼入れ処理を施すことが一般的である。しかしながら、焼入れ処理において、500℃以上の高温から急速に冷却されることにより、被処理物たる鍛造体には変形(焼入れひずみ)が生じるため、かかる焼入れ処理後にひずみを矯正する工程が必要不可欠となるところから、従来の6000系Al合金を用いたアンダーブラケットの製造においては、ひずみ矯正工程が製造コストを増加させる要因となっている。また、熱間鍛造時の温度より高い温度において溶体化処理が実施されるため、最終的に得られる製品において、部分的に再結晶による結晶粒の粗大化が生じることにより、製品強度が低下する恐れや、耐応力腐食割れ性(以下、耐SCC性という)が低下する恐れがある。このように、Al合金を用いたアンダーブラケットの製造においては、ひずみ矯正工程を省略するための焼入れひずみの低減、並びに、強度低下や耐SCC性の低下を防止するための再結晶の抑制が求められているのである。
【0005】
このような状況の下、特許文献1(特開2006−316303号公報)においては、所定の合金組成のアルミニウム合金鋳塊を押出加工して得られたアルミニウム合金押出材であって、表面再結晶層の厚さが300μm以下である高温成形用アルミニウム合金押出材と、そのような押出材を所定の条件下で成形加工してなる高温成形品が、提案されている。
【0006】
しかしながら、かかる特許文献1にて提案されている押出材は、350〜500℃の温度領域で、ひずみ速度が10-2〜100 (s-1)の範囲内にある成形加工に適しているものの、熱間鍛造の場合にはひずみ速度が100 (s-1)を超えることが多いため、特許文献1に開示の押出材を用いて、熱間鍛造により二輪車及び三輪車用アンダーブラケットを製造しても、その組織形態に起因して、十分な強度や耐SCC性を発揮し得ない恐れがあるのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−316303号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ここにおいて、本発明は、上述の如き事情を背景にして為されたものであって、その解決すべき課題とするところは、強度及び耐応力腐食割れ性(耐SCC性)に優れた二輪車及び三輪車用アンダーブラケットと、その有利な製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そして、本発明は、かかる課題を解決するために、Zn:4.0〜5.0質量%、Mg:1.0〜2.0質量%、Cu:0.50質量%以下(但し、0質量%を含まない)、Mn:0.20〜0.70質量%、及びZr:0.25質量%以下(但し、0質量%を含まない)を含有し、残部がAl及び不可避的不純物である合金組成のAl合金押出材の熱間鍛造体からなり、ミクロ組織が繊維状組織であり、且つ表面の再結晶組織層の厚さが0.5mm以下である二輪車及び三輪車用アンダーブラケットを、その要旨とするものである。
【0010】
また、本発明にあっては、そのような二輪車及び三輪車用アンダーブラケットを有利に得るべく、上記した態様の二輪車及び三輪車用アンダーブラケットの製造方法にして、Zn:4.0〜5.0質量%、Mg:1.0〜2.0質量%、Cu:0.50質量%以下(但し、0質量%を含まない)、Mn:0.20〜0.70質量%、及びZr:0.25質量%以下(但し、0質量%を含まない)を含有し、残部がAl及び不可避的不純物である合金組成のAl合金からなり、ミクロ組織が繊維状組織であり、且つ表面の再結晶組織層の厚さが0.1mm以下である、400℃以上の熱間押出温度にて熱間押出されてなるAl合金押出材を準備する工程と、400〜480℃の温度であって、且つ前記熱間押出温度との差の絶対値が20℃以内である温度を鍛造開始温度とする一方、380℃以上の温度であって、且つ前記鍛造開始温度以下の温度を鍛造終了温度とする条件の下、前記Al合金押出材を、所定の形状に熱間鍛造せしめる工程と、前記熱間鍛造に引き続いて、該熱間鍛造にて得られた鍛造体の温度が200℃となるまで、3℃/秒以上の平均冷却速度にて焼入れ処理を施す工程と、を有する二輪車及び三輪車用アンダーブラケットの製造方法をも、その要旨とするものである。
【発明の効果】
【0011】
このように、本発明に従う二輪車及び三輪車用アンダーブラケットにあっては、所定の合金組成のAl合金押出材の熱間鍛造体からなると共に、そのミクロ組織が繊維状組織であり、且つ、表面の再結晶組織層の厚さが0.5mm以下に制御されてなるものであるところから、優れた強度及び耐応力腐食割れ性(耐SCC性)を発揮することとなるのである。特に、本発明に係るアンダーブラケットは、オンロード用自動二輪車に好適に用いられ得るものである。
【0012】
また、そのような二輪車及び三輪車用アンダーブラケットを有利に製造し得る、本発明に従う二輪車及び三輪車用アンダーブラケットの製造方法においては、従来では必要とされていたひずみ矯正工程が不要であり、効果的に製造コストの低減化を図ることが可能ならしめられるのである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明に従う二輪車及び三輪車用アンダーブラケットの一例を示す平面図である。
図2】本発明に従う二輪車及び三輪車用アンダーブラケットの一例を示す背面図である。
図3図1のI−I線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
ところで、本発明に従う二輪車及び三輪車用アンダーブラケット(以下、単に「アンダーブラケット」ともいう)は、例えば図1乃至図3に示される形状を有するものである。
【0015】
かかる図1乃至図3からも明らかなように、アンダーブラケット10は、その長手方向の両端部に設けられた一対のフロントフォーク取付孔12、12と、かかるフロントフォーク取付孔12、12の間に設けられたステアリングシャフト挿通孔14とを備えている。なお、フロントフォーク取付孔12、12及びステアリングシャフト挿通孔14の何れも、アンダーブラケット10を、図3の上下方向に貫通する貫通孔である。また、それらフロントフォーク取付孔12、12及びステアリングシャフト挿通孔14の周囲には、凹部16、16、18、18が設けられている。
【0016】
上述した形状を呈するアンダーブラケット10は、フロントフォーク取付孔12の各々にフロントフォークが挿入され、また、ステアリングシャフト挿通孔14にステアリングシャフトが挿入された状態で、二輪車及び三輪車において使用されることとなる。
【0017】
そして、本発明に従うアンダーブラケット10にあっては、以下に詳述するように、所定の合金組成のAl合金からなり、そのミクロ組織が繊維状組織であり、更には、表面の再結晶組織層の厚さが0.5mm以下とされているところに、大きな技術的特徴が存するのである。
【0018】
本発明に従うアンダーブラケットを与えるAl合金における合金成分の意義及び限定理由について説明するならば、先ず、Zn(亜鉛)は、Mg(マグネシウム)原子と結合して、アンダーブラケットの強度を向上させる特徴を発揮する。そのために、かかるZnの含有量は、他の成分の含有量をも考慮して、本発明においては4.0〜5.0質量%の範囲内とされる。Znの含有量が4.0質量%未満では、アンダーブラケットの強度が不十分となる恐れがあり、一方、Znの含有量が5.0質量%を超えると、耐応力腐食割れ性(耐SCC性)が悪化する恐れがある。本発明において、Zn含有量の好ましい範囲は4.4〜5.0質量%であり、より好ましい範囲は4.5〜4.9質量%である。
【0019】
また、Mg(マグネシウム)は、Zn原子と結合して、アンダーブラケットの強度を向上させる特徴を発揮する。本発明において、Mgの含有量は、他の成分の含有量をも考慮して、1.0〜2.0質量%の範囲内とされる。好ましくは、1.0〜1.3質量%の範囲内とされる。
【0020】
さらに、Cu(銅)は、アンダーブラケットの耐応力腐食割れ性(耐SCC性)を向上させる特徴を発揮するものであり、本発明において、その含有量は0.5質量%以下(但し、0質量%を含まない)とされる。Cu含有量が0.5質量%を超えると、400℃程度の温度においても析出し、以下に詳述する製造工程で製造した場合、得られるアンダーブラケットの強度が低下する恐れがある。Cu含有量の好ましい範囲は、0.20質量%以下(但し、0質量%を含まない)である。
【0021】
更にまた、Mn(マンガン)及びZr(ジルコニア)は、後に熱間鍛造に供される素材(鍛造用素材)を押出加工にて製造する際に、再結晶を抑制して繊維状組織を形成し、また、かかる鍛造用素材の熱間鍛造時における再結晶を抑制することで、アンダーブラケットの強度及び耐応力腐食割れ性(耐SCC性)を向上させる特徴を発揮するものである。そのようなMn及びZrの含有量が少なすぎると、押出加工によって鍛造用素材を製造する際や、鍛造用素材の熱間鍛造の際に、再結晶を生じ、得られるアンダーブラケットの強度及び耐応力腐食割れ性(耐SCC性)が悪化する恐れがあり、その一方で、Mn及びZrの含有量が多すぎると、熱間鍛造時に粗大晶出物を精製し、得られるアンダーブラケットの靭性が悪化する恐れがある。このため、本発明におけるMn及びZrの含有量は、Mnにあっては0.20〜0.70質量%の範囲内と、またZrにあっては0.25質量%以下(但し、0質量%を含まない)とされる。より好ましい範囲は、Mn:0.30〜0.60質量%、Zr:0.10〜0.25質量%であり、最も好ましい範囲は、Mn:0.40〜0.50質量%、Zr:0.12〜0.18質量%である。
【0022】
本発明に従うアンダーブラケットを構成するAl合金は、上記した必須の合金成分の他、残部はAlと不可避的不純物からなるものである。この不可避的不純物は、目的とするAl合金の調製に際して、必然的に混入するものであって、具体的には、Fe、Si、Tiが挙げられる。それらのうち、Fe及びSiは、それらの含有量が多いほど鍛造時にAl−Fe−Si系晶出物を生成し、また、Tiにあっては、その含有量が多いほど鍛造時にAl−Ti系粗大晶出物を生成し、それら晶出物は何れも最終製品たるアンダーブラケットの靭性を低下させる恐れがある。このため、これら成分の含有量は極力少ない方が好ましいが、一方で、不純物を含まない(純度の高い)Al合金の使用にはコストがかかる。本発明においては、製造コストと、最終製品たるアンダーブラケットの靭性とのバランスより、Fe:0.40質量%以下、Si:0.30質量%以下、Ti:0.10質量%以下に規制することが好ましい。
【0023】
本発明に従うアンダーブラケットにあっては、上記した各成分を含有する合金組成のAl合金にて構成されると共に、そのミクロ組織が繊維状組織であって、且つ、表面の再結晶組織層の厚さが0.5mm以下に規定されるものである。アンダーブラケットにおいて、そのミクロ組織が再結晶組織であると、十分な強度及び耐応力腐食割れ性(耐SCC性)を発揮し得ない恐れがあるところから、本発明のアンダーブラケットにおいては、ミクロ組織が繊維状組織にて構成されるようにしたものである。また、熱間鍛造においてアンダーブラケットを製造する場合、得られるアンダーブラケットの表面に再結晶組織層が形成されることは不可避であるところ、その再結晶組織層の厚さを0.5mm以下とすることにより、本発明のアンダーブラケットにあっては、目的とする強度及び耐応力腐食割れ性(耐SCC性)が有利に発現することとなるのである。なお、本発明において、再結晶組織層の厚さは、好ましくは0.3mm以下であり、より好ましくは0.1mm以下である。
【0024】
ここで、繊維状組織とは、押出方向に長く伸びた結晶粒からなり、その内部に数μmサイズのサブグレイン(亜結晶粒)が存在する形態の金属組織を意味するものである。また、再結晶組織層とは、原子が再配列(再結晶)することによって内部のサブグレインが消滅し、繊維状組織よりも大きな結晶粒からなる形態を呈する金属組織を、意味するものである。繊維状組織と再結晶組織とは、ミクロ組織観察によって、明確に区別することが可能なものである。即ち、アンダーブラケット表面の断面ミクロ組織を観察することにより、かかる表面の再結晶組織層の厚さを測定することが可能である。
【0025】
本発明に従うアンダーブラケットは、例えば、以下に示す方法によって、有利に製造することが可能である。
【0026】
先ず、Zn:4.0〜5.0質量%、Mg:1.0〜2.0質量%、Cu:0.50質量%以下(但し、0質量%を含まない)、Mn:0.20〜0.70質量%、及びZr:0.25質量%以下(但し、0質量%を含まない)を含有し、残部がAl及び不可避的不純物である合金組成のAl合金からなり、ミクロ組織が繊維状組織であり、且つ表面の再結晶組織層の厚さが0.1mm以下である、400℃以上の熱間押出温度にて熱間押出されてなるAl合金押出材が、準備される。
【0027】
そのようなAl合金押出材は、上記した合金組成のAl合金に対して、従来より公知の押出加工を施すことにより、製造することが可能である。例えば、半連続鋳造法によって作製されたAl合金鋳塊に対して、400〜550℃の温度で2〜20時間、均質化処理を施し、その後に室温まで冷却し、若しくは冷却することなく、400℃以上の温度に加熱、調整し、次いで、押出出側の製品速度が1〜20m/minとなるように、所定形状に熱間押出を実施することにより、目的とするAl合金押出材(ミクロ組織が繊維状組織であり、表面の再結晶組織層の厚さが0.1mm以下であるAl合金押出材)が得られることとなる。
【0028】
ここで、Al合金押出材を製造する際の熱間押出温度が低すぎると、後工程である熱間鍛造においてミクロ組織の再結晶が生じ、最終製品たるアンダーブラケットにおける表面の再結晶組織層の厚さが0.5mmを超える恐れがある。このため、本発明で使用されるAl合金押出材は、400℃以上、好ましくは420℃以上、より好ましくは450℃以上の熱間押出温度にて、製造される。
【0029】
また、表面の再結晶組織層の厚さが0.1mmを超えるAl合金押出材にあっては、後工程の熱間鍛造においてミクロ組織の再結晶が生じ、最終製品たるアンダーブラケットにおける表面の再結晶組織層の厚さが0.5mmを超える恐れがある。従って、本発明においては、表面の再結晶組織層の厚さが0.1mm以下のAl合金押出材が使用される。
【0030】
次いで、準備された所定のAl合金押出材を、1)400〜480℃の温度であって、且つ、Al合金押出材を製造した際の熱間押出温度との差の絶対値が20℃以内である温度を鍛造開始温度とし、2)380℃以上の温度であって、且つ前記鍛造開始温度以下の温度を鍛造終了温度とする条件の下、目的とするアンダーブラケットの形状に応じた金型を用いて、熱間鍛造を実施する。
【0031】
本発明の製造方法において、熱間鍛造の開始温度(鍛造開始温度)は、400〜480℃の温度であって、且つ、Al合金押出材を製造した際の熱間押出温度との差の絶対値が20℃以内である温度に設定される。けだし、鍛造開始温度が400℃未満では、最終製品(アンダーブラケット)の強度が低下する恐れがある一方、480℃を超えると、最終製品の表面の再結晶組織層の厚さが0.5mmを超える恐れがあるからである。また、Al合金押出材を製造した際の押出温度との差の絶対値が20℃以内である温度を鍛造開始温度とすることにより、最終製品の表面の再結晶組織層を小さくすることが可能ならしめられるからである。なお、400〜480℃の温度であっても、Al合金押出材を製造した際の熱間押出温度との差の絶対値が20℃を超える温度を鍛造開始温度とすると、最終製品の表面の再結晶組織層の厚さが0.5mmを超える恐れがある。
【0032】
また、熱間鍛造の終了時の温度(鍛造終了温度)は、380℃以上の温度であって、且つ鍛造開始温度以下の温度に設定される。けだし、鍛造終了温度を380℃未満とすると、最終製品(アンダーブラケット)の強度が低下する恐れがある。また、鍛造終了温度が鍛造開始温度を超えると、最終製品の表面の再結晶組織層の厚さが0.5mmを超える恐れがあると共に、金型からの離型時に変形が生じ易くなり、別途、ひずみ矯正工程が必要となる恐れがある。
【0033】
なお、本発明において、熱間鍛造におけるひずみ速度は、目的とするアンダーブラケットの形状やその部位等によって変化するが、通常は、1s-1〜10s-1程度に制御されることが好ましい。ひずみ速度が小さすぎると、熱間鍛造加工において材料温度の低下が大きくなり、鍛造終了温度が上記した下限より低くなる恐れがあり、最終製品(アンダーブラケット)の強度低下につながる。その一方、ひずみ速度が大きすぎると、熱間鍛造加工の際の加工発熱によって、鍛造終了温度が上記した上限より高くなる恐れがあり、表面の再結晶組織層の厚さが増加し、最終製品において十分な強度及び耐応力腐食割れ性(耐SCC性)を発揮し得ない恐れがあるからである。
【0034】
そして、本発明の製造方法においては、以上のようにして得られた鍛造体に対して、上述した熱間鍛造に引き続いて、鍛造体の温度が200℃となるまで、3℃/秒以上の平均冷却速度にて焼入れ処理が施されるのである。かかる焼入れ処理の際の平均冷却速度が3℃/秒未満の場合、最終製品の強度が低下する恐れがある。なお、本発明において、焼入れ処理を開始する際の温度は、上述した鍛造終了温度(380℃以上の温度であって、鍛造開始温度以下の温度)と同一、即ち、鍛造終了直後に焼入れ処理を開始しても構わないが、鍛造終了温度が420℃を超える場合には、鍛造体の温度を420℃以下とした後に焼入れ処理を行なうことが好ましい。けだし、焼入れ処理の開始時の温度が420℃を超えると、焼入れひずみが大きくなり、ひずみ矯正工程が必要となる恐れがあるからである。即ち、本発明の製造方法にあっては、焼入れ処理の開始時の温度は、380〜420℃の範囲内にあることが好ましいのである。
【0035】
以上のようにして焼入れ処理が施された鍛造体にあっては、200℃から室温に至るまで冷却される。かかる冷却の際の冷却速度は、特に限定されるものではない。また、室温まで冷却された鍛造体は、必要に応じて、自然時効処理や人工時効処理が施される。人工時効処理の条件については特に限定されるものではないが、例えば、100〜170℃の温度にて1〜50時間程度の処理が行なわれることとなる。
【0036】
このように、本発明に従うアンダーブラケットの製造方法にあっては、1)所定の合金組成からなり、ミクロ組織が繊維状組織であり、且つ表面の再結晶組織層の厚さが0.1mm以下である、400℃以上の熱間押出温度にて熱間押出されてなるAl合金押出材を素材として用いて、そのようなAl合金押出材を、2)所定の条件下で熱間鍛造して鍛造体を製造し、3)得られた鍛造体に対して、所定の条件の下、焼入れ処理を施すところに、大きな特徴を存しているのである。したがって、従来の6000系Al合金の鋳造材等を用いたアンダーブラケットの製造方法では必須とされていた溶体化処理やひずみ矯正工程が不要となるところから、製造コストを低く抑えることが可能となる。
【0037】
そして、そのようにして得られたアンダーブラケットにあっては、そのミクロ組織が繊維状組織であり、且つ表面の再結晶組織層の厚さが0.5mm以下となるところから、優れた強度及び耐応力腐食割れ性(耐SCC性)を発揮することとなるのである。本発明のアンダーブラケットは、特に、オンロード用自動二輪車に好適に採用されるものである。
【実施例】
【0038】
以下に、本発明の実施例を幾つか示し、本発明を更に具体的に明らかにすることとするが、本発明が、そのような実施例の記載によって、何等の制約をも受けるものでないことは、言うまでもないところである。また、本発明には、以下の実施例の他にも、更には上記した具体的記述以外にも、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づいて、種々なる変更、修正、改良等を加え得るものであることが、理解されるべきである。
【0039】
なお、以下において、ミクロ組織観察、引張試験及びSCC試験は、それぞれ以下の手法に従って実施した。
【0040】
−ミクロ組織観察−
試験材(図1乃至図3に示す形状を呈するアンダーブラケット)の前後方向(図1及び図2における上下方向)の略中央部において、その前後方向に垂直な面(図3に示される面)を切断及び切削によって露出させる。その露出面を、800番までの耐水研磨紙を用いて研磨し、次いで、研磨面に対して、硝酸、塩酸及びフッ酸の混合液[硝酸:塩酸:フッ酸=2:6:1(重量比)]を用いてエッチング処理を行なう。エッチング処理の後、エッチング処理面について、光学顕微鏡を用いた観察(倍率:50倍)、若しくは拡大鏡を用いた観察(倍率:10倍)を行ない、アンダーブラケットの表面における再結晶組織層の厚さを測定すると共に、アンダーブラケットの内部における、大きさが100μm以上の粗大晶出物の有無を観察する。
【0041】
−引張試験−
図2に示すA部より、幅20mm、長さ100mmの試験片を切り出し、厚さ5mmになるよう上下面を面削し、平行部幅8mm、平行部長さ20mmの引張試験片を成形する。引張試験方向がアンダーブラケットの幅方向(図1及び図2の左右方向)と平行になるように、引張試験片を試験機にセットし、室温で引張試験を行ない、引張強さを測定する。なお、引張試験速度は2mm/minで一定とする。
【0042】
−SCC(応力腐食割れ)試験−
アンダーブラケットのフロントフォーククランプ部(フロントフォーク取付孔の周縁部)より、外径:58mm、厚さ:2mm、長さ:25mmのCリング形状の試験片を成形し、試験片をネジで締め込むことで、各アンダーブラケットの耐力に対して95%の引張応力を試験片の外面に負荷させ、かかる負荷がかかった状態の試験片を、25℃の温度環境の下、3.5%塩水へ10分間浸漬し、その後に50分間乾燥させるという工程を1サイクルとして、乾燥後の試験片に目視で確認される割れが発生するまで、この浸漬及び乾燥を繰り返し行なう。30日間、繰り返しても試験片に割れが確認されない場合は、「割れ無し」と評価する。
【0043】
−試験材1〜試験材14−
下記表1に示す合金組成からなる合金A〜Nの何れかよりなり、ミクロ組織が繊維状組織であり、且つ、表面の再結晶組織層の厚さが0.1mm以下である、450℃の熱間押出温度にて熱間押出されてなるAl合金押出材(直径:45mm、長さ:310mm)を12種類、準備した。それらAl合金押出材を450℃(鍛造開始温度)に加熱して、直径方向に熱間鍛造を行なうことにより、図1乃至図3に示す形状を呈する鍛造体を成形した。なお、得られたアンダーブラケット形状の鍛造体において、最も薄い部分の厚さは10mmであり、最も厚い部分の厚さは30mmである。また、熱間鍛造の際のひずみ速度は、最も遅い位置で3s-1とし、最も速い位置で8s-1とすると共に、鍛造終了後の鍛造体の温度(鍛造終了温度)が400〜410℃の範囲内になるように、熱間鍛造を実施した。熱間鍛造後、鍛造体の温度が390〜410℃の範囲内にあることを確認し、直ちにファンを用いて、60秒以内に鍛造体の温度が200℃になるまで冷却することにより焼入れ処理を行なった。鍛造体の温度が200℃まで低下した後は、ファンによる送風を止め、そのままの状態で鍛造体を室温まで冷却した。
【0044】
室温まで冷却された鍛造体に対して、2日間の自然時効処理を施し、その後、約50℃/hの昇温速度にて鍛造体を100℃まで昇温し、その状態で3時間保持し、その後に更に約50℃/hの昇温速度にて鍛造体を150℃まで昇温し、その状態で8時間保持した。かかる保持後の鍛造体を、室温下に放置して冷却することにより、図1乃至図3に示す形状を呈するアンダーブラケット(試験材1〜試験材14)を得た。得られた各試験材について、ミクロ組織観察、引張試験及びSCC(応力腐食割れ)試験を行なった。その結果を、下記表2に示す。
【0045】
【表1】
【0046】
【表2】
【0047】
表2の結果からも明らかなように、本発明に従うアンダーブラケット(試験材1〜試験材14)にあっては、優れた引張強さを有すると共に、SCC(応力腐食割れ)試験でも割れが認められず、耐SCC性(耐応力腐食割れ性)にも優れていることが認められる。
【0048】
−試験材15〜試験材18−
上記表1に示す合金Dからなり、ミクロ組織が繊維状組織であり、且つ、表面の再結晶組織層の厚さが0.1mm以下である、下記表3に示す熱間押出温度にて熱間押出されてなるAl合金押出材(直径:45mm、長さ:310mm)を準備した。それらAl合金押出材を用いて、下記表3に示す熱間鍛造条件に従い、図1乃至図3に示す形状を呈する鍛造体を成形した。なお、得られたアンダーブラケット形状の鍛造体において、最も薄い部分の厚さは10mmであり、最も厚い部分の厚さは30mmである。得られた各鍛造体を、下記表3に示す焼入れ開始温度から200℃になるまで、各平均冷却速度にて冷却し、鍛造体の温度が200℃まで低下した後は室温下に放置して、鍛造体を室温まで冷却した。なお、焼入れ処理は、試験材15〜試験材17についてはファンによる空冷により、試験材18については水冷により、それぞれ実施した。
【0049】
室温まで冷却された鍛造体を、自然時効処理に2日間供した後、約50℃/hの昇温速度にて100℃まで昇温し、その状態で3時間保持し、その後に更に約50℃/hの昇温速度にて鍛造体を150℃まで昇温し、その状態で8時間保持した。かかる保持後の鍛造体を、室温下に放置して冷却することにより、図1乃至図3に示す形状を呈するアンダーブラケット(試験材15〜試験材18)を得た。得られた各試験材について、ミクロ組織観察、引張試験及びSCC(応力腐食割れ)試験を行なった。その結果を、下記表4に示す。
【0050】
【表3】
【0051】
【表4】
【0052】
表4の結果からも明らかなように、本発明に従うアンダーブラケット(試験材15〜試験材18)にあっては、優れた引張強さを有すると共に、SCC(応力腐食割れ)試験でも割れが認められず、耐SCC性(耐応力腐食割れ性)にも優れていることが認められる。なお、これら試験材15〜試験材18にあっては、何れも、焼入れ開始温度が鍛造開始温度より低かったことから、ひずみ矯正工程が不要であったことは言うまでもない。
【0053】
−試験材19〜試験材26−
下記表5に示す合金組成からなる合金aa〜hhの何れかよりなり、ミクロ組織が繊維状組織であり、且つ、表面の再結晶組織層の厚さが0.1mm以下である、450℃の熱間押出温度にて熱間押出されてなるAl合金押出材(直径:45mm、長さ:310mm)を用いた以外は試験材1〜試験材14と同様の条件に従い、図1乃至図3に示す形状を呈するアンダーブラケット(試験材19〜試験材26)を得た。得られた各試験材について、ミクロ組織観察、引張試験及びSCC(応力腐食割れ)試験を行なった。その結果を、下記表6に示す。
【0054】
【表5】
【0055】
【表6】
【0056】
表6の結果から明らかなように、先ず、Zn含有量及びMg含有量が本発明の下限未満であるAl合金からなる試験材19については、引張強さが低いことが認められた。また、Zn含有量及びMg含有量が本発明の上限を超えているAl合金からなる試験材20にあっては、SCC(応力腐食割れ)試験において割れの発生が認められ、耐SCC性(耐応力腐食割れ性)に乏しいものであることが確認された。更に、Cuを全く含有しないAl合金からなる試験材21については、SCC(応力腐食割れ)試験において割れの発生が認められ、耐SCC性(耐応力腐食割れ性)に乏しいものであることが認められた。更にまた、Cu含有量が本発明の上限を超えているAl合金からなる試験材22については、引張強さが低いことが認められた。加えて、Mn含有量が本発明の下限未満であるAl合金からなる試験材23は、表面の再結晶組織層の厚さが本発明の範囲を超え、引張強さが低く、また耐SCC性(耐応力腐食割れ性)に乏しいものであることが認められた。Mn含有量が本発明の上限を超えるAl合金からなる試験材24においては、100μmを超える粗大晶出物の生成が認められた。不純物としてのFe及びSiを比較的多く含有するAl合金からなる試験材25、及び、不純物としてのTiを比較的多く含有する試験材26においては、何れも100μmを超える粗大晶出物の生成が認められた。
【0057】
−試験材27〜試験材35−
上記表1に示す合金Dからなり、ミクロ組織が繊維状組織であり、且つ、表面の再結晶組織層の厚さが0.1mm以下である、下記表7に示す熱間押出温度にて熱間押出されてなるAl合金押出材(直径:45mm、長さ:310mm)を準備した。それらAl合金押出材を用いて、下記表7に示す熱間鍛造条件に従い、図1乃至図3に示す形状を呈する鍛造体を成形した。なお、得られたアンダーブラケット形状の鍛造体において、最も薄い部分の厚さは10mmであり、最も厚い部分の厚さは30mmである。得られた各鍛造体を、下記表7に示す焼入れ開始温度から200℃になるまで、各平均冷却速度にて冷却し、鍛造体の温度が200℃まで低下した後は室温下に放置して、鍛造体を室温まで冷却した。なお、焼入れ処理は、試験材27〜試験材34についてはファンを用いた空冷により、試験材35については放冷(室温下に放置)により、それぞれ実施した。
【0058】
室温まで冷却された鍛造体を、自然時効処理に2日間供した後、約50℃/hの昇温速度にて100℃まで昇温し、その状態で3時間保持し、その後に更に約50℃/hの昇温速度にて鍛造体を150℃まで昇温し、その状態で8時間保持した。かかる保持後の鍛造体を、室温下に放置して冷却することにより、図1乃至図3に示す形状を呈するアンダーブラケット(試験材27〜試験材35)を得た。得られた各試験材について、ミクロ組織観察、引張試験及びSCC(応力腐食割れ)試験を行なった。その結果を、下記表8に示す。
【0059】
【表7】
【0060】
【表8】
【0061】
表7及び表8から明らかなように、先ず、製造時の押出温度が本発明の下限未満である押出材を用いてなる試験材27にあっては、表面の再結晶組織層の厚さが0.5mmを超え、引張強さが低く、耐SCC性(耐応力腐食割れ性)に乏しいものであることが認められた。また、表面の再結晶組織層の厚さが本発明の上限を超える押出材を用いてなる試験材28にあっては、表面の再結晶組織層の厚さが0.5mmを超え、引張強さが低く、耐SCC性(耐応力腐食割れ性)に乏しいものであることが確認された。試験材29に係るアンダーブラケットにあっては、その熱間鍛造開始温度と押出材製造時の押出温度との差の絶対値が20℃を超えており、引張強さが低く、耐SCC性(耐応力腐食割れ性)に乏しいものであることが認められた。試験材30に係るアンダーブラケットは、その鍛造開始温度が本発明の上限を超えており、引張強さが低く、耐SCC性(耐応力腐食割れ性)に乏しいものであることが認められた。試験材31に係るアンダーブラケットは、その鍛造開始温度が本発明の下限未満であり、引張強さに乏しいものであることが認められた。試験材32に係るアンダーブラケットは、焼入れ開始温度が比較的高温であったため、焼入れひずみが大きく、ひずみ矯正工程が別途、必要であることが認められた。試験材33に係るアンダーブラケットは、熱間鍛造時のひずみ速度が比較的小さかったため、引張強さに乏しいものであることが認められた。試験材34に係るアンダーブラケットは、熱間鍛造時のひずみ速度が比較的大きかったため、表面の再結晶組織層の厚さが0.5mmを超え、引張強さが低く、耐SCC性(耐応力腐食割れ性)に乏しいものであることが認められた。試験材35に係るアンダーブラケットは、焼入れ処理時の200℃までの平均冷却速度が本発明の下限未満であったため、引張強さに乏しいものであることが認められたのである。
【符号の説明】
【0062】
10 アンダーブラケット 12 フロントフォーク取付孔
14 ステアリングシャフト挿通孔 16 凹部
18 凹部
図1
図2
図3