(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
被支持体の荷重を受ける荷重受部材を上面に開口部を有するケースの上方に配置し、該荷重受部材を支持するピストンを上記開口部から上記ケース内に挿入して、該ピストンの下端面を上記ケースの内部に臨ませると共に、該ピストンの外周から上記ケースの開口部の周縁までを環状の可撓性部材により閉塞して、上記被支持体の荷重を弾性的に支持する気体ばねを構成した気体ばね式除振装置であって、
該気体ばね式除振装置の水平方向のばね定数を、等方的な状態と、所定方向に最大値となり且つそれと直交する方向に最小値となる異方的な状態との間で連続的に変化させる可変手段を備え、
上記可変手段は、上記荷重受部材の下面における上記ピストンの上端部に対応する位置に下方に張り出すように形成された上側円筒面と、上記ピストンの上端部に上方に張り出すように形成され、上記上側円筒面に当接する下側円筒面と、を有し、該両円筒面の一方が他方に対して水平方向に回転自在に構成されていることを特徴とする気体ばね式除振装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記除振装置を備えた除振台は、基礎上に例えば4基の除振装置を備え、これら除振装置が矩形状の定盤を支持している。一方、各除振装置は、上記の如くロードディスクの下面に当接するサポートロッドの荷重受け面が球面をなしているため、水平方向におけるばね特性に方向性がない。
【0006】
したがって、定盤が例えば正方形状をなしていて、除振装置同士の前後の間隔と左右の間隔が略同一の場合、除振台の水平方向におけるばね特性に方向性がなく、定盤及び搭載機器からなる除振対象物の重心を中心に水平方向に回転するモードが発生する。しかしながら、除振装置同士の前後の間隔と左右の間隔とを略同一としつつ、回転モードを発生させずに水平方向におけるばね特性に方向性を持たせながら除振したいという要求がある。
【0007】
一方、定盤が例えば長方形状をなしていて、除振装置同士の前後の間隔と左右の間隔が異なる場合、除振台の水平方向におけるばね特性に方向性があるため、上記のような回転モードが発生しない。しかしながら、除振装置同士の前後の間隔と左右の間隔とを異ならせつつ、回転モードを発生させながら除振したいという要求もある。
【0008】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、除振装置の水平方向のばね特性の方向性を可変にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明は、水平方向のばね定数の方向性を変化させる可変手段を設けたものである。
【0010】
具体的には、本発明は、被支持体の荷重を受ける荷重受部材を上面に開口部を有するケースの上方に配置し、該荷重受部材を支持するピストンを上記開口部から上記ケース内に挿入して、該ピストンの下端面を上記ケースの内部に臨ませると共に、該ピストンの外周から上記ケースの開口部の周縁までを環状の可撓性部材により閉塞して、上記被支持体の荷重を弾性的に支持する気体ばねを構成した気体ばね式除振装置を対象とし、次のような解決手段を講じた。
【0011】
すなわち、第1の発明は、該気体ばね式除振装置の水平方向のばね定数を、等方的な状態と、所定方向に最大値となり且つそれと直交する方向に最小値となる異方的な状態との間で連続的に変化させる可変手段を備え
、上記可変手段は、上記荷重受部材の下面における上記ピストンの上端部に対応する位置に下方に張り出すように形成された上側円筒面と、上記ピストンの上端部に上方に張り出すように形成され、上記上側円筒面に当接する下側円筒面と、を有し、該両円筒面の一方が他方に対して水平方向に回転自在に構成されていることを特徴とする。
【0012】
第1の発明によれば、可変手段によって、気体ばね式除振装置の水平方向のばね定数を、等方的な状態と、所定方向に最大値となり且つそれと直交する方向に最小値となる異方的な状態との間を連続的に変化させるので、例えば除振台における気体ばね式除振装置同士の前後間隔と左右間隔とが略同一であって除振対象物が水平方向の回転を嫌うものである場合には、各気体ばね式除振装置の水平方向のばね定数を可変手段によって異方的な状態にして、すべての気体ばね式除振装置の水平方向のばね定数を所定方向と直交する方向に最小値となるようにすることにより、除振対象物がその重心を中心に回転するのを防ぐことができる。一方、例えば除振台における気体ばね式除振装置同士の前後間隔と左右間隔とが異なるものであって除振対象物がその重心を中心に水平方向に回転するものである場合には、各気体ばね式除振装置の水平方向のばね定数を可変手段によって等方的な状態にすることにより、除振対象物がその重心を中心に回転する場合に、その回転を吸収するように除振することが可能となる。
【0013】
また、第
1の発明によれば、水平方向のばね定数を等方的な状態にする場合には、一方の円筒面の中心軸を他方の円筒面の中心軸に対して直交するように回転することにより、実質的に球面同士が接触する状態となる。このため、水平方向のばね定数が等方的な状態となる。そして、この等方的な状態から、一方の円筒面を他方の円筒面に対して水平方向に回転することにより、両円筒面の上下間隔が徐々に変化し、水平方向のばね定数が連続的に変化する。そして、一方の円筒面の中心軸が他方の円筒面の中心軸と平行になると、円筒面同士がこの中心軸に沿って線状に当接するため、水平方向のばね定数が当該中心軸方向に最大値となり且つ当該中心軸と直交する方向に最小値となる異方的な状態となる。このように、一対の円筒面という比較的簡素な構造で上記可変手段を構成することができる。
【0014】
第
2の発明は、第
1の発明に係る気体ばね式除振装置が複数設置され、これら気体ばね式除振装置上に除振対象物が載置される除振台を対象とし、すべての上記気体ばね式除振装置は、各々水平方向のばね定数が上記可変手段によって所定方向に最大値となり且つ当該所定方向と直交する方向に最小値となっていることを特徴とする。
【0015】
第
2の発明によれば、回転を嫌う除振対象物の除振に好適である。
【0016】
第
3の発明は、第
1の発明に係る気体ばね式除振装置が複数設置され、これら気体ばね式除振装置上に除振対象物が載置される除振台を対象とし、上記気体ばね式除振装置は、上記基礎上の正方形の隅部に配置され、対角上の一対の上記気体ばね式除振装置は、水平方向のばね定数が上記可変手段によって所定方向に最大値となり且つ当該所定方向と直交する直交方向に最小値となる一方、その他の一対の上記気体ばね式除振装置は、水平方向のばね定数が上記可変手段によって上記直交方向に最大値となり且つ上記所定方向に最小値となっていることを特徴とする。
【0017】
第
3の発明によれば、気体ばね式除振装置を前後左右に等間隔に配置するレイアウトにおいて、回転する除振対象物の除振に好適である。
【発明の効果】
【0018】
以上、本発明によれば、可変手段によって、気体ばね式除振装置の水平方向のばね定数を、等方的な状態と、所定方向に最大値となり且つそれと直交する方向に最小値となる異方的な状態との間を連続的に変化させるので、例えば除振台における気体ばね式除振装置同士の前後間隔と左右間隔とが略同一であって除振対象物が水平方向の回転を嫌うものである場合には、各気体ばね式除振装置の水平方向のばね定数を可変手段によって異方的な状態にして、すべての気体ばね式除振装置の水平方向のばね定数を所定方向と直交する方向に最小値となるようにすることにより、除振対象物がその重心を中心に回転するのを防ぐことができる。一方、例えば除振台における気体ばね式除振装置同士の前後間隔と左右間隔とが異なるものであって除振対象物がその重心を中心に水平方向に回転するものである場合には、各気体ばね式除振装置の水平方向のばね定数を可変手段によって等方的な状態にすることにより、除振対象物がその重心を中心に回転する場合に、その回転を吸収するように除振することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0021】
図1は、この実施形態に係る気体ばね式除振装置を使用した精密除振台Aの一例を示す斜視図であり、
図2は当該精密除振台Aを模式的に示す平面図である。この精密除振台Aは、例えば、図示しない半導体検査装置や電子顕微鏡、光学式計測装置などの精密機器を搭載して、それらの機器を床面からの振動と略絶縁した状態で設置するためのものである。精密除振台Aは、
図1に示すように、床面に設置される下側構造部1と、この下側構造部1の上面の4隅にそれぞれ配設された気体ばね式除振装置であるアイソレータ2と、これら4つのアイソレータ2の上部に搭載された搭載盤3とを備えている。なお、
図2における下側及び上側をそれぞれ前側及び後側とし、
図2における右側及び左側を右側及び左側とする。
【0022】
下側構造部1は、鋼製角パイプの構造部材を概ね直方体形状となるように櫓組みしたものである。この下側構造部1は、それぞれ上下方向に延びる4本の脚部4と、これら4本の脚部4のうち隣り合う2本の脚部4同士を下端側で連結するように水平方向に延びる下梁部5と、4本の脚部4の上端側外周を囲んで平面視で正方形の枠状に配置された上梁部6とからなる。上梁部6の内側面は各脚部4の外側面に接合されると共に、上梁部6の上面は各脚部4の上端面と同一平面上に位置付けられている。
【0023】
そして、各脚部4の上端面からその外側を囲む上梁部6の上面に亘っては、水平板7が配設されていて、これら各水平板7上にアイソレータ2が配設されている。また、下側構造部1の長手方向に延びる下梁部5の下面には移動用のキャスター8が2つずつ配設されると共に、各脚部4の下端面には高さ調節用のレベラー9が配設されている。
【0024】
図3は
図2のIII-III線断面図である。アイソレータ2は、従来例(特許文献1)のものと同様にダイヤフラム形の空気ばねのピストンにジンバル機構を組み込んで、上下方向に柔らかいという空気ばね本来の特性に加えて、水平方向にも非常に柔らかな特性を得られるようにしたものである。
【0025】
具体的には、アイソレータ2は、水平板7の上面に締結された矩形箱状のケース11を備えている。このケース11は、詳しく図示しないが、各々金属製の板材からなる底板上に側壁が立設され、その上端にケース11上面の構成する天板が接合されてなり、天板の略中央に開口部11aを有する。このケース11内には、天板の開口部11aからピストン12が挿入されている。
【0026】
ピストン12は、ケース11上面の開口部11a直上に配置されたピストン本体13と、このピストン本体13から下方に延出する下方延出部としての有底筒状のピストンウエル23と、このピストンウエル23の中空部24に挿入された支柱部材としてのサポートロッド31とを備えている。そして、ピストンウエル23の外周からケース11上面の開口部11aの周縁までは、可撓性部材である環状のダイヤフラム15によって閉塞されている。
【0027】
ピストン本体13は、上下方向に貫通する断面円形の中心孔14を有するドーナツ状とされている。この中心孔14は、下端部が縮径した段付き形状を有する。すなわち、この中心孔14のうち、下端部分は相対的に小径に形成された小径部14aを構成し、その他の上側部分は相対的に大径に形成された大径部14bを構成している。そのことで、ピストン本体13の中心孔14内には、円環状の底面部13aが形成されている。また、図示しないが、ピストン本体13の外周面のうち少なくとも下半部には、下端側に向かって僅かに縮径するテーパ面が形成されている。
【0028】
ダイヤフラム15は、このピストン本体13の下端面13bから外周側のテーパ面を覆った後にケース11上面の開口部11aの周縁に至るように配設されている。すなわち、ダイヤフラム15及びピストン本体13によりケース11上面の開口部11aが閉塞されて、空気室17が区画されており、ピストン本体13の下端面13bが空気室17に臨んでその内圧を受けることで、主に上下方向の荷重を支持する空気ばね18が構成されている。
【0029】
ダイヤフラム15は、例えばポリエステル繊維などの織布を補強材として埋設したゴム弾性膜により概略皿状に形成され、ピストン本体13の下端面13bに接着される内周部15aと、その外周側に連続して上方に凸状になるように湾曲する環状ロール部15bと、さらにその外周側に連続して鍔状に設けられた外周フランジ部15cとからなる。
【0030】
ダイヤフラム15の内周部15aは、その下方からワッシャ19によりピストン本体13に対して圧着されている。他方、ダイヤフラム15の外周フランジ部15cは、ケース11上面の開口部11aの周縁部分に接着されていて、その上側に配設された締付けリング21がボルト22によってケース11の天板に締結されることで、これらケース11の天板と締付けリング21とによって挟持されている。
【0031】
このように配設されたダイヤフラム15は、環状ロール部15bがピストン本体13と締付けリング21との間で上下にうねるように大きく撓むことにより、ピストン本体13の上下方向の変位に対して大きな可撓性を有し、また、ピストン本体13を挟む左右両側の環状ロール部15bがそれぞれ上下方向の反対の向きに撓むことによって、ピストン本体13が水平方向の軸周りに容易に揺動するようになっている。他方、ダイヤフラム15はピストン本体13の水平方向の変位に対しては可撓性が極めて小さいため、ピストン本体13は水平方向には殆ど変位しないことになる。
【0032】
ピストンウエル23の上端部は、やや縮径されて、ピストン本体13の中心孔14のうち小径部14aに螺入されて当該中心孔14の大径部14bに突出する縮径部23aとされている。そして、この縮径部23aの外周面に設けられた雄ねじが、ピストン本体13の中心孔14のうち小径部14aの内周面に設けられた雌ねじと螺合すると共に、縮径部23aのうち中心孔14の大径部14bに突出した部分を軸受ナット25で留めることにより、ピストンウエル23の縮径部23aがワッシャ19と共にピストン本体13に対して締結されている。
【0033】
ピストンウエル23の中空部24における底面には、それよりもやや小径で厚肉の円盤形状を有する鋼製のウエルスラグ26が接合されて、ピストンウエル23の底壁部23bに下側からボルト27で締結されており、このウエルスラグ26がピストンウエル23の底部となっている。このウエルスラグ26の上面には、表面硬度を高めるための焼き入れ処理が施されている。
【0034】
サポートロッド31は、ピストンウエル23の中空部24を上下方向に延び、その下端部がピストンウエル23の底部に枢支されている。すなわち、サポートロッド31の下端部には相対的に小径の縮径部31aが形成され、この縮径部31aの先端面(サポートロッド31の下端面)に開口する凹部32に鋼球33が収容されていて、その鋼球33の下側部分(球面状の突出部)がサポートロッド31の下端から突出して、ウエルスラグ26の上面に転動可能に当接している。
【0035】
そして、ピストンウエル23の中空部24のうち底部側には、サポートロッド31の縮径部31aの外周面からウエルスラグ26の外周面までを覆うように、ゴム弾性体からなる保持部材35を配設している。この保持部材35は、例えばフッ素ゴムを主成分とするものであり、サポートロッド31の縮径部31aの外周面から鋼球33を覆い、さらにウエルスラグ26の上面から外周面全体を覆うように、それら縮径部31a、鋼球33及びウエルスラグ26に一体に加硫接着されて、それらを連結している。
【0036】
また、保持部材35の外周側は、サポートロッド31の縮径部31a上端から下方に向かって徐々に拡径し、ピストンウエル23の中空部24の内周面に全周で密着しながら下方に延びる略円柱状とされている。さらに、この保持部材35の外周面には、水平方向から見て、サポートロッド31の縮径部31aの下端部の近傍位置において水平方向全周に亘る環状の溝部35aが形成されている。これによって、保持部材35は、容易に撓んで水平方向の全方向に曲がり変形するようになっている。
【0037】
他方、サポートロッド31の上端部には上方に開口する挿入穴31bが形成されている。該挿入穴31bには、下側転動子50が取り付けられている。サポートロッド31は、この下側転動子50を介して、被支持体である搭載盤3及びこれに搭載される精密機器の荷重を上方から受けるロードディスク29を支持している。
【0038】
ロードディスク29は、ピストン本体13の上方に離間して配置されている。このロードディスク29の外形はケース11の天板よりもやや小さいトラック形状とされており(
図2参照)、空気室17に適度の空気圧が供給されている状態では、ロードディスク29の下面外周側は、下方の締付けリング21と離間し且つこの締付けリング21の上面と対向した状態にある。このロードディスク29は、その外周りに設けられた位置決めプレート49に形成されたトラック形状の嵌合孔49aに嵌合されている。
【0039】
ロードディスク29のサポートロッド31の上端部に対応する部位には、正方形状の貫通孔51が形成されている。この貫通孔51は、下方に位置する下側開口端側の部分が拡径した段付き形状を有する。すなわち、この貫通孔51のうち、下側開口端側の部分は相対的に幅広に形成された幅広部51aを構成し、その他の部分は相対的に幅狭に形成された幅狭部51bを構成している。このロードディスク29の貫通孔51のうち幅狭部51bには、上側転動子52が嵌入されている。
【0040】
図4は上側転動子52を示す図であって、(a)は平面図であり、(b)は正面図である。この上側転動子52は、下方に張り出す円筒面53(以下、上側円筒面53とする)を有する平面視で貫通孔51の幅狭部51bよりも大きな正方形状の上側当接部52aと、この上側当接部52aの上面から上方に突出し、貫通孔51の幅狭部51bに嵌合する平面視で正方形状の嵌合部52bと、を有している。上側円筒面53は、前後方向に延びる中心軸53aを中心とし、前後方向に延びている。
【0041】
上側転動子52は、その下側の上記下側転動子50に当接している。
図5は下側転動子50を示す図であって、(a)は平面図であり、(b)は正面図であり、(c)は側面図である。この下側転動子50は、サポートロッド31の上端部に形成された上記挿入穴31bに螺合する円柱状のボス50bと、該ボス50bの上端に設けられ、上面が上方に張り出す円筒面54(以下、下側円筒面54とする)をなしている下側当接部50aと、を有している。下側当接部50aは、平面視で上側当接部52bと略同一の正方形状をなし、下側円筒面54は、前後方向に延びる中心軸54aを中心とし、この中心軸54aが上側転動子52の上側円筒面53の中心軸53aに平行となっており、上側転動子52の上側円筒面53に当接している。したがって、これら円筒面53,54は、前後方向に延びる線状に当接している。したがって、下側転動子50は、上側転動子52に対して前後方向に転動することができない一方、両円筒面53,54間の上下間隔が最大となるため、左右方向に最大限転動することができる。このため、アイソレータ2の水平方向のばね定数は、前後方向に最大値となり且つ左右方向に最小値となる異方的な状態となる。
【0042】
これら上側転動子52及び下側転動子50は、正方形枠状の保持具55によって囲まれている。この保持具55は、ゴム製であって、ロードディスク29の上記貫通孔51の幅広部51aに嵌合し、上側当接部52aの外周面に密着してこの上側当接部52aをロードディスク29に対して固定する上側固定部55aと、該上側固定部55aの開口部周縁から下方に延びて、下側当接部50aの外周面に密着して下側転動子50が上側転動子52に対して位置がずれるのを防止する下側固定部55bと、を有している。したがって、下側転動子50及び上側転動子52は、この保持具55によって、両円筒面53,54の中心軸53a,54aが平行となるように保持されている。
【0043】
また、図示しないが、ケース11には、空気室17への空気の給排通路が設けられている。給排通路は、空気パイプにより空気のリザーバタンクに接続されていて、このリザーバタンクと空気室17との間で空気の給排をするものである。この空気パイプの途中には、空気の流通抵抗によって空気圧の変動を減衰させるオリフィスや、空気室17から大気中へ空気を排出するためのバルブ等が配設されている。さらに、
図2に示すように、4基の除振装置2,2,…のうち3基の除振装置2,2,2のケース11側方には、自動レベリング装置60が配設されている。
【0044】
上記構成のアイソレータ2では、ピストン本体13、ピストンウエル23及びサポートロッド31等が一体となって上下動し、空気ばね18のピストン12にジンバル機構を組み込んだジンバルピストンとして機能すると共に、ピストン本体13及びピストンウエル23とサポートロッド31とがそれぞれ揺動することで、ジンバルピストンは水平方向に非常に柔らかなばね特性を発揮する。すなわち、ジンバルピストンは、ケース11に対してピストン本体13及びピストンウエル23が一体に揺動すると共に、ロードディスク29に対してサポートロッド31が揺動することで、搭載機器と床面との間の水平方向における変位を吸収する。
【0045】
その際、下側転動子50は、上側転動子52に前後方向に線状に当接しているため、左右方向に転動可能となっている。そして、下側転動子50の左右方向の転動に伴って保持具55に左右方向に生じた応力がサポートロッド31の揺動を抑制するダンパーとして作用し、当該サポートロッド31、ひいてはピストン12に生ずる水平振動が減衰される。一方、下側転動子50は、上側転動子52に前後方向に延びる線状に当接しているため、前後方向に転動することができず、前後方向のばね定数が最大値となる。このため、搭載盤3及びこれに搭載される精密機器が重心を中心に回転するような回転モードが発生するのを防止することができる。
【0046】
一方、この上側転動子52は、位置決めプレート49の回転により、下側転動子50に対して水平方向に回転することができる。この回転途中で、上側円筒面53と下側円筒面54の上下の間隔が変化し、前後方向のばね定数が徐々に小さくなる一方、左右方向のばね定数が徐々に大きくなる。
【0047】
そして、
図6に示すように、上側転動子52が、その上側円筒面53の中心軸53aが下側転動子50の下側円筒面54の中心軸54aに対して直交するように配置されることにより、上側円筒面53と下側円筒面54とが点接触し、かつ両円筒面53,54間の距離が最大となるため、実質的に下側転動子50がロードディスク29に対して球面状で接触することとなる。したがって、アイソレータ2の水平方向のばね定数が等方的な状態となる。つまり、アイソレータ2は実質的にドームジンバル機構を備えたものとなる。
【0048】
このように、これら両転動子50,52は、位置決めプレート49の回転により、上記等方的な状態と異方的な状態との間を連続的に変化することができる。よって、上記両転動子50,52、ロードディスク29、及び、位置決めプレート49は、アイソレータ2の水平方向のばね定数を等方的な状態と異方的な状態との間で連続的に変化させる可変手段を構成している。
【0049】
次に、
図7は、精密除振台Aの4基のアイソレータ2,2,…のうち前左側及び後右側の2基のアイソレータ2,2の各下側転動子50及び上側転動子52を中心軸53a,54aが左右方向に延びるように位置決めプレート49を回転させたものである。これにより、前左側及び後右側の2基のアイソレータ2,2の水平方向のばね定数は、左右方向に最大値となり且つ前後方向に最小値となる。そのため、搭載盤3は、水平方向に回転するように摺動可能となる。
【0050】
したがって、搭載盤3に搭載される機器がその重心を中心に回転する場合には、その回転を吸収しつつ、搭載機器の振動を除振することができる。
【0051】
−発明の実施形態の効果−
上記実施形態によれば、上側転動子52を水平方向に回転させることにより、アイソレータ2の水平方向のばね定数を、等方的な状態と、所定方向に最大値となり且つそれと直交する方向に最小値となる異方的な状態との間を連続的に変化させることができる。したがって、搭載機器が水平方向の回転を嫌うものである場合には、各アイソレータ2の水平方向のばね定数を異方的な状態にして、すべてのアイソレータ2の水平方向のばね定数を、前後方向に最大値となり且つ左右方向に最小値となるようにすることにより、搭載盤3及び搭載機器がその重心を中心に回転するのを防ぐことができる。一方、搭載機器が水平方向に回転するものである場合には、各アイソレータ2の水平方向のばね定数を等方的な状態にすることにより、搭載盤3及び搭載機器がその重心を中心に回転する場合に、その回転を吸収するように除振することが可能となる。
【0052】
また、上記実施形態によれば、水平方向のばね定数を等方的な状態にする場合には、上側円筒面53の中心軸53aを下側円筒面54の中心軸54aに対して直交するように回転することにより、実質的にサポートロッド31の上端部である下側転動子50がロードディスク29に球面で接触する状態となる。このため、水平方向のばね定数が等方的な状態となる。そして、この等方的な状態から、上側円筒面53を下側円筒面54に対して水平方向に回転することにより、両円筒面53,54の上下の間隔が徐々に変化し、水平方向のばね定数が連続的に変化する。そして、上側円筒面53の中心軸53aが下側円筒面54の中心軸54aと平行になると、円筒面53,54同士が前後方向に延びる線状に当接するため、水平方向のばね定数が前後方向に最大値となり且つ左右方向に最小値となる異方的な状態となる。このように、一対の円筒面53,54という比較的簡素な構造で上記可変手段を構成することができる。
【0053】
さらに、上記実施形態によれば、アイソレータ2,2,…を前後左右に等間隔に配置するレイアウトであっても、すべてのアイソレータ2,2,…を各円筒面53,54の中心軸53a,54aを前後方向に延びるように配置することにより、回転を嫌う搭載機器の除振に好適である。
【0054】
さらにまた、上記実施形態によれば、アイソレータ2,2,…を前後左右に等間隔に配置するレイアウトにおいて、前左側及び後右側のアイソレータ2,2を各円筒面53,54の中心軸53a,54aを左右方向に延びるように配置することにより、回転する搭載機器の除振に好適である。
【0055】
(その他の実施形態)
上記実施形態では、上側円筒面53が形成された上側当接部52a及び下側円筒面54が形成された下側当接部50aが平面視で正方形をなしているが、これに限定されず、例えば円形であってもよい。これら当接部50a,52aが円形である場合には、保持具55がこれら当接部50a,52aの外周端に合わせて円形枠状をなし、ロードディスク29にこの保持具55を取り付けた状態で、上側転動子50を水平方向に回転することができる。また、この場合には、位置決めプレート49を、上側転動子52を中心に水平方向に回転させる駆動機構を設けて、この駆動機構によって位置決めプレート49を自動的に回転させてもよい。
【0056】
また、上記実施形態では、アイソレータ2,2,…が正方形の隅部に配置されているが、これに限定されず、長方形の隅部に配置されていてもよい。