(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記筒内圧検出手段は、圧力検出素子と、該圧力検出素子の出力信号を積分しつつ増幅するチャージアンプと、該チャージアンプの出力電圧を圧力値に変換する変換部とによって構成され、前記変換部は前記チャージアンプの出力電圧を前記検出筒内圧に変換するための複数の変換テーブルを備えており、前記感度補正手段は、前記検出圧ピーク値と前記推定モータリング圧ピーク値との比較結果に応じて前記複数の変換テーブルのうちの1つを選択することを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の内燃機関の筒内圧検出装置。
前記検出圧ピーク値と前記推定モータリング圧ピーク値との比較結果が、前記複数の変換テーブルによって補正可能な範囲を逸脱しているときは、前記筒内圧検出手段の感度異常が発生していると判定し、前記複数の変換テーブルのうちの平均的な変化特性に相当する変換テーブルを選択する異常処理手段をさらに備えることを特徴とする請求項4に記載の内燃機関の筒内圧検出装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に示された手法は、筒内圧センサによる検出筒内圧が比較的高い状態では、検出精度が比較的高いこと前提として、吸気弁閉弁時点の比較的低い筒内圧を高い精度で推定するための手法であり、圧力検出素子や増幅器の特性ばらつきに起因する検出筒内圧の誤差を抑制するための手法ではない。
【0006】
特許文献2に示された手法では、検出筒内圧のピーク値を用いて感度異常が判定され、異常と判定された場合のみ、感度補正が行われる。しかし、機関の燃焼状態を示す検出筒内圧を燃料噴射制御などの機関制御に用いる場合には、検出筒内圧に圧力検出素子などの特性ばらつきによる誤差があると、機関制御の精度が低下するため、異常と判定されるような極端な場合だけでなく、特性ばらつきに起因する検出筒内圧の比較的小さなずれも補正して検出精度をより高めることが望まれている。
【0007】
本発明は上述した点に着目してなされたものであり、比較的簡単な手法で検出筒内圧のばらつき(誤差)を抑制し、筒内圧の検出精度を高めることができる内燃機関の筒内圧検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため請求項1に記載の発明は、内燃機関(1)の燃焼室内の圧力である筒内圧(PCYL)を検出する内燃機関の筒内圧検出装置において、前記筒内圧(PCYL)を検出し、検出筒内圧として出力する筒内圧検出手段と、前記燃焼室内で燃焼が行われないときの筒内圧であるモータリング圧を推定するモータリング圧推定手段と、前記機関の所定運転状態において、前記検出筒内圧(PCYL)のピーク値を検出圧ピーク値(PCYLMAX)として取得する検出圧ピーク値取得手段と、前記モータリング圧推定手段により推定され、前記検出圧ピーク値(PCYLMAX)に対応する推定モータリング圧ピーク値(PCMTMAX)を算出する推定モータリング圧ピーク値算出手段と、前記検出圧ピーク値(PCYLMAX)と前記推定モータリング圧ピーク値(PCMTMAX)とを比較し、その比較結果(RPMAX)に基づいて、前記筒内圧検出手段の感度補正を行う感度補正手段とを備え、前記所定運転状態は、前記機関の冷間始動直後において前記機関の吸入空気量を増加させつつ前記機関の点火時期を遅角することによって、前記機関の排気温度を高める排気昇温制御を実行する運転状態であ
り、前記排気昇温制御は、前記機関の冷間始動直後から前記機関の排気通路に設けられた排気浄化用触媒(9)の温度が所定温度に達するまでの期間、または前記機関の冷間始動直後から所定時間経過するまでの期間において実行されることを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、燃焼室内で燃焼が行われないときの筒内圧であるモータリング圧が推定され、機関の所定運転状態において、検出筒内圧のピーク値が検出圧ピーク値として取得されるとともに、検出圧ピーク値に対応する推定モータリング圧ピーク値が算出される。さらに検出圧ピーク値と推定モータリング圧ピーク値とが比較され、その比較結果に基づいて、筒内圧検出手段の感度補正が行われる。検出圧ピーク値には、圧力検出素子や増幅器の特性ばらつきの影響が最も大きく反映されるので、検出圧ピーク値を用いることによって感度補正の精度を高めることができる。また所定運転状態は、機関の冷間始動直後
、具体的には排気浄化用触媒の温度が所定温度に達するまでの期間、または冷間始動直後から所定時間経過するまでの期間において機関の吸入空気量を増加させつつ機関の点火時期を遅角することによって、機関の排気温度を高める排気昇温制御を実行する運転状態とされる。この排気昇温制御は、機関排気系に配置される排気浄化用触媒の活性化を早めるために広く行われているものであり、燃料カット運転より吸入空気量が大きくかつ点火時期を遅角した運転状態であるため、この運転状態における実際の筒内圧ピーク値は推定モータリング圧ピーク値とほぼ一致することが確認されている。したがって、所定運転状態での検出圧ピーク値と推定モータリング圧ピーク値とを比較することによって、検出筒内圧のずれを精度良く検出し、筒内圧検出手段の感度補正を比較的簡単な手法によって高い精度で行うことができる。
【0010】
請求項2に記載の発明は、内燃機関(1)の燃焼室内の圧力である筒内圧(PCYL)を検出する内燃機関の筒内圧検出装置において、前記筒内圧(PCYL)を検出し、検出筒内圧として出力する筒内圧検出手段と、前記燃焼室内で燃焼が行われないときの筒内圧であるモータリング圧を推定するモータリング圧推定手段と、前記機関の所定運転状態において、前記検出筒内圧(PCYL)のピーク値を検出圧ピーク値(PCYLMAX)として取得する検出圧ピーク値取得手段と、前記モータリング圧推定手段により推定され、前記検出圧ピーク値(PCYLMAX)に対応する推定モータリング圧ピーク値(PCMTMAX)を算出する推定モータリング圧ピーク値算出手段と、前記検出圧ピーク値(PCYLMAX)と前記推定モータリング圧ピーク値(PCMTMAX)とを比較し、その比較結果(RPMAX)に基づいて、前記筒内圧検出手段の感度補正を行う感度補正手段とを備え、前記所定運転状態は、前記機関を搭載した車両の工場出荷時の検査において、燃料を供給せずに前記機関を所定高回転数で回転させ、かつ吸入空気流量を最大とした運転状態であることを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、燃焼室内で燃焼が行われないときの筒内圧であるモータリング圧が推定され、機関の所定運転状態において、検出筒内圧のピーク値が検出圧ピーク値として取得されるとともに、検出圧ピーク値に対応する推定モータリング圧ピーク値が算出される。さらに検出圧ピーク値と推定モータリング圧ピーク値とが比較され、その比較結果に基づいて、筒内圧検出手段の感度補正が行われる。検出圧ピーク値には、圧力検出素子や増幅器の特性ばらつきの影響が最も大きく反映されるので、検出圧ピーク値を用いることによって感度補正の精度を高めることができる。また所定運転状態は、機関を搭載した車両の工場出荷時の検査において、燃料を供給せずに機関を所定高回転数で回転させ、かつ吸入空気流量を最大とした運転状態とされる。工場出荷検査においては、機関を外部から安定した回転数で回転させ、かつ吸入空気流量を最大とする(例えばスロットル弁の開度を最大とする)ことができるので、上述した排気昇温制御よりさらに安定した検出筒内圧(検出モータリング圧)を得ることができる。したがって、所定運転状態での検出圧ピーク値と推定モータリング圧ピーク値とを比較することによって、検出筒内圧のずれを精度良く検出し、筒内圧検出手段の感度補正を比較的簡単な手法によって高い精度で行うことができる。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の内燃機関の筒内圧検出装置において、前記機関の吸気圧(PBA)を検出または推定する吸気圧取得手段と、検出対象気筒の吸気行程中に取得された吸気圧(PBAIN)に応じて前記検出筒内圧(PCYL,PCYLTMP)の修正を行う第1修正手段と、検出対象気筒の圧縮行程開始時期近傍において取得された吸気圧(PBABDC)に応じて、前記感度補正を行うときの推定モータリング圧(PCMT)の修正を行う第2修正手段とを備え、前記検出圧ピーク値取得手段は、前記修正された検出筒内圧のピーク値を前記検出圧ピーク値(PCYLMAX)として取得し、前記推定モータリング圧ピーク値算出手段は、前記修正された推定モータリング圧のピーク値を前記推定モータリング圧ピーク値(PCMTMAX)として算出することを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、検出対象気筒の吸気行程中に取得された吸気圧に応じて検出筒内圧の修正が行われるとともに、検出対象気筒の圧縮行程開始時期近傍において取得された吸気圧に応じて、感度補正を行うときの推定モータリング圧の修正が行われ、修正された検出筒内圧のピーク値が検出圧ピーク値として取得され、修正された推定モータリング圧のピーク値が推定モータリング圧ピーク値として算出される。吸気行程中の筒内圧は吸気圧(吸気通路内圧力)とほぼ等しくなるので、吸気行程中に取得される吸気圧と、その時点の検出筒内圧との比較により、修正量を算出し、その修正量を用いて修正した検出筒内圧のピーク値を取得することによって検出圧ピーク値の精度を高めることができる。また推定モータリング圧は燃焼室容積(機関回転位相)と筒内圧との関係を示すモデル式を用いて算出されるが、吸気圧の影響も考慮した修正を行うことによって、推定モータリング圧ピーク値の算出精度を高めることができる。
【0014】
請求項4に記載の発明は、請求項1から3の何れか1項に記載の内燃機関の筒内圧検出装置において、前記筒内圧検出手段は、圧力検出素子(10)と、該圧力検出素子の出力信号を積分しつつ増幅するチャージアンプ(21)と、該チャージアンプの出力電圧(VAOUT)を圧力値(PCYLTMP)に変換する変換部とによって構成され、前記変換部は前記チャージアンプの出力電圧(VAOUT)を前記検出筒内圧(PCYLTMP)に変換するための複数の変換テーブル(TBLM5〜TBLP5)を備えており、前記感度補正手段は、前記検出圧ピーク値と前記推定モータリング圧ピーク値との比較結果(RPMAX)に応じて前記複数の変換テーブルのうちの1つを選択することを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、圧力検出素子の出力信号がチャージアンプによって積分しつつ増幅され、チャージアンプの出力電圧が変換部において圧力値に変換される。変換部はチャージアンプの出力電圧を検出筒内圧に変換するための複数の変換テーブルを備えており、検出圧ピーク値と推定モータリング圧ピーク値との比較結果に応じて複数の変換テーブルのうちの1つを選択することによって、感度補正が行われる。したがって、圧力検出素子及びチャージアンプの特性ばらつきに起因する感度ずれを比較的容易に補正し、正確な検出筒内圧を得ることができる。
【0016】
請求項5に記載の発明は、請求項3に記載の内燃機関の筒内圧検出装置において、前記モータリング圧推定手段は、前記機関の回転位相(CA)と、前記モータリング圧(PCMT)との関係をモデル化したモデル式(3a)を用いて推定モータリング圧を算出し、前記第2修正手段は、前記モデル式(3a)を、前記圧縮行程開始時期近傍において取得された吸気圧(PBABDC)に応じて修正し、該修正後のモデル式(3b)を用いて前記修正された推定モータリング圧(PCMT)を算出することを特徴とする。
【0017】
この構成によれば、機関の回転位相と、モータリング圧との関係をモデル化したモデル式を用いて推定モータリング圧が算出され、前記モデル式が圧縮行程開始時期近傍において取得された吸気圧に応じて修正され、該修正後のモデル式を用いて修正された推定モータリング圧が算出される。吸気圧の影響を考慮したモデル式の修正を行うことにより、推定モータリング圧ピーク値の算出精度を高めて感度補正の精度を高めることができる。
【0018】
請求項6に記載の発明は、請求項3に記載の内燃機関の筒内圧検出装置において、前記機関は燃料噴射弁(6)及び点火プラグ(7)を備えており、前記第1修正手段は、前記燃料噴射弁(6)による燃料噴射に起因するノイズまたは前記点火プラグ(7)による点火に起因するノイズの影響を受けない時期(CAPB1)に取得される吸気圧を用いて、前記修正を行うことを特徴とする。
【0019】
この構成によれば、燃料噴射弁による燃料噴射に起因するノイズまたは点火プラグによる点火に起因するノイズの影響を受けない時期に取得される吸気圧を用いて、検出筒内圧の修正が行われる。燃料噴射弁による燃料噴射または点火プラグによる点火によって電磁ノイズが発生し、検出筒内圧の精度を低下させるおそれがある。したがって、そのようなノイズの影響を受けない時期に取得される吸気圧及び検出筒内圧を用いて修正を行うことによって、修正後の検出筒内圧の精度が低下することを防止できる。
【0020】
請求項7に記載の発明は、請求項4に記載の内燃機関の筒内圧検出装置において、前記検出圧ピーク値と前記推定モータリング圧ピーク値との比較結果が、前記複数の変換テーブルによって補正可能な範囲を逸脱しているときは、前記筒内圧検出手段の感度異常が発生していると判定し、前記複数の変換テーブルのうちの平均的な変化特性に相当する変換テーブルを選択する異常処理手段をさらに備えることを特徴とする。
【0021】
この構成によれば、検出圧ピーク値と推定モータリング圧ピーク値との比較結果が、予め準備された複数の変換テーブルによって補正可能な範囲を逸脱しているときは、筒内圧検出手段の感度異常が発生していると判定され、複数の変換テーブルのうちの平均的な変化特性に相当する変換テーブルが選択される。したがって、筒内圧検出手段の異常を比較的簡単な手法で精度良く判定して、異常対応処置を迅速に行うことが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施形態にかかる内燃機関(以下「エンジン」という)及びその制御装置の構成を示す図であり、例えば4気筒のエンジン1の吸気通路2の途中にはスロットル弁3が配置されている。スロットル弁3はアクチュエータ19によって駆動可能に構成されており、アクチュエータ19は電子制御ユニット(以下「ECU」という)5に接続されている。スロットル弁3の開度は、アクチュエータ19を介してECU5によって制御される。
【0024】
エンジン1の各気筒には燃焼室内に燃料を噴射する燃料噴射弁6及び点火プラグ7が装着されており、燃料噴射弁6及び点火プラグ7はECU5に接続されている。ECU5は、燃料噴射弁6による燃料噴射制御、及び点火プラグ7による点火時期の制御を行う。またエンジン1の各気筒には燃焼室内の圧力である筒内圧を検出する筒内圧センサ(圧力検出素子)10が装着されており、筒内圧センサ10は筒内圧検出ユニット(以下「CPSユニット」という)20に接続されている。本実施形態では、筒内圧センサ10は燃料噴射弁6と一体に装着されている。
【0025】
ECU5には、エンジン1の吸入空気流量GAIRを検出する吸入空気流量センサ11、吸気温TAを検出する吸気温センサ12、スロットル弁開度THを検出するスロットル弁開度センサ13、吸気圧PBAを検出する吸気圧センサ14、エンジン冷却水温TWを検出する冷却水温センサ15、及び図示しない他のセンサ(例えばエンジン1により駆動される車両のアクセルペダル操作量APを検出するアクセルセンサ、車速センサなど)が接続されており、これらのセンサの検出信号がECU5に供給される。
【0026】
ECU5には、エンジン1のクランク軸(図示せず)の回転角度を検出するクランク角度位置センサ16が接続されており、クランク軸の回転角度に応じたパルス信号がECU5に供給される。クランク角度位置センサ16は、クランク角度位置を示す複数のパルス信号(クランク角1度周期のパルス信号、180度周期のパルス信号、及び720度周期のパルス信号)を出力するものであり、このパルス信号は、燃料噴射時期、点火時期等の各種タイミング制御、及びエンジン回転数NEの検出に使用される。
【0027】
排気通路8には排気浄化用の三元触媒9が設けられている。三元触媒9の上流側には比例型酸素濃度センサ17(以下「LAFセンサ17」という)が装着されており、このLAFセンサ17は排気中の酸素濃度(空燃比AF)にほぼ比例した検出信号を出力し、ECU5に供給する。
【0028】
ECU5は、各種センサからの入力信号波形を整形し、電圧レベルを所定レベルに修正し、アナログ信号値をデジタル信号値に変換する等の機能を有する入力回路、中央演算処理ユニット(CPU)、該CPUで実行される各種演算プログラム及び演算結果等を記憶する記憶回路、燃料噴射弁6、点火プラグ7、アクチュエータ19などに駆動信号を供給する出力回路等から構成される。
【0029】
燃料噴射弁6による燃料噴射量は、吸入空気流量GAIRに応じて算出される基本燃料量を、LAFセンサ17により検出される空燃比AFに応じた空燃比補正係数KAFによって補正することによって制御される。空燃比補正係数KAFは、検出される空燃比AFが目標空燃比AFCMDと一致するように算出される。
【0030】
ECU5は、アクセルペダル操作量APなどに応じてスロットル弁3の目標開度THCMDを算出し、検出されるスロットル弁開度THが目標開度THCMDと一致するようにアクチュエータ19の駆動制御を行う。
【0031】
CPSユニット20は、
図2に示すように、チャージアンプ21と、AD変換器22と、CPU23と、パルス生成部24と、図示しない記憶回路等を備えており、チャージアンプ21には筒内圧センサ10の出力信号が入力される。チャージアンプ21は、入力信号を積分しつつ増幅し、チャージアンプ21の出力信号VAOUTはAD変換器22によりデジタル値に変換されてCPU23に入力される。出力信号VAOUTは、筒内圧に比例する電圧値であり、以下「検出電圧VAOUT」という。CPU23は、検出電圧VAOUTを暫定筒内圧PCYLTMPに変換するとともに、暫定筒内圧PCYLTMPについて後述する修正を行うことにより、筒内圧PCYLを算出する。
【0032】
パルス生成部24には、クランク角度位置センサ16からパルス信号が入力される。パルス生成部24は、AD変換器22及びCPU23に必要なパルス信号を供給する。
ECU5及びCPSユニット20は、データバス30を介して接続されており、データバス30を介して相互に必要なデータの送受信を行う。
【0033】
本実施形態では、エンジン1の冷間始動直後においては三元触媒9の活性化(昇温)を早めるための排気昇温制御を実行する。この制御は例えば特開2002−188500号公報などに示され、触媒昇温促進制御として公知のものである。具体的には、エンジン1のアイドル運転状態においてスロットル弁3の開度THを比較的大きな開度(全開に近い開度)に設定して吸入空気量を増加させるとともに、点火時期を圧縮上死点より遅角する(例えば20度程度)ことによって排気昇温制御を行う。
【0034】
ECU5は、筒内圧センサ10によって検出される筒内圧PCYLに基づいてノッキングの判定及び燃焼状態の判定を行い、判定結果に応じた点火時期制御及び燃料噴射制御を行う。またCPSユニット20は、筒内圧センサ10及びチャージアンプ21の特性ばらつきに起因する暫定筒内圧PCYLTMPのずれを補正する感度補正を行う。
【0035】
図3は、筒内圧PCYLの推移を示す波形図(横軸はクランク角度CA、TDCは圧縮行程終了時期(圧縮上死点)に相当する)であり、一点鎖線L1は通常運転に対応し、破線L2は通常運転で点火時期を遅角した状態に対応し、実線L3は上記排気昇温制御を実行している状態に対応する。
【0036】
排気昇温制御の実行中においては、燃焼室内で燃焼が行われるが、燃焼による筒内圧の増加は小さいため、筒内圧PCYLは圧縮上死点においてピーク値(以下「検出圧ピーク値」という)PCYLMAXをとり、このピーク値PCYLMAXは、理想的には、燃焼室で燃焼が行われないときの筒内圧であるモータリング圧のピーク値と一致する。
【0037】
したがって、暫定筒内圧PCYLTMPがばらつき誤差を含む場合には、検出圧ピーク値PCYLMAXがモータリング圧ピーク値からずれる。そこで、本実施形態では、後述するモデル式を用いて推定モータリング圧PCMTを算出し、推定モータリング圧のピーク値(以下「推定モータリング圧ピーク値」という)PCMTMAXと、検出圧ピーク値PCYLMAXとの比率(以下「ピーク圧比率」という)RPMAX(=PCYLMAX/PCMTMAX)に基づいて、チャージアンプ21から出力される検出電圧VAOUTを暫定筒内圧PCYLTMPに変換する際の変換特性を補正する感度補正を行うようにしている。
【0038】
排気昇温制御においては、上述したようにスロットル弁開度THが全開に近い比較的大きな開度に設定されるため、吸入空気量が大きくなり(筒内圧が高くなり)、検出圧ピーク値PCYLMAXの検出精度を、例えば燃料カット運転中に検出する場合に比べてより高めることができる。排気昇温制御は、例えば冷間始動直後から三元触媒9の温度(推定温度または検出温度)が所定温度に達するまで期間、あるいは冷間始動直後から所定時間が経過するまでの期間において実行される。
【0039】
図4は、筒内圧PCYLを算出する処理を説明するためのフローチャートであり、この処理はCPSユニットのCPU23で実行される。
ステップS11では、検出電圧VAOUTを読み込み、ステップS12では、検出電圧VAOUTに応じて
図5に示すVP変換テーブルの1つを検索して暫定筒内圧PCYLTMPを算出する。VP変換テーブルは、傾きの小さい方から順にTBLM5,TBLM4,…,TBL0,TBLP1,…,TPBP5の11個のVP変換テーブルを含み、後述する感度補正処理によって使用するVP変換テーブル(以下「使用変換テーブル」という)TBLUSEが決定される。初期状態では、基準テーブルTBL0が使用変換テーブルTBLUSEとして設定される。
【0040】
ステップS13では、下記式(1)に暫定筒内圧PCYLTMPを適用して、筒内圧PCYLを算出する。式(1)のDPCYLは、検出圧修正値であり、算出手法は後述する。
PCYL=PCYLTMP+DPCYL (1)
【0041】
図6は、感度補正処理の手法を説明するためのフローチャートであり、ステップS21では、検出圧レベル修正を行う。感度補正処理は、ECU5及びCPSユニット20において行われる。
【0042】
チャージアンプ21から出力される検出電圧VAOUTは、筒内圧の変化率(dPCYL/dt)を示すセンサ出力を、積分しつつ増幅して得られるものであるため、検出電圧VAOUTを圧力値に変換することで算出される暫定筒内圧PCYLTMPは、必ずしも正確な筒内圧を示しているとは限らない。そこで、本実施形態では絶対圧を検出する吸気圧センサ14によって検出される吸気圧PBAを用いて、検出圧レベル修正を行う。
【0043】
この検出圧レベル修正には、筒内圧検出対象気筒が吸気行程にあるとき、より詳細には、吸気行程開始上死点からクランク軸が90度程度回転した時期CAPB1において検出される吸気圧(以下「吸気行程吸気圧」という)PBAINを適用する。
図7は吸気弁のリフトカーブ(縦軸:リフト量LFT,横軸:クランク角度CA)を示しており、吸気行程吸気圧PBAINの検出時期が、CAPB1で示されている。吸気行程吸気圧PBAINの検出時期CAPB1を、吸気行程の中心時期近傍とする理由は、吸入される空気の流速が中心時期近傍で最も高くなり、筒内圧センサ10よる検出圧が吸気行程中の平均的な吸気圧を示し、検出圧レベル修正の精度を高めることができるからである。また検出時期CAPB1は、検出対象気筒または他の気筒の燃料噴射弁6による燃料噴射を実行することによって発生するノイズまたは点火プラグ7による点火を実行することによって発生するノイズの影響がない時期に設定する。このような検出時期CAPB1によって、検出圧レベル修正の精度を向上させることができる。
【0044】
吸気行程における暫定筒内圧PCYLTMP及び吸気行程吸気圧PBAINを下記式(2)に適用して検出圧修正値DPCYLを算出し、検出圧修正値DPCYLを上記式(1)に適用して検出筒内圧PCYLを算出する。
DPCYL=PBAIN−PCYLTMP (2)
【0045】
図6のステップS22では、推定モータリング圧レベル修正を行う。レベル修正の前提としてまず、モータリング圧の推定値である推定モータリング圧PCMTの算出手法を説明する。
【0046】
本実施形態では、推定モータリング圧PCMTは下記モデル式(3)によって算出される。なお、式(3)を用いた推定モータリング圧PCMTの算出手法の詳細は、本願出願人が保有する特許にかかる特許第4241581号公報に示されている。
PCMT=(G×R×T/VC)×k+C (3)
【0047】
ここでGは、吸入空気流量センサ11により検出される吸入空気流量GAIR、またはエンジン回転数NE及び吸気圧PBAに応じて算出されるエンジンの吸入空気流量に基づいて算出される吸入空気量であり、Rは気体定数、Tは検出される吸気温TAまたはエンジン冷却水温TWなどに応じて推定される吸気温(絶対温度換算値)であり、VCは燃焼室容積である。k及びCは理想的な状態からの変化を補正するためのパラメータであり、以下「モデルパラメータ」と呼ぶ。燃焼室容積VCは、検出されるクランク角度に応じて算出される。
【0048】
モデルパラメータk,Cは、検出筒内圧PCYLと、モデル式(3)により算出される推定モータリング圧PCMTとの誤差が最小となるように最小二乗法を用いて同定される。この同定演算は、対象気筒の圧縮行程において実行される。ただし、感度補正処理を実行するときは、この同定演算は停止される。式(3)によって算出される推定モータリング圧PCMTは、例えばエンジン1における失火判定に適用される。
【0049】
次に推定モータリング圧レベル修正について説明する。推定モータリング圧レベル修正には、吸気行程終了下死点の近傍、より具体的には
図7に示すように、吸気行程終了下死点(BDC)から吸気弁の閉弁時期IVCまでの期間内の検出時期CAPB2において検出される吸気圧(以下「下死点吸気圧」という)PBABDCを適用する。モデル式(3)によって推定可能なモータリング圧は、圧縮行程及び膨張行程における圧力であるため、吸気行程中の吸気圧PBAではなく、吸気行程下死点あるいはその直後(吸気弁閉弁前)に検出される下死点吸気圧PBABDCを推定モータリング圧レベル修正に適用する。
【0050】
推定モータリング圧レベル修正は、具体的には以下のようにして行う。まず下記式(4)に下死点吸気圧PBABDC及び下死点推定モータリング圧PCMTBDCを適用して、モータリング圧修正値DPCMTを算出する。
DPCMT=PBABDC−PCMTBDC (4)
【0051】
感度補正処理における下死点推定モータリング圧PCMTBDCの算出にはモデル式(3)を使用せずに下記モデル式(3a)を使用する。式(3a)は、式(3)のモデルパラメータkを「1」に設定し、モデルパラメータCを「0」に設定した式に相当する。すなわち、下死点推定モータリング圧PCMTBDCは、検出時期CAPB2における吸入空気量G、吸気温T、及び燃焼室容積VCを式(3a)に適用して算出される。
PCMT=(G×R×T/VC) (3a)
【0052】
また感度補正処理においては、式(4)によって算出されるモータリング圧修正値DPCMTを含む下記式(3b)を修正モデル式として使用する。
PCMT=(G×R×T/VC)+DPCMT (3b)
【0053】
ステップS23では、上述した排気昇温制御実行中に圧縮上死点において検出される筒内圧PCYLを検出圧ピーク値PCYLMAXとして取得する。このとき、使用変換テーブルTBLUSEは基準テーブルTBL0に設定される。
【0054】
ステップS24では、検出圧ピーク値PCYLMAXを取得した時点の吸入空気量G、吸気温T、及び圧縮上死点における燃焼室容積VCを式(3b)に適用して、推定モータリング圧ピーク値PCMTMAXを算出する。
【0055】
ステップS25では、下記式(5)により、ピーク圧比率RPMAXを算出し、メモリに格納する。
RPMAX=PCYLMAX/PCMTMAX (5)
ステップS26では、ピーク圧比率RPMAXの算出を所定回数N(例えば10回)行ったか否かを判別し、その答が否定(NO)である間はステップS23に戻って、ピーク圧比率RPMAXの算出を行う。
【0056】
ステップS26の答が肯定(YES)となると、ステップS27に進み、N個のピーク圧比率RPMAXi(i=1〜N)の平均値RPMAXAVを算出する。ステップS28では、平均値RPMAXAVが所定下限値RPLL以上でかつ所定上限値RPLH以下であるか否かを判別する。この答が肯定(YES)であるときは、ステップS29に進み、平均値RPMAXAVに応じてVP変換テーブルTBLM5〜TBLP5の中から、1つを選択し、使用変換テーブルTBLUSEに設定する。すなわち、平均値RPMAXAVが「1.0」の近傍の値であれば、使用変換テーブルTBLUSEを基準テーブルTBL0に設定し、平均値RPMAXAVが「1.0」から増加するほど、より傾きの小さいテーブル(TBLM1〜TBLM5)を選択し、平均値RPMAXAVが「1.0」から減少するほど、より傾きの大きいテーブル(TBLP1〜TBLP5)を選択する。
【0057】
ステップS29の答が否定(NO)であるとき、すなわち平均値RPMAXAVが所定下限値RPLLより小さいか、または所定上限値RPLHより大きいとき、換言すれば、
図5に示す変換テーブルの一つを選択可能な範囲を逸脱しているときは、筒内圧センサ10またはチャージアンプ21に異常があり、検出感度が異常な値となっていると判定して、例えば異常警告表示を行い(ステップS30)、フェールセーフアクションとして使用変換テーブルTBLUSEを平均的な変換特性に相当する基準テーブルTBL0に設定する(ステップS31)。
【0058】
感度補正処理は、筒内圧センサ10及びCPSユニット20の最初の装着時、あるいは故障のための交換直後には必ず実行し、さらに4つの気筒において同一の燃焼サイクル中にそれぞれ検出される検出筒内圧PCYLのピーク値の最大差が、所定閾値を越えたときに実行することが望ましい。また、エンジン1の冷間始動直後において常に実行するようにしてもよい。
【0059】
以上のように本実施形態では、エンジン1の燃焼室内で燃焼が行われないときの筒内圧であるモータリング圧の推定値としての推定モータリング圧PCMTが算出され、エンジン1の冷間始動直後に排気昇温制御を実行している運転状態において、検出筒内圧PCYLのピーク値が検出圧ピーク値PCYLMAXとして取得されるとともに、検出圧ピーク値PCYLMAXに対応する推定モータリング圧ピーク値PCMTMAXが算出される。さらに検出圧ピーク値PCYLMAXと推定モータリング圧ピーク値PCMTMAXとの比率であるピーク圧比率RPMAXに基づいて、VP変換テーブルを選択することにより、筒内圧センサ(圧力検出素子)10及びチャージアンプ21の特性ばらつきに起因する感度ばらつきを補正する感度補正が行われる。検出圧ピーク値PCYLMAXには、筒内圧センサ(圧力検出素子)10及びチャージアンプ21の特性ばらつきの影響が最も大きく反映されるので、推定モータリング圧ピーク値PCMTMAXと検出圧ピーク値PCYLMAXとの比率を示すピーク圧比率RPMAXを用いることによって感度補正の精度を高めることができる。
【0060】
また感度補正は、エンジン1の冷間始動直後において吸入空気量を増加させつつ点火時期を遅角することによって、エンジン1の排気温度を高める排気昇温制御を実行する運転状態において行われる。この排気昇温制御は、エンジン1の排気通路8に配置される三元触媒9の活性化を早めるために広く行われているものであり、燃料カット運転より吸入空気量が大きくかつ点火時期を遅角した運転状態であるため、この運転状態における実際の筒内圧のピーク値は推定モータリング圧ピーク値PCMTMAXとほぼ一致することが確認されている。したがって、排気昇温制御実行中に取得されるピーク圧比率RPMAXによって検出筒内圧PCYLのずれを精度良く検出し、筒内圧センサ10及びチャージアンプ21の組み合わせである筒内圧検出部の感度補正を比較的簡単な手法によって高い精度で行うことができる。
【0061】
また検出対象気筒の吸気行程中に検出された吸気行程吸気圧PBAINに応じて、検出圧修正値DPCYLが算出され、検出圧修正値DPCYLが適用される式(1)を用いて検出圧ピーク値PCYLMAXが算出されるとともに、検出対象気筒の圧縮行程開始時期近傍において取得された下死点吸気圧PBABDCに応じてモータリング圧修正値DPCMTが算出され、モータリング圧修正値DPCMTが適用される式(3b)を用いて推定モータリング圧ピーク値PCMTMAXが算出される。吸気行程中の筒内圧は吸気圧PBAとほぼ等しくなるので、吸気行程吸気圧PBAINと、その時点の暫定筒内圧PCYLTMPとの比較により、検出圧修正値DPCYLを算出することができる(式(2))。さらにその検出圧修正値DPCYLを用いて暫定筒内圧PCYLTMPを修正することにより(式(1))、より高精度の検出筒内圧PCYLを得ることができ、したがって検出圧ピーク値PCYLMAXの精度を高めることができる。また感度補正処理を実行するときは、推定モータリング圧PCMTは燃焼室容積VCとモータリング圧との関係を示し、かつモータリング圧修正値DPCMTが適用される修正モデル式(3b)を用いて算出されるので、吸気圧PBAの影響も考慮した推定モータリング圧ピーク値PCMTMAXの算出が行われ、算出精度をより高めることができる。
【0062】
また筒内圧センサ10の出力信号がチャージアンプ21によって積分しつつ増幅され、チャージアンプ21から出力される検出電圧VAOUTがCPU23によって暫定筒内圧PCYLTMPに変換される。CPU23は、
図5に示すように検出電圧VAOUTを暫定筒内圧PCYLTMPに変換するための複数の変換テーブルTBLM5〜TBLP5を備えており、検出圧ピーク値PCYLMAXと推定モータリング圧ピーク値PCMTMAXとの比であるピーク圧比率RPMAXに応じて複数の変換テーブルTBLM1〜TBLP5のうちの1つが、使用変換テーブルTBLUSEとして設定され、感度補正が行われる。したがって、筒内圧センサ10(圧力検出素子)及びチャージアンプ21の特性ばらつきに起因する感度ずれを比較的容易に補正し、正確な検出筒内圧を得ることができる。
【0063】
またエンジン1の回転位相と、モータリング圧との関係をモデル化したモデル式(3a))を用いて推定モータリング圧PCMTが算出され、モデル式(3a)が圧縮行程開始時期近傍において取得された下死点吸気圧PBABDCに応じて修正され、該修正後のモデル式(3b)を用いて推定モータリング圧ピーク値PCMTMAXが算出される。吸気圧PBAの影響を考慮して修正されたモデル式(3b)を用いることにより、推定モータリング圧ピーク値PCMTMAXの算出精度を高めて感度補正の精度を高めることができる。
【0064】
また燃料噴射弁6による燃料噴射に起因するノイズまたは点火プラグ7による点火に起因するノイズの影響を受けない時期に取得される吸気行程吸気圧PBAINを用いて、検出圧修正値DPCYLが算出されるので、検出圧修正値DPCYLがノイズの影響で不適切な値となって、修正後の検出筒内圧PCYLの精度が低下することを防止できる。
【0065】
またピーク圧比率RPMAXの平均値RPMAXAVが、所定下限値RPLLから所定上限値RPLHまでの許容範囲、すなわち変換テーブルTBLM5〜TBLP5によって補正可能な範囲を逸脱しているときは、筒内圧センサ10及びチャージアンプ21の組み合わせである筒内圧検出部の感度異常が発生していると判定され、使用変換テーブルTBLUSEが平均的な変化特性に相当する基準テーブルTBL0に設定される。したがって、筒内圧検出部の異常を比較的簡単な手法で精度良く判定して、異常対応処置を迅速に行うことが可能となる。
【0066】
本実施形態では、筒内圧センサ10が圧力検出素子に相当し、CPU23が変換部を構成し、筒内圧センサ10、チャージアンプ21、AD変換器22、及びCPU23が筒内圧検出手段を構成する。また吸気圧センサ14が吸気圧取得手段に相当し、ECU5がモータリング圧推定手段、推定モータリング圧ピーク値算出手段、及び第2修正手段を構成し、CPU23が検出圧ピーク値取得手段、感度補正手段、第1修正手段、及び異常処理手段を構成する。
【0067】
なお本発明は上述した実施形態に限るものではなく、種々の変形が可能である。例えば、上述した実施形態では、ピーク圧比率RPMAXに応じて使用変換テーブルTBLUSEを決定するようにしたが、ピーク圧比率RPMAXの逆数(=PCMTMAX/PCYLMAX)あるいは、検出圧ピーク値PCYLMAXと推定モータリング圧ピーク値PCMTMAXとの差分(PCYLMAX−PCMTMAX)または(PCMTMAX−PCYLMAX)に応じて使用変換テーブルTBLUSEを決定するようにしてもよい。
【0068】
また上述した実施形態では、検出圧レベル修正及びモータリング圧レベル修正(
図6,ステップS21,S22)に適用する吸気行程吸気圧PBAIN及び下死点吸気圧PBABDCは、吸気圧センサ14によって検出するようにしたが、例えば吸入空気流量GAIR及びエンジン回転数NEに応じて推定するようにしてもよい。
【0069】
またエンジン1を搭載した車両の工場出荷時の検査においては、エンジン1を4000rpm程度の所定高回転数に固定し、かつスロットル弁3を全開状態とした燃料カット運転を行って、安定した筒内圧を発生させた状態で、上述したピーク圧比率RPMAXに基づく使用変換テーブルTBLUSEの設定を行うことが望ましい。
【0070】
工場出荷検査においては、エンジン1を外部から安定した回転数で回転させ、かつ吸入空気流量を最大とする(スロットル弁3を全開状態とする)ことができるので、上述した排気昇温制御よりさらに安定した検出筒内圧(検出モータリング圧)を得ることができる。したがって、このようなエンジン運転状態で取得されるピーク圧比率RPMAXを用いることによって、検出筒内圧PCYLのずれを精度良く検出し、筒内圧検出部の感度補正を比較的簡単な手法によって高い精度で行うことができる。
【0071】
また上述した実施形態では、燃焼室内に燃料を噴射する燃料噴射弁と一体に筒内圧センサ(圧力検出素子)が装着される例を示したが、圧力検出素子は点火プラグと一体に、あるいは圧力検出素子単独で装着するようにしてもよい。また本発明は、吸気通路内に燃料を噴射する燃料噴射弁を備える内燃機関の筒内圧検出装置にも適用可能であり、さらにクランク軸を鉛直方向とした船外機などのような船舶推進機用内燃機関などの筒内圧検出装置にも適用が可能である。