特許第6298727号(P6298727)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6298727
(24)【登録日】2018年3月2日
(45)【発行日】2018年3月20日
(54)【発明の名称】電気ヒーター及びこれを備えた加熱装置
(51)【国際特許分類】
   H05B 3/06 20060101AFI20180312BHJP
   H01L 21/22 20060101ALI20180312BHJP
   H01L 21/324 20060101ALI20180312BHJP
   H01L 21/31 20060101ALI20180312BHJP
   C23C 16/46 20060101ALN20180312BHJP
【FI】
   H05B3/06 B
   H01L21/22 511A
   H01L21/324 K
   H01L21/31 F
   H01L21/31 E
   !C23C16/46
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-131925(P2014-131925)
(22)【出願日】2014年6月26日
(65)【公開番号】特開2015-28925(P2015-28925A)
(43)【公開日】2015年2月12日
【審査請求日】2017年4月24日
(31)【優先権主張番号】特願2013-135583(P2013-135583)
(32)【優先日】2013年6月27日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】393000571
【氏名又は名称】貞徳舎株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102048
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 光司
(74)【代理人】
【識別番号】100146503
【弁理士】
【氏名又は名称】高尾 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100171435
【弁理士】
【氏名又は名称】島田 尚子
(72)【発明者】
【氏名】林田 晃
(72)【発明者】
【氏名】宮田 敏光
(72)【発明者】
【氏名】北村 公男
(72)【発明者】
【氏名】西原 淳一
【審査官】 宮崎 光治
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−033117(JP,A)
【文献】 特開2011−124048(JP,A)
【文献】 実開昭54−144343(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B3/02−3/18
H05B3/40−3/82
F27D7/00−15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蛇行状の電流路を有する板状の発熱体と、前記発熱体をその上側端で支持する支持体とを有する電気ヒーターであって、
前記電流路の間の空隙を貫通する貫通部材を有し、
前記発熱体は、前記空隙内で前記貫通部材に当接可能となるように前記貫通部材の下方に配置される当接部を備え、
前記上側端を前記支持体に掛止させることで前記発熱体を支持する電気ヒーター。
【請求項2】
前記上側端は、外方に向けて折り曲げられている請求項1記載の電気ヒーター。
【請求項3】
請求項1又は2記載の電気ヒーターを備えた加熱装置。
【請求項4】
蛇行状の電流路を有する板状の発熱体と、前記発熱体をその上側端で支持する支持体とを有する電気ヒーターを積層してなる加熱装置であって、
前記電気ヒーターは、前記電流路の間の空隙を貫通する貫通部材を有し、
前記発熱体は、前記空隙内で前記貫通部材に当接可能となるように前記貫通部材の下方に配置される当接部を備え、
前記上側端を前記支持体に掛止させることで前記発熱体を支持し、
積層方向に隣接する前記発熱体及び前記支持体は、前記電気ヒーターの周方向にピッチをずらして配置されている加熱装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気ヒーター及びこれを備えた加熱装置に関する。さらに詳しくは、蛇行状の電流路を有する板状の発熱体と、前記発熱体をその上側端で支持する支持体とを有する電気ヒーター及びこれを備えた加熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、上述の如き電気ヒーターとして、例えば特許文献1に記載の如きものが知られている。同文献では、金具にそれぞれ固定された上下一対の碍子で発熱体の上側端を挟み込んで発熱体を保持する構造のため、部品点数が多く、組み立て作業も煩雑となっていた。また、発熱体と金具との距離が短く絶縁性の向上が望まれるが、碍子を肉厚にすると熱容量が増加し、加熱効率が低下してしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−33117号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
かかる従来の実情に鑑みて、本発明は、簡素な構成でありながら発熱体の脱落を防止し且つ加熱効率のよい電気ヒーター及びこれを備えた加熱装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明に係る電気ヒーターの特徴は、蛇行状の電流路を有する板状の発熱体と、前記発熱体をその上側端で支持する支持体とを有する構成において、前記電流路の間の空隙を貫通する貫通部材と、前記発熱体は、前記空隙内で前記貫通部材に当接可能となるように前記貫通部材の下方に配置される当接部を備え、前記上側端を前記支持体に掛止させることで前記発熱体を支持することにある。
【0006】
上記構成によれば、発熱体は、空隙内で貫通部材に当接可能となるように貫通部材の下方に配置される当接部を有する。これにより、空隙の長手方向に沿う貫通部材側となる上方への発熱体の熱変形や移動に伴って、当接部も上方へ移動し貫通部材に当接する。よって、当接部と貫通部材との当接により、空隙の長手方向に沿う上方への発熱体の熱変形や移動が制限される。従って、発熱体の上側端を支持体に掛止させたとしても、支持体からの脱落を防止できる。しかも、熱容量の大きい碍子等で、発熱体を挟持する又は発熱体の上側端を下方へ押える必要がなく、部品点数を減らせるばかりか、加熱効率をも向上させることが可能となる。
【0007】
また、前記上側端は、外方に向けて折り曲げられているとよい。これにより、発熱体の強度を向上させることができると共に上下方向に隣接する他の発熱体との短絡をも防止し、絶縁性が向上する。
【0008】
上記いずれかに記載の電気ヒーターは、これを備えた加熱装置として実施することができる。
また、本発明に係る他の加熱装置の特徴は、蛇行状の電流路を有する板状の発熱体と、前記発熱体をその上側端で支持する支持体とを有する電気ヒーターを積層してなる構成において、前記電気ヒーターは、前記電流路の間の空隙を貫通する貫通部材を有し、前記発熱体は、前記空隙内で前記貫通部材に当接可能となるように前記貫通部材の下方に配置される当接部を備え、前記上側端を前記支持体に掛止させることで前記発熱体を支持し、積層方向に隣接する前記発熱体及び前記支持体は、前記電気ヒーターの周方向にピッチをずらして配置されていることにある。
【発明の効果】
【0009】
上記本発明に係る電気ヒーター及びこれを備えた加熱装置の特徴によれば、簡素な構成でありながら発熱体の脱落を防止し且つ加熱効率を向上させることが可能となった。
【0010】
本発明の他の目的、構成及び効果については、以下の発明の実施の形態の項から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明に係る電気ヒーターの概略斜視図である。
図2図1の縦断面図である。
図3図2の斜視図である。
図4図2のA部拡大図である。
図5図3のB部拡大図である。
図6図3のC部拡大図である。
図7】発熱体の部分拡大斜視図である。
図8】(a)は支持碍子の斜視図、(b)は固定具の斜視図である。
図9】(a)はパイプの斜視図、(b)は固定具の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、適宜添付図面を参照しながら、本発明をさらに詳しく説明する。
本発明に係る電気ヒーター1は、図1〜6に示すように、大略、炉内を加熱する発熱体10と、発熱体10を支持する支持体としての支持碍子20と、支持碍子20が取り付けられる外装材30と、発熱体10の空隙としてのスリット11を貫通する貫通部材50とを備える。外装材30は円筒形を呈し、発熱体10がその内周面に沿うと共にスリット11の長手方向が鉛直方向Zに沿うように配置されている。図1〜3に示すように、この電気ヒーター1は、鉛直方向Zに沿って積層され、炉の加熱装置100として機能する。係る場合、図1に示すように、上下に隣接する電気ヒーター1の発熱体10及び支持碍子20は、周方向Yに半ピッチ1/2Pずらして設けられる。これにより、上側の発熱体10の下側端15は、下側の支持碍子20の頭部22に対向するように配置されるので、上下の発熱体10同士の接触を回避できる。なお、外装材30は導電性の材料から構成されており、例えば、ステンレス材等の金属材料よりなる。
【0013】
発熱体10は、図1〜3に示すように、外装材30の内周面に沿うように湾曲して形成されている。本実施形態において、発熱体10は、図4〜7に示すように、上下端から交互に上開放スリット11aと下開放スリット11bとが並設され、蛇行状の電流路12を形成する。電流路12は、スリット11に並行する直線状部13と、直線状部13を接続する略方形の上側端14と、略円弧状の下側端15とからなる。この上側端14は、外装材30側(外方)に向けて屈曲させている。これにより、発熱体10の強度が向上し確実に支持碍子20に掛止させ、維持することができる。上側端14を屈曲させない場合、発熱体10がアコーディオンの如く折りたたまれる変形が生じる可能性があり、それにより、下段の発熱体10と短絡する可能性があり、上側端14を屈曲させることで、その変形を防止する。
【0014】
図5,7に示すように、本実施形態では、当接部40として、直線状部13の下部(下側端15近傍)にスリット11へ突出する略矩形の突出部16が設けられている。この突出部16は、後述する貫通部材50の下側に位置する。
【0015】
図8(a)に示すように、支持碍子20は、発熱体10の直線状部13を受け入れる一対の第一溝部21と、この第一溝部21の外方(炉内側)に設けられる頭部22と、同図(b)に示す如き略コの字形状の固定具24を受け入れる第二溝部23とを備える。支持碍子20は、図6に示すように、外装材30を貫通し第二溝部23に固定具24を嵌合させて固定される。固定具24のコの字型止め輪25の内径は、第二溝部23の外径よりもわずかに小さく、専用工具で止め輪25を広げながら第二溝部23に挿入し固定する。なお、支持碍子20は、例えば、アルミナ質、アルミナシリカ質、ムライト質、ジルコン質又はコージライトを主体とするいわゆるセラミックス材料や窒化珪素質材料により構成され、発熱体10と外装材30との間で絶縁を確保する。
【0016】
第一溝部21には、上側端14が掛止されてその近傍の直線状部13がそれぞれ嵌合する。これにより、発熱体10のヒーターの径方向X及び周方向Yへの移動が制限される。また、頭部22には、鉛直方向Zに積層された他の発熱体10の下側端15が位置する(径方向X視で重なる)ように配置される。上述したように、上側端14は外装材30側(外方)に向けて屈曲しているので、鉛直方向Zで隣接する発熱体10の上側端14と下側端15との接触による短絡が防止される。しかも、鉛直方向Zで隣接する発熱体10間でオーバーラップ(径方向X視で重なり合う)部分を生じるので、隣接する電気ヒーター間で非加熱部分がなく、加熱の均一性が向上する。
【0017】
本実施形態において、貫通部材50として、第一貫通部材60と第二貫通部材70とが周方向Yに交互に上開放スリット11aを貫通して設けられている。これら貫通部材60,70は、支持碍子20より径方向Xに長い。これにより、発熱体10を鉛直方向Zに対し傾斜させて、下側端15を頭部22の前方(炉内側)に位置させることで、上下の発熱体10の接触による短絡を防止する。なお、貫通部材50は、支持碍子20と同等の材料より構成され、発熱体10と外装材30との間で絶縁を確保する。
【0018】
図9(a)に示すように、第一貫通部材60はパイプであり、例えば外装材30外部の冷却ガスを貫通孔61を介して炉内に導入するものである。このパイプ60は、発熱体10の直線状部13を受け入れる環状の第一溝部62と、この第一溝部62を形成する一対の環状の鍔部63と、同図(b)に示す如き環状の固定具65を受け入れる第二溝部64とを備える。このパイプ61は、図6に示すように、外装材30を貫通し第二溝部64に固定具65を嵌合させて、固定される。固定具65のC字型止め輪66の内径は、第二溝部64の外径よりもわずかに小さく、専用工具で止め輪66を広げながら第二溝部64に挿入し固定する。なお、本実施形態において、第二貫通部材70は、図8に示す如き先の支持碍子20と同様の形状に形成されている。
【0019】
ところで、発熱体10は通電により加熱され、鉛直方向Zに熱変形が生じる。下側端15は、下方の位置する支持碍子20の頭部22に当接するのみで、鉛直方向Zの下方への変形(移動)は制限されない。上側端14は、支持碍子20の第一溝部21に掛止されるのみであり、鉛直方向Zの上方への変形(移動)も制限されない。ここで、発熱体10の突出部16を貫通部材50の下方に設けているので、鉛直方向Zの上方への変形は、突出部16が貫通部材50に当接することで制限される。従って、発熱体10を支持碍子20へ掛止させるのみ(支持体20に対して発熱体10を固定しない)であっても、発熱体10の脱落を防止することが可能となる。
【0020】
貫通部材50は上開放スリット11aを貫通して設けられ、支持碍子20は下開放スリット11bに設けられている。これにより、支持碍子20と貫通部材50とが、全てのスリット11に配置されるので、直線状部13の周方向への移動がより確実に制限され、形状が維持されることとなる。
【0021】
最後に、本発明のさらに他の実施形態の可能性について説明する。
上記実施形態において、貫通部材50及び突出部16を上開放スリット11aの下方に配置した。しかし、これらの位置は上記に限られるものではない。例えば、上開放スリット11aの中間部や上側(開放側)、下開放スリット11b(支持碍子20の下方)に設けてもよい。貫通部材50を上開放スリット11aの下方に位置させることで、支持碍子20を先に外装材30に取り付け、発熱体10を支持碍子20へ上から挿入できるので、作業性がよい。また、突出部16を上開放スリット11aの下方に位置させることで、支持碍子20の取付性も向上する。但し、作業性及び取付性が低下しない範囲において、貫通部材50及び突出部16の位置は変更可能である。なお、発熱体10の径方向Xへの変形をより抑制するためには、上側端14を支持碍子20に掛止させるので、貫通部材50をスリット11内の下方に設けるとよい。
【0022】
また、上記実施形態において、貫通部材50として、第一貫通部材60と第二貫通部材70とを電気ヒーター1の周方向Yに交互に上開放スリット11aを貫通して設けた。しかし、貫通部材50の数や、第一、第二貫通部材60,70の組み合わせ(周方向Yに対する貫通部材50の配列)はこれに限られるものではない。例えば、炉内への冷却ガスの導入量やバランスに応じて、第一、第二貫通部材60,70を適宜使い分けてもよい。また、第一、第二貫通部材60,70のいずれか一方のみで貫通部材50を構成することも、もちろん可能である。
【0023】
上記実施形態において、当接部40としての突出部16を発熱体10の電流路12の直線状部13と一体に形成した。しかし、一体形成に限らず、別体として設けてもよい。係る場合、例えば発熱体10の表面(炉内側)ではなく、裏面(外装材30側)に設けることで、加熱効率の低下を防止できる。また、当接部40として、非導電性材料よりリング状に形成し、発熱体10に取り付けることも可能である。
【0024】
上記実施形態において、発熱体10にスリット11を形成することで蛇行状の電流路12を形成した。しかし、これに限られるものではなく、例えば、複数の板状部材の上下端を他の部材で接続して蛇行状の電流路12を形成してもよい。また、上下側端14,15の形状も上記実施形態に限られるものではない。
【0025】
支持体20及び貫通部材50の形状は、上記実施形態に限られるものではなく、発熱体10の熱変形や脱落を防止できる範囲において適宜改変が可能である。また、当接部40の形状も特に限定されない。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明に係る電気ヒーターは、例えばガラス、セラミック、金属等の被加熱物の熱処理用のヒーターとして利用することができる。また、反応炉、拡散炉にも適用可能である。さらに、本発明は、例えば、半導体集積回路装置(半導体デバイス)が作り込まれる基板(半導体ウエハ)に酸化処理や拡散処理、イオン打ち込み後のキャリア活性化や平坦化のためのリフローやアニール及び熱CVD反応、スパッタリング等による成膜処理に使用される基板処理用加熱装置に利用することができる。基板はシリコンウエハ、SiCウエハ、ガラス等のウエハに限らず、ホトマスクやプリント配線基板、液晶パネル、光ディスクおよび磁気ディスク等であってもよい。製造された半導体デバイスは、IC、メモリ、LCD、CMOS等の画像センサー、インバーター等に用いられるパワー半導体等に用いられる。なお、バッチ式熱処理装置および枚葉式熱処理装置に限らず、ヒータユニットを備えた半導体製造装置全般に適用することができる。
【符号の説明】
【0027】
1:電気ヒーター、10:発熱体、11:スリット(空隙)、11a:上開放スリット、11b:下開放スリット、12:電流路、13:直線状部、14:上側端、15:下側端、16:突出部(当接部)、20:支持碍子(支持体)、21:第一溝部、22:頭部、23:第二溝部、24:固定具、25:止め輪、30:外装材、40:当接部、50:貫通部材、60:パイプ(第一貫通部材)、61:貫通孔、62:第一溝部、63:鍔部、64:第二溝部、65:固定具、66:止め輪、70:第二貫通部材、100:加熱装置、P:ピッチ、 X:径方向、Y:周方向、Z:鉛直方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9