(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1,2によるものでは、遮熱板をエンジンの排気管路や過給機に取付ける構成としている。この場合、排気管路も過給機も排気ガスによって高温になるから、これらから直接的に伝わる熱により遮熱板が高温に晒されることになる。また、エンジンの排気管路や過給機に取付けられた遮熱板は、エンジンと同じ振動系統にあるからエンジンの運転時に常に振動することになる。これにより、遮熱板は、熱による膨張や収縮を繰り返しつつ、振動することで、劣化が早まる虞があり、耐久性が低下してしまうという問題がある。
【0007】
一方、油圧ショベルには、狭い作業現場等で作業を行うための小型の油圧ショベルがある。この小型の油圧ショベルは、例えば超小旋回型、後方超小旋回型と呼ばれるもので、上部旋回体が旋回動作したときに、少なくとも後側が下部走行体の車幅内にほぼ収まるようにコンパクトに形成されている。
【0008】
このように、コンパクトに形成された小型の油圧ショベルでは、上部旋回体も小型化されているから、特許文献3のように、エンジンの前側に仕切板を設けることが難しく、仕切板を利用して遮熱板を設けることができない。
【0009】
本発明は上述した従来技術の問題に鑑みなされたもので、本発明の目的は、熱、振動による遮熱板の劣化を抑えることにより、遮熱板の耐久性を向上できるようにした建設機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明による建設機械は、自走可能な下部走行体と、該下部走行体上に旋回可能に設けられた上部旋回体と、該上部旋回体の前,後方向の前側に俯仰動可能に設けられた作業装置とからなり、前記上部旋回体は、支持構造体を形成する旋回フレームと、該旋回フレームの後側に設けられ前記作業装置との重量バランスをとるカウンタウエイトと、
前記旋回フレームの後側に設けられている複数個のエンジン支持ブラケットと、前記カウンタウエイトの前側に位置して左,右方向に延在する横置き状態となるように複数個の防振部材を介して前記
エンジン支持ブラケットに弾性的に支持され
ているエンジンと、該エンジンに空気を強制的に供給するために該エンジンに取付けられ
ている過給機と、
前記旋回フレームの後側に前記エンジンを跨いで配置されているサポート部材と、前記エンジンの前側に位置して前記旋回フレーム上に設けられ
ているフロア部材と、該フロア部材の後側から立上って前記エンジンを覆うように後側に延び上側にオペレータが着座する運転席が設けられ
前記サポート部材に支持されている運転席台座と
、を備えてなる。
【0011】
上述した課題を解決するために、請求項1の発明が採用する構成の特徴は、前記過給機が発生する熱を遮るために前記過給機の周囲に位置して板状片からなる遮熱板
が設け
られ、前記遮熱板は、前記エンジンと振動系統が異なる前記上部旋回体を構成する
前記サポート部材と前記エンジン支持ブラケットと前記カウンタウエイトとのうちいずれか一つの部材に対して取付け
られている構成としたことにある。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の発明によれば、遮熱板は、板状片として形成しているから、大きな設置スペースを必要としないコンパクトな形状とすることができる。この上で、遮熱板は、エンジンと振動系統が異なる上部旋回体を構成する
サポート部材とエンジン支持ブラケットとカウンタウエイトとのうちいずれか一つの部材に対して取付けているから、エンジンの振動から遮熱板を保護することができる。しかも、遮熱板は、高温となるエンジンの排気管路や過給機と別個となる上部旋回体を構成する部材に対して取付けているから、エンジンからの熱に晒されることなく、熱による膨張や収縮を繰り返すこともない。
【0013】
この結果、遮熱板は、エンジンの振動や該エンジンが発生する熱から保護することができるから、この遮熱板の劣化を抑えて耐久性を向上することができる。さらに、板状片としてコンパクトに形成された遮熱板は、狭い作業現場等で作業を行う小型の建設機械の上部旋回体のように、設置スペースが限られている場合でも、過給機を覆う位置に設けることができる。これにより、遮熱板は、過給機で発生した熱が運転席に着座したオペレータに伝わるのを遮ることができ、作業環境を良好にすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態に係る建設機械の代表例として、クローラ式の小型の油圧ショベル、所謂ミニショベルを例に挙げ、添付図面に従って詳細に説明する。
【0016】
まず、
図1ないし
図6は本発明の第1の実施の形態を示している。
図1において、1は建設機械としてのクローラ式の小型の油圧ショベル(ミニショベル)を示している。この油圧ショベル1は、自走可能なクローラ式の下部走行体2と、該下部走行体2上に旋回可能に搭載された上部旋回体3と、該上部旋回体3の前,後方向の前側に俯仰動可能に設けられ、土砂の掘削作業等を行うスイング式の作業装置4とにより構成されている。
【0017】
上部旋回体3は、
図2ないし
図4に示す如く、後述の旋回フレーム5、カウンタウエイト6、エンジン7、過給機8、サポート部材11、フロア部材12、運転席台座13、遮熱板19等を含んで構成されている。
【0018】
5は上部旋回体3の支持構造体をなし下部走行体2に取付けられる旋回フレームを示している。旋回フレーム5は、全体形状が平面視で略円形状に形成されることにより、旋回動作したときに少なくとも下部走行体2の後側が車幅内にほぼ収まる構成となっている。
【0019】
旋回フレーム5は、
図4に示すように、左,右方向の中間部を前,後方向に延びた平板状の底板5Aと、該底板5Aの上面側に左,右方向に離間して略V字状に立設された左縦板5B,右縦板5Cと、該各縦板5B,5Cの前端部に設けられ、作業装置4を揺動可能に支持する支持ブラケット5Dと、前記左,右の縦板5B,5Cの後端部に位置して左,右方向に延びて前記底板5A上に立設された横板5Eと、前記左,右の縦板5B,5Cから左,右方向に離間した位置に前,後方向に延びて設けられた左サイドフレーム5F,右サイドフレーム5Gと、該左サイドフレーム5Fの前部に左,右方向に延びて立設されたフロア支持フレーム5Hと、前記横板5Eよりも後側に位置して底板5A上に設けられた複数個、例えば4個のエンジン支持ブラケット5Jとを含んで構成されている。
【0020】
ここで、4個のエンジン支持ブラケット5Jは、
図2、
図3に示すように、前,後方向と左,右方向とに間隔をもって後述のエンジン7を取囲む位置に配置されている。即ち、4個のエンジン支持ブラケット5Jは、エンジン7を基準にして、左前位置、右前位置、左後位置および右後位置に配置されている。
【0021】
さらに、旋回フレーム5には、エンジン7よりも後側で左,右方向に離間した位置に2個のサポートブラケット5K(
図4参照),5L(
図2参照)が設けられている。左側のサポートブラケット5Kには、後述するサポート部材11の左後脚11Cがボルト止めされ、右側のサポートブラケット5Lには、後述の右後脚11Dがボルト止めされている。
【0022】
6は旋回フレーム5の後側に設けられたカウンタウエイトで、該カウンタウエイト6は、作業装置4との重量バランスをとるものである。カウンタウエイト6は、後述のエンジン7を後側から取囲む位置で左,右方向に略円弧状に延びている。
【0023】
7は旋回フレーム5の後側に設けられたエンジンで、該エンジン7は、
図3、
図4に示すように、左,右方向に延在する横置き状態に搭載されている。エンジン7は、排気ガスを外部に排出するための排気管路7Aを有し、該排気管路7Aの途中には、後述の過給機8が設けられている。さらに、エンジン7の右側には冷却ファン7Bが設けられ、該冷却ファン7Bは、回転駆動されることにより、外気を冷却風として吸込み、後述する熱交換装置10に供給するものである。
【0024】
ここで、エンジン7には、旋回フレーム5の各エンジン支持ブラケット5Jに対応する位置に取付ブラケット7Cが設けられ、該各取付ブラケット7Cは、防振部材7Dを介して各エンジン支持ブラケット5Jに取付けられている。これにより、防振部材7Dを境にし、エンジン7、後述の過給機8、油圧ポンプ9等が同じ振動系統となり、旋回フレーム5、後述のサポート部材11等がエンジン7の振動系統と異なる振動系統となっている。
【0025】
8はエンジン7の排気管路7Aに設けられた過給機(ターボチャージャ)である。この過給機8は、エンジン7の排気ガスを利用して該エンジン7の各気筒内に空気を強制的に供給することにより、エンジン出力を高めるものである。過給機8は、排気ガスによって回転駆動される駆動側のタービン部と、このタービン部と回転軸を介して直結された送風側のタービン部(いずれも図示せず)とを備えている。
【0026】
過給機8は、駆動側のタービン部が排気管路7Aに接続され、送風側のタービン部が外気を吸込むための吸気ホース(図示せず)に接続されている。ここで、過給機8は、エンジン7の排気管路7Aに接続され、その内部を高温の排気ガスが流通するから、この排気ガスによって高温の熱を発生する。
【0027】
9はエンジン7の左側に設けられた油圧ポンプである(
図3、
図4参照)。この油圧ポンプ9は、エンジン7によって駆動されることにより、各種アクチュエータを駆動するための圧油を吐出するものである。
【0028】
10はエンジン7の右側に冷却ファン7Bに対面して配設された熱交換装置である。この熱交換装置10は、例えば作動油を冷却するオイルクーラ、エンジン7の冷却水を冷却するラジエータ、過給機8によって加圧された空気を冷却するインタクーラ等を含んで構成されている。
【0029】
11は旋回フレーム5の後側に設けられたサポート部材で、該サポート部材11は、後述する運転席台座13の後側を支持するために、エンジン7を跨ぐように旋回フレーム5の後側に取付けられている。ここで、サポート部材11は、エンジン7と振動系統が異なる上部旋回体3を構成する部材の1つとなっている。サポート部材11は、エンジン7を跨ぐように配置された複数本、例えば4本の左前脚11A、右前脚11B、左後脚11Cおよび右後脚11Dと、エンジン7の上方に位置して該各脚11A〜11Dの上部に取付けられ、左,右方向に延びる角筒状に形成された台座支持部11Eとにより構成されている。
【0030】
左,右の前脚11A,11Bの下端部は、旋回フレーム5の横板5Eにボルト止めされ、左,右の後脚11C,11Dの下端部は、旋回フレーム5のサポートブラケット5K,5Lにボルト止めされている。このように、各脚11A〜11Dを旋回フレーム5側に固定することにより、
図2に示すように、台座支持部11Eの上面に後述する運転席台座13の後部側を支持することができる。
【0031】
ここで、サポート部材11を構成する4本の脚11A〜11Dのうち、エンジン7に取付けられた過給機8の近傍に配置された脚、即ち、右前脚11Bには、後述の遮熱板19が取付けられている。この右前脚11Bは、横板5Eから上側に真直ぐに延びた縦脚部11B1と、該縦脚部11B1の上部から斜め後側に傾斜して延びた傾斜脚部11B2と、該傾斜脚部11B2の上部から後側に向け横方向に延びた横脚部11B3とにより形成されている。右前脚11Bには、過給機8の近くとなる縦脚部11B1の上部位置に、例えば2個のめねじ孔11B4(
図5参照)が上,下方向に間隔をもって形成されている。各めねじ孔11B4には、遮熱板19を取付けるためのボルト22が螺着される。
【0032】
12はエンジン7の前側に位置して旋回フレーム5上に設けられたフロア部材である(
図3参照)。このフロア部材12は、後述する運転席16に着座したオペレータが足を乗せるもので、その前側位置には、後述する走行用の操作レバー・ペダル18等が設けられている。
【0033】
13はフロア部材12の後側に位置してエンジン7を覆うように設けられた運転席台座である。この運転席台座13は、
図2に示す如く、フロア部材12の後側から立上った立上り部位13Aと、該立上り部位13Aの上部から屈曲して後側に延びたほぼ水平な台座部位13Bと、該台座部位13Bの後部から斜め上側に立上りつつ、後側に延びた取付部位13Cとを含んで構成されている。台座部位13Bの上側には、後述の運転席16が搭載されている。
【0034】
例えばフロア部材12と運転席台座13とは、一体的に形成されることにより1つのチルトフロアを構成している。このチルトフロアは、フロア部材12の前部を旋回フレーム5のフロア支持フレーム5Hに上,下方向に回動可能に連結することにより、運転席台座13の後側を上側に持ち上げることができる(チルトアップ)。一方、運転席台座13の後側を下側に移動(チルトダウン)させたときには、取付部位13Cをサポート部材11の台座支持部11E上に弾性部材14を介して固定することができる。
【0035】
ここで、運転席台座13は、エンジン7の前側と上側とを覆うものである。この場合、エンジン7および過給機8と運転席台座13との間には、空間部15が形成されている。この空間部15を過給機8が発生する高温の熱が伝わると、運転席台座13上に運転席16を介して着座したオペレータが熱せられて作業環境が悪化してしまう。しかし、過給機8を後述の遮熱板19で覆うことにより、オペレータへの熱の伝わりを遮断することができる。
【0036】
16は運転席台座13上に設けられた運転席で、該運転席16は、油圧ショベル1を操縦するオペレータが着座するものである。運転席16の左,右両側には、作業装置4等を操作するための作業用の操作レバー17が配設されている。さらに、運転席16の前側には、フロア部材12の前部に位置して走行用の操作レバー・ペダル18等が配設されている。
【0037】
次に、第1の実施の形態の特徴部分となる遮熱板19の構成について、詳しく説明する。
【0038】
即ち、19は過給機8が発生する熱を遮るために過給機8の周囲に位置して設けられた遮熱板を示している。この遮熱板19は、運転席16に着座したオペレータに熱が伝わるのを防止するために、運転席台座13とエンジン7との間に設けられている。また、遮熱板19は、限られたスペースでも設置することができるように板状片として形成されている。遮熱板19は、エンジン7と振動系統が異なる上部旋回体3を構成する部材となるサポート部材11に対して取付けられている。
【0039】
遮熱板19は、過給機8が発生する熱が運転席16に着座したオペレータに伝わらないように遮熱する機能と、メンテナンス作業時に高温となった過給機8に接触しないように防護する機能とを有している。
【0040】
遮熱板19は、
図5に示すように、過給機8の前側を覆う縦面板19Aと、過給機8の上側を覆うように該縦面板19Aの上部から斜め後側に延びた傾斜面板19Bと、前記縦面板19Aから右側に延びた取付面板19Cとにより略L字状の板体として形成されている。取付面板19Cの先端側には、サポート部材11を構成する右前脚11Bの各めねじ孔11B4に対応する位置に2個のボルト挿通孔19Dが形成されている。さらに、遮熱板19には、縦面板19Aと傾斜面板19Bとに亘って複数本、例えば4本のスリット19Eが形成されている。このスリット19Eは、過給機8の温度が過度に高くならないように、過給機8の熱を適宜に放出する機能を有している。
【0041】
ここで、遮熱板19は、
図6に示すように、金属材料からなる板体20と、該板体20に重ねて設けられた断熱材21とにより構成されている。この断熱材21としては、耐熱性を有する鉱物繊維が用いられている。金属材料からなる板体20は、容易に加工することができる上に、強度をもって過給機8を保護することができる。一方、板体20に断熱材21を重ねる構成では、過給機8が発生する熱を効率よく遮ることができる。
【0042】
このように形成された遮熱板19は、ボルト挿通孔19Dに挿通したボルト22をサポート部材11を構成する右前脚11Bの各めねじ孔11B4に螺着する。これにより、遮熱板19は、過給機8の前側と上側を覆うように、空間部15に位置して右前脚11Bに取付けることができる。
【0043】
なお、23はフロア部材12に設けられたキャノピである。このキャノピ23は、例えば左,右の前支柱23A、左,右の後支柱23Bおよびルーフ部23Cからなる4柱キャノピとして構成されている。各前支柱23Aは、フロア部材12の前側位置に取付けられ、各後支柱23Bは、運転席台座13の取付部位13Cに取付けられている。
【0044】
第1の実施の形態による油圧ショベル1は上述の如き構成を有するもので、次に、この油圧ショベル1の動作について説明する。
【0045】
まず、オペレータは、フロア部材12上に搭乗して運転席16に着座する。この状態で走行用の操作レバー・ペダル18を操作することにより、下部走行体2を駆動して油圧ショベル1を前進または後退させることができる。一方、運転席16に着座したオペレータは、作業用の操作レバー17を操作することにより、作業装置4等を動作させて土砂の掘削作業等を行うことができる。
【0046】
油圧ショベル1の稼動時には、エンジン7に設けられた過給機8が熱を発生する。この場合、過給機8の周囲には、運転席台座13とエンジン7との間に位置して遮熱板19を設ける構成としている。従って、過給機8で発生した熱は、遮熱板19によって遮ることができるから、運転席16に着座したオペレータに伝わるのを遮ることができ、作業環境を良好にすることができる。
【0047】
さらに、フロア部材12、運転席台座13からなるチルトフロアをチルトアップして、エンジン7等のメンテナンス作業を行うときには、遮熱板19が高温となった過給機8を覆うことにより、作業中に過給機8に接触しないように防護することができる。
【0048】
かくして、第1の実施の形態によれば、エンジン7に取付けられた過給機8が発生する熱を遮るために、過給機8の周囲に位置して板状片からなる遮熱板19を設けている。この遮熱板19は、エンジン7と振動系統が異なる上部旋回体3を構成する部材となるサポート部材11の右前脚11Bに対して取付ける構成としている。
【0049】
従って、遮熱板19は、板状片として形成したことにより、大きな設置スペースを必要としないコンパクトな形状とすることができる。また、遮熱板19は、エンジン7と振動系統が異なるサポート部材11の右前脚11Bに対して取付けているから、エンジン7の振動から遮熱板19を保護することができる。さらに、遮熱板19は、高温となるエンジン7の排気管路7Aや過給機8と別個となるサポート部材11に対して取付けているから、該遮熱板19を排気管路7Aや過給機8が発生する熱、即ち、熱による膨張や収縮等から保護することができる。
【0050】
この結果、遮熱板19には、エンジン7の振動や該エンジン7が発生する熱が直接的に伝わることがないから、これらの振動や熱から遮熱板19を保護することができ、遮熱板19の劣化を抑えて耐久性を向上することができる。また、遮熱板19は、エンジン7の周囲に配設される電装部品等を保護することができる。
【0051】
しかも、板状片としてコンパクトに形成された遮熱板19は、小型の油圧ショベル1の上部旋回体3のように、小型化によって設置スペースが限られている場合でも、過給機8を覆う位置に設けることができる。これにより、遮熱板19は、小型の油圧ショベル1のように過給機8と運転席16とが近い場合でも、過給機8で発生した熱が運転席16に着座したオペレータに伝わるのを遮ることができ、作業環境を良好にすることができる。
【0052】
また、遮熱板19は、金属材料からなる板体20と、該板体20に重ねて設けられた断熱材21とにより構成している。これにより、金属材料からなる板体20は、容易に加工することができる上に、強度をもって過給機8を保護することができる。一方、板体20に重ねて設けられた断熱材21は、過給機8が発生する熱を効率よく遮ることができる。
【0053】
一方、遮熱板19は、運転席台座13とエンジン7との間に設ける構成としている。これにより、遮熱板19は、過給機8が発生する熱が運転席16に着座したオペレータに伝わるのを防止することができる。
【0054】
さらに、遮熱板19は、運転席台座13を支持するサポート部材11に対して取付ける構成としている。このサポート部材11は、上部旋回体に予め設けられている部材であるから、このサポート部材11を利用することで遮熱板19の取付構造を簡略化することができる。
【0055】
次に、
図7は本発明の第2の実施の形態を示している。この第2の実施の形態の特徴は、サポート部材の左,右の前脚を利用して遮熱板を取付ける構成としたことにある。なお、本実施の形態では、上述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0056】
図7において、31は旋回フレーム5の後側に設けられた第2の実施の形態によるサポート部材である。このサポート部材31は、第1の実施の形態によるサポート部材11とほぼ同様に、4本の左前脚31A、右前脚31B、左後脚31Cおよび右後脚31Dと、該各脚31A〜31Dの上部に取付けられた台座支持部31Eとにより構成されている。しかし、第2の実施の形態によるサポート部材31は、左,右の前脚31A,31Bが、第1の実施の形態によるサポート部材11の左,右の前脚11A,11Bよりも右側に配置されている点で、第1の実施の形態によるサポート部材11と相違している。ここで、サポート部材31は、エンジン7と振動系統が異なる上部旋回体3を構成する部材として形成されている。
【0057】
32は過給機8よりも僅かに上側に位置してサポート部材31を構成する左前脚31Aと右前脚31Bとに亘って左,右方向に延びた取付部材である。この取付部材32は、その両端部が左,右の前脚31A,31Bにボルト止めされている。
【0058】
33は取付部材32の長さ方向の中間位置に取付けられた第2の実施の形態による遮熱板を示している。この遮熱板33は、板状片として形成され、過給機8が発生する熱を遮るために過給機8の周囲に位置して設けられている。遮熱板33は、運転席16に着座したオペレータに熱が伝わるのを防止するために、運転席台座13とエンジン7との間に設けられている。遮熱板33は、過給機8の上側を覆うように下側に向け前側に傾斜した傾斜面板33Aと、過給機8の前側を覆うように該傾斜面板33Aの下端から下側に延びた縦面板33BAとにより形成されている。遮熱板33には、傾斜面板33Aと縦面板33Bとに亘って複数本、例えば4本のスリット33Cが形成されている。遮熱板33は、傾斜面板33Aの上側部分が取付部材32に対してボルト止めされている。
【0059】
かくして、このように構成された第2の実施の形態においても、前述した第1の実施の形態とほぼ同様の作用、効果を得ることができる。特に、第2の実施の形態では、遮熱板33は、サポート部材31の左,右の前脚31A,31Bに亘って左,右方向に延びた取付部材32に対して取付ける構成としている。これにより、取付部材32の長さ範囲で遮熱板33の位置を自由に設定することができる。
【0060】
次に、
図8は本発明の第3の実施の形態を示している。この第3の実施の形態の特徴は、旋回フレームの後側には、エンジンを防振部材を介して支持する複数個のエンジン支持ブラケットを設け、遮熱板は、各エンジン支持ブラケットのうち、運転席台座とエンジンとの間で、かつ過給機の近傍に位置するエンジン支持ブラケットに取付ける構成としたことにある。なお、本実施の形態では、上述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0061】
図8において、41は旋回フレーム5の後側に設けられた第3の実施の形態によるサポート部材である。このサポート部材41は、第1の実施の形態によるサポート部材11とほぼ同様に、4本の左前脚41A、右前脚41B、左後脚41Cおよび右後脚41Dと、該各脚41A〜41Dの上部に取付けられた台座支持部41Eとにより構成されている。しかし、第3の実施の形態によるサポート部材41は、左,右の前脚41A,41Bが、第1の実施の形態によるサポート部材11の左,右の前脚11A,11Bよりも右側に配置されている点で、第1の実施の形態によるサポート部材11と相違している。
【0062】
42は過給機8の近傍に位置して旋回フレーム5を構成する右前位置のエンジン支持ブラケット5Jに立設された取付支柱である。この取付支柱42の下部は、例えばエンジン支持ブラケット5Jに溶接され、上部は過給機8の近傍まで延びている。ここで、旋回フレーム5のエンジン支持ブラケット5Jは、エンジン7と振動系統が異なる上部旋回体3を構成する部材として形成されている。
【0063】
43は取付支柱42の上部に取付けられた第3の実施の形態による遮熱板を示している。この遮熱板43は、第1の実施の形態による遮熱板19と同様に形成されている。即ち、遮熱板43は、略L字状の板状片からなり、運転席16に着座したオペレータに熱が伝わるのを防止するために、運転席台座13とエンジン7との間に設けられている。この遮熱板43は、取付支柱42の上部にボルト止めされることで、エンジン7と振動系統が異なる旋回フレーム5に取付けられている。
【0064】
かくして、このように構成された第3の実施の形態においても、前述した第1の実施の形態とほぼ同様の作用、効果を得ることができる。特に、第3の実施の形態では、旋回フレーム5の後側に設けられた右前位置のエンジン支持ブラケット5Jに取付支柱42を立設し、この取付支柱42の上部に過給機8を覆うように遮熱板43を取付ける構成としている。従って、運転席台座13とエンジン7との間で、かつ過給機8の近傍に位置するエンジン支持ブラケット5Jに対して遮熱板43を取付けることにより、この遮熱板43をエンジン7の振動や該エンジン7が発生する熱から保護することができる。さらに、上部旋回体3の旋回フレーム5に予め設けられているエンジン支持ブラケット5Jを利用することにより、遮熱板43の取付構造を簡略化することができる。
【0065】
なお、第1の実施の形態では、サポート部材11の右前脚11Bに対しボルト22を用いて遮熱板19を取付ける構成を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば、
図9に示す第1の変形例のように、遮熱板51を溶接手段を用いてサポート部材11の右前脚11Bに取付ける構成としてもよい。この構成は、他の実施の形態にも同様に適用することができるものである。
【0066】
第1の実施の形態では、遮熱板19に4本のスリット19Eを形成した場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば、
図10に示す第2の変形例による遮熱板61のように、スリットを廃止する構成としてもよい。この構成は、他の実施の形態にも同様に適用することができるものである。
【0067】
一方、第1の実施の形態では、遮熱板19は、運転席16に着座したオペレータに熱が伝わるのを防止するために、運転席台座13とエンジン7との間に設けた場合を例示している。しかし、本発明はこれに限らず、例えば
図11に示す第3の変形例のように構成してもよい。即ち、
図11において、旋回フレーム71の後部にカウンタウエイト72が取付けられ、該カウンタウエイト72の前側にエンジン73が横置き状態で配置されている。このエンジン73には、後側(カウンタウエイト72側)に位置して過給機74が取付けられている。エンジン73の左側には、熱交換装置75が配置され、エンジン73の右前位置には、燃料タンク76と作動油タンク77が配設されている。
【0068】
ここで、カウンタウエイト72は、エンジン7と振動系統が異なる上部旋回体3を構成する部材をなしている。このカウンタウエイト72には、過給機74の近傍となる上側に位置して遮熱板78が取付けられている。遮熱板78は、過給機74を後側から覆うことにより、過給機74が発生する熱を遮るものである。
【0069】
一方、第1の実施の形態では、遮熱板19を縦面板19A、傾斜面板19B、取付面板19Cとから略L字状に形成した場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、取付面板を別部材として形成し、遮熱板を別部材からなる取付面板を介してサポート部材に取付ける構成としてもよい。
【0070】
第1の実施の形態では、遮熱板19を、金属材料からなる板体20と、該板体20の片側に重ねて設けられた断熱材21とにより構成した場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えば、遮熱板として2枚の断熱材によって板体を挟む構成としてもよい。また、断熱材を廃止して板体だけで遮熱板を構成してもよい。この構成は、他の実施の形態にも同様に適用することができるものである。
【0071】
各実施の形態では、フロア部材12、運転席台座13の上側に運転席16の上方を覆うキャノピ23が設けられたキャノピ仕様の油圧ショベル1を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば運転席の上方と周囲を覆うキャブが設けられたキャブ仕様の油圧ショベルに適用してもよい。
【0072】
さらに、各実施の形態では、建設機械として小型の油圧ショベル1、所謂ミニショベルを例示している。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えば油圧クレーン等の他の建設機械にも広く適用することができる。