特許第6298797号(P6298797)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6298797
(24)【登録日】2018年3月2日
(45)【発行日】2018年3月20日
(54)【発明の名称】建設機械の交換品管理システム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 10/00 20120101AFI20180312BHJP
   G06Q 50/08 20120101ALI20180312BHJP
   E02F 9/20 20060101ALI20180312BHJP
【FI】
   G06Q10/00 300
   G06Q50/08
   E02F9/20 N
【請求項の数】4
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2015-123054(P2015-123054)
(22)【出願日】2015年6月18日
(65)【公開番号】特開2017-8524(P2017-8524A)
(43)【公開日】2017年1月12日
【審査請求日】2017年3月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002457
【氏名又は名称】特許業務法人広和特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100079441
【弁理士】
【氏名又は名称】広瀬 和彦
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 誉
(72)【発明者】
【氏名】冨永 哲兆
(72)【発明者】
【氏名】高橋 均
(72)【発明者】
【氏名】草木 貴巳
【審査官】 牧 裕子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−23831(JP,A)
【文献】 特開2007−100305(JP,A)
【文献】 特開2003−140743(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 − 99/00
E02F 9/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建設機械の各部位の検出値と稼働時間とを含む稼働情報が記憶される稼働情報記憶手段と、
寿命に至ると交換が必要になる前記建設機械の交換品の使用開始日を含む交換品情報が記憶される交換品情報記憶手段と、
前記稼働情報記憶手段に記憶された前記稼働情報と前記交換品情報記憶手段に記憶された前記交換品情報とを用いて、前記交換品の交換時期を予測する交換時期予測手段とを備えてなる建設機械の交換品管理システムにおいて、
前記稼働情報および前記交換品情報とは別の情報である、前記建設機械のオペレータ、使用者、使用者の業種、使用者の地域、作業内容、作業地域を含む使用態様のうちの少なくとも一の使用態様が、前記建設機械の使用環境情報として記憶される使用環境記憶手段を備え、
前記交換時期予測手段は、前記稼働情報と前記交換品情報とに加え、前記使用環境記憶手段に記憶された前記使用環境情報も用いて、前記交換品の交換時期を予測する構成とし
前記建設機械には、固有の識別情報が記録された携帯機の前記識別情報を読取る読取装置が設けられており、
前記使用環境記憶手段には、前記読取装置により読取られた前記携帯機の前記識別情報に対応する前記使用態様の少なくとも一つが、前記使用環境情報として記憶される構成としたことを特徴とする建設機械の交換品管理システム。
【請求項2】
前記建設機械は、前記読取装置で読取られた前記携帯機の前記識別情報に基づいて、前記建設機械の起動を許可するか否かの判定を行う起動判定手段を備える構成としてなる請求項1に記載の建設機械の交換品管理システム。
【請求項3】
前記交換時期予測手段は、前記稼働情報と前記交換品情報とを用いて算出される前記交換品の現在の寿命の進行の程度と、前記稼働情報と前記使用環境情報とを用いて算出される前記交換品の将来の寿命の進行の程度とに基づいて、前記交換品の交換時期を予測する構成としてなる請求項に記載の建設機械の交換品管理システム。
【請求項4】
前記交換時期予測手段は、前記稼働情報と前記交換品情報とに加え、前記使用環境情報も用いて、前記交換品の現在の寿命の進行の程度を算出する構成としてなる請求項に記載の建設機械の交換品管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、油圧ホース、エアフィルタ等の建設機械の交換品を管理する建設機械の交換品管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、油圧ショベル、ホイールローダ、油圧クレーン等の建設機械は、様々な部品により構成されており、その部品の中には、寿命に至ると交換が必要になる交換品(メンテナンス対象部品)がある。
【0003】
例えば、油圧ショベルであれば、交換品として、作業装置を構成するアーム、バケット、これらを連結する連結ピン、連結ピンを支承するブッシュ(軸受筒)、連結ピンとブッシュを潤滑するグリス、バケット爪、旋回装置のミッションオイル、旋回装置のミッションシール、旋回軸受(旋回輪)、旋回装置のグリス、走行装置のミッションオイル、走行装置のミッションシール、走行油圧モータ、走行ローラ、履帯、履帯のシュー、エンジンオイル、エンジンオイルフィルタ、エアフィルタ、作動油、作動油フィルタ(オイルフィルタ)、油圧ホース等が挙げられる。
【0004】
このような交換品は、例えば、交換品毎に交換時期(使用可能期間、耐用期間)が一律に設定されており、その交換時期に達すると、建設機械の点検、修理、整備等を行うメンテナンス工場(サービス工場)で新品に交換することが行われている。しかし、交換品の交換時期を一律に設定すると、寿命に余裕があるにも拘わらず、交換が行われる可能性がある。
【0005】
これに対し、特許文献1には、建設機械1台毎(例えば、油圧ショベル1台毎)に各交換品の交換時期を個別に予測(算出)する建設機械の管理システムが記載されている。この管理システムは、それぞれの交換品の交換時期を、現時点までの建設機械の稼働情報(パイロット圧、ポンプ圧、作動油温度、エンジン稼働時間、エンジン回転数)と交換品情報(交換品名、交換日)とに基づいて予測する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4689134号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来技術によれば、交換品の交換時期の予測に、現時点までの建設機械の稼働情報と交換品情報を用いる。これに対し、交換品の交換時期の予測に、例えば、建設機械のオペレータ、建設機械の使用者(使用会社)、使用者の業種、使用者の地域、建設機械の作業内容(工事内容、施工内容)、作業地域等の建設機械の使用態様に関する情報(建設機械の使用環境情報)を用いることが考えられる。この場合には、交換品の交換時期の予測に、建設機械の使用態様の履歴、その履歴から想定される今後の使用態様等を考慮することができ、より精細(詳細)な予測、より精度の高い予測を行うことができる。
【0008】
本発明の目的は、交換品の交換時期のより精細(詳細)な予測、より精度の高い予測を行うことができる建設機械の交換品管理システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の建設機械の交換品管理システムは、建設機械の各部位の検出値と稼働時間とを含む稼働情報が記憶される稼働情報記憶手段と、寿命に至ると交換が必要になる前記建設機械の交換品の使用開始日を含む交換品情報が記憶される交換品情報記憶手段と、前記稼働情報記憶手段に記憶された前記稼働情報と前記交換品情報記憶手段に記憶された前記交換品情報とを用いて、前記交換品の交換時期を予測する交換時期予測手段とを備えてなる。
【0010】
上述した課題を解決するために、本発明が採用する構成の特徴は、前記稼働情報および前記交換品情報とは別の情報である、前記建設機械のオペレータ、使用者、使用者の業種、使用者の地域、作業内容、作業地域を含む使用態様のうちの少なくとも一の使用態様が、前記建設機械の使用環境情報として記憶される使用環境記憶手段を備え、前記交換時期予測手段は、前記稼働情報と前記交換品情報とに加え、前記使用環境記憶手段に記憶された前記使用環境情報も用いて、前記交換品の交換時期を予測する構成とし、前記建設機械には、固有の識別情報が記録された携帯機の前記識別情報を読取る読取装置が設けられており、前記使用環境記憶手段には、前記読取装置により読取られた前記携帯機の前記識別情報に対応する前記使用態様の少なくとも一つが、前記使用環境情報として記憶される構成としたことにある。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、交換品の交換時期のより精細(詳細)な予測、より精度の高い予測を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施の形態による油圧ショベルの交換品管理システムの概略図である。
図2図1中の油圧ショベルの油圧回路図である。
図3】油圧ショベルのコントローラのブロック図である。
図4】センタサーバ(管理サーバ)のブロック図である。
図5】油圧ショベルのコントローラの処理を示す流れ図である。
図6】センタサーバ(管理サーバ)の処理を示す流れ図である。
図7】寿命を算出するための総熱量の一例を示す説明図である。
図8】寿命を算出するための総圧力量の一例を示す説明図である。
図9】オペレータの比率の一例を示す説明図である。
図10】第1の実施の形態による寿命の算出の一例を示す説明図である。
図11】第2の実施の形態による寿命の算出の一例を示す説明図である。
図12】第3の実施の形態による寿命の算出の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る建設機械の交換品管理システムの実施の形態を、油圧ショベルの交換品管理システムに適用した場合を例に挙げ、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0014】
図1ないし図10は第1の実施の形態を示している。図1において、建設機械の代表例となる油圧ショベル1は、油圧ショベル1の製造業者(メーカー)の工場から出荷され、土木作業、建設作業、解体作業、浚渫作業等の作業現場(工事現場)で稼働している。図1では、図面の簡略化のために、1台の油圧ショベル1のみを示しているが、実際には、複数の油圧ショベル1が様々な作業現場で稼働している。実施の形態の交換品管理システムは、1台の油圧ショベル1の管理(交換品の交換時期の予測)だけでなく、複数の油圧ショベル1の管理(交換品の交換時期の予測)を並行して行うものである。
【0015】
管理センタ31は、例えば、基地局とも呼ばれ、油圧ショベル1の交換品管理システムを構成するセンタサーバ(管理サーバ)32を備えている。管理センタ31は、例えは、油圧ショベル1の製造業者の本社、支社、工場等に設置することができる。なお、管理センタ31は、製造業者の施設に限らず、例えば、サーバの運営を専門的に行うデータセンタ等に設置してもよい。さらに、管理センタ31は、例えば、複数の油圧ショベル1を所有する油圧ショベル1のレンタル会社に設置してもよい。
【0016】
センタサーバ(管理サーバ)32は、専用回線、公衆回線、インターネット回線、光回線、電話回線等の通信回線41を介して、社内コンピュータ42、ユーザ側コンピュータ43等に接続されている。社内コンピュータ42は、例えば、製造業者の本社、支社、工場、支店、サービス工場(メンテナンス工場)等、製造業者の社内に設置されるものである。ユーザ側コンピュータ43は、社内コンピュータ42とは別のコンピュータであり、例えば、油圧ショベル1の製造業者以外の者が使用するものである。例えば、ユーザ側コンピュータ43は、油圧ショベル1を使用する使用者(使用会社)、油圧ショベル1の所有者、油圧ショベル1の管理者等が使用するコンピュータである。
【0017】
さらに、センタサーバ32は、専用回線、公衆回線、インターネット回線、光回線、電話回線等の通信回線44を介して、衛星通信の地上局45に接続されている。センタサーバ32には、通信衛星46を介して、油圧ショベル1からの情報が入力される。後述するように、センタサーバ32は、油圧ショベル1の情報を記憶(保存、格納、蓄積)する。これに加えて、センタサーバ32は、油圧ショベル1の交換品の交換時期を予測(算出)し、その交換時期に関する情報を、必要に応じて社内コンピュータ42、ユーザ側コンピュータ43等に出力(送信)する。
【0018】
なお、図1では、油圧ショベル1からセンタサーバ32に入力される情報を明確にするために、油圧ショベル1と接続される通信回線44を、社内コンピュータ42等と接続される通信回線41とは別に示している。これは、単に便宜的に分けて示しているだけで、通信回線41と通信回線44とを物理的に分ける(別回線にする)ことを意味するものではない。
【0019】
また、図1の油圧ショベル1は、無線通信として衛星通信を用いているが、衛星通信に限らず、例えば、携帯電話(携帯端末機)の無線基地局を介して行う移動通信を用いてもよい。いずれにしても、センタサーバ32と油圧ショベル1との間の情報(データ)の送受信、センタサーバ32と社内コンピュータ42等との間の情報(データ)の送受信は、無線通信、有線通信を含む各種の通信回線を用いて行うことができる。さらに、情報(データ)の受け渡しは、通信回線による送受信に限定するものではなく、例えば、USBメモリ等の記憶媒体(外部記憶媒体、携帯記憶媒体等)に情報(データ)を保存し、該記憶媒体を介して行ってもよい。
【0020】
油圧ショベル1は、後述するコントローラ24および通信アンテナ25を備えている。油圧ショベル1のコントローラ24は、後述する油圧ショベル1の情報(例えば、稼働情報、使用環境情報等)を収集し、収集した情報を、油圧ショベル1の機体情報(例えば、機種、型式、号機番号、識別番号等)と共に、通信アンテナ25、通信衛星46、地上局45、通信回線44を介して、センタサーバ32に送信(出力)する。なお、油圧ショベル1が通信衛星46と通信できない作業現場で稼働している場合、または、油圧ショベル1が通信アンテナ25を備えていない場合は、油圧ショベル1の情報は、メンテナンス用のコンピュータ47を介してセンタサーバ32に送信(出力)することができる。
【0021】
ここで、メンテナンス用のコンピュータ47は、例えば、油圧ショベル1のコントローラ24と接続可能なコンピュータである。メンテナンス用のコンピュータ47は、例えば、油圧ショベル1の販売店(代理店)、サービス工場等で油圧ショベル1のメンテナンスを行うサービス担当者(メンテナンス担当者)が使用するものである。サービス担当者は、メンテナンス用のコンピュータ47を油圧ショベル1のコントローラ24に接続し、コントローラ24が収集した情報(コントローラ24のメモリ24Dに蓄積された稼働情報、使用環境情報)を、油圧ショベル1の機体情報と共に、メンテナンス用のコンピュータ47に取り込むことができる。
【0022】
なお、メンテナンス用のコンピュータ47への情報の取り込みは、例えば、油圧ショベル1のコントローラ24とメンテナンス用のコンピュータ47とを通信ケーブルで直接接続することにより行ってもよい。または、コントローラ24にUSBメモリ等の記憶媒体を接続し、一度その記憶媒体に取り込んでから、該記憶媒体を介してメンテナンス用のコンピュータ47に取り込んでもよい。
【0023】
メンテナンス用のコンピュータ47に取り込まれた情報は、例えば、サービス担当者の操作により、通信回線44を介してセンタサーバ32に送信(出力)することができる。さらに、サービス担当者は、例えば、油圧ショベル1の点検(定期点検)を行ったときはその点検結果の情報(点検情報)を、油圧ショベル1の修理を行ったときはその修理結果の情報(修理情報)を、油圧ショベル1の交換品を交換したときはその交換品の情報(交換品情報)を、メンテナンス用のコンピュータ47に入力する。
【0024】
サービス担当者は、これらの情報(点検、修理、交換に関する整備情報)も、メンテナンス用のコンピュータ47から通信回線44等を介してセンタサーバ32に送信(出力)する。なお、交換品情報は、例えば、交換した交換品の名称(交換品名)とその交換日を含むものである。交換品情報は、交換時期に達したことにより交換品を交換したときだけでなく、例えば、点検に伴って交換が必要と判断されたために交換したとき、交換品の損傷等に伴って修理により交換したとき等、交換の理由に拘わらず、交換品を交換したときに、メンテナンス用のコンピュータ47に入力する。
【0025】
次に、作業現場で稼働する油圧ショベル1について、図1に加え、図2も参照しつつ説明する。
【0026】
油圧ショベル1は、自走可能なクローラ式の下部走行体2と、該下部走行体2上に旋回可能に搭載され該下部走行体2と共に車体を構成する上部旋回体3と、該上部旋回体3の前側に俯仰動可能に設けられた作業装置4とを含んで構成されている。油圧ショベル1は、作業装置4を用いて土砂の掘削作業等を行うことができる。
【0027】
ここで、下部走行体2は、例えば、履帯2Aと、該履帯2Aを周回駆動させることにより油圧ショベル1を走行させる左,右の走行油圧モータ2B,2Cとを含んで構成されている。一方、作業装置4は、フロント(フロント装置)とも呼ばれるもので、例えば、ブーム4A、アーム4B、作業具としてのバケット4Cと、これらを駆動するブームシリンダ4D、アームシリンダ4E、作業具シリンダとしてのバケットシリンダ4Fとを含んで構成されている。油圧シリンダからなるブームシリンダ4D、アームシリンダ4E、バケットシリンダ4F、油圧モータからなる走行油圧モータ2B,2C、後述の旋回油圧モータ5は、それぞれ圧油の供給に基づいて駆動(作動)する油圧アクチュエータ(油圧機器、油圧装置)となるものである。
【0028】
上部旋回体3は、該上部旋回体3を下部走行体2に対して旋回駆動する旋回油圧モータ5、作業装置4との重量バランスをとるためのカウンタウエイト6に加え、キャブ7、エンジン8、油圧ポンプ9A,9B、パイロットポンプ(図示せず)、コントロールバルブ13、コントローラ24を含んで構成されている。
【0029】
キャブ7は、運転室を画成するもので、上部旋回体3の前部左側に設けられている。キャブ7内には、オペレータが着席する運転席(図示せず)が設けられ、該運転席の周囲には、走行用の操作レバー装置10A,10B、作業用の操作レバー装置11A,11Bが設けられている。操作レバー装置10A,10B,11A,11Bは、オペレータによる操作レバーの傾転操作に応じたパイロット信号(パイロット圧)を、コントロールバルブ13に出力するものである。
【0030】
さらに、キャブ7内には、例えば、運転席の後方の下側に位置して後述のコントローラ24が設けられている。また、キャブ7内には、運転席の近傍に位置して後述のRFID読取装置26(図3)が設けられている。RFID読取装置26は、オペレータ等が所持する非接触式ICカード、ICタグ、携帯電話、携帯鍵等の携帯機27の識別情報(携帯機27毎に与えられた固有の識別コード、ID)を読取るものである。
【0031】
エンジン8は、カウンタウエイト6の前側に横置き状態で配設されている。エンジン8は、例えばディーゼルエンジン等の内燃機関により構成されている。エンジン8の左,右方向の一側(例えば右側)には、油圧ポンプ9A,9Bおよびパイロットポンプが取付けられている。
【0032】
油圧ポンプ9A,9Bおよびパイロットポンプは、エンジン8の出力側に取付けられている。油圧ポンプ9A,9Bは、エンジン8によって駆動される。油圧ポンプ9A,9Bは、油圧ショベル1に搭載された各種の油圧アクチュエータ(左,右の走行油圧モータ2B,2C、各シリンダ4D,4E,4F、旋回油圧モータ5等)に、作動用の圧油を供給(吐出)するものである。油圧ポンプ9A,9Bは、例えば可変容量型の斜板式油圧ポンプ等により構成されている。
【0033】
一方、パイロットポンプも、油圧ポンプ9A,9Bと同様に、エンジン8によって駆動される。パイロットポンプは、操作レバー装置10A,10B,11A,11Bを介してコントロールバルブ13に、パイロット信号となる圧油(パイロット圧)を供給(吐出)するものである。
【0034】
作動油タンク12は、油圧ポンプ9A,9Bの近傍(例えば車体の前,後方向で前側)に設けられている。作動油タンク12は、油圧アクチュエータ(油圧シリンダ4D,4E,4F、油圧モータ2B,2C,5)に供給される作動油を貯溜している。
【0035】
コントロールバルブ13は、複数の方向制御弁の集合体からなる制御弁装置である。コントロールバルブ13は、キャブ7内に配置された走行用の操作レバー装置10A,10B、作業用の操作レバー装置11A,11Bのレバー操作に応じて、油圧ポンプ9A,9Bから各種の油圧アクチュエータ4D,4E,4F,2B,2C,5に供給される圧油の方向を制御する。これにより、油圧アクチュエータ4D,4E,4F,2B,2C,5は、油圧ポンプ9A,9Bから供給される圧油によって駆動される。
【0036】
ここで、コントロールバルブ13は、ブーム制御弁13A,13B、アーム制御弁13C、バケット制御弁13D、旋回制御弁13E、走行制御弁13F,13Gを含んで構成されている。オペレータが操作レバー装置11Aの操作レバーを十字の一方向に操作すると、該操作レバー装置11Aを介してアームクラウドのパイロット圧またはアームダンプのパイロット圧がアーム制御弁13Cに出力される。オペレータが操作レバー装置11Aの操作レバーを十字の他方向に操作すると、該操作レバー装置11Aを介して右旋回のパイロット圧または左旋回のパイロット圧が旋回制御弁13Eに出力される。
【0037】
オペレータが操作レバー装置11Bの操作レバーを十字の一方向に操作すると、該操作レバー装置11Bを介してブーム上げのパイロット圧またはブーム下げのパイロット圧がブーム制御弁13A,13Bに出力される。オペレータが操作レバー装置11Bの操作レバーを十字の他方向に操作すると、該操作レバー装置11Bを介してバケットクラウドのパイロット圧またはバケットダンプのパイロット圧がバケット制御弁13Dに出力される。さらに、オペレータが走行用の操作レバー装置10A,10Bの操作レバーを操作すると、該操作レバー装置10A,10Bを介して左走行のパイロット圧および右走行のパイロット圧が走行制御弁13F,13Gに出力される。
【0038】
次に、油圧ショベル1の各部位の状態量を検出するセンサについて説明する。
【0039】
図2中の各センサ14,15,17,19,21,22,23は、油圧ショベル1の各部位に設けられ、油圧ショベル1の稼働に応じて変化する状態量を検出するものである。具体的には、圧力センサ14は、操作レバー装置11Aとアーム制御弁13Cとの間(の油路)に設けられている。圧力センサ14は、アームクラウドのパイロット圧を、作業装置4の操作信号として検出する。
【0040】
圧力センサ15は、操作レバー装置11Aと旋回制御弁13Eとの間(の油路)にシャトル弁16を介して設けられている。圧力センサ15は、シャトル弁16を介して取り出された旋回のパイロット圧を、旋回操作信号として検出する。
【0041】
圧力センサ17は、操作レバー装置10A,10Bと走行制御弁13F,13Gとの間(の油路)にシャトル弁18A,18B,18Cを介して設けられている。圧力センサ17は、シャトル弁18A,18B,18Cを介して取り出された走行のパイロット圧を、走行操作信号として検出する。
【0042】
圧力センサ19は、油圧ポンプ9A,9Bとコントロールバルブ13との間(の油路)にシャトル弁20を介して設けられている。圧力センサ19は、シャトル弁20を介して取り出された油圧ポンプ9A,9Bの吐出圧力、即ち、ポンプ圧を検出する。油温センサ21は、油圧ポンプ9A,9Bと作動油タンク12との間(の油路)に設けられている。油温センサ21は、作動油の温度(油温)を検出する。
【0043】
キーセンサ22は、オペレータが操作するキースイッチ、イグニッションスイッチ、パワースイッチ等の始動停止スイッチ、即ち、車両のアクセサリ(電気機器)の通電・非通電、エンジン8の始動・停止を行う始動停止スイッチのON・OFFを検出する。回転数センサ23は、エンジン8の出力軸(クランク軸)の回転数(回転速度)を検出する。各センサ14,15,17,19,21,22,23は、それぞれコントローラ24に接続されており、各センサ14,15,17,19,21,22,23の検出信号は、コントローラ24に出力される。
【0044】
次に、機体側コントローラ、即ち、油圧ショベル1のコントローラ24について、図1および図2に加えて、図3も参照しつつ説明する。
【0045】
コントローラ24は、エンジン8、油圧ポンプ9A,9B等の油圧ショベル1に搭載された各種機器の制御を行うものである。これに加えて、コントローラ24は、油圧ショベル1の情報(例えば、稼働情報、使用環境情報等)を収集(取得)し、収集した情報を、通信アンテナ25を介してセンタサーバ32に送信(出力)するものである。コントローラ24は、例えば、マイクロコンピュータ等により構成され、入出力インターフェース24A,24B、CPU(中央処理演算部)24C、メモリ24D、タイマ24E、通信制御部24Fを含んで構成されている。メモリ24Dは、例えば、フラッシュメモリ、ROM、RAM、EEPROM等からなるもの(記憶装置)である。
【0046】
各センサ14,15,17,19,21,22,23の検出信号は、入出力インターフェース24Aを介して、コントローラ24に入力される。具体的には、作業、旋回、走行に関するパイロット圧の信号、エンジンの回転数(回転速度)の信号、アクセサリのON・OFF(エンジン8の始動・停止)の信号、ポンプ圧の信号、油温の信号が、入力情報としてコントローラ24に入力される。
【0047】
CPU24Cは、時計機能を含むタイマ24Eを用いて、入力情報を所定の稼働情報(例えば、日時と対応させた検出値)に加工し、メモリ24Dに記憶(保存、格納、蓄積)する。稼働情報は、例えば、稼働中における1秒間隔の検出値としてメモリ24Dに記憶してもよいし、1分間隔、5分間隔、10分間隔、30分間隔、または、1時間間隔の検出値としてメモリ24Dに記憶してもよい。さらには、所定時間内に所定の値(例えばピーク値)に何回達したかを、所定値を超えた時間が何時間であるかを、または、所定時間毎(例えば、10分間毎、30分間毎)の平均値を、メモリ24Dに記憶する構成としてもよい。メモリ24Dに記憶する検出値(状態量)のデータをどのようなデータとするか、さらに、データ量をどの程度の頻度で取得するかは、後述する交換品の交換時期の予測の精度を確保でき、かつ、メモリ24Dに記憶可能なデータ量として設定することができる。
【0048】
いずれにしても、油圧ショベル1が稼働しているときは、その稼働情報、例えば、作業のパイロット圧、旋回のパイロット圧、走行のパイロット圧、ポンプ圧、作動油温度、エンジン回転数、エンジン稼働時間(または、キーON(アクセサリON)からキーOFF(アクセサリOFF)までの時間の積算値であるアワメータ)がメモリ24Dに逐次格納される。さらに、メモリ24Dには、後述する図5に示す処理フローを実行するための処理プログラムが予め格納されている。CPU24Cは、図5の処理プログラム(S6の処理)に基づいて、メモリ24Dに格納された稼働情報を、通信制御部24Fを介して管理センタ31のセンタサーバ32に定期的に出力(送信)する。
【0049】
例えば、油圧ショベル1の作業現場が通信衛星46と通信(データ送信)を行うことができる現場であれば、通信アンテナ25を介して一日に一回、所定時刻に、前回の送信から現在までの間に蓄積された稼働情報をセンタサーバ32に送信する。このとき、稼働情報と共に、油圧ショベル1の機体情報(機種、型式、号機番号、識別番号等の機体を識別するための情報)、後述する使用環境情報(オペレータ、使用者(使用会社)、使用者の業種、使用者の地域、作業内容、作業地域等の使用態様に関する情報)を送信することができる。
【0050】
一方、通信衛星46との通信を行うことができない作業現場の場合、または、油圧ショベル1が通信アンテナ25を備えていない場合は、例えば、油圧ショベル1がメンテナンス工場に運ばれたときに、メモリ24Dに格納された稼働情報および使用環境情報を、機体情報と共に、メンテナンス用のコンピュータ47に取り込む(ダウンロードする)。コンピュータ47への取り込みは、コントローラ24の入出力インターフェース24Bにコンピュータ47、または、USBメモリ等の記憶媒体を接続することにより行うことができる。コンピュータ47に取り込まれた機体情報、稼働情報および使用環境情報は、コンピュータ47からセンタサーバ32に送信される。なお、コントローラ24により実行される図5の処理については、後述する。
【0051】
次に、コントローラ24に接続されたRFID読取装置26について説明する。
【0052】
読取装置としてのRFID読取装置26は、例えば、油圧ショベル1のキャブ7内に設けられ、コントローラ24の入出力インターフェース24Aに接続されている。RFID読取装置26は、RFID(Radio Frequency Identification)による認証を行うもので、例えば、オペレータが所持する非接触式ICカード、ICタグ、携帯電話、携帯鍵等の携帯機27との間で無線通信(近距離無線通信)を行う。携帯機27には、固有の識別情報(携帯機27毎に与えられた固有の識別コード、認証ID)が記憶(設定、登録)されており、例えば、油圧ショベル1を運転する各オペレータは、互いに異なる識別情報が記憶されたものをそれぞれ所持している。オペレータは、例えば、油圧ショベル1を稼働(運転)するときに、自分の携帯機27をRFID読取装置26にかざすと、RFID読取装置26は、携帯機27に記憶された識別情報を読取る。
【0053】
RFID読取装置26により読取られた携帯機27の識別情報は、コントローラ24のメモリ24Dに格納される。携帯機27の識別情報は、油圧ショベル1の使用態様となる使用環境情報、具体的には、油圧ショベル1を運転しているオペレータが誰であるかのオペレータ情報(例えば、オペレータ名、オペレータの性別、オペレータの年齢、オペレータが所属する組織名、オペレータの国籍等)に対応するものである。携帯機27の識別情報は、使用環境情報として、機体情報、稼働情報と共に、センタサーバ32に送信される。
【0054】
ここで、使用環境情報は、携帯機27の識別情報のまま、センタサーバ32に送信することができる。即ち、センタサーバ32の記憶装置36には、携帯機27の識別情報とその識別情報に対応するオペレータ情報との対応関係を予め登録(記憶、保存)しておく。この場合、センタサーバ32は、送信された識別情報と予め登録された対応関係とから、識別情報を油圧ショベル1のオペレータ情報に自動的に変換し、機体情報、稼働情報と共に記憶することができる。
【0055】
これに対し、コントローラ24のメモリ24Dに、携帯機27の識別情報とその識別情報に対応するオペレータ情報との対応関係を予め登録しておくこともできる。この場合には、コントローラ24は、RFID読取装置26で読取った識別情報をオペレータ情報に自動的に変換してメモリ24Dに格納し、そのオペレータ情報を、センタサーバ32に送信することができる。
【0056】
油圧ショベル1の使用環境情報は、油圧ショベル1の使用態様の情報であり、第1の実施の形態では、油圧ショベル1のオペレータ情報を使用環境情報としている。そして、センタサーバ32またはコントローラ24では、携帯機27の識別情報に対応するオペレータ情報を、後述する交換品の交換時期の予測に用いる構成としている。ここで、使用環境情報となる油圧ショベル1の使用態様は、油圧ショベル1のオペレータ情報に限るものではない。油圧ショベル1の使用態様の情報としては、例えば、油圧ショベル1の使用者(所有者、管理者でもよい)の情報(使用者情報)、使用者の業種の情報(業種情報)、使用者の地域の情報(地域情報)、作業内容(工事内容、施工内容)の情報(作業情報、工事情報)、作業地域の情報(作業地域情報)等を挙げることができる。
【0057】
このため、これらの使用者情報、業種情報、地域情報、作業情報、作業地域情報等を、オペレータ情報と共に、または、オペレータ情報に代えて、用いることもできる。この場合には、センタサーバ32(の記憶装置36)またはコントローラ24(のメモリ24D)に、携帯機27の識別情報に対応する情報として、オペレータ情報と共に、または、オペレータ情報に代えて、使用者情報、業種情報、地域情報、作業情報、作業地域情報等を登録しておく。いずれの場合も、センタサーバ32またはコントローラ24への登録、即ち、携帯機27の識別情報とこれに対応する使用環境情報の登録は、例えば、社内コンピュータ42、ユーザ側コンピュータ43、メンテナンス用のコンピュータ47を用いて行う構成とすることができる。
【0058】
なお、RFID読取装置26は、コントローラ24に内蔵する構成としてもよい。また、RFID読取装置26は、油圧ショベル1に固定的に設けてもよいし、取付け、取外し可能に設ける構成としてもよい。即ち、読み取りが必要なときにのみ、RFID読取装置26を油圧ショベル1に持ち運び、RFID読取装置26とコントローラ24とを例えばUSBケーブルで接続し、携帯機27をRFID読取装置26で読み取らせるようにしてもよい。この場合には、1個のRFID読取装置26を複数の油圧ショベル1で共用することができる。このため、油圧ショベル1毎にRFID読取装置26を設ける構成と比較して、コストを低減することができる。
【0059】
さらに、油圧ショベル1のコントローラ24は、RFID読取装置26で読取られた携帯機27の識別情報に基づいて、油圧ショベル1の起動(エンジン8の始動)を許可するか否かの判定を行う起動判定手段(後述する図5のS2およびS7の処理)を備える構成としてもよい。即ち、コントローラ24(のメモリ24D)には、予め油圧ショベル1の起動を許可する識別情報を登録しておく。そして、コントローラ24は、RFID読取装置26で読取られた識別情報が予め登録されたものであるときは、エンジン8の始動を許可し、登録されたものでないときは、エンジン8の始動を禁止するように、エンジン8を制御してもよい。この場合には、携帯機27に、使用環境情報(オペレータ情報)を取得するための機能に加え、セキュリティの機能も持たせることができる。
【0060】
ところで、油圧ショベル1は、様々な部品により構成されているが、その部品の中には、寿命に至ると交換が必要になる交換品(メンテナンス対象部品)がある。このような交換品としては、例えば、作業装置4を構成するアーム4B、バケット4C、これらを連結する連結ピン、連結ピンを支承するブッシュ(軸受筒)、連結ピンとブッシュを潤滑するグリス、バケット爪、旋回油圧モータ5と減速機構とを含んで構成される旋回装置のミッションオイル、旋回装置のミッションシール、旋回軸受(旋回輪)、旋回装置のグリス、走行油圧モータ2B,2Cと減速機構とを含んで構成される走行装置のミッションオイル、走行装置のミッションシール、走行油圧モータ2B,2C、走行ローラ、履帯2A、履帯2Aのシュー、エンジンオイル、エンジンオイルフィルタ、エアフィルタ、作動油、作動油フィルタ(オイルフィルタ)、油圧ホース等が挙げられる。
【0061】
このような交換品は、交換時期になると、油圧ショベル1の点検、修理、整備等を行うメンテナンス工場(サービス工場)で新品に交換される。このとき、サービス担当者(メンテナンス担当者)は、交換品を交換したときに、その交換品の情報となる交換品情報(例えば、交換品名と交換日)を、メンテナンス用のコンピュータ47に入力(登録)する。交換品情報は、サービス担当者の操作により、メンテナンス用のコンピュータ47から通信回線44等を介してセンタサーバ32に送信(出力)され、センタサーバ32に格納(保存)される。後述するように、センタサーバ32は、交換品情報と稼働情報と使用環境情報とを用いて、交換品の交換時期の予測を行う。
【0062】
なお、交換品情報は、メンテナンス用のコンピュータ47に入力する構成に代えて、例えば、油圧ショベル1のコントローラ24(のメモリ24D)に入力(登録)する構成とすることもできる。この場合は、例えば、サービス担当者は、交換品の交換を行うと、油圧ショベル1のモニタ(図示)と入力装置(入力スイッチ)とを用いて、交換品情報をコントローラ24(のメモリ24D)に入力(格納)する。
【0063】
コントローラ24は、メモリ24Dに格納された交換品情報を、例えば、稼働情報、使用環境情報と共に、センタサーバ32に送信する。油圧ショベル1の点検情報、修理情報についても、交換品情報と同様に、コントローラ24に入力する構成としてもよい。さらに、交換品情報、点検情報、修理情報は、例えば、ユーザ側コンピュータ43に入力し、該ユーザ側コンピュータ43を介してセンタサーバに送信(出力)する構成としてもよい。
【0064】
次に、管理センタ31のセンタサーバ32について、図1に加え、図4も参照しつつ説明する。
【0065】
センタサーバ32は、例えば、サーバコンピュータ、ホストコンピュータ、メインフレーム、汎用コンピュータ等の大型コンピュータにより構成されている。センタサーバ32は、油圧ショベル1の稼働情報、交換品情報、使用環境情報を、それぞれの油圧ショベル1毎の情報として格納(保存、蓄積)する。また、センタサーバ32は、例えば、これらの情報をまとめてリスト(一覧表)としたデータレポート(日報、報告書)を、社内コンピュータ42、ユーザ側コンピュータ43、メンテナンス用のコンピュータ47に出力(送信)する。
【0066】
データレポートは、例えば、油圧ショベル1の製造業者の従業員、油圧ショベル1の使用者、サービス担当者等のデータレポートを必要とする者が、コンピュータ42,43,47を用いてセンタサーバ32に接続し、パスワード等の入力を条件に出力される(データレポートの閲覧、取得が可能になる)構成とすることができる。また、データレポートは、それを必要としている者に対し、例えば定期的に(例えば、毎日、毎週、毎月)メール送信により出力する構成とすることもできる。
【0067】
さらに、センタサーバ32は、油圧ショベル1の交換品、即ち、寿命に至ると交換が必要になるメンテナンス対象部品の交換時期を予測する。予測した交換時期は、例えば、データレポートに含めて、または、交換時期予測情報として単独で、その情報を必要としている者に提供する(コンピュータ42,43,47に出力する)。
【0068】
ここで、特許文献1には、交換品(メンテナンス対象部品)の交換時期を、油圧ショベル1の稼働情報(パイロット圧、ポンプ圧、作動油温度、エンジン稼働時間、エンジン回転数)と交換品情報(交換品名、交換日)とを用いて予測する技術が記載されている。これに対し、本実施の形態では、特許文献1で用いられる稼働情報と交換品情報だけでなく、これら稼働情報と交換品情報に加え、オペレータ情報となる使用環境情報も用いて、交換品の交換時期を予測する。
【0069】
即ち、交換品の交換時期の予測は、例えば、油圧ショベル1のオペレータ別の稼働特性、油圧ショベル1の使用者別の稼働特性、使用者の業種別の稼働特性、使用者の地域別の稼働特性、油圧ショベル1の作業内容(工事内容、施工内容)別の稼働特性、作業地域別の稼働特性等の使用環境(使用態様)による特性を考慮すると、より精細(詳細)な予測、より精度の高い予測を行うことができる。例えば、オペレータ別の稼働特性は、同一作業でも、オペレータによって調整するエンジン回転数等の違いから、ポンプ圧、作動温度等に違いが生じる。そして、この違いに基づいて、交換品(例えば、油圧ホース)に与える負荷量(総熱負荷量、総ポンプ負荷量)も異なり、交換品の寿命時期(交換時期)に影響する。このため、交換品の寿命時期を算出するためには、オペレータ別の稼働特性を考慮する必要がある。そこで、第1の実施の形態では、オペレータの履歴(オペレータ別の稼働特性)を考慮して、交換品の交換時期を予測する。
【0070】
このために、センタサーバ32は、例えば、入出力インターフェース33,34と、CPU35と、HDD(ハードディスクドライブ)等の大容量記憶媒体からなりデータベースを形成する記憶装置36と、部品寿命情報処理部37と、社外向け比較判定処理部38と、社内向け比較判定処理部39とを含んで構成されている。入出力インターフェース33は、油圧ショベル1のコントローラ24、メンテナンス用のコンピュータ47等と接続するためのものである。センタサーバ32には、入出力インターフェース33を介して、コントローラ24またはコンピュータ47から油圧ショベル1の情報が送信(入力)される。具体的には、センタサーバ32には、油圧ショベル1の稼働情報および使用環境情報が、機体情報と共に、定期的に(例えば、一日一回所定時刻に)入力される。
【0071】
また、油圧ショベル1の交換品が交換されると、例えば、サービス担当者の操作により、メンテナンス用のコンピュータ47等からセンタサーバ32に交換品情報が送信(入力)される。センタサーバ32に送信された情報は、記憶装置36に逐次格納される。さらに、記憶装置36には、後述する図6に示す処理フローを実行するための処理プログラム、携帯機27の識別情報とオペレータ情報(使用環境情報)との対応関係等が予め格納されている。
【0072】
ここで、機体情報は、油圧ショベル1を特定(識別)するための情報であり、例えば、油圧ショベル1の機種、型式、号機番号、識別番号の少なくとも一が含まれる情報である。油圧ショベル1の稼働情報は、例えば、特許文献1の稼働情報と同様のものである。即ち、稼働情報は、油圧ショベル1を稼働(運転)しているときに変化する状態量と稼働時間の情報であり、例えば、油圧ショベル1の各部位の検出値(各センサ14,15,17,19,21,22,23から検出される検出値)と油圧ショベル1の稼働時間とを含む情報である。
【0073】
より具体的には、稼働情報は、作業のパイロット圧、旋回のパイロット圧、走行のパイロット圧、ポンプ圧、作動油温度、エンジン回転数の少なくとも一の検出値と、稼働時間となるエンジン稼働時間および/またはアワメータとが含まれる情報である。一方、使用環境情報は、第1の実施の形態では、油圧ショベル1を運転しているオペレータが誰であるかのオペレータ情報であり、例えば、オペレータ名、オペレータの性別、オペレータの年齢、オペレータが所属する組織名、オペレータの国籍の少なくとも一が含まれる情報である。交換品情報は、交換品の交換情報であり、例えば、交換品の使用開始日となる交換品を交換した日付とその交換品の名称(交換品名)を含む情報である。なお、油圧ショベル1が出荷されてから交換品の交換が行われる前は、例えば、油圧ショベル1が新品(新車)として出荷された日、または、油圧ショベル1が使用者に引き渡された日を、交換品の日付の初期値(交換品の使用開始日)として、予め記憶装置36に格納しておく。
【0074】
CPU35は、入力された情報を、油圧ショベル1毎に、または、それぞれの情報毎に、記憶装置36に格納、蓄積する。ここで、使用環境情報は、RFID読取装置26で読取られた携帯機27の識別情報としてセンタサーバ32に入力される。CPU35は、記憶装置36に予め登録された携帯機27の識別情報とその識別情報に対応するオペレータ情報との対応関係に基づいて、その入力された識別情報を油圧ショベル1のオペレータ情報に自動的に変換し、記憶装置36に格納、蓄積する。
【0075】
さらに、CPU35は、記憶装置36に格納した情報を加工し、例えば、これらの情報をまとめたデータレポートを作成し、記憶装置36に格納する。一方、部品寿命情報処理部37は、記憶装置36に格納された情報(機体情報、稼働情報、使用環境情報)に基づいて、油圧ショベル1の交換品の交換時期を予測する。部品寿命情報処理部37で予測された交換品の交換時期も、交換品名と対応させて記憶装置36に格納される。この場合、その交換品名と交換時期の情報は、データレポートに含めて、または、交換時期予測情報として単独で、記憶装置36に格納することができる。
【0076】
さらに、センタサーバ32は、交換品名および交換時期の情報が含まれるデータレポートおよび/または交換時期予測情報を、入出力インターフェース34を介して、社内コンピュータ42およびユーザ側コンピュータ43に出力(送信)する。この場合、社外向け比較判定処理部38および社内向け比較判定処理部39では、記憶装置36に格納、蓄積された情報のうちから必要なものを選別し、社内コンピュータ42およびユーザ側コンピュータ43に出力する。
【0077】
例えば、社外向け比較判定処理部38では、部品寿命情報処理部37にて算出した部品寿命が、予め設定した時期、寿命時期に達しているか否かを判定する。社外向け比較判定処理部38で達していると判定されたときは、例えば、その旨を、データレポートとして、または、交換時期予測情報として、ユーザ側コンピュータ43に送信する。
【0078】
社内向け比較判定処理部39では、部品寿命情報処理部37にて算出した部品寿命が、予め設定した時期、寿命時期に達しているか否かを判定する。社内向け比較判定処理部39で達していると判断されたときは、社外向け比較判定処理部38にてユーザ側コンピュータ43に送信された情報を加えたものを、社内コンピュータ42に送信する。
【0079】
このように実施の形態では、センタサーバ32は、油圧ショベル1の各部位の検出値と稼働時間とを含む稼働情報が記憶される稼働情報記憶手段(記憶装置36)と、油圧ショベル1の交換品の使用開始日を含む交換品情報が記憶される交換品情報記憶手段(記憶装置36)と、稼働情報および交換品情報とは別の情報である、油圧ショベル1の使用態様の一つであるオペレータ情報(オペレータ履歴)が使用環境情報として記憶される使用環境記憶手段(記憶装置36)と、稼働情報と交換品情報とに加えて使用環境情報も用いて交換品の交換時期を予測する交換時期予測手段(部品寿命情報処理部37)と、交換時期予測手段により予測された交換時期を、交換品の交換予測情報として出力する交換予測情報出力手段(社外向け比較判定処理部38、社内向け比較判定処理部39)とを備えている。
【0080】
この場合に、油圧ショベル1には、固有の識別情報(使用環境情報を特定するための重複しない識別番号、識別コード、ID)が記録された携帯機27の識別情報を読取るRFID読取装置26が設けられている。そして、使用環境記憶手段(記憶装置36)には、RFID読取装置26により読取られた携帯機27の識別情報に対応する使用態様の少なくとも一つであるオペレータ情報が、使用環境情報として記憶される構成となっている。なお、センタサーバ32により実行される図6の処理については、後述する。
【0081】
次に、部品寿命情報処理部37で行う交換品の交換時期の予測について、図7ないし図10を参照しつつ説明する。
【0082】
交換時期予測手段としての部品寿命情報処理部37は、稼働情報と交換品情報とを用いて算出される交換品の現在の寿命の進行の程度(劣化度合い)と、稼働情報と使用環境情報とを用いて算出される交換品の将来の寿命の進行の程度(劣化度合い)とに基づいて、交換品の交換時期を予測(算出)する。即ち、交換品の交換時期の算出(予測)には、「交換品の取付け後から現時点までどのように交換品に負荷が加わり、寿命がどの程度進行しているかの算出」と、「油圧ショベル1が今後どのように使用され、どのように交換品に負荷が加わり、いつ寿命に達するかの算出」との2点を考慮する必要がある。現時点までどの程度寿命が進行したかの算出は、交換品における寿命に影響するパラメータを稼働情報から読み取ったデータに基づいて行うことができる。一方、今後の寿命の進行は、油圧ショベル1がこれまでどのオペレータに使用され、どのような負荷で稼働していたかに基づいて、今後の稼働情報、部品に加わる負荷を予測することにより行うことができる。
【0083】
例えば、交換品を油圧ホースとし、油圧ホースの交換時期の予測(算出)について説明する。ここで、油圧ホースの寿命時期は、下記の数1式で表される寿命判定値yまたは数2式で表される寿命判定値Yが、新品のときの値に対応する初期値αから寿命に達したときの値に対応する使用限界値βになる時期として算出することができる。なお、油圧ホースの寿命時期は、数1式と数2式とのうちのいずれか一方のみを用いて算出してもよいし、両方を用いて算出してもよい。両方を用いる場合には、寿命時期が短く(寿命の進行が大きく)算出された方の値を採用することができる。また、図10は、寿命判定値(yまたはY)の変化と、初期値α、使用限界値βとの関係の一例を、簡略的に示している。
【0084】
【数1】
【0085】
数1式は、熱負荷値に基づく寿命判定値である。数1式中、Tは総熱負荷量(℃×h)であり、a、b、c、dはそれぞれ予め実験、シミュレーション等で求めた定数である。図7に示すように、総熱負荷量Tは、稼働情報から得られる作動油温度の積算値として求めることができる。
【0086】
【数2】
【0087】
数2式は、圧力負荷値に基づく寿命判定値である。数2式中、Pは総ポンプ負荷量(MPa×h)であり、A、B、C、Dはそれぞれ予め実験、シミュレーション等で求めた定数である。図8に示すように、総ポンプ負荷量(総圧力量)Pは、稼働情報から得られるポンプ圧力の積算値として求めることができる。
【0088】
ここで、油圧ホースの寿命が現時点までどの程度進行したかは、油圧ホースを取付けたとき(新品のとき)から現時点までの総熱負荷量Tを数1式に代入することにより求めることができる。例えば、図7に示すオペレータAの運転による総熱負荷量TAとオペレータBの運転による総熱負荷量TBとの両方を数1式に代入することにより求めることができる。これにより、例えば、図10中に実線で表された特性線51を得ることができる。なお、図10では、特性線51を寿命の進行の平均線として示している。
【0089】
また、油圧ホースの寿命が現時点までどの程度進行したかを、油圧ホースを取付けたときから現時点までの総ポンプ負荷量Pを数2式に代入することにより求めることもできる。例えば、図8に示すオペレータAの運転による総圧力量PAとオペレータBの運転による総熱負荷量PBとの両方を数2式に代入することにより求めることができる。この場合も、例えば、図10中の特性線51を得ることができる。
【0090】
次に、今後の油圧ホースの寿命の進行は、図7に示すオペレータ別の総熱量および/または図8に示すオペレータ別の総圧力量と、図9に示す油圧ショベル1の直近のオペレータ比率(オペレータ運転比率)とから、単位時間当たりの熱量および/または圧力量を求める。そして、その値を、数1式および/または数2式に代入することで、図10中の一点鎖線の特性線52、または、特性線53を得ることができる。
【0091】
ここで、特性線52は、図9に示す過去100時間のオペレータ比率で今後も運転が継続されると仮定した場合の寿命の進行に対応する。特性線53は、図9に示す過去200時間(過去300時間)のオペレータ比率で今後も運転が継続されると仮定した場合の寿命の進行に対応する。そして、使用限界値βとなるときのアワメータを算出することにより、交換品の交換時期を予測することが可能となる。なお、図10中、細い破線の特性線54は、ホース交換時点から現時点までと同じ程度で寿命が進行すると仮定した場合の寿命の進行に対応する。このように、第1の実施の形態では、使用環境情報である直近のオペレータ情報(オペレータ比率)を用いることで、特性線52、53を得ることができ、交換品の交換時期のより精細(詳細)な予測、より精度の高い予測を行うことができる。
【0092】
さらに、油圧ショベル1を運転する今後のオペレータについて事前に分かるときは、そのオペレータの情報を、寿命の予測に反映させることもできる。即ち、例えば、今後はオペレータAのみが運転することが明らかな場合は、オペレータAによる単位時間当たりの熱量および/または圧力量を求め、数1式および/または数2式に代入することで、特性線55を得ることができる。このため、この面からも、交換品の交換時期のより精細(詳細)な予測、より精度の高い予測を行うことができる。
【0093】
本実施の形態による油圧ショベルの交換品管理システムは上述の如き構成を有するもので、次に、その動作について説明する。
【0094】
油圧ショベル1のオペレータは、キャブ7に搭乗し、携帯機27をRFID読取装置26にかざす。油圧ショベル1のコントローラ24は、メモリ24Dに携帯機27の識別情報を使用環境情報として格納(保存)すると共に、エンジン8の始動を許可する。オペレータは、パワースイッチ等の始動停止スイッチを操作し、エンジン9を起動させると、エンジン9によって油圧ポンプ9A,9Bが駆動される。
【0095】
これにより、油圧ポンプ9A,9Bから吐出した圧油は、キャブ7内に設けられた操作レバー装置10A,10B,11A,11Bのレバー操作に応じて、各種の油圧アクチュエータ4D,4E,4F,2B,2C,5に向けて吐出する。これにより、油圧ショベル1は、下部走行体2による走行動作、上部旋回体3の旋回動作、作業装置4による掘削作業等を行うことができる。
【0096】
このとき、油圧ショベル1のコントローラ24には、各センサ14,15,17,19,21,22,23の検出信号が入力される。コントローラ24は、検出信号に基づいて、作業のパイロット圧、旋回のパイロット圧、走行のパイロット圧、ポンプ圧、作動油温度、エンジン回転数、エンジン稼働時間(またはアワメータ)を、稼働情報としてメモリ24Dに逐次格納する。
【0097】
メモリ24Dに格納された稼働情報および使用環境情報(携帯機27の識別情報)は、機体情報と共に、センタサーバ32に定期的に(例えば、一日一回所定時刻に)送信される。センタサーバ32は、受信した油圧ショベル1の稼働情報および使用環境情報を、それぞれの油圧ショベル1毎の情報として格納(保存、蓄積)する。このとき、使用環境情報は、携帯機27の識別情報に対応するオペレータ情報としてセンタサーバ32に格納される。また、センタサーバ32には、油圧ショベル1の交換品が交換されると、メンテナンス用のコンピュータ47等から交換品情報が送信される。センタサーバ32は、交換品情報も、稼働情報および使用環境情報と同様に、油圧ショベル1毎の情報として格納する。
【0098】
センタサーバ32は、例えば、油圧ショベル1の情報(稼働情報、交換品情報、使用環境情報)をまとめたデータレポートを、該データレポートを必要としている者に提供する。例えば、データレポートを、定期的に社内コンピュータ42、ユーザ側コンピュータ43、メンテナンス用のコンピュータ47に出力(送信)する。さらに、センタサーバ32は、油圧ショベル1の稼働情報と交換品情報と使用環境情報とを用いて交換品の交換時期を予測し、予測した交換時期の情報を、データレポートに含めて、または、交換時期予測情報として単独で、その情報を必要としている者に提供する(例えば、コンピュータ42,43,47に出力する)。
【0099】
次に、油圧ショベル1のコントローラ24で行われる処理について、図5の流れ図を用いて説明する。ここで、図5の処理は、例えば、コントローラ24に通電している間、所定の制御周期で繰り返し実行されるものである。また、図5および後述の図6では、流れ図のステップを「S」で示しており、例えば「S1」は、ステップ1に対応するものである。
【0100】
コントローラ24に通電がされることにより、図5の制御処理が開始されると、S1では、RFID読取装置26で携帯機27の識別情報が読み取られたか否かを判定する。S1で、「NO」、即ち、読み取られていないと判定された場合は、S5に進む。一方、S1で、「YES」、即ち、読み取られたと判定された場合は、S2に進む。S2では、読み取られた識別情報が予め登録されたものであるか否かを判定する。
【0101】
S2で、「YES」、即ち、予め登録されたものであると判定された場合は、S4に進む。ここで、携帯機27の識別情報に基づいて油圧ショベル1の起動(エンジン8の始動)を許可するか否かの判定を行う構成の場合は、S2で「YES」と判定されると、S7に進む。S7では、エンジン8の始動を許可する。即ち、S7の処理を行うときに、エンジン8が停止している場合は、エンジン8の始動を許可し、S4に進む。なお、エンジン8が既に始動している場合には、既に許可されているため、そのまま(なにもせず)S4に進む。
【0102】
一方、S2で、「NO」、即ち、予め登録されたものでないと判定された場合は、S3に進む。S3では、運転席の近傍に設けられたモニタに、携帯機27が登録されたものでない旨を表示し、S4に進む。S4では、携帯機27の識別情報をメモリ4Dに格納し、S5に進む。S5では、所定時間が経過したか否か(または、予め設定した所定の時刻になったか否か)を判定する。即ち、S5では、前回のS6の処理が行われてから所定時間が経過したか否か、具体的には、メモリ24Dに格納された稼働情報と使用環境情報(携帯機27の識別情報)とを機体情報と共にセンタサーバ32に送信してから所定時間(例えば1日)が経過したか否かを判定する。所定時間(所定の時刻)は、稼働情報をセンタサーバ32に定期的に送信する時間として適切な時間となるように予め設定することができる。
【0103】
S5で、「YES」、即ち、所定時間が経過したと判定された場合は、S6に進み、データを送信する。即ち、S6では、メモリ24Dに格納された稼働情報と使用環境情報(携帯機27の識別情報)を、機体情報と共にセンタサーバ32に送信する。S6で、センタサーバ32への送信を行った場合、または、S5で「NO」と判定された場合は、リターンする(スタートに戻り、S1以降の処理を繰り返す)。
【0104】
次に、センタサーバ32で行われる処理について、図6の流れ図を用いて説明する。ここで、図6の処理は、例えば、センタサーバ32に通電している間、所定の制御周期で繰り返し実行されるものである。
【0105】
センタサーバ32に通電がされることにより、図6の制御処理が開始されると、S11では、データを受信したか否かを判定する。即ち、S11では、油圧ショベル1のコントローラ24および/またはメンテナンス用のコンピュータ47から稼働情報、使用環境情報(携帯機27の識別情報)、交換品情報を受信したか否かを判定する。S11で、「YES」、即ち、データを受信したと判定されると、S12に進み、そのデータを記憶装置36に格納する。即ち、S12では、受信したデータに対応する、稼働情報、使用環境情報、交換品情報を記憶装置36に格納する。このとき、使用環境情報は、携帯機27の識別情報からこの識別情報に対応するオペレータ情報に自動的に変換して記憶する。
【0106】
S12で記憶装置36に受信したデータを格納した場合、または、S11で「NO」と判定された場合は、S13に進み、所定時間が経過したか否か(または、予め設定した所定の日時になったか否か)を判定する。即ち、S13では、前回のS14およびS15の処理が行われてから所定時間が経過したか否か、具体的には、交換品の交換時期を予測すると共にその結果を記憶装置36に格納してから所定時間(例えば1日、1週間、1月)が経過したか否かを判定する。所定時間(所定の日時)は、交換品の交換時期の予測を定期的に行う時間として適切な時間となるように予め設定することができる。
【0107】
S13で、「YES」、即ち、所定時間が経過したと判定された場合は、S14に進む。一方、S13で、「NO」、即ち、所定時間が経過していないと判定された場合は、S14以降の処理を行わずに、リターンする(スタートに戻り、S11以降の処理を繰り返す)。S14では、記憶装置36に格納された現時点までの稼働情報、使用環境情報、交換品情報に基づいて、交換品の交換時期(交換品の寿命の進行の程度、寿命に至る時期となるメンテナンス時期)を算出する。この場合、全ての交換品の交換時期を算出してもよいし、交換時期が近い交換品のみ交換時期を算出してもよい。いずれの場合も、S14で交換品の交換時期を算出したら、S15に進み、S14の算出結果を記憶装置36に格納する。
【0108】
続くS16以降の処理は、交換品の交換時期が近付いている等により、その旨の連絡が必要か否かを判定し、必要と判定された場合には、その旨(交換時期が近付いている旨)を連絡する処理となる。まず、S16では、製造業者の社内に向けて連絡が必要か否かを判定する。即ち、交換品の交換時期が近付いた場合は、社内では交換品の製造等の準備が必要になる。そこで、S16では、その準備に要する時間と交換時期とを考慮して、社内向けの連絡が必要か否かを判定する。
【0109】
S16で、「YES」、即ち、社内向けの連絡が必要であると判定された場合には、S17に進み、社内向けの連絡を行う。例えば、S14で算出された交換時期とその時期が近付いている旨の注意等を含む社内向けのデータレポートを、社内コンピュータ42に出力する。また、交換品の準備を行う担当者に、交換時期が近付いている旨のメールを出力(送信)することもできる。S17で社内向けの連絡を行った場合、または、S16で「NO」と判定された場合は、S18に進む。
【0110】
S18では、油圧ショベル1を使用する使用者に向けて連絡が必要か否かを判定する。即ち、交換品を交換するときは、使用者は、例えば、油圧ショベル1をメンテナンス工場に搬送する等の必要がある。また、交換が終了するまでは、使用者は、油圧ショベル1を使用できなくなる。このため、使用者は、交換品を交換するための事前調整が必要になる。そこで、S18では、その事前調整に要する時間と交換時期とを考慮して、社外向けの連絡が必要か否かを判定する。
【0111】
S18で、「YES」、即ち、社外向けの連絡が必要であると判定された場合には、S19に進み、社外向けの連絡を行う。例えば、S14で算出された交換時期とその時期が近付いている旨の注意等を含む社外向けのデータレポートを、ユーザ側コンピュータ43に出力する。また、使用者に、交換時期が近付いている旨のメールを出力(送信)することもできる。さらに、必要に応じて、交換品の交換を行うサービス担当者(メンテナンス担当者)に、交換時期が近付いている旨のメールを出力(送信)してもよい。S19で社外向けの連絡を行った場合、または、S18で「NO」と判定された場合は、リターンする。
【0112】
(1).かくして、実施の形態によれば、交換時期予測手段としてのセンタサーバ32(部品寿命情報処理部37)は、図6のS14の処理により、稼働情報と交換品情報とに加え、使用環境情報も用いて、交換品の交換時期を予測する。このため、交換品の交換時期の予測に、油圧ショベル1の使用態様の履歴(オペレータの履歴)、および、その履歴から想定される今後の使用態様(直近のオペレータ比率)等を考慮することができる。即ち、オペレータ毎の負荷頻度、使用特性を考慮して、交換品の寿命、交換品の交換時期(メンテナンスタイミング)を予測することができる。換言すれば、それぞれのオペレータに応じて異なる油圧ショベル1の各部に対する負荷を考慮して、交換時期を予測することができる。このため、より精細(詳細)な予測、より精度の高い予測を行うことができる。しかも、必要に応じて、稼働情報と使用環境情報とから、例えば、オペレータ毎の燃費、操作時における癖等を評価することもできるため、これらをオペレータにフィードバックすることができる。この場合には、オペレータが、例えば、操作の仕方を見直す等により、燃費を向上することができる。
【0113】
(2).実施の形態によれば、交換時期予測手段としてのセンタサーバ32(部品寿命情報処理部37)は、図10を用いて説明したように、稼働情報と交換品情報とを用いて算出される交換品の現在の寿命の進行の程度(特性線51)と、稼働情報と使用環境情報とを用いて算出される交換品の将来の寿命の進行の程度(特性線52,53,55)とに基づいて、交換品の交換時期(使用限界βに達するアワメータ)を予測する。このため、将来の寿命の進行の程度の算出に、油圧ショベル1の使用態様の履歴(オペレータの履歴)から想定される今後の使用態様(直近のオペレータ比率)等を考慮することで、将来の寿命の進行の程度を、より精細(詳細)、かつ、より高い精度で予測することができる。
【0114】
(4).実施の形態によれば、油圧ショベル1には、読取装置としてのRFID読取装置26が設けられている。そして、使用環境記憶手段としてのセンタサーバ32の記憶装置36には、RFID読取装置26により読取られた携帯機27の識別情報に対応する使用態様の少なくとも一つ(オペレータ情報)が、使用環境情報として記憶される。このため、オペレータは、携帯機27の識別情報をRFID読取装置26で読取らせることで、その携帯機27の識別情報に応じた使用環境情報(オペレータ情報)をセンタサーバ32の記憶装置36に自動的に記憶させることができる。これにより、使用環境情報を記憶装置36に記憶させるために要する労力を低減することができる。
【0115】
(5).実施の形態によれば、油圧ショベル1のコントローラ24は、図5のステップS2およびS7の処理(起動判定手段)により、RFID読取装置26で読取られた携帯機27の識別情報に基づいて、油圧ショベル1の起動を許可するか否かの判定を行う。このため、オペレータは、携帯機27の識別情報をRFID読取装置26で読取らせることで、油圧ショベル1を起動させるための作業と、使用環境情報をセンタサーバ32の記憶装置36に記憶させるための作業との両方を行うことができる。これにより、使用環境情報を記憶装置36に記憶させるための作業を、油圧ショベル1を起動させる作業と別に行う必要がなくなり、この面からも、労力を低減することができる。
【0116】
次に、図11は本発明の第2の実施の形態を示している。第2の実施の形態の特徴は、使用環境情報を建設機械の使用者(使用会社)としたことにある。なお、第2の実施の形態では、上述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0117】
例えば、複数の油圧ショベル1を所有し、その油圧ショベル1を、土木工事、建設工事、解体工事、浚渫工事等の工事を行う工事事業者(工事会社)に貸し出すレンタル事業者(レンタル会社)を考える。この場合、レンタル事業者は、貸し出し先となる工事事業者毎に、油圧ショベル1に与える負荷を管理することができる。例えば、油圧ショベル1の貸し出し時に、油圧ショベル1に取り付けられている現在の交換品(例えば油圧ホース)の負荷量(総熱負荷量、総ポンプ負荷量)、貸し出し期間、現時点までに取得した工事事業者毎の稼働特性を考慮して、交換品の交換時期を予測することができる。この場合には、油圧ショベル1の貸し出し中に、交換時期(メンテナンス時期)を迎え、交換品の交換作業(油圧ショベル1の修理)が必要になる事態を抑制すること可能になる。
【0118】
即ち、油圧ショベル1のレンタル事業者は、油圧ショベル1を貸し出す毎に、例えば、ユーザ側コンピュータ43等を用いてセンタサーバ32(の記憶装置36)に、使用環境情報として使用者となる工事事業者を入力(記憶、格納)する。なお、携帯機27の識別情報と使用者(工事事業者)との対応関係をセンタサーバ32(の記憶装置36)に予め登録しておき、この関係に基づいて、RFID読取装置26で読み取った携帯機27の識別情報に対応する使用者(工事事業者)が、使用環境情報として記憶装置36に記憶される構成としてもよい。いずれの場合も、センタサーバ32(の記憶装置36)には、使用環境情報として油圧ショベル1の使用者(工事事業者)の情報が蓄積される(使用者の履歴が保存される)。
【0119】
次に、油圧ホースの交換時期の予測(算出)について、図11を参照しつつ説明する。
【0120】
まず、油圧ホースの寿命が現時点までどの程度進行したかは、前述の数1式および/または数2式に、現時点までの稼働情報から得られる総熱負荷量Tおよび/または総ポンプ負荷量Pを代入することにより求めることができる。これにより、例えば、図11中に実線で表された特性線61を得ることができる。次に、今後の油圧ホースの寿命の進行は、現時点までの稼働情報と使用環境情報とから工事事業者別(A社とB社)の単位時間当たりの熱量および/または圧力量を求め、その値を、数1式および/または数2式に代入することにより求めることができる。これにより、例えば、図11中の一点鎖線の特性線62、または、特性線63を得ることができる。
【0121】
ここで、特性線62は、現時点からA社に貸し出されると仮定した場合の寿命の進行に対応する。特性線63は、現時点からB社に貸し出されると仮定した場合の寿命の進行に対応する。そして、使用限界値βとなるときのアワメータを算出することにより、工事事業者別に交換品の交換時期を予測することが可能となる。
【0122】
第2の実施の形態は、上述のように油圧ショベル1の使用者(工事事業者)を使用環境情報とし、交換品となる油圧ホースの交換時期を予測するもので、その基本的作用については、上述した第1の実施の形態によるものと格別差異はない。
【0123】
特に、第2の実施の形態では、使用者(工事事業者)毎の負荷頻度、使用特性を考慮して、交換品の寿命、交換品の交換時期(メンテナンスタイミング)を予測することができる。即ち、レンタル事業者が所有する油圧ショベル1は、貸し出し先となる使用者に応じて作業内容、オペレータ等が異なるため、油圧ショベル1に与える負荷も、使用者毎に異なる。これに対し、第2の実施の形態では、それぞれの使用者に応じて異なる負荷を考慮して、交換時期を予測することができ、交換時期の予測精度を向上できる。
【0124】
さらに、第2の実施の形態では、交換時期の予測の結果を、例えば、次のように用いることができる。即ち、レンタル事業者が、工事事業者(A社またはB社)から貸し出しの依頼(引当)を受けたときに、レンタル事業者は、ユーザ側コンピュータ43からセンタサーバ32に、貸し出す予定の油圧ショベル1と貸し出し期間と貸し出し先(A社またはB社)の情報を入力する。このとき、センタサーバ32は、現在までの使用環境情報と稼働情報とに基づいて貸し出し先(A社またはB社)により油圧ショベル1に与えた負荷を求める。
【0125】
センタサーバ32は、その負荷を参考に、交換時期を予測し、かつ、貸し出し期間中に交換が必要になる交換品があるか否かを判定する。そして、センタサーバ32は、貸し出し期間中に交換が必要になる交換品の有無、および、交換が必要になる交換品名を、ユーザ側コンピュータ43に出力(通知)する。レンタル事業者は、貸し出し期間中に交換が必要になる交換品を、貸し出し前に予め交換することができる。または、貸し出し期間中に交換品の交換が必要ない油圧ショベル1を貸し出すこともできる。
【0126】
さらには、油圧ショベル1が返却されたときに、今後想定される貸し出し先に予め定めた貸出期間を貸し出したと仮定した場合の負荷をシミュレーションし、予め定めた比率以上で寿命が進行する可能性がある交換品(予め定めた期間よりも短い期間で交換時期を迎える可能性がある交換品)を出力(通知)するようにしてもよい。予め定めた貸出期間、予め定めた比率、予め定めた期間は、任意に設定することができる。いずれの場合も、油圧ショベル1のレンタル事業者および工事事業者の利便性を向上できる。
【0127】
次に、図12は本発明の第3の実施の形態を示している。第3の実施の形態の特徴は、使用環境情報を建設機械の作業内容とし、交換品をフィルタとしたことにある。なお、第3の実施の形態では、上述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0128】
第3の実施の形態では、油圧ショベル1の使用者は、ユーザ側コンピュータ43等を用いてセンタサーバ32(の記憶装置36)に、使用環境情報として油圧ショベル1の作業内容を入力(記憶、格納)する。作業内容としては、油圧ショベル1が行う工事内容(施工内容)であり、例えば、土木作業、建設作業、解体作業、浚渫作業等が挙げられる。これにより、センタサーバ32(の記憶装置36)には、使用環境情報として油圧ショベル1の作業内容(工事内容)の情報が蓄積される(作業内容の履歴が保存される)。なお、RFID読取装置26で読み取った携帯機27の識別情報に対応する作業内容(工事内容)が、使用環境情報として記憶装置36に記憶される構成としてもよい。
【0129】
この場合、例えば、油圧ショベル1の製造業者(メーカー)は、作業内容(工事内容)別に複数の携帯機27を用意しておき、油圧ショベル1のオペレータは、その中からそのときの作業内容に対応する携帯機27をRFID読取装置26で読み取らせてエンジン8を始動するようにしてもよい。さらに、作業内容は、油圧ショベル1の使用者(使用会社)の情報の中に組み込んでもよい。例えば、使用者と作業内容とを別々の携帯機27(の識別情報)で管理(登録)してもよいし、使用者と作業内容とを一の携帯機27(の識別情報)で管理(登録)してもよい。
【0130】
次に、フィルタの交換時期の予測(算出)について、図12を参照しつつ説明する。
【0131】
フィルタの使用限界は、一般的にフィルタの目詰まり量(以下、フィルタの負荷)で決まる。フィルタの負荷は、ろ過量、ろ過する対象物の汚れの程度から予測することができる。ろ過量は、例えば、燃料フィルタであれば燃料使用量、エンジン8のエアフィルタであれば大気の吸気量、エンジン8のオイルフィルタであればエンジン8のオイルポンプの吐出流量であるエンジン内を循環したエンジンオイル量、作動油フィルタ(フルフローフィルタ)であれば油圧ポンプ9A,9Bの吐出流量から求めることができる。そして、大気の吸気量、オイルポンプの吐出流量、油圧ポンプ9A,9Bの吐出流量は、エンジン8の回転数に比例し、算出が可能である。
【0132】
一方、ろ過する対象物の汚れの程度は、土木、解体等の油圧ショベル1の工事内容の情報から、不純物の混入具合を予測することができる。例えば、エンジン8のエアフィルタで説明すると、解体作業では、解体物の粉塵が空気中に混入し、土木作業では、土砂の粉塵が空気中に混入する。そして、空気中の粉塵の混入具合は、例えば、土木作業よりも解体作業の方が多くなる(汚れの程度大)とする。以下、エアフィルタにとっては、土木作業よりも解体作業の方が厳しい環境であるとして、エアフィルタの交換時期を予測する。
【0133】
まず、エアフィルタの寿命が現時点までどの程度進行したかを、現時点までの稼働情報と使用環境情報(作業内容)から算出する。この場合、ろ過量となる大気の吸気量は、稼働情報から現在までのエンジン8の回転数の履歴に基づいて算出することができる。そして、吸気量に対し、ろ過する対象物の汚れの程度(工事内容)に応じた係数(ゲイン、パラメータ)を乗算することにより、エアフィルタの寿命判定値となる負荷を算出する。
【0134】
例えば、負荷が小さい環境で運転した場合の寿命の進行を、図12の特性線71とする。これに対し、不純物(粉塵)が混入しやすい解体作業が行われた場合は、基準となる特性線71に対してA倍の傾斜を掛ける。これにより得られた特性線72が、解体作業での寿命の進行に対応する。一方、不純物(粉塵)が混入しにくい土木作業が行われた場合は、基準となる特性線71に対してAよりも小さい値となるB倍の傾斜を掛ける。これにより得られた特性線73が、土木作業での寿命の進行に対応する。
【0135】
ここで、AとBの関係は、A>Bとなり、これらAとBは、例えば、工事内容、業種毎に規定時間稼働したエアフィルタを回収したものを分析することにより設定することができる。具体的には、工事内容、業種毎にエアフィルタの目詰まりを分析し、工事内容、業種毎の目詰まりに対応した負荷の傾向を考慮して、AとBを設定することができる。そして、現時点の寿命の進行が特性線72であるか特性線73であるかは、現時点までの使用環境情報(作業内容)から決定する。即ち、現時点までの使用環境情報(作業内容)が解体作業であれば、現時点までの寿命の進行を特性線72とすることができ、土木作業であれば特性線73とすることができる。
【0136】
次に、今後のエアフィルタの寿命の進行は、これまでの稼働情報から今後油圧ショベル1がどのように使用され、その場合のエンジン8の回転数から大気の吸気量がどのように推移するかを考慮して算出する。具体的には、今後の工事内容に応じた特性線として、求めることができる。例えば、現時点まで工事内容が解体作業であり、今後も解体作業が行われる場合は、特性線74を得ることができ、今後は土木作業が行われる場合は、特性線75を得ることができる。一方、現時点まで工事内容が土木作業であり、今後も土木作業が行われる場合は、特性線76を得ることができ、今後は解体作業が行われる場合は、特性線77を得ることができる。そして、負荷限界値γとなるときのアワメータを算出することにより、交換品の交換時期を予測することができる。
【0137】
第3の実施の形態は、上述のように油圧ショベル1の作業内容(工事内容)を使用環境情報とし、かつ、交換品となるフィルタ(エアフィルタ)の交換時期を予測するもので、その基本的作用については、上述した第1の実施の形態によるものと格別差異はない。
【0138】
(3).特に、第3の実施の形態によれば、交換時期予測手段としてのセンタサーバ32(部品寿命情報処理部37)は、図12を用いて説明したように、稼働情報と交換品情報とに加え、使用環境情報も用いて、交換品となるフィルタ(エアフィルタ)の現在の寿命の進行の程度(特性線72または特性線73)を算出する。このため、現在の寿命の進行の程度の算出に、油圧ショベル1の使用態様の履歴(作業内容の履歴)を考慮することで、現在の寿命の進行の程度を、より高い精度で算出することができる。即ち、現在までの作業内容が解体作業であれば特性線72を得ることができ、現在までの作業内容が土木作業であれば特性線73を得ることができる。そして、使用環境情報(作業内容)に応じた特性線72または特性線73を用いることで、現在の寿命をより高い精度で算出できると共に、今後の寿命の進行の程度の算出の精度、延いては、交換時期の予測の精度も向上できる。
【0139】
なお、上述した第3の実施の形態では、使用環境情報を油圧ショベル1の作業内容(解体、土木)を用いる構成とした場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば、使用環境情報として、建設機械が使用される地域、例えば、国、地方、都道府県、市区町村等の作業地域を用いる構成としてもよい。例えば、使用環境情報となる作業地域として国を用いる場合には、それら国毎に品質が異なる燃料が使用されることを考慮して燃料フィルタの現在の寿命の進行の程度の算出、今後の寿命の進行の程度の算出、延いては、交換時期の予測を行うことができる。また、例えば、その国が砂漠地帯であれば砂塵を考慮して、寿命の算出、交換時期の予測を行うことができる。
【0140】
即ち、第1の実施の形態では、使用環境情報としてオペレータの情報を用いる構成とし、第2の実施の形態では、使用環境情報として使用者(使用会社)の情報を用いる構成とし、第3の実施の形態では、使用環境情報として作業内容(工事内容)の情報を用いる構成とした場合を例に挙げて説明した。しかし、使用環境情報は、一の使用態様に限らず、複数の使用態様を用いる構成としてもよい。例えば、携帯機の一の識別情報に対して複数の使用態様(オペレータ、使用者、作業内容、作業地域)を対応させる構成としてもよい。また、使用環境情報として、オペレータ、使用者、作業内容、作業地域に限らず、使用者の業種(建設機械が用いられる業種)等、建設機械が使用される環境に関する情報、即ち、建設機械の使用態様に関する各種情報を用いることができる。そして、どのような使用態様の情報を用いるかは、例えば、建設機械の種類(油圧ショベルであるか、ホイールローダであるか)、作業内容、使用される地域等に応じて、各種の使用態様のなかから(一ないし複数を)取捨選択することができる。
【0141】
上述した第1の実施の形態では、携帯機27をRFID読取装置26で読み取らせることにより使用環境情報の取得を行う構成とした場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば、建設機械のオペレータ、使用者、所有者等が(ユーザ側)コンピュータを用いてセンタサーバ(使用環境記憶手段)に使用環境情報(少なくとも一の使用態様)を登録する(記憶させる)構成としてもよい。また、携帯機と読取装置の構成についても、RFID読取装置26以外の方式を用いた読取装置、例えばバーコードや二次元コードを用いた読取装置等、各種の認証手段を用いることができる。このことは、第2の実施の形態、第3の実施の形態についても同様である。
【0142】
上述した第1の実施の形態では、油圧ショベル1の稼働情報として、作業、旋回、走行に関するパイロット圧、エンジンの回転数(回転速度)、アクセサリのON・OFF、ポンプ圧、油温を用いる構成とした場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば、燃料消費量等、建設機械の各種の状態量を用いることができる。このことは、第2の実施の形態、第3の実施の形態についても同様である。
【0143】
上述した第1の実施の形態および第2の実施の形態では、交換品としての油圧ホースの交換時期を予測する構成とし、第3の実施の形態では、交換品としてのフィルタ(エアフィルタ)の交換時期を予測する構成とした場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば、作業装置を構成するアーム、バケット、これらを連結する連結ピン、連結ピンを支承するブッシュ(軸受筒)、連結ピンとブッシュを潤滑するグリス、バケット爪、旋回装置のミッションオイル、旋回装置のミッションシール、旋回軸受(旋回輪)、旋回装置のグリス、走行装置のミッションオイル、走行装置のミッションシール、走行油圧モータ、走行ローラ、履帯、履帯のシュー、エンジンオイル、エンジンオイルフィルタ、作動油、作動油フィルタ(オイルフィルタ)等、各種の交換品の交換時期を予測することができる。
【0144】
上述した各実施の形態では、建設機械として、エンジン8により駆動されるエンジン式の油圧ショベル1を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば、エンジンと電動モータにより駆動されるハイブリッド式の油圧ショベル、さらに、電動式の油圧ショベルに適用することができる。さらに、油圧ショベルに限らず、ホイールローダ、油圧クレーン、ダンプトラック等、各種の建設機械に広く適用することができる。
【符号の説明】
【0145】
1 油圧ショベル(建設機械)
24 コントローラ
26 RFID読取装置(読取装置)
27 携帯機
32 センタサーバ
36 記憶装置(稼働情報記憶手段、交換品情報記憶手段、使用環境記憶手段)
37 部品寿命情報処理部(交換時期予測手段)
51,61,72,73 特性線(交換品の現在の寿命の進行の程度)
52,53,55,62,63,74,75,76,77 特性線(交換品の将来の寿命の進行の程度)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12