特許第6298889号(P6298889)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6298889マルチディスク変速機及びホイール駆動装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6298889
(24)【登録日】2018年3月2日
(45)【発行日】2018年3月20日
(54)【発明の名称】マルチディスク変速機及びホイール駆動装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 15/22 20060101AFI20180312BHJP
   B60L 15/00 20060101ALI20180312BHJP
   B60L 15/20 20060101ALI20180312BHJP
【FI】
   F16H15/22 B
   B60L15/00 Z
   B60L15/20 K
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-527662(P2016-527662)
(86)(22)【出願日】2015年3月3日
(86)【国際出願番号】JP2015056212
(87)【国際公開番号】WO2015190137
(87)【国際公開日】20151217
【審査請求日】2016年10月4日
(31)【優先権主張番号】特願2014-121800(P2014-121800)
(32)【優先日】2014年6月12日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000231350
【氏名又は名称】ジヤトコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】特許業務法人後藤特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100075513
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 政喜
(74)【代理人】
【識別番号】100120260
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】丹下 宏司
【審査官】 高橋 祐介
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−053995(JP,A)
【文献】 特開2011−030307(JP,A)
【文献】 特開2010−241183(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 15/22
B60L 15/00
B60L 15/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動力源からの駆動力が入力される入力軸と、
前記入力軸と平行に配置された出力軸と、
前記入力軸に固定されたプライマリディスクと、
前記出力軸に固定され、前記プライマリディスクに重合するように配設されたセカンダリディスクと、
前記プライマリディスク及び前記セカンダリディスクが重合する重合領域において前記プライマリディスク及び前記セカンダリディスクを互いに押し付け、前記プライマリディスクからの前記駆動力を前記セカンダリディスクに伝達可能とする一対の押付ローラと、
前記押付ローラが取り付けられるローラブロックと、
一対の前記押付ローラに、押付力を作用させる押付力調整機構と、
一対の前記押付ローラを前記重合領域において前記プライマリディスク及び前記セカンダリディスクの半径方向に移動させる変速アクチュエータと、
前記ローラブロックに挿通され、一対の前記押付ローラを前記プライマリディスク及び前記セカンダリディスクの半径方向に摺動可能に支持するシャフトと、
前記シャフトの両端に取り付けられ、一対の前記押付ローラを、前記プライマリディスク及び前記セカンダリディスクを互いに離間させる方向に付勢する付勢機構と、
を備えるマルチディスク変速機。
【請求項2】
請求項1に記載のマルチディスク変速機であって
前記付勢機構は、前記シャフトを、前記プライマリディスク及び前記セカンダリディスクを互いに離間させる方向に付勢するボールプランジャにより構成されるマルチディスク変速機。
【請求項3】
ホイールの内方又はその近傍に配設されたモータと、
請求項1又は2に記載のマルチディスク変速機を備え、前記駆動力源は、前記モータであるホイール駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マルチディスク変速機に関する。
【背景技術】
【0002】
JP2010−53995Aには、入力軸に設けられたプライマリディスクと出力軸に設けられたセカンダリディスクとを部分的に重ね合わせてディスク重合領域を設け、ディスク重合領域で両ディスクを一対の押付ローラで挟んで接触させることで、入力軸の回転を出力軸に伝達するマルチディスク変速機が開示されている。
【0003】
マルチディスク変速機においては、一対の押付ローラが両ディスクを挟む位置を変更することによって変速が実現される。すなわち、両ディスクを挟む位置を、入力軸に近づければ変速比がLow側(変速比大側)に変化し、出力軸に近づければ変速比がHigh側(変速比小側)に変化する。
【発明の概要】
【0004】
JP2010−53995Aに記載のマルチディスク変速機では、押付ローラが両ディスクを挟むことにより駆動力を伝達する。一方で、駆動力を伝達しない場合は押付ローラの押付力を解放するが、単に押付ローラの押付力をゼロにしただけでは、両ディスクの面同士が潤滑油により密着し、引き摺りトルクが発生してしまう。これにより、意図しない駆動力が発生することで、例えばホイール駆動装置のブレーキ機構にこのような変速機が設けられている場合には、必要以上のブレーキ力が発生してしまい、エネルギー効率が低下するという問題がある。
【0005】
本発明は、このような技術的課題に鑑みてなされたもので、マルチディスク変速機において、駆動力の非伝達時に、トルクの伝達を抑制することを目的とする。
【0006】
本発明のある態様によれば、駆動力源からの駆動力が入力される入力軸と、入力軸と平行に配置された出力軸と、入力軸に固定されたプライマリディスクと、出力軸に固定され、プライマリディスクに重合するように配設されたセカンダリディスクと、プライマリディスク及びセカンダリディスクが重合する重合領域においてプライマリディスク及びセカンダリディスクを互いに押し付け、プライマリディスクからの駆動力をセカンダリディスクに伝達可能とする一対の押付ローラと、押付ローラが取り付けられるローラブロックと、一対の押付ローラに押付力を作用させる押付力調整機構と、一対の押付ローラを重合領域においてプライマリディスク及びセカンダリディスクの半径方向に移動させる変速アクチュエータと、ローラブロックに挿通され、一対の前記押付ローラをプライマリディスク及びセカンダリディスクの半径方向に摺動可能に支持するシャフトと、シャフトの両端に取り付けられ、一対の押付ローラを、プライマリディスク及びセカンダリディスクを互いに離間させる方向に付勢する付勢機構と、を備えることを特徴とする。
【0007】
上記態様によれば、一対の押付ローラを両ディスクから離間させる場合は、付勢機構の付勢力により、一対の押付ローラが、プライマリディスク及びセカンダリディスクを離間させる方向へと付勢されるので、一対の押付ローラと、プライマリディスク及びセカンダリディスクとの間に付勢機構が無い場合に比べ十分なクリアランスが確保されるため、ディスク間の接触が解放されて引き摺りトルクが抑制され、駆動力の非伝達時にプライマリディスクとセカンダリディスクの間のトルクの伝達を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本発明の実施形態のホイール駆動装置を備える車両の説明図である。
図2図2は、本発明の実施形態のホイール駆動装置の説明図である。
図3図3は、本発明の実施形態のホイール駆動装置の説明図である。
図4図4は、本発明の実施形態のホイール駆動装置の説明図である。
図5図5は、本発明の実施形態の付勢機構の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
【0010】
図1は、本発明の実施形態のマルチディスク変速機が適用されるホイール駆動装置1を備える車両4の説明図である。
【0011】
本実施形態のホイール駆動装置1は、車両の駆動輪2を構成するホイール10の内部に収装され、駆動力源であるモータ20の駆動力により駆動輪2を回転させることにより、車両4を走行させる。車両4にはステアリング装置5が備えられており、駆動輪2の操舵方向を制御する。ホイール駆動装置1は、運転者によるステアリング装置5の操作、アクセルペダル6、ブレーキペダル7の操作等の指示に基づいて、制御装置3の制御により動作する。
【0012】
車両4は4つの車輪が備えられるが、少なくとも2つが駆動輪2として構成されていればよい。
【0013】
図2から図4は、本実施形態のホイール駆動装置1の構成を示す説明図である。
【0014】
図2から図4は、水平方向のx軸、垂直方向のy軸及びx軸y軸に直交するz軸を設定し、これらx軸平面、y軸平面及びz軸平面における断面図をそれぞれ示す。
【0015】
ホイール駆動装置1は、ホイール10、モータ20、変速機構30及び減速機構40を備える。
【0016】
ホイール10は、タイヤを保持する略円筒形状のリム部10aと、回転側のハブ15にボルト16を介して取付けられる円板状のディスク部10bとから構成される。ホイール10の内方には、ハウジング12に収容されたモータ20等の駆動装置が収装される。ハウジング12は、ホイール10のリム部10aの内径よりも僅かに小さい略円筒形状を有し、車両4の図示しないサスペンションに連結されている。
【0017】
モータ20は、コイルを有する円板状のステータ21、22と、永久磁石を有する円板状のロータ23とが回転軸方向に並べて配置されるアキシャルギャップモータとして構成される。モータ20が駆動されることで回転するロータ23の回転は、ロータ23に固定された入力軸31から変速機構30へと入力される。
【0018】
入力軸31は、モータ20からハウジング12内へと延設され、入力軸31の端部はホイール10のディスク部10bに結合されるハブ15の中央にベアリング12aを介して回転自在に支持される。
【0019】
変速機構30は、入力軸31に固定された円板状のプライマリディスク32と、出力軸33に固定された円板状のセカンダリディスク34とを、押付機構35により接触させることで、入力軸31の回転を変速可能に出力軸33へと伝達するマルチディスク変速機である。
【0020】
押付機構35は、ハウジング12に固定された回動軸101と、回動軸101にそれぞれ揺動可能に連結される第1及び第2の一対のクランプアーム(フロントクランプアーム167、リアクランプアーム168)と、一対のクランプアームの自由端側に設けられる押付力調整機構132とで構成される。押付力調整機構132は、一対のアームに押付力を発生させることで、押付機構35におけるプライマリディスク32とセカンダリディスク34との押付力を調整する。
【0021】
減速機構40は、出力軸33に設けられた外歯出力ギヤ33aと外歯出力ギヤ33aに噛合する内歯ギヤ14とで構成されており、出力軸33から出力される回転を内歯ギヤ14により減速し、減速された回転がハブ15を介してホイール10に伝達される。
【0022】
次に、ホイール駆動装置1の各構成を説明する。
【0023】
モータ20は、ステータ21、ロータ23及びステータ22が順に軸方向に配置されて構成される。モータ20は、その外周がハウジング12の開口部の内径に適う略円筒形状を有し、ハウジング12の内周側に固定される。
【0024】
ロータ23は、軸方向に間隙を存して配置されるステータ21、22の間に配置され、これらの発生する磁界の作用により回転する。ステータ21、22には、いずれも周方向に複数のコイルが備えられる。各コイルはモータ20の回転軸と平行な軸を中心として巻回される。本実施形態のモータ20は、ロータ23に備えられる永久磁石がフェライト磁石として構成される。
【0025】
制御装置3は、ステータ21、22に備えられるコイルにアクセルペダル6の踏み込み量に応じた電流を供給することによりロータ23を回転させる。ロータ23が回転することにより、入力軸31が回転する。入力軸31の回転は変速機構30に入力される。
【0026】
変速機構30は、入力軸31に固定されたプライマリディスク32と、出力軸33に固定されたセカンダリディスク34と、押付機構35とにより構成される。
【0027】
プライマリディスク32は、2枚の円形のディスク32aが入力軸の軸方向に並べて取付けられて構成され、入力軸31と一体となって回転する。2枚のディスク32aは所定の間隔を設けて配置される。ディスク32aの外周端は出力軸33に近接するように配置される。
【0028】
セカンダリディスク34は、センターディスク34aと、センターディスク34aの両面側に向かい合わせて設けた2枚のサイドディスク34bとが出力軸33の軸方向に並べて取付けられて構成され、出力軸33と一体となって回転する。センターディスク34aとサイドディスク34bとは所定の間隔を設けて配置される。センターディスク34a及びサイドディスク34bの外周端は入力軸31に近接するように配置される。
【0029】
プライマリディスク32のディスク32aは、セカンダリディスク34のセンターディスク34aとサイドディスク34bとの間に配置される。プライマリディスク32とセカンダリディスク34とは、入力軸31と出力軸33との間でディスクの一部が重なり合うディスク重合領域を形成する。
【0030】
ディスク重合領域において、プライマリディスク32のディスク32aとセカンダリディスク34のセンターディスク34aとの間には、押付機構35による押付力が作用しない状態では隙間が形成される。押付機構35による押付力が作用する状態では、プライマリディスク32とセカンダリディスク34とが弾性変形して接触し、トルク伝達接触部が形成される。
【0031】
プライマリディスク32とセカンダリディスク34との間にトルク伝達接触部が形成されることにより、入力軸31から出力軸33に回転が伝達される。ディスク重合領域において、トルク伝達接触部をプライマリディスク32及びセカンダリディスク34の半径方向に移動させることで、入力軸31の回転を変速可能に出力軸33に伝達することができる。なお、図3において太点線で示す軸心連結線Oは、入力軸31と出力軸33との軸心を結び、入力軸31と出力軸33とに直交する線である。トルク伝達接触部は、軸心連結線O上に形成される。
【0032】
押付機構35は、押付ローラ機構130、ディスククランプ機構131、押付力調整機構132及び摺動アクチュエータ133を備える。
【0033】
押付ローラ機構130は、押付ローラ160、保持部161、押付ローラシャフト162、ローラブロック163、ガイドブロック164、ガイドブロックシャフト165及びガイドブロックシャフト151を備える。
【0034】
一組の押付ローラ機構130は、プライマリディスク32及びセカンダリディスク34を挟んで両側に配置され、ローラブロック163に取付けられる。ローラブロック163は、ハウジング12の内周に水平方向(x軸方向)に備えられる支持部材25との間に垂直方向(y軸方向)に形成されたガイドブロック164の間に取付けられ、軸心連結線O方向に延設されるガイドブロックシャフト151と一組のガイドブロックシャフト165に摺動可能に取付けられる。
【0035】
ガイドブロック164とガイドブロックシャフト165との間には、ローラブロック163をプライマリディスク32及びセカンダリディスク34を互いに離間させる方向に付勢する付勢機構155が備えられる。付勢機構155は、図5で詳述する。
【0036】
ディスククランプ機構131は、図4に示すように、フロントクランプアーム167及びリアクランプアーム168を備える。フロントクランプアーム167及びリアクランプアーム168は、それぞれ押付ローラ機構130の下側にあるガイド部166が摺動可能に取付けられる。フロントクランプアーム167及びリアクランプアーム168は、押付力調整機構132により互いにプライマリディスク32及びセカンダリディスク34を挟持する方向に移動させられることで、押付ローラ160をディスクに押し付ける。
【0037】
押付力調整機構132は、アクチュエータ190の動作により、フロントクランプアーム167及びリアクランプアーム168を互いにプライマリディスク32及びセカンダリディスク34を挟持する方向に移動させる。制御装置3からは、伝達すべきトルクに応じた押付力を発生するよう指令信号を出力し、指令信号をうけてアクチュエータ190が動作することで、押付ローラ160が伝達すべきトルクに応じた押付力でそれぞれディスク側に押し付けられる。これにより、プライマリディスク32とセカンダリディスク34とを弾性変形させ、これらを接触させることによりトルク伝達接触部が形成され、入力軸31の回転が出力軸33へと伝達される。
【0038】
押付力調整機構132は、プライマリディスク32及びセカンダリディスク34の間で駆動力を伝達しない場合は、制御装置3からの押付力がゼロである指令信号によりアクチュエータ190が動作し、押付ローラ160は押付力がゼロとなる。これにより、プライマリディスク32とセカンダリディスク34とは弾性変形がなくなることで駆動力の伝達がなくなり、入力軸31の回転が出力軸33に伝達されなくなる。
【0039】
摺動アクチュエータ133は、電動モータ134と摺動機構135とを備え、制御装置3からの指令信号により電動モータ134を動作させることで摺動機構135を進退させ、摺動機構135に連結される押付ローラ機構130を軸心連結線Oに沿って移動させる。これにより、押付ローラ機構130の押付ローラ160を軸心連結線O方向に移動させて、目標変速比に対応する位置にトルク伝達接触部を形成する。
【0040】
出力軸33のディスク部10b側の端部には、外歯出力ギヤ33aが備えられる。外歯出力ギヤ33aはホイール10に結合されるハブ15に固定される内歯ギヤ14と噛合し、内歯ギヤ14を回転させる。
【0041】
外歯出力ギヤ33aは、内歯ギヤ14の内周側にあって入力軸31と同軸に回転自在に備えられるアイドラギヤ51にも噛合する。内歯ギヤ14とアイドラギヤ51とは回転軸を同一とし、これらの間は外歯出力ギヤ33aが噛合する間隔を有する。アイドラギヤ51は、出力軸33に対して回転自在にベアリング51aを介して軸支される。
【0042】
内歯ギヤ14とアイドラギヤ51との間は、外歯出力ギヤ33aとは異なる位置に外歯出力ギヤ33aと略同形状のピニオン61aが噛合する。ピニオン61aは、カウンタ軸61のディスク部10b側に備えられる。
【0043】
出力軸33の外歯出力ギヤ33aは内歯ギヤ14の周方向等分割点の一点に備えられ、カウンタ軸61のピニオン61aは内歯ギヤ14の周方向等分割点の他点に備えられる。本実施形態では、入力軸31を中心として内歯ギヤ14の直径方向に外歯出力ギヤ33aとピニオン61aとを配置したが、さらに多くのピニオン61a及びカウンタ軸を配置してもよい。
【0044】
ハウジング12の内周側であってディスク部10b側の壁面にはベアリング17が備えられ、内歯ギヤ14は、ベアリング17に外周から回転自在に支持される。内歯ギヤ14は、ハブ15に固定される。ハブ15は、内歯ギヤ14及びベアリング17を介してハウジング12に回転自在に支持される。ホイール10のディスク部10bはボルト16を介してハブ15に結合される。
【0045】
ハブ15とハウジング12との間にはオイルシール18が備えられる。オイルシール18は、ベアリング17等から潤滑油がホイール10及びその外部へと飛散することを防止する。
【0046】
出力軸33に固定されるセカンダリディスク34には、ブレーキ装置72が備えられる。ブレーキ装置72は、セカンダリディスク34を構成するセンターディスク34a及び二つのサイドディスク34bをそれぞれ挟持することにより回転抵抗を与え、出力軸33の回転を制動する。出力軸33の回転を制動することにより車両に制動力を与える。
【0047】
ブレーキ装置72は、例えば運転者によるブレーキペダルの踏み込み量に応じて、制御装置3の指示により、セカンダリディスク34を挟持することにより制動力を与え、ホイール駆動装置1の制動力を制御する。
【0048】
このように、本実施形態のホイール駆動装置1は、モータ20の出力を、変速機構30により変速させ、変速された回転をホイール10の内方に備えられた内歯ギヤ14を介してホイール10に伝達させる構成である。このように、ホイール10への回転の伝達を内歯ギヤ14により行うことにより、ホイール10への回転を大きな減速比により伝達することができると共に、内歯ギヤ14の内径部分のスペースをホイール駆動装置1の構成部品に用いることができるので、構成部品の奥行きを扁平に形成することができて、ホイール駆動装置1のサイズ及び重量を低減することができる。
【0049】
次に、本実施形態の付勢機構155について、図5を参照して説明する。
【0050】
前述のように、押付力調整機構132は、制御装置3からは伝達すべきトルクに応じた押付力を発生するように指令信号を出力し、指令信号をうけてアクチュエータ190が動作することで、押付ローラ160が伝達すべきトルクに応じた押付力でそれぞれディスク側に押付けられる。これにより、プライマリディスク32とセカンダリディスク34とを弾性変形させ、これらを接触させることによりトルク伝達接触部形成され、入力軸31の回転が出力軸33へと伝達される。
【0051】
一方、プライマリディスク32及びセカンダリディスク34の間で駆動力を伝達しない場合は、押付力調整機構132は、制御装置3から押付力がゼロである指令信号によりアクチュエータ190が動作し、押付ローラ160は押付力がゼロとなる。これにより、プライマリディスク32とセカンダリディスク34とは弾性変形がなくなることで駆動力の伝達がなくなり、入力軸31の回転が出力軸33に伝達されなくなる。
【0052】
このとき、アクチュエータ190は押付ローラ160の押付力をゼロでコントロールしているが、制御装置3は押付ローラ160のトルク(押付力)をコントロールしているだけであるため、実際にはプライマリディスク32とセカンダリディスク34との間のクリアランスが十分でない。この場合ディスク間において、ホイール駆動装置1内の潤滑油によりこれらの間が密着したままの状態となる場合がある。プライマリディスク32とセカンダリディスク34との面同士が潤滑油により密着すると、引き摺りトルクが発生してしまう。
【0053】
本実施形態では、ディスク間の引き摺りトルクを抑制するために、次のように構成した。
【0054】
図5は、本実施形態の付勢機構155の説明図である。
【0055】
押付ローラ機構130は、軸心連結線O方向に延設されるガイドブロックシャフト151と一組のガイドブロックシャフト165に摺動可能に支持される。ガイドブロックシャフト165は、それぞれ、両端側の一組のガイドブロック164に対して一組の付勢機構155を介して取付けられる。
【0056】
付勢機構155は、ガイドブロックシャフト165が挿通される貫通孔164aと、ガイドブロックシャフト165を付勢するボールプランジャ156とを備える。ボールプランジャ156は、バネ156a及びボール156bから構成される。
【0057】
貫通孔164aは、ガイドブロックシャフト165の外周の形状よりも僅かに大きな形状に形成されおり、付勢機構155においてガイドブロックシャフト165が入力軸31及び出力軸33と平行方向(z軸方向)に移動可能に構成される。バネ156a及びボール156bにより構成されるボールプランジャ156は、ガイドブロックシャフト165を、プライマリディスク32及びセカンダリディスク34が離間する方向へと付勢する。
【0058】
このような構成により、押付ローラ160を両ディスク側に押付けた場合は、付勢機構155のボールプランジャ156が縮退してガイドブロックシャフト165が、プライマリディスク32及びセカンダリディスク34を接触する方向へと移動する。
【0059】
一方、押付ローラ160を両ディスクから離間させる場合は、付勢機構155のボールプランジャ156の付勢力により、ガイドブロックシャフト165が、プライマリディスク32及びセカンダリディスク34を離間させる方向へと付勢される(図5の矢印方向)。
【0060】
ガイドブロックシャフト165がプライマリディスク32及びセカンダリディスク34を離間させる方向へと付勢されることにより、一対の押付ローラ160が互いに離間する方向へと速やかに離れると共に、プライマリディスク32及びセカンダリディスク34が、その回転の遠心力により、速やかに離間される。
【0061】
これにより、押付ローラ160の押付力がゼロとなった場合には、プライマリディスク32とセカンダリディスク34との接触が解放され、付勢機構155が無い場合に比べて両ディスク間のクリアランスが十分に確保されるので、潤滑油が介在しても入力軸31の回転が出力軸33に伝達され難くなる。
【0062】
以上説明したように、本実施形態の変速機構30は、駆動力源であるモータ20の回転が入力される入力軸31と、入力軸31と平行に配置された出力軸33と、入力軸31に固定されたプライマリディスク32と、出力軸33に固定され、プライマリディスク32に互いに重合するように配設されたセカンダリディスク34と、プライマリディスク32及びセカンダリディスク34が重合する重合領域においてプライマリディスク32及びセカンダリディスク34を互いに押し付ける一対の押付ローラ160と、一対の押付ローラ160に押付力を作用させる押付力調整機構132と、一対の押付ローラ160を重合領域においてプライマリディスク32及びセカンダリディスク34の半径方向に移動させる摺動アクチュエータ133と、一対の押付ローラ160を、プライマリディスク32及びセカンダリディスク34を互いに離間させる方向に付勢する付勢機構155と、を備えた。
【0063】
本実施形態では、このように構成することにより、一方、押付ローラ160の押付力を解放した場合は、付勢機構155の付勢力により、一対の押付ローラ160が、プライマリディスク32及びセカンダリディスク34を離間させる方向へと付勢される。これにより、プライマリディスク32とセカンダリディスク34と接触が解放されてディスク間のクリアランスを十分に確保できるので、引き摺りトルクを抑制することができ、駆動力の非伝達時に、トルクの伝達を抑制できる。
【0064】
押付ローラ160には、プライマリディスク32及びセカンダリディスク34の半径方向に摺動可能に支持するガイドブロックシャフト165が備えられ、付勢機構155は、ガイドブロックシャフト165を、プライマリディスク32及びセカンダリディスク34を互いに離間させる方向に付勢するボールプランジャ156により構成される。このように、簡易な構成によって、引き摺りトルクを抑制することができるので、マルチディスク変速機の製造コストを上昇させることがない。
【0065】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一つを示したものに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0066】
上記実施形態では、ガイドブロックシャフト165を付勢する付勢機構155を、ボールプランジャ156を備えて構成したが、これに限られるものではなく、例えばゴム等の弾性部材や油圧によってガイドブロックシャフト165を付勢するものであってもよい。
【0067】
本願は、2014年6月12日に日本国特許庁に出願された特願2014−121800に基づく優先権を主張する。これらの出願のすべての内容は参照により本明細書に組み込まれる。
図1
図2
図3
図4
図5