【文献】
濱谷 尚志,種々のセンサを併用した集中度センシング法の検討,研究報告モバイルコンピューティングとユビキタス通信(MBL) 2015−MBL−077巻 10号,日本,情報処理学会,2015年11月25日,p.1−6
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。なお、以下の実施の形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明をその実施の形態のみに限定する趣旨ではない。また、本発明は、その要旨を逸脱しない限り、さまざまな変形が可能である。さらに、当業者であれば、以下に述べる各要素を均等なものに置換した実施の形態を採用することが可能であり、かかる実施の形態も本発明の範囲に含まれる。
【0014】
(1)実施形態の構成
図1は、本発明の実施形態に係る情報処理システムの一例を概略的に示すシステムブロック図である。
図1に示すように、情報処理システム1は、ユーザの生体情報であるバイタルデータを収集するバイタルデータ収集手段10と、ユーザ端末20と、情報処理サーバ30とを含む。このうち、ユーザ端末20と情報処理サーバ30とは、通信ネットワークNを介して接続されている(但し、これに限定されない)。
【0015】
ネットワークNは、インターネット、LAN、専用線、電話回線、企業内ネットワーク、移動体通信網、ブルートゥース(Bluetooth:登録商標)、WiFi(Wireless Fidelity)、その他の通信回線、それらの組み合わせ等によって構成される通信網であり、有線であるか無線であるかを問わない。
【0016】
バイタルデータ収集手段10は、ユーザの身体に取り付けられ、又は、ユーザの身体の周辺に設置され、ユーザの身体をモニタしてバイタルデータを収集する複数の機器を含む。具体的には、バイタルデータ収集手段10は、ユーザの心拍数を計測する心拍計11の他、脈拍計12、血圧計13、体温計14、ユーザの顔や身体の動きを撮影するウェブカメラ15、ユーザの筋肉の動きを測定する表面筋電位センサ16等を含む。各機器は、1台ずつ設けても良いし、複数台ずつ設けても良い。例えば、複数の脈拍計12をユーザの身体の複数箇所にそれぞれ取り付けることにより、測定精度を向上させることができる。この他、ユーザの音声を収集するマイクや、歩数計などをバイタルデータ収集手段10として設けても良い。
【0017】
図2は、本発明の実施形態に係る情報処理システムにおけるユーザ端末20の構成の一例を概略的に示すシステムブロック図である。ユーザ端末20は、タブレット端末、パーソナルコンピュータ(PC)、ノートPC、スマートフォン、携帯電話機、携帯情報端末(PDA)など、通信ネットワークを介して他の通信機器とデータの授受が可能なあらゆる端末装置を利用することができる。本実施形態においては、タブレット端末に専用のアプリケーションをインストールし、このアプリケーションを実行させることにより、当該タブレット端末をユーザ端末20と使用する。
【0018】
ユーザ端末20は、通信インタフェース21と、入力部22と、表示部23と、撮像部24と、信号入出力部25と、記憶部26と、プロセッサ27とを備える。
【0019】
通信インタフェース21は、ユーザ端末20を通信ネットワークNに接続し、通信ネットワークN上の他の端末と通信をするためのハードウェアモジュールである。通信インタフェース21は、例えば、ISDNモデム、ADSLモデム、ケーブルモデム、光モデム、ソフトモデム等の変調復調装置である。
【0020】
入力部22は、各種操作ボタンやタッチパネル等の入力デバイスである。表示部23は、例えば液晶ディスプレイ又は有機ELディスプレイである。撮像部24は、タブレット端末に内蔵されたカメラである。
【0021】
信号入出力部25は、有線(ケーブル)又はブルートゥース(Bluetooth:登録商標)などの規格に基づく無線通信により外部機器をユーザ端末20に接続し、当該外部機器との間で信号の送受信を行うインタフェースである。本実施形態においては、バイタルデータ収集手段10に含まれる各機器が、信号入出力部25を介してユーザ端末20に接続される。
【0022】
記憶部26は、物理デバイスの記憶領域が提供する論理デバイスであり、ユーザ端末20の処理に用いられるオペレーティングシステムプログラム、ドライバプログラム、各種データ等を格納する。ここで、物理デバイスは、例えば、半導体メモリ等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体である。ドライバプログラムとしては、例えば、通信インタフェース21を制御するための通信インタフェースドライバプログラム、入力部22を制御するための入力デバイスドライバプログラム、表示部23を制御するための表示デバイスドライバプログラム、撮像部24を制御するための撮像デバイスドライバプログラム、信号入出力部25に接続される外部機器を制御するための各種ドライバプログラム等が挙げられる。
【0023】
また、記憶部26は、これら各種プログラムや各種データのほか、プロセッサ27が実行することにより、情報処理サーバ30と連携して所定の動作を実行する専用のアプリケーションプログラム261を記憶している。アプリケーションプログラム261としては、例えば、バイタルデータ収集手段10により収集されたバイタルデータを処理するためのアプリケーションプログラム(バイタル情報処理アプリ)、SNS(ソーシャルネットワーキングサービス)用のアプリケーションプログラム(SNSアプリ)、ユーザの健康を管理するためのアプリケーションプログラム(健康管理アプリ)等が挙げられる。
【0024】
プロセッサ27は、算術演算、論理演算、ビット演算等を処理する算術論理演算ユニット(CPUなど)及び各種レジスタから構成され、記憶部26に格納されている各種プログラムを実行することでユーザ端末20の各部を中枢的に制御する。各種レジスタは、例えば、プログラムカウンタ、データレジスタ、命令レジスタ、汎用レジスタ等である。また、プロセッサ27は、アプリケーションプログラム261を読み込み、バイタル情報処理、SNS、健康管理等のアプリケーション実行部271として機能する。
【0025】
このようなユーザ端末20は、バイタルデータ収集手段10から出力された各種バイタルデータを受信し、通信ネットワークNを介して情報処理サーバ30に常時且つリアルタイムに送信することが好ましい。
【0026】
なお、本実施形態においては、バイタルデータ収集手段10をユーザ端末20に接続し、ユーザ端末20を介してバイタルデータを情報処理サーバ30に送信することとした。しかしながら、バイタルデータ収集手段10の各々に通信機能を設けると共に、各バイタルデータ収集手段10の識別コード(ID)を予め情報処理サーバ30に登録しておき、各バイタルデータ収集手段10から情報処理サーバ30にバイタルデータを直接送信することとしても良い。
【0027】
また、
図1においては、バイタルデータ収集手段10及びユーザ端末20を1つずつ図示しているが、これに限定されない。即ち、各々にバイタルデータ収集手段10が接続された2つ以上のユーザ端末20を通信ネットワークNに接続し、各ユーザ端末20から同時に情報処理サーバ30にアクセスすることも可能である。
【0028】
図3は、本発明の実施形態に係る情報処理システムにおける情報処理サーバの構成の一例を概略的に示すシステムブロック図である。情報処理サーバ30は、ユーザ端末20(又はバイタルデータ収集手段10)から送信されたバイタルデータを蓄積すると共に、蓄積されたバイタルデータに基づいてユーザの状態をリアルタイムに推定し、ユーザ端末20からの要求に応じてユーザの状態を可視化してユーザ端末20に提供するサーバ装置である。情報処理サーバ30は、例えば、演算処理能力の高いホストコンピュータによって構成され、そのホストコンピュータにおいて所定のサーバ用プログラムが動作することにより、サーバ機能を発現する。なお、情報処理サーバ30を構成するコンピュータは、必ずしも1台である必要はなく、通信ネットワークN上に分散する複数のコンピュータから構成されてもよい。
【0029】
情報処理サーバ30は、通信インタフェース31と、記憶部32と、プロセッサ33とを備える。
通信インタフェース31は、通信ネットワークNに接続し、通信ネットワークN上の他の端末と通信をするためのハードウェアモジュールである。具体的には、通信インタフェース31は、例えば、ISDNモデム、ADSLモデム、ケーブルモデム、光モデム、ソフトモデム等の変調復調装置である。
【0030】
記憶部32は、例えば、ディスクドライブまたは半導体メモリ(ROM、RAMなど)等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体からなる物理デバイスの記憶領域が提供する論理デバイスである。記憶部32は、複数の物理デバイスを1つの論理デバイスにマッピングして構築してもよいし、1つの物理デバイスを複数の論理デバイスにマッピングして構築してもよい。記憶部32は、オペレーティングシステムプログラムやドライバプログラムを含む各種プログラム及びこれらのプログラムの実行中に使用される各種データを格納する。具体的には、記憶部32は、プロセッサ33に実行させる情報処理プログラム321と、ユーザ管理データベース322と、ユーザ情報データベース323と、相関情報データベース324とを記憶している。
【0031】
情報処理プログラム321は、ユーザのバイタルデータを蓄積し、蓄積したバイタルデータに基づいてユーザの状態(精神状態、健康状態、活動状態等)を可視化して提供する機能を実現するためにプロセッサ33に実行させるプログラムである。
【0032】
図4は、ユーザ管理データベース322に格納される情報を例示する模式図である。ユーザ管理データベース322は、ユーザID、ユーザ名、及びパスコード等を含むユーザのアカウント情報と、アクセス制限を管理するための情報を格納する。アクセス制限は、当該ユーザに関する情報の閲覧を他ユーザが要求してきた場合に、他ユーザに開示する情報の範囲を制限するためのものである。アクセス制限は、当該ユーザと他ユーザとの関係に応じて、「全て開示する(アクセス制限なし)」から「本人以外には開示しない」までの範囲で、当該ユーザが段階的に設定することができる。
【0033】
図5は、ユーザ情報データベース323に格納される情報を例示する模式図である。ユーザ情報データベース323は、ユーザの生年月日、身長、体重、及び血液型等のユーザ基本情報D1と、バイタルデータD2と、バイタルデータD2に基づいて推定されたユーザの状態を表すユーザ状態情報D3とを、ユーザIDごとに格納している。
【0034】
このうち、バイタルデータD2は、バイタルデータ収集手段10により直接取得された一次データと、一次データから取得された二次データとを含む。一次データには、心拍数、脈拍数、血圧、体温、顔や頭皮や身体の筋肉の動き、眼球や瞳孔の動き、音声等が含まれる。また、二次データには、心拍数から算出される心拍変動率、顔や頭皮や身体の筋肉の動きから算出される顔の表情や身体のポーズ、腹部や背中の筋肉の動きから算出される横隔膜の動きや背骨の伸び、眼球の動きから算出される眼球の動きの変動率、声の調子(大きさ、高さ、速さ等)の変化などが含まれる。これらの二次データは、ユーザ端末20側で算出して情報処理サーバ30に送信しても良いし、情報処理サーバ30側で算出しても良い。
【0035】
なお、バイタルデータD2は、ユーザ端末20からリアルタイムに送信され、情報処理サーバ30に蓄積されるため、情報処理サーバ30は、受信してから所定期間(例えば数年)が経過したバイタルデータD2を順次削除することとしても良い。この場合であっても、削除対象のバイタルデータから取得されたユーザ状態情報については、保存しておいても良い。
【0036】
ユーザ状態情報D3は、感情(喜怒哀楽)やストレスレベル等の精神状態、健康レベルや不調部位等の健康状態、「寝ている」「起きている」「食事中」「運動中」等の活動状態を表す情報を含む。これらの情報は、レベルを数値化して表しても良いし、文字(又は記号)情報で表しても良いし、数値と文字(又は記号)情報とを組み合わせて表しても良い。
【0037】
図6は、相関情報データベース324に格納される情報を例示する模式図である。相関情報データベース324は、バイタルデータとユーザの状態(精神状態、健康状態、活動状態)とを関連付けた情報(相関情報)を格納する。相関情報の一例として、互いに異なる複数種類のバイタルデータ(
図6においては、データA及びBの2種類)とそのときのユーザの状態との関係を示すテーブルが挙げられる。
図6においては、あるバイタルデータ(データA)のレベルが「5」、別のバイタルデータ(データB)のレベルが「4」であるとき、ユーザの状態は「X1」であることを示している。
【0038】
ここで、バイタルデータの1つである心拍数は、体調(例えば平熱時又は発熱時)や、精神状態(例えば落ち着いている時又は緊張若しくは興奮している時)や、活動状態(例えば安静時又は運動時)等に応じて変動する。他方、心拍間隔は、ある程度揺らいでいる状態が正常であり、心身にストレスがかかったり、自律神経機能が低下したりすると、心拍間隔の変動が小さくなることが知られている。また、中医学においては、心拍数及び心拍変動率に基づいて、精神状態(感情やストレスレベル)や健康状態(臓器等の機能レベル)を判断することも行われている。
【0039】
そこで、心拍数と、心拍間隔の変動率(心拍変動率)とを測定することにより、ユーザの精神状態、健康状態、及び活動状態をある程度推定することが可能となる。さらに、ユーザの他のバイタルデータ(血圧、体温、カメラで捉えられたユーザの眼の動き、顔の筋肉の動き(表情)、声の調子の変化、身体の筋肉の動き(運動)、横隔膜の動き、背骨の伸び等)を併用することにより、ユーザの状態について推定可能な項目を増やすことができると共に、推定精度を向上させることができる。例えば、精神情報及び健康情報の他にも、寝ている、起きている、といった活動状態を推定することもできる。
【0040】
ここで、ユーザの状態を推定する際に用いられる情報は、バイタルデータのみである必要はなく、バイタルデータに基づいて推定されたユーザの状態(推定結果)を用いても良い。即ち、バイタルデータに基づく推定結果とバイタルデータとに基づいて、さらに別の種類のユーザの状態を推定しても良い。例えば、心拍数及び/又は心拍変動率に基づいて推定されたユーザのストレスレベルと、顔の筋肉の動きとに基づいて、ユーザの精神状態をより詳細に推定することができる。
【0041】
相関情報データベース324は、このようにユーザの状態を推定する際に用いられる相関情報を1つ以上格納している。なお、相関情報は必ずしもテーブルの形態である必要はなく、複数種類のバイタルデータを変数とする関数や、バイタルデータに基づく推定結果とバイタルデータを変数とする関数を、相関情報として格納しても良い。
【0042】
相関情報データベース324に格納される相関情報は、予め外部情報に基づいて作成されたものであっても良いし、情報処理サーバ30に蓄積されたバイタルデータに基づいて作成されたものであっても良い。さらには、予め外部情報に基づいて作成された相関情報を、情報処理サーバ30に蓄積されたバイタルデータに基づいて更新することとしても良い。
【0043】
プロセッサ33は、算術演算、論理演算、ビット演算等を処理する算術論理演算ユニット(CPUなど)及び各種レジスタから構成され、記憶部32に格納されている各種プログラムを実行することで情報処理サーバ30の各部を中枢的に制御する。各種レジスタは、例えば、プログラムカウンタ、データレジスタ、命令レジスタ、汎用レジスタ等である。また、プロセッサ33は、情報処理プログラム321を実行することにより、ユーザ端末20と連携して所定の情報処理機能を実現する。
【0044】
プロセッサ33が情報処理プログラム321を実行することにより実現される機能部には、認証管理部331と、ユーザ情報管理部332と、ユーザ状態推定部333と、アバターデータ作成部334と、相関分析部335とが含まれる。
【0045】
認証管理部331は、ユーザ端末20が情報処理サーバ30にアクセスしてきた際の認証を行う。詳細には、認証管理部331は、ユーザ端末20がアクセスを要求してきた際に、当該ユーザ端末20にユーザID及びパスコードの入力を要求し、ユーザ管理データベース322を参照して、当該ユーザ端末20のアクセスを許可するか否かの認証を行う。
【0046】
ユーザ情報管理部332は、ユーザ端末20から送信される情報に基づいて、ユーザ情報データベース323を管理する。
ユーザ状態推定部333は、バイタルデータD2に蓄積されたバイタルデータと、相関情報データベース324とに基づいて、ユーザの状態を推定する。
【0047】
アバターデータ作成部334は、ユーザの分身としてインターネット空間上に表示させるキャラクターであるアバターを作成すると共に、ユーザのバイタルデータ及びユーザ状態推定部333による推定結果(ユーザの状態)をアバターに反映して表示させるための表示用データ(以下、アバターデータという)を作成する。アバターに反映させるバイタルデータ及びユーザの状態の種類やアバターの表示方法は特に限定されない。アバターの表示例については後述する。
【0048】
ここで、バイタルデータはユーザ端末20からリアルタイムに送信され、推定されるユーザの状態も刻々と変化するため、アバターをアニメーション表示することが好ましい。また、アバターデータ作成部334は、アバターデータとして、アバターの内部を表す情報を含む3次元データを作成し、ユーザ端末20からの要求に応じて、アバターを内部(例えば消化管内)から見た状態の表示用データや、断面の表示用データをその都度構成するようにしても良い。
【0049】
相関分析部335は、ユーザ端末20から送信されたバイタルデータ(インプットデータ)同士の相関や、バイタルデータ(インプットデータ)とユーザ状態推定部333による推定結果(アウトプットデータ)との相関を分析することにより、バイタルデータとユーザの状態とを関連付けた相関情報のデータベースを構築する。
【0050】
図7は、相関分析部335が実行する相関情報データベースの構築処理を示すフローチャートである。
まず、ステップS10において、相関分析部335は、ユーザの状態に予め関連付けられた第1の情報と、1種類以上の第2の情報とを取得する。ここで、上述したように、心拍変動率はユーザのストレスレベルと相関があることが知られているため、心拍変動率とストレスレベルとを予め関連付けておくことにより、心拍変動率をステップS10における第1の情報として用いることができる。また、第2の情報としては、例えば眼球など特定の部位の動きや、声の調子の変化、横隔膜の膨らみ方、背骨の伸び等、心拍変動率以外のデータを取得する。第2の情報は、互いに異なる2種類以上の情報であっても良い。
【0051】
続くステップS11において、相関分析部335は、第1の情報と第2の情報との相関を分析する。上述した例においては、心拍変動率と眼球の動きとの相関や、心拍変動率と声の調子の変化との相関、心拍変動率と横隔膜の動きとの相関が分析される。
【0052】
続くステップS12において、相関分析部335は、第1の情報と第2の情報との相関が強いか否かを判定する。例えば、両者間の相関係数が所定値以上である場合には相関が強いと判定され、相関係数が所定値未満である場合には相関が弱いと判定される。
【0053】
第1の情報と第2の情報との間の相関が弱い場合(ステップS12:Yes)、相関分析部335は処理を終了する。
他方、第1の情報と第2の情報との間の相関が強い場合(ステップS12:Yes)、相関分析部335は、相関の分析結果に基づき、第1の情報と予め関連付けられているユーザの状態に第2の情報を関連付ける(ステップS13)。詳細には、ユーザの状態に第2の情報を関連付けたテーブルを作成する。或いは、第2の情報を入力変数とし、ユーザの状態を出力値とする関数を作成しても良い。これにより、第2の情報に基づいてユーザの状態を直接推定することが可能となる。上述した例においては、ユーザの眼球の動きのデータから、心拍変動率を経ることなく、ユーザのストレスレベルを推定できるようになる。或いは、声の調子の変化から、ユーザの喜怒哀楽を推定できるようになる。また、横隔膜の膨らみ方や背骨の伸びから、ユーザの緊張の度合いを推定できるようになる。相関分析部335は、このようにして取得された第2の情報とユーザの状態との相関情報を、相関情報データベース324(
図3参照)に蓄積する。その後、相関分析部335は処理を終了する。
【0054】
第1の情報としては、ユーザの状態と関連付けられている情報であれば心拍変動率以外でも用いることができる。例えば、上記ステップS13において眼球の動きとストレスレベルとが一旦関連付けられれば、その次には、眼球の動きをステップS10における新たな第1の情報として用いることも可能となる。この場合、さらに別のバイタルデータをステップS11における第2の情報として、新たな第1の情報との相関を分析することにより、眼球の動きを介してストレスレベルと当該別のバイタルデータとを関連付けることができる。
【0055】
また、相関を分析する対象としては、バイタルデータ同士の相関に限定されず、ユーザにより任意に入力されたデータとバイタルデータとの相関や、バイタルデータから推定されたデータとバイタルデータとの相関などを分析しても良い。具体的には、ユーザの生年月日、生まれた時間や場所、血液型、DNA型、占い(例えば四柱推命)の結果、バイタルデータに対する自分自身の評価などのデータをユーザに入力させ、これらのインプットデータとバイタルデータ(心拍変動率等)との相関を取ることが挙げられる。
【0056】
このように、バイタルデータ同士の相関や、バイタルデータとバイタルデータ以外のデータとの相関の分析を積み重ねることにより、ユーザの状態(精神状態、健康状態、活動状態)についてより多様な項目を推定することができ、推定精度の向上を図ることもできる。そして、このようにして推定されたユーザの状態をアバターに反映させることにより、よりユーザの現状に近いアバターを表示することが可能となる。さらには、このような相関の分析結果を蓄積することにより、ユーザが自覚していない疾病等を推定できる可能性もある。
【0057】
また、多数(例えば数百〜数万人)のユーザの分析結果を一定期間(例えば1年間〜数年間)蓄積することにより、ユーザの状態に関する一般的傾向を把握することも可能となる。例えば、A地域出身のB月生まれのユーザはX病にかかり易いといった傾向を抽出することも可能である。
【0058】
相関分析部335による分析結果は、相関情報データベース324に蓄積される。相関分析部335の分析により蓄積された相関情報は、当該分析に用いられたユーザの状態を推定するためだけに使用することとしても良い。或いは、一般化することが可能な相関情報は、他のユーザの状態を推定するために使用しても良い。
【0059】
(2)実施形態の動作
図8は、本発明の実施形態に係る情報処理システム1において実行される情報収集処理のシーケンス図である。
ユーザ端末20が情報処理サーバ30にアクセスを要求すると(ステップS101)、情報処理サーバ30はユーザ端末20に対し、ユーザID及びパスコード、又は、新規ユーザ登録を要求する(ステップS201)。
【0060】
ユーザ端末20が、新規ユーザ登録するためのユーザ登録情報を送信すると(ステップS102)、情報処理サーバ30は、ユーザID及びパスコードを発行すると共に、ユーザ情報を新規に作成する(ステップS202)。
【0061】
ユーザ端末20からユーザID及びパスコードを送信し(ステップS103)、情報処理サーバ30において認証に成功すると(ステップS203)、当該ユーザ端末20はログイン状態となり、ユーザ端末20から情報処理サーバ30にバイタルデータを蓄積可能な状態となる。
【0062】
バイタルデータ収集手段10(
図1参照)により収集されたバイタルデータをユーザ端末20から送信すると(ステップS104)、情報処理サーバ30は、バイタルデータを受信してユーザ情報データベース323に格納する(ステップS204)。続いて、情報処理サーバ30は、蓄積されたバイタルデータに基づいて当該ユーザの状態(精神状態、健康状態、活動状態)を推定し(ステップS205)、ユーザの状態が反映されたアバターを表示するためのアバターデータを作成する(ステップS206)。
【0063】
図9は、本発明の実施形態に係る情報処理システム1において実行されるアバターの表示処理のシーケンス図である。
ユーザ端末20が、情報処理サーバ30にアクセスを要求すると(ステップS111)、情報処理サーバ30はユーザ端末20に対し、ユーザID及びパスコードを要求する(ステップS211)。
【0064】
ユーザ端末20からユーザID及びパスコードを送信し(ステップS112)、情報処理サーバ30において認証に成功すると(ステップS212)、当該ユーザ端末20はログイン状態となる。なお、ユーザ端末20のログイン状態が維持されている場合には、ステップS112、S211、S212は省略される。
【0065】
ユーザ端末20が情報処理サーバ30に、特定のユーザのアバターデータを要求すると(ステップS113)、情報処理サーバ30は、ユーザ管理データベース322を参照し、アバターデータを要求されたユーザのアクセス制限を確認する(ステップS213)。そして、アクセス制限の範囲で、要求されたアバターデータをユーザ端末20に送信する(ステップS214)。例えば、アクセス制限が「本人以外には開示しない」と設定されている場合、情報処理サーバ30は、当該アバターデータのユーザ以外にはアバターデータを送信しない。
【0066】
ユーザ端末20は、受信したアバターデータに基づいて、アバターを画面に表示する(ステップS114)。
図10は、アバターの表示例を示す模式図であり、人間の全身を模したアバターA1を示している。このアバターA1に対し、例えば、心臓の模型a11を重畳表示し、ユーザの心拍に合わせて心臓の模型a11を拍動させることとしても良い。また、ユーザの体温に応じて、アバターA1の全体の色を変化させても良い。或いは、推定されたユーザの精神状態(例えば喜怒哀楽やストレスレベル)をアバターA1の顔a12の表情や色(顔色)に反映させても良い。さらには、推定されたユーザの健康状態(例えば元気〜不調のレベルやストレスレベル)を、アバターA1のオーラ(後光)a13に反映させても良い。一例として、元気であるほどオーラa13の表示範囲を広くしたり、ストレスレベルに応じてオーラa13の色を変化させたりする。また、ユーザの身体における不調な箇所に対応するアバターA1の部分の色を、不調の程度に応じて変化させても良い。一例として、ユーザの肩こりがひどい場合に、アバターA1の肩の部分a14の明度を落として、血行不良であることを表示する。また、ユーザの活動状態に合わせて、アバターA1の形状を変化させても良い。一例として、表面筋電位センサ16(
図1参照)により取得されたユーザの筋肉の動きに応じて、アバターA1のポーズを変化させる。
【0067】
アバターデータ作成部334は、ユーザ端末20から送信される要求に応じて、アバターA1の形態を変化させても良い。例えば、ユーザ端末20の表示部23に、入力部22に対する操作により移動可能なスライダーa15を表示させ、スライダーa15が移動すると、スライダーa15の位置を表す情報が情報処理サーバ30に送信されるようにする。アバターデータ作成部334は、スライダーa15の位置に応じて、過去のバイタルデータが反映されたアバターデータを作成し、ユーザ端末20に送信する。それにより、ユーザ端末20に、ユーザ所望の時期のバイタルデータが反映されたアバターA1が表示される。このように、過去のアバターA1の表示も可能とすることにより、ユーザは、健康状態等の時系列的な変化を確認することができる。
【0068】
或いは、ユーザ端末20の表示部23に表示されたアバターA1に対して所定の操作(例えばタップ操作)を行うことにより、操作された領域が選択された旨を示す情報が情報処理サーバ30に送信されるようにする。アバターデータ作成部334は、選択された領域の内部(例えば臓器)を表すアバターデータを作成し、ユーザ端末20に送信する。それにより、ユーザ端末20に、ユーザ所望の内部領域が露出されたアバターA1が表示される。内部領域の表示方法は、アバターA1の断面を見せる方式であっても良いし、あたかもアバターA1の内部に小型のカメラを挿入し、このカメラにより写した映像を見せる方式であっても良い。
【0069】
図11は、アバターの別の表示例を示す模式図であり、ユーザの頭部を模したアバターA2を示している。このアバターA2内に、ユーザの感情を表す領域(感情領域a21)、右脳の活動状態を表す領域(右脳領域a22)、及び、左脳の活動状態を表す領域(左脳領域a23)を設け、バイタルデータや推定されたユーザの状態に応じて、各領域の大きさや色等を変化させる。
【0070】
以上説明したように、本実施形態によれば、少なくともユーザの心拍数を含むバイタルデータをリアルタイムに取得し、バイタルデータに基づいてリアルタイムに推定されたユーザの状態をもとにアバターデータを作成するので、ユーザの状態をリアルに反映したアバターを構成することが可能となる。
【0071】
また、本実施形態によれば、複数のバイタルデータ同士の相関や、ユーザの状態の推定結果とバイタルデータとの相関を分析し、これらの相関に基づいてユーザの状態をさらに推定するので、ユーザの状態について推定可能な項目を増やすことができると共に、推定精度を向上させることが可能となる。
【0072】
このようにユーザのバイタルデータに基づいてアバターを表示する情報処理システム1は、様々なアプリケーションにおいて利用することができる。一例として、情報処理システム1を「facebook(登録商標)」や「LinkedIn(登録商標)」のようなSNS(ソーシャルネットワーキングシステム)と組み合わせることにより、ユーザプロファイルとしてアバターを利用することができる。
【0073】
図12及び
図13は、情報処理システム1のSNSにおける活用例を説明するための図である。例えば、
図12に示すように、あるSNSにおいて、ユーザAは、ユーザB、C、Dと「友人」としてつながっているものとする。また、ユーザBは、ユーザAの他、ユーザE、Fと「友人」としてつながっているものとする。これらのユーザの精神状態や健康状態や活動状態、或いは各アバターのオーラを数値化し、ユーザの交友関係に基づいて統計値を算出する。例えば、ユーザA〜Fのアバターのオーラを数値化したオーラ値が、それぞれ、2、3、8、5、6、4であるものとする。この場合、
図13に示すように、ユーザAの友人(ユーザB、C、D)のオーラ値の合計は、3+8+5=16であり、平均値は約5.3である。他方、ユーザBの友人(ユーザA、E、F)のオーラ値の合計は2+6+4=12であり、平均値は約4である。従って、ユーザAの方が、ユーザBよりもオーラ値の高い友人が多いということがわかる。
【0074】
この他にも、分析に用いる数値を変えることにより、例えば、ユーザAは性格的に落ち着きのない友人が多い、不健康な友人が多い、といった分析を行うことができる。或いは、ユーザAの仕事上のネットワークとプライベートのネットワークとの間での比較を行うこともできる。分析に用いる数値としては、オーラ、精神状態、健康状態、活動状態等を数値化したものの他、バイタルデータそのもの(心拍数等)を用いても良い。また、上記説明においては、統計値として平均値を用いたが、中央値や最頻値等を用いても良い。
【0075】
さらに、
図12に例示したようなネットワークでつながった交友関係の他、投稿した記事に対してフォローするフォロワーや評価をする人について、上述したオーラ値やバイタルデータ等を取得し、ポイントやランキングのような形で表示したりしても良い。それにより、例えば、ユーザAのフォロワーはストレスレベルが高い、ユーザBのフォロワーは健康レベルは高いが活動レベルが低い、というように、フォロワー等の傾向を分析することができる。
【0076】
また、別の例として、人材採用サイトやお見合いサイトにおいて情報処理システム1を利用することも可能である。この場合、会員(就職希望者やお見合い希望者)プロファイルとして、アバターを企業や見合い相手に提示することとしても良い。
【0077】
また、別の例として、ゲームサイトにおいて情報処理システム1を利用することも可能である。例えば、対戦ゲームにおいてアバター同士を戦わせることとしても良い。
【0078】
さらに別の例として、健康管理アプリケーションにおいて情報処理システム1を利用することも可能である。この場合、ユーザが遠隔地にいる場合であっても、ユーザ端末20に表示されたアバターから、脈拍や体温などユーザの健康状態を表す指標を取得することができる。また、アバターの腹部を開いた状態で臓器を表示したり、アバターの消化管を内側から表示したりすることも可能である。さらに、アバターの全身の姿勢を見て、ユーザが自身の姿勢を矯正するといった使用方法も挙げられる。
【0079】
上記実施形態及び変形例においては人間を情報処理システム1のユーザとしたが、ペットや家畜などの動物をユーザとしても良い。即ち、犬や猫などにバイタルデータ収集手段を装着し、収集されたバイタルデータに基づいて動物のアバターを作成する。この場合、獣医がアバターを見て診察に利用することも可能である。
【0080】
以上説明した実施形態は、本発明を説明するための一例であり、本発明をその実施形態に限定する趣旨ではない。また、本発明は、その要旨を逸脱しない限り、様々な変形が可能である。例えば、当業者であれば、実施形態で述べたリソース(ハードウェア資源又はソフトウェア資源)を均等物に置換することが可能であり、そのような置換も本発明の範囲に含まれる。
【解決手段】データベースの構築方法は、ユーザの身体に取り付けられ、又は、ユーザの近傍に設置されたバイタルデータ取得手段を用いて、ユーザの状態に応じて変動する第1の情報をリアルタイムに取得するステップ(a)と、第1の情報とは異なる1種類以上の第2の情報を取得するステップ(b)と、第1の情報と第2の情報との相関を分析するステップ(c)と、上記相関の分析結果に基づいて、第2の情報をユーザの状態と関連付けるステップ(d)と、を含む。