特許第6298935号(P6298935)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6298935
(24)【登録日】2018年3月2日
(45)【発行日】2018年3月20日
(54)【発明の名称】熱可塑性樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 69/00 20060101AFI20180312BHJP
   C08L 25/04 20060101ALI20180312BHJP
   C08L 51/04 20060101ALI20180312BHJP
   C08K 5/3475 20060101ALI20180312BHJP
   C08K 5/3435 20060101ALI20180312BHJP
【FI】
   C08L69/00
   C08L25/04
   C08L51/04
   C08K5/3475
   C08K5/3435
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-546925(P2017-546925)
(86)(22)【出願日】2016年12月1日
(86)【国際出願番号】JP2016085781
(87)【国際公開番号】WO2017098992
(87)【国際公開日】20170615
【審査請求日】2017年9月5日
(31)【優先権主張番号】特願2015-239644(P2015-239644)
(32)【優先日】2015年12月8日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】399034220
【氏名又は名称】日本エイアンドエル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(72)【発明者】
【氏名】村田 匡輝
(72)【発明者】
【氏名】岡田 眞彰
【審査官】 藤井 勲
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭63−186750(JP,A)
【文献】 特開平01−170631(JP,A)
【文献】 特開平04−159353(JP,A)
【文献】 特開平04−159354(JP,A)
【文献】 特開平06−271728(JP,A)
【文献】 特開平08−199055(JP,A)
【文献】 特開平10−298373(JP,A)
【文献】 特開平11−263874(JP,A)
【文献】 特開2003−160721(JP,A)
【文献】 特表2005−514508(JP,A)
【文献】 特開2005−132987(JP,A)
【文献】 特開2005−344026(JP,A)
【文献】 特開2007−246810(JP,A)
【文献】 特表2009−513778(JP,A)
【文献】 特開2009−249398(JP,A)
【文献】 特表2010−528143(JP,A)
【文献】 特開2010−222543(JP,A)
【文献】 特開2016−003329(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 69/00
C08L 25/00 − 25/18
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリカーボネート樹脂30〜90質量%、及びスチレン系樹脂10〜70質量%からなる熱可塑性樹脂と、紫外線吸収剤と、N−R型ヒンダードアミン系光安定剤と、N−CH型ヒンダードアミン系光安定剤と、を含有し、
前記熱可塑性樹脂100質量部に対して、前記紫外線吸収剤の含有量が0.01〜3質量部であり、前記N−R型ヒンダードアミン系光安定剤の含有量が0.01〜3質量部であり、前記N−CH型ヒンダードアミン系光安定剤の含有量が0.01〜1質量部である、熱可塑性樹脂組成物。
【請求項2】
前記N−R型ヒンダードアミン系光安定剤が、コハク酸ジメチルと4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジンエタノールとの重縮合物である、請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は熱可塑性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリカーボネート樹脂およびスチレン系樹脂からなる熱可塑性樹脂組成物は、耐衝撃性、成形性、耐熱性などに優れているため、多くの分野にて広く用いられている。特に電気、電子、OAなどの分野では外観や安全上の要求を満たすため、当該熱可塑性樹脂組成物が有する上記の優れた性能に加えて、高い耐光性を具備した材料が求められている。また、耐光性のみならず難燃性にも優れた材料が求められる場合もある。
【0003】
一般に、当該熱可塑性樹脂組成物は紫外線を含む光に過度に暴露されると黄色味を帯びる(黄変)という問題を有している。このため、当該熱可塑性樹脂組成物からなる成形品を、紫外線を含む光に長時間暴露すると、黄変が生じて成形品の外観が著しく損なわれるばかりではなく、紫外線により樹脂が分解し、成形品の強度が著しく低下するという問題があった。
【0004】
上記問題を解決するため、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤やヒンダードアミン系光安定剤を配合することが検討されており、特に当該熱可塑性樹脂組成物においては、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤よりもヒンダードアミン系光安定剤の方が、紫外線が照射された場合に起こる黄変を抑止する効果がはるかに高いということが一般的に知られている。
【0005】
しかしながら、一般にヒンダードアミン系光安定剤は造粒加工や成形加工において、ポリカーボネート樹脂を熱分解させるばかりでなく、高温多湿下において加水分解させるため、極端な分子量低下を引き起こすという根本的な問題を有している。例えば、下記特許文献1では、特定構造のヒンダードアミン系光安定剤とポリエーテル系ポリマーを配合することも検討されているが、未だ十分とはいえない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−217495号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、ポリカーボネート樹脂及びスチレン系樹脂からなる熱可塑性樹脂を含む、耐光性及び耐湿熱性に優れた熱可塑性樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、ポリカーボネート樹脂30〜90質量%、及びスチレン系樹脂10〜70質量%からなる熱可塑性樹脂と、紫外線吸収剤と、N−R型ヒンダードアミン系光安定剤と、を含有し、上記熱可塑性樹脂100質量部に対して、上記紫外線吸収剤の含有量が0.01〜3質量部であり、上記N−R型ヒンダードアミン系光安定剤の含有量が0.01〜3質量部である、熱可塑性樹脂組成物を提供する。
【0009】
上記熱可塑性樹脂組成物において、上記N−R型ヒンダードアミン系光安定剤は、コハク酸ジメチルと4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジンエタノールとの重縮合物であることが好ましい。
【0010】
また、上記熱可塑性樹脂組成物は、さらにN−CH型ヒンダードアミン系光安定剤を含有し、上記N−CH型ヒンダードアミン系光安定剤の含有量が上記熱可塑性樹脂100質量部に対して0.01〜1質量部であることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ポリカーボネート樹脂及びスチレン系樹脂からなる熱可塑性樹脂を含む、耐光性及び耐湿熱性に優れた熱可塑性樹脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の一実施形態に係る熱可塑性樹脂組成物は、熱可塑性樹脂と、紫外線吸収剤と、N−R型ヒンダードアミン系光安定剤と、を含有する。本実施形態の熱可塑性樹脂組成物は、さらにN−CH型ヒンダードアミン系光安定剤を含有してもよい。以下、本実施形態の熱可塑性樹脂組成物を構成する各成分について説明する。
【0013】
本実施形態の熱可塑性樹脂組成物に用いられる熱可塑性樹脂は、ポリカーボネート樹脂30〜90質量%、スチレン系樹脂10〜70質量%からなる。ポリカーボネート樹脂が30質量%未満では耐光性、耐湿熱性、耐衝撃性が劣り、90質量%を超えると成形性が劣る。耐光性、耐湿熱性、耐衝撃性及び成形性をよりバランス良く向上させる観点から、熱可塑性樹脂は、ポリカーボネート樹脂40〜80質量%、スチレン系樹脂20〜60質量%からなることが好ましく、ポリカーボネート樹脂50〜70質量%、スチレン系樹脂30〜50質量%からなることがより好ましい。なお、ポリカーボネート樹脂およびスチレン系樹脂以外のその他の熱可塑性樹脂成分を含有すると耐光性、耐湿熱性が劣る可能性があるため、本実施形態の熱可塑性樹脂はポリカーボネート樹脂及びスチレン系樹脂のみからなる。また、本実施形態の熱可塑性樹脂組成物は、耐光性、耐湿熱性の低下を抑制する観点から、樹脂成分としてポリカーボネート樹脂およびスチレン系樹脂のみを含む(すなわち、ポリカーボネート樹脂およびスチレン系樹脂以外の樹脂成分を含まない)ことが好ましい。
【0014】
ポリカーボネート樹脂としては、種々のジヒドロキシジアリール化合物とホスゲンとを反応させるホスゲン法、又はジヒドロキシジアリール化合物とジフェニルカーボネート等の炭酸エステルとを反応させるエステル交換法によって得られる重合体であり、代表的なものとしては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン;“ビスフェノールA”から製造されたポリカーボネート樹脂が挙げられる。
【0015】
ジヒドロキシジアリール化合物としては、ビスフェノールAの他に、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル−3−メチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−第3ブチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−ブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5ジブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)プロパンのようなビス(ヒドロキシアリール)アルカン類、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンのようなビス(ヒドロキシアリール)シクロアルカン類、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルエーテルのようなジヒドロキシジアリールエーテル類、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルファイド、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルファイドのようなジヒドロキシジアリールスルファイド類、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホキシドのようなジヒドロキシジアリールスルホキシド類、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルホンのようなジヒドロキシジアリールスルホン類等が挙げられる。これらは単独又は2種類以上混合して使用することができる。
【0016】
上記の他に、ピペラジン、ジピペリジルハイドロキノン、レゾルシン、4,4’−ジヒドロキシジフェニル類等を混合してもよい。
【0017】
さらに、上記のジヒドロキシジアリール化合物と、以下に示すような3価以上のフェノール化合物を混合使用してもよい。3価以上のフェノール化合物としては、フロログルシン、4,6−ジメチル−2,4,6−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ヘプテン−2、4,6−ジメチル−2,4,6−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ヘプタン、1,3,5−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ベンゾール、1,1,1−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−エタン及び2,2−ビス−(4,4’−(4,4’−ヒドロキシジフェニル)シクロヘキシル)−プロパン等が挙げられる。
【0018】
ポリカーボネート樹脂を製造する場合、重量平均分子量は、通常10000〜80000であり、好ましくは15000〜60000である。製造の際には、分子量調整剤、触媒等を必要に応じて使用することができる。
【0019】
スチレン系樹脂としては、ゴム強化スチレン系樹脂または非ゴム強化スチレン系樹脂等が挙げられる。これらは一種又は二種以上組み合わせて使用することができる。上記ゴム強化スチレン系樹脂および非ゴム強化スチレン系樹脂は、ゴム状重合体の存在下または非存在下に、芳香族ビニル系単量体単独もしくは芳香族ビニル系単量体及び該芳香族ビニル系単量体と共重合可能な他の単量体を重合することによって得られる。
【0020】
ゴム状重合体としては、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ブタジエン・スチレン共重合体、イソプレン・スチレン共重合体、ブタジエン・アクリロニトリル共重合体、ブタジエン・イソプレン・スチレン共重合体、ポリクロロプレンなどのジエン系ゴム、ポリブチルアクリレートなどのアクリル系ゴム、エチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体、ポリオルガノシロキサン系ゴム、さらにはこれらの2種以上のゴムからなる複合ゴム等が挙げられる。これらは一種又は二種以上組み合わせて用いることができる。
【0021】
芳香族ビニル系単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、パラメチルスチレン、ブロムスチレン等が挙げられる。これらは一種又は二種以上組み合わせて用いることができる。これらの中でも特にスチレン、α−メチルスチレンが好ましい。
【0022】
芳香族ビニル系単量体と共重合可能な他の単量体としては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、エタクリロニトリル、フマロニトリル等のシアン化ビニル系単量体、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、4−t−ブチルフェニル(メタ)アクリレート、ブロモフェニル(メタ)アクリレート、ジブロモフェニル(メタ)アクリレート、2,4,6−トリブロモフェニル(メタ)アクリレート、モノクロルフェニル(メタ)アクリレート、ジクロルフェニル(メタ)アクリレート、トリクロルフェニル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル系単量体、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド系単量体が用いられる。これらは一種又は二種以上組み合わせて用いることができることができる。
【0023】
ゴム強化スチレン系樹脂の具体例としては、ゴム強化ポリスチレン樹脂(HIPS樹脂)、アクリロニトリル・ブタジエン系ゴム・スチレン共重合体(ABS樹脂)、アクリロニトリル・アクリル酸エステル系ゴム・スチレン共重合体(AAS樹脂)、アクリロニトリル・エチレンプロピレンジエンゴム・スチレン共重合体(AES樹脂)、メタクリル酸メチル・ブタジエン・スチレン共重合体(MBS樹脂)等が例示される。
【0024】
ゴム強化スチレン系樹脂を用いる場合、ゴム状重合体の含有量に制限はないが、最終的に得られる樹脂組成物の耐衝撃性、流動性、耐熱性などの物性バランスの観点から、ゴム強化スチレン系樹脂100質量%中にゴム状重合体5〜70質量%含んでいることが好ましい。
【0025】
非ゴム強化スチレン系樹脂の具体例としては、スチレン重合体(PS樹脂)、スチレン・アクリロニトリル共重合体(AS樹脂)、α−メチルスチレン・アクリロニトリル共重合体(αMS−ACN樹脂)、メタクリル酸メチル・スチレン共重合体(MS樹脂)、メタクリル酸メチル・アクリロニトリル・スチレン共重合体(MAS樹脂)、スチレン・N−フェニルマレイミド共重合体(St−NPMI樹脂)、スチレン・N−フェニルマレイミド・アクリロニトリル共重合体(St−AN−NPMI樹脂)等が例示される。
【0026】
本実施形態にて使用されるスチレン系樹脂の製造方法には特に制限はなく、乳化重合法、懸濁重合法、塊状重合法、溶液重合法またはこれらの組み合わせの方法によりスチレン系樹脂を得ることができる。
【0027】
本実施形態の熱可塑性樹脂組成物は、熱可塑性樹脂を100質量部に対して、紫外線吸収剤を0.01〜3質量部含有する。0.01質量部未満であると耐光性が劣る傾向にあり、3質量部を超えると耐湿熱性が劣る傾向にある。より好ましく0.03〜2質量部であり、さらに好ましくは0.05〜1質量部である。
【0028】
紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、トリアジン系化合物、サリシレート系化合物、シアノアクリレート系化合物、安息香酸系化合物、シュウ酸アニリド系化合物、ニッケル化合物の金属錯塩等が挙げられる。これらは1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。耐光性の観点から、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤が好ましく、例えば2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノールが挙げられ、チバ・ジャパン社製のTINUVIN 329として入手可能である。
【0029】
本実施形態の熱可塑性樹脂組成物は、熱可塑性樹脂を100質量部とした場合に、N−R型ヒンダードアミンを0.01〜3質量部含有する。0.01質量部未満であると耐光性が劣る傾向にあり、3質量部を超えると耐湿熱性が劣る傾向にある。より好ましく0.03〜2質量部であり、さらに好ましくは0.05〜1質量部である。
【0030】
N−R型ヒンダードアミン系光安定剤とは、ピペリジン骨格の窒素原子に結合した水素原子がアルキル基で置換されていない(水素原子のままである)N−H型ヒンダードアミン系光安定剤、ピペリジン骨格の窒素原子に結合した水素原子がメチル基で置換されたN−CH型ヒンダードアミン系光安定剤以外のものを指す。N−R型ヒンダードアミン系光安定剤としては、アデカ社製のアデカスタブ LA−81、三共化成製のサノール LS2626等が挙げられるが、耐光性の観点から、特にコハク酸ジメチルと4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジンエタノールとの重縮合物が好ましく、例えばBASF社製、TINUVIN622として入手可能である。
【0031】
本実施形態の熱可塑性樹脂組成物は、熱可塑性樹脂を100質量部とした場合に、さらにN−CH型ヒンダードアミン系光安定剤を0.01〜1質量部含有することが好ましい。0.01質量部以上であると耐光性がより向上する傾向にあり、1質量部以下であると耐湿熱性の低下を抑制できる傾向にある。好ましく0.03〜0.6質量部であり、さらに好ましくは0.05〜0.3質量部である。
【0032】
N−CH型ヒンダードアミン系光安定剤としては、例えば、アデカ社製のアデカスタブ LA−52、アデカスタブ LA−63P、アデカスタブ LA−72.BASF社製のTINUVIN PA 144、TINUVIN 765等として入手可能である。
【0033】
さらに、本実施形態の熱可塑性樹脂には、必要に応じて、ヒンダードフェノール系、含硫黄有機化合物系、含リン有機化合物系等の酸化防止剤、フェノール系、アクリレート系等の熱安定剤、有機ニッケル系、高級脂肪酸アミド類等の滑剤、リン酸エステル類等の可塑剤、ポリブロモフェニルエーテル、テトラブロモビスフェノール−A、臭素化エポキシオリゴマー、臭素化等の含ハロゲン系化合物、リン系化合物、三酸化アンチモン等の難燃剤・難燃助剤、臭気マスキング剤、カーボンブラック、酸化チタン、顔料、及び染料等を添加することができる。更に、タルク、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、ガラス繊維、ガラスフレーク、ガラスビーズ、炭素繊維、金属繊維等の補強剤や充填剤を添加することもできる。
【0034】
本実施形態の熱可塑性樹脂組成物は、上述の成分を混合することで得ることができる。混合するために、例えば、押出し機、ロール、バンバリーミキサー、ニーダー等の公知の混練装置を用いることができる。また、混合順序にも何ら制限はない。
【実施例】
【0035】
以下に実施例を用いて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらによって何ら制限されるものではない。なお、実施例中にて示す部および%は質量に基づくものである。
【0036】
<使用した成分>
ポリカーボネート樹脂(A)
A−1:住友ダウ社製 カリバー200−20
【0037】
ゴム強化スチレン系樹脂(B)
ゴム強化スチレン系樹脂(B−1):耐圧製の重合反応器に、重合水138部、ポリブタジエンラテックス(重量平均粒子径0.39μm)50部(固形分)を仕込み、窒素置換を行い、槽内を昇温し61℃に到達したところで、過硫酸カリウム0.16部を脱イオン水11部に溶解した水溶液を添加した。65℃に到達後、アクリロニトリル13部、スチレン37部及びt−ドデシルメルカプタン0.15部の混合液と、脱イオン水20部にデヒドロアビエチン酸ナトリウム1.5部を溶解した乳化剤水溶液を4.5時間かけて連続添加した。その後、重合転化率が98%を超えた時点で重合を終了した。その後、塩析・脱水・乾燥し、ゴム強化スチレン系樹脂(B−1)を得た。
【0038】
ゴム強化スチレン系樹脂(B−2):攪拌翼を備えた重合反応機に、純水300部、懸濁安定剤としてヒドロキシエチルセルロース0.3部を溶解した後、3mm角に裁断したエチレン−プロピレン−エチリデンノルボルネン共重合体ゴム(エチレン含有量55%、ムーニー粘度(ML1+4、121℃)60)50部を仕込み懸濁させた。その後、スチレン37部、アクリロニトリル13部、重合開始剤としてt−ブチルパーオキシピバレート3.0部および分子量調整剤としてt−ドデシルメルカプタン0.1部を添加し、100℃にて1時間重合を行った。重合終了後、脱水し、ゴム強化スチレン系樹脂(B−2)を得た。
【0039】
紫外線吸収剤(C)
C−1:チバ・ジャパン社製のTINUVIN 329
【0040】
ヒンダードアミン系光安定剤(D)
D−1:BASF社製 TINUVIN622、N−R型ヒンダードアミン系光安定剤
D−2:三共化成製 サノール LS2626、N−R型ヒンダードアミン系光安定剤
D−3:アデカ社製 アデカスタブ LA−63P、N−CH型ヒンダードアミン系光安定剤
D−4:BASF社製 チマソーブ CHIMASSORB2020、N−H型ヒンダードアミン系光安定剤
【0041】
参考例1〜6、実施例7および比較例1〜5〕
上記ポリカーボネート樹脂(A)、ゴム強化スチレン系樹脂(B)、紫外線吸収剤(C)ヒンダードアミン系光安定剤(D)を表1に示す配合割合(単位:質量部)で混合した。さらにR−TC30(酸化チタン、Huntsman社製)を3.6部添加し、50mm押出機(オーエヌ機械製)を用い、シリンダー温度250〜270℃にて溶融混合しペレット化した。得られたペレットを用いて、耐湿熱性を測定した。また、得られたペレットを用いて、射出成形機にて下記の試験片を作製し、耐光性を測定した。測定結果は表1に示す。
【0042】
(耐光性の評価)
50mm×100mm×3mm厚の試験片につき、キセノン耐光促進試験機SX75(スガ試験機社製)を用いて83℃雨無しの条件で露光量150MJ/mの照射を実施した。露光前後の試験片についてJIS Z8729で測色し、色差(ΔE)で耐光性測定を行い、下記の通り評価した。
A:ΔE<2
B:2≦ΔE<5
C:5≦ΔE<10
D:10≦ΔE
【0043】
(耐湿熱性の評価)
上記各成分を溶融混合して得られた上記ペレットについて、ASTM D−1238に準じてメルトフローレイトを220℃、10kg(単位:g/10min)の条件で測定し、これを基準値とした。その後、90℃、95%RHの条件で200時間、高温多湿環境下に暴露した後の上記ペレットのメルトフローレイトを同様にASTM D−1238に準じて220℃、10kg(単位:g/10min)の条件で測定した。基準値を100%とした時の暴露後の変化率を測定し、変化率300%未満をA、300%以上1000%未満をB、1000%以上もしくは発泡が生じたものをCと評価した。
【0044】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、耐光性、耐湿熱性が優れるものであり、建材、家電、OA機器等のほか、特に自動車内装部品として好適に使用することができる。