(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ポリマー架橋体は、前記熱可塑性樹脂として、融点(Tm)が下記式(2)の条件を満たす結晶性樹脂及びガラス転移温度(Tg)が下記式(3)の条件を満たす非晶性樹脂からなる群より選ばれる1種又は2種以上を含む請求項1又は2記載のアウトソール。
60℃ ≦ Tm ≦ 160℃ ・・・(2)
60℃ ≦ Tg ≦ 160℃ ・・・(3)
前記ポリマー架橋体は、前記ゴムとして、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、及び、スチレンブタジエンゴムからなる群より選ばれる1種又は2種以上を含む請求項1乃至3の何れか1項に記載のアウトソール。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明について以下にその実施の形態を例示しつつ説明する。
図1に示すように本実施形態の靴1は、アッパー材2、ミッドソール3、及び、アウトソール4を有している。
【0010】
本実施形態のアウトソール4はポリマー架橋体で形成されている。
該ポリマー架橋体は、ゴムと熱可塑性樹脂と架橋剤とを含むポリマー組成物が架橋されたものである。
即ち、本実施形態のアウトソール4を形成するポリマー架橋体は、ゴム分子どうしが架橋されたもの、熱可塑性樹脂分子どうしが架橋されたもの、及び、ゴム分子と熱可塑性樹脂分子とが架橋されたものの内の1以上を含む。
アウトソール4を形成するポリマー架橋体は、JIS A硬度が90以下で、引裂強さが40kgf/cm以上であり、23℃、10Hzでの貯蔵弾性率(E
23)と、160℃、10Hzでの貯蔵弾性率(E
160)とが下記式(1)の関係を有する。
3 ≦ [(E
23)/(E
160)] ≦ 40 ・・・・(1)
なお、以下においては上記の比率「(E
23)/(E
160)」を「弾性率比」などと称することがある。
【0011】
ポリマー架橋体の23℃、10Hzでの貯蔵弾性率(E
23)は、3MPa以上100MPa以下であることが好ましい。
ポリマー架橋体の23℃、10Hzでの貯蔵弾性率(E
23)は、4MPa以上90MPa以下であることがより好ましく、5MPa以上80MPa以下であることが特に好ましい。
ポリマー架橋体の160℃、10Hzでの貯蔵弾性率(E
160)は、1MPa以上10MPa以下であることが好ましい。
ポリマー架橋体の160℃、10Hzでの貯蔵弾性率(E
23)は、2MPa以上9MPa以下であることがより好ましく、3MPa以上8MPa以下であることが特に好ましい。
ポリマー架橋体のJIS A硬度は、85以下であることが好ましく、80以下であることがより好ましい。
ポリマー架橋体のJIS A硬度は、40以上であることが好ましく、50以上であることがより好ましい。
ポリマー架橋体の引裂強さは、40kgf/cm以上であることが好ましく、50kgf/cm以上であることがより好ましく、60kgf/cm以上であることが特に好ましい。
ポリマー架橋体の引裂強さは、上限値を特に定める必要はないが、通常、150kgf/cm以下である。
【0012】
ポリマー架橋体は、靴に対して優れた軽量性を発揮させる上において、密度が1.05g/cm
3以下であることが好ましく1.0g/cm
3以下であることがより好ましく、0.9g/cm
3以下であることが特に好ましい。
ポリマー架橋体の密度は、下限値を特に定める必要はないが、通常、0.85g/cm
3以上である。
また、ポリマー架橋体は非発泡体であることが好ましい。
より詳しくは、ポリマー架橋体は意図しない形で混入した以外に気泡を含有しないことが好ましい。
アウトソール4を形成するポリマー架橋体における空気の体積割合は、5体積%以下であることが好ましく、2体積%以下であることがより好ましく、1体積%以下であることが特に好ましい。
ここで、上記のポリマー架橋体の密度とは、非発泡状態での密度を意味する。
なお、非発泡なポリマー架橋体は、作製において発泡剤の混練や発泡ガスの含浸が不要で工程が簡便なものになることに加え、成形品(アウトソール)の寸法安定性に優れるという利点を有する。
【0013】
なお、ポリマー架橋体の貯蔵弾性率は、例えば、アウトソールから短冊状の試料を採取し、この試料を試験片として下記条件でJIS K 7244−4に準拠して動的粘弾性を測定することによって求めることができる。
(貯蔵弾性率の測定条件)
測定機器:(株)ユービーエム製、動的粘弾性測定装置 Rheogel−E4000。
サンプル形状:長さ33±3mm、幅5±0.3mm、厚さ2±0.3mmの短冊状。
測定モード:正弦波歪みの引張モード。
チャック間距離:20±0.2mm。
温度:23℃、及び、160℃。
周波数:10Hz。
荷重:自動静荷重。
動歪み:5μm。
【0014】
ポリマー架橋体の引裂強さは、例えば、アウトソールから試料を採取し、この試料を試験片として下記条件でJIS K 6252に準拠して測定することができる。
(引裂強さの測定条件)
測定機器:(株)東洋精機製作所製、製品名「STROGRAPH−R2」
試料形状:JIS K 6252に指定されたアングル形試験片(切込み無し)
試験速度:500mm/min
【0015】
ポリマー架橋体のJIS A硬度は、例えば、アウトソールから試料を採取し、この試料を試験片として下記条件でJIS K 6253に準拠して測定することができる。
(JIS A硬度の測定条件)
測定機器: スプリング式硬さ試験機A型
試験片厚み:12mm以上
荷重値:9.81N
読み取り:瞬時値
【0016】
ポリマー架橋体の密度は、アウトソールから試料を採取し、この試料を試験片としてJIS K7112に準拠して測定することができ、例えば、同規格の水中置換法によって測定することができる。
【0017】
尚、上記のような特性値を測定するための試料がアウトソールから直接採取し難い場合、測定は、アウトソールを形成するポリマー組成物と同じ配合内容のポリマー組成物で作製したポリマー架橋体を用いて実施することができる。
【0018】
本実施形態におけるポリマー組成物は、熱可塑性樹脂が結晶性樹脂である場合、該熱可塑性樹脂の結晶がゴムの補強材として機能する。
また、本実施形態におけるポリマー組成物は、熱可塑性樹脂が非晶性樹脂である場合でも分子間力が相対的に強く作用する領域(ガラス状態の相やハードセグメントなど)があるとこの部分をゴムの補強材として機能させることができる。
そのため、ポリマー組成物は、従来、ゴムの補強に用いられているシリカやカーボンブラックといったゴムに比べ密度の大きい無機補強材の使用を低減しつつ優れた強度を有するポリマー架橋体を形成できる。
【0019】
結晶性樹脂と非晶性樹脂とは、示差走査熱量分析(DSC)を行った際に、結晶の融解に伴う吸収ピークや溶融状態から冷却した際に結晶化に伴う発熱ピークが観測されるかどうかによって判別できる。
そして、前記ポリマー架橋体が含む前記熱可塑性樹脂は、融点(Tm)が下記式(2)の条件を満たす結晶性樹脂、及び、ガラス転移温度(Tg)が下記式(3)の条件を満たす非晶性樹脂からなる群より選ばれる1種以上であることが好ましい。
60℃ ≦ Tm ≦ 160℃ ・・・(2)
60℃ ≦ Tg ≦ 160℃ ・・・(3)
なお、DSCで複数の融点やガラス転移温度が見られた場合は、最も高温側に現れる融点、及び、ガラス転移温度をそれぞれTm、Tgと定義する。
上記の融点(Tm)やガラス転移温度(Tg)は、70℃以上であることがより好ましく、75℃以上であることがさらに好ましい。
上記の融点(Tm)やガラス転移温度(Tg)は、150℃以下であることがより好ましく、140℃以下であることがさらに好ましい。
【0020】
熱可塑性樹脂の融点(Tm)やガラス転移温度(Tg)は、JIS K7121に従って求めることができ、示差走査熱量分析(DSC)により求めることができる。
なお、融点(Tm)は、示差走査熱量分析でのセカンドスキャンにおける吸熱ピーク温度である。
ガラス転移温度(Tg)は、同規格の中間点ガラス転移温度である。
示差走査熱量分析(DSC)は、例えば、試料量を約5mgとし、昇温速度10℃/minの条件で実施できる。
【0021】
上記のようなポリマー組成物を架橋してポリマー架橋体を形成すると、当該ポリマー架橋体は、弾性率比〔(E
23)/(E
160)〕と引裂き強さなどの機械的強度との間に正の相関関係を示すものとなる。
即ち、ポリマー架橋体は、弾性率比が高くなると引裂き強さなどの値が大きくなる傾向を示す。
また、ポリマー架橋体は、弾性率比〔(E
23)/(E
160)〕とJIS A硬度などとの間にも正の相関関係を示すものとなる。
即ち、ポリマー架橋体は、弾性率比が高くなると硬度の値も高くなる傾向を示す。
ポリマー架橋体の貯蔵弾性率は、通常、常温時に比べて高温時の方が低くなる。
このときポリマー架橋体のゴム部分での貯蔵弾性率の低下の度合いは、熱可塑性樹脂部分での低下の度合いに比べて低い。
ポリマー架橋体の温度上昇に伴う貯蔵弾性率の変化挙動は、通常、ポリマーの種類により異なる。
ゴム単体の場合、その弾性の起源はエントロピー弾性が主であるため、理論上、常温から高温への温度変化に伴い貯蔵弾性率は上昇する。そのため、上記のような効果を奏しない。
一方、熱可塑性樹脂の場合、弾性の発現には、エントロピー弾性のみならずエネルギー弾性も大きく寄与するため、常温から高温への温度変化において、結晶融解やガラス転移などが生じると、貯蔵弾性率は低下する。そのため、熱可塑性樹脂を含むことによって、上記のような効果を奏する。
言い換えれば、ポリマー架橋体の常温から高温への変化に伴う貯蔵弾性率の低下の度合いは、熱可塑性樹脂中の分子間力の強い成分がどの程度ポリマー架橋体に含まれているかを表している。
即ち、貯蔵弾性率の低下の度合いは、熱可塑性樹脂による補強効果の程度を表している。
従って、ポリマー架橋体の弾性率比は、ポリマー架橋体に優れた強度を発揮させる上において下限値(3)以上であることが重要である。
また、ポリマー架橋体の弾性率比は、ポリマー架橋体に優れた柔軟性を発揮させる上において上限値(40)以下であることが重要である。
このような点において弾性率比は4以上35以下であることが好ましく、5以上30以下であることが特に好ましい。
【0022】
上記のような特性をポリマー架橋体に対してより確実に発揮させる上において、ポリマー組成物でのゴムと熱可塑性樹脂との合計に占める熱可塑性樹脂の割合は15質量%以上であることが好ましく20質量%以上であることがより好ましい。
即ち、熱可塑性樹脂の占める割合が15%質量以上であると、熱可塑性樹脂による補強効果がより効果的に発現するという効果を奏する。
また、ポリマー組成物でのゴムと熱可塑性樹脂との合計に占める熱可塑性樹脂の割合は80質量%以下であることが好ましく75質量%以下であることがより好ましい。
即ち、熱可塑性樹脂の占める割合が80質量%以下であると、ポリマー組成物の作製における混練加工性が向上する(混練しやすくなる)という効果を奏する。
【0023】
ポリマー架橋体の原材料であるポリマー組成物に含有させるゴムとしては、例えば、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ブチルゴム(IIR)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、エチレンプロピレンゴム(EPR)、及び、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)などからなる群より選ばれる1種又は2種以上を採用することができる。
なかでも本実施形態におけるゴムとしては、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、及び、スチレンブタジエンゴムからなる群より選ばれる1種以上を採用することが好ましい。
ゴムは、密度が1.0g/cm
3以下であることが好ましい。
天然ゴムは、低密度で強度に優れることからポリマー組成物の成分として好適である。
天然ゴムは、エポキシ化などの変性が施されたものであってもよい。
なお、天然ゴム以外のゴムについても各種変性を行ったものをアウトソールの原材料として用いることができる。
【0024】
ゴムとともにポリマー組成物に含有される熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン樹脂(PE)、ポリプロピレン樹脂(PP)、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂(EVA)、エチレン−アクリル酸メチル共重合体樹脂(EMA)、エチレン−アクリル酸エチル共重合体樹脂(EEA)、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体樹脂(EMMA)、ポリアミド樹脂(PA)、結晶性ポリエステル樹脂、及び、1,2−ブタジエン樹脂(PBD)などからなる群より選ばれる1種又は2種以上の結晶性樹脂を採用することができる。
また、熱可塑性樹脂としては、スチレンホモポリマー(GPPS)、ゴム成分を含む耐衝撃性ポリスチレン樹脂(HIPS)、ポリ−αメチルスチレン、アクリロニトリル−スチレン共重合体樹脂(AS)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体樹脂(ABS)などのスチレン系樹脂、アクリル系樹脂、非晶性ポリエステル、ポリカーボネート樹脂(PC)、及び、ポリ塩化ビニル樹脂(PVC)などからなる群より選ばれる1種又は2種以上の非晶性樹脂を採用することができる。
さらに、熱可塑性樹脂としては、オレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)、スチレン系熱可塑性エラストマー(TPS)、アミド系熱可塑性エラストマー(TPA)、ウレタン系熱可塑性エラストマー(TPU)、及び、エステル系熱可塑性エラストマー(TPC)などからなる群より選ばれる1種又は2種以上の熱可塑性エラストマーを採用することができる。
【0025】
上記の熱可塑性樹脂の中では、結晶を多く含むポリエチレン樹脂(PE)がポリマー架橋体の形成材料として好適である。
ポリマー架橋体の形成材料に採用するポリエチレン樹脂(PE)としては、例えば、密度が0.94g/cm
3以上0.97g/cm
3未満の高密度ポリエチレン(HDPE)、密度が0.925g/cm
3以上0.94g/cm
3未満の中密度ポリエチレン(MDPE)、密度が0.925g/cm
3未満の直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)などのエチレンと僅かなαオレフィンとを含むもの、実質的にエチレンのみの重合体で0.91g/cm
3以上0.95g/cm
3未満の密度を有するポリエチレン及び0.9g/cm
3未満の密度を有する超低密度ポリエチレン(VLDPE)などからなる群より選ばれる1種又は2種以上を採用することができる。
これらの内、ポリマー架橋体に対する補強効果と軽量化効果とを考えるとポリマー架橋体の形成材料として用いるポリエチレン樹脂(PE)は、直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)であることが特に好ましい。
【0026】
直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)は、小さな結晶を数多く含んでいるため、ポリマー架橋体に対する補強効果が高い。
直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)は、メタロセン触媒のようなシングルサイト触媒による重合品であることが好ましい。
直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)は、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテンなどのコモノマー含有量が0.5モル%〜15モル%のものが好ましい。
【0027】
ポリマー架橋体を形成させるためのポリマー組成物には、ゴム及び熱可塑性樹脂の架橋剤をさらに含有させることができる。
ゴムの架橋剤としては、硫黄などが好適である。
熱可塑性樹脂の架橋剤としては、有機過酸化物が好ましい。
即ち、ポリマー組成物には、硫黄系架橋剤と過酸化物架橋剤とが併用されることが好ましい。
また、ポリマー組成物には、加硫促進剤や架橋助剤などを含有させてもよい。
架橋剤は、通常、ゴムと熱可塑性樹脂との合計100質量部に対して1質量部以上10質量部以下の割合でポリマー組成物に含ませ得る。
【0028】
前記硫黄系架橋剤としては、例えば、硫黄や硫黄化合物が挙げられる。
硫黄としては、例えば、粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、表面処理硫黄、及び、不溶性硫黄等からなる群より選択される1種又は2種以上を採用することができる。
硫黄化合物としては、例えば、塩化硫黄、二塩化硫黄、モルホリン・ジスルフィド、アルキルフェノール・ジスルフィド、及び、高分子多硫化物等からなる群より選択される1種又は2種以上を採用することができる。
【0029】
加硫促進剤としては、例えば、アルデヒド−アンモニア系加硫促進剤、アルデヒド−アミン系加硫促進剤、チオウレア系加硫促進剤、グアニジン系加硫促進剤、チアゾール系加硫促進剤、スルフェンアミド系加硫促進剤、ジチオカルバミン酸塩系加硫促進剤、キサントゲン酸塩系加硫促進剤等からなる群より選択される1種又は2種以上を採用することができる。
【0030】
前記有機過酸化物としては、例えば、ジクミルペルオキシド、ジ−t−ブチルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(t−ブチルペルオキシ)ヘキシン−3、1,3−ビス(t−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルペルオキシ)バレレート、ベンゾイルペルオキシド、p−クロロベンゾイルペルオキシド、2,4−ジクロロベンゾイルペルオキシド、t−ブチルペルオキシベンゾエート、t−ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、ジアセチルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、及び、t−ブチルクミルペルオキシド等からなる群より選択される1種又は2種以上を採用することができる。
【0031】
架橋助剤としては、例えば、ジビニルベンゼン、トリメチロールプロパントリメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールメタクリレート、1,9−ノナンジオールジメタクリレート、1,10−デカンジオールジメタクリレート、トリメリット酸トリアリルエステル、トリアリルイソシアネート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸トリアリルエステル、トリシクロデカンジメタクリレート、及び、ポリエチレングリコールジアクリレート等からなる群より選択される1種又は2種以上を採用することができる。
【0032】
ポリマー組成物には、さらに、スコーチ防止剤、素練促進剤、スリップ剤、離型剤、滑剤、老化防止剤、酸化防止剤、耐侯剤、難燃剤、顔料、帯電防止剤、抗菌剤、消臭剤、シランカップリング剤、粘着付与剤等の添加剤を含有させうる。
ポリマー組成物には、要すれば、シリカなどの無機フィラーをその他の添加剤として含有させてもよい。
但し、これらの添加剤は、ポリマー組成物に占める割合が合計10質量%以下であることが好ましく7質量%以下であることがより好ましい。
【0033】
本実施形態のポリマー組成物は、バンバリーミキサー、ニーダー、二軸押出機、オープンロールなどの一般的な混練装置を用いて作製することができる。
また、ポリマー組成物は、カレンダーロールなどによって一旦未架橋シートの状態に加工されたあとでアウトソールの形成に用いられることが好ましい。
【0034】
アウトソールは、上記のような未架橋シートを熱プレスするような方法で作製することができる。
より具体的には、アウトソールは、閉型時に当該アウトソールの形状に対応した内部空間が形成される金型を用いた熱プレスによって作製することができる。
【0035】
なお、アウトソール以外に本実施形態の靴1を構成するアッパー材2やミッドソール3については、従来公知のものを用いることができる。
【0036】
本実施形態のアウトソールは、軽量性に優れ、機械的な強度においても優れる。
従って、本実施形態の靴も軽量性に優れたものとなる。
【0037】
尚、本発明に係るアウトソール及び靴は、上記実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【実施例】
【0038】
次に実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0039】
(実施例1、2、比較例1〜7)
下記表1に示す成分を含むポリマー架橋体を作製し、架橋体の密度、JIS A硬度、及び、引裂強さを測定した。
結果を、表1に併せて示す。
【0040】
【表1】
【0041】
上記の結果に基づいて密度と引裂強さとの関係についてまとめたグラフを
図2に示す。
図2に示したように実施例1、2(円形の凡例:EX1,EX2)では、軽量性と高強度とが両立できている。
一方で、イソプレンゴムとシリカとを組み合わせた比較例1〜3(三角の凡例:CEX1,CEX2,CEX3)やブタジエンゴムとシリカとを組み合わせた比較例4〜7(ひし形の凡例:CEX4,CEX5,CEX6,CEX7)では軽量性と高強度とが両立できていない。
【0042】
なお、実施例1、2のポリマー架橋体は、以下の条件1〜条件3の全てを満たすものであった。
これに対して比較例1〜7のポリマー架橋体は、比較例3を除いて条件2及び条件3を満たさないもので、比較例3についても条件3を満たさないものであった。
条件1:JIS A硬度が90以下
条件2:引裂強さが40kgf/cm以上
条件3: 3 ≦ [(E
23)/(E
160)] ≦ 40(但し、「E
23」は23℃、10Hzでの貯蔵弾性率であり、「E
160」は、160℃、10Hzでの貯蔵弾性率である。)
【0043】
(追加実験)
3種類のLLDPE(LL−A,LL−B,LL−C)、スチレン系熱可塑性エラストマ−(TPS)、天然ゴム(NR)、ブタジエンゴム(BR)を下記表2に示す割合で含むポリマー架橋体を作製し、架橋体のJIS A硬度、引裂強さ、23℃、10Hzでの貯蔵弾性率(E
23)、及び、160℃、10Hzでの貯蔵弾性率(E
160)を測定した。
また、3種類のLLDPE(LL−A,LL−B,LL−C)の融点(Tm)、及び、スチレン系熱可塑性エラストマ−(TPS)のガラス転移温度(Tg)をそれぞれ測定した。
【0044】
【表2】
【0045】
表2に示した成分を含むポリマー架橋体の160℃、10Hzでの貯蔵弾性率(E
160)に対する23℃、10Hzでの貯蔵弾性率(E
23)の比率[(E
23)/(E
160)]と、JIS A硬度との関係、並びに、前記比率と引裂強さとの関係をそれぞれ
図3、4に示す。
図3、4からは、160℃、10Hzでの貯蔵弾性率(E
160)に対する23℃、10Hzでの貯蔵弾性率(E
23)の比率[(E
23)/(E
160)]が適度な範囲内にあることで、無機フィラーを用いなくても強度と柔軟性とに優れたポリマー架橋体が得られることが分かる。
【0046】
以上のことからも、本発明によれば軽量性に優れた靴の形成に有効なアウトソールが提供されることがわかる。