(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1、第2容量素子のうち少なくとも何れか一方、前記出力線路、および前記磁性体コアは、前記出力線路の両端部である前記接続端子および前記出力端子を露出させて、外囲器に収納され、
前記外囲器を前記金属製筺体に固定する際に該金属製筺体に圧着される金属製台座部を備え、
前記金属製台座部は、前記第1、第2容量素子の前記第2の端子に接続されることを特徴とする請求項1に記載の出力ノイズ低減装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のスイッチング電源やその他の電子機器は、自動車分野においては、振動、塵芥、温度などの過酷な周辺環境に対して信頼性等を確保するという観点から、ベースプレートや電子回路基板に区画され、あるいはアルミニウム等の金属製の筺体に収められている場合がある。実装部品が外部とは隔離されて収納されている場合である。この場合、ノイズ低減用の出力ノイズ低減装置に対しても同様に信頼性等の確保が要請されるため、同様に金属製筺体内に実装されることが一般的である。
【0005】
しかしながら、金属製筺体内では、回路素子や配線に生起する容量結合や誘導結合等の電磁的結合や接地電位からのノイズの回り込みなどが、必ずしも十分に抑止されている訳ではない。特に、主たるノイズ源であるスイッチング動作の行われるパワートランジスタと出力端子とは、回路構成上近接しており相互の配置位置も近接して実装される場合がある。このため、パワートランジスタのスイッチング動作により発生したノイズが、寄生の容量成分や誘導成分などによる容量結合や誘導結合等の電磁的結合や、接地配線の引き回しや相互の配置関係に依存したノイズの回り込みにより、本来のノイズ低減機能を奏する出力ノイズ低減装置の出力経路を介さずに出力端子に到達してしまう恐れがある。出力端子への出力経路上に出力ノイズ低減装置を備えていても、この出力ノイズ低減装置を介さずに出力端子にノイズが混入してしまい十分なノイズ低減ができないという問題がある。
【0006】
本願に開示される技術は、上記の課題に鑑み提案されたものであって、金属製筺体に収納された電子機器からのノイズが、電磁的結合や接地電位からの回り込みにより本来の信号経路を介さずに伝搬してしまうことを防止することが可能な出力ノイズ低減装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願に開示される技術に係る出力ノイズ低減装置
の第1の側面は、金属製筺体に収納された電子機器から出力される出力信号に混入するノイズを低減する装置である。出力線路と磁性体コアとを備える。出力線路は、一方の端部を電子機器に係る出力端に接続する接続端子とし、他方の端部を出力端子として、電子機器から出力される出力信号を外部に取り出す線路である。磁性体コアは貫通穴を有し、この貫通穴に出力線路が貫通する。出力線路の他方の端部である出力端子から、磁性体コアの出力線路に沿った出力端子側の一部までは、電子機器からの電磁的結合が抑止される。
また、出力線路の接続端子が金属製筺体の内部において電子機器の出力端に接続され、出力線路の出力端子が出力線路の貫通する金属製筺体の開口を介して金属製筺体より外方に配置された状態で、磁性体コアは、出力端子側の一部が、金属製筺体より外方に位置し、あるいは金属製筺体の開口内に位置する。
【0008】
これにより、少なくとも、磁性体コアに出力線路が貫通することによりチョークコイルとして機能するインダクタンス素子の出力端子側の一部と電子機器との電磁的結合が抑止される。ここで、電磁的結合とは容量結合や誘導結合を含む空間を介したノイズ(電磁ノイズ)の伝搬である。このため、電子機器の動作に起因して発生するノイズは、少なくとも、インダクタンス素子の出力端子側の一部には混入しない。電磁的結合による電磁ノイズの影響が出力端子に伝搬することが抑止されノイズが低減された出力信号が出力される。
また、出力線路および磁性体コアにより構成されるインダクタンス素子において、金属製筺体より外方側あるいは金属製筺体の開口内では、金属製筺体により電子機器からの電磁的結合が抑止される。また、金属製筺体より内方側は、電磁的結合により電磁ノイズが重畳する恐れはあるものの、電磁ノイズの重畳した位置より後段に存在するインダクタンス素子によりノイズは低減される。新たな部材・部品を追加することなく、金属製筺体に対する磁性体コアの取付位置を選択することで電子機器からの電磁的結合の影響を低減してノイズを低減することができる。
【0009】
また、第1容量素子と第2容量素子を備
える。第1容量素子は、第1の端子が磁性体コアと接続端子との間にある出力線路に接続され、第2の端子に接地電位が供給される。第2容量素子は、第1の端子が磁性体コアと出力端子との間にある出力線路に接続され、第2の端子に接地電位が供給される。ここで、接地電位は、金属製筺体を介して供給されるものとする。
【0010】
これにより、出力線路が貫通する磁性体コアにより出力信号の経路に直列に接続されるインダクタンス素子に加えて、インダクタンス素子の両端に、第1、第2容量素子が接続されて、いわゆるπ型フィルタが構成される。π型フィルタを構成する第1、第2容量素子に供給される接地電位は、金属製筺体を介して供給される。金属製筺体は、幅広の形状であるのでインピーダンスが充分に低減されており、ノイズの混入が抑止された安定した接地電位とすることができる。第1、第2容量素子の接地電位としてノイズの少ない安定した接地電位とすることができる。
【0011】
【0012】
また
、第1および第2容量素子は、少なくとも、容量成分を有する本体部分の一部が、金属製筺体より外方に位置し、あるいは金属製筺体の開口内に位置す
る。これにより、インダクタンス素子に加えて、第1、第2容量素
子において、金属製筺体より外方あるいは金属製筺体の開口内に位置する部分で、金属製筺体により電子機器からの電磁的結合が抑止されノイズの重畳は低減される。新たな部材・部品を追加することなく、金属製筺体に対する第1、第2容量素子の取付位置を選択することで電子機器からの電磁的結合の影響を低減してノイズを低減することができる。
【0013】
また、出力端子から、磁性体コアの出力端子側の一部までは、金属製壁に囲まれるものとしてもよい。これにより、出力端子から出力線路を介して、少なくとも、磁性体コアの一部までが金属製壁に囲まれるため、出力端子に至る出力線路および少なくとも、出力線路と磁性体コアとで構成されるインダクタンス素子の出力端子側の一部は、電磁的結合が抑止された領域に配置することができる。電磁的なシールド効果を奏する金属製壁を備えることにより、電磁的結合の抑止を図ることができ、電子機器からのノイズを受けるおそれのある金属製筺体内でも配置することができる。
【0014】
この場合、第1容量素子、第2容量素子、または第1および第2容量素子は、少なくとも、容量成分を有する本体部分の一部が、金属製壁に囲まれるものとしてもよい。これにより、インダクタンス素子に加えて、第1、第2容量素子のうち少なくとも何れか一方の容量成分を有する本体部分の一部は、金属製壁に囲まれ電磁的結合が低減された領域に配置することができる。電磁的なシールド効果を奏する金属製壁を備えることにより、電磁的結合の抑止を図ることができ、電子機器からのノイズを受けるおそれのある金属製筺体内でも配置することができる。
【0015】
また、出力線路および磁性体コア、または、これらに加えて第1、第2容量素子のうち少なくとも何れか一方は、出力線路の両端部である接続端子および出力端子を露出させて、外囲器に収納されていてもよい。これにより、ノイズ低減装置として一体の部品として提供することができる。一体の部品として提供することにより、金属製筺体やこれに収納される電子機器の別を問わず、汎用的に出力信号に混入するノイズの低減用として実装することができる。
【0016】
この場合、外囲器を金属製筺体に固定する際に当該金属製筺体に圧着される金属製台座部を備えており、金属製台座部は、第1、第2容量素子の第2の端子に接続されていてもよい。これにより、第1、第2容量素子の第2の端子を、接地電位である金属製筺体に接続することができる。
また、本願に開示される技術に係る出力ノイズ低減装置の第2の側面は、金属製筺体に収納された電子機器から出力される出力信号に混入するノイズを低減する装置である。出力線路と磁性体コアとを備える。出力線路は、一方の端部を電子機器に係る出力端に接続する接続端子とし、他方の端部を出力端子として、電子機器から出力される出力信号を外部に取り出す線路である。磁性体コアは貫通穴を有し、この貫通穴に出力線路が貫通する。出力線路の他方の端部である出力端子から、磁性体コアの出力線路に沿った出力端子側の一部までは、電子機器からの電磁的結合が抑止される。
また、出力線路の接続端子が金属製筺体の内部において電子機器の出力端に接続され、出力線路の出力端子が出力線路の貫通する金属製筺体の開口を介して金属製筺体より外方に配置された状態で、磁性体コアは、出力端子側の一部が、金属製筺体より外方に位置し、あるいは金属製筺体の開口内に位置する。
また、出力端子から、磁性体コアの出力端子側の一部までは、金属製壁に囲まれる。
これにより、少なくとも、磁性体コアに出力線路が貫通することによりチョークコイルとして機能するインダクタンス素子の出力端子側の一部と電子機器との電磁的結合が抑止される。ここで、電磁的結合とは容量結合や誘導結合を含む空間を介したノイズ(電磁ノイズ)の伝搬である。このため、電子機器の動作に起因して発生するノイズは、少なくとも、インダクタンス素子の出力端子側の一部には混入しない。電磁的結合による電磁ノイズの影響が出力端子に伝搬することが抑止されノイズが低減された出力信号が出力される。
また、出力線路および磁性体コアにより構成されるインダクタンス素子において、金属製筺体より外方側あるいは金属製筺体の開口内では、金属製筺体により電子機器からの電磁的結合が抑止される。また、金属製筺体より内方側は、電磁的結合により電磁ノイズが重畳する恐れはあるものの、電磁ノイズの重畳した位置より後段に存在するインダクタンス素子によりノイズは低減される。新たな部材・部品を追加することなく、金属製筺体に対する磁性体コアの取付位置を選択することで電子機器からの電磁的結合の影響を低減してノイズを低減することができる。
また、出力端子から出力線路を介して、少なくとも、磁性体コアの一部までが金属製壁に囲まれるため、出力端子に至る出力線路および少なくとも、出力線路と磁性体コアとで構成されるインダクタンス素子の出力端子側の一部は、電磁的結合が抑止された領域に配置することができる。電磁的なシールド効果を奏する金属製壁を備えることにより、電磁的結合の抑止を図ることができ、電子機器からのノイズを受けるおそれのある金属製筺体内でも配置することができる。
上記出力ノイズ低減装置の第2の側面の場合、第1容量素子、第2容量素子、または第1および第2容量素子は、少なくとも、容量成分を有する本体部分の一部が、金属製壁に囲まれるものとしてもよい。これにより、インダクタンス素子に加えて、第1、第2容量素子のうち少なくとも何れか一方の容量成分を有する本体部分の一部は、金属製壁に囲まれ電磁的結合が低減された領域に配置することができる。電磁的なシールド効果を奏する金属製壁を備えることにより、電磁的結合の抑止を図ることができ、電子機器からのノイズを受けるおそれのある金属製筺体内でも配置することができる。
また、本願に開示される技術に係る出力ノイズ低減装置の第3の側面は、金属製筺体に収納された電子機器から出力される出力信号に混入するノイズを低減する装置である。出力線路と磁性体コアとを備える。出力線路は、一方の端部を電子機器に係る出力端に接続する接続端子とし、他方の端部を出力端子として、電子機器から出力される出力信号を外部に取り出す線路である。磁性体コアは貫通穴を有し、この貫通穴に出力線路が貫通する。出力線路の他方の端部である出力端子から、磁性体コアの出力線路に沿った出力端子側の一部までは、電子機器からの電磁的結合が抑止される。
また、出力線路の接続端子が金属製筺体の内部において電子機器の出力端に接続され、出力線路の出力端子が出力線路の貫通する金属製筺体の開口を介して金属製筺体より外方に配置された状態で、磁性体コアは、出力端子側の一部が、金属製筺体より外方に位置し、あるいは金属製筺体の開口内に位置する。
これにより、少なくとも、磁性体コアに出力線路が貫通することによりチョークコイルとして機能するインダクタンス素子の出力端子側の一部と電子機器との電磁的結合が抑止される。ここで、電磁的結合とは容量結合や誘導結合を含む空間を介したノイズ(電磁ノイズ)の伝搬である。このため、電子機器の動作に起因して発生するノイズは、少なくとも、インダクタンス素子の出力端子側の一部には混入しない。電磁的結合による電磁ノイズの影響が出力端子に伝搬することが抑止されノイズが低減された出力信号が出力される。
また、出力線路および磁性体コアにより構成されるインダクタンス素子において、金属製筺体より外方側あるいは金属製筺体の開口内では、金属製筺体により電子機器からの電磁的結合が抑止される。また、金属製筺体より内方側は、電磁的結合により電磁ノイズが重畳する恐れはあるものの、電磁ノイズの重畳した位置より後段に存在するインダクタンス素子によりノイズは低減される。新たな部材・部品を追加することなく、金属製筺体に対する磁性体コアの取付位置を選択することで電子機器からの電磁的結合の影響を低減してノイズを低減することができる。
また第3の側面において、出力線路および磁性体コア、または、これらに加えて第1、第2容量素子のうち少なくとも何れか一方は、出力線路の両端部である接続端子および出力端子を露出させて、外囲器に収納されてる。これにより、ノイズ低減装置として一体の部品として提供することができる。一体の部品として提供することにより、金属製筺体やこれに収納される電子機器の別を問わず、汎用的に出力信号に混入するノイズの低減用として実装することができる。
また第3の側面において、外囲器を金属製筺体に固定する際に当該金属製筺体に圧着される金属製台座部を備えており、金属製台座部は、第1、第2容量素子の第2の端子に接続されてる。これにより、第1、第2容量素子の第2の端子を、接地電位である金属製筺体に接続することができる。
【発明の効果】
【0017】
本願に開示される技術に係る出力ノイズ低減装置によれば、少なくとも、磁性体コアの出力端子側の一部と電子機器との電磁的結合を抑止することで、出力信号に混入する電子機器からのノイズを低減することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は本願に係る第1実施形態の回路図である。ノイズ低減装置の一例としてチョークコイルモジュール1がスイッチング電源5の後段に接続されている場合を示す。スイッチング電源5は、アルミダイカスト製などの金属製筺体3に収納されている。
図1においては、チョークコイルモジュール1に関する電気的な作用効果を説明する。
【0020】
スイッチング電源5は、例えば、車載用の電源である。ハイブリッド車あるいは電気自動車等における駆動系の電源電圧VIN(例えば、DC244Vなど)を供給するメインバッテリー(不図示)から電圧値を降圧して補機バッテリー(不図示)への電力供給を行う降圧型のスイッチング電源である。補機バッテリーは、オーディオ機器、エアコン機器、照明機器などの車内電装機器に電源電圧(例えば、DC14V)を供給する。
【0021】
スイッチング電源5は、電源電圧VINと接地電位GNDとの間に直列に接続されるパワートランジスタTとダイオードDとの接続点Xから電力を取り出す。すなわち、パワートランジスタTのゲート端子に印加されるスイッチング信号SWにより所定のスイッチング周波数fでパワートランジスタTのオンオフ制御が繰り返される。パワートランジスタTのオン期間は、電源電圧VINからコイルL0に電流経路が形成され、コイルL0に電磁エネルギーが蓄積される。蓄積されたエネルギーは、パワートランジスタTのオフ期間に、ダイオードDからの電流により出力コンデンサC0を含む出力側に放出される。スイッチング電源5では、これらの動作が所定のスイッチング周波数fで繰り返して行われる。
【0022】
スイッチング電源5では、負荷電流に応じた電流が、接続点Xに向かってパワートランジスタTあるいはダイオードDを介してスイッチング周波数fで交互に流れる。これにより、電源電圧VINおよび接地電位GNDには、スイッチング周波数fで電流が断続して流れる。また、接続点Xの電位は、スイッチング周波数fで電源電圧VINと接地電位GNDとの間で交互に切り替わる。
【0023】
接続点XはコイルL0に接続されている。コイルL0の出力側端子は、他端子が接地電位GNDに接続された出力コンデンサC0とチョークコイルモジュール1とに接続されている。ここで、コイルL0および出力コンデンサC0は、接続点Xの電圧を平滑する役割を有している。これにより、コイルL0と出力コンデンサC0との接続点である原出力端子X1には、接続点Xにおいて交互に繰り返される電源電圧VINと接地電位GNDとの電圧変動が平滑されリップル電圧分の電圧変動を有して原出力電圧が出力される。
【0024】
原出力端子X1の後段にはチョークコイルモジュール1が接続されている。チョークコイルモジュール1により、スイッチング周波数fやその高調波周波数のノイズを低減することができる。ここで、スイッチング電源5におけるスイッチング周波数fは、出力される電力定格や各構成素子の仕様や定格などに応じて定められる。例えば、車載用のスイッチング電源では数100kHzで動作することが考えられる。このため、スイッチング周波数fやその高調波周波数が、車載AMラジオの周波数帯域(500〜1700kHz前後)に重なる場合があり、これらの帯域でのノイズを低減するために、チョークコイルモジュール1が備えられている。
【0025】
チョークコイルモジュール1は、原出力端子X1と出力端子VOとを結ぶ出力電圧経路にチョークコイルL1が設けられた構造を有している。また、チョークコイルL1の出力端子VO側の一部は、金属製筺体3より外方に位置するように配置されている。
【0026】
スイッチング電源5のスイッチング周波数fでのスイッチング動作は、金属製筺体3内に備えられる各回路の各部位に対してノイズ源として影響を与える場合がある。ここで、ノイズとは、パワートランジスタTのオンオフ制御に伴う、電源電圧VINおよび接地電位GNDでの電流変動、および接続点Xでの電源電圧VINおよび接地電位GND間の電圧変動などに起因する高調波ノイズである。例えば、接続点Xの電圧変動に伴う高調波ノイズは、金属製筺体3内の回路要素間や配線間等に介在する寄生の容量成分による容量結合に応じて結合先の回路要素に対して不測の高調波ノイズを招来する恐れがある。また、電源電圧VINや接地電位GNDの電流変動は、金属製筺体3内に配線される電源電圧VINや接地電位GNDの配線経路に介在する寄生の誘導成分による逆起電力に応じて電源電圧VINや接地電位GNDに不測の電圧変動を招来し、この電圧変動に伴う高調波ノイズを招来する恐れがある。このような容量結合や誘導結合などによる電磁的結合に応じて、結合先の回路要素に対して不測の高調波ノイズを招来する恐れがある。
【0027】
こうした高調波ノイズがチョークコイルモジュール1を飛び越えて出力端子VOに伝搬してしまうことで出力電圧にノイズが重畳され、補機バッテリーを介してあるいは直接他の電装機器に対して悪影響を及ぼすノイズとなる場合がある。
【0028】
第1実施形態のチョークコイルモジュール1は、こうしたノイズが出力端子VOに伝搬することを抑止することができる。チョークコイルモジュール1を構成するチョークコイルL1に対しては電磁的結合によるノイズの影響が考えられる。しかしながら、チョークコイルL1のうち金属製筺体3より外方にある領域および金属製筺体3の開口3A(
図5参照)内にある領域では、金属製筺体3が電磁的なシールドの効果を奏するため、スイッチング電源5のスイッチング動作により発生するノイズが伝搬する電磁的結合は抑止される。一方、チョークコイルL1のうち金属製筺体3の内部に収められている領域については、スイッチング動作に伴うノイズが電磁的結合により伝搬するおそれがある。しかしながら、この場合、伝搬したノイズは伝搬位置よりも後段に存在するチョークコイルL1の残余部分を経由して出力端子VOに至る過程で低減される。これにより、チョークコイルモジュール1を構成するチョークコイルL1を介して、ノイズが出力端子VOに伝搬することが低減される。
【0029】
第1実施形態のチョークコイルモジュール1によれば、チョークコイルL1のうち出力端子VO側の一部とスイッチング電源5との間の電磁的結合は金属製筺体3により抑止されている。これにより、電磁的結合によるノイズの伝播が低減される。スイッチング電源5の動作に伴い発生するノイズが出力端子VOに伝搬することが低減され、出力電圧にノイズが混入することを低減することができる。
【0030】
次に、チョークコイルモジュール1のモジュール構成である形状・構造に関して説明する。
図2はチョークコイルモジュール1の分解斜視図である。
図3はチョークコイルモジュール1の各部材を組み立てた状態であり樹脂モールドをする前の状態である。
図4は樹脂モールドされたチョークコイルモジュール1の斜視図である。
【0031】
図1に示す原出力端子X1から出力端子VOをつなぐ出力電圧経路は、バスバー11、出力ピン13、および出力ピン13をバスバー11に連結するナット15で構成される。
【0032】
バスバー11は、銅製の平板棒状の形状を有している。表面は錫等のめっきが施されている。金属製筺体3に装着された状態で、一方の端部にあたるフランジ部11aから、金属製筺体3の外方に向かって延伸する部分を経て略直角に上方に向かって屈曲し他方の端部にあたるフランジ部11bに至る、L字状の形状を有している。フランジ部11a、11bは共に、拡幅された矩形板状の形状を有し、中央部が開口されている。フランジ部11aでは、開口を介してバスバー11と金属製筺体3内に設けられた原出力端子X1とが連結される。例えば、金属製筺体3の底面部に設けられたクリンチングナット(不図示)に、フランジ部11aの開口を介してボルトを螺合するなどして連結される。その他、かしめなどによる係合や溶接などの方法によることもできる。フランジ部11bでは、開口を介してフランジ部11bを挟み込んで出力ピン13とナット15とが連結され出力端子VOとされる。出力ピン13とナット15との連結は、螺合、かしめなどによる係合、溶接などの方法が利用できる。更に、フランジ部11bの根元側両端部には、小径の開口が設けられている。後述する基板19と連結するための開口である。
【0033】
バスバー11に挿通されるフェライトコア17は、外側面の4つの角が面取りされた断面が矩形状の柱状であり、柱軸を含む中央部に幅広矩形状の開口がある。この開口は、フランジ部11aを介してバスバー11に挿通できるように、少なくともフランジ部11aの幅を有する幅広開口である。また、柱軸に平行にスリット17aが設けられており、フェライトコア17における磁気抵抗を調整して磁気飽和の発生を防止している。フェライトコア17をバスバー11に挿通することにより、チョークコイルL1が構成される。
【0034】
基板19は、チョークコイルモジュール1のフランジ部27b(
図4、参照)を構成するために備えられている。幅広矩形状の一方の長辺側中央部は、チョークコイルモジュール1を組み立てた際に出力ピン13およびナット15が干渉しないための半円状の切り欠き部19aが設けられている。また、他方の長辺両角部は斜めに面取りがされている。切り欠き部19aの両端部には、中央部が開口された円筒状の金属部材25が基板19を貫通して固定されている。切り欠き部19aの近傍には、バスバー11を連結するためにバスバー11のフランジ部11bに開口されている小径の開口に一致する位置に開口が設けられている。ボルト、ネジ等21を開口に挿通、螺合等することにより、バスバー11と基板19とを連結するためのものである。螺合の他、かしめ、溶接などの一般的な固定方法を用いることができる。
【0035】
金属部材25は不図示のボルト等を介して金属製筺体3に固定される。螺合、かしめ、溶接など、一般的な固定方法を用いることができる。
【0036】
図4は、組み立てられたチョークコイルモジュール1(
図3)を熱硬化性樹脂でモールドしたモジュール27を示す。熱硬化性樹脂は、フェライトコア17に過度な圧力を加えないために使用される。フェノール樹脂やエポキシ樹脂等が使用される。
【0037】
モジュール27は、コア部27aとフランジ部27bとで構成されている。コア部27aは、バスバー11に挿通されているフェライトコア17をバスバー11と共にバスバー11の配線方向を軸として円筒状にモールドした形状である。フランジ部27bは、基板19、金属部材25、および基板19とバスバー11との接続部を、金属部材25の軸方向両端面を露出させてコア部27aの円筒軸に直交する面を矩形面状としてモールドされたものである。
【0038】
図5に示すように、チョークコイルモジュール1は、フランジ部27bのコア部27a側の端面(内方端面)が金属製筺体3の外方端面に対向した状態で取り付けられる。金属部材25の開口を介して金属製筺体3にネジ・ボルト等(不図示)により螺合して、モジュール27が金属製筺体3に取り付けられる。これにより、フランジ部27bと金属製筺体3との両端面が密着して取り付けられるので、チョークコイルモジュール1を金属製筺体3に確実に固定して取り付けることができる。尚、取り付けは、螺合の他、かしめや溶接などの一般的な固定方法を用いることができる。
【0039】
ここで、フェライトコア17は、バスバー11のフランジ部11a側の端部から中間領域まではコア部27aにおいてモールドされている一方(
図5中の領域(2))、残りの領域はフランジ部27bにおいてモールドされている(
図5中の領域(1))。モジュール27を金属製筺体3に固定する際、フランジ部27bの内方端面が金属製筺体3の外方端面と密着する状態で固定されるので、モジュール27内に収められているフェライトコア17のうち領域(1)にある部分および領域(2)のうちの金属製筺体3の開口3A内にある部分は、金属製筺体3が介在して金属製筺体3の内部からの電磁的結合は抑止される。このため、内部のスイッチング電源5の動作に伴うノイズがフェライトコア17を介して出力ピン13(出力端子VO)に伝わることはない。
【0040】
また、フェライトコア17の領域(2)のうち金属製筺体3の開口3Aより内側にある部分については、電磁的結合の影響を受ける場合も考えられ、スイッチング電源5の動作に伴うノイズがフェライトコア17・バスバー11に伝わるおそれがある。しかしながら、ノイズ伝播の位置から後段に存在するフェライトコア17の領域(2)更にフェライトコア17の領域(1)によるインダクタンス成分がチョークコイルとして機能するので、ノイズは低減されることとなる。
【0041】
図6は本願に係る第2実施形態の回路図である。ノイズ低減装置の一例として、第1実施形態におけるチョークコイルモジュール1に代えてπ型フィルタモジュール1−1を備える場合について説明する。π型フィルタモジュール1−1は、第1実施形態のチョークコイルモジュール1の構成に加えて、モジュール内にコンデンサC0−1、C1−1を含む構成である。第1実施形態と同様の構成については第1実施形態と同じ符号を付し、以下での説明を省略する。
【0042】
第2実施形態では、出力コンデンサC0に代えてコンデンサC0−1が備えられる。コンデンサC0−1は、チョークコイルL1、コンデンサC1−1と共に、π型フィルタモジュール1−1を構成する。ここで、コンデンサC0−1は、スイッチング電源5における出力コンデンサを兼ねることもできる。パワートランジスタTのオン期間にコイルL0に蓄積された電磁エネルギーが、パワートランジスタTのオフ期間に出力コンデンサとして機能するコンデンサC0−1を含む出力側に放出される。
【0043】
π型フィルタモジュール1−1は、チョークコイルモジュール1に代えて原出力端子X1の後段に接続されている。π型フィルタモジュール1−1は、原出力端子X1と出力端子VOとを結ぶ出力電圧経路に設けられるチョークコイルL1に加えて、チョークコイルL1の各端子と接地電位GNDとの間に、コンデンサC0−1、C1−1が備えられる構成である。また、チョークコイルL1の出力端子VO側の一部が金属製筺体3−1の外方および金属製筺体3−1の開口内に位置することに加えて、コンデンサC0−1、C1−1が、金属製筺体3−1より外方に位置するように配置されている。
【0044】
第2実施形態のπ型フィルタモジュール1−1は、第1実施形態のチョークコイルモジュール1の場合と同様に、スイッチング電源5のスイッチング動作に起因する電圧変動に伴って生ずる高調波ノイズが出力端子VOに伝搬することを低減する。
【0045】
すなわち、π型フィルタモジュール1−1を構成するチョークコイルL1の一部は、金属製筺体3−1より外方および金属製筺体3−1の開口内にあり、金属製筺体3−1の電磁的なシールド効果により電磁的結合は抑止される。その結果、この部分への電磁的結合によるノイズの伝搬は抑止される。一方、チョークコイルL1のうち金属製筺体3−1の内部に収められている領域については、電磁的結合によりノイズが伝搬するおそれがある。しかしながら、この場合、伝搬したノイズはπ型フィルタ1−1によるフィルタリング作用により出力端子VOに至る過程で低減する。
【0046】
これにより、π型フィルタモジュール1−1のうちチョークコイルL1を介する電磁的結合は抑止され、電磁的結合によるノイズの伝播は低減する。
【0047】
また、π型フィルタモジュール1−1を構成するコンデンサC0−1、C1−1についても、電磁的結合によるノイズの伝搬は抑止される。コンデンサC0−1、C1−1が金属製筺体3−1より外方にあり金属製筺体3−1の電磁的なシールド効果により電磁的結合が抑止されるからである。また、接地電位GNDを介する電圧変動の回り込みも抑止される。コンデンサC0−1、C1−1に供給される接地電位GNDは、金属部材25を介して金属製筺体3−1から供給されている。金属製筺体3−1は幅広板状の形状を有しているのでインピーダンスは充分に低いからである。低インピーダンスであるため供給される接地電位GNDに電圧変動が混入することが抑制され、ノイズが抑止された安定した接地電位GNDを維持することができる。
【0048】
これにより、π型フィルタモジュール1−1のうちコンデンサC0−1,C1−1を介する電磁的結合は抑止され、更に、接地電位GNDを介した電圧変動の回り込みは抑止される。電磁的結合や接地電位を介した電圧変動の回り込みによる出力端子VOへのノイズの伝播は抑止される。
【0049】
π型フィルタモジュール1−1を構成するチョークコイルL1、およびコンデンサC0−1、C1−1を介するノイズの伝搬が抑止されるので、スイッチング電源5の動作に伴い発生するノイズが出力端子VOに伝搬することが抑止され、出力電圧にノイズが混入することを抑止することができる。
【0050】
次に、π型フィルタモジュール1−1のモジュール構成である形状・構造に関して説明する。
図7はπ型フィルタモジュール1−1の各部材を組み立てた状態であり樹脂によるモールドを行う前の状態である。
図8は樹脂モールドされたπ型フィルタモジュール1−1の斜視図である。第1実施形態と同様の構成については第1実施形態と同じ符号を付し、以下での説明を省略する。
【0051】
基板19には、各金属部材25に隣接する領域に、チップコンデンサ31が実装されている。チップコンデンサ31は、基板19上に刻設された不図示の配線パターンを介して各端子が電気的に接続される。一方側(
図7において右方側)に配置されているチップコンデンサ31の一群は、一部のチップコンデンサ31が部分的に直列接続され、直列接続されたもの同士が更に並列に接続されており、並列接続された一方の端子は、ボルト、ネジ等21を介して出力ピン13に接続され、並列接続された他方の端子は、一方側(
図7において右方側)に配置されている金属部材25に接続されている。ここで、出力ピン13は出力端子VOとされ金属部材25には接地電位GNDが供給されている。一方側(
図7において右方側)に配置されているコンデンサ31の一群で、コンデンサC1−1を構成する。同様に、他方側(
図7において左方側)に配置されているチップコンデンサ31の一群は、一部のチップコンデンサ31が部分的に直列接続され、直列接続されたもの同士が更に並列に接続されており、並列接続された一方の端子は、バスバー11のフランジ部11aに接続され(後述)、並列接続された他方の端子は、他方側(
図7において左方側)に配置されている金属部材25に接続されている。ここで、フランジ部11aは原出力端子X1に接続され金属部材25には接地電位GNDが供給されている。他方側(
図7において左方側)に配置されているコンデンサ31の一群で、コンデンサC0−1を構成する。
【0052】
尚、金属部材25に接地電位GNDを供給するために、モジュールが金属製筺体3−1に取り付けられる際には、金属部材25は金属製筺体3に圧接されることが好ましい。取り付けは、螺合の他、かしめや溶接などの一般的な固定方法を用いることができる。
【0053】
他方側(
図7において左方側)に配置されているチップコンデンサ31群については、並列接続された一方の端子をバスバー11のフランジ部11aに接続するために、両端に圧着端子35を圧着したリード線33が備えられている。一方の圧着端子35は、基板19上に刻設され一方の端子に接続される。他方の圧着端子35は、フランジ部11aと共に原出力端子X1と連結される。圧着端子35の接続、連結は、ネジ37等による螺合のほか、かしめなどによる係合や溶接など、電気的に接続できる方法を利用することができる。
【0054】
また、リード線33は、インピーダンスが充分に低く流れる動作電流に応じて不要な電圧変動が生ずることのない電流容量が確保されるものであれば適用可能である。この場合、一部を樹脂モールドにより固定保護すると共に露出部分には被覆線を用いるなどして、他所との接触、短絡等のない構成とすることは言うまでもない。
【0055】
ここで、基板19はフランジ部27b内にモールドされるので、コンデンサC0−1、C1−1を構成するチップコンデンサ31もフランジ部27b内にモールドされることとなる。π型フィルタモジュール1−1を実装する場合、フランジ部27bの内方端面が金属製筺体3−1の外方端面と密着する状態で固定される。これにより、フェライトコア17のうち金属製筺体3−1より外方にある部分および金属製筺体3−1の開口内にある部分と同様に、コンデンサC0−1、C1−1は、金属製筺体3−1が介在して金属製筺体3−1の内部からの電磁的結合が抑止される。その結果、フェライトコア17を介する電磁的結合が抑止されるのと同様に、コンデンサC0−1、C1−1を介して電磁的結合により出力ピン13(出力端子VO)にノイズが伝わることが抑止される。
【0056】
また、チョークコイルL1のうち金属製筺体3−1の開口より内側にある部分については、電磁的結合の影響を受ける場合も考えられるが、電磁的結合により伝搬したノイズはπ型フィルタ1−1によるフィルタリング作用により出力端子VOに至る過程で低減されることとなる。
【0057】
また、フランジ部27bに内包されているチップコンデンサ31に接続されている接地電位GNDは、充分にインピーダンスの低い金属製筺体3−1から供給されている。このため、スイッチング電源5の動作に起因する電圧変動がチップコンデンサ31に供給されている接地電位GNDに回り込むことを抑止することができる。コンデンサC0−1、C1−1への接地電位GNDを介した回り込みによる電圧変動は抑止され、出力ピン13(出力端子VO)に回り込みによる不測のノイズが伝わることが抑止される。
【0058】
ここで、スイッチング電源5は電子機器の一例であり、出力電圧は出力信号の一例ある。また、出力電圧経路、バスバー11は出力線路の一例であり、バスバー11のフランジ部11aは接続端子の一例であり、原出力端子X1は電子機器に係る出力端の一例であり、バスバー11のフランジ部11b、出力ピン13、およびナット15は出力端子の一例である。また、フェライトコア17は磁性体コアの一例である。また、コンデンサC0−1は第1容量素子の一例であり、コンデンサC1−1は第2容量素子の一例である。また、金属部材25は金属製台座部の一例である。
【0059】
以上、詳細に説明したように、本願に開示される第1実施形態のチョークコイルモジュール1によれば、フェライトコア17の出力端子VO側の一部が金属製筺体3より外および金属製筺体3の開口3Aの内部にあるため、チョークコイルモジュール1を構成するチョークコイルL1の出力端子VO側の一部とスイッチング電源5との容量結合が金属製筺体3より抑止される。金属製筺体3より外方および金属製筺体3の開口3Aの内部にあるチョークコイルL1には、スイッチング電源5の動作に起因して発生するノイズの混入は抑止され、出力端子VOにノイズが伝搬することが抑止される。
【0060】
チョークコイルL1のうち金属製筺体3の内部に収められている領域には、スイッチング電源5の動作に伴うノイズが電磁的結合により伝搬する場合がある。しかしながら、伝搬したノイズはチョークコイルL1の後段部を経由して出力端子VOに至る過程でチョークコイルモジュール1により低減される。金属製筺体3の内部にあるチョークコイルL1に混入したノイズは、チョークコイルモジュール1により低減されノイズとして出力端子VOに伝搬することは抑止される。逆に、チョークコイルL1の一部が金属製筺体3の内部に収められていれば、外界のノイズが電磁的結合してチョークコイルL1に伝わることはなく金属製筺体3の内部に伝わることはない。金属製筺体3が有する電磁的結合の遮断効果と相まって、外界のノイズが筺体内部に入ることが防止される。これにより、金属製筺体3の内部に実装されている回路は外乱の影響を受けることがなく、安定した動作が可能となる。
【0061】
また、個別部品を個々に金属製筺体3内に配置して結線する場合には、部品相互の位置関係や配線の引き回しによって電磁的結合の程度が変化するため、電磁的結合を低減するためには、配置や配線の引き回し等を様々に検討して配置の位置決めや配線の決定をすることが必要である。これに対して、チョークコイルモジュール1をモジュール27として金属製筺体3に装着することで、これらの配置や配線の引き回し等を考慮することなく電磁的結合を低減してノイズを低減することができる。従ってスイッチング電源5等の電子機器が収納されている金属製筺体3内での個々の回路配置や配線の引き回し等を、ノイズの混入状況に応じて金属製筺体3内の電子機器や筺体の仕様・定格ごとに最適化する必要はない。低減すべきノイズ帯域に応じて汎用的に使用して効果を奏することができる。簡易かつ簡単に、そして汎用的に出力信号に混入するノイズの低減を図ることができる。
【0062】
また、モジュール27のうちフランジ部27bのモールドの厚みは、基板19、バスバー11のフランジ部11b、出力ピン13、およびナット15等によりモジュール27を組み立てた際の厚み、あるいは金属部材25の厚みで規定される。これらの厚みはスイッチング電源5等の電子機器が収納されている金属製筺体3のサイズからすれば僅少なものとすることができる。第1実施形態のチョークコイルモジュール1では、内蔵に代えてフランジ部27bが金属製筺体3より外方に突出するのであるが、フランジ部27bの厚みは僅少であり、チョークコイルモジュール1を金属製筺体3に内蔵する場合に比して、実装容積の増大は軽微に抑えることができる。
【0063】
また、チョークコイルモジュール1をモジュール27で構成するため、振動、塵芥、温度等の周辺環境に対する信頼性を確保することもできる。
【0064】
また、本願に開示される第2実施形態のπ型フィルタモジュール1−1は、第1実施形態のチョークコイルモジュール1において奏する作用効果と同様の作用効果を奏する。加えて、π型フィルタモジュール1−1を構成するコンデンサC0−1、C1−1について、スイッチング電源5との間の電磁的結合が抑止される。π型フィルタモジュール1−1がフランジ部27bを金属製筺体3−1より外方に設置して取り付けられた際、フランジ部27b内に収納されているコンデンサC0−1、C1−1が金属製筺体3−1より外方に配置され、金属製筺体3−1により電磁的にシールドされるからである。
【0065】
また、フランジ部27b内に収納されているコンデンサC0−1、C1−1の接地電位GNDは金属部材25を介して金属製筺体3−1から供給されるため、接地電位GNDに混入するスイッチング電源5の動作に伴う電圧変動が抑止される。金属製筺体3−1は充分に低いインピーダンスを有しているため、スイッチング電源5の動作に伴って生ずる過渡的な動作電流の流れに伴う電圧変動が金属製筺体3−1に伝搬することが抑止されるからである。これにより、接地電位GNDを介したコンデンサC0−1、C1−1への電圧変動の回り込みは抑止される。
【0066】
コンデンサC0−1、C1−1への電磁的結合の抑止および接地電位GNDを介した電圧変動の回り込みの抑止により、コンデンサC0−1、C1−1を介した電圧変動が出力端子VOに伝搬することが抑止される。
【0067】
また、第2実施形態のπ型フィルタモジュール1−1は、第1実施形態のモジュール27内に実装されている部品に、チップコンデンサ31、リード線33、リード線33の端部に取り付けられている圧着端子35、圧着端子35を締結するネジ37を新たに加えてモールドされている。しかしながら、これらの追加部品の実装による厚みは僅少であり、モジュール27のフランジ部27bの厚み内に収納することは可能である。したがって、π型フィルタモジュール1−1におけるフランジ部27bの厚みは、第1実施形態のフランジ部27bを同等であるとすることができる。第1実施形態の場合と同様に、フランジ部27bが金属製筺体3−1より外方に突出するのであるが、フランジ部27bの厚みは僅少であり、π型フィルタモジュール1−1を金属製筺体3−1に内蔵する場合に比して、実装容積の増大は軽微に抑えることができる。
【0068】
尚、本願に開示される技術は前記実施形態に限定されるものではなく、趣旨を逸脱しない範囲内での種々の改良、変更が可能であることは言うまでもない。
例えば、実施形態では、フェライトコア17の出力端子VO側の一部がフランジ部27bに収められて金属製筺体3、3−1より外方に位置することで、金属製筺体3、3−1を利用して、スイッチング電源5等の金属製筺体3、3−1の内部との電磁的結合を抑止してノイズの混入を低減することを説明した。しかしながら、本願はこれに限定されるものではない。フェライトコア17がコア部27aに収められ、出力端子VO側の先端部が金属製筺体3、3−1より外方に飛び出さず金属製筺体3の開口内に位置する場合にも、金属製筺体3、3−1を利用して電磁的結合を抑止しノイズの混入を低減することができる。
【0069】
また、モジュール27の全体、またはフェライトコア17の出力端子VO側の一部があるコア部27aやフランジ部27bを金属製部材で囲んで電磁シールドをしてやれば、電磁的結合を抑止することができる。この場合、電磁シールドを施すべき部位は、出力端子VOから、少なくとも、フェライトコア17の出力端子VO側の一部までの領域であればよい。これにより、電磁的結合が抑止されて、出力電圧にノイズが混入することを抑止することができる。
【0070】
また、第1実施形態のモジュール27では、金属製筺体3への確実な固定のためにフランジ部27bを備える場合について説明したが、本願はこれに限定されるものではない。モジュール27のうちフランジ部27bを備えずコア部27aのみを備える略円筒状の形状とすることもできる。
【0071】
また、実施形態では、フェライトコア17には柱軸に平行にスリット17aが設けられているとして説明した。しかしながら、本願はこれに限定されるものではない。スリット17aが設けられるのは、フェライトコア17における磁気抵抗を調整して磁気飽和の発生を防止するためである。したがって、フェライトコア17の体格や流れる電流定格などによっては、スリットを設けなくとも磁気飽和を生じない構成とすることが可能であることは言うまでもない。
【0072】
また、実施形態では、チョークコイルモジュール1、π型フィルタモジュール1−1をモールドする樹脂として熱硬化性樹脂を使用する場合について説明したが、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、PPS、ポリカーボネート樹脂などの熱可塑性樹脂を使用することができることは言うまでもない。
【0073】
また、第2実施形態では、コンデンサC0−1、C1−1が共に基板19にチップコンデンサ31として実装され、金属製筺体3−1より外方に配置されるものとして説明した。しかしながら、本願はこれに限定されるものではない。基板やモジュールなどの構成に応じて、チップコンデンサ31の一部、あるいはコンデンサC0−1、C1−1の何れか一方に対応するチップコンデンサ31が、金属製筺体3−1より外方あるいは金属製筺体3−1の開口内に配置され、他は金属製筺体3−1内に配置される構成とすることも可能である。コンデンサC0−1、C1−1の一部について電磁的結合を抑止することができれば、コンデンサC0−1、C1−1を介して出力端子VOにノイズが伝搬することを抑止することができる。
【0074】
また、第2実施形態では、コンデンサC0−1、C1−1が共に基板19にチップコンデンサ31として実装され、金属部材25を介して金属製筺体3−1から接地電位GNDが供給されるものとして説明した。しかしながら、本願はこれに限定されるものではない。基板やモジュールなどの構成に応じて、チップコンデンサ31の一部についてのみ、あるいはコンデンサC0−1、C1−1の何れか一方に対応するチップコンデンサ31についてのみ、供給される接地電位GNDが金属製筺体3−1を介して供給される構成としてもよい。コンデンサC0−1、C1−1の一部について接地電位GNDからの電源変動の回り込みを抑止することができれば、コンデンサC0−1、C1−1を介して出力端子VOにノイズが伝搬することを抑止することができる。
【0075】
また、第1実施形態ではチョークコイルモジュール1を、第2実施形態ではπ型フィルタモジュール1−1を、ノイズ低減装置の一例として説明したが、本願はこれに限定されるものではない。例えば、
図6乃至8に記載したπ型フィルタモジュール1−1から、コンデンサC0−1を除き、チョークコイルL1およびコンデンサC1−1とでLCフィルタモジュールを構成することもできる。LCフィルタモジュールとして、チョークコイルL1およびコンデンサC1−1について、第1および第2実施形態の場合と同様に、電磁的結合および接地電位GNDを介した電圧変動の回り込みが抑止されるとの作用効果を奏することは明らかである。
【0076】
また、第1実施形態におけるコイルL0および出力コンデンサC0(
図1を参照)、第2実施形態におけるコイルL0(
図6)、更にLCフィルタモジュールを構成する場合にはコイルL0および出力コンデンサC0−1を、第1、第2実施形態と同様なモジュール構成とすれば、これらの素子に対する電磁的結合の抑止、電源変動の回り込みの抑止について、同様な作用効果を奏することができる。
【0077】
また、第2実施形態では、コンデンサC0−1、C1−1への接地電位GNDの供給は、金属製筺体3−1を介して行うものとして説明した。しかしながら、本願はこれに限定されるものではない。コンデンサC0−1、C1−1に供給される接地電位GNDに、スイッチング電源5の動作に起因する電圧変動が伝搬することを抑止する構成であればよい。例えば、スイッチング電源5の動作により流れる動作電流が通過する接地線経路では、経路のインピーダンスが低い場合であっても流れる動作電流によっては電圧降下が生じる場合があり接地線経路に電圧変動が生じてしまう場合もある。また、接地線経路に寄生のインダクタンス成分があれば動作電流の断続に応じて電磁誘導により逆起電力が生じ、接地線経路に電位差が生ずる場合があり接地線経路に電圧変動が生じてしまう場合もある。こうした接地線経路の電圧変動をコンデンサC0−1、C1−1に供給される接地電位GNDに伝搬させないためには、第2実施形態で説明した金属製筺体3−1のように充分に低いインピーダンスを有する経路を介して接地電位GNDを供給することが一例である。他の例としては、例えば、スイッチング電源5に接地電位を供給する接地線経路と、コンデンサC0−1、C1−1に接地電位GNDを供給する接地線経路とを、接地電位を供給する大元の接地端子から分岐して結線することが考えられる。これにより、スイッチング電源5の動作に応じて接地電位に流れる動作電流はコンデンサC0−1、C1−1に接地電位GNDを供給する接地線経路から分岐された接地線経路を流れることとなる。コンデンサC0−1、C1−1に供給される接地電位GNDへの動作電流の影響を排除することができる。この結果、スイッチング電源5の動作による接地電位の電圧変動が回り込むことを防止することができる。