(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
被検者の頭部に対して相互に対向配置されたX線照射部とX線検出部とを有する旋回アームと、この旋回アームを保持する保持フレームと、この保持フレームを支持する支持本体と、この支持本体に取り付けられる水平フレームと、この水平フレームの先端部に設けられた被検者を所定の撮影位置に支持する被検者保持装置と、を備え、
前記被検者保持装置は、被検者の顎を所定角度に保持する保持部を有すると共に、前記被検者保持装置の保持部は、前記被検者保持装置に設けられた固定孔部に、挿入される取付部と、この取付部に連接する基部と、この基部と直交する方向に設けられた支持軸と、この支持軸に対して20°〜50°の角度で設けられた顎を保持する載置部と、を有し、
前記X線検出部に対して被検者のドイツ水平面が所定角度傾けた状態で前記被検者保持装置に被検者を保持し、前記旋回アームを所定位置に固定して、前記X線照射部からX線を照射し、前記X線検出部で所定のX線データを検出し、この検出データに基づきX線画像データを表示することを特徴とするX線撮影装置。
前記旋回アームは、前記保持フレームに対して水平移動させる旋回軸位置設定手段を有し、前記被検者に前記X線検出部を接近させる方向に水平移動することを特徴とする請求項1に記載のX線撮影装置。
被検者の頭部に対して相互に対向配置されたX線照射部とX線検出部とを有する旋回アームと、この旋回アームを保持する保持フレームと、この保持フレームを支持する支持本体と、この支持本体に取り付けられる水平フレームと、この水平フレームの先端部に設けられ、被検者の顎を所定角度に保持する保持部を有し、被検者を所定の撮影位置に支持する被検者保持装置と、を備えたX線撮影装置を用いてX線撮影する方法であって、
前記被検者保持装置の保持部は、前記被検者保持装置に設けられた固定孔部に、挿入される取付部と、この取付部に連接する基部と、この基部と直交する方向に設けられた支持軸と、この支持軸に対して20°〜50°の角度で設けられた顎を保持する載置部と、を有し、前記被検者保持装置に前記X線検出部に対して被検者のドイツ水平面が所定角度傾けた状態で被検者を保持し、前記旋回アームを所定位置で停止させた後、前記X線照射部からX線を照射し、前記X線検出部で所定のX線データを検出することを特徴とするX線撮影方法。
前記X線検出部を被験者側に近づけるように、前記旋回アームを第1の方向へ水平移動させた後、前記X線照射部からX線を照射し、前記X線検出部で所定のX線データを検出することを特徴とする請求項5に記載のX線撮影方法。
X線照射の前に、更に、前記X線検出部の中心を被検者の撮影対象の中心に位置するように、前記旋回アームを前記第1の方向とは直交する第2の方向に移動させることを特徴とする請求項5又は請求項6に記載のX線撮影方法。
【背景技術】
【0002】
歯科、耳鼻科などに用いられるアーム型頭頸部X線撮影装置において、被検者の頭部を位置決め保持し、平面断層撮影と曲面断層撮影とが共用できるものがある。かかる装置においては、上方に位置する顎関節と、下方に位置する下顎先端のように、上下に離れた部位を照射野の中心に位置する必要がある。
【0003】
被検者の頭部を位置決めする装置としては、例えば、被検者の下顎が載置されるチンレスト、被検者の頭部の前額面と当接する前頭部押さえ部材と、被検者の両側頭部に当接される一対の側頭部押さえ部材とで構成されている。
【0004】
被検者の身長等に合わせて、チンレストを保持する水平フレーム等を上下に移動させた後、上記のチンレストを被検者の前後方向に変位させると共に、前頭部押さえ部材に被検者の前額面を当接させ、側頭部押さえ部材で両側頭部を押さえて、被検者の撮影部位がX線照射面に一致するように被検者の位置決めを行った後に、撮影を行っている。
【0005】
一方、耳鼻咽喉科専用のX線撮影装置は、
図18に示すようなものがある。このX線撮影装置は、床面に設置されるベース101に、垂直に支柱102が取り付けられ、この支柱102には、上下移動可能及び任意の高さで固定可能にアームホルダー103が設けられている。
【0006】
このアームホルダー103には、アーム104が水平軸に関して水平軸に対して回転可能に支持され、更にアーム104の両端にはX線管105と撮影台106がそれぞれ搭載されている。耳鼻咽喉撮影は、撮影台106上に被検者の頭部を撮影台に顔を向けて載せた状態で行われる。
【0007】
耳鼻咽喉撮影では、撮影対象部位を的確にフィルム等に写し込むために、撮影台に対して被検者の頭部を正確に角度付けする必要がある。すなわち、人体を左右に2等分する矢状線いわゆる正中線(C)(
図19(a)参照)、眼窩下縁と耳孔とを結ぶ眼窩下線耳孔線いわゆるドイツ水平線(D)(
図19(b)参照)、外眼角と外耳孔とを結ぶ眼窩耳孔線いわゆるOMライン(OM)(
図19(c)参照)等の人体線を撮影法に応じて使い分け、この線を撮影台106に対して正確に角度付けすることが非常に重要である。
【0008】
この正確な角度付けのために、従来は、フィッシャ角度計と呼ばれる撮影補助具が使われている。フィッシャ角度計は、金属製の分度器と可動針とからなり、分度器を参照して撮影法に応じて可動針の角度を合わせ、その可動針に対してドイツ水平線等が重なるように被検者の頭部の角度を調整する。
【0009】
しかし、被検者の頭部が部分的にフィッシャ角度計の影になり、被検者のドイツ水平線等を正確に認識することが困難な場合があり、角度付けの精度が、放射線技師や補助者の経験や技量によって不安定なるなどの傾向が強かった。
【0010】
そこで、簡単にして、正確な角度付けを実現する撮影補助具が特許文献1に提案されている。
【0011】
この特許文献1に提案されている撮影補助具は、耳鼻咽喉X線撮影台に対する被検者の頭部の角度付けを補助するものであり、互いに直交する位置関係にある面を有する透明板に基準性が記され、透明板を通して基準線と被検者の頭部とを同時に確認することで、正確な角度付けを実現するものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上記した耳鼻咽喉科専用のX線撮影装置においては、撮影台106上に被検者の頭部を撮影台に顔を向けて載せた状態で行われるので、被検者にとっては、撮影台と向き合うことになり、圧迫感やその体勢を保持することが大変である。上記した、撮影補助具においいても、撮影方法は、撮影台106上に被検者の頭部を撮影台に顔を向けて載せた状態で行うことを前提としており、被検者にとっては、圧迫感等の問題は何ら解消されていない。
【0014】
また、アーム型頭頸部X線撮影装置の旋回アームに配置されたX線検出部に被検者を直接触れさせると、旋回アーム部分に負荷がかかり、撮影後旋回アームの調整が必要になり、その調整に時間がかかるという難点がある。
【0015】
この発明は、被検者がX線検出部に当接することなく、耳鼻咽喉科のX線撮影を行えるX線撮影装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
この発明のX線撮影装置は、被検者の頭部に対して相互に対向配置されたX線照射部とX線検出部とを有する旋回アームと、この旋回アームを保持する保持フレームと、この保持フレームを支持する支持本体と、この支持本体に取り付けられる水平フレームと、この水平フレームの先端部に設けられた被検者を所定の撮影位置に支持する被検者保持装置と、を備え、前記被検者保持装置は、被検者の顎を所定角度に保持する保持部を有
し、前記X線検出部に対して被検者のドイツ水平面が所定角度傾けた状態で前記被検者保持装置に被検者を保持
し、前記旋回アームを所定位置に固定して、前記X線照射部からX線を照射し、前記X線検出部で所定のX線データを検出し、この検出データに基づきX線画像データを表示することを特徴とする。
【0017】
また、前記被検者保持装置の保持部は、前記水平フレームと平行な軸に対して20°〜50°の角度を有して設けられている。
【0018】
また、前記被検者保持装置の保持部は、前記被検者保持装置に設けられた固定孔部に、挿入される取付部と、この取付部に連接する基部と、この基部と直交する方向に設けられた支持軸と、この支持軸に対して20°〜50°の角度で設けられた顎を保持する載置部と、を有するように構成することができる。
【0019】
また、前記載置部に、被検者の顎が入り込む凹所を設けるとよく、前記載置部は、矩形状の板部の中央部に前記凹所を設けるとよい。
【0020】
また、前記旋回アームは、前記保持フレームに対して水平移動させる旋回軸位置設定手段を有し、前記被検者に前記X線検出部を接近させる方向に水平移動するように構成すればよい。
【0021】
この発明のX線撮影方法は、被検者の頭部に対して相互に対向配置されたX線照射部とX線検出部とを有する旋回アームと、この旋回アームを保持する保持フレームと、この保持フレームを支持する支持本体と、この支持本体に取り付けられる水平フレームと、この水平フレームの先端部に設けら
れ、被検者の顎を所定角度に保持する保持部を有し、被検者を所定の撮影位置に支持する被検者保持装置と、を備
えたX線撮影装置を用いてX線撮影する方法であって、前記被検者保持装置は、
前記被検者保持装置に
前記X線検出部に対して被検者のドイツ水平面が所定角度傾けた状態で被検者を保持
し、前記旋回アームを所定位置で停止させ
た後、前記X線照射部からX線を照射し、前記X線検出部で所定のX線データを検出することを特徴とする。
【0022】
また、前記X線検出部を被検者側に近づけるように、前記旋回アームを水平に第1の方向に移動させた後、前記X線照射部からX線を照射し、前記X線検出部で所定のX線データを検出するように構成することができる。
【0023】
更に、前記X線検出部の中心を被検者の撮影対象の中心に位置するように、前記旋回アームを前記第1の方向とは直交する第2の方向に移動させた後、前記前記X線照射部からX線を照射し、前記X線検出部で所定のX線データを検出するように構成することができる。
【0024】
また、前記X線検出部に対して被検者のドイツ水平面が20°〜50°になるように、被検者を前記被検者保持装置に保持させた後、前記X線照射部からX線を照射し、前記X線検出部で所定のX線データを検出するように構成することができる。
【発明の効果】
【0025】
この発明は、被検者とX線検出部とは、被検者の顔を当接することがない体位で保持された状態でX線撮影が行えるので、被検者に圧迫感等を与えることがなくその体位を維持することができる。また、X線検出部には、被検者の顔は当接することなく撮影を行えるので、旋回アーム部分に負荷を与えることがなく、旋回アームの再調整も不要となる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】この発明のX線撮影装置の基本構成を説明するブロック図である。
【
図2】この発明のX線撮影装置の全体構成を示す斜視図である。
【
図3】この発明のX線撮影装置の全体構成を示す斜視図である。
【
図4】この発明のX線撮影装置の全体構成を示す正面図である。
【
図5】この発明のX線撮影装置の被検者保持部を示す斜視図である。
【
図6】この発明のX線撮影装置の被検者保持部を示す斜視図である。
【
図7】この発明のX線撮影装置に用いられるチンレストを示す斜視図である。
【
図8】この発明のX線撮影装置に用いられるチンレストを示す正面図である。
【
図9】この発明のX線撮影装置に用いられるチンレストを示す背面図である。
【
図10】この発明のX線撮影装置に用いられるチンレストを示す側面図である。
【
図11】パーソナルコンピュータ等の操作手段に表示される操作パネル画面の一例を示す図である。
【
図12】操作パネルのタッチパネルの画面の一例を示す図である。
【
図13】操作パネルのタッチパネルの画面の一例を示す図である。
【
図14】この発明のX線撮影装置に被検者を位置づけした状態を示す側面図である。
【
図15】この発明のX線撮影装置に被検者を位置づけした状態を示す側面図である。
【
図16】この発明のX線撮影装置に被検者を位置づけしたときの人体基準線との関係を示す側面図である。
【
図17】この発明のX線撮影装置に被検者を位置づけしたときの人体基準線との関係を示す上面図である。
【
図18】耳鼻咽喉科専用のX線撮影装置を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、被検者(患者)Oの頭部をX線撮影するX線撮影装置の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付し、説明の重複を避けるためにその説明は繰返さない。
【0028】
図1は、X線撮影装置の基本構成を説明するブロック図である。このX線撮影装置は、被検者OにX線を照射するX線照射部51と、被検者Oを透過したX線を検出するX線検出部52と、X線照射部51及びX線検出部52が対向して配置される旋回アーム5とを備える。
【0029】
X線照射部51は、X線を照射するX線管等からなるX線発生器51aと、X線ビームの広がりを規制するスリット等からなるコリメータ51bとで構成されており、X線検出部52は、2次元的に広がったCCDセンサやX線間接変換方式(FPD:フラットパネルディテクタ)センサ等からなるX線検出器52aを設けたセンサホルダ52bで構成されている。センサホルダ52bはX線検出部52に対して着脱自在であるが、X線検出器52aは、センサホルダ52bを介さずにX線検出部52に固定的に設けてもよい。
【0030】
X線撮影装置は、パノラマ断層撮影モード、CT撮影モード、頭部の単純撮影モードを有している。パノラマ断層撮影は、成人用パノラマ撮影、小児用パノラマ撮影、直行パノラマ撮影、顎関節側面撮影(TMJ4)、顎関節正面撮影(TMJ2)、上顎洞撮影の各モードがある。パノラマ断層撮影は、X線照射部51及びX線検出部52が歯列弓の形状に沿った所定の軌跡を描くように、旋回アーム5を水平移動及び水平旋回させながら断層撮影を行う。
【0031】
CT撮影は、デンタル撮影モード(Dモード)、インプラント撮影モード(Iモード)、上下顎撮影モード(Aモード)、パノラマティックモード(Pモード)、頭部全体撮影モード(Fモード)など、最大有効視野に応じた各種撮影モードがある。CT撮影は、頭頸部領域のCT撮影が可能で、通常は主に歯顎領域の一部又は全部を複数の対象撮影領域(画像再構成範囲)として設定し、択一的に設定された撮影対象領域(画像再構成範囲)を中心に旋回アーム5を回転させながら撮影対象領域(画像再構成範囲)の撮影を行う。
【0032】
頭部の単純撮影は、正面前後位・後前位撮影、側位撮影など、用途に応じた撮影が行われ、頭部を撮影体位に保持し、所定の位置にX線照射部51及びX線検出部52が配置されるように旋回アーム5を回転させて停止し、その状態で撮影が行われる。
【0033】
X線撮影装置は、被検者Oを保持する被検者保持部7と、撮影条件、昇降本体の移動を指示する等の命令を与えるための操作部8と、旋回アーム5と旋回アーム5を支持する昇降本体並びに被検者保持部7をそれぞれ駆動する駆動ユニット部9と、撮影装置本体制御部10とを備えている。
【0034】
被検者保持部7は、被検者Oの頭部を固定するための頭部固定装置70と
図1においては、図示はしていないが、被検者Oが握るための一対のグリップを備える。
【0035】
頭部固定装置70は、被検者Oの顎を乗せるためのチンレスト72と、側頭部を固定するための左右対称に開閉する側頭部押さえ73を備える。尚、側頭部押さえ73は、撮影モードによっては、使用しない場合もある。
【0036】
操作部8は、撮影モード選択、撮影部位選択、撮影条件の設定等を行うためのパーソナルコンピュータやワークステーションの操作手段(図示しない)と後述する操作パネル80を備える。操作パネル80は、小型液晶パネルや複数の操作釦で構成されている。操作釦のほか、キーボード、マウス、タッチパネル等の入力手段を用いることもできる。また、操作パネル80が液晶モニタ等のディスプレイからなる表示手段を備えるようにしてもよい。
【0037】
駆動ユニット部9は、撮影時に旋回アーム5の旋回軸5cを撮影モードに対応した位置に移動させるために、旋回軸5cをXY方向(水平方向)に移動させる旋回軸位置設定手段9aを備える。旋回軸位置設定手段9aは、X方向、Y方向に移動させるものであればよい。例えば、XY方向(水平方向)に移動するXYテーブルを備えたものや、回転軸とクランクとを備え、X方向と、Y方向に移動可能な構成などを適用することができる。XY方向(水平方向)に移動するXYテーブルを備える場合には、旋回軸位置設定手段9aは、旋回アーム5の旋回軸5cを水平移動させるX軸モータ、Y軸モータを備えている。また、駆動ユニット部9は、旋回アーム5を回転させるXYテーブルに設けられた旋回軸回転手段9bの旋回用モータを備えている。
【0038】
まず、旋回軸5cは、被検者Oの正中線に一致するように設定される。例えば、パノラマ断層撮影時には、旋回アーム5の旋回軸5cは歯列弓の形状に沿った所定の軌跡を描くように水平移動しつつ回転する。CT撮影時は、対象撮影領域(画像再構成範囲)を中心に旋回アーム5を旋回させるように、所定の位置に旋回アーム5の旋回軸5cが移動して、その位置で旋回軸5cが固定した状態で回転する。単純撮影時には、所定の位置にX線照射部51及びX線検出部52が配置されるように、旋回軸5cをXY方向(水平方向)に移動させると共に、旋回アーム5を回転させて停止させる。
【0039】
X線撮影装置は、後述するように、被検者Oに応じて旋回アーム5及び被検者保持部7を所定の高さに移動させるために、昇降本体3を支柱2(
図2ないし
図4参照)に対して上下に移動するための昇降本体移動手段9cを有する。旋回アーム5及び被検者保持部7は、昇降本体3に支持されており、昇降本体3の上下移動により、旋回アーム5及び被検者保持部7が所定の高さに移動する。
【0040】
また、X線撮影装置は、被検者Oを被検者保持部7にて所定の位置に保持した後、撮影対象領域(画像再構成範囲)rrを設定させることができる。更に、撮影部位を下顎領域から上顎領域に変更する場合などのように撮影部位を上下に移動させることができる。このとき、昇降本体3を上下に移動させるために昇降本体移動手段9cが移動する。そして、駆動ユニット部9には、被検者保持部7を移動させる固定機構移動手段9dを備え、昇降本体移動手段9cの移動に同期して、固定機構移動手段9dが移動し、被検者保持部7の位置をベース1(
図2ないし
図4等参照)位置に対して一定の位置に保つように移動する。
【0041】
撮影時には、X線照射部51及びX線検出部52の対は、被検者Oの頭部を挟んで互いに対峙するように位置する。パノラマ撮影、CT撮影時には、その対毎一体に頭部の周りを回転するように駆動される。単純撮影時は、旋回アーム5は、停止した状態に保たれる。
【0042】
撮影装置本体制御部10は、駆動ユニット部9を制御する制御プログラムを含んだ各種制御プログラムを実行する制御装置10aと、X線照射部51を制御するX線発生部制御手段10bと、X線検出部52を制御するX線検出部制御手段10cとを備えている。
【0043】
制御装置10aは、昇降本体移動手段9c、固定機構移動手段9dを操作部8からの命令に従って制御する。すなわち、被検者Oを被検者保持部7へ導入する場合には、昇降本体移動手段9cを駆動させ、昇降本体3を所定位置まで上下させる。また、被検者Oを被検者保持部7にて所定の位置に保持した後、撮影部位を上下に移動させる場合には、昇降本体移動手段9cの駆動とこの駆動に同期して固定機構移動手段9dを駆動させる。
【0044】
X線撮影装置は、図示しない画像表示装置と通信ケーブル等で接続され、X線撮影装置で撮影したデータを画像表示装置に送り、画像表示装置で再構成等の処理を行い、単純撮影のデジタルX線画像、パノラマ画像、CT画像等が表示される。画像表示装置は、例えば、パーソナルコンピュータやワークステーションで構成されている。この画像表示装置を構成するパーソナルコンピュータやワークステーションの操作手段を用いて、撮影モードの設定を行うことができる。
【0045】
図2及び
図3はX線撮影装置の全体構成を示す斜視図、
図4はX線撮影装置の全体構成を示す正面図であり、
図2及び
図4は、この発明の特徴であるチンレストを取り付けた状態、
図3は、チンレストと側頭部押さえを取り付けた状態を示している。
【0046】
このX線撮影装置は、床面に設置されたベース1に支柱2が立設されている。支柱2に昇降本体3が上下移動可能に支持されている。昇降本体3の上部に保持フレーム4が支持されており、保持フレーム4の先端部側に旋回アーム5が取り付けられている。また、保持フレーム4内に駆動ユニット部が設けられている。
【0047】
昇降本体3には、水平フレーム6が固定され、昇降本体3の上下動に伴い、旋回アーム5と水平フレーム6が一体的に上下動する。昇降本体3には、撮影対象領域を示すビーム発生器31が設けられ、被検者Oに撮影モードに応じたビームが照射される。
【0048】
保持フレーム4の下部には、略コの字状に形成された旋回アーム5が旋回可能に支持されており、旋回アーム5の両側にX線照射部51及びX線検出部52が設けられている。保持フレーム4の昇降本体3との接続部分には、昇降本体移動手段(図示せず)が設けられている。例えば、昇降本体移動手段は、電動アクチュエータが用いられ、電動アクチュエータの動作で昇降本体3が支柱2に対して上下に移動する。昇降本体移動手段は、昇降本体3を支柱2に対して上下に移動させるものであればよく、電動アクチュエータ以外にもモータとボールねじなどで構成することも可能である。
【0049】
旋回アーム5には、パノラマ断層撮影等の際の前後の位置を決めるために、位置決めビーム発生装置53が設けられ、位置決めビーム発生装置53から出射される位置決めビームにより、被検者Oの前後位置を調整する。
【0050】
水平フレーム6には、正中ビーム発生装置61が設けられ、正中ビーム発生装置61から出射される正中ビームにより、被検者Oの正中線の位置決めが行われる。
【0051】
また、水平フレーム6の先端部には、被検者保持部7が水平フレーム6に対して独立して上下に移動可能に取り付けられている。
【0052】
被検者保持部7は、被検者Oの頭部を固定するための頭部固定装置70と被検者Oが握るための一対のグリップ71を備える。
【0053】
頭部固定装置70は、撮影に際して被検者Oの頭部を安定的に固定するために、被検者Oの顎を乗せるためのチンレスト72と、側頭部を固定するための左右対称に開閉する側頭部押さえ73とを備えている。尚、撮影モードによっては、側頭部押さえ73を用いない場合もある。頭部固定装置70の側頭部押さえ73は、ダイヤル74を回すことで開閉し、被検者Oに応じて側頭部押さえ73の幅をダイヤル74で調整する。
【0054】
この実施形態の被検者Oの顎を保持する保持部としてのチンレスト72は、後述するように、このX線撮影装置におけるウォーターズ法やコールドウェル法に対応した撮影(以下、「ウォーターズ法やコールドウェル法に準ずる撮影」という。)等の際に用いられるものであり、側頭部方向から見てX線検出部52と被検者Oのドイツ水平面(D)との傾斜が20°〜50°程度となるように、被検者Oが体勢を維持するための補助を行うものである(後述の
図14ないし
図17参照)。ウォーターズ法やコールドウェル法に準ずる撮影をこのX線撮影装置で行うには、被検者Oは、顎を突き出すような体勢で頭部固定装置70のチンレスト72に顎を載せることになる。このため、この実施形態では、被検者Oが顎を突き出してチンレスト72に載せやすいように、被検者保持部7の水平面7a(頭部固定装置70の水平面)(後述の
図5、
図6参照)に対して20°〜50°の間の所定の角度に設定された載置部720を有する。載置部720の角度が20°より小さい場合には、顎を突き出すような感覚が被検者Oに十分ではなく、また、50°を超すと被検者Oの首への負担が大きくなる。このため、20°〜50°の間で、撮影法を考慮して載置部720の角度を設定すればよい。
【0055】
例えば、ウォーターズ法に準ずる撮影を行う場合に、側頭部方向から見てX線検出部52と被検者Oのドイツ水平面(D)との傾斜を45°程度に設定した場合には、載置部720は、被検者保持部7の水平面7aに対して45°の角度になるように設定すれば、この載置部720に顎を載せることで、X線検出部52と被検者Oのドイツ水平面(D)との傾斜が45°程度の位置に容易に位置決めできる。尚、この実施形態においては、載置部720は、被検者保持部7の水平面7aに対して45°の角度に設定されている。もちろん、45°の角度以外に上述した20°〜50°の間の角度に設定された載置部720を用いてもよい。この場合、X線検出部52と被検者Oのドイツ水平面(D)との傾斜角度をスケール等で確認する方がより好ましい撮影が行える。
【0056】
水平フレーム6には、操作パネル80が取り付けられ、この操作パネル80を用いて昇降本体3の移動、被検者保持部7の移動を指示する。この操作パネル80は、例えばタッチパネルで構成され、X線撮影装置の各種動作を指示するためのアイコンが表示され、該当するアイコンをタッチすることでその動作が選択される。
【0057】
前述したように、昇降本体3には、撮影対象領域(画像再構成範囲)等を示すビーム発生装置31が設けられ、ビーム出射部より、被検者Oに、CT撮影等によって撮影される領域等を示すビームが照射される。かかるビームに応じて、昇降本体3を上下させて位置合わせを行う。
【0058】
上記のように、駆動ユニット部9には、昇降本体移動手段9c及び固定機構移動手段9dを備える。昇降本体移動手段9cは、電動アクチュエータの動作により、昇降本体3が上下に移動する。固定機構移動手段9dは、モータ、スプロケット、チェーンを備え、モータの回転により、被検者保持部7を水平フレーム6に対して上下動する。被検者Oを頭部固定装置70に固定し、位置決めした後は、昇降本体3が上下動してもベース1からの位置に対して被検者保持部7は、その高さ位置が変わらないように、固定機構移動手段9dが動作する。すなわち、昇降本体移動手段9cの駆動により昇降本体3が上の方向へ移動すると、固定機構移動手段9dが駆動し、被検者保持部7が下の方向へ移動する。逆に、昇降本体移動手段9cの駆動により昇降本体3が下の方向へ移動すると、固定機構移動手段9dが駆動し、被検者保持部7が上の方向へ移動する。このように、被検者保持部7は、その高さ位置が変わらないように、昇降本体3の移動に同期して固定機構移動手段9dが動作し水平フレーム6に対して移動する。例えば、昇降本体3が上に移動する時は、水平フレーム6に対して被検者保持部7が下方向に同期して移動し、ベース1からの位置に対して被検者保持部7は、その高さ位置を保つよう構成されている。
【0059】
X線照射部51において、X線発生器51aの前方に設けられたコリメータ51bは、形状を異ならせた複数のスリットを形成したマスクで構成されており、撮影モードを選択することで、スリットのいずれかが選択され、選択したスリットによってX線発生器51aから照射されたX線ビームの広がりを制限する仕組みになっている。
【0060】
次に、水平フレーム6と被検者保持部7について、
図5ないし
図10に従い説明する。
【0061】
水平フレーム6は、昇降本体3に取り付けられ、昇降本体3と一体に上下に移動する。水平フレーム6の先端部には、被検者保持部7が水平フレーム6に対して独立して上下に移動可能に取り付けられている。
【0062】
被検者保持部7は、被検者Oの頭部を固定するための頭部固定装置70と被検者Oが握るための一対のグリップ71を備える。
【0063】
頭部固定装置70は、被検者Oの顎を乗せるためのチンレスト72と、側頭部を固定するための左右対称に開閉する側頭部押さえ73とを備える。
図5及び
図6に示すように、頭部固定装置70の側頭部押さえ73は、一対のベース73aに差し込まれて取り付けられる。ベース73aは、ダイヤル74を回すことで、相互に近接又は離反し、ベース73aに差し込まれた側頭部押さえ73が相互に近接又は離反する。そして、被検者Oに応じて側頭部押さえ73の幅をダイヤル74で調整する。
【0064】
図7ないし
図10に示すチンレスト72は、例えば、ウォーターズ法に準ずる撮影等の際に用いられるものであり、この実施形態では、X線検出部52と被検者Oのドイツ水平面(D)との傾斜が45°となるように容易に位置決めするために、被検者保持部7の水平面7a(頭部固定装置70の水平面)に対して45°の角度に設定された載置部720を有する。
【0065】
このチンレスト72は、頭部固定装置70のチンレスト固定孔部72aに挿入され、固定される取付部721とその取付部721の後方に連接する基部722を有する。基部722に直交する方向に支持軸723が設けられ、この支持軸723に対して45°の角度で矩形状の載置部720が設けられている(
図10参照)。そして、載置部720の中央部には、楕円状の凹所720aが設けられ、この凹所720aに被検者Oの顎の先端部が保持される。
【0066】
図5及び
図6に示すように、被検者保持部70のチンレスト固定孔部72aにチンレスト72の取付部721を挿入して取り付けることにより、頭部固定装置70にチンレスト72が固定される。この頭部固定装置70に取り付けたチンレスト72の載置部720の平面と、水平フレーム6に取り付けられた被検者保持部7の水平面7aとの間のなす角度は45°の状態となる。この載置部720の凹所720aに被検者Oの顎を載せると、被検者Oは、X線検出部52に対して、顎を突き上げた体位となり、X線検出部52と被検者Oのドイツ水平面(D)との傾斜が45°となるように被検者Oの体位の位置決めを容易に行うことができる。
【0067】
正中ビーム発生装置61から出射されるビームを用いて、被検者Oの位置決め、ビーム発生器31から出射されるビームを用いて昇降本体3の位置決めが行われる。正中ビーム発生装置61から出射される正中ビームは、被検者Oの正中ラインとの位置決めに用いられ、ビーム発生器31から出射されるビームは、撮影される領域の位置決めに用いられる。
【0068】
撮影を行う場合には、正中ビームと被検者Oの正中ラインとが一致するように、被検者Oが被検者保持部70のチンレスト72の載置部720に下顎を載せて被検者Oの位置が決められる。
【0069】
ウォーターズ法に準ずる撮影を行う場合には、X線検出部52と被検者Oのドイツ水平面(D)との傾斜が45°となるように被検者Oの体位の位置決めを行う。この位置決めのために、例えば、角度付けを行う撮影補助具等を用いて被検者Oのドイツ水平面(D)をその角度に合うように位置決めを行ってもよい。
【0070】
次に、この発明のX線撮影装置の使用動作につき説明する。図示しないパーソナルコンピュータ等を用いて、単純撮影モード(一般撮影モード)を選択し、各種設定を行う。
図11は、パーソナルコンピュータ等の操作手段の操作パネルに表示される操作パネル画面の表示例を、
図12及び
図13は操作パネル80に表示される操作パネル画面80aの表示例を示している。ウォーターズ法に準ずる撮影を行う場合には、パーソナルコンピュータ等の操作手段の操作パネル画面の正面(A)アイコンをクリックして、正面(A)の撮影モードを選択する。そして、管電圧、管電流、被検者Oのサイズを選択する。撮影モードを選択すると、その撮影モードに対応した原点位置が設定される。
【0071】
操作パネル80に表示される操作パネル画面80a内のリセットボタン81を押すと、旋回アーム5が回転し、原点位置に戻り停止する。この正面(A)の撮影モードの原点位置は、X線照射部51、X線検出部52の中心が正中ビームと一致し、被検者Oの後頭部側の正中線(C)からX線が照射する位置である。リセットボタン81を押すと、旋回軸位置設定手段9aが撮影モード選択時に設定された原点位置に旋回軸5cを移動させ、そして、旋回アーム5が回転し、上記した原点位置で旋回アーム5が停止する。
【0072】
そして、被検者OをX線撮影装置に近くに誘導し、チンレスト72の真下に被検者Oの足の位置を合わせて立たせる。まず、被検者Oの下顎の高さにチンレスト72を合わせるように、操作パネル80に表示される操作パネル画面80a内の上昇ボタン82又は下降ボタン83を操作し、昇降本体3を昇降させる。この昇降を指示すると、昇降本体移動手段9cが動作し、昇降本体3が上下に移動する。このとき、被検者保持部7も水平フレーム6と一体に昇降本体3と共に上下に移動する。チンレスト72の載置部720に被検者Oの顎を載せると
図14に示すように、被検者Oの顎が少し上を向いた状態となる。操作パネル80に表示される操作パネル画面80aのボタン84、85を押すことにより、第1の方向、即ち、図中矢印A又はB方向(前後方向)に旋回アーム5が水平移動する。この実施形態では、ボタン84を押すと矢印B方向(前進)に旋回アーム5が移動し、ボタン85を押すと、矢印A方向(後退)に旋回アーム5が移動する。
【0073】
続いて、
図15に示すように、被検者Oに近い位置にX線検出部52が位置するように、旋回アーム5を図中矢印A方向に水平移動させるためのボタン85を押し、X線検出部52を被検者Oに近づけた位置まで移動させる。尚、X線検出部52に被検者Oが干渉する場合には、
図14のB方向に移動させるためのボタン85を押す。このとき、被検者OとX線検出部52とは、被検者Oの顔を当接することがない体位で保持されるので、被検者Oに圧迫感等を与えることがない。
【0074】
尚、原点位置においては、X線検出部52の中心を被検者Oの撮影対象の中心に位置するように設定しているが、X線検出部52の中心を被検者Oの撮影対象位置がずれている場合には、旋回アーム5を矢印A−Bで示す第1の方向とは直交する第2の方向に移動させることができるように構成している。このため、操作パネル80に表示される操作パネル画面80a内の切替ボタン88押すと、
図13に示すように、矢印A−B方向に移動させるボタン84、85が、矢印A−Bで示す第1の方向とは直交する第2の方向である左(L)又は右(R)に移動させるボタンとなり、このボタン84、85を押して、X線検出部52の中心を被検者Oの撮影対象の中心に位置するように旋回アーム5を移動させる。
【0075】
位置づけビームスイッチ89を押すと、正中ビーム発生装置61から正中ビームが出射される。正中ビームと被検者Oの正中線を合わせる。そして、
図16及び
図17に示すように、X線検出部52と被検者Oのドイツ水平面(D)との傾斜が45°となるように、被検者Oの体位の位置決めを行う。更に、必要に応じて、被検者Oの側頭部を側頭部押さえ73で押さえるため、被検者Oに応じて側頭部押さえ73の幅をダイヤル74で調整する。位置づけビームスイッチ89を押すとビーム発生器31から撮影領域を示すビームが出射される。このビームを用いて、操作パネル80の撮影位置の上昇ボタン86、下降ボタン87を押し、撮影位置の高さ調整を行う。撮影位置の上昇ボタン86を押し、昇降本体3が上に移動する時は、水平フレーム6に対して被検者保持部7が下方向に同期して移動し、ベース1からの位置に対して被検者保持部7は、その高さ位置を保つ。逆に、下降ボタン87を押し、昇降本体3が下に移動する時は、水平フレーム6に対して被検者保持部7が上方向に同期して移動し、ベース1からの位置に対して被検者保持部7は、その高さ位置を保つ。そして、レディボタンを押すことで、撮影の準備を完了させる。
【0076】
コリメータ51bはCT撮影用の最大開口部が選択されている。そして、被検者Oの後頭部側の正中線からX線(X)が照射するようにして、X線照射スイッチを押すことにより、上顎洞、前頭洞、篩骨蜂巣の領域の単純X線撮影が行われ、ウォーターズ法に準ずる撮影が完了する。
【0077】
尚、上記した実施形態は、ウォーターズ法に準ずる撮影について説明したが、コールドウェル法に準ずる撮影についても、撮影位置の高さ調整を行うことにより同様に撮影することができる。
【0078】
このX線撮影装置は、立位、座位に関わらず、支柱2に昇降本体3を上下移動自在に取り付けられたX線撮影装置に適用することができる。
【0079】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。この発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。