特許第6299024号(P6299024)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6299024
(24)【登録日】2018年3月9日
(45)【発行日】2018年3月28日
(54)【発明の名称】無線通信装置および無線通信方法
(51)【国際特許分類】
   H04W 56/00 20090101AFI20180319BHJP
   H04W 72/04 20090101ALI20180319BHJP
   H04W 16/14 20090101ALI20180319BHJP
   H04W 84/12 20090101ALI20180319BHJP
   H04W 72/08 20090101ALI20180319BHJP
【FI】
   H04W56/00 150
   H04W72/04 111
   H04W16/14
   H04W84/12
   H04W72/08 110
【請求項の数】11
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2016-206809(P2016-206809)
(22)【出願日】2016年10月21日
【審査請求日】2016年12月16日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成28年度、支出負担行為担当官、総務省大臣官房会計課企画官、研究テーマ「複数周波数帯域の同時利用による周波数利用効率向上技術の研究開発」に関する委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】393031586
【氏名又は名称】株式会社国際電気通信基礎技術研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100109162
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 將行
(72)【発明者】
【氏名】矢野 一人
(72)【発明者】
【氏名】塚本 悟司
(72)【発明者】
【氏名】江頭 直人
(72)【発明者】
【氏名】ウェバー ジュリアン
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 智明
【審査官】 横田 有光
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/064502(WO,A1)
【文献】 国際公開第2014/065838(WO,A1)
【文献】 特開2009−267995(JP,A)
【文献】 特開2007−235445(JP,A)
【文献】 特開2010−081360(JP,A)
【文献】 特開2003−179567(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24− 7/26
H04W 4/00−99/00
3GPP TSG RAN WG1−4
SA WG1−4
CT WG1、4
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに分離した複数の周波数帯のそれぞれでランダムアクセス制御を行っている複数の無線チャネルを利用して、信号を送信するための無線通信装置であって、
送信データを前記複数の周波数帯のそれぞれに対応して複数の部分データに分割し、各前記周波数帯ごとに送信パケットを生成するためのデジタル信号処理部と、
各前記周波数帯ごとに設けられ、前記送信パケットのデジタル信号を対応する前記周波数帯ごとの高周波信号に変換するための複数の高周波処理部と、
前記複数の高周波処理部に共通に設けられ、前記複数の高周波処理部で使用されるクロック信号を生成するための局部発振器と、
前記複数の周波数帯において前記複数の無線チャネルの利用状況を観測するチャネル利用状況観測部と、
観測された前記利用状況に応じて、所定時間経過後のチャネル利用状況を予測して予測情報を生成するチャネル利用状況予測部と、
前記予測情報に基づいて、前記デジタル信号処理部および前記高周波処理部を制御し、前記複数の無線チャネルにより、各前記部分データを前記複数の周波数帯ごとのパケットとして、同期して同一のタイミングで送信するアクセス制御部とを備える、無線通信装置。
【請求項2】
前記チャネル利用状況予測部は、ビジー状態にある無線チャネルがアイドル状態になるまでの第1の所要時間を予測する、請求項1記載の無線通信装置。
【請求項3】
前記チャネル利用状況予測部は、アイドル状態にある無線チャネルがビジー状態になるまでの第2の所要時間を予測する、請求項2記載の無線通信装置。
【請求項4】
前記アクセス制御部は、予測された前記第1の所要時間および前記第2の所要時間に基づいて、アイドル状態となる無線チャネルにより伝送できるデータ量が最大値となるタイミングを予測し、予測された最大値が所定の条件を満たすときは、当該最大値となるタイミングで送信データの送信を行う、請求項3記載の無線通信装置。
【請求項5】
前記チャネル利用状況予測部は、チャネル利用状況観測部の観測結果に基づいて、前記無線チャネルのアイドル状態の継続時間の発生確率分布を算出し、
前記アクセス制御部は、所定の送信データについて、伝送が完了するまでの時間を最小化するタイミングで、送信データの送信を行う、請求項1記載の無線通信装置。
【請求項6】
前記チャネル利用状況予測部は、前記アイドル状態の継続時間の発生確率分布をパレート分布として予測する、請求項5記載の無線通信装置。
【請求項7】
前記チャネル利用状況予測部は、前記アイドル状態とビジー状態が周期的であると判断した場合は、継続時間の発生確率分布をステップ関数として予測する、請求項5記載の無線通信装置。
【請求項8】
前記チャネル利用状況予測部は、到来しているパケットの物理ヘッダに記載されているフレーム長、MACフレームに記載されているNAVの値を復号することでビジー状態の継続時間を予測する、請求項2記載の無線通信装置。
【請求項9】
前記アクセス制御部は、送信機会を得た前記無線チャネルで送信を行うことにより、所定の通信品質が達成できると判断した場合は、前記チャネル利用状況予測部の予測結果による送信タイミングを待つことなく、即時の無線送信の制御を行う、請求項1記載の無線通信装置。
【請求項10】
前記アクセス制御部は、前記複数の周波数帯において使用する無線チャネルの伝送レートおよび当該無線チャネルの送信電力を決定する、請求項1記載の無線通信装置。
【請求項11】
互いに分離した複数の周波数帯のそれぞれでランダムアクセス制御を行っている複数の無線チャネルを利用して、信号を送信するための無線通信方法であって、
送信データを前記複数の周波数帯のそれぞれに対応して複数の部分データに分割し、各前記周波数帯ごとに送信パケットを生成するステップと、
各前記周波数帯ごとに、前記送信パケットのデジタル信号を対応する前記周波数帯ごとの高周波信号に変換するステップと、
前記複数の周波数帯に共通に設けられる局部発振器により、前記高周波信号に変換する処理のためのクロック信号を生成するステップと、
前記複数の周波数帯において前記複数の無線チャネルの利用状況を観測するステップと、
観測された前記利用状況に応じて、所定時間経過後のチャネル利用状況を予測して予測情報を生成するステップと、
前記予測情報に基づいて、前記複数の無線チャネルにより、各前記部分データを前記複数の周波数帯ごとのパケットとして、同期して同一のタイミングで送信するステップとを備える、無線通信方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信装置および無線通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の無線通信方式、たとえば、3GPP(3rd Generation Partnership Project)で標準化が行なわれた無線通信システムであるLTE(Long Term Evolution)リリース8(Rel-8)は、最大20MHzの帯域を利用して通信を行うことが可能である。
【0003】
さらに、LTEの発展版であるLTE−A(Long Term Evolution-Advanced)では、LTEとの後方互換性を確保しつつ、更なる高速伝送を実現するため、LTEでサポートされる帯域幅を基本単位としたコンポーネントキャリア(CC:Component Carrier)を複数束ねて同時に用いるキャリアアグリゲーション(CA:Career Aggregation)技術が採用され、最大で5CC(100MHz幅)を用いて100MHz幅の広帯域伝送が実現可能である。ただし、このようなキャリアアグリゲーションは、近接する周波数バンドでの異なるチャネルを用いた伝送である。
【0004】
上記のような高速化が図られてはいるものの、近年、 スマートフォン等の高機能な携帯端末の普及に伴って、移動通信トラフィックの需要が急激に増大している。
【0005】
その結果、従来からの無線LAN(Local Area Network)の利用拡大に加え、スマートフォンの普及によるモバイルデータトラフィックの増大により無線LANへのオフロードが進展し、免許不要帯域(2.4GHz帯、5GHz帯)でのトラフィックが急増している。
【0006】
また、IoT(Internet Of Things)/M2M(Machine to Machine)社会の進展により、 上記周波数帯および920MHz帯の更なる逼迫が懸念され、これらの周波数帯の周波数利用効率向上は喫緊の課題となっている。
【0007】
ここで、無線リソースの利用状況は時間・場所・周波数帯や無線チャネル等によって変動するため、一部の周波数帯(や無線チャネル)のみが混雑する状況が発生し得る。
【0008】
しかしながら、既存の自営系無線システム(例えばIEEE802.11無線LAN)は単一の周波数帯を用いるか、予め使用する帯域をひとつ決めてから通信を行う。例えば、IEEE802.11nは2.4GHz帯と5GHz帯のいずれを使用するかを設定してから使用する。このため、既存の自営系無線システム全体として無線リソースに空きがある場合であっても、輻輳が発生するおそれがある。
【0009】
ここで、無線通信リソースの有効利用を図るためコグニティブ無線技術が注目されている。コグニティブ無線技術とは、無線端末が周囲の電波の利用状況を認識し、その状況に応じて利用する無線通信リソースを変えることをいう。コグニティブ無線技術には、異なる無線通信規格を状況に応じて選択して使うヘテロジニアス型と、無線端末が空き周波数を探し出して必要な通信帯域を確保する周波数共用型とがある。
【0010】
ヘテロジニアス型においては、コグニティブ無線機は、周辺で運用されている複数の無線システムを認識し、各システムの利用度や実現可能な伝送品質に関する情報を入手し、適切な無線システムに接続する。即ち、ヘテロジニアス型のコグニティブ無線は、周辺に存在する無線システムの利用効率を高めることにより、間接的に周波数資源の利用効率を高めるものである。
【0011】
この発明の1つの局面に従うと、互いに分離した複数の周波数帯のそれぞれでランダムアクセス制御を行っている複数の無線チャネルを利用して、信号を送信するための無線通信装置であって、送信データを複数の周波数帯のそれぞれに対応して複数の部分データに分割し、各周波数帯ごとに送信パケットを生成するためのデジタル信号処理部と、 各周波数帯ごとに設けられ、送信パケットのデジタル信号を対応する周波数帯ごとの高周波信号に変換するための複数の高周波処理部と、複数の高周波処理部に共通に設けられ、複数の高周波処理部で使用されるクロック信号を生成するための局部発振器と、複数の周波数帯において複数の無線チャネルの利用状況を観測するチャネル利用状況観測部と、観測された利用状況に応じて、所定時間経過後のチャネル利用状況を予測して予測情報を生成するチャネル利用状況予測部と、予測情報に基づいて、デジタル信号処理部および高周波処理部を制御し、複数の無線チャネルにより、各部分データを複数の周波数帯ごとのパケットとして、同期して同一のタイミングで送信するアクセス制御部とを備える。
【0012】
そして、上述したような免許不要帯域におけるトラフィックの増大の問題を解決する一手法として、使用周波数帯の異なる複数の無線LAN規格(例えば、2.4GHz帯無線LAN規格と5GHz帯無線LAN規格)を選択あるいは並行利用する、ヘテロジニアス型コグニティブ無線的アプローチが考えられる(たとえば、特許文献1、特許文献2)。
【0013】
しかし、このヘテロジニアス型コグニティブ無線的アプローチでは送信データを適宜分割し、それぞれどの周波数帯で伝送するかを事前に振り分けておく必要がある。この結果、各周波数帯の混雑度合いによっては使用周波数帯によって伝送遅延が大きく異なったり、データが宛先に到着する順番が入れ替わる、等の問題が新たに発生してしまう。
【0014】
そこで、互いに大きく分離した複数の周波数帯、たとえば、2.4GHz帯無線LANと5GHz帯無線LANにおいて、既存システムと周波数を共用して、コグニティブな無線通信を実現することが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2011−211433号明細書
【特許文献2】特開2013−187561号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかしながら、複数の互いに分離した周波数帯域で同時並行に通信をする場合に、どのようなデータの分配を行い、送信タイミングをどのように決定すべきかについては、必ずしも明らかでない。
【0017】
本発明は、上記のような問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、複数の互いに分離した周波数帯域で同時並行に通信をする場合に、送信データを複数周波数帯域にマッピングし、送信タイミングを調整してデータ伝送を行うことが可能な無線通信装置および無線通信方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
この発明の1つの局面に従うと、互いに分離した複数の周波数帯のそれぞれでランダムアクセス制御を行っている複数の無線チャネルを利用して、信号を送信するための無線通信装置であって、送信データを複数の周波数帯のそれぞれに対応して複数の部分データに分割し、各周波数帯ごとに送信パケットを生成するためのデジタル信号処理部と、各周波数帯ごとに設けられ、デジタル信号を対応する周波数帯ごとの高周波信号に変換するための複数の高周波信号処理部と、複数の高周波処理部に共通に設けられ、複数の高周波処理部で使用されるクロック信号を生成するための局部発振器と、複数の周波数帯において複数の無線チャネルの利用状況を観測するチャネル利用状況観測部と、観測された利用状況に応じて、所定時間経過後のチャネル利用状況を予測して予測情報を生成するチャネル利用状況予測部と、予測情報に基づいて、デジタル信号処理部および高周波処理部を制御し、複数の無線チャネルにより、各部分データを複数の周波数帯ごとのパケットとして、同期して同一のタイミングで送信するアクセス制御部とを備える。
【0019】
好ましくは、チャネル利用状況予測部は、ビジー状態にある無線チャネルがアイドル状態になるまでの第1の所要時間を予測する。
【0020】
好ましくは、チャネル利用状況予測部は、アイドル状態にある無線チャネルがビジー状態になるまでの第2の所要時間を予測する。
【0021】
好ましくは、アクセス制御部は、予測された第1の所要時間および第2の所要時間に基づいて、アイドル状態となる無線チャネルにより伝送できるデータ量が最大値となるタイミングを予測し、予測された最大値が所定の条件を満たすときは、当該最大値となるタイミングで送信データの送信を行う。
【0022】
好ましくは、チャネル利用状況予測部は、チャネル利用状況観測部の観測結果に基づいて、無線チャネルのアイドル状態の継続時間の発生確率分布を算出し、
アクセス制御部は、所定の送信データについて、伝送が完了するまでの時間を最小化するタイミングで、送信データの送信を行う。
【0023】
好ましくは、チャネル利用状況予測部は、アイドル状態の継続時間の発生確率分布をパレート分布として予測する。
【0024】
好ましくは、チャネル利用状況予測部は、アイドル状態とビジー状態が周期的であると判断した場合は、継続時間の発生確率分布をステップ関数として予測する。
【0025】
好ましくは、チャネル利用状況予測部は、到来しているパケットの物理ヘッダに記載されているフレーム長、MACフレームに記載されているNAVの値を復号することでビジー状態の継続時間を予測する。
【0026】
好ましくは、アクセス制御部は、送信機会を得た無線チャネルで送信を行うことにより、所定の通信品質が達成できると判断した場合は、チャネル利用状況予測部の予測結果による送信タイミングを待つことなく、即時の無線送信の制御を行う。
【0027】
好ましくは、アクセス制御部は、複数の周波数帯において使用する無線チャネルの伝送レートおよび当該無線チャネルの送信電力を決定する。
【0028】
この発明の他の局面に従うと、互いに分離した複数の周波数帯のそれぞれでランダムアクセス制御を行っている複数の無線チャネルを利用して、信号を送信するための無線通信方法であって、送信データを複数の周波数帯のそれぞれに対応して複数の部分データに分割し、各周波数帯ごとに送信パケットを生成するステップと、各周波数帯ごとに、送信パケットのデジタル信号を対応する周波数帯ごとの高周波信号に変換するステップと、複数の周波数帯に共通に設けられる局部発振器により、高周波信号に変換する処理のためのクロック信号を生成するステップと、複数の周波数帯において複数の無線チャネルの利用状況を観測するステップと、観測された利用状況に応じて、所定時間経過後のチャネル利用状況を予測して予測情報を生成するステップと、予測情報に基づいて、複数の無線チャネルにより、各部分データを複数の周波数帯ごとのパケットとして、同期して同一のタイミングで送信するステップとを備える。?

【発明の効果】
【0029】
この発明によれば、送信データを複数周波数帯域にマッピングし、送信タイミングを調整してデータ伝送を行うことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本実施の形態の無線通信システムの構成を説明するための概念図である。
図2】送信データを複数帯域にマッピングして送信し、受信側で一括受信して統合するための具体例を説明するための図である。
図3】本実施の形態の送信装置1000の構成を説明するための機能ブロック図である。
図4】送信装置1000のより詳細な構成の例を説明するための機能ブロック図である。
図5】送信装置1000´の構成を説明するための機能ブロック図である。
図6】送信装置1000´のより詳細な構成の例を説明するための機能ブロック図である。
図7】チャネル利用状況観測部1060、チャネル利用状況予測部1070およびアクセス制御部1080の動作を説明するためのタイミングチャートである。
図8】実施の形態の受信装置2000の構成を説明するための機能ブロック図である。
図9】受信装置2000のより詳細な構成の例を説明するための機能ブロック図である。
図10】受信装置2000´の構成を説明するための機能ブロック図である。
図11】受信装置2000´のより詳細な構成の例を説明するための機能ブロック図である。
図12】送信装置1000のチャネル利用状況観測部1060、チャネル利用状況予測部1070およびアクセス制御部1080の動作を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施の形態の無線通信システムおよび無線通信装置の構成を説明する。なお、以下の実施の形態において、同じ符号を付した構成要素および処理工程は、同一または相当するものであり、必要でない場合は、その説明は繰り返さない。
【0032】
なお、以下では、本発明の受信装置を説明する一例として、上述したような互いに大きく分離した複数の既存の免許不要帯域(たとえば、IoTなどに使用される920MHz帯、無線LANに使用される2.4GHz帯と5GHz帯)において、既存システムと周波数を共用して、コグニティブな無線通信を行うことが可能な無線通信システムにおける送信装置を例とする実施の形態を説明する。
【0033】
ただし、本発明の無線通信装置については、必ずしも、このような場合に限定されず、より一般的に、互いに分離した複数の周波数帯域を用いて、同一の無線方式で同期したタイミングで同時並行的に通信を行う受信装置に適用することが可能である。また、本発明の無線通信装置においては、後に説明するように、互いに分離した複数の周波数帯域を用いて、異なる無線方式で同期したタイミングで同時並行的に通信を行う受信装置に適用することも可能である。
【0034】
図1は、本実施の形態の無線通信システムの構成を説明するための概念図である。
【0035】
図1を参照して、送信側では、920MHz帯、2.4GHz帯、5GHz帯の3つの周波数帯を使用することを前提に、各帯域で無線チャネルを1つずつ使用するものとして、送信フレームを構成する。
【0036】
なお、各周波数帯で、複数チャネルを使用することとしてもよいが、以下では、周波数帯ごとに1チャネルを使用するものとして説明する。
【0037】
本実施の形態では以下の特徴を有する無線アクセス制御を行う。
【0038】
すなわち、まず、送信側では、後述するような方法で複数周波数帯の利用状況(各無線チャネルの空き状況など)を観測する。
【0039】
続いて、送信側では、あるタイミングで、1つ以上の未使用な周波数帯・無線チャネルで同時に無線パケット(フレーム)を送信する。このとき、送信データを複数帯域にマッピングして送信する。
【0040】
一方で、受信側では複数帯域を一括受信してデータを統合する。
【0041】
送受信において、このような構成にすると、帯域間で混雑状況に偏りがあっても送信機会を確保できるため周波数利用効率の向上と伝送遅延の低減が期待でき、またデータの到着順番が入れ替わるような問題も発生しない。
【0042】
図2は、送信データを複数帯域にマッピングして送信し、受信側で一括受信して統合するための具体例を説明するための図である。
【0043】
図2に示すように、送信データを送信系列を使用する各帯域の伝送レートRiに比例するシンボル数ずつ区切って各帯域に、シリアル/パラレル変換により割り当てる。
【0044】
例えば、(5GHz帯伝送レート:2.4GHz帯伝送レート:920MHz帯伝送レート)=(R1:R2:R3)=(3:2:1)ならば、送信データの系列を6シンボル毎に区切り、5GHz帯(ch1)、2.4GHz帯(ch2)、920MHz帯(ch3)にはその中の3シンボル、2シンボル、1シンボルを割り当てる。なお、送信系列を分割して割り当てる際には、このような場合に限定されず、より一般には、m個の周波数帯を使用する場合は、周波数帯の伝送レートの比を、(R1:R2:…:Rm)(比率は、既約に表現されるとする)とするとき、送信系列を(R1+R2+…+Rm)×n(m,n:自然数)シンボル毎に区切り、各チャネルには、(R1×n)シンボル、(R2×n)シンボル、…、(Rm×n)シンボルを割り当てるものとしてもよい。
【0045】
そのような割り当ての後に、各帯域ごとに、送信シンボルに対して物理ヘッダをつけて、パケットとし、これらのパケットを同一タイミングで同時並列的に送信する。
【0046】
送信側で各帯域に割り当てられたシンボル数については、この物理ヘッダ内に情報として格納される。
【0047】
受信側では、各帯域上の物理ヘッダを利用して同期と復調処理を行う。復調された各系列を送信側と逆の処理で、パラレル/シリアル変換により結合し、フレームの復号を行う。
[送信装置の構成]
図3は、本実施の形態の送信装置1000の構成を説明するための機能ブロック図である。
【0048】
図3を参照して、送信装置1000は、送信系列を図1で説明したように各周波数帯域に割り当てる処理をするためのシリアル/パラレル変換(以下、S/P変換)部1010と、S/P変換後のデータに対して、周波数帯域ごとに、物理ヘッダの付加や、たとえば、誤り訂正符号の付加、インターリーブ処理など、所定の無線通信方式で通信するための無線フレーム(パケット)を形成するデジタル処理を実行するための無線フレーム生成部1020.1〜1020.3と、無線フレーム生成部1020.1〜1020.3からのデジタル信号に対して、それぞれ、デジタルアナログ変換処理、所定の変調方式への変調処理(たとえば、所定の多値変調方式のための直交変調処理)、アップコンバート処理、電力増幅処理などを実行する高周波処理部(RF部)1040.1〜1040.3と、RF部1040.1〜1040.3の高周波信号をそれぞれ送出するためのアンテナ1050.1〜1050.3とを含む。RF部1040.1〜1040.3の動作は、これらに共通に設けられた局部発振器1030からのクロックに基づいて制御される。
【0049】
さらに、送信装置1000は、各周波数帯(各周波数帯の中では1つ以上の無線チャネル)の利用状況(各無線チャネルの空き状況など)を観測するチャネル利用状況観測部1060と、チャネル利用状況観測部1060の観測に基づいて、所定のタイミングでのチャネル利用状況を予測するチャネル利用状況予測部1070と、無線フレーム生成部1020.1〜1020.3の処理タイミングおよびRF部での送信タイミングを制御して、制御された同一の送信タイミングにおいて所定の期間につき未使用な周波数帯・無線チャネルで同時に無線パケットを送信するように制御するアクセス制御部1080とを含む。
【0050】
このような構成の送信装置1000により、図1で説明したように、データを複数帯域にマッピングして送信し、受信側では複数帯域を一括受信してデータを統合する。
【0051】
図4は、送信装置1000のより詳細な構成の例を説明するための機能ブロック図である。
【0052】
図4に示した機能ブロック図は、一例として、無線通信規格802.11aと同様の無線通信方式に従う送信装置の構成を示す。
【0053】
すなわち、無線通信規格802.11aは、5GHz帯の無線LAN通信方式であるものの、図4では、2.4GHz、920MHz帯でも、周波数帯が異なるだけで、それ以外は同様の構成の無線通信方式に従う受信部を使用するものとする。
【0054】
したがって、各周波数帯域において、パケットのプリアンブル部分の構成などは、複数の周波数帯について共通であるものとする。
【0055】
ただし、必ずしも、各周波数帯の無線通信方式が同様の構成を有していることは必須ではなく、周波数帯ごとに無線通信方式(信号形式、シンボル長やサブキャリア間隔など)が異なっていてもよい。この場合は、少なくとも単一の送信系列を各帯域に分割して同時に送信し、また、周波数帯が異なる以外は、RF部の構成が基本的に同一であればよく、パケットのプリアンブル部分の構成(プリアンブルの長さなど)が、複数の周波数帯ごとに異なっていてもよい。
【0056】
図4では、5GHz帯の送信に係る構成を代表して例示的に示す。無線通信規格802.11aと同様の無線通信方式を想定しているので、伝送する信号は、OFDM(直交周波数分割多重)変調するものとする。
【0057】
図4を参照して、無線フレーム生成部1020.3は、S/P変換部1010から分配された送信データを受けて、誤り訂正符号化するための誤り訂正符号化部1110と、誤り訂正符号化部1110の出力に対してインターリーブ処理およびマッピング処理を実行するためのインターリーブ/マッピング部1120と、逆フーリエ変換処理を実行するためのIFFT部1130と、ガードインターバル部分を付加するためのGI付加部1140と、デジタル信号をI成分およびQ成分のアナログ信号に変換するためのデジタルアナログコンバータ(DAC)1150とを含む。
【0058】
高周波処理部1040.3は、DAC1150からの信号を所定の多値変調信号に変調するための直交変調器1210と、直交変調器1210の出力をアップコンバートするアップコンバータ1220と、アップコンバータ1220の出力を電力増幅しアンテナ1050.3から送出するための電力増幅器1230とを含む。
【0059】
その結果、RF部1040.3により、基底帯域OFDM信号は搬送帯域OFDM信号に変換される。
【0060】
さらに、高周波処理部1040.3は、局部発振器1030からの参照周波数信号を対応する周波数帯域の基準クロック信号に変換するためのクロック周波数変換部1310と、クロック周波数変換部1310からの基準クロックに基づいて、直交復調器1210での変調処理に使用するクロックを生成するクロック生成部1320と、クロック周波数変換部1310からの基準クロックに基づいて、アップコンバータ1220でのアップコンバート処理に使用するクロックを生成するクロック生成部1340とを含む。
【0061】
すなわち、局部発振器1030からの参照周波数信号は、このような基底帯域OFDM信号から搬送帯域OFDM信号への変換におけるクロック信号として使用される。なお、より一般に、無線通信方式が異なる場合でも、基本的に、局部発振器1030からの参照周波数信号は、基底帯域信号から搬送帯域信号への変換におけるクロック信号として使用される。
[送信装置の他の構成]
図3および図4では、送信装置1000の構成の一例について説明した。
【0062】
図3および図4の構成では、送信データをS/P変換部1010により各周波数帯に分配した後に、誤り訂正符号化処理とインターリーブ処理を実施する構成であった。
【0063】
ただし、送信装置1000の構成は、このような場合に限定されない。
【0064】
図5は、このような他の構成である送信装置1000´の構成を説明するための機能ブロック図である。
【0065】
図5の送信装置1000´では、送信データについて、誤り訂正符号化処理とインターリーブ処理をした後に、S/P変換部1010により各周波数帯に分配する構成となっている。無線フレーム生成部1020.1〜1020.3において、マッピング処理およびIFFT処理、ガードインターバルの付加、デジタルアナログ変換処理を実施する。
【0066】
図6は、このような送信装置1000´のより詳細な構成の例を説明するための機能ブロック図である。図6の構成は、図4の構成に対応するものである。
【0067】
図6に示した機能ブロック図も、一例として、無線通信規格802.11aと同様の無線通信方式に従う送信装置の構成を示す。
【0068】
図6に示すように、誤り訂正符号化処理部1110による誤り訂正符号化処理およびインターリーブ部1112によるインターリーブ処理をした後に、S/P変換部1010により各周波数帯に分配する構成とすることで、周波数ダイバーシチ効果をより強力に得ることができる。
【0069】
図7は、チャネル利用状況観測部1060、チャネル利用状況予測部1070およびアクセス制御部1080の動作を説明するためのタイミングチャートである。
【0070】
図7を参照して、チャネル利用状況観測部1060は、各周波数帯の利用状況(例えば各無線チャネルの空き状況やビジー確率等)を観測し、チャネル利用状況予測部1070は、各周波数帯の直近の利用状況を予測し、その結果からアクセス制御部1080は、良好な通信が行えるよう伝送タイミングや使用周波数帯・無線チャネル等の伝送パラメータを決定する。
【0071】
すなわち、後に詳しく説明するように、チャネル利用状況予測部1070は、たとえば、3つの周波数帯域を使用して通信を行う場合、現時点を基準として、たとえば、時刻t2であれば、2帯域を利用して送信できると予測し、時刻t3であれば、3帯域を利用できると予測する。アクセス制御部1080は、効率的な伝送を行うため、利用状況の予測結果に基づき、送信開始タイミングと使用周波数帯を判断する。
【0072】
たとえば、従来の無線LANなどでのランダムアクセス制御では、後述するCSMA/CAとランダムバックオフにより送信機会が得られたら即座に送信を行う。
【0073】
これに対して、本実施の形態のアクセス制御部1080は、必要に応じて、一部の無線チャネルで送信機会を得ても、複数の周波数帯・無線チャネルが同時利用できるまで送信を待機する、という制御を行う。
[受信装置の構成]
以下では、図1で説明したような無線通信システムで使用される受信装置の構成について説明する。
【0074】
図8は、実施の形態の受信装置2000の構成を説明するための機能ブロック図である。
【0075】
図8を参照して、受信装置2000は、複数の周波数帯域(920MHz帯、2.4GHz帯、5GHz帯)の信号をそれぞれ受信するためのアンテナ2010.1〜2010.3と、アンテナ2010.1〜2010.3の信号のダウンコンバート処理、復調・復号処理などの受信処理を実行するための受信部2100.1〜2100.3と、受信部2100.1〜2100.3に対して共通に設けられ、受信部2100.1〜2100.3の動作の基準となるクロックである参照周波数信号を生成する局部発振器2020と、受信部2100.1〜2100.3からの信号の各系列を送信側と逆の処理で、パラレル/シリアル変換により結合するためのパラレル/シリアル変換部2700とを含む。パラレル/シリアル(P/S)変換部2700からの統合されたフレームの出力は、上位レイヤーに受け渡される。
【0076】
受信装置2000は、受信した信号のプリアンブル信号から局部発振器2020の周波数オフセットの検出を行って、局部発振器2020の発振周波数を制御するための信号(発振周波数制御信号)を生成し、搬送波周波数同期処理を行い、また、受信した信号からデジタル信号処理におけるタイミング同期をとるための信号(同期タイミング信号)を生成する同期処理部2600を含む。
【0077】
受信部2100.1は、アンテナ2010.1からの信号を受けて、低雑音増幅処理、ダウンコンバート処理、所定の変調方式に対する復調処理(たとえば、所定の多値変調方式に対する直交復調処理)、アナログデジタル変換処理等を実行するための高周波処理部(RF部)2400.1と、RF部2400.1からのデジタル信号に対して、復調・復号処理等のベースバンド処理を実行するためのベースバンド処理部2500.1を含む。
【0078】
受信部2100.2も、対応する周波数帯域についての同様の処理を行うための高周波処理部(RF部)2400.2ならびにベースバンド処理部2500.2を含む。また、受信部2100.3も、対応する周波数帯域についての同様の処理を行うための高周波処理部(RF部)2400.3ならびにベースバンド処理部2500.3を含む。
【0079】
ベースバンド処理部2500.1〜2500.3およびパラレル/シリアル(P/S)変換部2700とを総称して、デジタル信号処理部2800と呼ぶ。
【0080】
図9は、図8に示した受信装置2000のより詳細な構成の例を説明するための機能ブロック図である。
【0081】
図9に示した機能ブロック図でも、一例として、無線通信規格802.11aと同様の無線通信方式に従う受信装置の構成を示す。
【0082】
したがって、受信装置の構成は、図4に示した送信装置の構成に対応するものである。
【0083】
図9でも、5GHz帯の受信部2100.3の構成を代表して例示的に示す。
【0084】
図9を参照して、受信部2100.3のRF部2400.3は、アンテナ2010.3からの受信信号を増幅するための低雑音増幅器3010と、低雑音増幅器3010の出力を周波数変換するためのダウンコンバータ3020と、ダウンコンバータ3020の出力を所定の振幅となるように制御するための自動利得制御器3030と、所定の多値変調信号を復調するための直交復調器3040と、直交復調器3040のI成分出力およびQ成分出力をそれぞれデジタル信号に変換するためのアナログデジタルコンバータ(ADC)3050とを含む。
【0085】
RF部2400.3は、さらに、局部発振器2020からの参照周波数信号を対応する周波数帯域の基準クロック信号に変換するためのクロック周波数変換部3060と、クロック周波数変換部3060からの基準クロックに基づいて、ダウンコンバータ3020でのダウンコンバート処理に使用するクロックを生成するクロック生成部3070と、クロック周波数変換部3060からの基準クロックに基づいて、直交復調器3040での復調処理に使用するクロックを生成するクロック生成部3080とを含む。
【0086】
無線通信規格802.11aと同様の無線通信方式を想定しているので、伝送されてきた信号は、OFDM(直交周波数分割多重)変調されている。その結果、RF部2400.3により、搬送帯域OFDM信号は、基底帯域OFDM信号に変換される。
【0087】
そして、局部発振器2020からの参照周波数信号は、このような搬送帯域OFDM信号から基底帯域OFDM信号への変換における搬送周波数同期に使用される。なお、より一般に、無線通信方式が異なる場合でも、基本的に、局部発振器2020からの参照周波数信号は、搬送帯域信号から基底帯域信号への変換における搬送周波数同期に使用される。
【0088】
再び、図9に戻って、ベースバンド処理部2500.3は、ADC3050からの信号を受けて、ガードインターバル部分を除去するためのGI除去部4010と、ガードインターバルが除去された信号に対して、高速フーリエ変換を実行するためのFFT部4020と、FFT部4020の出力に対して、デマッピングおよびデインターリーブ処理を実行するためのデマッピング/デインターリーブ部4030と、誤り訂正部4040とを含む。
【0089】
ここで、同期処理部2600から出力される同期タイミング信号は、OFDMシンボルの始まりを検出するためのシンボルタイミング同期などに使用される。
【0090】
より一般に、無線通信方式が異なる場合でも、基本的に、同期処理部2600から出力される同期タイミング信号は、ベースバンド処理における同期信号として使用される。
[受信装置の他の構成]
図8および図9では、受信装置2000の構成の一例について説明した。
【0091】
図8および図9の構成では、図3および図4の送信側の構成に対応して、受信データに対して、デマッピング/インターリーブ処理および誤り訂正処理を実施した後に、P/S変換部2700により各周波数帯からの信号を結合する構成であった。
【0092】
ただし、受信装置2000の構成は、このような場合に限定されない。
【0093】
図10は、このような他の構成である受信装置2000´の構成を説明するための機能ブロック図である。
【0094】
図10の受信装置2000´では、受信データについて、P/S変換部2700により各周波数帯の信号を結合した後に、デインターリーブ処理および誤り訂正処理を実行する構成となっている。ベースバンド処理部2500.1〜2500.3において、ガードインターバルの除去、FFT処理およびデマッピング処理を実施する。
【0095】
したがって、図10の受信装置2000´は、図5の送信装置1000´からの信号の受信に対応するものである。
【0096】
図11は、このような受信装置2000´のより詳細な構成の例を説明するための機能ブロック図である。図11の構成は、図10の構成に対応するものである。
【0097】
図11に示した機能ブロック図も、一例として、無線通信規格802.11aと同様の無線通信方式に従う送信装置の構成を示す。
【0098】
図11に示すように、周波数帯域ごとに、ガードインターバル除去部4010によるガードインターバルの除去、FFT部4020によるFFT処理およびデマッピング部4032によるデマッピング処理の後に、P/S変換部2700により各周波数帯の信号を結合する。P/S変換部2700による結合の後に、デインターリーブ部4042によるデインターリーブ処理および誤り訂正部4040による誤り訂正処理を実行する。
【0099】
図12は、図3で説明した送信装置1000または図5で説明した送信装置1000´のチャネル利用状況観測部1060、チャネル利用状況予測部1070およびアクセス制御部1080の動作を説明するためのフローチャートである。
【0100】
図12を参照して、まず、チャネル利用状況観測部1060は、複数帯域でキャリアセンスを実施し、図示しない記憶装置に記憶している利用状況情報を更新する(S100)。
【0101】
すなわち、チャネル利用状況観測部1060は、複数周波数帯域においてそれぞれ使用予定である各無線チャネルのビジー(busy)/アイドル(idle)状態判定と、これらの継続時間を計測する。
【0102】
ここで、チャネル利用状況観測部1060が観測および計測する項目としては、以下のようなものがある。
【0103】
i)各無線チャネルの状態(ビジー(busy)またはアイドル(idle)状態:。これは物理キャリアセンス結果である)
ii)各無線チャネルのビジー(busy)継続時間
iii)受信中のフレームの物理ヘッダに記載されているフレーム長
iv)受信中のフレームのMACヘッダに記載されているNAVの値(仮想キャリアセンス結果)
ここで、NAVとは、Network Allocation Vector(送信禁止期間)のことである。
【0104】
以下、用語の説明のために、無線LANにおいて、各端末からの送信の衝突を回避する一般的な方法について簡単に説明する。
【0105】
無線LANのチャネルでは、お互いに送信を待ち合わせないとパケットが衝突して効率的な通信が成り立たないため、「CSMA(Carrier Sense Multiple Access)」と呼ばれる方式が採用される。
【0106】
無線の場合、電波の強度を監視しただけでは、衝突が起こるかどうかはわからない。電波は距離によって大きく減衰するため、衝突を引き起こす相手が遠くにいるとその電波を検知できない可能性があるからである。
【0107】
そこで送信前に必ず、「待ち時間(DIFS:Distributed access Inter Frame Space)」を設け、ほかに送信信号がないことを確認してから送信する。このような方式を「CA(Collision Avoidance、衝突回避)」と呼ぶ。
【0108】
そして、送信後には、必ず「ACK(ACKnowledgement、到着確認応答)」を待ち、ACKが戻らない場合は衝突などが起きたと判断して再送信を行なう。
【0109】
これ以外にも、無線LAN固有のアクセス制御の仕組みとして、たとえば、隠れ端末対策のために考案された「RTS/CTS(Request to Send/Clear to Send)」がある。ここで、隠れ端末とは、自分からは電波圏外だが、通信相手の電波圏内にいる端末のことである。その存在を直接知ることはできないが、干渉を引き起こす。
【0110】
電波の到達距離をLmと仮定すると、無線端末Aの通信相手B(アクセスポイント)がLm先におり、さらにそのLm先に別の無線端末Cがいるという状況を考える。
【0111】
このとき、端末Cの電波は端末Aまで届かないため、端末Aがほかの端末が信号を送出しているか調べても(キャリアセンスしても)端末Cの存在がわからないことから、端末Cは端末Aの隠れ端末になる。何も対策をとらないと、端末CがアクセスポイントBに送信中であっても、端末AもアクセスポイントBにデータを送信してしまうことが起きてしまうことになる。これは、アクセスポイントBで衝突を引き起こし、スループットを下げる要因になる。
【0112】
RTS/CTSとは、すべての無線機器は送信前に「RTS(送信要求)」のパケットを出し、受信側も受信可能であれば「CTS(受信可能)」で応答する仕組みである。前述の例では、端末CはアクセスポイントBにまずRTSを送信する。ただし、このRTSは、端末Aには届かない。
【0113】
アクセスポイントBは、端末Cに対してCTSを送信することで受信可能なことを通知する。このCTSは、端末Aにも届くため、端末Aは通信が行なわれることを察知し、送信を延期する。RTS/CTSのパケットには、チャネルの占有予定期間が書かれており、その間通信を保留する。この期間を「NAV(Network Allocation Vector、送信禁止期間)」と呼ぶ。
【0114】
チャネル利用状況観測部1060による観測・計測の結果から、チャネル利用状況予測部1070が算出および予測する各無線チャネルの利用状況統計量としては、以下のようなものがある。
【0115】
a)ビジー(busy)状態となる確率(時間的利用率)
b)ビジー(busy)状態とアイドル(idle)状態の継続時間の確率分布
c)直前のビジー(busy)/アイドル(idle)状態継続時間に対するアイドル(idle)/ビジー(busy)状態の継続時間の発生確率分布(たとえば、確率密度関数(PDF:probability density function)や累積確率(CDF:cumulative distribution function))
d)ビジー(busy)状態とアイドル(idle)状態の発生パターン(周期とduty比 : 背景トラフィックが周期的な場合)
以下では、上記のうち、チャネル利用状況予測部1070が算出する予測情報の具体例を説明する。
【0116】
1)「アイドル(idle)状態の継続時間の発生確率分布」の算出方法
無線LANのフレーム到来間隔τの確率密度関数(PDF)p(τ)は、以下の式(1)で表されるパレート(Pareto)分布に概ね従うことが知られている(以下の文献1を参照)。
【0117】
文献1:Dashdorj Yamkhin and Youjip Won, ”Modeling and analysis of wireless LAN traffic,” Journal of Information Science and Engineering, vol. 25, no. 6, pp. 1783-1801, Nov. 2009.
【0118】
【数1】
ここで、aは分布形状を決定する係数、τmは最小フレーム到来間隔である。
【0119】
また、aとτmが与えられた場合、τの平均μと分散σ2は、以下の式(2)および(3)で与えられる。
【0120】
【数2】
例えばIEEE 802.11 DCF規格の場合、データフレームの最小到来間隔は、上述したDIFSであるため、τm=DIFSと設定する。アイドル(idle) 状態の継続時間をフレーム到来間隔とし、キャリアセンス結果からμやσ2を計測すれば、上の式を用いて、チャネル利用状況予測部1070は、aの値を推定できる。
【0121】
そして、aの値が求まれば、アイドル(idle) 状態が、τ時間以上継続する確率C(τ)として、チャネル利用状況予測部1070は、次式で表される発生確率分布を得る。
【0122】
【数3】
使用予定の無線チャネルが アイドル(idle)状態となった場合、その時点からt後まで アイドル(idle)状態が継続する確率は、C(τ)から求めることができる。
【0123】
2)キャリアセンスの結果、アイドル(idle)継続時間とビジー(busy)継続時間が、毎回ほぼ同じ時間であり、チャネル利用状況予測部1070がトラフィックが周期的であると判断した場合は、アイドル(idle)状態の継続時間の発生確率分布として、例えば、アイドル(idle)状態開始時時点からアイドル(idle)状態の継続時間の平均値(中央値や最小値でも良い)までの間のアイドル(idle)継続確率を100%、とし、それ以降は0%とするステップ関数としても良い。
【0124】
3)一方、使用予定の無線チャネルが ビジー(busy)状態の場合、飛来しているパケット(フレーム)の物理ヘッダに記載されているフレーム長や、MACフレームに記載されているNAVの値を復号することで、チャネル利用状況予測部1070は、ビジー(busy)状態の継続時間を取得しビジー状態の継続時間を予測することができる。
【0125】
再び、図8に戻って、アクセス制御部1080は、送信すべきデータがあるかを判断し(S102)、送信したいデータがまだない場合(S102でN)は、処理をS100にもどす。
【0126】
一方で、アクセス制御部1080は、送信したいデータがある場合(S102でY)、まず、送信機会を得た無線チャネルで、以下に説明するような「即時送信条件」を満たしているかを判断する。
【0127】
すなわち、本来であれば、アクセス制御部1080は、チャネル利用状況予測部1070の予測結果に基づいて、送信タイミングが到来したかを判断するものの、実際にはビジー(busy)/アイドル(idle)状態の発生予測に誤差が生じて期待通りに送信機会が得られない恐れがあるため、送信機会が確保できた無線チャネルについて、例えば、以下の条件の組み合わせを満たしたと判断すると、当該無線チャネルを用いて即座に伝送を開始する制御を行う(S104)。すなわち、この場合は、アクセス制御部1080は、送信機会を得た無線チャネルで送信を行うことにより、所定の通信品質が達成できると判断した場合は、予測結果による送信タイミングを待つことなく、即時の無線送信を行う制御を行う。
【0128】
a1)総伝送レートが所定値以上
a2)即座に伝送を開始すると、送信データの伝送遅延が所定値以下
a3)即座に伝送を開始すると、スループットが所定量以上増加
a4)送信機会が確保できた無線チャネルで送信を行うと、無線チャネル間の使用率の分散 and/or 平均が小さくなる
a5)送信機会が確保できた無線チャネルで伝送を行うと、伝送に要する消費エネルギーが所定量以下
a6)所定の無線チャネルで送信機会が得られている
a7)送信機会の喪失が許されない場合
以上のような条件a1)〜a7)のいずれか1つの条件が満たされるか、あるいは、条件a1)〜a7)の所定の組合せ(2つの条件以上の組合せ)が成り立つ場合は、アクセス制御部1080は、送信機会が確保できている無線チャネルを用いて即座に伝送を開始する。すなわち、アクセス制御部1080は、伝送パラメータの決定と送信データのマッピングを行い(S108)、S/P変換部1010と無線フレーム生成部1020.1〜1020.3とを制御して、選択した周波数帯および無線チャネルでフレームを送信し(S110)、処理をステップS100に復帰させる。
【0129】
ここで、「伝送パラメータ」としては、「使用帯域と使用無線チャネル」、「各無線チャネルで使用する伝送レート」、「各無線チャネル(OFDMの場合は各サブキャリアでも可)の送信電力」などがある。
【0130】
なお、所定の条件を満たすならば、使用可能性のある全ての周波数帯の無線チャネルではなく、一部の無線チャネルのみを用いて伝送することを可能としてもよい。
【0131】
また、伝送レートと送信電力の決定については、以下に示す文献2に記載されるような既存の手法が利用可能である。
【0132】
文献2:吉識 知明,三瓶 政一,森永 規彦,”高速データ伝送のためのマルチレベル送信電力制御を用いたOFDM適応変調方式,” 電子情報通信学会論文誌(B), J84-B, 7, pp. 1141-1150,2001年07月
また、伝送レートと送信電力の決定に必要な伝搬路情報は、例えば、以下のような方法で入手可能である。
【0133】
・逆方向の通信で受信したフレームを受信する際に行った伝搬路推定結果を利用する。
【0134】
・IEEE 802.11無線LANで規定されている伝搬路フィードバック手法を利用する。
【0135】
続いて、アクセス制御部1080は、「即時送信条件」を満たさない場合(S104でN)、上述したようなチャネル利用状況予測部1070の予測結果に基づいて、送信タイミングが到来したか否かを判断する(S106)
送信開始タイミングの決定については、以下のように利用状況情報による予測情報を利用する。
【0136】
b1)ビジー(busy)状態にある無線チャネルがアイドル(idle)状態になるまでの所要時間の予測 (「いつまで待てばよいか?」の予測)
これには、以下のような情報を用いることで、「いつまで待てばよいか?」を予測することができる。
【0137】
b1−1)ビジー(busy)要因となっているフレームやNAVの長さ(既に分かっている場合)
b1−2)任意の時刻後における各無線チャネルのビジー(busy)状態発生の有無 (周期的な背景トラフィックであれば、ビジー(busy)状態とアイドル(idle)状態の周期とデューティ(duty)から予測可能)
b1−3)これまでのビジー(busy)継続時間を踏まえた、今後の待ち時間に対するアイドル(idle)発生確率 (ビジー(busy)状態とアイドル(idle)状態のCDFから算出可能)
b2)アイドル(idle)な無線チャネルがビジー(busy)になるまでの所要時間の予測 (「いつまで待てるか?」の予測)
b2−1)任意の時刻後における各無線チャネルのビジー(busy)状態発生の有無 (周期的な背景トラフィックであれば、ビジー(busy)状態とアイドル(idle)状態の周期とdutyから予測可能)
b2−2)これまでのアイドル(idle)継続時間を踏まえた、今後の待ち時間に対するビジー(busy)発生確率 (ビジー(busy)状態とアイドル(idle)状態のCDFから算出可能)
アクセス制御部1080は、上述したような「ビジー(busy)状態にある無線チャネルがアイドル(idle)状態になるまでの所要時間の予測」と、「アイドル(idle)な無線チャネルがビジー(busy)になるまでの所要時間の予測」とを組み合わせることで、「伝送速度の期待値が最大となる」送信タイミングを算出する。
【0138】
つまり、アクセス制御部1080は、上記2つの予測を組み合わせることで、各無線チャネルの伝送レートが所定の値を有するものとして、現時点から所定の時間範囲において、各時刻タイミングにおいて、アイドル(idle)状態となる無線チャネルにより伝送できるデータ量の最大値を予測することができる。そのような予測された伝送可能なデータ量(伝送速度)が所定の伝送速度に対応する値を超えている場合は、その送信タイミングでデータの伝送を行う。
【0139】
すなわち、アクセス制御部1080は、このような送信タイミングが到来すると判断すれば(S106でY)、アクセス制御部1080は、伝送パラメータの決定と送信データのマッピングを行い(S108)、S/P変換部1010と無線フレーム生成部1020.1〜1020.3とを制御して、選択した周波数帯および無線チャネルでフレームを送信し(S110)、処理をステップS100に復帰させる。
【0140】
なお、アクセス制御部1080は、ステップS106において、予測された伝送可能なデータ量(伝送速度)が所定の伝送速度に対応する値を超えないと判断する場合は、送信を待機することによって現在以上の数の無線チャネルで送信機会が得られる可能性があるとして、送信を待機し(ステップS106でN)、処理をステップS100に復帰する。このような待機動作を行うことで、周波数利用効率の向上や伝送遅延の低減等が達成可能であると考えられるからである。
【0141】
なお、アクセス制御部1080が、送信タイミングが到来しているか否かを判断する基準としては、以下のようなものを採用してもよい。
【0142】
c1)送信データの伝送に完了するまでの時間を最小化 (送信が早く終われば多くのフレームが送信でき、また無駄にするリソースも少なく済むため。)
c2)伝送完了までに発生する空きリソース量を最小化
c3)所定の時間内に伝送可能なデータ量を最大化
c4)各無線チャネルの使用率の分散と平均を最小化 (無線リソースを有効利用しつつ、極端に混雑するチャネルをなくすため。)
c5)一定時間内に送信データの伝送が完了する条件下で、所要送信エネルギーを最小化
c6)送信アウテージ(伝送失敗・送信機会喪失)確率が所定値以下
c7)自身による特定の無線チャネルの使用率が所定値以下 (920MHz帯のように送信時間制限がある周波数帯において、当該周波数帯の時間利用率を制限内に収めるため。)
ここでは、具体例として、c1)送信データの伝送に完了するまでの時間を最小化する手法について、さらに説明する。
【0143】
例えば、使用予定の無線チャネルとして無線チャネルch1、ch2およびch3を想定し、そこでの使用可能伝送レートをR1,R2およびR3[b/s]とする。また、無線チャネルiのアイドル(idle) 継続時間予想確率をCi(τ)とする。また、これから伝送したいデータ量を、I[b/s]とする。
【0144】
i)ある無線チャネル(仮にch1とする)にて送信機会を得た場合、以下を計算する。
【0145】
i−1)チャネルch1のみを使用してデータを伝送するのに必要な時間は、以下のようになる。
【0146】
【数4】
i−2)次に送信機会が得られる無線チャネルを仮にch2とし、そこで送信機会を得るのに必要な時間τ2(例えば ビジー(busy) 継続時間 + DIFS) を算出する。
【0147】
i−3)τ2待機後にch1が利用可能である予想確率はC1(τ2)であるため、チャネルch2を利用しようとする場合、C1(τ2)の確率でチャネルch1と同時利用できる。τ2後に伝送を開始した場合、データ伝送が終わるまでの時間の期待値T2は、以下のようになる。
【0148】
【数5】
i−4)同様に、チャネルch3が利用可能になるまでの時間をτ3とすると、τ3後に伝送を開始した場合、データ伝送が終わるまでの時間の期待値T3は、以下のようになる。
【0149】
【数6】
以上の計算をもとに、時間T1,T2,T3を比較し、時間T2が最小ならば、τ2待機後に、時間T3が最小ならばτ3待機後に送信する。そうでなければ、チャネルch1の送信機会を得た時点で送信する。
【0150】
以上のような構成により、各送信データを複数周波数帯域にマッピングし、送信タイミングを調整してデータ伝送を行うことが可能である。
【0151】
今回開示された実施の形態は、本発明を具体的に実施するための構成の例示であって、本発明の技術的範囲を制限するものではない。本発明の技術的範囲は、実施の形態の説明ではなく、特許請求の範囲によって示されるものであり、特許請求の範囲の文言上の範囲および均等の意味の範囲内での変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0152】
1000 送信装置、1010 S/P変換部、1020.1〜1020.3 無線フレーム生成部、1030 局部発振器、1040.1〜1040.3 RF部、1050.1〜1050.3 アンテナ、1060 チャネル利用状況観測部、1070 チャネル利用状況予測部、1080 アクセス制御部、2000 受信装置、2010.1〜2010.3 アンテナ、2020 局部発振器、2100.1〜2100.3 受信部、2400.1〜2400.3 RF部、2500.1〜2500.3 ベースバンド処理部、2700 P/S変換部、2600 同期処理部、2800 デジタル信号処理部。
【要約】
【課題】複数の互いに分離した周波数帯域で同時並行に通信をする場合に、送信データを複数周波数帯域にマッピングし、送信タイミングを調整してデータ伝送を行うことが可能な無線通信装置を提供する。
【解決手段】送信装置1000は、互いに分離した複数の周波数帯のそれぞれでランダムアクセス制御を行っている複数の無線チャネルを利用して、信号を送信する。チャネル利用状況予測部1070は、観測された無線チャネルの利用状況に応じて、所定時間経過後のチャネル利用状況を予測して予測情報を生成する。アクセス制御部1000は、デジタル信号処理部および高周波処理部を制御し、複数の無線チャネルにより、各部分データを複数の周波数帯ごとのパケットとして、同期して同一のタイミングで送信する。
【選択図】図3
図1
図2
図3
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図12