特許第6299029号(P6299029)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ドゥサン ヘヴィー インダストリーズ アンド コンストラクション カンパニー リミテッドの特許一覧

<>
  • 特許6299029-熱交換器の製造方法 図000002
  • 特許6299029-熱交換器の製造方法 図000003
  • 特許6299029-熱交換器の製造方法 図000004
  • 特許6299029-熱交換器の製造方法 図000005
  • 特許6299029-熱交換器の製造方法 図000006
  • 特許6299029-熱交換器の製造方法 図000007
  • 特許6299029-熱交換器の製造方法 図000008
  • 特許6299029-熱交換器の製造方法 図000009
  • 特許6299029-熱交換器の製造方法 図000010
  • 特許6299029-熱交換器の製造方法 図000011
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6299029
(24)【登録日】2018年3月9日
(45)【発行日】2018年3月28日
(54)【発明の名称】熱交換器の製造方法
(51)【国際特許分類】
   F28F 3/00 20060101AFI20180319BHJP
   F28F 3/04 20060101ALI20180319BHJP
   F28D 9/00 20060101ALI20180319BHJP
   F28F 21/08 20060101ALI20180319BHJP
   F28F 19/06 20060101ALI20180319BHJP
   B23K 20/00 20060101ALI20180319BHJP
【FI】
   F28F3/00 311
   F28F3/04 A
   F28D9/00
   F28F21/08 A
   F28F21/08 F
   F28F21/08 Z
   F28F19/06 F
   F28F19/06 Z
   B23K20/00 310L
【請求項の数】2
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2016-104240(P2016-104240)
(22)【出願日】2016年5月25日
(65)【公開番号】特開2017-9273(P2017-9273A)
(43)【公開日】2017年1月12日
【審査請求日】2016年5月25日
(31)【優先権主張番号】10-2015-0088263
(32)【優先日】2015年6月22日
(33)【優先権主張国】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】507002918
【氏名又は名称】ドゥサン ヘヴィー インダストリーズ アンド コンストラクション カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】キム、ジョン キル
(72)【発明者】
【氏名】キム、ヨン ジャイ
(72)【発明者】
【氏名】シム、デン ナム
(72)【発明者】
【氏名】ジュン、イン チュル
【審査官】 石黒 雄一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−205059(JP,A)
【文献】 特開2000−061627(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/043944(WO,A1)
【文献】 特開2007−038298(JP,A)
【文献】 特開平07−164181(JP,A)
【文献】 特開2014−233759(JP,A)
【文献】 特開2012−096237(JP,A)
【文献】 特開2002−340488(JP,A)
【文献】 特開2000−337789(JP,A)
【文献】 特開昭62−142021(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28F 3/00
B23K 20/00
F28D 9/00
F28F 3/04
F28F 19/06
F28F 21/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つ以上のプレートを用意するステップと、
前記プレートの一面に液相または気相の流体が流動可能な流路を形成するステップと、
前記プレートの前記一面に、融点降下元素であるB、Si、およびPのうちの少なくとも1つを含み、遷移液相拡散接合によって第2のプレートと接合可能な合金層を、前記流路が形成されない部分にのみ、溶射コーティングによって形成するステップと、
前記合金層が形成された前記2つ以上のプレートを積層するステップと、
積層されたプレートを、1x10−4〜1x10−3torrの真空度および900〜1200℃の温度範囲で、0.1〜6時間加熱および維持して接合熱処理するステップとを含み、
前記プレートを積層するステップ中に、前記プレートの間に前記合金層をそれぞれ介在させ、前記流路を有する前記プレートの前記一面は、他の前記プレートの前記流路を有しない一面に接続し、
前記接合熱処理するステップ中に、前記合金層は、前記遷移液相拡散接合によって前記他の前記プレートの前記流路を有しない前記一面に設けられる接合部を形成する熱交換器の製造方法。
【請求項2】
前記合金層を形成するステップは、合金層が30〜100μmの厚さを有するように行われる請求項に記載の熱交換器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱交換器を構成する複数のプレートを遷移液相拡散接合法(Transition liquid phase bonding、TLP bonding)で接合できるように設計された熱交換器用プレートと前記プレートが遷移液相拡散接合法で接合されたプレート積層体を含む熱交換器およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、冷蔵庫やエアコンなどの冷凍装置は、ガス冷媒を圧縮する圧縮機と、前記圧縮機で圧縮された冷媒が外部空気と熱交換されながら外部空気に熱を放出して凝縮する凝縮器と、前記凝縮器で凝縮した冷媒が膨張する膨張機構と、前記膨張機構で膨張した冷媒が冷却または冷房させようとする空間の空気の熱を奪いながら蒸発する熱交換器とを含んで構成される。
【0003】
前記蒸発器および凝縮器は、冷媒と周辺の空気を熱交換させる熱交換器であって、冷媒が通過する冷媒管と、前記冷媒管が貫通し、離隔して配置される複数のピンとから構成されるピン型熱交換器で構成されるか、複数のプレートと、前記プレートの一面に取り付けられる冷媒管とから構成されるプレート型熱交換器で構成される。
【0004】
従来は、前記プレート型熱交換器において複数のプレートを接合するための方法として、固相拡散接合法やブレージング(brazing)接合方法が多く使用された。
【0005】
ところが、前記固相拡散接合法を利用するためには、プレートの表面粗さ(roughness)の厳しい管理が必要であり、約10−4torr以上の高真空度と約3〜7MPa以上の高圧の条件下で加圧工程が必要であるので、実際に工程を行うことが非常に困難である問題がある。
【0006】
また、ブレージング接合方法は、プレートの間にフィラー金属を挿入し、真空炉または水素炉で接合を行うが、液相状態のフィラー金属内に含有されている有機バインダーが溶解揮発しながら気泡を発生させたり析出物が形成され、接合不良がもたらされる問題がある。
【0007】
そこで、最近は、より簡単で容易な工程によりながら優れた効率でプレートを接合可能な接合方法に対する研究が進められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の一目的は、遷移液相拡散接合法によって接合可能に設計された熱交換器用プレートを提供することである。
【0009】
本発明の他の目的は、前記プレートを用いて、遷移液相拡散接合法によってより簡単で容易に、そして安価な費用で熱交換器内の複数のプレートを接合させ、この時形成される接合部は優れた品質を有する熱交換器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一実施形態によれば、プレートと、
前記プレートの少なくとも一面に、遷移液相拡散接合によって接合対象物と接合可能な合金層とを含み、
前記合金層は、融点降下元素であるB、Si、およびPのうちの少なくとも1つを含む熱交換器用プレートを提供する。
【0011】
前記プレートの少なくとも一面には、液相または気相の流体が流動可能な流路が形成される。
【0012】
前記プレートは、ステンレス(STS)鋼材のプレート、Ni系合金プレート、およびAl系合金プレートのうちの1つであることを特徴とする。
【0013】
前記合金層は、30〜100μmの厚さを有することができる。
【0014】
前記合金層は、Cr:5〜25重量%、Si:0超過10重量%以下、Al:0超過5重量%以下、Ti:0超過5重量%以下、B:0.5〜4重量%、および残部Niを含むことができる。
【0015】
前記合金層は、B:1〜5重量%およびNi:95〜99重量%を含むことができる。
【0016】
前記合金層は、P:1〜13重量%およびNi:87〜99重量%を含むことができる。
【0017】
前記合金層は、Si:0超過15重量%以下、Mg:0超過2重量%以下、およびAl残部を含むことができる。
【0018】
前記合金層は、無電解めっきまたは溶射コーティング(thermal spray)によって形成される。
【0019】
前記プレートは、0.05〜0.15mmの厚さを有することができる。
【0020】
本発明の他の実施形態によれば、前記プレートを2つ以上含む熱交換器であって、
2つ以上のプレートは、それぞれのプレートの間に合金層が介在した状態で積層され、
前記合金層は、遷移液相拡散接合によって接合部を形成することを特徴とする熱交換器を提供する。
【0021】
前記合金層は、Cr:5〜25重量%、Si:0超過10重量%以下、Al:0超過5重量%以下、Ti:0超過5重量%以下、B:0.5〜4重量%、および残部Niを含むことができる。
【0022】
前記合金層は、B:1〜5重量%およびNi:95〜99重量%を含むことができる。
【0023】
前記合金層は、P:1〜13重量%およびNi:87〜99重量%を含むことができる。
【0024】
前記合金層は、Si:0超過15重量%以下、Mg:0超過2重量%以下、およびAl残部を含むことができる。
【0025】
本発明のさらに他の実施形態によれば、2つ以上のプレートを用意するステップと、
前記プレートの少なくとも一面に、遷移液相拡散接合によって第2のプレートと接合できるように、融点降下元素であるB、Si、およびPのうちの少なくとも1つを含む合金層を形成するステップと、
合金層が形成された2つ以上のプレートを積層するステップと、
積層されたプレートを、1x10−4〜1x10−3torrの真空度および900〜1200℃の温度範囲で、0.1〜6時間加熱および維持して接合熱処理するステップとを含む熱交換器の製造方法を提供する。
【0026】
前記合金層を形成するステップは、無電解めっきまたは溶射コーティング(thermal spray)によって行われる。
【0027】
前記合金層を形成するステップは、合金層が30〜100μmの厚さを有するように行われる。
【0028】
前記無電解めっきまたは溶射コーティングによって合金層を形成した後、プレート上に液相または気相の流体が流動可能な流路を形成するステップを追加的に含むことができる。
【0029】
前記溶射コーティングによって合金層を形成するに先立ち、プレート上に液相または気相の流体が流動可能な流路を形成するステップを追加的に含むことができる。
【0030】
前記積層するステップの際、2つ以上のプレートは、それぞれのプレートの間に合金層が介在するように積層される。
【0031】
前記接合熱処理するステップに、後続して炉冷するステップをさらに含むことができる。
【0032】
ただし、本発明において、「第2のプレート」とは、本発明に係る遷移液相接合可能な合金層が形成されるか、あるいは形成されない任意の他のプレートを意味するもので、前記接合物の合金層を有するプレートと同じ材質または異なる材質を有することができる。
【発明の効果】
【0033】
本発明で提供する熱交換器用プレートは、他のプレートや冷媒管などの他の部品と遷移液相接合を容易に行えるようにする。
【0034】
また、本発明で提供する熱交換器は、複数のプレートが遷移液相接合法によって接合されることにより、接合部内に欠陥などが存在しない健全な接合部が形成され、熱交換器の品質が非常に優れている。
【0035】
さらに、本発明で提供する熱交換器用プレートの接合方法は、従来の固相拡散接合方法のような高真空度および高圧の条件を要求せず、設備製作費が節減され、接合条件の運用が容易であり、生産効率をより向上させることができる。
【0036】
また、本発明で提供する熱交換器用プレートの接合方法は、接合時間が短くて結晶粒の成長を抑制することができ、これによって、物性の低下を防止することができる。
【0037】
なお、本発明で提供する熱交換器用プレートの接合方法は、従来の固相拡散接合方法のような別途の後熱処理ステップを要求せず、生産費用と時間が節減され、これによって、生産効率をより向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1A】本発明の一実施形態に係る熱交換器用プレートの断面図を示すものである。
図1B】本発明の一実施形態に係る熱交換器用プレートの断面図を示すものである。
図2】本発明の一実施形態により溶射コーティングによってプレート上に合金層を形成する場合に使用可能なプラズマガンの概略図を示すものである。
図3】本発明の一実施形態に係る熱交換器用プレートの製造工程のフローチャートを概略的に示すものである。
図4】本発明の一実施形態に係る熱交換器の製造工程のフローチャートを概略的に示すものである。
図5】実験例1において、本発明に係るプレートを用いて遷移液相拡散接合方法でこれらを接合させた場合(実施例1)の、接合部の断面写真を示すものである。
図6】実験例1において、ブレージング接合方法によってプレートを接合させた場合(比較例1)の、接合部の断面写真を示すものである。
図7】実験例2において、本発明に係るプレートを用いて遷移液相拡散接合方法でこれらを接合させた場合(実施例2)の、接合部の断面写真を示すものである。
図8】実験例2において、固相拡散接合方法によってプレートを接合させた場合(比較例2)の、後熱処理をする前の接合部の断面写真を示すものである。
図9】実験例2において、固相拡散接合方法によってプレートを接合させた場合(比較例2)の、後熱処理をした後の接合部の断面写真を示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明の好ましい実施形態を説明する。しかし、本発明の実施形態は種々の異なる形態に変形可能であり、本発明の範囲が以下に説明する実施形態に限定されるものではない。また、本発明の実施形態は、当該技術分野における平均的な知識を有する者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。
【0040】
本発明の発明者らは、複数のプレートを含む熱交換器を製造する時、複数のプレートを遷移液相拡散接合法(Transition liquid phase bonding、TLP bonding)で接合させる場合、接合部内に欠陥が発生せず、接合部の品質を向上させるだけでなく、従来の固相拡散接合法より穏やかな条件下で簡単で容易に接合工程を行うことができることを見出して、本発明に至った。
【0041】
具体的には、本発明の一実施形態によれば、プレートと、前記プレートの少なくとも一面に、遷移液相拡散接合によって接合対象物に接合可能な合金層とを含み、前記合金層は、融点降下元素であるB、Si、およびPのうちの少なくとも1つを含む熱交換器用プレートを提供する。
【0042】
本発明において、前記接合対象物は、前記プレートが接合可能な他の対象物を意味するもので、例えば、本発明に係る合金層が形成されるか形成されない第2のプレートや冷媒管などの、熱交換器に含まれ得る他の部品であってもよいが、これに制限されるわけではない。
【0043】
本発明において、前記合金層は、無電解めっきまたは溶射コーティング(thermal spray)によって形成されることを特徴とする。
【0044】
ただし、本発明のプレートの少なくとも一面には、冷媒として用いられる液相または気相の流体が流動して熱交換を行うことのできる流路が形成される。この時、本発明の合金層は、前記流路が形成された面に形成されてもよく、あるいは流路の形成されない他の裏面に形成されてもよい。ただし、流路が形成された面に合金層が形成される場合、合金層は、流路部分を除いた部分にのみ形成される。
【0045】
また、本発明において、前記流路の形態は特に限定しないが、熱交換効率を高めるためには、十分な流路長さを確保できるようにジグザグ形状を有することができる。
【0046】
従来、ブレージング方法などを利用してプレートを接合する場合、プレートの間に充填されるフィラー金属を粉形態(powder type)で使用することが一般的であるが、その場合、粉形態のフィラー金属を接合が行われる部分に正確に塗布しなければ、前記フィラー金属が流路を塞ぐ問題が存在していた。
【0047】
しかし、本発明では、無電解めっきまたは溶射コーティングによって、流路の形成されない部分に遷移液相拡散接合可能な合金層をプレートの表面に沿って均一に形成することにより、プレート上の流路を塞ぐ問題が発生せず、接合時に流路の形成されない部分にのみ接合が行われ、接合品質をより高めることができる。
【0048】
また、本発明において、前記合金層の厚さは特に限定しないが、例えば、30〜100μmの厚さを有することが好ましい。合金層の厚さが30μm未満の場合、十分な接合部を形成しにくいことがあり、厚さが100μmを超える場合、遷移液相拡散接合時に合金層が母材に十分に拡散しないことがあり、経済的な点でも問題となり得る。
【0049】
本発明において、前記合金層の組成には、前記のように、プレート母材の融点を降下させられる元素としてB、Si、およびPのうちの少なくとも1つを含み、必要によっては、強度、耐食性および耐酸化性を向上させるためにCrおよび/またはNiを追加的に含むことができるが、これに制限されるわけではない。
【0050】
また、本発明において、前記合金層の具体的な組成は、プレートの組成に応じて適切に調節できるが、本発明において、前記プレートがSTS系またはニッケル合金系の場合、本発明の好ましい一実施形態において、前記合金層は、Cr:5〜25重量%、Si:0超過10重量%以下、Al:0超過5重量%以下、Ti:0超過5重量%以下、B:0.5〜4重量%、および残部Niを含むことができ、より好ましくは、Cr:5〜20重量%、Si:0超過5重量%以下、Al:0超過5重量%以下、Ti:0超過5重量%以下、B:0.5〜4重量%、および残部Niを含むことができる。さらに、本発明の好ましい他の実施形態において、前記合金層は、B:1〜5重量%およびNi:95〜99重量%を含むことができ、本発明の好ましいさらに他の実施形態において、前記合金層は、P:1〜13重量%およびNi:87〜99重量%を含むことができ、より好ましくは、P:1〜10重量%およびNi:90〜99重量%を含むことができる。
【0051】
ここで、前記STS系プレートの具体的な組成は特に限定しないが、例えば、STS316L鋼材またはSTS304鋼材を用いることができる。
【0052】
前記ニッケル合金系プレートの具体的な組成も特に限定しないが、例えば、インコネル617プレートまたはHaynes230プレートが使用できる。
【0053】
また、本発明において、前記プレートがアルミニウム合金系の場合、本発明の好ましい一実施形態において、前記合金層は、Si:0超過15重量%以下、Mg:0超過2重量%以下、およびAl残部を含むことができる。
【0054】
一方、本発明で使用されるプレートの厚さも特に限定せず、熱交換器が適用される機器や部品の規模に応じて適切に選択できるが、熱交換効率および経済的な点を考慮する時、0.05〜0.15mmであることが好ましい。
【0055】
図1Aは、本発明の一実施形態に係る熱交換器用プレートの断面図を示すもので、プレート1の一面には、断面が半球形状の冷媒流路10が形成されたことが分かり、流路10が形成されたプレート1の表面中の流路の形成されない部分に沿って遷移液相拡散接合可能な合金層100が形成されたことが分かる。
【0056】
また、図1Bは、本発明の他の実施形態に係る熱交換器用プレートの断面図を示すもので、プレート1の一面には、断面が半球形状の冷媒流路10が形成されたことが分かり、流路10が形成された面の他の裏面に沿って遷移液相拡散接合可能な合金層100が形成されたことが分かる。
【0057】
本発明の他の実施形態によれば、プレートを用意するステップと、前記プレートの少なくとも一面に、遷移液相拡散接合によって接合対象物と接合できるように、融点降下元素であるB、Si、およびPのうちの少なくとも1つを含む合金層を形成するステップとを含む熱交換器用プレートの製造方法を提供する。
【0058】
本発明において、前記接合対象物は、前記プレートが接合可能な他の対象物を意味するもので、例えば、本発明に係る合金層が形成されるか形成されない第2のプレートや冷媒管などの、熱交換器に含まれ得る他の部品であってもよいが、これに制限されるわけではない。
【0059】
本発明において、前記合金層を形成するステップは、無電解めっきまたは溶射コーティング(thermal spray)によって行われることを特徴とする。
【0060】
具体的には、本発明の一実施形態において、前記無電解めっきは、プレートの少なくとも一面を、BおよびPのうちの少なくとも1つの融点降下元素を有する合金組成物と、還元剤とを含むめっき液に担持して行われる。
【0061】
ここで、前記還元剤の種類は特に限定しないが、例えば、ホルムアルデヒド(HCHO)、グリセリンに基づいて製造されたグリオキシル酸、次亜リン酸ナトリウム(NaPO・HO)、水素化ホウ素溶液、およびジメチルアミン−ボラン(DMAB)からなるグループより選択された1種以上を用いることができる。
【0062】
また、本発明の他の実施形態において、前記溶射コーティングは、プラズマガンなどを用いて、B、Si、およびPのうちの少なくとも1つの融点降下元素を有する合金組成物をプレートの少なくとも一面に噴射して行われる。
【0063】
より詳細には、図2は、溶射コーティング時に使用可能なプラズマガン20の概略図を示すもので、ガス注入口21を通してプラズマガス(Ar、N、H、Heなど)を流入すると、これは、高電圧直流の高電力(通常、30−100KV、400−1000A)が印加された陰極22と陽極24との間の間隙を通過しながらその一部が解離して、5,000〜15,000℃の高温のプラズマ炎(flame)25を形成し、粉末(powder)または線(wire)に製造された前記合金組成物は、粉末注入口27を通して高温のプラズマ炎25中に注入される。粉末注入口27は、支持台26によってプラズマガンに固定されるが、粉末注入口27を通して注入された合金組成物の粉末28は、高温のプラズマ炎によって完全溶融するか一部溶融した状態で、高速(200〜700m/s)でコーティング対象物、すなわちプレート30方向に飛行して合金層29を形成する。
【0064】
一方、本発明で使用するプレートの少なくとも一面には、冷媒として使用される液相または気相の流体が流動して熱交換を行うことのできる流路が形成されるが、前記流路を形成する工程は特に限定せず、通常の技術者であれば当該技術分野で一般的に使用される方法で行うことができるが、例えば、機械加工または化学的エッチング法(chemical etching)によってプレート上に多様な形態の流路を形成することができる。
【0065】
本発明において、前記流路を形成するステップは、合金層を形成するステップの前または後に行うことができ、その手順を特に限定しない。
【0066】
ただし、本発明の一実施形態において、流路が形成された面に合金層を形成する場合、無電解めっきまたは溶射コーティングによって合金層を先に形成した後に流路を形成するか、あるいは流路を形成した後、溶射コーティングによって流路の形成されない部分にのみ合金層が形成されるようにすることが好ましい。
【0067】
また、本発明の他の実施形態において、流路の形成されない面に合金層を形成する場合には、工程を行う条件に応じて合金層を形成するステップの前または後に選択して行うことができる。
【0068】
本発明において、前記合金層を形成するステップは、合金層の厚さが30〜100μmの厚さを有するように行うことが好ましい。合金層の厚さが30μm未満の場合、十分な接合部を形成しにくいことがあり、厚さが100μmを超える場合、遷移液相拡散接合時に合金層が母材に十分に拡散しないことがあり、経済的な点でも問題となり得る。
【0069】
本発明のプレートの製造方法において、合金層の組成とプレートの厚さおよび組成は、前記本発明に係るプレートの記載と重複し、以下、詳細な記載は省略する。
【0070】
図3は、本発明の一実施形態に係る熱交換器用プレートの製造工程のフローチャートを概略的に示すもので、まず、プレート1を用意した後(a)、プレート1の一面上に合金層100を形成し(b)、合金層100が形成された面に流路10を形成した(c)ことが分かる。
【0071】
本発明のさらに他の実施形態によれば、本発明に係るプレートを2つ以上含む熱交換器であって、2つ以上のプレートは、それぞれのプレートの間に合金層が介在した状態で積層され、前記合金層は、遷移液相拡散接合によって接合部を形成することを特徴とする熱交換器を提供する。
【0072】
具体的には、本発明において、合金層が形成されたプレート2つ以上を積層するが、2つのプレートの間に合金層が介在した状態で積層すれば、遷移液相拡散接合によって前記合金層はプレート接合部を形成することができる。すなわち、遷移液相拡散接合時、合金層内に含まれた融点降下元素であるB、Si、またはPはプレート母材側に拡散し、合金層の融点が上昇して等温凝固が発生することによって接合部が形成される。
【0073】
本発明において、前記合金層は、無電解めっきまたは溶射コーティング(thermal spray)によって形成されることを特徴とする。
【0074】
また、本発明において、前記合金層の厚さは特に限定しないが、例えば、30〜100μmの厚さを有することが好ましい。合金層の厚さが30μm未満の場合、十分な接合部を形成しにくいことがあり、厚さが100μmを超える場合、遷移液相拡散接合時に合金層が母材に十分に拡散しないことがあり、経済的な点でも問題となり得る。
【0075】
本発明において、前記合金層の組成としては、前記のように、プレート母材の融点を降下させられる元素としてB、Si、およびPのうちの少なくとも1つを含み、必要によっては、強度、耐食性および耐酸化性を向上させるためにCrおよび/またはNiを追加的に含むことができるが、これに制限されるわけではない。
【0076】
また、本発明において、前記合金層の具体的な組成は、プレートの組成に応じて適切に調節できるが、本発明において、前記プレートがSTS系またはニッケル合金系の場合、本発明の好ましい一実施形態において、前記合金層は、Cr:5〜25重量%、Si:0超過10重量%以下、Al:0超過5重量%以下、Ti:0超過5重量%以下、B:0.5〜4重量%、および残部Niを含むことができ、より好ましくは、Cr:5〜20重量%、Si:0超過5重量%以下、Al:0超過5重量%以下、Ti:0超過5重量%以下、B:0.5〜4重量%、および残部Niを含むことができる。本発明の好ましい他の実施形態において、前記合金層は、B:1〜5重量%およびNi:95〜99重量%を含むことができ、本発明の好ましいさらに他の実施形態において、前記合金層は、P:1〜13重量%およびNi:87〜99重量%を含むことができ、より好ましくは、P:1〜10重量%およびNi:90〜99重量%を含むことができる。
【0077】
ここで、前記STS系プレートの具体的な組成は特に限定しないが、例えば、STS316L鋼材またはSTS304鋼材を用いることができる。
【0078】
前記ニッケル合金系プレートの具体的な組成も特に限定しないが、例えば、インコネル617プレートまたはHaynes230プレートが使用できる。
【0079】
また、本発明において、前記プレートがアルミニウム合金系の場合、本発明の好ましい一実施形態において、前記合金層は、Si:0超過15重量%以下、Mg:0超過2重量%以下、およびAl残部を含むことができる。
【0080】
一方、本発明で使用されるプレートの少なくとも一面には、冷媒が流動して熱交換を行うことのできる流路が形成され、前記流路形態は特に限定しないが、例えば、ジグザグ形態をなしてもよい。この時、本発明に係る合金層は、前記流路が形成された面に形成されてもよく、あるいは流路の形成されない他の裏面に形成されてもよい。ただし、流路が形成された面に合金層が形成される場合、合金層は、流路部分を除いた部分にのみ形成される。
【0081】
また、本発明において、前記プレートの厚さは特に限定せず、熱交換器が適用される機器や部品の規模に応じて適切に選択できるが、熱交換効率および経済的な点を考慮する時、0.05〜0.15mmであることが好ましい。
【0082】
本発明のさらに他の実施形態によれば、2つ以上のプレートを用意するステップと、前記プレートの少なくとも一面に、遷移液相拡散接合によって第2のプレートと接合できるように、融点降下元素であるB、Si、およびPのうちの少なくとも1つを含む合金層を形成するステップと、合金層が形成された2つ以上のプレートを積層するステップと、積層されたプレートを、1x10−4〜1x10−3torrの真空度および900〜1200℃の温度範囲で、0.1〜6時間接合熱処理するステップとを含む熱交換器の製造方法を提供する。
【0083】
本発明において、まず、プレートを用意するステップを行うことができるが、前記プレートの厚さは特に限定せず、熱交換器が適用される機器や部品の規模に応じて適切に選択できるが、熱交換効率および経済的な点を考慮する時、0.05〜0.15mmのものを用意することが好ましい。
【0084】
本発明において、前記のようなプレートを2つ以上用意すれば、プレートの少なくとも一面に合金層を形成するステップを行うことができる。本発明において、前記合金層は、無電解めっきまたは溶射コーティング(thermal spray)によって形成することを特徴とする。
【0085】
具体的には、本発明の一実施形態において、前記無電解めっきは、プレートの少なくとも一面を、BおよびPのうちの少なくとも1つの融点降下元素を有する合金組成物と、還元剤とを含むめっき液に担持して行われる。
【0086】
ここで、前記還元剤の種類は特に限定しないが、例えば、ホルムアルデヒド(HCHO)、グリセリンに基づいて製造されたグリオキシル酸、次亜リン酸ナトリウム(NaPO・HO)、水素化ホウ素溶液、およびジメチルアミン−ボラン(DMAB)からなるグループより選択された1種以上を用いることができる。
【0087】
また、本発明の他の実施形態において、前記溶射コーティングは、プラズマガンなどを用いて、B、Si、およびPのうちの少なくとも1つの融点降下元素を有する合金組成物をプレートの少なくとも一面に噴射して行われる。
【0088】
一方、本発明で使用するプレートの少なくとも一面には、冷媒として使用される液相または気相の流体が流動して熱交換を行うことのできる流路が形成されるが、前記流路を形成する工程は特に限定せず、通常の技術者であれば当該技術分野で一般的に使用される方法で行うことができるが、例えば、機械加工や化学的エッチング法(chemical etching)によってプレート上に多様な形態の流路を形成することができる。
【0089】
本発明において、前記流路を形成するステップは、合金層を形成するステップの前または後に行うことができ、その手順を特に限定しない。
【0090】
ただし、本発明の一実施形態において、流路が形成された面に合金層を形成する場合、無電解めっきまたは溶射コーティングによって合金層を形成した後に流路を形成するか、あるいは流路を形成した後、溶射コーティングによって流路の形成されない部分にのみ合金層が形成されるようにすることが好ましい。
【0091】
また、本発明の他の実施形態において、流路の形成されない面に合金層を形成する場合には、工程を行う条件に応じて合金層を形成するステップの前または後に選択して行うことができる。
【0092】
さらに、本発明において、前記合金層を形成するステップは、合金層の厚さが30〜100μmの厚さを有するように行うことが好ましい。合金層の厚さが30μm未満の場合、十分な接合部を形成しにくいことがあり、厚さが100μmを超える場合、遷移液相拡散接合時に合金層が母材に十分に拡散しないことがあり、経済的な点でも問題となり得る。
【0093】
本発明において、前記のように合金層が形成されたプレートが用意されると、2つ以上のプレートを積層してプレート積層体を形成するステップを行うことができるが、この時、2つ以上のプレートは、それぞれのプレートの間に合金層が介在するように積層される。
【0094】
また、本発明では、合金層の形成されないプレートを、前記プレート積層体の最も上層または下層に追加的に積層することができる。
【0095】
以後、本発明では、積層されたプレートを、1x10−4〜1x10−3torrの真空度および900〜1200℃の温度範囲で、0.1〜6時間加熱および維持して接合熱処理し、20〜25℃の常温まで炉冷するステップを含む遷移液相拡散工程を行うことができる。前記接合熱処理時、合金層内に含まれた融点降下元素であるB、Si、および/またはPがプレート母材側に拡散して、合金層の融点が上昇することによって等温接合部を形成することができる。
【0096】
本発明で形成される接合部は、前記遷移液相接合工程によってその内部に気孔や析出物が形成されず、プレートの接合品質が非常に優れており、接合のために高真空度または高温の環境条件を必要としないので、工程の運用が非常に容易であり、経済的な効果を挙げることができて、生産効率をより高めることができる。
【0097】
本発明の熱交換器の製造方法において、合金層およびプレートの組成は、前記本発明に係る熱交換器の記載と重複し、以下、詳細な記載は省略する。
【0098】
図4は、本発明の一実施形態に係る熱交換器の製造工程のフローチャートを概略的に示すもので、まず、プレート1を用意した後(a)、プレート1の一面に合金層100を形成し(b)、合金層100が形成された面に流路10を形成した後(c)、3つのプレートを、合金層100が2つのプレート1の間に介在するように積層し、合金層の形成されないプレート2を最も上層に積層して、プレート積層体を形成し(d)、次に、遷移液相拡散接合によって前記合金層100が接合部101をなすことで、熱交換器が製造される。
【0099】
以下、具体的な実施例により、本発明をより具体的に説明する。下記の実施例は本発明の理解のための例示に過ぎず、本発明の範囲がこれに限定されるものではない。
【0100】
実施例
[製造例1]
STS316L鋼材のプレートを用意した後、P:10重量%およびNi:90重量%を含む合金組成物と、次亜リン酸ナトリウム(NaPO・HO)の還元剤とを含む無電解めっき浴に、前記プレートの一面を浸漬して合金層を形成した。
【0101】
[製造例2]Ni系プレート
Haynes230プレートを用意した後、B:3重量%およびNi:97重量%を含む合金組成物と、次亜リン酸ナトリウム(NaPO・HO)の還元剤とを含む無電解めっき浴に、前記プレートの一面を浸漬して合金層を形成した。
【0102】
[製造例3]Al系プレート
インコロイ(INCOLOY)800Hプレートを用意した後、Si:12重量%、Mg:1.5重量%、および残部Alを含む合金組成物を、図2のプラズマガンを用いて溶射コーティングして合金層を形成した。ただし、溶射コーティング時、プラズマガスとしては窒素ガスを使用した。
【0103】
[実施例1〜3]
前記製造例1〜3で製造されたプレートの合金層上に、合金層の形成されないプレートを積層した後、3x10−4torrの真空度および1,050〜1,100℃の温度範囲で、1時間加熱および維持して接合熱処理をした後、常温まで炉冷して、プレート積層体を製造した。
【0104】
[比較例1]
STS316L材質のプレート2つを用意した後、Si:6重量%、Zn:4重量%、Cu:0.5重量%および残部Al、並びに不可避不純物を含むアルミニウム合金のフィラー金属を2つのプレートの間に挿入し、窒素雰囲気下、600℃の温度で10分間ブレージングして、プレート積層体を製造した。
【0105】
[比較例2]
Haynes230プレート2つを用意した後、2つのプレートを接触させて、1150℃の温度と4MPaの圧力下、4時間接合した後、1200℃の温度で100時間後熱処理をして、プレート積層体を製造した。
【0106】
[実験例1]
前記実施例1および比較例1で製造されたプレート積層体の接合部を走査電子顕微鏡(SEM)で観察して、その写真をそれぞれ図5および図6に示した。
【0107】
図5に示されるように、本発明に係るプレート積層体は、接合部が特別に区分されることなく、2つのプレートが接合されていることが分かり、特に、接合部内には何らかの生成相や欠陥が存在しないことが分かる。
【0108】
反面、図6に示されるように、ブレージング方法を利用して2つのプレートを接合する場合、ブレージング部に多様な生成相が一列に形成されたことが分かる。しかし、前記生成相は接合部の機械的物性に悪影響を及ぼすことがある。
【0109】
[実験例2]
前記実施例2および比較例2で製造されたプレート積層体の接合部を走査電子顕微鏡(SEM)で観察して、その写真をそれぞれ図7および図8図9に示した。
【0110】
図7に示されるように、本発明に係るプレート積層体は、別途の後熱処理をしなくても接合部が特別に区分されることなく、2つのプレートが接合されていることが分かり、特に接合部内には何らかの生成相や欠陥が存在しないことが分かる。
【0111】
反面、図8に示されるように、固相拡散接合方法を利用して2つのプレートを接合する場合、後熱処理を経る前には接合部に多様な生成相が形成されたことが分かり、析出物が一列に形成されて接合不良がもたらされ、機械的物性に悪影響を及ぼすことがある。
【0112】
これによって、図9に示されるように、固相拡散接合方法を利用した接合部内に欠陥を無くすために、1200℃の温度で100時間後熱処理を行うことができる。しかし、後熱処理には高温の環境条件と長い処理時間が必要であるため、生産効率が低下する問題がある。
【0113】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明の範囲はこれに限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の技術的思想を逸脱しない範囲内で多様な修正および変形が可能であることは当技術分野における通常の知識を有する者には自明である。
【符号の説明】
【0114】
1:プレート
2:合金層の形成されないプレート
10:流路
100:合金層
101:接合部
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9