【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的は、特許請求の範囲の請求項1に記載の近接センサによって達成される。特許請求の範囲の従属項は、好ましい態様を規定する。
【0008】
従って、本発明では、前記半導体部品を、前記回路板の表面上に固定されている気密封止された囲い内に収容することを提案する。該囲いは、該半導体部品を、該近接センサに及ぼされる外部からの衝撃に対して保護することを可能とし、またそのライフサイクルを延長するように寄与することを可能とする。特に、該半導体部品の半導体結晶における、及び該半導体部品の配線に及ぼされる、熱分解作用及び/又は腐食作用は、このような囲いを設けることによって、有利に減じることが可能となる。以下において、少なくとも一つの前記半導体部品を含む該気密封止された囲いを、「収納装置」と呼ぶ。
収納装置は、支持部分を含み、該支持部分は、前記半導体部品が固定されている側部及び前記回路板に固定された対向する側部を有している。該支持部分は、該回路板の熱膨張、特に該回路板の機械的温度係数と、高くとも50ppm/℃なるズレにて一致する温度係数を持つ材料からなっている。該温度係数の一致は、高い動作温度での熱サイクルによって誘発される前記近接センサの損傷を防止するのに利用し得る。
【0009】
特に、本発明においては、とりわけ有害な外的影響に対して敏感な上記近接センサの部品の一つを、上記センサ回路内に収容されている半導体部品によって構成し得ることが、認識された。かくして、上記の有害な外的衝撃から、この弱点を保護するのに使用し得る特有の設備・対策が提案される。
【0010】
本件に関連して、上記「半導体部品」なる用語は、特に半導体デバイス、例えばトランジスタ又はダイオードを意味し、またより一般的には、内部に含まれる半導体材料の電子的諸特性を利用する、任意の他の部品を意味する。例えば、該「半導体部品」なる用語はまた、1又はそれ以上の半導体デバイスを含む集積回路をも意味する。好ましい一用途においては、少なくとも一つの半導体部品が、近接センサの特に敏感な要素を代表するトランジスタによって与えられる。
【0011】
引続き、前記近接センサ及びそこに含まれている電子部品の抵抗性及び/又は耐久性を、更に改善するための様々な特徴を説明する。
【0012】
好ましくは、前記収納装置は、減圧下に置かれ、又は不活性ガスで満たされ、また該収納装置は、不活性雰囲気又は真空雰囲気を維持するために、気密封止される。このように、腐食及び外部からの汚染に対する良好な保護が達成され、また、高温度及び熱サイクルに曝された状態における該センサの動作寿命及び信頼性を改善することができる。好ましくは、該収納装置は、該不活性雰囲気を与えるために、窒素で満たされる。或いはまた、該収納装置内を真空雰囲気とすることを考えることもできる。
【0013】
好ましくは、前記収納装置は蓋を含む。この蓋は、該収納装置内部の気密封止された容積の範囲を定め、及び/又は前記半導体部品に係る追加の上部の機械的保護を与えるために使用し得る。より好ましくは、該蓋は、金属製又はセラミックス製である。金属製又はセラミックス製の蓋は、良好な保護及び/又は気密封止との組合せで、容易に設置されるという利点を与える。
【0014】
支持部分は、好ましくは該回路板の熱膨張、特に
上記回路板の機械的温度係数と
、好ましくは高くても10ppm/℃なるズレにて一致する温度係数を持つ材料からなっている。該温度係数の一致は、高い動作温度での熱サイクルによって誘発される前記近接センサの損傷を防止するのに利用し得る。
【0015】
熱膨張係数又は線形熱膨張係数とも呼ぶことのできる前記用語「機械的温度係数」とは、温度が1Kだけ変えられた際の、各機械的な寸法の相対的な変化として理解すべきである。
【0016】
前記収納装置の支持部分と前記回路板との間の前記機械的温度係数の一致は、好ましくは、少なくとも該近接センサの意図された動作温度の所定範囲に渡り与えられる。該温度範囲は、例えば少なくとも180℃、より好ましくは少なくとも250℃なる上限温度値、及び/又は高くても0℃、より好ましくは高くても−25℃なる下限温度値を含むことができる。好ましくは、例えば該機械的温度係数で表されるような、各熱膨張は、該意図された動作温度範囲に渡り実質上一定である。
【0017】
好ましくは、前記収納装置用の材料は、排他的に無機物質、例えばセラミックス、金属及び/又はガラスを含む。前記収納装置の支持部分と前記回路板との間の前記熱膨張に係る有利な一致を達成するために特に好ましい材料は、該収納装置の支持部分に設けられたセラミックスを含む。より好ましくは、少なくとも該収納装置の支持部分は、完全にセラミックスからなっている。
【0018】
前記回路板用に適した材料は、耐熱性プラスチック、セラミックス、ガラス及びエナメル処理された(ほうろう処理された)金属を含む。前記収納装置の支持部分との熱膨張性の一致を確保するのに好ましい該回路板の材料は、耐熱性ポリイミドを含む。より好ましくは、ポリ(ジフェニルオキシド)−ピロメリトイミド(すなわち、ポリ(4,4’−オキシジフェニレン−ピロメリトイミド)が使用される。この材料は、「カプトン(Kapton
R)」(登録商標)としても知られており、広い温度範囲、例えば−200℃から400℃までに渡り利用でき、易燃性(可燃性)を示さず、また融点を示さないという利点を与える。好ましくは、該回路板は、また強化材料、好ましくはガラス材料をも含んでいて、より適した熱膨張性及びより高い機械的安定性を与える。
【0019】
好ましくは、前記センサ回路は、相互に熱的に連結された少なくとも2つの半導体部品を含む。好ましくは、該半導体部品間の熱的連結は、該半導体部品間の熱的接続物質により与えられ、これは、該半導体部品間の熱交換(温度交換)を可能とする。好ましくは、前記収納装置は、該熱的接続物質を含む。好ましくは、該熱的接続物質は、無機材料、より好ましくはセラミックスである。このように、高い動作温度にて起る漏洩電流は、相殺することができる。
【0020】
好ましい構成によれば、少なくとも2つのトランジスタが相互に熱的に連結される。即ち、差動トランジスタ対、トリプレット又はより多数のトランジスタからなる平衡回路部品、又はより一般的には数個の半導体部品を含む等価な回路部品を設けて、前記近接センサの高い動作温度における漏洩電流による逆効果を回避することができる。これによって、少なくとも2つの連結された半導体部品は、好ましくは並列配置にある該センサ回路内に収容される。より好ましくは、該半導体部品は、その各ベース端子及び/又はエミッタ端子間の接続を介して、相互に連結されている。特に、高温において発生する該漏洩電流を打ち消すために、該センサ回路における平衡対内のトランジスタの配列を考えることができる。例えば、一つのトランジスタのエミッタパッドを、次のトランジスタのベースパッドと接続することができる。より一般的には、並列又は直列状態或いは並列及び直列接続のハイブリッド配列で動作する、差動対、トリプレット又はより多数の半導体部品を想起することができ、ここで少なくとも2つの半導体部品の並列状態での配列が、より高温度での安定性を実現するためには好ましい。
【0021】
好ましくは、前記の相互に熱的に連結された少なくとも2つの半導体部品は、同一の収納装置内に収容されている。より好ましくは、別の収納装置を、複数の相互に熱的に連結された半導体部品の各々及び/又は前記回路板に設けられた単一の半導体部品各々に対して設ける。このようにして、前記センサ回路内の該半導体部品の密な配列を実現することができ、ここで外的な衝撃に対する良好な保護及び高温度における低感度性・不感受性を、各熱的に連結された半導体部品の配列に対して与えることができる。
【0022】
より一般的には、前記回路板上に搭載された、実質上全ての半導体部品、又は少なくとも全ての温度及び/又は汚染に対して敏感な半導体部品は、好ましくは一つの収納装置内に収容される。これにより、1個、数個又は全ての半導体部品を、該回路板の表面上に固定された、単一の又は数個の収納装置内に収容することができる。好ましくは、各々少なくとも一つの半導体部品が収容されている、少なくとも2つの収納装置が、該回路板の表面上に固定されている。より好ましくは、別の収納装置を、本質的に温度及び/又は汚染に対して敏感な半導体部品各々及び/又は複数の相互に熱的に連結された半導体部品の各々に対して、該回路板の表面上に設ける。このようにして、個々の半導体デバイス配列の個別の保護が実現され、結果として著しく損傷し易い局部的な点における汚染及び温度作用に対する、該センサ回路全体の感受性を下げることが可能となる。
【0023】
好ましくは、前記センサ回路は、更に、前記半導体部品の収納装置から外部に前記回路板上に搭載された電子部品、例えばレジスタ、キャパシタ、サーミスタ等を含む。これらの外部電子部品は、好ましくは無機材料、特にセラミックスを含む。更に、これは、特に該回路板と該センサ回路との間の温度係数を一致させることにより、前記近接センサの温度に対する不感受性を改善するのに寄与し得る。
【0024】
好ましくは、実質的に無機成分のみが、前記回路板上及び/又は前記収納装置内部に設けられる。より好ましくは、合成又は可塑性成分が、該回路板上及び/又は該収納装置内部に設けられることは全くない。最も好ましくは、排他的にセラミックス及び/又は半導体及び/又は金属部品が、該回路板上及び/又は該収納装置内に配置される。好ましくは、該回路板自体のみが、耐熱性材料の部品からなっている。好ましくは、該回路板上の部品を接続している導電体は、少なくとも部分的に該回路板の表面に付着され、かつ貴金属、好ましくは金でメッキされている。
【0025】
前記収納装置内に収容されている前記少なくとも一つの半導体部品を前記回路板に電気的に接続するために、該収納装置は、好ましくは少なくとも2つの接続パッドを含み、該パッドは該回路板上の導体と電気的に接続されている。特に、該収納装置内部の接続パッドと電気的接続状態にある該収納装置の底部における対応する接点は、好ましくは該回路板上の各接点に接着されている。
【0026】
好ましくは、前記半導体部品の少なくとも一つのパッドと前記収納装置内部の該収納装置の接続パッドとの間の前記電気的接続は、熱圧接法により作られている。金製ワイヤを接続部として使用することが好ましい。好ましくは、少なくとも一つの接続パッドは、金の金属化層を含む。該半導体部品と前記回路板との電気的接続に関するこれらの手段は、更に前記近接センサの改善された高い耐熱性に対して寄与することができ、また、特に、少なくとも一つの半導体部品をその内部に収容している該収納装置及び該回路板の温度係数の適合に対して寄与することができる。その上、単一の型の金属の使用は、金属部分の接合におけるイオンマイグレーションの効果を減じる可能性がある。
【0027】
好ましくは、前記回路板は、成形材料により包囲されている。一方において、該成形材料は、高温度、汚染及び機械的な衝撃に対する付随的な保護のために、該回路板のカプセル化を可能とする。他方において、該成形材料は、該回路板に対して該収納装置及び/又は他の部品を付随的に固定するために使用することができる。
【0028】
更に、前記成形材料は、高温度下でのガスの存在による、金属部品、特に金属製接続部の酸化を防止し或いは遅延することを可能とする。好ましくは、柔軟性の成形材料を適用する。より好ましくは、該成形材料はエポキシである。最も好ましくは、特に少なくとも150℃なるガラス転移温度Tgを持つ耐熱性エポキシを適用する。
【0029】
前記回路板上に固定されている前記収納装置及び/又は他の電子部品を付随的に保護するために、好ましくは体積フィラーを、前記成形材料と該回路板の表面の少なくとも一部との間に配置する。好ましくは、該体積フィラーは、該回路板の両側表面上に配置される。該体積フィラーは、好ましくは、前記成形材料と該回路板の各表面の少なくとも一部との間の内部容積を満たすために、圧縮性の空間的に広がった物体により構成される。好ましくは、該体積フィラーは、該収納装置及び/又は該回路板の表面から突出している他の電子部品の垂直方向の高さを越える厚み、好ましくはその少なくとも2倍の厚みを成す。より好ましくは、該体積フィラーは、該回路板及び該収納装置及び/又は該回路板の表面から突出している他の電子部品の併せた厚みを越える、好ましくはその少なくとも2倍の厚みを成す。
【0030】
好ましくは、一つの収納装置の少なくとも外側表面又は幾つかの収納装置の外側表面又は一つの半導体部品を含む各収納装置の外側表面は、前記体積フィラーで覆われている。より好ましくは、電子部品を備えている前記回路板の実質的に全ての表面部分が、該体積フィラーで覆われている。
【0031】
好ましくは、前記体積フィラーは、特に前記回路板の一様でない表面部分に関して、適合性であり及び/又は付形可能とするために、柔軟性材料を含み、該一様でない表面部分において、前記収納装置及び/又は他の部品が突出している。該体積フィラーのこのような形状に係るカスタマイズは、前記成形材料により占有される体積を減じる目的で、該体積フィラーにより該収納装置及び/又は他の部品を実質的に十分に取囲むことが有利であり得る。本発明において、該成形材料の体積におけるこのような減少が望ましいことであることが認識されており、その理由は、該成形材料が、より大きな機械的温度係数を示す可能性があり、また、結果として有意な内部圧力の増加に対して寄与する可能性があるからである。これは、該成形材料により占有される体積を抑制することにより、回避することができる。該体積フィラーの柔軟性はまた、該部品の熱膨張応力の吸収を保証するのに有利であり得、更にこれは、前記近接センサに及ぼされる機械的衝撃に対する前記電子部品のより良好な保護を可能とする。該体積フィラーはまた、熱膨張作用又は機械的な衝撃のより一層高い補償を実現するために、互いの上に、特に該回路板の各側面上に積み重ねられた、少なくとも2つの層を含むことができる。
【0032】
好ましくは、前記体積フィラーは、合成ゴムフォーム、特にフルオロポリマーエラストマーを含み、これはまた、「ビトン(Viton
R)」(登録商標)なる名称の下に一般的に知られている。このような材料は、特に付形性、熱膨張応力の吸収性及び耐熱性、耐汚染性及び耐衝撃性の観点から、上記利点を持つ体積フィラーとして特に適したものである。
【0033】
好ましい構成によれば、前記体積フィラーは、前記収納装置及び/又は前記回路板上の他の部品と直接的に隣接している。前記近接センサの製造中に、該体積フィラーは、好ましくは該回路板の上面及び/又は下面夫々の上に設けられる。次いで、好ましくは僅かな圧力を、該体積フィラーに適用して、該収納装置及び/又は該回路板上の他の部品の回りへの、絞り嵌めを実現する。該回路板上のその緊密な位置における、該体積フィラーの固定は、好ましくは該体積フィラー及び該回路板の回りに巻き付けられたホイル又はテープによってもたらされる。好ましくは、該ホイル又はテープは、「テフロン(Teflon
R)」(登録商標)としても知られるポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、又は類似する諸特性を持つ熱可塑性ポリマーを含む。この成型工程の完了後、該回路板上への該体積フィラーの付随的な固定は、前記包囲する成形材料によって与えることができる。
【0034】
好ましくは、前記近接センサの前記ハウジングの実質的に全ての内部容積は、前記成形材料及び/又は前記回路板を包囲する前記体積フィラー及びその上の部品によって満たされている。このようにして、該内部容積の汚染を、効果的に回避することを可能とし、また、高い液密性及び/又は気密性を実現することができる。該成形材料及び/又は該体積フィラーの設置はまた、特に該近接スイッチの高温度下での動作中に、該回路板上に搭載された前記電子部品及び/又は該回路板上に印刷された導電体の付随的な固定手段としても役立ち得る。該近接スイッチの高温動作において、該回路板上の直接的固定手段は、弱められる。
【0035】
好ましくは、前記発散する磁場を発生させるための前記コイルは、前記近接センサ用ハウジングの前面部分に、より好ましくは該磁場が伝播し得る該ハウジングの前部壁と直接接続された状態で配列され、ここで該前部壁の外側表面は、該近接センサの活性領域を構成することができる。該回路板は、好ましくは該コイルの背後に、該近接センサの長手方向における、該回路板の想像上の広がりが、該コイルの直径を横切るように配置される。
【0036】
好ましくは、高い透磁率を有する磁性材料を含むコア、特にフェライト又は鉄粉末コアが、前記コイルの内部に配置されている。好ましくは、該コア材料は、少なくとも200℃、より好ましくは少なくとも300℃なるキューリー温度Tcを示し、結果として前記近接センサのより高い動作温度における性能の劣化を回避する。好ましくは、該コイル及び該内部コアは、リング状の形状にある。
【0037】
好ましくは、前記ハウジングはステンレススチール、より好ましくはオーステナイト型のステンレススチールからなる。この材料は、機械的な衝撃に対して完全(solid)な保護をもたらし、また、前記成形材料と一致し得る熱膨張性を持つという、付随的な利点をも有する。特に、該ハウジングは、少なくとも0℃〜250℃なる温度範囲に渡り、例えば、約15〜20ppm/℃なる範囲の、例えば約17ppm/℃なる機械的温度係数によって表されるような、熱膨張性を示すことができる。或いはまた、該ハウジングにおける低い電気的損失が最も重要である場合には、フェライト型のステンレススチールが好ましい。
【0038】
好ましくは、前記ハウジングは円筒状であり、結果として前記回路板並びに該回路板の良好な保護を可能とする、所定量の前記成形材料及び体積フィラーを受取るのに適した内部幾何形状を与える。該ハウジングは、単一の部品からなるものであり得、又は数個の部品で構成されるものであり得る。特に、該ハウジングは、閉じられた前端部を含む或いは解放前端部を含む、実質上円筒状のハウジング本体を含むことができる。後者の場合において、好ましくは、前記スイッチの活性領域を持つ前部壁を構成する前部キャップが設けられる。
【0039】
前記近接センサの好ましい動作温度範囲は、少なくとも180℃、より好ましくは少なくとも250℃なる温度を含むことができる。