(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記二値化画像の各ピクセルにおいて、全X線に対する直接放射線の割合と閾値との比較結果に基づきピクセル値が決定される請求項2または請求項3に記載の画像処理装置。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施形態について図面を参照して以下に説明する。
【0018】
まず始めに、本発明の一実施形態に係るX線撮影装置の本体部1(以下、「X線撮影装置の本体部1」と称す)の構成について
図1を参照して説明する。
図1はX線撮影装置の本体部1の外観を示す図であり、
図1(a)は上面図、
図1(b)は正面図、
図1(c)は側面図である。
【0019】
X線撮影装置の本体部1は、歯科用あるいは耳鼻科用等のX線撮影装置の本体部であって、床面に載置されるベース2と、ベース2から鉛直方向に立設された下部ポール3と、鉛直方向にスライド可能に下部ポール3に接続される上部ポール4と、上部ポール4の上端部に固定されている固定アーム5と、回転可能に固定アーム5に接続される旋回アーム6と、上部ポール4の中央部に固定されており被写体(例えば歯など)を含む人体の頭部を保持する頭部保持部7とを備えている。実施形態では、固定アーム5が上部ポール4に固定されているが、例えば、X線撮影装置の本体部1を設置する部屋の壁や天井に固定アーム5が直接あるいは部屋の壁や天井との距離を調整することができる調整機構を介して取り付けられる態様であってもよい。
【0020】
旋回アーム6は、被写体に対してX線を照射するX線照射部8と、被写体を透過したX線を検出するX線検出部9とを対向して配置している。本実施形態では、X線検出部9として、照射されたX線に応じて電気信号を生成する変換素子が二次元状に配置されているフラットパネルディテクターを用いる。そして、フラットパネルディテクターの前面にはカーボンが設置されている。
【0021】
X線撮影装置の本体部1の撮影モードは特に限定されないが、例えば、パノラマ撮影モードやCT撮影モードを挙げることができる。パノラマ撮影モードでは、X線照射部8及びX線検出部9が歯列弓の形状に沿った所定の軌跡を描くように、旋回アーム6の旋回軸を旋回軸に垂直な方向(X方向、Y方向)に移動させ、旋回アーム6を旋回軸回りに旋回させながら断層撮影を行う。CT撮影モードでは、頭部の対象撮影領域(画像再構成範囲)を中心にして旋回アーム6を回転させながら、対象撮影領域(画像再構成範囲)の断層撮影を行う。
【0022】
ここで、CT撮影モードについて
図2〜
図7を参照してより詳細に説明する。
【0023】
局所CT撮影モードは、歯顎領域内の上下歯牙領域全体よりも狭い特定の領域を撮影対象とするCT撮影モードである。局所CT撮影モードの画像再構成範囲は例えば直径51mm高さ55mmの円柱形状の空間領域である。
図2は局所CT撮影モードの軌道を示している。局所CT撮影モードでは、
図2に示すように、X線検出部9の中心がX線照射部8と旋回アーム6の旋回軸中心206とを結ぶラインの延長線上にくるように旋回アーム6を旋回させながら複数の撮影位置で撮影が行われる。また、局所CT撮影モードでは、通常、
図2に示すように、旋回アーム6の旋回軸中心206は定位置になっている。なお、
図2には撮影位置として4箇所が図示されているが、これはあくまで例示であり撮影位置は図示された箇所に限定されるものではない。
【0024】
局所CT撮影モードは、後述する全歯CT撮影モードや全顎CT撮影モードに比べてX線検出部9上でのX線ビーム幅Wが狭いため、X線検出部9のサイズが小さくても実施可能である。
【0025】
なお、局所CT撮影モードでは、撮影対象部位(関心領域)の中心を何処に設定するかに応じて旋回アーム6の旋回軸中心206の位置を変えるようにしており、通常、
図2に示すように、撮影対象部位(関心領域)の中心と旋回アーム6の旋回軸中心206の位置とが一致するように位置調整がなされる。局所CT撮影モードにおける撮影対象部位(関心領域)の中心は任意に設定することができる。
図2に示した位置設定の他にも、例えば、
図3に示すように撮影対象部位(関心領域)の中心208を仮想歯列弓201上の前歯の位置に設定することもでき、
図4に示すように撮影対象部位(関心領域)の中心208を仮想歯列弓201上の左顎の位置に設定することもでき、
図5に示すように撮影対象部位(関心領域)の中心208を仮想歯列弓201上の右第2小臼歯の位置に設定することもでき、その他種々の位置設定が可能である。
【0026】
全歯CT撮影モードは、上下歯牙領域全体を撮影対象とするCT撮影モードである。全歯CT撮影モードの画像再構成範囲は例えば直径97mm高さ100mmの円柱形状の空間領域である。
図6は全歯CT撮影モードの軌道を示している。全歯CT撮影モードでは、
図6に示すように、X線検出部9の中心がX線照射部8と旋回アーム6の旋回軸中心206とを結ぶラインの延長線上にくるように旋回アーム6を旋回させながら複数の撮影位置で撮影が行われる。また、全歯CT撮影モードでは、通常、
図6に示すように、旋回アーム6の旋回軸中心206は定位置になっている。なお、
図6には撮影位置として4箇所が図示されているが、これはあくまで例示であり撮影位置は図示された箇所に限定されるものではない。
【0027】
全歯CT撮影モードは、上述した局所CT撮影モードに比べて撮影対象が広範囲になりX線検出部9上でのX線ビーム幅Wが広くなるため、その広いX線ビーム幅Wに見合ったX線検出部9のサイズを必要とする。
【0028】
全顎CT撮影モードは、歯顎領域の全ての範囲を撮影対象とするCT撮影モードである。全顎CT撮影モードの画像再構成範囲は例えば直径161mm高さ100mmの円柱形状の空間領域である。
図7は全顎CT撮影モードの軌道を示している。全顎CT撮影モードでは、
図7に示すように、X線検出部9の中心がX線照射部8と旋回アーム6の旋回軸中心206とを結ぶラインの延長線上からずれるように旋回アーム6を旋回させながら複数の撮影位置で撮影が行われる。また、全顎CT撮影モードでは、通常、
図7に示すように、旋回アーム6の旋回軸中心206は定位置になっている。なお、
図7には撮影位置として4箇所が図示されているが、これはあくまで例示であり撮影位置は図示された箇所に限定されるものではない。
【0029】
全顎CT撮影モードは、X線検出部9の中心をX線照射部8と旋回アーム6の旋回軸中心206とを結ぶラインの延長線上からずらして撮影を行っているので、上述した全歯CT撮影モードよりも画像再構成範囲207を拡大することができる。したがって、X線検出部9のサイズアップを抑えながら歯顎領域の全ての範囲を撮影対象とすることができる。
【0030】
なお、全顎CT撮影モードにおいて、X線検出部9をサイズアップして、X線検出部9上でのX線ビーム幅Wを
図7に示す場合よりも拡大し、画像再構成範囲を例えば直径230mm高さ164mmの円柱形状の空間領域にすることで、歯顎領域の全ての範囲のみならず、頭頸部領域の全ての範囲を撮影対象とすることも可能である。
【0031】
上述したCT撮影モードでは、撮影時に患者歯列弓203が想定した位置(
図2、
図6、
図7に図示した位置)に存在することで、撮影者が意図していた通りの撮影を行うことができる。患者歯列弓203の想定した位置への位置合わせを容易に実現する方法としては、例えば、光ビームを利用する方法を挙げることができる。当該光ビームとしては、例えば、頭の正中線の位置を示す正中線光ビーム、眼窩下縁と外耳道を結ぶ線の位置を示す水平線光ビーム、犬歯の位置(断層撮影の基準位置)を示す断層基準線光ビームなどがあり、これらの光ビームの出力部をX線撮影装置に設け、これらの光ビームを参考にして患者の頭の位置を微調整するとよい。
【0032】
本発明の一実施形態に係るX線撮影装置は、X線撮影装置の本体部1の他に、
図8に示す画像処理装置10も備えている。
【0033】
画像処理装置10は、ROM102やHDD107に格納されているプログラムに従って画像処理装置10全体を制御するCPU101と、固定的なプログラムやデータを記録するROM102と、作業メモリを提供するRAM103と、X線撮影装置の本体部1内に格納されX線撮影装置の本体部1の各部を制御する制御部(不図示)との間で通信を行うための通信インターフェース部104と、画像データを一時的に記憶するVRAM105と、VRAM105に記憶された画像データに基づいて画像を表示する表示部106と、前記制御部及びCPU101が協働してX線撮影動作を制御するための撮影制御プログラム、再構成画像を生成するための画像再構成処理プログラム、X線撮影領域に含まれる金属体の位置を特定するための金属体位置特定処理プログラム、散乱放射線補正処理を行うための散乱放射線補正処理プログラム等の各種プログラム、各種プログラムを実行する際に用いられる各種パラメータの設定値、並びに、再構成画像データ等の各種データを記憶するHDD107と、キーボード、ポインティングデバイス等の入力部108とを備えている。
【0034】
画像処理装置10は、画像処理装置10と前記制御部との通信方法は、有線通信でもよく、無線通信でもよく、有線と無線を組み合わせた通信であってもよい。画像処理装置10としては、例えば、パーソナルコンピュータを挙げることができる。なお、画像処理装置10は、画像処理以外に、X線撮影装置の本体部1の遠隔操作、画像表示も行う。HDD107に記憶されている各プログラムは、画像処理装置10にプリインストールされていてもよく、光ディスク等の記憶媒体に格納された形態で流通されて画像処理装置10にインストールされてもよく、ネットワークを介して流通されて画像処理装置10にインストールされてもよい。
【0035】
<<金属体の位置特定処理>>
背景技術において既に述べたように、X線撮影装置では、金属アーチファクトの低減などのために、X線撮影領域に含まれる金属体の位置を正確に特定することが求められている。さらに、発明の概要において既に述べたように、金属体がFOVからはみだした場合であっても金属体の位置を特定することができ、計算時間が短いことも要求されている。そこで、画像処理装置10は上記の要求を満たすことができる金属体位置特定処理プログラムを実行する。上記の要求を満たすことができる金属体位置特定処理の一例を
図9のフローチャートに従い説明する。
【0036】
ステップS10の処理の前提として、画像処理装置10は、測定画像の輝度値に閾値を設け、閾値未満である場合は金属であると判定し、閾値以上である場合は非金属であると判定する。
【0037】
その後、画像処理装置10は、X線撮影で得られる測定画像データに対して、金属であると判定されたピクセルには「0」値を付与し、金属でないと判定されたピクセルには「1」値を付与することで、「測定画像データを二値化したデータ」を得る(ステップS10)。
【0038】
ステップS10の二値化処理によって金属部分をある程度抽出できているが、完全ではなく、AuAgPd合金やチタン或いはチタン合金の部分であっても測定画像データの輝度値が高ければ抽出されない場合がある。また、非金属の部分であっても、歯の重なり部分や骨の厚い部分では輝度値が金属部分と同程度になる場合があるので、これらの部分を金属部分として抽出しないようにしなければならない。
【0039】
金属部分と非金属部分との境界では輝度値が急激に変化するが、輝度値が金属部分と同程度である非金属部分と、輝度値が金属部分と同程度でない非金属部分との境界でも輝度値が急激に変化する。
【0040】
しかしながら、金属部分に関しては、撮影角度に関わらず周りの非金属部分よりも測定画像データの輝度値が常に相対的に低いのに対し、輝度値が金属部分と同程度である非金属部分に関しては、周辺部分よりも測定画像データの輝度値が常に相対的に低くなるわけではない。したがって、金属部分はサイノグラム上で正弦波状曲線を示すのに対して、輝度値が金属部分と同程度である非金属部分はサイノグラム上で正弦波状曲線を示さない。
【0041】
画像処理装置10は、上述した金属部分のサイノグラム上での特徴を利用して金属体の位置を特定している。すなわち、画像処理装置10は、ステップS20以降の処理を実行し、サイノグラム上の正弦波状曲線を利用して金属体の位置を特定している。
【0042】
ステップS20において、画像処理装置10は、測定画像データ及び「測定画像データを二値化したデータ」それぞれに対してサイノグラム変換処理を行う。
【0043】
「測定画像データを二値化したデータ」のサイノグラムを
図10A〜
図10Cに示す。
図10Aは後述する横軸中心位置A0および縦軸A1〜A4を「測定画像データを二値化したデータ」のサイノグラムに図示したものであり、
図10Bは後述する横軸中心位置A0および縦軸A1〜A4と後述する縦軸上の座標(j)とを図示したものであり、
図10Cは後述する横軸中心位置A0および縦軸A1〜A4と後述する縦軸上の座標P1〜P4とを図示したものである。
【0044】
ステップS20に続くステップS30において、画像処理装置10は、「測定画像データを二値化したデータ」のサイノグラムの横軸中心位置A0において、金属始点部分となる「0」値を有するピクセルの縦軸上の座標(j)と、金属終点部分となる「0」値を有するピクセルの縦軸上の座標(j)とを求め、金属始点部分となる「0」値を有するピクセルが正弦波状曲線の一部を構成しているかを判定し、金属終点部分となる「0」値を有するピクセルが正弦波状曲線の一部を構成しているかを判定する。当該判定は、横軸中心位置A0に隣接して設けた縦軸A1〜A4それぞれにおいて「0」値を有するピクセルの縦軸状の座標P1〜P4を求め、座標(j)及び座標P1〜P4が正弦波状曲線の一部を構成しているかを調べている。なお、
図10Bおよび
図10Cにおいては、最初の金属始点部分および金属終点部分の各座標(j)及び各座標P1〜P4と二番目の金属始点部分および金属終点部分の各座標(j)と三番目の金属始点部分および金属終点部分の各座標(j)のみを図示しているが、実際には横軸中心位置A0を上から下方向にスキャンすることによって四番目以降の金属始点部分および金属終点部分の各座標(j)も求めることができ、縦軸A1〜A4を上から下方向にスキャンすることによって二番目以降の金属始点部分および金属終点部分の各座標(j)に対応する座標P1〜P4も求めることができる。正弦波状曲線の一部を構成していると判定した場合には、正弦波状曲線の横軸中心位置A0における縦軸の座標(j)と、座標(j)から座標P1〜P4それぞれに移動するのに必要となる横軸方向の変化量に対する縦軸方向の変化量とをパラメータとして記憶することで正弦波状曲線を抽出する。
【0045】
しかしながら、ステップS30の処理によって正弦波状曲線を完全に抽出できるわけではなく、正弦波状曲線の抽出に抜けが生じる場合がある。したがって、この抜けが、計算上のエラーに起因するものであるか、X線照射部8、X線検出部9、及び被写体との位置関係により原理的に金属部分が写らない撮影角度に起因するものであるかを判断し、前者であれば正弦波状曲線を追加する必要がある。画像処理装置10は、この追加をステップS30に続くステップS40において実施する。
【0046】
前者による正弦波状曲線の抽出抜け、すなわち計算上のエラーに起因する正弦波状曲線の抽出抜けは、ステップS30で用いた「測定画像データを二値化したデータ」のサイノグラムが二値化されたデジタル情報であるため輝度値の変化量に関する情報を含んでいないことが一因となっている。そこで、ステップS40では、輝度値の変化量に関する情報を含んでいる測定画像データのサイノグラムを用いている。
【0047】
以下、ステップS40の処理(正弦波状曲線の修正処理)の詳細について
図11に示すフローチャートを参照して説明する。nはサイノグラムデータの番号を示し、iは正弦波状曲線の番号を示す。ns(n)は金属部分始点の正弦波状曲線の数を示し、nf(n)は金属部分終点の正弦波状曲線の数を示す。js(n,i)は金属部分始点の座標を示し、jf(n,i)は金属部分終点の座標を示す。ads(n,i)は金属部分始点の移動量を示し、adf(n,i)は金属部分終点の移動量を示す。ii1は前のサイノグラムデータの正弦波状曲線の番号を示し、i1は現在のサイノグラムデータの正弦波状曲線の番号を示す。i11は正弦波状曲線を復活させる場合に対応する正弦波状曲線の番号を示し、nsnは復活させる正弦波状曲線の数を示す。
【0048】
まず始めに、画像処理装置10は、ステップS30で抽出した正弦波状曲線のデータ(パラメータ)を読み込む(ステップS401)。
【0049】
次に、画像処理装置10は、nsnの値を0にセットし(ステップS402)、i11の値を0にセットする(ステップS403)。そして、画像処理装置10は、js(n,i1-1)≦js(n-1,ii1) ≦js(n,i1)が成立するか否かを判定する(ステップS404)。js(n,i1-1)≦js(n-1,ii1) ≦js(n,i1)が成立しなければ、後述するステップS409に移行する。
【0050】
一方、js(n,i1-1)≦js(n-1,ii1) ≦js(n,i1)が成立すれば、画像処理装置10は、i11の値をi1とし(ステップS405)、js(n-1,ii1)がjs(n,i1-1)、js(n,i1)それぞれと所定のピクセル数以上離れている否かを判定する(ステップS406)。
【0051】
js(n-1,ii1)がjs(n,i1-1)、js(n,i1)それぞれと所定のピクセル数以上離れていなければ(ステップS406のNO)、後述するステップS409に移行する。一方、js(n-1,ii1)がjs(n,i1-1)、js(n,i1)それぞれと所定のピクセル数以上離れていれば(ステップS407のYES)、正弦波状曲線の抜けがあるとみなすことができるので、画像処理装置10は、js(n-1,ii1)近傍で輝度値の変化量および輝度値が所定の条件を満たす縦軸上の座標をj0とおき、nsnに1を加えた値を新たにnsnの値としてセットし、復活させる正弦波状曲線のj座標js0(n,i1-1+nsn)の値をj0とし、復活させる正弦波状曲線の移動量ads0(n,i1-1+nsn)の値をads(n-1,ii1)とする(ステップS407)。ステップS407に続くステップS408において、画像処理装置10は、復活させる正弦波状曲線以降の現データにおける正弦波状曲線の番号をずらし、その後ステップS409に移行する。
【0052】
ステップS409において、画像処理装置10は、i1がns(n)以下であるかを判定し、i1がns(n)以下であれば、i1をインクリメントし(ステップS410)、ステップS403に戻る。
【0053】
i1がns(n)以下でなければ、画像処理装置10は、ii1がns(n-1)以下であるかを判定し、ii1がns(n-1)以下であれば、ii1をインクリメントし(ステップS412)、ステップS403に戻る。
【0054】
ii1がns(n-1)以下でなければ、画像処理装置10は、ns(n)を新たなns(n)+nsnとし、復活させ且つ番号をずらした正弦波状曲線のパラメータを順番に格納する(ステップS413)。
【0055】
上述したステップS403〜ステップS413の処理が金属始点部分の処理になる。ステップS413に続くステップS414において、画像処理装置10は、金属終点部分についても上述したステップS403〜ステップS413と同様の処理を実行する。
【0056】
ステップS414に続くステップS415において、画像処理装置10は、正弦波状曲線のパラメータをj座標(js(n,i),jf(n,j))の昇順に並べ替える。
【0057】
ステップS415に続くステップS416において、画像処理装置10は、nが所定数以下であるかを判定する。nが所定数以下であれば、nをインクリメントし(ステップS417)、ステップS402に戻る。nが所定数以下でなければ、ステップS40の処理(正弦波状曲線の修正処理)を終了する。なお、ステップS416において判定の基準値として用いている所定数はサイノグラムのデータ数(撮影データの縦軸方向のピクセル数)である。
【0058】
ステップS40の処理が終了すると、画像処理装置10は、第1段階の金属抽出処理を行う(
図9のステップS50)。ステップS50の処理(第1段階の金属抽出処理)では、測定画像データのサイノグラム及び「測定画像データを二値化したデータ」のサイノグラムの両方が用いられる。
【0059】
サイノグラム上に
図12に示すような正弦波状曲線の右肩下がり部分(紙面の左から右に向かうにつれて紙面の上から下に向かう部分)が存在するとき、金属部分の始点を示す正弦波状曲線SC1と金属部分の終点を示す正弦波状曲線SC2との間が金属部分となる。本実施形態では、金属部分の座標に「0」を、非金属部分の座標に「1」を入力するのであれば、正弦波状曲線SC1と正弦波状曲線SC2との間が「0」値になり、それ以外が「1」値になればよい。なお、正弦波状曲線SC1と正弦波状曲線SC2との間の領域が、請求項に記載されている「正弦波状曲線領域」に該当する。
【0060】
金属部分始点の横軸中心位置における縦軸の座標と移動量から正弦波状曲線SC1の横軸中心位置近傍が特定でき、測定画像データのサイノグラムにおいて、その特定した正弦波状曲線SC1の横軸中心位置近傍を基準に紙面の上から下に向かう縦方向に所定量移動した位置で紙面の左から右に向かう横方向に沿って輝度値が急激に変化している境界を見つけ、その見つけた境界を基準に紙面の上から下に向かう縦方向に所定量移動した位置で紙面の左から右に向かう横方向に沿って輝度値が急激に変化している境界を見つけ、それ以後同様の処理を繰り返す。このようにして見つけた境界の軌跡により正弦波状曲線SC1を特定する。特定した正弦波状曲線SC1を「測定画像データを二値化したデータ」のサイノグラムに反映し、横軸中心位置A0から正弦波状曲線SC1の各座標まで紙面の左から右に向かう横方向に沿って「0」を入力すると、
図13Aに示すようになる。なお、
図13Aにおいては「0」を入力した領域を網掛け領域で表現している。
【0061】
次に、金属部分終点の横軸中心位置における縦軸の座標と移動量から正弦波状曲線SC2の横軸中心位置近傍が特定でき、測定画像データのサイノグラムにおいて、その特定した正弦波状曲線SC2の横軸中心位置近傍を基準に紙面の上から下に向かう縦方向に所定量移動した位置で紙面の左から右に向かう横方向に沿って輝度値が急激に変化している境界を見つけ、その見つけた境界を基準に紙面の上から下に向かう縦方向に所定量移動した位置で紙面の左から右に向かう横方向に沿って輝度値が急激に変化している境界を見つけ、それ以後同様の処理を繰り返す。このようにして見つけた境界の軌跡により正弦波状曲線SC2を特定する。特定した正弦波状曲線SC2を
図13Aに示す二値化サイノグラムに反映し、横軸中心位置A0から正弦波状曲線SC2の各座標まで横方向に沿って「1」を入力すると、
図13Bに示すようになる。なお、
図13Bにおいては「0」を入力した領域を網掛け領域で表現し「1」を入力した領域を斜線領域で表現している。
【0062】
また、金属部分終点の横軸中心位置における縦軸の座標と移動量から正弦波状曲線SC2の横軸中心位置近傍が特定でき、測定画像データのサイノグラムにおいて、その特定した正弦波状曲線SC2の横軸中心位置近傍を基準に紙面の下から上に向かう縦方向に所定量移動した位置で紙面の右から左に向かう横方向に沿って輝度値が急激に変化している境界を見つけ、その見つけた境界を基準に紙面の下から上に向かう縦方向に所定量移動した位置で紙面の右から左に向かう横方向に沿って輝度値が急激に変化している境界を見つけ、それ以後同様の処理を繰り返す。このようにして見つけた境界の軌跡により正弦波状曲線SC2を特定する。特定した正弦波状曲線SC2を
図13Bに示す二値化サイノグラムに反映し、横軸中心位置A0から正弦波状曲線SC2の各座標まで紙面の右から左に向かう横方向に沿って「0」を入力すると、
図13Cに示すようになる。なお、
図13Cにおいては「0」を入力した領域を網掛け領域で表現し「1」を入力した領域を斜線領域で表現している。
【0063】
次に、金属部分始点の横軸中心位置における縦軸の座標と移動量から正弦波状曲線SC1の横軸中心位置近傍が特定でき、測定画像データのサイノグラムにおいて、その特定した正弦波状曲線SC1の横軸中心位置近傍を基準に紙面の下から上に向かう縦方向に所定量移動した位置で紙面の右から左に向かう横方向に沿って輝度値が急激に変化している境界を見つけ、その見つけた境界を基準に紙面の下から上に向かう縦方向に所定量移動した位置で紙面の右から左に向かう横方向に沿って輝度値が急激に変化している境界を見つけ、それ以後同様の処理を繰り返す。このようにして見つけた境界の軌跡により正弦波状曲線SC1を特定する。特定した正弦波状曲線SC1を
図13Cに示す二値化サイノグラムに反映し、横軸中心位置A0から正弦波状曲線SC1の各座標まで紙面の右から左に向かう横方向に沿って「1」を入力すると、
図13Dに示すようになる。なお、
図13Dにおいては「0」を入力した領域を網掛け領域で表現し「1」を入力した領域を斜線領域で表現している。上述した
図13Aから
図13Dに至る処理では、まず測定画像データのサイノグラムにおいて紙面の上から下に向かう縦方向の所定量移動を繰り返しながら輝度値が急激に変化している境界を見つけて二値化サイノグラムにおいて横軸中心位置より右側の領域を処理し、その後測定画像データのサイノグラムにおいて紙面の下から上に向かう縦方向の所定量移動を繰り返しながら輝度値が急激に変化している境界を見つけて二値化サイノグラムにおいて横軸中心位置より左側の領域を処理したが、これとは逆にまず測定画像データのサイノグラムにおいて紙面の下から上に向かう縦方向の所定量移動を繰り返しながら輝度値が急激に変化している境界を見つけて二値化サイノグラムにおいて横軸中心位置より左側の領域を処理し、その後測定画像データのサイノグラムにおいて紙面の上から下に向かう縦方向の所定量移動を繰り返しながら輝度値が急激に変化している境界を見つけて二値化サイノグラムにおいて横軸中心位置より右側の領域を処理してもよい。
【0064】
そして、サイノグラム上に
図14に示すような正弦波状曲線の右肩上がり部分(紙面の左から右に向かうにつれて紙面の下から上に向かう部分)が存在するときも、金属部分の始点を示す正弦波状曲線SC1と金属部分の終点を示す正弦波状曲線SC2との間が金属部分となる。
【0065】
金属部分始点の横軸中心位置における縦軸の座標と移動量から正弦波状曲線SC1の横軸中心位置近傍が特定でき、測定画像データのサイノグラムにおいて、その特定した正弦波状曲線SC1の横軸中心位置近傍を基準に紙面の上から下に向かう縦方向に所定量移動した位置で紙面の右から左に向かう横方向に沿って輝度値が急激に変化している境界を見つけ、その見つけた境界を基準に紙面の上から下に向かう縦方向に所定量移動した位置で紙面の右から左に向かう横方向に沿って輝度値が急激に変化している境界を見つけ、それ以後同様の処理を繰り返す。このようにして見つけた境界の軌跡により正弦波状曲線SC1を特定する。特定した正弦波状曲線SC1を「測定画像データを二値化したデータ」のサイノグラムに反映し、横軸中心位置A0から正弦波状曲線SC1の各座標まで紙面の右から左に向かう横方向に沿って「0」を入力すると、
図15Aに示すようになる。なお、
図15Aにおいては「0」を入力した領域を網掛け領域で表現している。
【0066】
次に、金属部分終点の横軸中心位置における縦軸の座標と移動量から正弦波状曲線SC2の横軸中心位置近傍が特定でき、測定画像データのサイノグラムにおいて、その特定した正弦波状曲線SC2の横軸中心位置近傍を基準に紙面の上から下に向かう縦方向に所定量移動した位置で紙面の右から左に向かう横方向に沿って輝度値が急激に変化している境界を見つけ、その見つけた境界を基準に紙面の上から下に向かう縦方向に所定量移動した位置で紙面の右から左に向かう横方向に沿って輝度値が急激に変化している境界を見つけ、それ以後同様の処理を繰り返す。このようにして見つけた境界の軌跡により正弦波状曲線SC2を特定する。特定した正弦波状曲線SC2を
図15Aに示す二値化サイノグラムに反映し、横軸中心位置A0から正弦波状曲線SC2の各座標まで横方向に沿って「1」を入力すると、
図15Bに示すようになる。なお、
図15Bにおいては「0」を入力した領域を網掛け領域で表現し「1」を入力した領域を斜線領域で表現している。
【0067】
また、金属部分終点の横軸中心位置における縦軸の座標と移動量から正弦波状曲線SC2の横軸中心位置近傍が特定でき、測定画像データのサイノグラムにおいて、その特定した正弦波状曲線SC2の横軸中心位置近傍を基準に紙面の下から上に向かう縦方向に所定量移動した位置で紙面の左から右に向かう横方向に沿って輝度値が急激に変化している境界を見つけ、その見つけた境界を基準に紙面の下から上に向かう縦方向に所定量移動した位置で紙面の左から右に向かう横方向に沿って輝度値が急激に変化している境界を見つけ、それ以後同様の処理を繰り返す。このようにして見つけた境界の軌跡により正弦波状曲線SC2を特定する。特定した正弦波状曲線SC2を
図15Bに示す二値化サイノグラムに反映し、横軸中心位置A0から正弦波状曲線SC2の各座標まで紙面の左から右に向かう横方向に沿って「0」を入力すると、
図15Cに示すようになる。なお、
図15Cにおいては「0」を入力した領域を網掛け領域で表現し「1」を入力した領域を斜線領域で表現している。
【0068】
次に、金属部分始点の横軸中心位置における縦軸の座標と移動量から正弦波状曲線SC1の横軸中心位置近傍が特定でき、測定画像データのサイノグラムにおいて、その特定した正弦波状曲線SC1の横軸中心位置近傍を基準に紙面の下から上に向かう縦方向に所定量移動した位置で紙面の左から右に向かう横方向に沿って輝度値が急激に変化している境界を見つけ、その見つけた境界を基準に紙面の下から上に向かう縦方向に所定量移動した位置で紙面の左から右に向かう横方向に沿って輝度値が急激に変化している境界を見つけ、それ以後同様の処理を繰り返す。このようにして見つけた境界の軌跡により正弦波状曲線SC1を特定する。特定した正弦波状曲線SC1を
図15Cに示す二値化サイノグラムに反映し、横軸中心位置A0から正弦波状曲線SC1の各座標まで紙面の左から右に向かう横方向に沿って「1」を入力すると、
図15Dに示すようになる。なお、
図15Dにおいては「0」を入力した領域を網掛け領域で表現し「1」を入力した領域を斜線領域で表現している。上述した
図15Aから
図15Dに至る処理では、まず測定画像データのサイノグラムにおいて紙面の上から下に向かう縦方向の所定量移動を繰り返しながら輝度値が急激に変化している境界を見つけて二値化サイノグラムにおいて横軸中心位置より左側の領域を処理し、その後測定画像データのサイノグラムにおいて紙面の下から上に向かう縦方向の所定量移動を繰り返しながら輝度値が急激に変化している境界を見つけて二値化サイノグラムにおいて横軸中心位置より右側の領域を処理したが、これとは逆にまず測定画像データのサイノグラムにおいて紙面の下から上に向かう縦方向の所定量移動を繰り返しながら輝度値が急激に変化している境界を見つけて二値化サイノグラムにおいて横軸中心位置より右側の領域を処理し、その後測定画像データのサイノグラムにおいて紙面の上から下に向かう縦方向の所定量移動を繰り返しながら輝度値が急激に変化している境界を見つけて二値化サイノグラムにおいて横軸中心位置より左側の領域を処理してもよい。
【0069】
以上の処理により、横軸中心位置A0の左右両側で抽出できていなかった金属部分が抽出できる。すなわち、測定画像データのサイノグラムと、ステップS40の処理が終了した時点で得られている
図16に示す「測定画像データを二値化したデータ」のサイノグラムとを画像処理装置10が取り出して、その取り出した測定画像データのサイノグラム及び「測定画像データを二値化したデータ」のサイノグラムを用いて上述したステップS50の処理を実行することで、
図17Aに示す二値化サイノグラムを得ることができる。
図17Aに示す二値化サイノグラムでは、歯の重なり部分がなくなり、抽出できていなかった金属部分が抽出されている。
【0070】
しかしながら、
図17Aに示す二値化サイノグラムでは、金属部分の抽出がうまくいっていない部分や、不連続な直線部分があり、明らかに不自然である。その原因としては、i)金属が交差する部分箇所で境界条件が曖昧になったことや、ii)金属部分の端で輝度値の条件を満たさなくなり、金属部分の終点が消滅してしまったため、
図13Aから
図13Bになるための処理がなされなかったこと等が挙げられる。
【0071】
このような不自然なところを修正するため、画像処理装置10は、第2段階の金属抽出処理を行う(ステップS60)。ステップS60において、画像処理装置10は、第1段階の金属抽出処理が完了した二値化サイノグラム(
図17Aに示す二値化サイノグラム)を縦軸方向にスキャンした場合に横軸方向に直線状に突如「0」値から「1」値へあるいは「1」値から「0」値へ変化する箇所を見つけたら以下の処理を行う。
【0072】
図17Aに示す二値化サイノグラムと同一の二値化サイノグラムである
図17Bにおいて、上記直線状の間の黒い部分R1は本来非金属領域であるから、輝度値は相対的に低い。したがって、測定画像データのサイノグラムを処理対象として、この黒い領域R1の横軸方向の始点と終点の境界の輝度値をある条件に従って結んだ特性線よりも小さい輝度値をもつピクセルを非金属として除外し、当該処理の結果を
図17Aに示す二値化サイノグラムに反映させる。
【0073】
図17Aに示す二値化サイノグラムと同一の二値化サイノグラムである
図17Bにおいて、上記直線状の間の白い部分R2は本来金属であるから、輝度値は相対的に高く、対応する測定画像データのサイノグラムにおいて、横軸方向には急激に輝度値が変化して非金属領域と同程度の輝度値になるピクセルがある。したがって、対応する測定画像データのサイノグラムにおいて、縦軸方向で金属部分が切れてしまったピクセルの輝度値と、縦軸方向で金属部分が切れる直前のピクセルの輝度値とを比較して、輝度値の変化量が予め定めた規定値よりも小さければ、縦軸方向で金属部分が切れてしまったピクセルを金属領域とする。この処理を縦軸方向に順次行っていくことによって金属領域を抽出することができる。当該処理の結果を
図17Aに示す二値化サイノグラムに反映させる。
【0074】
ステップS60に続くステップS70において、画像処理装置10は、第2段階の金属抽出処理が完了した二値化サイノグラム(
図18に示す二値化サイノグラム)に対して、サイノグラム変換の逆変換を行うことで、「金属体の位置を特定した画像データ」を生成する。なお、第2段階の金属抽出処理が完了した二値化サイノグラム(
図18に示す二値化サイノグラム)が、請求項に記載されている「抽出処理済みサイノグラム」に該当する。ステップS70において生成される「金属体の位置を特定した画像データ」では、金属部分のピクセルが「0」値になっており、非金属部分のピクセルが「1」値になっている。ステップS70の処理が終了すると、金属体位置特定処理が終了する。
【0075】
金属体位置特定処理によって得られる「金属体の位置を特定した画像データ」は、ステップS10の二値化処理だけの場合に比べて、金属体の位置を高精度に特定することができる。また、特許文献1とは異なり金属体がFOV内に位置していることを前提としていないため、金属体がFOVからはみだした場合であっても金属体の位置を特定することができる。さらに、特許文献1で行われている擬似投影データの再構成処理が不要であるため、計算時間を短くすることができる。
【0076】
金属体位置特定処理によって得られる「金属体の位置を特定した画像データ」の利用方法としては、例えば当該「金属体の位置を特定した画像データ」に基づいて測定画像や投影画像を加工することが考えられる。測定画像に対して、金属体の位置に対応するピクセルに例えば歯に対応する輝度値を付与すれば、輝度値が上がり、金属アーチファクトを低減することができる。投影画像に対して、金属体の位置に対応するピクセルに例えば歯に対応する輝度値を付与すれば、輝度値が下がり、金属アーチファクトを低減することができる。また、投影画像に対して、金属体の位置に対応するピクセルに高い輝度値を付与すれば、再構成して得られるCT画像上で閾値を設定することにより金属を抽出することもできる。
【0077】
以上説明した金属体の位置特定処理で利用したサイノグラムとは、同時計数で測定された測定画像データ、当該測定画像データを二値化したデータその他の画像データを投影方向の角度の順序にしたがって配列した二次元情報であって、測定画像データ、当該測定画像データを二値化したデータその他の画像データ上のCT撮影におけるアームの回転軸に垂直な軸方向を横軸に、投影角度を縦軸に配列したものをいう。
【0078】
なお、本実施形態では、測定画像データの二値化処理から始め、測定画像データのサイノグラムと「測定画像データを二値化したデータ」のサイノグラムを用いて金属体位置特定処理を進めたが、本発明は本実施形態に限定されない。例えば、投影画像データの二値化処理から始め、投影画像データのサイノグラムと「投影画像データを二値化したデータ」のサイノグラムを用いて金属体位置特定処理を進めても本実施形態と同様の金属体位置特定結果を得ることができる。この場合には、測定画像データに対して対数変換処理を施すステップをステップS10の前に設け、その後ステップS10〜S70の処理(ただし、測定画像データの代わりに投影画像データとなる)を実行することになる。また例えばステップS10〜S70の途中で測定画像データ関連のものを投影画像データ関連のものに変換しても本実施形態と同様の金属体位置特定結果を得ることができる。この場合には、ステップS10からステップS70に至る迄のどこかで、「測定画像データを二値化したデータ」、測定画像データのサイノグラム、「測定画像データを二値化したデータ」のサイノグラム、或いは「測定画像データを二値化したデータ」のサイノグラムを補正して得られる二値化サイノグラムに対して対数変換処理を施すことになる。
【0079】
また、ステップS30で用いた「測定画像データを二値化したデータ」のサイノグラムは二値化されたデジタル情報であるため輝度値の変化量に関する情報を含んでいない。このため、ステップS30において、「測定画像データを二値化したデータ」のサイノグラムだけでは、正弦波状曲線の一部を構成しているか否かの判定がつき難い場合がある。このような場合には、ステップS30とステップS40の間に、次のような追加ステップを実行するとよい。当該追加ステップでは、輝度値の変化量に関する情報を含んでいる測定画像データのサイノグラムについてもステップS30で実行した判定と同様の判定(ただし、ステップS30で用いた金属始点部分となる「0」値を有するピクセルの代わりに、縦軸A0〜A4を上から下方向にスキャンした際にピクセルの値が急激(例えば或る閾値以上)に高くなったピクセルを金属始点部分となるピクセルとして用いる。さらに、ステップS30で用いた金属終点部分となる「0」値を有するピクセルの代わりに、縦軸A0〜A4を上から下方向にスキャンした際にピクセルの値が急激に低くなる直前のピクセルを金属終点部分となるピクセルとして用いる。)を行い、測定画像データのサイノグラムについての判定結果とステップS30で得られた「測定画像データを二値化したデータ」のサイノグラムについての判定結果とを総合的に評価して、最終的な判定を行い、当該最終的な判定によって正弦波状曲線の最終的な抽出を行う。
【0080】
<<二値化処理による金属抽出の高精度化>>
上述した実施形態では、ステップS10の二値化処理において、単純に測定画像の輝度値に閾値を設け、閾値未満である場合は金属であると判定し、閾値以上である場合は非金属であると判定した。しかしながら、X線撮影で得られる画像は、被写体を透過した直接放射線に起因する直接放射線成分と、直接放射線成分以外の成分とを含む。直接放射線成分以外の成分としては、散乱放射線に起因する散乱放射線成分と、X線検出素子の光拡散およびX線撮影装置の系から発生する電気的ノイズ等に起因する成分とが存在するが、散乱放射線成分の方が支配的である。散乱放射線としては、被写体からの散乱放射線やフラットパネルディテクターの前面に設置されるカーボンからの散乱放射線などがある。すなわち、X線撮影で得られる測定画像データ(全X線データ)は、直接放射線成分と散乱放射線成分との和で表すことができる。そして、全X線に対する散乱放射線の割合は、X線が透過する被写体での減弱が大きいほど増加する。すなわち全X線に対する直接放射線の割合は、X線が透過する被写体での減弱が大きいほど減少する。
【0081】
したがって、全X線に対する直接放射線の割合に閾値を設け、閾値未満である場合は金属であると判定し、閾値以上である場合は非金属であると判定することが望ましい。これにより、上述した実施形態で実施した二値化処理よりも、二値化処理による金属抽出の精度を高くすることができる。そして、この場合には、
図9のフローチャートの開始より前に散乱放射線補正処理を行い、
図9のフローチャートにおいて、測定画像データ(全X線データ)の代わりに直接放射線データを用いるようにすればよい。
【0082】
散乱放射線補正処理プログラムを実行すると、画像処理装置10は散乱放射線補正装置として機能する。散乱放射線補正処理は画像再構成処理中に割り込んで実施される。
【0083】
<<散乱放射線補正処理の前提となる理論>>
散乱放射線補正処理の内容を説明する前に、散乱放射線補正処理の前提となる理論について説明する。当該理論は、測定画像のピクセルの輝度値を元に散乱放射線による輝度値を算出する理論であって、本発明者が独自に構築したものである。本発明者は、モンテカルロシミュレーションの結果を用いて当該理論を構築した。
【0084】
ここで、モンテカルロシミュレーションの計算のジオメトリーを
図19に示す。
図19(a)は上面図であり、
図19(b)は側面図である。被写体11は、X線焦点8AとX線検出器9Aとの間に配置される。ただし、被写体11は実物ではなく、シミュレーション上で仮想的に配置されるものである。X線検出器9Aはシンチレーター等を備えるフラットパネルディテクターとした。また、X線検出器9Aの手前にはカーボン9Bが設置されている。
【0085】
モンテカルロシミュレーションの計算において、X線焦点8Aで発生させるX線スペクトルは、実際の撮影において使用するX線管等の仕様に基づいてX線管から放出され、X線検出器9Aの位置でX線検出器9Aの有感領域となるようコリメートされた一様なX線束となるようにした。
【0086】
被写体については、生体に近づけるため、顎部を想定した直径15cmの円柱形の水ファントム12A、頭部を想定した直径18cmの円柱形の水ファントム12B、頸部を想定した直径13cmの円柱形の水ファントム12Cを
図20(a)に示す側面図および
図20(b)に示す上面図のように組み合せ、水ファントム12Aの内部に厚さ2mmの円筒状の皮質骨を設置し、水ファントム12Bの内部に厚さ1mmの円筒状の皮質骨を設置し、水ファントム12Aおよび12Cの内部に長径4cm、短径3cm、厚さ3mmの楕円筒状の頸椎部分12Dを設置した。ただし、
図20(a)に示す一点鎖線で囲った部分においては、円筒状の皮質骨および頸椎部分12Dをカットした。
【0087】
モンテカルロシミュレーションの計算においては、
図20(a)に示す一点鎖線で囲った部分を金属の設置場所として、金属によるX線の減衰および散乱放射線を調べることにする。これは、骨があることによる周りからの散乱放射線の減衰効果を維持しつつ、骨によらない金属のみによる効果を見積もるためである。
【0088】
まず、
図20に示す水ファントムの組み合わせであって、
図20(a)に示す一点鎖線で囲った部分に金属を設置しないものを被写体にしてモンテカルロシミュレーションの計算を行う。その計算結果を
図21において実線で示す。
図21に示すグラフの横軸は白画像における平均輝度値に対する全X線(直接放射線と散乱放射線)による輝度値の比であり、
図21に示すグラフの縦軸はX線検出器9Aの或るピクセルで検出される全X線量に対するその全X線量に含まれる散乱放射線量の比である。
【0089】
白画像における平均輝度値に対する全X線による輝度値の比は被写体のX線照射方向の厚みが薄いほど大きくなる。
図21において実線で示されている計算結果より、被写体のX線照射方向の厚みが薄いほど全X線量に対する散乱放射線量の比が小さくなることが分かる。
図21において実線で示されている計算結果は、例えばy=A/(x−C)+Bで近似することができる。A=0.049556、B=0.046501、C=−0.16274とすると、
図21において破線で示されている近似曲線が得られる。
【0090】
次に、下記(1)〜(3)の場合におけるモンテカルロシミュレーションの各計算結果を
図22及び
図23に示すグラフで比較する。
【0091】
図22に示すグラフの横軸は
図20に示すx軸方向のピクセル位置を示すピクセル番号であり、
図22に示すグラフの縦軸は白画像における平均輝度値に対する全X線による輝度値の比である。なお、ピクセル番号が大きいほど、対応するX線検出器9Aのピクセルに入射したX線が透過した被写体の厚みは厚い。
図22中の曲線C1は下記(1)の場合に得られる計算結果である。同様に、
図22中の曲線C2は下記(2)の場合に得られる計算結果であり、
図22中の曲線C3は下記(3)の場合に得られる計算結果である。
【0092】
また、
図23に示すグラフの横軸は
図20に示すx軸方向のピクセル位置を示すピクセル番号であり、
図23に示すグラフの縦軸はX線検出器9Aの或るピクセルで検出される全X線量に対するその全X線量に含まれる散乱放射線量の比である。
図23中の曲線C11は下記(1)の場合に得られる計算結果である。同様に、
図23中の曲線C12は下記(2)の場合に得られる計算結果であり、
図23中の曲線C13は下記(3)の場合に得られる計算結果である。
【0093】
(1)
図20に示す水ファントムの組み合わせであって、
図20に示す一点鎖線で囲った部分に金属を設置しないものを被写体にした場合
(2)
図20に示す水ファントムの組み合わせであって、
図20に示す一点鎖線で囲った部分に幅5mm、長さ8cm、厚さ3mmのチタンを、幅方向をz軸、長さ方向をy軸、厚さ方向をx軸に合わせて設置したものを被写体にしてX線の照射方向をx軸に合わせた場合
(3)
図20に示す水ファントムの組み合わせであって、
図20に示す一点鎖線で囲った部分に幅5mm、長さ8cm、厚さ1mmのAuAgPd合金を、幅方向をz軸、長さ方向をy軸、厚さ方向をx軸に合わせて設置したものを被写体にしてX線の照射方向をx軸に合わせた場合
【0094】
図22及び
図23から、X線検出器9Aのピクセルで検出される全X線による輝度値(測定画像のピクセルの輝度値に相当)が同程度であっても、X線が透過する金属の種類や厚さによって散乱放射線量が異なることが分かる。
【0095】
例えば、白画像の平均輝度値が3万であり、X線検出器9Aのピクセルで検出される全X線による輝度値が600である条件すなわち白画像における平均輝度値に対する全X線による輝度値の比が0.02である条件を満たすピクセル番号は、上記(2)の場合は201であり、上記(3)の場合は5である(
図22参照)。これらのピクセル番号に対応するピクセルで検出される全X線量に対するその全X線量に含まれる散乱放射線量の比を
図23から求めると、それぞれ0.491、0.987となり、散乱放射線による輝度値に変換するとそれぞれ295、592となる。したがって、測定画像のピクセルの輝度値が同じ600であっても、X線がどのような材質の物質を透過したかによって、すなわち、物質の減弱係数の違いによって、散乱放射線量(測定画像のピクセルの散乱放射線成分)は異なってくる。
【0096】
図20に示す水ファントムの組み合わせであって、
図20(a)に示す一点鎖線で囲った部分に金属を設置しないものを被写体にしてモンテカルロシミュレーションの計算を行って得られる白画像における平均輝度値に対する全X線による輝度値の比は、被写体のX線照射方向の厚みに応じて異なる(
図22中の曲線C1参照)。以下、被写体の着目する部位を透過するX線経路上の骨あるいは金属を皮膚に置き換えた場合にX線検出器9Aのピクセルで得られる輝度値を理想値と呼び、白画像における平均輝度値に対する理想値の比を理想値比と呼ぶ。
【0097】
理想値比を固定した状態で金属の種類や厚さを変えながら、白画像における平均輝度値に対する全X線による輝度値の比と、X線検出器9Aの或るピクセルで検出される全X線量に対するその全X線量に含まれる散乱放射線量の比との関係を求めることで
図24に示す一つのグラフを得る。例えば、理想値比を0.1に固定した状態で
図22及び
図23中の白抜き丸、白抜き三角から
図24中の白抜き丸、白抜き三角の各点を得て、その各点からy=A/(x−C)+Bの曲線を近似してA、B、Cの各値を求めることで
図24中の曲線C23を得ることができる。
【0098】
そして、理想値比を変更することで、
図24に示すそれぞれのグラフを得る。
図24中の曲線C21は理想値比が1のグラフであり、
図24中の曲線C22は理想値比が0.3のグラフであり、
図24中の曲線C23は理想値比が0.1のグラフであり、
図24中の曲線C24は理想値比が0.03のグラフである。
【0099】
ここで、
図24中の各曲線はX線撮影の投影角度を或る値に固定した場合に対応するものである。そして、白画像における平均輝度値に対する全X線による輝度値の比と、X線検出器9Aの或るピクセルで検出される全X線量に対するその全X線量に含まれる散乱放射線量の比との関係を示す曲線は、X線撮影の投影角度に応じて異なる。なぜなら、歯列がX線焦点8Aに近い側に位置するような投影角度のX線撮影に対応する場合には、
図20(a)に示す一点鎖線で囲った部分内で金属をX線焦点8Aに近い側に設置し、歯列がX線焦点8Aに遠い側に位置するような投影角度のX線撮影に対応する場合には、
図20(a)に示す一点鎖線で囲った部分内で金属をX線焦点8Aに遠い側に設置するといったように、X線撮影の投影角度によって被写体中における金属の設置位置が異なり、この金属の設置位置の違いが金属を透過した直接放射線を検出するX線検出器9Aのピクセルで検出される散乱放射線量に影響を与えるからである。
【0100】
以上により、測定画像のピクセルの輝度値を元に散乱放射線による輝度値を算出する方法をまとめると、以下のようになる。
[1]測定画像の全てのピクセルについて理想値比を算出する。
[2]理想値比と、白画像における平均輝度値に対する測定画像の輝度値の比と、X線撮影の投影角度とから、測定画像の全てのピクセルの散乱放射線成分を算出する。
【0101】
ところで、CT撮影においては余分な被ばくを抑えるためX線の照射範囲がX線検出器9Aの有感領域に一致するようX線焦点8Aの近傍でX線をカットしている。よって、X線検出器9Aの端部に位置するピクセルでは、X線検出器9Aの中央部に位置するピクセルと比較して被写体からの散乱放射線による影響が少ない。その結果、端部に位置するピクセルでは散乱放射線成分が減少する。
【0102】
この減少傾向は、X線検出器9Aの端のピクセルほど強いが、X線検出器9Aの端から離れるにつれて連続的に小さくなり、X線検出器9Aの端から所定のピクセル以上離れたX線検出器9Aの中央部ではほぼ0となる。しかし、白画像における平均輝度値に対する全X線による輝度値の比が高いピクセルにおいては、被写体のX線照射方向の厚みが薄いので元々被写体からの散乱放射線は少ない。このため、理想値比が高いピクセルほど、ピクセルがX線検出器9Aの端部に位置したことによる散乱放射線成分の減少は小さくなる。したがって、ピクセルがX線検出器9Aの端部の方に位置し、且つ、理想値比が低い場合は、上述した散乱放射線成分の減少を加味して散乱放射線成分を求めることが望ましい。
【0103】
<<散乱放射線補正処理の内容>>
散乱放射線補正処理は、理想値比算出処理、散乱放射線成分算出処理、補正処理に分けられ、理想値比算出処理、散乱放射線成分算出処理、補正処理の順で実行される。
【0104】
<理想値比算出処理>
画像処理装置10は、理想値比算出処理において、例えば、512×512ピクセルの測定画像を16×16ピクセルごとにまとめ、横方向32個×縦方向32個の合計1024個の領域に分割し、各領域の理想値比を計算した後に各ピクセルの理想値比を算出する。このような算出手順にした理由は、被写体のX線照射方向の厚みに応じてピクセルの輝度値は徐々に変化するものの、1ピクセルごとに調べていたのでは、各ピクセルの輝度値の誤差が大きいため、輝度値の減少または増加が被写体のX線照射方向の厚みが変化したためであるのか、それとも誤差によるものなのか判別するのが非常に難しくなるからである。なお、上記のピクセルサイズや分割する領域の個数はあくまで例示であり、上記に示した値に限定されない。
【0105】
また、画像処理装置10は、横方向32個×縦方向32個の領域の各中心位置の理想値比について、まず横方向に領域を移動して得られる32個の曲線(横方向の領域をx、白画像における平均輝度値に対する中心位置の全X線による輝度値の比をyとして得られる曲線)を測定画像と
図20に示す水ファントムの組み合わせであって、
図20(a)に示す一点鎖線で囲った部分に金属を設置しないものを被写体にしてモンテカルロシミュレーションの計算を行って得られるデータとからそれぞれ算出し、次に縦方向に領域を移動して得られる32個の曲線(縦方向の領域をx、白画像における平均輝度値に対する中心位置の全X線による輝度値の比をyとして得られる曲線)を測定画像と
図20に示す水ファントムの組み合わせであって、
図20(a)に示す一点鎖線で囲った部分に金属を設置しないものを被写体にしてモンテカルロシミュレーションの計算を行って得られるデータとからそれぞれ算出するという手順で理想値比算出処理を行う。なお、本実施形態では、各領域を代表する理想値比としてそれぞれの中心位置の理想値比を採用しているが、各領域を代表する理想値比はこれに限定されることはなく、例えば、各領域において領域全体の理想値比の平均値を求め、各領域を代表する理想値比として各平均値を採用してもよい。
【0106】
測定画像を対象として横方向に輝度値の高い方から低い方へ行う方向で領域を移動したとき、白画像における平均輝度値に対する中心位置の全X線による輝度値の比は、骨部分に入るまでの皮膚のみの部分においては基本的にy=A/(x−C)+Bの曲線に従って変化し、皮膚のみの部分から骨部分に入ると当該曲線から外れて大きく落ち込む。また、当該曲線(xの範囲は骨部分に入るまでの皮膚のみの部分に限定)と
図22中の曲線C1とは必ずしも一致しない。
【0107】
そこで、画像処理装置10は、当該曲線(xの範囲は骨部分に入るまでの皮膚のみの部分に限定)と
図22中の曲線C1とが一致するように、
図22中の曲線C1をx軸方向に伸縮処理或いは縮小処理し、x軸方向に伸縮処理或いは縮小処理した後の
図22中の曲線C1に基づいて領域の中心位置の理想値比を算出する。
【0108】
しかし、X線を被写体の背面付近から照射する場合および正面付近から照射する場合については、皮膚のみの部分の範囲が極端に狭くなってしまうため、測定画像を対象として横方向に輝度値の高い方から低い方へ行う方向で領域を移動したときに求まる理想値比の算出精度が悪くなってしまう。
【0109】
一方、縦方向に関しては、顎部や頸部等の広い範囲で皮膚のみの部分がある。そこで、X線を被写体の背面付近から照射する場合や正面付近から照射する場合に対応する投影角度においては、横方向に領域を移動させたときの理想値比の計算で皮膚のみの部分がある範囲以下となった時点で、縦方向に領域を移動させたときの理想値比の計算に切り替え、端から例えば5列分について縦方向に領域を移動させたときの理想値比の計算を行うようにする。この縦方向に領域を移動させたときの理想値比の計算結果から得られる値を、皮膚のみの部分から得られる理想値比と仮定することによって、皮膚のみの部分から理想値比を算出することが困難だった横方向に領域を移動させたときの理想値比の算出が可能となるので、その後横方向に領域を移動させたときの理想値比の計算を再開する。
【0110】
横方向に領域を移動させたときの理想値比の計算は各行で行うため、
図22中の曲線C1に対するx軸方向の伸縮処理或いは縮小処理の程度も各行で異なる。このため、縦方向の理想値比の変化が滑らかではなく、凸凹になることが多い。そこで、縦方向についても理想値比の変化を滑らかにする処置を施す必要がある。ただし、横方向の場合と同様の処置を行ったのでは、次は横方向の理想値比の変化がまた凸凹になってしまうので、本実施形態では、最小二乗法を利用することにした。
【0111】
y=A/(x−C)+Bに最小二乗法を適用すると非常に複雑になり、A、B、Cの値を求めることができない。そこで、理想値比に対して対数z=logyをとると、zは局所的にはxに比例することから、z=Ax+Bについて最小二乗法を適用し、その後にzをyに戻すことで、理想値比を算出するようにした。本実施形態は、最小二乗法を適用する範囲を4つに分割し、それぞれについて境界が滑らかになるようにしつつ別々に最小二乗法を適用した。なお、最小二乗法を適用する範囲の分割数は4つ以外であってもよい。
【0112】
さらに、画像処理装置10は、上述した手順で算出した各領域の理想値比の変化をより滑らかにするため、各領域を注目領域の対象とし、注目領域の周りの領域の理想値比の平均値を注目領域の理想値比とする平滑化処理を行う。
【0113】
理想値比算出処理の最後において、画像処理装置10は、各領域の中心位置の理想値比に基づいて各ピクセルの理想値比の値を算出する。例えば、理想値比の値の算出対象であるピクセルが、隣り合う領域の中心位置同士を結ぶ線分上に位置する場合は、当該線分上で理想値比が線形的に変化するものとし、理想値比の値の算出対象であるピクセルが、隣り合う領域の中心位置同士を結ぶ線分上に位置しない場合は、当該ピクセルを囲む四つの中心位置の理想値比を利用し、まず当該ピクセルと横方向の座標が同一であって横方向に隣り合う一組の領域の中心位置同士を結ぶ線分上に位置する第1の点の理想値比を当該線分上で理想値比が線形的に変化するものとして算出し、次に当該ピクセルと横方向の座標が同一であって横方向に隣り合うもう一組の領域の中心位置同士を結ぶ線分上に位置する第2の点の理想値比を当該線分上で理想値比が線形的に変化するものとし算出し、そして第1の点と第2の点とを結ぶ線分上に位置する場合は、当該線分上で理想値比が線形的に変化するものとすることで各ピクセルの理想値比の値を算出できるが、他の方法で各ピクセルの理想値比の値を求めてもよい。例えば、上記の方法において横方向を縦方向に置き換えてもよい。
【0114】
<散乱放射線成分算出処理>
画像処理装置10は、測定画像のピクセル毎に、上述した理想値比算出処理で算出した理想値比と、白画像における平均輝度値に対する測定画像の輝度値の比と、X線撮影の投影角度とから、
図24に示す曲線のデータを用いて測定画像の散乱放射線成分を算出する。
図24に示す曲線のデータは、y=A/(x−C)+Bの定数A、B、Cの各値が、理想値比と投影角度とに関連付けられたデータテーブルの形式でHDD107に記憶されている。
【0115】
ここで、画像処理装置10は、ピクセルがX線検出器9Aの端部の方に位置し、且つ、理想値比が低い場合は、上記の通り算出した散乱放射線成分を減少させる修正処理を行うようにしてもよい。
【0116】
<補正処理>
画像処理装置10は、測定画像のピクセル毎に、測定画像のピクセルの輝度値から、上述した散乱放射線成分算出処理で算出した散乱放射線成分を除去する補正処理を行う。これにより、X線撮影で得られる測定画像データから散乱放射線成分を低減した画像データを直接的に導出することができる。したがって、X線撮影で得られる測定画像データから散乱放射線成分を差し引いた画像データ(直接放射線データ)も導出することができる。
【0117】
測定画像の輝度値には被写体やフラットパネルディテクターからの散乱放射線も反映されるので、Auの含有量の多いAuAgPd合金のようにX線をほぼ通さない金属が被写体であっても、必ず測定画像に輝度値が現れることになる。金属アーチファクト除去操作の過程において、散乱放射線成分が含まれたままであると金属部分を十分に抽出することができないことがあるため、金属アーチファクトを十分に除去することができないことがある。しかし、散乱放射線成分を取り除くことによりこれら金属部分の透過X線を正確に算出することができれば、金属アーチファクトをより十分に除去できることが期待できる。
【0118】
また、歯科用のCT撮影では一般に正確なCT値を算出することができない。これは、被写体やフラットパネルディテクターからの散乱放射線が主な原因であると考えられる。しかし、測定画像から散乱放射線成分を取り除くことができれば、データとして得られるのは被写体のX線減弱によって得られる透過X線による輝度値のみとなる。したがって、より正確なCT値を算出できることが期待できる。
【0119】
<変形例>
以上、散乱放射線補正処理について説明したが、散乱放射線補正処理は上述した実施形態に限定されるものではなく、種々の変更を加えて実施することができる。
【0120】
例えば、X線撮影の撮影範囲が制限されている等の理由により、X線撮影の投影角度が変わっても白画像における平均輝度値に対する全X線による輝度値の比と、X線検出器9Aの或るピクセルで検出される全X線量に対するその全X線量に含まれる散乱放射線量の比との関係を示す曲線がほとんど変化しない場合には、散乱放射線成分算出処理において画像処理装置10が、測定画像のピクセル毎に、上述した理想値比算出処理で算出した理想値比と、白画像における平均輝度値に対する測定画像の輝度値の比との二つのみから、
図24に示す曲線のデータを用いて測定画像の散乱放射線成分を算出するようにしてもよい。
【0121】
上述した実施形態において説明した歯科用あるいは耳鼻科用等のX線撮影装置では、被写体が人間の頭部に限定されている。ただし、散乱放射線補正処理は被写体が人間の頭部である場合に限定されるものではない。被写体が人間の頭部でない場合は、モンテカルロシミュレーションにおいて使用する被写体のモデルを、
図20に示すモデルではなく、実際の被写体に適したモデルにすればよい。
【0122】
また、上述した実施形態以外の方法で直接放射線データを求めてもよい。