【実施例1】
【0016】
以下、図面を参照して本発明の実施例について説明する。なお、本実施例1においては、トップエミッション型の有機ELディスプレイを例示して説明するが、これに限定するものではない。つまり、有機EL装置としてトップエミッション構造を例示するが、両面発光構造、又はボトムエミッション構造の有機EL装置にも適用できる。
図2は、本発明の実施例1〜5に係る有機EL装置を示す断面図である。本実施形態の有機EL装置は、EL素子基板(以下、単に基板ともいう)21上に少なくとも第1電極層(以下、単に、第1電極ともいう)22と有機発光媒体層23と第2電極層(以下、単に、第2電極ともいう)24からなる有機EL素子を複数備えている。
【0017】
より詳細には、基板21上にパターン形成された複数の第1電極層22と、複数の第1電極層22上に形成された複数の有機発光媒体層23と、複数の有機発光媒体層23を覆うように形成された第2電極層24と、第2電極層24を覆うように形成されたクッション層26と、クッション層26と接するように配置された吸湿性物質29を含有する有機充填層27と、基板21と封止基板32とを貼り合わせるために形成された接着層28と、封止基板32とより構成されている。また、有機充填層27は、有機発光媒体層23を水蒸気、その他ガスを吸収する機能を発揮する。なお、吸湿性物質29は吸湿性を有する。
【0018】
上述したように、本発明の実施形態に係る有機EL装置は、平板基板21上に、少なくとも、第1電極層22と、有機発光層を含む有機発光媒体層23と、第2電極層24と、吸湿性能を有する吸湿性物質29を含有した有機充填層27と、接着層28と、封止基板32とを積層して構成された有機EL装置であって、吸湿性物質29の局所的応力を緩和するためのクッション層26を、第2電極層24と有機充填層27との間に備えた。第2電極層24は、クッション層に覆われ、有機充填層27及びクッション層26の周囲を取り囲む接着層28を備えた。有機充填層27の材料は、少なくとも熱硬化性の材料又は光硬化性の材料を配合されるとともに、吸湿性を有する吸湿性物質29を含有する。
【0019】
本発明に係る基板21としては、例えば、ガラスやプラスチックフィルム等の絶縁性を有する基板が使用できる。特に、基板側から発光を取り出すボトムエミッション型の場合には基板の材料として透光性のある材料を用いる。透光性のある基材の材料としては、ガラスや石英、ポリエーテルサルフォン、ポリカーボネート等のプラスチックフィルムに、少なくとも、後述する第1電極層22が形成されていれば良い。
【0020】
アクティブマトリックス方式の有機EL素子を形成する場合には、基板としては薄膜トランジスタ(TFT)が形成された駆動用基板とし、用いる薄膜トランジスタとしては、公知の薄膜トランジスタを用いることができる。
具体的には、主として、ソース/ドレイン領域及びチャネル領域が形成される活性層、ゲート絶縁膜及びゲート電極から構成される薄膜トランジスタが挙げられる。薄膜トランジスタの構造としては、特に限定されるものではなく、例えば、スタガ型、逆スタガ型、ボトムゲート型、トップゲート型、コプレーナ型等が挙げられる。
【0021】
薄膜トランジスタの半導体層の材料としては、ポリチオフェンやポリアニリン、銅フタロシアニンやペリレン誘導体等の材料を用いても良い。あるいは、その半導体層の材料として、アモルファスシリコンやポリシリコン、金属酸化物を用いても良い。さらに、上述した薄膜トランジスタ(TFT)が形成された駆動用基板のどちらかの面に、カラーフィルタ層や光散乱層、光偏光層等を設けても良い。
これらの基板21は、あらかじめ加熱処理を行って、基板21の内部、あるいは表面の水分を極力低減させてから用いることが好ましい。また、基板21上に積層される材料に応じて、密着性を向上させるために、超音波洗浄処理、コロナ放電処理、プラズマ処理、又はUVオゾン処理等の表面処理を施してから用いることが好ましい。
【0022】
次に、この基板上に第1電極層22を形成する。
薄膜トランジスタは、有機ELディスプレイのスイッチング素子として機能するように接続される。そのために、薄膜トランジスタのドレイン電極と、有機ELディスプレイの各画素を構成する有機EL素子の第1電極層22とが電気的に接続される。薄膜トランジスタとドレイン電極と有機ELディスプレイの第1電極層22との接続は、平坦化膜を貫通してコンタクトホール内に形成された接続配線を介して行われる(図示せず)。
【0023】
また、第1電極層22は隔壁25によって区画され、各画素に対応した画素電極となる。第1電極層22の材料としては、ITO等仕事関数の高い材料を選択することが好ましい。その第1電極層12の材料として、ITO(インジウムスズ複合酸化物)やインジウム亜鉛複合酸化物、亜鉛アルミニウム複合酸化物等の金属複合酸化物、金、白金等の金属材料を、そのまま使用することができる。あるいは、これら金属酸化物や金属材料の微粒子を、エポキシ樹脂やアクリル樹脂等に分散した微粒子分散膜を、単層もしくは積層したものも、第1電極層22の材料として使用することもができる。
【0024】
上述したように、本実施形態に係る有機EL装置は、トップエミッション型の有機ELディスプレイである。そのため、第1電極層22は、正孔注入性と反射性が必要なAgやAlのような金属材料の上に、ITO膜を積層すれことによって形成される。この第1電極層22の膜厚は、有機ELディスプレイの素子構成により最適値が異なる。また、第1電極層22の膜厚は、単層、積層にかかわらず、10nm以上1000nm以下であり、より好ましくは、300nm以下である。
【0025】
第1電極層22の形成方法としては、材料に応じて、抵抗加熱蒸着法、電子ビーム蒸着法、反応性蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法等の乾式成膜法や、グラビア印刷法、スクリーン印刷法等の湿式成膜法等を用いることができる。
第1電極層22を形成した後、隣接する陽極パターンの間に、フォトリソグラフィ法により隔壁28が形成される。さらに詳しくは、感光性樹脂組成物を基板21に塗布する工程と、パターン露光、現像、焼成して隔壁パターンを形成する工程を少なくとも有する。
【0026】
隔壁25は、画素に対応した発光領域を区画するように形成する。一般的に、アクティブマトリクス駆動型の表示装置は各画素に対して第1電極層22が形成される。第1電極層22による各画素が、できるだけ広い面積を確保できるように、第1電極層22の端部を覆うように隔壁25が形成される。その隔壁25は、格子状の形状であることが、最も基本的で好ましい形状である。
【0027】
また、隔壁25は多段状に構成することもできる。その場合には、基板21上の全面にSiO
2やSiNで形成された絶縁性の無機膜が、フォトリソグラフィ工程により、画素を区切る格子状に形成されて1段目の隔壁になる。その1段目の隔壁の上に、感光性樹脂からなる2段目の隔壁を、フォトリソグラフィで形成する。
隔壁25を形成する感光性材料としてはポジ型レジスト、ネガ型レジストのどちらであってもよく、市販のもので構わないが、絶縁性を有する必要がある。隔壁25が十分な絶縁性を有さない場合、隔壁25を通じて隣り合う画素電極に電流が流れてしまい(リーク電流)、表示不良が発生してしまう。また、TFTの誤作動により適正な表示ができないことがある。
【0028】
隔壁25を形成する感光性材料として、具体的にはポリイミド系、アクリル樹脂系、ノボラック樹脂系、フルオレン系の材料が挙げられる。ただし、これに限定するものではない。
また、有機ELディスプレイの表示品位を上げる目的で、光遮光性の材料を感光性材料に含有させても良い。さらに、必要に応じて、光遮光性の材料に、撥水剤を添加しても構わない。また、光遮光性の材料については、プラズマやUV(ultraviolet)を照射して形成された後、インクに対する撥液性を付与したりすることもできる。
【0029】
隔壁25を形成する工程において、感光性樹脂が、スピンコーター、バーコーター、ロールコーター、ダイコーター、グラビアコーター等の公知の塗布方法により塗布される。次に、パターン露光、現像して隔壁パターンを形成する工程では、従来公知の露光、現像方法により隔壁部のパターンを形成する。また焼成に関しては、オーブン、ホットプレート等を用いる従来公知の方法により焼成を行うことができる。
【0030】
隔壁25の厚みは、0.5μmから5.0μmの範囲にあることが好ましい。そうすることにより、異なる発光色を有する有機発光材料を、溶媒に溶解又は分散させた有機発光インクを用いて画素ごとに塗り分けをおこなう場合であっても、隣接する画素との混色を防止することが可能となる。また、隔壁25が低すぎると、隣接画素間において、絶縁破壊、リーク電流、及び有機発光インクの混色等の不具合が発生する危険性が高くなる。
続いて有機発光媒体層23は、電圧の印加によって発光する有機発光層を含む。この有機発光層から成る単独の層によって構成されていても良いが、この発光層に加えて、発光効率を向上させる発光補助層を積層した積層構造から構成されたものであっても良い。発光補助層としては、正孔輸送層、正孔注入層、電子輸送層、電子注入層等が挙げられる。
【0031】
正孔輸送材料の例としては、銅フタロシアニン、テトラ(t−ブチル)銅フタロシアニン等の金属フタロシアニン類及び無金属フタロシアニン類、キナクリドン化合物、1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)シクロヘキサン、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン、N,N’−ジ(1−ナフチル)−N,N’−ジフェニル−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン等の芳香族アミン系低分子正孔注入輸送材料や、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリビニルカルバゾール、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)とポリスチレンスルホン酸との混合物等の高分子正孔輸送材料、ポリチオフェンオリゴマー材料、Cu
2O,Cr
2O
3,Mn
2O
3,FeOx(x〜0.1),NiO,CoO,Pr
2O
3,Ag
2O,MoO
2,Bi
2O
3,ZnO,TiO
2,SnO
2,ThO
2,V
2O
5,Nb
2O
5,Ta
2O
5,MoO
3,WO
3,MnO
2等の無機材料、その他既存の正孔輸送材料の中から選ぶことができる。
【0032】
高分子ELディスプレイの場合には、正孔輸送材料に、インターレイヤ層を形成することが好ましい。インターレイヤ層に用いる材料として、ポリビニルカルバゾール若しくはその誘導体、側鎖若しくは主鎖に芳香族アミンを有するポリアリーレン誘導体、アリールアミン誘導体、トリフェニルジアミン誘導体等の芳香族アミンを含むポリマー等が挙げられる。これらの材料は、溶媒に溶解又は分散させ、スピンコート法等を用いた各種塗布方法や凸版印刷方法を用いて形成することができる。
【0033】
発光材料としては、9,10−ジアリールアントラセン誘導体、ピレン、コロネン、ペリレン、ルブレン、1,1,4,4−テトラフェニルブタジエン、トリス(8−キノリノラート)アルミニウム錯体、トリス(4−メチル−8−キノリノラート)アルミニウム錯体、ビス(8−キノリノラート)亜鉛錯体、トリス(4−メチル−5−トリフルオロメチル−8−キノリノラート)アルミニウム錯体、トリス(4−メチル−5−シアノ−8−キノリノラート)アルミニウム錯体、ビス(2−メチル−5−トリフルオロメチル−8−キノリノラート)[4−(4−シアノフェニル)フェノラート]アルミニウム錯体、ビス(2−メチル−5−シアノ−8−キノリノラート)[4−(4−シアノフェニル)フェノラート]アルミニウム錯体、トリス(8−キノリノラート)スカンジウム錯体、ビス〔8−(パラ−トシル)アミノキノリン〕亜鉛錯体及びカドミウム錯体、1,2,3,4−テトラフェニルシクロペンタジエン、ペンタフェニルシクロペンタジエン、ポリ−2,5−ジヘプチルオキシ−パラ−フェニレンビニレン、クマリン系蛍光体、ペリレン系蛍光体、ピラン系蛍光体、アンスロン系蛍光体、ポルフィリン系蛍光体、キナクリドン系蛍光体、N,N’−ジアルキル置換キナクリドン系蛍光体、ナフタルイミド系蛍光体、N,N’−ジアリール置換ピロロピロール系蛍光体等、Ir錯体等の燐光性発光体等の低分子系発光材料や、ポリフルオレン、ポリパラフェニレンビニレン、ポリチオフェン、ポリスピロ等の高分子材料や、これら高分子材料に前記低分子材料の分散又は共重合した材料や、その他既存の蛍光発光材料や燐光発光材料を用いることができる。
【0034】
電子輸送材料の例としては、2−(4−ビフェニルイル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール、2,5−ビス(1−ナフチル)−1,3,4−オキサジアゾール、オキサジアゾール誘導体やビス(10−ヒドロキシベンゾ[h]キノリノラート)ベリリウム錯体、トリアゾール化合物等を用いることができる。また、これらの電子輸送材料に、ナトリウムやバリウム、リチウムといった仕事関数が低いアルカリ金属、アルカリ土類金属を、少量ドープすることにより、電子注入層としても良い。なお、有機発光媒体層23に、仕事関数が低いLi,Ca等の金属を少量ドーピングして、ITO等の金属酸化物を積層しても良い。
【0035】
有機発光媒体層23の膜厚は、単層又は積層により形成する場合においても、1000nm以下であり、好ましくは50〜200nm程度である。有機発光媒体層23の形成方法としては、材料に応じて、真空蒸着法や、スリットコート、スピンコート、スプレーコート、ノズルコート、フレキソ印刷、グラビア印刷、凹版オフセット印刷、凸版オフセット印刷等のコーティング法や印刷法、インクジェット法等を用いることができる。
【0036】
続いて、第2電極層24を成膜する。第2電極層24の材料としては、有機発光媒体層23への電子注入効率の高い、仕事関数の低い物質を用いる。具体的には、Mg,Al,Yb等の金属単体が使用できる。また、第2電極層24の材料としては、発光媒体と接する界面に、Ba、Ca、Liや、その酸化物、フッ化物等の化合物を、1nm程度挟んで、安定性・導電性を高くしたAlやCuを積層して用いることができる。あるいは、第2電極層24を成膜する際に、電子注入効率と安定性を両立させるため、仕事関数が低いLi,Mg,Ca,Sr,La,Ce,Er,Eu,Sc,Y,Yb等の金属1種以上と、安定なAg,Al,Cu等の金属元素との合金系を用いても良い。より具体的には、MgAg,AlLi,CuLi等の合金が使用できる。
【0037】
第2電極側から光を取り出す、いわゆるトップエミッション構造とする場合には、透光性を有する材料を選択することが必要である。この場合、仕事関数が低いLi,Caを薄く設けた後に、ITO(インジウムスズ複合酸化物)やインジウム亜鉛複合酸化物、亜鉛アルミニウム複合酸化物等の金属複合酸化物を積層しても良い。
【0038】
なお、上述したように、有機発光媒体層23に、仕事関数が低いLi,Ca等の金属を少量ドーピングして、ITO等の金属酸化物を積層しても良い。第2電極24の形成方法は、材料に応じて、抵抗加熱蒸着法、電子ビーム蒸着法、反応性蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法を用いることができる。第2電極24の厚さに特に制限はないが、10nm〜1000nm程度が好ましい。また、第2電極24を透光性電極層として利用する場合、CaやLi等の金属材料を用いる場合の膜厚は0.1〜10nm程度が好ましい。
【0039】
続いて、第2電極24の全面をクッション層26で覆う。このクッション層26よって、第2電極24は、吸湿性物質29による局所的応力から守られる。また、クッション層26は、シート状のものを、第2電極24の全面に貼付ける。あるいは、液状のクッション層26をディスペンサー塗布方式、又はスクリーン印刷方式等で塗布しても良い。液状のものはゲル状あるいはゴム状であることが好ましく、シート状又は液状のものを塗布した硬化物の硬度は吸湿性物質29から第2電極24を保護するため、軟らかいことが好ましく、日本ゴム協会標準規格(SRIS)のショアE90以下であることが好ましい。なお、ショアE90以下の硬度については、測定限界以下の柔らかさまで含むものとする。つまり、クッション層26の硬度は、測定限界以下の柔らかさまで含むショアE90以下であることが好ましい。
【0040】
クッション層26を硬化させる場合、熱硬化型の材料を使用することも可能であるが、光硬化型の材料も使用することができる。
また、クッション層26は、その上の吸湿性を有した吸湿性物質29を含有する有機充填層27へ水蒸気を素早く到達させるために水蒸気透過率が高いことが好ましい。このクッション層26の水蒸気透過率(Moisture vapor transmission rate)は、50g/m
2・day以上であることが好ましい。
【0041】
また、そのクッション層26自体が保水しないように、クッション層26には、撥水性あるいは疎水性を有する材料が使用される。したがってクッション層26の材料として、例えば、シリコーン系樹脂やフッ素系樹脂が好ましい。また、クッション層26の厚さは、クッション性を確保するために、吸湿性物質29の粒径より2倍程度の厚さであることが好ましい。ただし、その厚さに限定するものではない。
上述したように、クッション層26の材料は、撥水性あるいは疎水性の材料であることが好ましい。また、クッション層26は、ゲル状あるいはゴム状であることが好ましい。
【0042】
続いて、有機EL素子を空気や水分から守るため、吸湿性を有した吸湿性物質29を含有した有機充填層27をクッション26上に形成する。有機充填層27中に含有される吸湿性物質29として、化学吸湿性物質又は物理吸湿性物質がある。化学吸湿性物質としては、例えば、五酸化二リン(P
2O
5)、酸化カルシウム(CaO)等が挙げられる。物理吸湿性物質としては、例えば、酸化アルミニウム(Al
2O
3)、ゼオライト(アルミナ珪酸塩)等が挙げられる。また、粒径としては0.01〜1000um、好ましくは、0.1〜100umである。また、有機充填層27中に吸湿性物質29を含有する含有量は、1重量%〜90重量%、好ましくは15重量%〜65重量%である。化学吸湿性物質は、1種類又は数種類を用いても良く、物理吸湿性物質についても同様である。
【0043】
有機充填剤としては、化学的、熱的に安定で、撥水性あるいは疎水性を有することが好ましく、例えば、シリコーン系樹脂等が挙げられる。吸湿性を有した吸湿性物質29を含有した有機充填層27は、パネル全面を覆うように形成されることが好ましく、形成方法としてはディスペンサー塗布方式、スクリーン印刷方式等が挙げられる。形成されたものは液状で使用することもできるが、硬化していることが好ましい。そのため、有機充填層27を形成する有機充填剤は、熱硬化型あるいは光硬化型が好ましい。
【0044】
続いて、クッション層26と吸湿性物質29を含有した有機充填層27を取り囲むように接着層28を形成し、その上に封止基板32を積層して封止する。接着層28の材料として、熱硬化型の材料を使用することができる。ただし、有機EL装置への熱の影響を考慮すると、接着層28は、光硬化型の材料により形成される方が好ましい。光硬化型の材料で形成される接着層28として、例えば、エステルアクリレート、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、メラミンアクリレート、アクリル樹脂アクリレート等の各種アクリレート等の各種アクリレート、ウレタンポリエステル等の樹脂を用いたラジカル系接着層や、エポキシ、ビニルエーテル等の樹脂を用いたカチオン系接着層、チオール・エン付加型樹脂系接着層等が挙げられる。中でも酸素による阻害がなく、光照射後も重合反応が進行するカチオン系接着層が好ましい。カチオン硬化型タイプとしては、紫外線硬化型エポキシ樹脂接着層が好ましい。より好ましくは、100mW/cm
2以上の紫外線を照射した際に、10秒〜90秒以内に硬化する紫外線硬化型接着層である。この時間範囲内で硬化させることにより、紫外線照射による他の構成要素への悪影響をもたらすことなく、紫外線硬化型接着層が充分に硬化して適切な接着強さを備えることができる。また、生産工程の効率の観点からも、上述した10秒〜90秒以内の時間範囲に紫外線硬化型接着層を硬化することが好ましい。また、接着層28の種類に関わらず、低透湿性かつ高接着性のものが好ましい。接着層28を封止基板32の上に形成する方法の一例として、ディスペンサー塗布方式、スクリーン印刷方式等を挙げることができる。
【0045】
接着層28には封止基板32とEL素子基板21との間の距離(ギャップとも言う)を制御するためのスペーサ30を混入させることが好ましい。スペーサ30を接着層28に混入させておくことで、封止基板32とEL素子基板21との間の距離を均一にすることができる。なおかつ、スペーサ30を接着層28に混入させておくことで、基板同士を貼り合わせた時の押圧により有機充填層27やクッション層26がスクライブ領域外まで押し出されるのを防ぐこともできる。スペーサ30の形状としては、球状のものを用いることが可能である。ただし、基板間のギャップを制御することができれば、スペーサ30の形状は、球状に限定されるものではない。なお、球状のスペーサ30であれば、直径が1.0μm以上100μm以下のものを用いることができる。ただし、球状のスペーサ30は、クッション層26と有機充填層27とを合せた厚み以下の直径であることが好ましい。クッション層26と有機充填層27を合せた厚さよりも大きいと、基板同士を貼り合わせた時のギャップ形成に支障をきたすので好ましくない。スペーサ30の材料としては、樹脂やガラス等を用いることができるが、貼り合わせ時の押圧に耐えうる材料であれば特に限定されるものではない。
【0046】
封止基材32としては、透明性が必要なトップエミッション型の有機EL素子の場合にはガラス、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のプラスチックフィルムを用いることができる。特に透明性が必要ないボトムエミッション型の有機EL素子の場合には、封止基材32として、上記の材料に加えて、ステンレスやアルミ等の金属材料や不透明なガラス、プラスチック材料を用いることができる。
【0047】
続いて、吸湿性を有する吸湿性物質29を含有した有機充填層26とクッション層26とそれらを取り囲むように形成される接着層28の塗布移行の工程について一例を説明する。
まず初めに、封止基板32の上に吸湿性を有する吸湿性物質29を含有した有機充填層27を形成し、その上に有機充填層27を覆うようにクッション層26形成する。その後、接着層28が1つ以上の有機充填層27とクッション層26を取り囲むように形成する。形成する手法としてはディスペンサー塗布方式、スクリーン印刷方式等があげられる。また、接着層28を形成するのは第2電極24を形成後のEL素子基板側でも良い。
【0048】
クッション層26と有機充填層27との積層体と接着層28との間に空間を有するように形成しても良い。接着層28とクッション層26と有機充填層27との積層体との間に空間があることで、貼り合わせ後、大気圧で押された状態のため、加熱によりクッション層26あるいは有機充填層27が濡れ広がることができる。一方、接着層28がクッション層26と有機充填層27との積層体と接するように形成しても良く、接着層28とクッション層26と有機充填層27との積層体が接することで空気が侵入する空間を無くし、封止性をより向上することが可能である。
【0049】
図3は、本発明の有機EL装置が複数レイアウトされた母基板を示す平面図である。
減圧雰囲気下で封止基板32とEL素子基板21とを貼り合わせた後、貼り合わされた基板が大気中に取り出されるとクッション層26と有機充填層27との積層体と接着層28は、
図3の外周シール31の内側にあるため、封止基板32、EL素子基板21を介して外部から均一な圧力を受け、封止基板32と基板21が均一な厚さで貼り合わされ、貼り合わせユニットとなる。
【0050】
続いて、
図3のように、母基板上にそれぞれが有機EL装置となるEL素子基板21を複数形成する場合について説明する。
母基板の端部又は母基板の端部に対応する大きさの封止基板上に、各EL素子基板を囲うように形成された閉ループ状の外周シール31を形成することが好ましい。減圧雰囲気下で封止基板32とEL素子基板21とを貼り合せるため、外周シール31を形成することにより、外周シール内部は負圧になる。すると接着層28が硬化する前のため、大気圧で均一な圧力で貼り合わすことができ、接着層28のギャップを均一にすることができる。また封止基板32と素子基板21とが剥がれたり、貼り合わせユニット内部に外部から空気が侵入したりすることを防ぐこともできる。
【0051】
外周シール剤としては接着層28と同じ材料を用いることができ、接着層28と同ようにスペーサ30を混入させることが好ましい。また、外周シール31の形成方法も接着層28と同ようにディスペンサー塗布方式やスクリーン印刷方式等が挙げられ、接着層28と同時に、同様の方法により形成しても良い。
接着層27、外周シール31の形成後、減圧下で貼り合せたユニットを大気中に取り出し、光照射し、接着層28、外周シール31のギャップ形成及び硬化を行う。接着層28と外周シール31は貼り合わせの際の圧力により封止基板32と素子基板21の両方に接するように形成され、ユニットの完成である。
【0052】
次に、
図4を参照して、本実施形態に係る有機EL装置の製造方法を説明する。
図4は、本実施形態に係る有機EL装置の製造方法を説明するためのフローチャートである。
図4に示すように、本実施形態に係る有機EL装置の製造方法は、工程(S10)〜工程(S70)を有する。すなわち、有機発光層を含む有機発光媒体層(13)を形成する工程(S20)と、第2電極層(24)を形成する工程(S30)と、吸湿性能を有する吸湿性物質(29)を含有した有機充填層(27)を形成する工程(S40)と、第2電極(24)を覆うクッション層(26)を形成する工程(S50)と、接着層(28)を形成する工程(S60)と、封止基板(32)を形成する工程(S70)とを有する。
【0053】
そして、接着層(28)を形成する工程(S50)は、有機充填層(27)及びクッション層(26)の周囲を、接着層(28)によって取り囲むように形成することにより、吸湿性物質(29)の局所的応力を緩和することを特徴とする。