(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明に係る実施形態について図面を参照しながら説明するが、本発明はこれに限定されない。以下で説明する実施形態の構成要素は、適宜組み合わせることができる。また、一部の構成要素を用いない場合もある。また、以下で説明する実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。
【0026】
以下の説明においては、XYZ直交座標系を設定し、このXYZ直交座標系を参照しつつ各部の位置関係について説明する。水平面内の一方向をX軸方向、水平面内においてX軸方向と直交する方向をY軸方向、X軸方向及びY軸方向のそれぞれと直交する方向をZ軸方向とする。また、X軸、Y軸、及びZ軸まわりの回転(傾斜)方向をそれぞれ、θX、θY、及びθZ方向とする。本実施形態において、タイヤ1の回転軸(中心軸)とY軸とが平行である。Y軸方向は、車幅方向又はタイヤ1の幅方向である。タイヤ1(タイヤ1の回転軸)の回転方向(θY方向に相当)を、周方向と称してもよい。X軸方向及びZ軸方向は、回転軸(中心軸)に対する放射方向である。回転軸(中心軸)に対する放射方向を、径方向と称してもよい。タイヤ1が転がる(走行する)地面は、XY平面とほぼ平行である。
【0027】
<第1実施形態>
第1実施形態について説明する。
図1は、本実施形態に係るタイヤ1の一例を示す図である。
図1は、タイヤ1の回転軸Jを通る子午断面を示す。回転軸Jは、Y軸と平行である。タイヤ1は、環状である。回転軸Jは、タイヤ1の中心軸である。タイヤ1の使用時において、タイヤ1の内部に気体が充填される。本実施形態において、タイヤ1に充填される気体は、空気である。すなわち、タイヤ1は、空気入りタイヤである。
【0028】
図1において、タイヤ1は、回転軸(中心軸)Jの周囲に配置される円筒形状の環状構造体10と、少なくとも一部がY軸方向に関して環状構造体10の外側に配置されるカーカス部12と、少なくとも一部が回転軸Jに対して環状構造体10の外側に配置されるトレッドゴム層11と、カーカス部12を保護するサイドウォールゴム層7と、環状構造体10とトレッドゴム層11との間に配置され、環状構造体10とトレッドゴム層11との間において気体空間の生成を抑制するための繊維2とを備えている。
【0029】
環状構造体10は、円筒形状の部材である。環状構造体10は、タイヤ1の形状を保持する部材(強度部材)である。環状構造体10は、外面10A及び内面10Bを有する。外面10Aは、回転軸Jに対する放射方向に関して外側を向く。内面10Bは、外面10Aの反対方向を向く。外面10A及び内面10Bはそれぞれ、Y軸(回転軸J)と平行である。
【0030】
環状構造体10は、金属製である。環状構造体10は、金属材料で製造される。環状構造体10は、ばね鋼、高張力鋼、ステンレス鋼、及びチタンの少なくとも一つを含んでもよい。チタンは、チタン合金を含んでもよい。環状構造体10の金属材料の引張強度は、450N/m
2以上2500N/m
2以下でもよいし、600N/m
2以上2400N/m
2以下でもよいし、800N/m
2以上2300N/m
2以下でもよい。本実施形態において、環状構造体10は、ステンレス鋼を含む。ステンレス鋼の耐食性は高い。ステンレス鋼は、上述の数値の引張強度を得ることができる。
【0031】
環状構造体10の引張強度(MPa)と厚み(mm)との積によって規定される環状構造体10の耐圧パラメータは、200以上1700以下でもよいし、250以上1600以下でもよい。耐圧パラメータは、タイヤ1に充填される気体の内圧に対する耐性の尺度である。乗用車用として使用されるタイヤ1の環状構造体10の耐圧パラメータは、200以上1000以下でもよいし、250以上950以下でもよい。トラック/バス用タイヤ(TBタイヤ)として使用されるタイヤ1の環状構造体10の耐圧パラメータは、500以上1700以下でもよいし、600以上1600以下でもよい。
【0032】
環状構造体10をステンレス鋼で製造する場合、JIS G4303の分類における、マルテンサイト系ステンレス鋼、フェライト系ステンレス鋼、オーステナイト系ステンレス鋼、オーステナイト・フェライト二相ステンレス鋼、及び析出硬化系ステンレス鋼の少なくとも一つを用いてもよい。ステンレス鋼を用いることにより、引張強度及び靱性が高い環状構造体10を製造可能である。
【0033】
カーカス部12は、タイヤ1の骨格を形成する部材(強度部材)である。カーカス部12は、コード(補強材)を含む。カーカス部12のコードを、カーカスコードと称してもよい。カーカス部12は、コードを含むコード層(補強材層)である。カーカス部12は、タイヤ1に気体(空気)が充填されたときの圧力容器として機能する。
【0034】
図2は、カーカス部12の一部を拡大した図である。
図2に示すように、カーカス部12は、ゴム12Rと、ゴム12Rで覆われたコード12Fとを有する。コード12Fは、有機繊維を含む。コード12Fを覆うゴム12Rを、コートゴムと称してもよいし、トッピングゴムと称してもよい。なお、カーカス部12は、ポリエステルのコード12Fを含んでもよいし、脂肪族骨格を含むポリアミドのコード12Fを含んでもよいし、芳香族骨格のみのポリアミドのコード12Fを含んでもよいし、レーヨンのコード12Fを含んでもよい。
【0035】
図1に示すように、カーカス部12の少なくとも一部は、Y軸方向に関して環状構造体10の外側に配置される。本実施形態において、カーカス部12の少なくとも一部は、環状構造体10の内面10B側に配置される。カーカス部12の少なくとも一部は、回転軸Jに対する放射方向に関して環状構造体10の内側に配置される。カーカス部12の少なくとも一部は、環状構造体10の内面10Bと対向するように配置される。カーカス部12は、環状構造体10の内面10Bと対向する外面12Aを有する。環状構造体10の内面10Bとカーカス部12の外面12Aの少なくとも一部とは接触する。環状構造体10とカーカス部12とは結合される。
【0036】
カーカス部12は、ビードコア13に支持される。ビードコア13は、Y軸方向に関してカーカス部12の一側及び他側のそれぞれに配置される。カーカス部12は、ビードコア13において折り返される。ビードコア13は、Y軸方向に関するカーカス部12の一端部及び他端部を固定する部材(強度部材)である。ビードコア13は、タイヤ1をホイールのリムに固定させる。ビードコア13は、スチールワイヤの束である。なお、ビードコア13が、炭素鋼の束でもよい。本実施形態において、カーカス部12は、内側にインナーライナー14を有する。インナーライナー14によって、タイヤ1の内部に充填された気体の漏洩が抑制される。
【0037】
トレッドゴム層11は、カーカス部12を保護する。トレッドゴム層11は、円筒形状の部材である。トレッドゴム層11の少なくとも一部は、カーカス部12の周囲に配置される。トレッドゴム層11は、外面11A及びと内面11Bを有する。外面11Aは、回転軸Jに対する放射方向に関して外側を向く。内面11Bは、外面11Aの反対方向を向く。外面11A及び内面11Bはそれぞれ、Y軸(回転軸J)と平行である。
【0038】
外面11Aは、地面と接触するトレッド面(トレッド部)である。トレッドゴム層11は、地面と接触する外面(トレッド面)11Aと、外面11Aの少なくとも一部に形成された溝部11Mとを有する。雨天時など、タイヤ1が濡れた地面を転がる際、溝部11Mは、タイヤ1と地面との間から水を排除可能である。
【0039】
トレッドゴム層11は、天然ゴム、合成ゴム、カーボンブラック、硫黄、亜鉛華、亀裂防止材、加硫促進剤、及び老化防止剤を含む。
【0040】
トレッドゴム層11の少なくとも一部は、環状構造体10の外面10A側に配置される。トレッドゴム層11の少なくとも一部は、回転軸Jに対する放射方向に関して環状構造体10の外側に配置される。トレッドゴム層11の少なくとも一部は、環状構造体10の外面10Aと対向するように配置される。トレッドゴム層11の内面11Bの少なくとも一部は、環状構造体10の外面10Aと対向する。環状構造体10の外面10Aとトレッドゴム層11の内面11Bの少なくとも一部とは接触する。環状構造体10とトレッドゴム層11とは結合される。
【0041】
本実施形態において、回転軸Jと、環状構造体10の外面10Aと、環状構造体10の内面10Bと、トレッドゴム層11の外面11Aと、トレッドゴム層11の内面11Bとは、実質的に平行である。
【0042】
サイドウォールゴム層7は、カーカス部12を保護する。サイドウォールゴム層7は、Y軸方向に関してトレッドゴム層11の一側及び他側のそれぞれに配置される。サイドウォールゴム層7は、サイドウォール部7Aを有する。
【0043】
繊維2は、環状構造体10とトレッドゴム層11との間において気体空間の生成を抑制する。繊維2は、環状構造体10の外面10A側に配置される。繊維2は、環状構造体10とトレッドゴム層11との間に配置される。繊維2は、環状構造体10とトレッドゴム層11との間に複数配置される。複数の繊維2は、1つの層を形成する。複数の繊維2を合わせて、繊維層、と称してもよい。
【0044】
繊維2は、天然繊維及び化学繊維の一方又は両方を含む。天然繊維は、植物繊維、動物繊維、及び鉱物繊維の少なくとも一つを含む。植物繊維は、木綿、麻、及びリンネルの少なくとも一つを含む。動物繊維は、羊毛、絹、及びカシミヤの少なくとも一つを含む。鉱物繊維は、石綿を含む。化学繊維は、天然繊維(天然高分子)を原料にして製造される再生繊維、天然高分子を改質して製造する半合成繊維、純合成的に有機高分子化合物を製造する合成繊維、及び無機化合物からなる無機繊維の少なくとも一つを含む。再生繊維は、セルロース系再生繊維を含む。半合成繊維は、セルロール系半合成繊維、及びタンパク質系合成繊維の少なくとも一方を含む。合成繊維は、ポリエステル系合成繊維、及びポリアミド系合成繊維の少なくとも一方を含む。無機繊維は、ガラス繊維、及び炭素繊維の少なくとも一方を含む。繊維2は、天然繊維及び化学繊維の少なくとも一方を引き揃えて、撚りをかけた糸状の部材(所謂、マルチフィラメント)でもよいし、1本の繊維(所謂、モノフィラメント)でもよい。環状構造体10とトレッドゴム層11との間に配置される繊維2は、同一種類の繊維でもよいし、異なる複数の種類の繊維を含んでもよい。本実施形態において、繊維2は、木綿(綿)を含む。
【0045】
本実施形態において、繊維2の線密度は、1×10
−6g/mm以上1×10
−4g/mm以下である。繊維2の直径は、0.03mm以上1.00mm以下である。
【0046】
図3は、本実施形態に係るタイヤ1の一例を模式的に示す分解斜視図である。
図3に示すように、環状構造体10は、回転軸(中心軸)Jの周囲に配置される円筒形状の部材である。環状構造体10は、回転軸Jに面するように配置される内面10Bと、内面10Bの反対方向を向く外面10Aとを有する。トレッドゴム層11は、環状構造体10の周囲に配置される環状の部材である。なお、
図3においては、トレッドゴム層11の一部を模式的に示す。また、
図3においては、カーカス部12の図示を省略する。
【0047】
繊維2は、環状構造体10とトレッドゴム層11との間に複数配置される。本実施形態において、繊維2は、環状構造体10の外面10Aに配置される。本実施形態において、複数の繊維2のそれぞれは、回転軸J(Y軸)と平行に配置される。Y軸方向に関して、環状構造体10の寸法と、繊維2の寸法とは、等しい。
【0048】
複数の繊維2のそれぞれは、離れて配置される。すなわち、複数の繊維2は、間隔をあけて配置される。複数の繊維2は、環状構造体10の外面10Aの周方向(θY方向)に関して間隔をあけて配置される。本実施形態において、複数の繊維2は、外面10Aの周方向(θY方向)に関して、等間隔で配置される。
【0049】
本実施形態において、隣り合う繊維2の距離(間隔)は、5mm以上80mm以下に定められる。隣り合う繊維2の距離(間隔)は、10mm以上50mm以下に定められてもよい。
【0050】
本実施形態において、繊維2は、環状構造体10の外面10Aにおける100mm四方の領域に少なくとも1本配置される。繊維2は、環状構造体10の外面10Aにおける10mm四方の領域に5本以上配置されない。
【0051】
次に、本実施形態に係るタイヤ1の製造方法の一例について説明する。
図4は、本実施形態に係るタイヤ1の製造方法の一例を示すフローチャートである。
図4に示すように、タイヤ1の製造方法は、材料を加工して、タイヤ1の構成部材を作成する材料加工工程(ステップS1)と、タイヤ1の構成部材を組み上げて、タイヤ1(グリーンタイヤ)を成形する成形工程(ステップS2)と、タイヤ1(グリーンタイヤ)に熱及び圧力を加える加硫工程(ステップS3)と、を含む。
【0052】
材料加工工程(ステップS1)について説明する。本実施形態においては、材料加工工程において、タイヤ1の構成部材として、少なくとも、環状構造体10、カーカス部12、トレッドゴム層11、及び繊維2が作成される。例えば、特開2013−001193号公報に開示されているように、金属の板状部材の一端部と他端部とを突き合わせて、その一端部と他端部とを溶接により接合する工程と、溶接により生じた凸部を除去する工程と、を経て、外面10A及び内面10Bを有する円筒形状の環状構造体10が作成される。なお、外面10A及び内面10Bの少なくとも一方が粗面化処理されてもよい。また、コード(カーカスコード)を帯状に織る工程と、その帯状に織られたコードを薬品に浸す工程と、そのコードをゴムで覆う工程と、を経て、ゴム12Rで覆われたコード12Fを有するカーカス部12が作成される。また、天然ゴム、合成ゴム、カーボンブラック、及び硫黄などの原材料を混合する工程と、生成されたゴムを押し出す工程と、を経て、トレッドゴム層11が作成される。また、複数の繊維2が作成(用意)される。
【0053】
次に、成形工程(ステップS2)について説明する。ステップS1で作成された、環状構造体10、カーカス部12、トレッドゴム層11、及び繊維2などのタイヤ1の構成部材が成形機により成形され、タイヤ1の原型が組み上げられる。タイヤ1の原型は、未加硫の生タイヤ(グリーンタイヤ)を含む。本実施形態においては、カーカス部12の少なくとも一部を、Y軸方向に関して環状構造体10の外側に配置する工程と、トレッドゴム層11の少なくとも一部と環状構造体10の外面10Aとの間に繊維2を配置して、トレッドゴム層11の少なくとも一部と環状構造体10の外面10Aとを対向させる工程と、が行われる。本実施形態においては、カーカス部12の少なくとも一部が、環状構造体10の内面10Bと対向するように配置される。
【0054】
本実施形態においては、環状構造体10の外面10Aに、接着剤が設けられる。外面10Aに接着剤が設けられることにより、外面10A上に接着剤層が形成される。本実施形態においては、外面10Aに接着剤が設けられた後、繊維2が、その環状構造体10の外面10Aと対向するように配置される。繊維2は、接着剤が設けられた外面10A上に配置される。
図3などを参照して説明したように、本実施形態において、複数の繊維2が、外面10AにおいてY軸と平行に配置される。複数の繊維2は、外面10Aにおいて間隔をあけて周方向に配置される。外面10Aに接着剤が設けられるため、外面10Aにおいて繊維2の位置が固定される。なお、外面10Aにプライマー層が設けられた後、そのプライマー層の上に接着剤層が設けられてもよい。
【0055】
接着剤層が設けられた外面10Aに繊維2が配置された後、トレッドゴム層11の少なくとも一部が、環状構造体10の外面10Aと対向するように配置される。環状構造体10の外面10Aとトレッドゴム層11の内面11Bとが、接着剤層を介して接合される。トレッドゴム層11の内面11Bと環状構造体10の外面10Aとの間に複数の繊維2が配置されている状態で、トレッドゴム層11と環状構造体10とが結合される。
【0056】
また、カーカス部12の少なくとも一部が、環状構造体10の内面10Bと対向するように配置される。環状構造体10の内面10Bとカーカス部12の外面12Aとが、接着剤層を介して接合される。また、カーカス部12とサイドウォールゴム層7とが接合される。
【0057】
なお、環状構造体10とカーカス部12とが接合された後、環状構造体10とトレッドゴム層11との間に繊維2が配置された状態で、環状構造体10とトレッドゴム層11とが接合されてもよい。なお、環状構造体10とトレッドゴム層11との間に繊維2が配置された状態で、環状構造体10とトレッドゴム層11とが接合された後、環状構造体10とカーカス部12とが接合されてもよい。なお、環状構造体10とトレッドゴム層11との接合と、環状構造体10とカーカス部12との接合とが同時に行われてもよい。
【0058】
なお、環状構造体10とトレッドゴム層11との間に繊維2が配置された状態で、環状構造体10とトレッドゴム層11とを接合する場合、繊維2と環状構造体10の外面10Aとを対向させた後、トレッドゴム層11と環状構造体10の外面10Aとを対向させてもよいし、トレッドゴム層11と環状構造体10の外面10Aとを対向させた後、繊維2と環状構造体10の外面10Aとを対向させてもよいし、繊維2と環状構造体10の外面10Aとを対向させることと同時に、トレッドゴム層11と環状構造体10の外面10Aとを対向させてもよい。
【0059】
次に、加硫工程(ステップS3)について説明する。ステップS2においてグリーンタイヤが製造された後、そのグリーンタイヤに熱及び圧力が加えられる。本実施形態においては、トレッドゴム層11と環状構造体10との間に繊維2が配置された状態で、グリーンタイヤに熱及び圧力を加える加硫工程が行われる。
【0060】
加硫工程においては、グリーンタイヤが金型の内側に配置され、圧縮装置により、グリーンタイヤに熱及び圧力が加えられる。熱及び圧力により、ゴムの分子と硫黄の分子とが結合し、グリーンタイヤのゴムに弾力性及び耐久性が付与される。また、加硫工程により、トレッドゴム層11と環状構造体10とが結合される。また、加硫工程により、カーカス部12と環状構造体10とが結合される。また、加硫工程により、トレッドゴム層11とサイドウォールゴム層7とが結合される。また、加硫工程により、サイドウォールゴム層7とカーカス部12とが結合される。
【0061】
本実施形態においては、環状構造体10の外面10Aと、トレッドゴム層11の内面11Bとが接触した状態で、加硫工程が行われる。例えば、成形工程(ステップS2)においてトレッドゴム層11の内面11Bと環状構造体10の外面10Aとを接合したとき、トレッドゴム層11と環状構造体10との間に気体(空気)が入り込む可能性がある。トレッドゴム層11と環状構造体10との間に気体(空気)が入り込んでいる状態で加硫工程(ステップS3)が行われると、トレッドゴム層11と環状構造体10との間の気体(空気)が膨張し、トレッドゴム層11と環状構造体10との間に気体空間(空気だまり)が生成されてしまう可能性がある。また、加硫工程(ステップS3)のみならず、成形工程(ステップS2)においても、トレッドゴム層11と環状構造体10との間に気体空間が生成されてしまう可能性がある。本実施形態においては、環状構造体10は金属製であり、外面10Aは金属面である。そのため、トレッドゴム層11と環状構造体10との間に気体(空気)が入り込むと、その入り込んだ気体(空気)がトレッドゴム層11と環状構造体10との間から排出されることが困難となる可能性が高くなる。
【0062】
本実施形態においては、環状構造体10とトレッドゴム層11との間に繊維2が配置される。繊維2が配置されることにより、環状構造体10とトレッドゴム層11との間における気体空間(空気だまり)の生成が抑制される。
【0063】
例えば、環状構造体10とトレッドゴム層11との間に配置された繊維2により、環状構造体10とトレッドゴム層11との間の気体は、環状構造体10とトレッドゴム層11との間において拡散される。例えば、繊維2により、環状構造体10とトレッドゴム層11との間の気体が、環状構造体10とトレッドゴム層11との間において均一に行き渡り、一箇所に滞留することが抑制される。また、環状構造体10とトレッドゴム層11との間の気体の少なくとも一部が、繊維2にガイドされて、環状構造体10とトレッドゴム層11との間の空間の外側に移動する可能性がある。また、環状構造体10とトレッドゴム層11との間において拡散された気体の少なくとも一部は、トレッドゴム層11及び繊維2の一方又は両方に拡散(吸収)される可能性がある。これにより、環状構造体10とトレッドゴム層11との間において気体空間の生成が抑制される。
【0064】
このように、繊維2により、環状構造体10とトレッドゴム層11との間の気体が拡散される。環状構造体10とトレッドゴム層11との間に繊維2が配置された状態で、トレッドゴム層11の加硫を含む加硫工程が行われることにより、気体空間が拡大する前に、環状構造体10とトレッドゴム層11との間の気体が拡散される。これにより、環状構造体10とトレッドゴム層11との間における気体空間の生成が抑制されつつ、環状構造体10とトレッドゴム層11とが結合される。
【0065】
また、環状構造体10とトレッドゴム層11との間に繊維2が配置されることにより、トレッドゴム層11の内面11Bは、繊維2の形状に沿った形状に変形される。これにより、トレッドゴム層11の内面11Bと気体との接触面積が大きくなる。トレッドゴム層11と気体との接触面積が大きくなることにより、気体がトレッドゴム層11に拡散(吸収)されることが促進される。したがって、環状構造体10とトレッドゴム層11との間において気体空間が生成されることが抑制される。
【0066】
また、繊維2として、複数の繊維を引き揃えて、撚りをかけた糸状の部材(所謂、マルチフィラメント)を用いることにより、トレッドゴム層11と環状構造体10との間の気体の少なくとも一部は、繊維2の内部に拡散(吸収)される。
【0067】
環状構造体10とトレッドゴム層11との間に繊維2が配置された状態で加硫工程が行われることにより、
図1に示したようなタイヤ1が製造される。
図1に示すように、本実施形態において、環状構造体10及び繊維2は、タイヤ1の外面から露出しない。環状構造体10及び繊維2は、トレッドゴム層11(トレッドゴム層11のゴム)、サイドウォールゴム層7(サイドウォールゴム層7のゴム)、及びカーカス部12(カーカス部12のゴム)を含む、タイヤ1のゴムの内部に埋設される。
【0068】
以上説明したように、本実施形態によれば、環状構造体10の外面10Aと対向するようにトレッドゴム層11が配置される場合において、環状構造体10とトレッドゴム層11との間に繊維2が配置されることにより、環状構造体10とトレッドゴム層11との間における気体空間の生成が抑制される。したがって、環状構造体10とトレッドゴム層11との接着不良の発生が抑制され、タイヤ1の性能の低下が抑制される。
【0069】
また、本実施形態においては、繊維2は、環状構造体10とトレッドゴム層11との間に複数配置される。これにより、環状構造体10とトレッドゴム層11との間の空間の大部分において気体空間が生成されることが抑制される。
【0070】
また、繊維2として、複数の繊維を引き揃えて、撚りをかけた糸状の部材(所謂、マルチフィラメント)を用いることにより、トレッドゴム層11と環状構造体10との間の気体の少なくとも一部は、繊維2の内部に拡散(吸収)される。また、繊維2と気体との接触面積が大きくなる。そのため、環状構造体10とトレッドゴム層11との間に気体が存在しても、その気体を繊維2が吸収することにより、環状構造体10とトレッドゴム層11との間において気体空間が生成されることが抑制される。
【0071】
また、本実施形態においては、繊維2は、環状構造体10の外面10Aにおける100mm四方の領域に少なくとも1本配置され、環状構造体10の外面10Aにおける10mm四方の領域に5本以上配置されない。100mm四方の領域に繊維2が1本も配置されない場合、気体空間の生成を抑制できなくなる可能性が高くなる。一方、10mm四方の領域に繊維2が5本以上配置されてしまうと、環状構造体10とトレッドゴム層11との接着強度が低下する可能性がある。本実施形態においては、環状構造体10の外面10Aにおける100mm四方の領域に、繊維2を少なくとも1本配置し、環状構造体10の外面10Aにおける10mm四方の領域に、繊維2を5本以上配置しないようにしたので、気体空間の生成を抑制しつつ、環状構造体10とトレッドゴム層11との接着強度の低下を抑制できる。以下の実施形態においても同様である。
【0072】
また、本実施形態においては、繊維2の線密度は、1×10
−6g/mm以上1×10
−4g/mm以下であり、繊維2の直径は、0.03mm以上1.00mm以下である。繊維2の線密度が1×10
−6g/mmよりも小さい場合、気体を十分に拡散できず、気体空間の生成を抑制できなくなる可能性が高くなる。繊維2の線密度が1×10
−4g/mmよりも大きい場合、環状構造体10とトレッドゴム層11との接着強度が低下する可能性がある。また、繊維2の直径が0.03mmよりも小さい場合、気体を十分に拡散できず、気体空間の生成を抑制できなくなる可能性が高くなる。繊維2の直径が1.00mmよりも大きい場合、環状構造体10とトレッドゴム層11との接着強度が低下する可能性がある。本実施形態においては、繊維2の線密度を、1×10
−6g/mm以上1×10
−4g/mm以下とし、繊維2の直径を、0.03mm以上1.00mm以下としたので、気体空間の生成を抑制しつつ、環状構造体10とトレッドゴム層11との接着強度の低下を抑制できる。以下の実施形態においても同様である。
【0073】
<第2実施形態>
第2実施形態について説明する。以下の説明において、上述の実施形態と同一又は同等の構成部分については同一の符号を付し、その説明を簡略又は省略する。
【0074】
図5は、本実施形態に係る環状構造体10及び繊維2Bの一例を模式的に示す斜視図である。
図5において、トレッドゴム層11及びカーカス部12の図示を省略する。
【0075】
図5に示すように、繊維2Bは、環状構造体10の外面10Aに配置される。繊維2Bは、環状構造体10とトレッドゴム層11との間に複数配置される。複数の繊維2Bのそれぞれは、回転軸J(Y軸)と平行に配置される。Y軸方向に関して、繊維2Bの寸法は、環状構造体10の寸法よりも大きい。
【0076】
複数の繊維2Bのそれぞれは、離れて配置される。複数の繊維2Bは、環状構造体10の外面10Aの周方向(θY方向)に関して間隔をあけて配置される。本実施形態において、複数の繊維2Bは、外面10Aの周方向(θY方向)に関して、等間隔で配置される。隣り合う繊維2Bの距離(間隔)は、5mm以上80mm以下に定められる。隣り合う繊維2Bの距離(間隔)は、10mm以上50mm以下に定められてもよい。
【0077】
例えば、成形工程(ステップS2)において、繊維2Bの+Y側の端部が環状構造体10の+Y側のエッジよりも+Y側に配置され、繊維2Bの−Y側の端部が環状構造体10の−Y側のエッジよりも−Y側に配置されるように、繊維2Bが環状構造体10の外面10Aと対向するように配置される。すなわち、繊維2Bの+Y側の端部が環状構造体10の+Y側のエッジよりも突出し、繊維2Bの−Y側の端部が環状構造体10の−Y側のエッジよりも突出するように、環状構造体10の外面10Aに繊維2Bが配置される。
【0078】
外面10Aに繊維2Bが配置された後、トレッドゴム層11の少なくとも一部が、環状構造体10の外面10Aと対向するように配置される。トレッドゴム層11の内面11Bと環状構造体10の外面10Aとの間に複数の繊維2Bが配置されている状態で、環状構造体10の外面10Aとトレッドゴム層11の内面11Bとが、接着剤層を介して接合される。環状構造体10の外面10Aと、トレッドゴム層11の内面11Bとが接触した状態で、加硫工程(ステップS3)が行われる。
【0079】
環状構造体10とトレッドゴム層11との間に繊維2Bが配置されるので、成形工程(ステップS2)及び加硫工程(ステップS3)を含むタイヤ1の製造工程において、環状構造体10とトレッドゴム層11との間における気体空間の生成が抑制される。
【0080】
例えば、環状構造体10とトレッドゴム層11との間に配置された繊維2Bにより、環状構造体10とトレッドゴム層11との間の気体は、環状構造体10とトレッドゴム層11との間において拡散される。また、本実施形態においては、繊維2Bの+Y側の端部及び−Y側の端部は、環状構造体10のエッジの外側に配置される。すなわち、繊維2Bの+Y側の端部及び−Y側の端部は、環状構造体10とトレッドゴム層11との間の空間の外側に配置される。これにより、環状構造体10とトレッドゴム層11との間の気体の少なくとも一部は、繊維2Bにガイドされて、環状構造体10とトレッドゴム層11との間の空間の外側に移動する。換言すれば、繊維2Bは、環状構造体10とトレッドゴム層11との間の気体の少なくとも一部を、環状構造体10とトレッドゴム層11との間の空間の外側に逃がすようにガイドする。これにより、環状構造体10とトレッドゴム層11との間において気体空間の生成が抑制される。
【0081】
環状構造体10とトレッドゴム層11との間に繊維2Bが配置された状態で加硫工程が行われることにより、タイヤ1が製造される。本実施形態において、繊維2Bの+Y側の端部及び−Y側の端部の少なくとも一方が、タイヤ1の外面から突出(露出)してもよい。なお、環状構造体10及び繊維2Bが、タイヤ1の外面から突出(露出)せず、タイヤ1のゴムの内部に埋設されてもよい。
【0082】
以上説明したように、本実施形態においても、環状構造体10とトレッドゴム層11との間に繊維2Bが配置されることにより、環状構造体10とトレッドゴム層11との間における気体空間の生成が抑制される。したがって、環状構造体10とトレッドゴム層11との接着不良の発生が抑制され、タイヤ1の性能の低下が抑制される。
【0083】
<第3実施形態>
第3実施形態について説明する。
図6は、本実施形態に係る環状構造体10及び繊維2Cの一例を模式的に示す斜視図である。
図6において、トレッドゴム層11及びカーカス部12の図示を省略する。
【0084】
図6に示すように、繊維2Cは、環状構造体10の外面10Aに配置される。繊維2Cは、環状構造体10とトレッドゴム層11との間に複数配置される。複数の繊維2Cのそれぞれは、回転軸Jを囲むように配置される。
【0085】
複数の繊維2Cのそれぞれは、離れて配置される。すなわち、複数の繊維2Cは、間隔をあけて配置される。複数の繊維2Cは、環状構造体10の外面10Aにおいて、Y軸方向に関して間隔をあけて配置される。本実施形態において、複数の繊維2Cは、Y軸方向に関して、等間隔で配置される。隣り合う繊維2Cの距離(間隔)は、5mm以上80mm以下に定められる。隣り合う繊維2Cの距離(間隔)は、10mm以上50mm以下に定められてもよい。
【0086】
本実施形態においても、環状構造体10とトレッドゴム層11との間に繊維2Cが配置されることにより、環状構造体10とトレッドゴム層11との間における気体空間の生成が抑制される。
【0087】
<第4実施形態>
第4実施形態について説明する。
図7は、本実施形態に係る環状構造体10及び繊維2Dの一例を模式的に示す斜視図である。
図7において、トレッドゴム層11及びカーカス部12の図示を省略する。
【0088】
図7に示すように、繊維2Dは、環状構造体10の外面10Aに配置される。繊維2Dは、環状構造体10とトレッドゴム層11との間に複数配置される。複数の繊維2Dのそれぞれは、回転軸J(Y軸)に対して傾斜するように配置される。
【0089】
複数の繊維2Dのそれぞれは、離れて配置される。すなわち、複数の繊維2Dは、間隔をあけて配置される。複数の繊維2Dは、環状構造体10の外面10Aにおいて、外面10Aの周方向に関して間隔をあけて配置される。本実施形態において、複数の繊維2Dは、外面10Aの周方向に関して、等間隔で配置される。隣り合う繊維2Dの距離(間隔)は、5mm以上80mm以下に定められる。隣り合う繊維2Dの距離(間隔)は、10mm以上50mm以下に定められてもよい。
【0090】
本実施形態においても、環状構造体10とトレッドゴム層11との間に繊維2Dが配置されることにより、環状構造体10とトレッドゴム層11との間における気体空間の生成が抑制される。
【0091】
<第5実施形態>
第5実施形態について説明する。
図8は、本実施形態に係る環状構造体10及び繊維2Eの一例を模式的に示す斜視図である。
図8において、トレッドゴム層11及びカーカス部12の図示を省略する。
【0092】
図8に示すように、繊維2Eは、環状構造体10の外面10Aに配置される。繊維2Eは、環状構造体10とトレッドゴム層11との間に複数配置される。複数の繊維2Eのそれぞれは、回転軸Jを囲むように配置される。本実施形態において、複数の繊維2Eのそれぞれは、屈曲部を有する。屈曲部は、周方向に関して繊維2Eに複数設けられる。屈曲部は、繊維2Eの少なくとも一部が+Y側に突出するように曲がる第1の屈曲部と、繊維2Eの少なくとも一部が−Y側に突出するように曲がる第2の屈曲部とを含む。周方向に関して、第1の屈曲部と第2の屈曲部とは交互に設けられる。
【0093】
複数の繊維2Eのそれぞれは、離れて配置される。すなわち、複数の繊維2Eは、間隔をあけて配置される。複数の繊維2Eは、環状構造体10の外面10Aにおいて、Y軸方向に関して間隔をあけて配置される。本実施形態において、複数の繊維2Eは、Y軸方向に関して、等間隔で配置される。隣り合う繊維2Eの距離(間隔)は、5mm以上80mm以下に定められる。隣り合う繊維2Eの距離(間隔)は、10mm以上50mm以下に定められてもよい。
【0094】
本実施形態においても、環状構造体10とトレッドゴム層11との間に繊維2Eが配置されることにより、環状構造体10とトレッドゴム層11との間における気体空間の生成が抑制される。
【0095】
<第6実施形態>
第6実施形態について説明する。
図9は、本実施形態に係る環状構造体10及び繊維2Fの一例を模式的に示す斜視図である。
図9において、トレッドゴム層11及びカーカス部12の図示を省略する。
【0096】
図9に示すように、繊維2Fの長さは、短い。繊維2Fは、所謂、短繊維である。繊維2Fは、Y軸方向に関する環状構造体10の寸法、及び周方向(回転軸J周りの方向)に関する環状構造体10の寸法よりも短い。
【0097】
繊維2Fは、環状構造体10の外面10Aに配置される。繊維2Fは、環状構造体10とトレッドゴム層11との間に複数配置される。複数の繊維2Fのそれぞれは、離れて配置される。すなわち、複数の繊維2Fは、間隔をあけて配置される。繊維2Fは、Y軸方向及び回転軸J周りの方向のそれぞれに関して、実質的に等しい密度で複数配置される。換言すれば、複数の繊維2Fは、外面10Aに均一に配置される。
【0098】
例えば、成形工程(ステップS2)において、環状構造体10の外面10Aに接着剤を設けて接着剤層を形成する場合、その接着剤に繊維2Fが予め混合されていてもよい。繊維2Fが混合(分散)された接着剤が外面10Aに設けられることによって、繊維2Fを含む接着剤層が外面10Aに形成されてもよい。なお、外面10Aにプライマー層が設けられた後、そのプライマー層の上に接着剤層が設けられる場合、そのプライマー層を形成するための溶液(プライマー溶液)に繊維2Fが予め混合されていてもよいし、接着剤及びプライマー溶液の両方に繊維2Fが予め混合されていてもよい。
【0099】
外面10Aに接着剤層及び繊維2Fが配置された後、トレッドゴム層11の少なくとも一部が、環状構造体10の外面10Aと対向するように配置される。環状構造体10の外面10Aとトレッドゴム層11の内面11Bとが、接着剤層を介して接合される。トレッドゴム層11の内面11Bと環状構造体10の外面10Aとの間に複数の繊維2Fが配置されている状態で、トレッドゴム層11と環状構造体10とが結合される。
【0100】
本実施形態においても、環状構造体10とトレッドゴム層11との間に配置される繊維2Fにより、環状構造体10とトレッドゴム層11との間において気体が拡散されるため、環状構造体10とトレッドゴム層11との間における気体空間の生成が抑制される。
【0101】
<第7実施形態>
第7実施形態について説明する。
図10は、本実施形態に係る環状構造体10及び繊維2Gの一例を模式的に示す斜視図である。
図10において、トレッドゴム層11及びカーカス部12の図示を省略する。
【0102】
図10に示すように、繊維2Gは、環状構造体10の外面10Aに配置される。繊維2Gは、環状構造体10とトレッドゴム層11との間に複数配置される。複数の繊維2Gの一部は、回転軸Jを囲むように配置される。複数の繊維2Gの一部は、回転軸Jと平行に配置される。
【0103】
本実施形態においては、外面10Aに配置される前に、繊維2Gが網目状に編まれている。本実施形態においては、網目状に成形された繊維2Gが、環状構造体10の外面10Aに配置される。
【0104】
本実施形態においても、環状構造体10とトレッドゴム層11との間に繊維2Gが配置されることにより、環状構造体10とトレッドゴム層11との間における気体空間の生成が抑制される。
【0105】
<第8実施形態>
第8実施形態について説明する。以下の説明において、上述の実施形態と同一又は同等の構成部分については同一の符号を付し、その説明を簡略又は省略する。
【0106】
図11は、本実施形態に係る環状構造体10及び繊維2Hの一例を模式的に示す斜視図である。
図11において、トレッドゴム層11及びカーカス部12の図示を省略する。
【0107】
図11に示すように、繊維2Hの少なくとも一部は、環状構造体10の外面10Aに配置される。繊維2Hの少なくとも一部は、環状構造体10の内面10Bに配置される。繊維2Hの少なくとも一部は、環状構造体10とトレッドゴム層11との間に配置される。繊維2Hの少なくとも一部は、環状構造体10とカーカス部12との間に配置される。
【0108】
本実施形態において、複数の繊維2Hが環状構造体10に配置される。複数の繊維2Hが、環状構造体10とトレッドゴム層11との間に配置される。複数の繊維2Hが、環状構造体10とカーカス部12との間に配置される。複数の繊維2Hのそれぞれは、環状である。繊維2Hは、その繊維2Hの一部が外面10Aに配置され、その繊維2Hの一部が内面10Bに配置されるように、環状構造体10を巻くように配置される。繊維2Hの一部は、外面10Aにおいて、回転軸J(Y軸)と平行に配置される。繊維2Hの一部は、内面10Bにおいて、回転軸J(Y軸)と平行に配置される。複数の繊維2Hが、外面10Aにおいて間隔をあけて配置される。複数の繊維2Hが、内面10Bにおいて間隔をあけて配置される。複数の繊維2Hが、回転軸J周りの方向(周方向)に等間隔で複数配置される。
【0109】
なお、環状構造体10に複数の繊維2Hが配置されなくてもよい。例えば、1本の長い繊維2Hが、環状構造体10を巻くように螺旋状に配置されてもよい。螺旋状に巻かれた繊維2Hの一部が外面10Aに配置され、繊維2Hの一部が内面10Bに配置されてもよい。
【0110】
例えば、成形工程(ステップS2)において、繊維2Hの一部が外面10Aに配置され、繊維2Hの一部が内面10Bに配置されるように、繊維2Hが環状構造体10に配置される。例えば、環状構造体10の外面10A及び内面10Bのそれぞれに接着剤(接着剤層)が設けられた後、繊維2Hの一部が環状構造体10の外面10Aと対向するように配置され、繊維2Hの一部が環状構造体10の内面10Bと対向するように配置される。繊維2Hは、接着剤がそれぞれ設けられた外面10A上及び内面10B上に配置される。
【0111】
外面10A及び内面10Bのそれぞれに接着剤が設けられるため、外面10A及び内面10Bのそれぞれにおいて繊維2Hの位置が固定される。なお、外面10A及び内面10Bの一方又は両方にプライマー層が設けられた後、そのプライマー層の上に接着剤層が設けられてもよい。
【0112】
本実施形態において、外面10Aに配置された隣り合う繊維2Hの距離(間隔)は、5mm以上80mm以下に定められる。外面10Aに配置された隣り合う繊維2Hの距離(間隔)は、10mm以上50mm以下に定められてもよい。本実施形態において、内面10Bに配置された隣り合う繊維2Hの距離(間隔)は、5mm以上80mm以下に定められる。内面10Bに配置された隣り合う繊維2Hの距離(間隔)は、10mm以上50mm以下に定められてもよい。
【0113】
本実施形態において、繊維2Hは、環状構造体10の外面10Aにおける100mm四方の領域に少なくとも1本配置される。繊維2Hは、環状構造体10の外面10Aにおける10mm四方の領域に5本以上配置されない。本実施形態において、繊維2Hは、環状構造体10の内面10Bにおける100mm四方の領域に少なくとも1本配置される。繊維2Hは、環状構造体10の内面10Bにおける10mm四方の領域に5本以上配置されない。
【0114】
外面10A及び内面10Bのそれぞれに繊維2Hが配置された後、トレッドゴム層11の少なくとも一部が、環状構造体10の外面10Aと対向するように配置される。環状構造体10の外面10Aとトレッドゴム層11の内面11Bとが、接着剤層を介して接合される。トレッドゴム層11の内面11Bと環状構造体10の外面10Aとの間に複数の繊維2Hが配置されている状態で、トレッドゴム層11と環状構造体10とが結合される。
【0115】
また、カーカス部12の少なくとも一部が、環状構造体10の内面10Bと対向するように配置される。環状構造体10の内面10Bとカーカス部12の外面12Aとが、接着剤層を介して接合される。環状構造体10の内面10Bとカーカス部12の外面12Aとの間に複数の繊維2Hが配置されている状態で、環状構造体10とカーカス部12とが結合される。
【0116】
トレッドゴム層11と環状構造体10との間に繊維2Hが配置され、環状構造体10とカーカス部12との間に繊維2Hが配置された状態で、トレッドゴム層11及びカーカス部12の加硫を含む加硫工程(ステップS3)が行われる。加硫工程により、トレッドゴム層11と環状構造体10とが結合される。また、加硫工程により、カーカス部12と環状構造体10とが結合される。
【0117】
環状構造体10の外面10Aと、トレッドゴム層11の内面11Bとが接触した状態で、加硫工程が行われる。また、環状構造体10の内面10Bと、カーカス部12の外面12Aとが接触した状態で、加硫工程が行われる。
【0118】
本実施形態においては、環状構造体10とトレッドゴム層11との間に繊維2Hが配置される。したがって、環状構造体10とトレッドゴム層11との間における気体空間(空気だまり)の生成が抑制される。また、本実施形態においては、環状構造体10とカーカス部12との間に繊維2Hが配置される。したがって、環状構造体10とカーカス部12との間における気体空間(空気だまり)の生成が抑制される。
【0119】
例えば、環状構造体10とカーカス部12との間に配置された繊維2Hにより、環状構造体10とカーカス部12との間の気体は、環状構造体10とカーカス部12との間において拡散される。例えば、繊維2Hにより、環状構造体10とカーカス部12との間の気体が、環状構造体10とカーカス部12との間において均一に行き渡り、一箇所に滞留することが抑制される。また、環状構造体10とカーカス部12との間の気体の少なくとも一部が、繊維2Hにガイドされて、環状構造体10とカーカス部12との間の空間の外側に移動する可能性がある。また、環状構造体10とカーカス部12との間において拡散された気体の少なくとも一部は、カーカス部12及び繊維2Hの一方又は両方に拡散(吸収)される可能性がある。これにより、環状構造体10とカーカス部12との間において気体空間の生成が抑制される。
【0120】
このように、繊維2Hにより、環状構造体10とカーカス部12との間の気体が拡散される。環状構造体10とカーカス部12との間に繊維2Hが配置された状態で、カーカス部12の加硫を含む加硫工程が行われることにより、気体空間が拡大する前に、環状構造体10とカーカス部12との間の気体が拡散される。これにより、環状構造体10とカーカス部12との間における気体空間の生成が抑制されつつ、環状構造体10とカーカス部12とが結合される。同様に、繊維2Hにより、環状構造体10とトレッドゴム層11との間における気体空間の生成が抑制されつつ、環状構造体10とトレッドゴム層11とが結合される。
【0121】
また、環状構造体10とカーカス部12との間に繊維2Hが配置されることにより、カーカス部12の外面12Aは、繊維2Hの形状に沿った形状に変形される。これにより、カーカス部12の外面12Aと気体との接触面積が大きくなる。カーカス部12と気体との接触面積が大きくなることにより、気体がカーカス部12に拡散(吸収)されることが促進される。したがって、環状構造体10とカーカス部12との間において気体空間が生成されることが抑制される。同様に、繊維2Hにより、トレッドゴム層11の内面11Bと気体との接触面積が大きくなる。したがって、環状構造体10とトレッドゴム層11との間において気体空間が生成されることが抑制される。
【0122】
また、繊維2Hとして、複数の繊維を引き揃えて、撚りをかけた糸状の部材(所謂、マルチフィラメント)を用いることにより、トレッドゴム層11と環状構造体10との間の気体の少なくとも一部、及び環状構造体10とカーカス部12との間の少なくとも一部は、繊維2Hの内部に拡散(吸収)される。
【0123】
以上説明したように、本実施形態によれば、環状構造体10とトレッドゴム層11との間に配置される繊維2Hにより、成形工程(ステップS2)及び加硫工程(ステップS3)を含むタイヤ1の製造工程において、環状構造体10とトレッドゴム層11との間における気体空間の生成が抑制される。また、環状構造体10とカーカス部12との間に配置される繊維2Hにより、成形工程(ステップS2)及び加硫工程(ステップS3)を含むタイヤ1の製造工程において、環状構造体10とカーカス部12との間における気体空間の生成が抑制される。
【0124】
<第9実施形態>
第9実施形態について説明する。
図12は、本実施形態に係る環状構造体10及び繊維の一例を模式的に示す斜視図である。
図12において、トレッドゴム層11及びカーカス部12の図示を省略する。
【0125】
図12に示すように、環状構造体10に、例えば、
図6を参照して説明した繊維2Cと、
図11を参照して説明した繊維2Hとの両方が配置されてもよい。なお、環状構造体10の内面10Bに、回転軸Jを囲むように配置される繊維が配置されてもよい。
【0126】
本実施形態においても、環状構造体10とトレッドゴム層11との間における気体空間の生成、及び環状構造体10とカーカス部12との間における気体空間の生成が抑制される。
【0127】
<第10実施形態>
第10実施形態について説明する。以下の実施形態においては、トレッドゴム層11に繊維2が配置された後、その繊維2が配置されたトレッドゴム層11と環状構造体10とが接合される例について説明する。以下の説明において、上述の実施形態と同一又は同等の構成部分については同一の符号を付し、その説明を簡略又は省略する。
【0128】
図13は、本実施形態に係る環状構造体10、トレッドゴム層11、及び繊維2Iの一例を模式的に示す斜視図である。
図13において、カーカス部12の図示を省略する。
【0129】
図13に示すように、繊維2Iは、トレッドゴム層11の内面11Bに配置される。繊維2Iは、環状構造体10とトレッドゴム層11との間に複数配置される。複数の繊維2Iのそれぞれは、回転軸J(Y軸)と平行に配置される。Y軸方向に関して、繊維2Iの寸法は、トレッドゴム層11の寸法よりも大きい。
【0130】
複数の繊維2Iのそれぞれは、離れて配置される。複数の繊維2Iは、トレッドゴム層11の内面11Bの周方向(θY方向)に関して間隔をあけて配置される。本実施形態において、複数の繊維2Iは、内面11Bの周方向(θY方向)に関して、等間隔で配置される。隣り合う繊維2Iの距離(間隔)は、5mm以上80mm以下に定められる。隣り合う繊維2Iの距離(間隔)は、10mm以上50mm以下に定められてもよい。
【0131】
例えば、成形工程(ステップS2)において、繊維2Iの+Y側の端部がトレッドゴム層11の+Y側のエッジよりも+Y側に配置され、繊維2Iの−Y側の端部がトレッドゴム層11の−Y側のエッジよりも−Y側に配置されるように、繊維2Iがトレッドゴム層11の内面11Bと対向するように配置される。すなわち、繊維2Iの+Y側の端部がトレッドゴム層11の+Y側のエッジよりも突出し、繊維2Iの−Y側の端部がトレッドゴム層11の−Y側のエッジよりも突出するように、トレッドゴム層11の内面11Bに繊維2Iが配置される。
【0132】
本実施形態においては、トレッドゴム層11の内面11Bに接着剤(接着剤層)が設けられる。接着剤が設けられたトレッドゴム層11の内面11Bに、繊維2Iが配置される。これにより、内面11Bにおいて、繊維2Iの位置が固定される。
【0133】
内面11Bに繊維2Iが配置された後、環状構造体10の少なくとも一部が、トレッドゴム層11の内面11Bと対向するように配置される。トレッドゴム層11の内面11Bと環状構造体10の外面10Aとの間に複数の繊維2Iが配置されている状態で、環状構造体10の外面10Aとトレッドゴム層11の内面11Bとが、接着剤層を介して接合される。なお、トレッドゴム層11の内面11Bに接着剤を設けず、環状構造体10の外面10Aに接着剤を設けて、内面11Bに繊維2Iが配置されたトレッドゴム層11と環状構造体10とを接合してもよい。トレッドゴム層11の内面11Bに接着剤を設けなくても、トレッドゴム層11の内面11Bの粘着力(ゴム自体の粘着力、タック)により、内面11Bにおいて繊維2Iの位置が固定される。なお、トレッドゴム層11及び環状構造体10の両方に接着剤を設けてもよい。環状構造体10の外面10Aと、トレッドゴム層11の内面11Bとが接触した状態で、加硫工程(ステップS3)が行われる。
【0134】
環状構造体10とトレッドゴム層11との間に繊維2Iが配置されるので、成形工程(ステップS2)及び加硫工程(ステップS3)を含むタイヤ1の製造工程において、環状構造体10とトレッドゴム層11との間における気体空間の生成が抑制される。
【0135】
例えば、環状構造体10とトレッドゴム層11との間に配置された繊維2Iにより、環状構造体10とトレッドゴム層11との間の気体は、環状構造体10とトレッドゴム層11との間において拡散される。また、本実施形態においては、繊維2Iの+Y側の端部及び−Y側の端部は、トレッドゴム層11のエッジの外側に配置される。すなわち、繊維2Iの+Y側の端部及び−Y側の端部は、環状構造体10とトレッドゴム層11との間の空間の外側に配置される。これにより、環状構造体10とトレッドゴム層11との間の気体の少なくとも一部は、繊維2Iにガイドされて、環状構造体10とトレッドゴム層11との間の空間の外側に移動する。換言すれば、繊維2Iは、環状構造体10とトレッドゴム層11との間の気体の少なくとも一部を、環状構造体10とトレッドゴム層11との間の空間の外側に逃がすようにガイドする。これにより、環状構造体10とトレッドゴム層11との間において気体空間の生成が抑制される。
【0136】
環状構造体10とトレッドゴム層11との間に繊維2Iが配置された状態で加硫工程が行われることにより、タイヤ1が製造される。本実施形態において、繊維2Iの+Y側の端部及び−Y側の端部の少なくとも一方が、タイヤ1の外面から突出(露出)してもよい。なお、環状構造体10及び繊維2Iが、タイヤ1の外面から突出(露出)せず、タイヤ1のゴムの内部に埋設されてもよい。
【0137】
以上説明したように、本実施形態においても、環状構造体10とトレッドゴム層11との間に繊維2Iが配置されることにより、環状構造体10とトレッドゴム層11との間における気体空間の生成が抑制される。したがって、環状構造体10とトレッドゴム層11との接着不良の発生が抑制され、タイヤ1の性能の低下が抑制される。
【0138】
なお、本実施形態において、繊維2Iは、トレッドゴム層11のエッジの外側に突出されなくてもよい。
【0139】
<第11実施形態>
第11実施形態について説明する。
図14は、本実施形態に係るトレッドゴム層11及び繊維2Jの一例を模式的に示す斜視図である。
【0140】
図14に示すように、繊維2Jは、トレッドゴム層11の内面11Bに配置される。繊維2Jは、環状構造体10とトレッドゴム層11との間に配置される。本実施形態において、繊維2Jは、屈曲部を有する。屈曲部は、内面11Bの周方向に関して繊維2Jに複数設けられる。屈曲部は、繊維2Jの少なくとも一部がトレッドゴム層11の幅方向(タイヤ1の幅方向)の一側(+Y側)に突出するように曲がる第1の屈曲部と、繊維2Jの少なくとも一部がトレッドゴム層11の幅方向(タイヤ1の幅方向)の他側(−Y側)に突出するように曲がる第2の屈曲部とを含む。内面11Bの周方向に関して、第1の屈曲部と第2の屈曲部とは交互に設けられる。本実施形態において、繊維2Jの屈曲部は、トレッドゴム層11のエッジの外側に配置される。なお、繊維2Jがトレッドゴム層11のエッジの外側に突出されなくてもよい。
【0141】
本実施形態においても、環状構造体10とトレッドゴム層11との間に繊維2Jが配置されることにより、環状構造体10とトレッドゴム層11との間における気体空間の生成が抑制される。
【0142】
<第12実施形態>
第12実施形態について説明する。
図15は、本実施形態に係るトレッドゴム層11及び繊維2Kの一例を模式的に示す斜視図である。
【0143】
図15に示すように、繊維2Kは、トレッドゴム層11の内面11Bに配置される。繊維2Kは、環状構造体10とトレッドゴム層11との間に複数配置される。複数の繊維2Kのそれぞれは、回転軸Jを囲むように配置される。
【0144】
複数の繊維2Kのそれぞれは、離れて配置される。すなわち、複数の繊維2Kは、間隔をあけて配置される。複数の繊維2Kは、トレッドゴム層11の内面11Bにおいて、トレッドゴム層11の幅方向(タイヤ1の幅方向)に関して間隔をあけて配置される。本実施形態において、複数の繊維2Kは、トレッドゴム層11の幅方向(タイヤ1の幅方向)に関して、等間隔で配置される。隣り合う繊維2Kの距離(間隔)は、5mm以上80mm以下に定められる。隣り合う繊維2Kの距離(間隔)は、10mm以上50mm以下に定められてもよい。
【0145】
本実施形態においても、環状構造体10とトレッドゴム層11との間に繊維2Kが配置されることにより、環状構造体10とトレッドゴム層11との間における気体空間の生成が抑制される。
【0146】
<第13実施形態>
第13実施形態について説明する。
図16は、本実施形態に係るトレッドゴム層11及び繊維2Lの一例を模式的に示す斜視図である。
図16において、環状構造体10及びカーカス部12の図示を省略する。
【0147】
図16に示すように、繊維2Lは、トレッドゴム層11の内面11Bに配置される。繊維2Lは、環状構造体10とトレッドゴム層11との間に複数配置される。複数の繊維2Lの一部は、回転軸Jを囲むように配置される。複数の繊維2Lの一部は、回転軸Jと平行に配置される。
【0148】
本実施形態においては、繊維2Lが網目状に編まれている。内面11Bに配置される前に、繊維2Lが網目状に編まれてもよい。本実施形態においては、網目状に成形された繊維2Lが、トレッドゴム層11の内面11Bに配置される。
【0149】
本実施形態においても、環状構造体10とトレッドゴム層11との間に繊維2Lが配置されることにより、環状構造体10とトレッドゴム層11との間における気体空間の生成が抑制される。
【0150】
<第14実施形態>
第14実施形態について説明する。
図17は、本実施形態に係るトレッドゴム層11及び繊維2Mの一例を模式的に示す斜視図である。
【0151】
図17に示すように、繊維2Mの長さは、短い。繊維2Mは、所謂、短繊維である。繊維2Mは、回転軸Jと平行な方向に関する環状構造体10の寸法、及び回転軸J周りの方向に関する環状構造体10の寸法よりも短い。
【0152】
繊維2Mは、トレッドゴム層11の内面11Bに配置される。繊維2Mは、環状構造体10とトレッドゴム層11との間に複数配置される。複数の繊維2Mのそれぞれは、離れて配置される。すなわち、複数の繊維2Mは、間隔をあけて配置される。繊維2Mは、回転軸Jと平行な方向及び回転軸J周りの方向のそれぞれに関して、実質的に等しい密度で複数配置される。換言すれば、複数の繊維2Mは、内面11Bに均一に配置される。
【0153】
例えば、成形工程(ステップS2)において、トレッドゴム層11の内面11Bに接着剤を設けて接着剤層を形成する場合、その接着剤に繊維2Mが予め混合されていてもよい。繊維2Mが混合(分散)された接着剤が内面11Bに設けられることによって、繊維2Mを含む接着剤層が内面11Bに形成されてもよい。なお、内面11Bにプライマー層が設けられた後、そのプライマー層の上に接着剤層が設けられる場合、そのプライマー層を形成するための溶液(プライマー溶液)に繊維2Mが予め混合されていてもよいし、接着剤及びプライマー溶液の両方に繊維2Mが予め混合されていてもよい。
【0154】
内面11Bに接着剤層及び繊維2Mが配置された後、環状構造体10の少なくとも一部が、トレッドゴム層11の内面11Bと対向するように配置される。環状構造体10の外面10Aとトレッドゴム層11の内面11Bとが、接着剤層を介して接合される。トレッドゴム層11の内面11Bと環状構造体10の外面10Aとの間に複数の繊維2Mが配置されている状態で、トレッドゴム層11と環状構造体10とが結合される。
【0155】
本実施形態においても、環状構造体10とトレッドゴム層11との間に配置される繊維2Mにより、環状構造体10とトレッドゴム層11との間において気体が拡散されるため、環状構造体10とトレッドゴム層11との間における気体空間の生成が抑制される。
【0156】
<第15実施形態>
第15実施形態について説明する。以下の実施形態においては、環状構造体の例について説明する。
図18は、本実施形態に係る環状構造体101の一例を示す斜視図である。
図18において、環状構造体101は、凹凸部3を有する。凹凸部3は、環状構造体101の幅方向の両側のそれぞれに設けられる。凹凸部3の凸部は、尖っている。凹凸部3は、所謂、鋸刃状である。環状構造体101の幅方向の両側にトレッドゴム層11の少なくとも一部が配置される場合、凹凸部3は、トレッドゴム層11に食い込むことができる。これにより、環状構造体101とトレッドゴム層11との結合が強化される。
【0157】
<第16実施形態>
第16実施形態について説明する。
図19は、本実施形態に係る環状構造体102の一例を示す斜視図である。
図19において、環状構造体102は、外面102Aと、内面102Bと、外面102Aと内面102Bとを貫通する複数の貫通孔4とを有する。
【0158】
本実施形態において、環状構造体102の幅方向に関して、貫通孔4は、等間隔で複数配置される。また、環状構造体102の周方向に関して、貫通孔4は、等間隔で複数配置される。環状構造体102の幅方向及び周方向のそれぞれに関して、貫通孔4は、等しい密度で複数形成される。
【0159】
本実施形態においては、環状構造体102の外面102Aに接合されるトレッドゴム層11の少なくとも一部と、環状構造体102の内面102Bに接合されるカーカス部12とが、貫通孔4を介して接触可能である。トレッドゴム層11の内面11B及びカーカス部12の外面12Aの少なくとも一方に接着剤(接着剤層)が設けられている場合、トレッドゴム層11の内面11Bの少なくとも一部と、カーカス部12の外面12Aとは、貫通孔4を介して、接着剤(接着剤層)により接合される。これにより、トレッドゴム層11と環状構造体102との結合、及び環状構造体102とカーカス部12との結合のそれぞれが強化される。また、貫通孔4により、トレッドゴム層11と環状構造体102との間における気体の拡散、及び環状構造体102とカーカス部12との間における気体の拡散のそれぞれが促進される。したがって、トレッドゴム層11と環状構造体102との間、及び環状構造体102とカーカス部12との間において、気体空間が生成されることが抑制される。
【0160】
<第17実施形態>
第17実施形態について説明する。
図20は、本実施形態に係る環状構造体103の一例を示す斜視図である。
図20において、環状構造体103は、凹凸部3と、複数の貫通孔4とを有する。このように、
図18を参照して説明した構成要素と、
図19を参照して説明した構成要素とを組み合わせてもよい。
【0161】
<第18実施形態>
第18実施形態について説明する。
図21は、本実施形態に係る環状構造体104の一例を示す斜視図である。
図21において、環状構造体104は、複数の貫通孔4を有する。また、環状構造体104は、凹部5を有する。凹部5を、切欠部5、と称してもよい。凹部5は、環状構造体104の幅方向の両側のそれぞれに設けられる。凹部5は、環状構造体104の周方向に関して、間隔をあけて複数配置される。環状構造体104の幅方向の両側にトレッドゴム層11の少なくとも一部が配置される場合、トレッドゴム層11の少なくとも一部が、凹部5に食い込むことができる。これにより、環状構造体104とトレッドゴム層11との結合が強化される。
【0162】
<第19実施形態>
第19実施形態について説明する。
図22は、本実施形態に係る環状構造体105の一例を示す斜視図である。
図22において、環状構造体105は、複数の貫通孔4を有する。環状構造体105の周方向に関して、貫通孔4は、等間隔で複数配置される。環状構造体105の幅方向に関して、貫通孔4は、間隔をあけて配置される。環状構造体105の幅方向に関して、貫通孔4は、不等間隔で複数配置される。本実施形態において、環状構造体105の幅方向に関して、環状構造体105のエッジの近傍に配置される貫通孔4の間隔は、環状構造体105の中央に配置される貫通孔4の間隔よりも小さい。なお、環状構造体105の幅方向に関して、環状構造体105のエッジの近傍に配置される貫通孔4の間隔が、環状構造体105の中央に配置される貫通孔4の間隔よりも大きくてもよい。
【0163】
本実施形態においても、貫通孔4により、トレッドゴム層11と環状構造体105との結合、及び環状構造体105とカーカス部12との結合のそれぞれが強化される。また、貫通孔4により、トレッドゴム層11と環状構造体105との間における気体の拡散、及び環状構造体105とカーカス部12との間における気体の拡散のそれぞれが促進される。したがって、トレッドゴム層11と環状構造体105との間、及び環状構造体105とカーカス部12との間において、気体空間が生成されることが抑制される。
【0164】
<第20実施形態>
第20実施形態について説明する。
図23は、本実施形態に係る繊維2Nの一例を示す図である。本実施形態においては、貫通孔4を有する環状構造体(102など)に繊維2Nが配置される例について説明する。
【0165】
図23に示すように、繊維2Nは、環状構造体の外面側から貫通孔4に挿入された後、その貫通孔4に隣接する貫通孔4に環状構造体の内面側から挿入される。また、繊維2Nは、環状構造体の内面側から貫通孔4に挿入された後、その貫通孔4に隣接する貫通孔4に環状構造体の外面側から挿入される。すなわち、繊維2Nの少なくとも一部が環状構造体の外面側に配置される状態と、繊維2Nの少なくとも一部が環状構造体の内面側に配置される状態とが交互に繰り返されるように、繊維2Nは、複数の貫通孔4に順次挿入される。
【0166】
本実施形態によれば、環状構造体に貫通孔4が設けられるとともに、環状構造体の外面とトレッドゴム層11との間に繊維2Nが配置され、環状構造体の内面とカーカス部12との間に繊維2Nが配置されるため、トレッドゴム層11と環状構造体との間における気体空間の生成、及び環状構造体とカーカス部12との間における気体空間の生成が抑制される。
【0167】
<第21実施形態>
第21実施形態について説明する。
図24は、本実施形態に係る繊維2Pの一例を示す図である。本実施形態においては、貫通孔4を有する環状構造体(102など)に繊維2Pが配置される例について説明する。
【0168】
図24に示すように、繊維2Pは、環状構造体の外面において間隔をあけて配置される。繊維2Pは、複数の貫通孔4の少なくとも一部の貫通孔4の開口を通過するように配置される。なお、繊維2Pが、環状構造体の内面において間隔をあけて配置されてもよい。
【0169】
本実施形態においても、貫通孔4及び繊維2Pの作用により、トレッドゴム層11と環状構造体との間における気体空間の生成、及び環状構造体とカーカス部12との間における気体空間の生成が抑制される。
【0170】
<第22実施形態>
第22実施形態について説明する。
図25は、本実施形態に係るタイヤ1の一例を説明するための模式図である。
図25に示すように、タイヤ1は、外面10A及び内面10Bを有する円筒形状の環状構造体10と、少なくとも一部が環状構造体10の内面10Bと対向するように配置されるカーカス部12と、少なくとも一部が環状構造体10の外面10Aと対向するように配置されるトレッドゴム層11と、環状構造体10とカーカス部12との間に配置され、環状構造体10とカーカス部12との間において気体空間の生成を抑制するための繊維2と、を備えている。繊維2は、環状構造体10とカーカス部12との間に複数配置される。
図25に示す例においては、トレッドゴム層11と環状構造体10との間に繊維は配置されない。
図25に示すように、トレッドゴム層11と環状構造体10との間に繊維が配置されず、環状構造体10とカーカス部12との間に繊維2が配置されてもよい。本実施形態によれば、少なくとも、環状構造体10とカーカス部12との間における気体空間の生成が抑制される。
【0171】
本実施形態において、繊維2は、回転軸Jを囲むように配置されてもよい。繊維2は、回転軸Jと平行に配置されてもよい。繊維2は、回転軸Jと平行な方向に関する環状構造体10の寸法、及び回転軸J周りの方向に関する環状構造体10の寸法よりも短くてもよい。その繊維2が、回転軸Jと平行な方向及び回転軸J周りの方向のそれぞれに関して等しい密度で複数配置されてもよい。
【0172】
本実施形態において、繊維2は、環状構造体10の内面10Bにおける100mm四方の領域に少なくとも1本配置され、環状構造体10の内面10Bにおける10mm四方の領域に5本以上配置されなくてもよい。
【0173】
なお、貫通孔4を有する環状構造体(102など)とカーカス部12との間に繊維2が配置され、その貫通孔4を有する環状構造体(102など)とトレッドゴム層11との間に繊維が配置されないようにしてもよい。
【0174】
図25に示すタイヤ1の成形工程(ステップS2)においては、トレッドゴム層11の少なくとも一部を、環状構造体10の外面10Aと対向するように配置する工程と、カーカス部12の少なくとも一部と環状構造体10の内面10Bとの間に繊維2を配置して、カーカス部12の少なくとも一部と環状構造体10の内面10Bとを対向させる工程と、が行われる。加硫工程(ステップS3)においては、環状構造体10とカーカス部12との間に繊維2が配置された状態でカーカス部12を加硫して、環状構造体10とカーカス部12との間における気体空間の生成を抑制しつつ、カーカス部12と環状構造体10とを結合させる工程が行われる。
【0175】
図25に示すタイヤ1の成型工程(ステップS2)において、環状構造体10とトレッドゴム層11とが接合された後、環状構造体10とカーカス部12との間に繊維2が配置された状態で、環状構造体10とカーカス部12とが接合されてもよい。なお、環状構造体10とカーカス部12との間に繊維2が配置された状態で、環状構造体10とカーカス部12とが接合された後、環状構造体10とトレッドゴム層11とが接合されてもよい。なお、環状構造体10とカーカス部12との接合と、環状構造体10とトレッドゴム層11との接合とが同時に行われてもよい。
【0176】
なお、環状構造体10とカーカス部12との間に繊維2が配置された状態で、環状構造体10とカーカス部12とを接合する場合、繊維2と環状構造体10の内面10Bとを対向させた後、カーカス部12と環状構造体10の内面10Bとを対向させてもよいし、カーカス部12と環状構造体10の内面10Bとを対向させた後、繊維2と環状構造体10の内面10Bとを対向させてもよいし、繊維2と環状構造体10の内面10Bとを対向させることと同時に、カーカス部12と環状構造体10の内面10Bとを対向させてもよい。
【0177】
なお、上述の各実施形態において、カーカス部12は、環状構造体10の内面10Bと対向しなくてもよい。カーカス部12は、環状構造体10の内面10Bと対向する位置に配置されず、Y軸方向(タイヤ1の幅方向)に関して、環状構造体10の外側のみに配置されてもよい。