特許第6299143号(P6299143)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6299143
(24)【登録日】2018年3月9日
(45)【発行日】2018年3月28日
(54)【発明の名称】電子鍵盤楽器及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G10G 1/02 20060101AFI20180319BHJP
   G10H 1/00 20060101ALI20180319BHJP
   G10H 1/34 20060101ALI20180319BHJP
   G10H 1/18 20060101ALI20180319BHJP
【FI】
   G10G1/02
   G10H1/00 101Z
   G10H1/34
   G10H1/18 Z
【請求項の数】9
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-219137(P2013-219137)
(22)【出願日】2013年10月22日
(65)【公開番号】特開2015-81982(P2015-81982A)
(43)【公開日】2015年4月27日
【審査請求日】2016年8月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004075
【氏名又は名称】ヤマハ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125254
【弁理士】
【氏名又は名称】別役 重尚
(74)【代理人】
【識別番号】100118278
【弁理士】
【氏名又は名称】村松 聡
(72)【発明者】
【氏名】池上 利也
(72)【発明者】
【氏名】布施 威
【審査官】 大野 弘
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−256489(JP,A)
【文献】 特開2006−195021(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10G 1/02
G10H 1/00
G10H 1/18
G10H 1/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の黒鍵及び複数の白鍵を有する発光機能付きの演奏操作子を有し、3つの階層による設定手順によって学習メニューが決定される電子鍵盤楽器であって、
複数の第1階層用操作子と、
最上位である第1の階層において、当該第1の階層より下位の階層である第2の階層にて選択可能となる複数の設定メニューを、前記複数の第1階層用操作子のうち操作された第1階層用操作子に応じて決定すると共に、該決定した複数の設定メニューのそれぞれを前記複数の黒鍵の少なくとも一部に割り当て、該割り当てた黒鍵を他の黒鍵と識別可能なように発光させる第1の設定手段と、
前記2の階層において、最下位の第3の階層にて選択可能となる複数の設定メニューを、前記第1の設定手段によって当該第2の階層で選択可能とされた設定メニューが割り当てられている黒鍵のうち操作された黒鍵に応じて決定すると共に、該決定した複数の設定メニューのそれぞれを前記複数の白鍵の少なくとも一部に割り当て、該割り当てた白鍵を他の白鍵と識別可能なように発光させる第2の設定手段と、
前記第3の階層において、前記第2の設定手段によって当該第3の階層で選択可能とされた設定メニューが割り当てられている白鍵のうち操作された白鍵に応じて、最終的な学習メニューを決定するメニュー決定手段と、
を有することを特徴とする電子鍵盤楽器。
【請求項2】
前記メニュー決定手段により学習メニューが決定された後、前記学習メニューの実行開始前に、前記学習メニューに対応するフレーズの自動再生が開始されることを特徴とする請求項1記載の電子鍵盤楽器。
【請求項3】
前記メニュー決定手段により学習メニューが決定された後、前記学習メニューの実行開始前に、前記学習メニューに対応するフレーズを演奏する際の運指範囲に対応する鍵が発光することを特徴とする請求項1または2記載の電子鍵盤楽器。
【請求項4】
前記メニュー決定手段により学習メニューが決定されたことに応じて、演奏操作子の全てが、演奏操作を入力するための操作子として機能することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の電子鍵盤楽器。
【請求項5】
記第1の階層においては学習内容の大区分が選択され、前記第2の階層においては学習対象となる曲が選択され、記第3の階層では学習対象となる曲のうちの一部のフレーズが選択されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の電子鍵盤楽器。
【請求項6】
前記メニュー決定手段により学習メニューが一旦決定された後、ユーザによる操作により、決定とされる学習メニューを、前記第3の階層で選択可能となっていた設定メニューのうち予め定められた順番に従った次の設定メニューに変更するための変更操作子を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の電子鍵盤楽器。
【請求項7】
前記第3の階層において、前記第1階層用操作子のいずれかが操作されたことに応じて前記第1の階層へ戻ることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の電子鍵盤楽器。
【請求項8】
前記学習メニューに対応するフレーズは複数あり、
ユーザが前記フレーズを演奏する際に前記運指範囲に適した鍵を押下したことに応じて、練習対象を次のフレーズに進める制御手段を有することを特徴とする請求項3記載の電子鍵盤楽器。
【請求項9】
複数の黒鍵及び複数の白鍵を有する発光機能付きの演奏操作子と複数の第1階層用操作子とを有する電子鍵盤楽器において複数の階層による設定手順によって学習メニューを決定する学習メニュー決定方法をコンピュータに実行させるためのプログラムであって、
前記学習メニュー決定方法は、
最上位である第1の階層において、当該第1の階層より下位の階層である第2の階層にて選択可能となる複数の設定メニューを、前記複数の第1階層用操作子のうち操作された第1階層用操作子に応じて決定すると共に、該決定した複数の設定メニューのそれぞれを前記複数の黒鍵の少なくとも一部に割り当て、該割り当てた黒鍵を他の黒鍵と識別可能なように発光させる第1の設定ステップと、
前記2の階層において、最下位の第3の階層にて選択可能となる複数の設定メニューを、前記第1の設定ステップによって当該第2の階層で選択可能とされた設定メニューが割り当てられている黒鍵のうち操作された黒鍵に応じて決定すると共に、該決定した複数の設定メニューのそれぞれを前記複数の白鍵の少なくとも一部に割り当て、該割り当てた白鍵を他の白鍵と識別可能なように発光させる第2の設定ステップと、
前記第3の階層において、前記第2の設定ステップによって当該第3の階層で選択可能とされた設定メニューが割り当てられている白鍵のうち操作された白鍵に応じて、最終的な学習メニューを決定するメニュー決定ステップと、
を有することを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光機能付きの演奏操作子を有する電子鍵盤楽器及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、楽器において、機能等のメニュー設定を階層的に行う技術が知られており、演奏に用いられる演奏操作子を機能設定に利用する楽器も知られている(下記特許文献1)。
【0003】
この楽器においては、例えば、音色、音量を設定する際、音色、音量用の機能指示用のボタンを押すと、黒鍵に機能が割り当てられ、予め定められた黒鍵が、音色番号等を入力するためのテンキーやエンターキーとして利用できる。白鍵には機能設定の割り当てはされず、白鍵を押下すると、現在の設定状態にある音色や音量による楽音が発生し、これらの設定状態を耳で随時確認することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−325770号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の楽器では、2階層しか想定されておらず、階層数が増えていくと演奏操作子を利用した設定はわかりにくくなるおそれがある。また、いずれの機能を設定する際にも、黒鍵に割り当てられる機能は基本的にテンキー等で固定であり、自由度が低く、階層数が増える場合にも対応しにくい。しかも、特許文献1の楽器は、メニュー設定に鍵の発光機能を利用したものでもない。
【0006】
本発明は上記従来技術の問題を解決するためになされたものであり、その目的は、鍵発光機能を利用して、高い自由度を有する階層的なメニュー設定をわかりやすい操作で行わせることができる電子鍵盤楽器及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために本発明の請求項1の電子楽器は、複数の黒鍵及び複数の白鍵を有する発光機能付きの演奏操作子(K)を有し、3つの階層による設定手順によって学習メニューが決定される電子鍵盤楽器であって、複数の第1階層用操作子と、最上位である第1の階層において、当該第1の階層より下位の階層である第2の階層にて選択可能となる複数の設定メニューを、前記複数の第1階層用操作子のうち操作された第1階層用操作子に応じて決定すると共に、該決定した複数の設定メニューのそれぞれを前記複数の黒鍵の少なくとも一部に割り当て、該割り当てた黒鍵を他の黒鍵と識別可能なように発光させる第1の設定手段(5)と、前記2の階層において、最下位の第3の階層にて選択可能となる複数の設定メニューを、前記第1の設定手段によって当該第2の階層で選択可能とされた設定メニューが割り当てられている黒鍵のうち操作された黒鍵に応じて決定すると共に、該決定した複数の設定メニューのそれぞれを前記複数の白鍵の少なくとも一部に割り当て、該割り当てた白鍵を他の白鍵と識別可能なように発光させる第2の設定手段(5)と、前記第3の階層において、前記第2の設定手段によって当該第3の階層で選択可能とされた設定メニューが割り当てられている白鍵のうち操作された白鍵に応じて、最終的な学習メニューを決定するメニュー決定手段(5)と、を有することを特徴とする。
【0008】
上記目的を達成するために本発明の請求項のプログラムは、複数の黒鍵及び複数の白鍵を有する発光機能付きの演奏操作子と複数の第1階層用操作子とを有する電子鍵盤楽器において複数の階層による設定手順によって学習メニューを決定する学習メニュー決定方法をコンピュータに実行させるためのプログラムであって、前記学習メニュー決定方法は、最上位である第1の階層において、当該第1の階層より下位の階層である第2の階層にて選択可能となる複数の設定メニューを、前記複数の第1階層用操作子のうち操作された第1階層用操作子に応じて決定すると共に、該決定した複数の設定メニューのそれぞれを前記複数の黒鍵の少なくとも一部に割り当て、該割り当てた黒鍵を他の黒鍵と識別可能なように発光させる第1の設定ステップと、前記2の階層において、最下位の第3の階層にて選択可能となる複数の設定メニューを、前記第1の設定ステップによって当該第2の階層で選択可能とされた設定メニューが割り当てられている黒鍵のうち操作された黒鍵に応じて決定すると共に、該決定した複数の設定メニューのそれぞれを前記複数の白鍵の少なくとも一部に割り当て、該割り当てた白鍵を他の白鍵と識別可能なように発光させる第2の設定ステップと、前記第3の階層において、前記第2の設定ステップによって当該第3の階層で選択可能とされた設定メニューが割り当てられている白鍵のうち操作された白鍵に応じて、最終的な学習メニューを決定するメニュー決定ステップと、を有することを特徴とする。
【0009】
なお、上記括弧内の符号は例示である。
【0010】
なお、請求項記載のプログラムを格納したコンピュータで読み取り可能な記憶媒体は、本発明を構成する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、鍵発光機能を利用して、高い自由度を有する階層的なメニュー設定をわかりやすい操作で行わせることができる。
【0012】
請求項2によれば、学習メニューの決定が報知されると共に、ユーザは学習の準備ができる。
【0013】
請求項3によれば、学習開始前に運指範囲を把握させることができる。
【0014】
請求項4によれば、メニュー決定が完了して通常の演奏入力が可能な状態となる。
【0015】
請求項によれば、学習メニューを順次シフトさせて切り替えることができ、利便性が高い。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施の形態に係る電子楽器の全体構成を示すブロック図である。
図2】電子楽器の主要部の模式的平面図(図(a))、1つの鍵と発光部との関係を示す図(図(b))である。
図3】第2、第3の階層における鍵盤部の発光状態の一例を示す図(図(a)、(b))である。
図4】学習メニュー決定処理のフローチャートである。
図5】ステップ練習の処理のフローチャートである。
図6】変形例の電子楽器の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0018】
図1は、本発明の一実施の形態に係る電子楽器の全体構成を示すブロック図である。図2(a)は、本電子楽器の主要部の模式的平面図である。
【0019】
本電子楽器は、電子鍵盤楽器として構成され、図1に示すように、検出回路3、検出回路4、ROM6、RAM7、タイマ8、表示装置9、外部記憶装置10、MIDIインターフェイス(MIDII/F)11、通信インターフェイス(通信I/F)12、発光部19、音源回路13及び効果回路14が、バス16を介してCPU5にそれぞれ接続されて構成される。
【0020】
さらに、検出回路3には、演奏操作子1が接続され、検出回路4には、各種情報を入力するための複数のスイッチを含む設定操作子2が接続されている。演奏操作子1には、音高情報を入力するための鍵盤部KBにおける鍵K(白鍵WK、黒鍵BK)が含まれ、設定操作子2には、メニュースイッチ(SW)21、22、23、シフトスイッチ(SW)24、25が含まれる(図2(a))。
【0021】
表示装置9は液晶ディスプレイ(LCD)等で構成され、楽譜や文字等の各種情報を表示する。CPU5にはタイマ8が接続され、MIDII/F11には他のMIDI機器100が接続されている。通信I/F12には通信ネットワーク101を介してサーバコンピュータ102が接続され、音源回路13には効果回路14を介してサウンドシステム15が接続されている。
【0022】
検出回路3は演奏操作子1の操作状態を検出し、検出回路4は設定操作子2の操作状態を検出する。CPU5は、本装置全体の制御を司る。ROM6は、CPU5が実行する制御プログラムや各種テーブルデータ等を記憶する。RAM7は、演奏データ、テキストデータ等の各種入力情報、各種フラグやバッファデータ及び演算結果等を一時的に記憶する。タイマ8は、タイマ割り込み処理における割り込み時間や各種時間を計時する。外部記憶装置10は、上記制御プログラムを含む各種アプリケーションプログラムや各種楽曲データ、各種データ等を記憶する。
【0023】
MIDI I/F11は、他のMIDI機器100等の外部装置からのMIDI(Musical Instrument Digital Interface)信号を入力したり、MIDI信号を外部装置に出力したりする。通信I/F12は、通信ネットワーク101を介して、例えばサーバコンピュータ102とデータの送受信を行う。音源回路13は、演奏操作子1から入力された演奏データや予め設定された演奏データ等を楽音信号に変換する。効果回路14は、音源回路13から入力される楽音信号に各種効果を付与し、DAC(Digital-to-Analog Converter)やアンプ、スピーカ等のサウンドシステム15は、効果回路14から入力される楽音信号等を音響に変換する。
【0024】
外部記憶装置10としては、例えば、USBメモリ、フレキシブルディスクドライブ(FDD)、ハードディスクドライブ(HDD)、CD−ROMドライブ及び光磁気ディスク(MO)ドライブ等を挙げることができる。ROM6に制御プログラムが記憶されていない場合には、この外部記憶装置10に制御プログラムを記憶させておき、それをRAM7に読み込むことにより、ROM6に制御プログラムを記憶している場合と同様の動作をCPU5にさせることができる。
【0025】
図2(b)は、1つの鍵Kと発光部19との関係を示す図である。本楽器は、鍵盤部KBの各鍵Kに発光機能を備えている。この発光機能は、各鍵Kが個別に発光できればよく、公知の構成を採用できる。例えば、図2(b)に示すように、各鍵Kの下方に設けたLEDからなる発光部19が鍵Kを下方から照射し、鍵Kを透過する光が視認される構成とする。発光部19の発光は、不図示の発光回路を介してCPU5により制御される。しかしこれに限定されず、各鍵Kの後方に設けたLEDから押鍵面に光を照射する構成等も考えられる。あるいは、鍵Kの後方のパネル部の縁部に直線的に一列に配列したLEDを発光させてもよい。発光機能を実現する構成は限定されず、CPU5が発光を制御できればよい。
【0026】
この発光機能は、演奏データに対応する演奏ガイド用のデータに従って、次に押鍵すべき鍵Kが指示される、いわゆる演奏操作ガイド機能に用いられる。また、通常のマニュアル演奏時には、押鍵された鍵Kを発光させるのに用いることもできる。
【0027】
さらに、本実施の形態では、鍵発光機能が、後述する学習メニューの決定及びそれの実行にも利用される。学習メニューの決定は、複数の階層による設定手順によってなされる。学習メニューの階層的設定について、ここで概説しておく。
【0028】
学習メニューの決定は、一例として3つの階層によってなされる。最上位の第1の階層では、学習内容を大別する大区分の設定メニューとして、「弾く」、「聴く」、「慣れる」のいずれかが選択される。図2(a)に示すメニュースイッチ21、22、23は、それぞれ、「弾く」、「聴く」、「慣れる」に関する学習メニューを設定するための「第1階層スイッチ」である。第2の階層で中区分が選択され、最下位である第3の階層で具体的な学習メニューが最終的に決定される。
【0029】
図3(a)、(b)は、それぞれ、第2、第3の階層における鍵盤部KBの発光状態の一例を示す図である。
【0030】
第2の階層では、全黒鍵BKのうち、第1の階層で押下された第1階層スイッチ(スイッチ21〜23)に対応する複数の黒鍵BKが発光する。図3(a)の例では、メニュースイッチ21(弾くSW)がオンされたことで、低音側から5つの黒鍵BKが発光する。これら5つの黒鍵BKには、中区分の設定メニューが割り当て(アサイン)される。メニュースイッチ21がオンされた場合を例にとると、5つの黒鍵BK(アサイン黒鍵BK1〜BK5)には、光ガイドによる演奏用の練習曲がアサインされる。ユーザは、これらアサイン黒鍵BK1〜BK5から所望の黒鍵BKを押下することで、学習対象となる練習曲を選択することができる。従って、アサイン黒鍵BK1〜BK5は、「第2階層スイッチ」として機能する。
【0031】
第3の階層では、第2の階層で押下された第2階層スイッチ(アサイン黒鍵BK1〜BK5のいずれか)に対応する複数の白鍵WKが発光する。図3(b)の例では、アサイン黒鍵BK1がオンされたことで、低音側から7つの白鍵WKが発光する。これら7つの白鍵WKには、小区分の設定メニューが割り当て(アサイン)される。メニュースイッチ21の後にアサイン黒鍵BK1がオンされた場合を例にとると、7つの白鍵WK(アサイン白鍵WK1〜WK7)には、練習曲を複数(この例では7つ)に区分したうちの1つである練習ステップが低音側から順にアサインされる。ユーザは、これらアサイン白鍵WK1〜WK7から所望の白鍵WKを押下することで、練習ステップを選択し、実行することができる。従って、アサイン白鍵WK1〜WK7は、「第3階層スイッチ」として機能する。
【0032】
なお、アサイン黒鍵、白鍵の発光の際には、一旦点滅してその後点灯するようにしてもよい。シフトスイッチ24、25は、最下位の階層で選択可能となっていた設定メニューのうち予め定められた順番に従った次の設定メニューに変更するための変更操作子として機能する。例えば、アサイン白鍵WK3のオンにより現在決定されている練習ステップの練習中にシフトスイッチ25をオンすると、アサイン白鍵WK4をオンした場合に選択されるべき練習ステップに、決定状態が切り替わる。
【0033】
図4は、学習メニュー決定処理のフローチャートである。この処理は、本楽器の電源オン時に開始され、CPU5により実行されるが、所定の操作子(例えば、図示しないパネル上の学習モード選択スイッチ)のオンにより開始されるとしてもよい。
【0034】
まず、初期設定を実行する(ステップS101)。すなわち、所定プログラムの実行を開始し、各種レジスタに初期値を設定する。次に、ステップS102〜S104で、メニュースイッチ21、22、23のいずれがオンされたかによって、処理が分岐する。メニュースイッチ21(弾くSW)がオンされると、ステップS102からステップS105に進む。この場合、学習内容は後述のステップの練習となる。そこでステップS105では、メニュースイッチ21に対応して予め定められた複数の黒鍵BKに、選択可能な練習曲を1つずつ割り当てる(アサインする)。
【0035】
次に、ステップS106では、アサイン黒鍵BK(例えばBK1〜BK5)を同時に複数回(例えば3回)点滅させた後、点灯状態とする(図3(a)参照)。それと共に、現在の状態を表す状態フラグSTTに、第2の階層であることを示す「1」を設定する。
【0036】
次に、ステップS107では、点灯状態にあるアサイン黒鍵BK(第2階層スイッチ)のいずれかが押下されたか否かを判別する。その判別の結果、押下がない場合は、処理をステップS111に進める一方、いずれかが押下された場合は、ステップS108に進み、点灯状態にあるアサイン黒鍵BKを消灯する。
【0037】
次に、ステップS109では、押下されたアサイン黒鍵BKに割り当てられている練習曲に対応して予め定められた複数の白鍵WKに、練習ステップを1ステップずつ割り当てる(アサインする)。練習ステップは、上記練習曲を複数に区分したものである。次に、ステップS110では、アサイン白鍵WK(例えばWK1〜WK7)を同時に複数回(例えば3回)点滅させた後、点灯状態とする(図3(b)参照)。それと共に、選択状態にある練習曲の自動再生を開始する。練習曲はエンドまで再生されると再び先頭から自動再生される。自動再生の際、練習曲の進行に従って各鍵Kの発光もなされる。さらに、状態フラグSTTに、第3の階層であることを示す「2」を設定する。
【0038】
次に、ステップS111では、STT=2で且つ、点灯状態にあるアサイン白鍵WK(第3階層スイッチ)のいずれかが押下されたか否かを判別する。その判別の結果、STT=2でないか、またはアサイン白鍵WKの押下がない場合は処理をステップS112に進める。ステップS112では、第1階層スイッチ(メニュースイッチ21〜23のいずれか)がオンされたか否かを判別する。その判別の結果、第1階層スイッチのオンがない場合は、処理をステップS107に戻す一方、第1階層スイッチのオンがあれば処理をステップS102に戻す。
【0039】
一方、ステップS111で、STT=2で且つアサイン白鍵WKのいずれかが押下された場合は、ステップS113に進み、点灯状態にあるアサイン白鍵WKを消灯する。それと共に、再生中の練習曲の再生を停止し、状態フラグSTTに、学習メニューが決定状態にあることを示す「3」を設定する。STT=3となると、各鍵Kは本来の演奏操作子に復帰し、押鍵されればそれ対応する楽音が発生する状態となる。
【0040】
次に、ステップS114では、押下されたアサイン白鍵WKに割り当てられている練習ステップを今回の練習ステップとして決定し、練習(図5のステップ練習)を実行する。なお、練習ステップは、例えば、練習曲の全小節が予め区分されたものであり、1ステップの単位は数小節(例えば2〜10小節)程度のフレーズとされている。ステップS114の処理後はステップS109に処理を戻す。
【0041】
なお、ステップS110では、練習曲の自動再生はアサイン白鍵WKの点灯後に開始されるとしたので、点滅中には学習状態の戻りや進みの遷移ができない。そこで、押下されたアサイン黒鍵BKによって曲が選択されたことを明確に知らせるために、アサイン白鍵WKの点滅開始と同時に、選択状態とされた練習曲の自動再生あるいは曲頭の自動再生を開始してもよい。その場合の点滅や点灯はタイマ処理にて制御すればよい。そして、ステップS111では、アサイン白鍵WKの点滅継続中であっても、STT=2で且つアサイン白鍵WKのいずれかが押下された場合は、ステップS113に進むようにしてもよい。そのようにすれば、ステップS114のステップ練習へとより効率よく移行することができる。
【0042】
前記ステップS103の判別の結果、メニュースイッチ22(聴くSW)がオンされると、ステップS115に進む。この場合、学習内容は、楽曲のお手本演奏を聴くモードとなる。ステップS115においては、ステップS105〜S114に類似した処理が実行される。ただし、第2の階層では、聴く曲のジャンル選択がなされ、第3の階層では、ジャンル中の再生曲の選択がなされる。
【0043】
前記ステップS104の判別の結果、メニュースイッチ23(慣れるSW)がオンされると、ステップS116に進む。この場合、学習内容は、タッチ練習モードとなる。ステップS116では、ステップS105〜S114に類似した処理が実行される。ただし、第2の階層では、タッチ練習(押鍵強弱の練習)をするための曲のジャンル選択がなされ、第3の階層では、ジャンル中のタッチ練習用の曲の選択がなされる。ステップS115またはステップS116の後は、処理をステップS102に戻す。
【0044】
図5は、図4のステップS114で実行されるステップ練習の処理のフローチャートである。
【0045】
まず、ステップS201では、シフトスイッチ24、25のいずれかが押下されたか否かを判別する。その判別の結果、シフトスイッチ24、25のいずれかが押下された場合は、次のステップに移行する(ステップS214)。すなわち、シフトスイッチ24、25の押下によって、現在の練習曲における現在練習対象となっている練習ステップの1つ前、1つ後の練習ステップに、練習対象が切り替わる。従って、シフトスイッチ24またはシフトスイッチ25を押下する度に、同じ練習曲において、練習対象とする練習ステップを1つずつ前後に移行させることができる。
【0046】
次に、ステップS202では、練習対象となっている練習ステップのフレーズをさらに複数に区分した小フレーズを自動再生する。その際、小フレーズの進行に従って各鍵Kの発光もなされ、ユーザはそれを見て演奏のお手本にすることができる。小フレーズの単位は、例えば、0.5〜4小節程度である。最初は、練習ステップのうちの先頭の小フレーズが再生される。
【0047】
次に、ステップS203で、今回の小フレーズの再生が終了したか否かを判別し、再生が終了していなければ処理をステップS201に戻す一方、再生が終了すると、ステップS204に進む。そして、練習ステップのフレーズを構成する各小フレーズにおける運指範囲を取得する。運指範囲は各小フレーズから抽出して取得してもよい。あるいは、予め各練習曲の各練習ステップに対応してROM6等に記憶されている運指範囲データの読み出しにより取得してもよい。ここで、運指範囲は、原則として各小フレーズにおける最低音と最高音とが相当する。
【0048】
次に、ステップS205では、取得され、且つ未表示の運指範囲のデータが残っているか否かを判別する。その判別の結果、未表示の運指範囲のデータが残っている場合は、今回の小フレーズの運指範囲を発光表示する。すなわち、最低音と最高音に相当する2つの鍵Kを点灯させる。それと同時に対応する音高の楽音を発生させる。ユーザは、発光した鍵Kを押鍵し、運指範囲を実際に認識できる。一方、取得され、且つ未表示の運指範囲のデータが残っていない場合は、最後の小フレーズの練習が終了したので、処理をステップS212に進める。
【0049】
次に、ステップS207では、マニュアルキーオン、すなわちユーザによる鍵Kの押鍵操作がされたか否かを判別し、マニュアルキーオンがあるまでその判別を継続し、マニュアルキーオンがあると、押鍵された鍵Kの楽音を発生させる(ステップS208)。そして、ステップS209では、押鍵操作された鍵Kが運指キー(運指範囲に対応する鍵K)と一致するか否かを判別する。その判別の結果、押鍵操作された鍵Kが運指キーと一致しない場合は、やり直しをさせるべく、処理をステップS207に戻す一方、押鍵操作された鍵Kが運指キーと一致した場合は、正しい鍵Kが押下されたので、今回の練習ステップにおける次の(未練習の)小フレーズが有るか否かを判別する(ステップS210)。
【0050】
その判別の結果、次の(未練習の)小フレーズが有る場合は、練習対象を1つ進め、次の小フレーズを練習対象とする(ステップS211)。その後、処理をステップS201に戻す。一方、次の(未練習の)小フレーズが無い場合は、最後の小フレーズの練習が終了したので、処理をステップS212に進める。
【0051】
ステップS212では、今回のステップ練習が終了したので、通常の光ガイドによる演奏練習へと移行する。これは、今回の練習対象のステップにつき最初から一通り、ガイド演奏を行うモードである。本実施の形態では、この通常の光ガイド演奏の前段階で、ステップS206〜S211で運指範囲を実際に押鍵させているので、運指(指運び)のイメージがつかみすい。
【0052】
次に、ステップS213では、光ガイド演奏が、今回の練習ステップのエンドまで行われたか否かを判別し、エンドまで行われるまでステップS212の処理を繰り返し、エンドまで行われると、図5の処理を終了させる。
【0053】
ところで、図4図5のフローの実行中の任意の時に、所定の操作子の押下によって、学習メニュー決定処理を抜けることができる。その場合、状態フラグSTTはリセットされ、STT=0となる。
【0054】
なお、アサイン黒鍵BK、アサイン白鍵WKは発光させ、それ以外の黒鍵BKや白鍵WKは発光させないとした。しかし、これに限られず、アサイン黒鍵BK、アサイン白鍵WKを他の(アサイン鍵以外の)操作子と識別可能なように発光させればよい。例えば、点滅状態や発光色を他の操作子と異ならせるようにしてもよい。
【0055】
本実施の形態によれば、第1の階層において、第1階層スイッチ(メニュースイッチ21、22、23)のうちオンされたスイッチに応じて、第2の階層にて選択可能となる複数の設定メニューが決定され、これら設定メニューが割り当てられたアサイン黒鍵BKを他の演奏操作子と識別可能なように発光させる。
【0056】
次に、第2の階層において、オンされたアサイン黒鍵BKに応じてそれより第3の階層にて選択可能となる複数の設定メニューが決定され、これら設定メニューが割り当てられたアサイン白鍵WKを他の演奏操作子と識別可能なように発光させる。
【0057】
そして、最下位の第3の階層において、オンされたアサイン白鍵WKに応じて、最終的な学習メニューが決定される。よって、設定専用の操作子を設けることなく、鍵Kの発光機能を利用して、高い自由度を有する階層的なメニュー設定をわかりやすい操作で行わせることができる。
【0058】
また、学習メニューの実行開始前に、学習メニューに対応するフレーズの自動再生が開始される(図4のステップS113)ので、学習メニュー(練習対象のステップ)の決定が報知されると共に、ユーザは学習の準備ができる。
【0059】
また、学習メニューの実行開始前に、学習メニューに対応するフレーズを演奏する際の運指範囲に対応する鍵Kが発光し(図5のステップS206)、合致する押鍵をさせる(図5のステップS209)ので、学習開始前に運指範囲を把握させることができる。
【0060】
また、学習メニューが決定されたことに応じて、鍵Kの全てが、演奏操作を入力するための操作子として機能するので(図4のステップS113)、メニュー決定が完了して通常の演奏入力が可能な状態となる。
【0061】
また、学習メニューが一旦決定された後、シフトスイッチ24、25のユーザによる操作により、決定とされる学習メニューを、選択可能となっていた設定メニューのうち予め定められた順番に従った次の設定メニューに変更できる(図5のステップS201)ので、学習メニューを順次シフトさせて切り替えることができ、利便性が高い。
【0062】
なお、第2、第3の階層において、設定メニューが割り当てられる鍵Kや鍵Kの数は例示に限定されない。低音側から割り当てることも必須でない。また、第2の階層で白鍵WKを利用し、第3の階層で黒鍵BKを利用してもよい。
【0063】
なお、本実施の形態では、学習メニューの決定を3つの階層にて行うことを例示したが、階層は2以上であればよく、第2の階層が最下位となってもよく、あるいは4階層以上であってもよい。例えば、2段鍵盤型の鍵盤楽器に適用する場合、各段の黒鍵、白鍵を1つの階層用に用いて階層数を増やすことができる。従って、第2以降から最下位の階層において、演奏操作子(鍵K)を、選択可能なメニューの発光による報知と決定の入力とに用いるようにすればよい。また、階層の数は固定でなくてもよい。すなわち、大区分の設定メニューの各々における階層数は共通でなくてもよく、第1の階層で操作した操作子によって階層数が決まるようにしてもよい。
【0064】
なお、第1階層スイッチとして、「弾く」、「聴く」、「慣れる」に対応するメニュースイッチ21、22、23の3つを例示したが、「弾く」と「聴く」を1つのスイッチにまとめて共用としもよい。共用となるスイッチをオンした場合については、上位の数階層で、「聴く」のオンの場合と同様の曲選択や自動再生がなされ、その後の下位の数階層で、「弾く」のオンの場合の曲選択後の階層処理と同様の練習ステップの選択等がなされるとする。なお、その場合、「聴く」の機能による自動再生中に「弾く」の機能へ移行させるために、シフトスイッチ24、25を利用できるようにしてもよい。
【0065】
なお、第1階層スイッチとしてメニュースイッチ21、22、23を例示したが、黒鍵BKの一部または白鍵WKの一部を第1階層スイッチとして利用してもよい。その際、2つ以上の操作子の組み合わせによる同時オンによって、それに応じた設定メニューが選択されるとしてもよい。
【0066】
また、第1階層スイッチの数や第1階層スイッチとなる組み合わせの数は3つに限定されない。従って、学習メニューの大区分の数も4以上設けてもよい。例えば、例示した3つの大区分以外に、学習メニューとして学習ゲーム等を採用してもよい。その場合、第2の階層でコンテンツジャンルを選択し、第3の階層で具体的なコンテンツ(ゲーム)を選択する、という構成が考えられる。
【0067】
なお、本実施の形態の電子楽器は、鍵盤楽器の形態としたが、それに限らず、弦楽器タイプ、管楽器タイプ、打楽器タイプ等の形態でもよい。また、音源装置、自動演奏装置等を1つの電子楽器本体に内蔵したものに限らず、それぞれが別体の装置であり、MIDII/Fや各種ネットワーク等の通信手段を用いて各装置を接続するものであってもよい。
【0068】
また、本発明の電子楽器には、図6の変形例として示す入力装置のようなものも含まれる。図6は、変形例の電子楽器の模式図である。この電子楽器30は、主に入力装置として構成され、それぞれ複数の操作子でなる、第1階層スイッチ31、第2階層スイッチ32、第3階層スイッチ33を有する。またシフトスイッチ34も備える。不図示のアンプやスピーカに接続して、スイッチ31、32、33を、いずれもドラム音発生用の演奏操作子として用いることができる。
【0069】
学習メニューの設定に関し、図2に示した鍵盤楽器に対応させると、第1階層スイッチ31は、メニュースイッチ21、22、23に相当し、第2階層スイッチ32、第3階層スイッチ33は、それぞれ黒鍵BK、白鍵WKに相当する。シフトスイッチ34は、シフトスイッチ24、25に相当する。
【0070】
このように、本発明の電子楽器には、演奏操作子となり得るものを有する装置が含まれる。従って、呼称としては、電子楽器に限られず、ゲーム装置、携帯型通信端末等であってもよい。
【0071】
なお、本発明を達成するためのソフトウェアによって表される制御プログラムを記憶した記憶媒体を、本楽器に読み出すことによって同様の効果を奏するようにしてもよく、その場合、記憶媒体から読み出されたプログラムコード自体が本発明の新規な機能を実現することになり、そのプログラムコードを記憶した記憶媒体は本発明を構成することになる。また、プログラムコードを伝送媒体(例えば、通信I/F12)等を介して供給してもよく、その場合は、プログラムコード自体が本発明を構成することになる。なお、これらの場合の記憶媒体としては、ROMのほか、フロッピディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、CD−R、磁気テープ、不揮発性のメモリカード等を用いることができる。
【0072】
以上、本発明をその好適な実施形態に基づいて詳述してきたが、本発明はこれら特定の実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の様々な形態も本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0073】
5 CPU(第1の設定手段、第2の設定手段、メニュー決定手段)、 BK 黒鍵(演奏操作子)、 WK 白鍵(演奏操作子)、 21、22、23 メニュースイッチ(操作子)、 24、25、34 シフトスイッチ(変更操作子)、 31 第1階層スイッチ(操作子)、 32 第2階層スイッチ(演奏操作子)、 33 第3階層スイッチ(演奏操作子)
図1
図2
図3
図4
図5
図6