特許第6299149号(P6299149)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6299149塗料組成物、太陽電池モジュールのバックシート、及び、太陽電池モジュール
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6299149
(24)【登録日】2018年3月9日
(45)【発行日】2018年3月28日
(54)【発明の名称】塗料組成物、太陽電池モジュールのバックシート、及び、太陽電池モジュール
(51)【国際特許分類】
   C09D 127/12 20060101AFI20180319BHJP
   C09D 7/40 20180101ALI20180319BHJP
   C09D 175/04 20060101ALI20180319BHJP
   H01L 31/049 20140101ALI20180319BHJP
【FI】
   C09D127/12
   C09D7/12
   C09D175/04
   H01L31/04 562
【請求項の数】8
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2013-227175(P2013-227175)
(22)【出願日】2013年10月31日
(65)【公開番号】特開2014-111736(P2014-111736A)
(43)【公開日】2014年6月19日
【審査請求日】2016年8月23日
(31)【優先権主張番号】特願2012-243171(P2012-243171)
(32)【優先日】2012年11月2日
(33)【優先権主張国】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】澁谷 祥太
(72)【発明者】
【氏名】匂坂 重仁
(72)【発明者】
【氏名】中川 秀人
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 秀典
【審査官】 菅野 芳男
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−035694(JP,A)
【文献】 特開2009−175613(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/116649(WO,A1)
【文献】 特開平08−283495(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 127/12
C09D 7/40
C09D 175/04
H01L 31/049
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化性官能基含有含フッ素ポリマー、カーボンブラック、分散剤、及び、有機溶媒を含み、
前記分散剤は、塩基価が14〜35mgKOH/gであり、かつ、酸価が12mgKOH/g以下であり、
前記分散剤は、ポリウレタン化合物からなることを特徴とする塗料組成物。
【請求項2】
分散剤は、塩基価が14〜35mgKOH/gであり、かつ、酸価が実質0mgKOH/gである請求項1記載の塗料組成物。
【請求項3】
ポリウレタン化合物は、主鎖にエチレンオキサイド鎖及び/又はプロピレンオキサイド鎖を有し、四級化剤によって四級化されたアミノ基をもつポリウレタン化合物である請求項1又は2記載の塗料組成物。
【請求項4】
硬化性官能基含有含フッ素ポリマーは、含フッ素単量体に基づく重合単位と、水酸基含有単量体、カルボキシル基含有単量体、酸無水物単量体、アミノ基含有単量体、及び、シリコーン系ビニル単量体からなる群より選択される少なくとも1種の硬化性官能基含有単量体に基づく重合単位と、を含む請求項1、2又は3記載の塗料組成物。
【請求項5】
含フッ素単量体は、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、及び、ビニリデンフルオライドからなる群より選択される少なくとも1種である請求項記載の塗料組成物。
【請求項6】
含フッ素単量体は、テトラフルオロエチレンである請求項記載の塗料組成物。
【請求項7】
基材、及び、前記基材の少なくとも一方の面にフッ素樹脂層を有し、
前記フッ素樹脂層は、請求項1、2、3、4、5又は6記載の塗料組成物を用いて形成された硬化塗膜であることを特徴とする太陽電池モジュールのバックシート。
【請求項8】
請求項記載の太陽電池モジュールのバックシートを備えることを特徴とする太陽電池モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗料組成物、太陽電池モジュールのバックシート、及び、太陽電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池モジュールは、通常、太陽電池セルと、太陽電池セルを封止する封止材と、封止材の受光面側(表面側)と裏面側にそれぞれ設けられた表面層とバックシートとから構成される。
【0003】
太陽電池モジュールは、野外にて使用される。このため、太陽電池モジュールのバックシートは、受光面側の表面層と同様に、高い耐候性、耐湿性、耐熱性、及び、絶縁性が必要とされる。また、反射光による紫外線劣化に耐える性能も必要とされる。
【0004】
太陽電池モジュールのバックシートとしては、基材上にフッ素樹脂層が形成されたものが知られている(特許文献1)。このようなフッ素樹脂層は、含フッ素ポリマー、顔料、有機溶媒等を含む塗料組成物を基材上に塗布し硬化させることによっても形成される(特許文献2)。
【0005】
また、そのようなバックシートを形成するための塗料組成物において、顔料は、太陽電池モジュールの外観を美麗にする点から、添加されることが望まれており、白色顔料である酸化チタン、炭酸カルシウムや、黒色顔料であるカーボンブラックやCu−Cr−Mn合金等の複合金属類等が通常配合される(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−227203号公報
【特許文献2】特開2010−238760号公報
【特許文献3】国際公開第2007/010706号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、顔料としてカーボンブラックを使用した場合に、上記塗料組成物を長期保存するとカーボンブラックが沈降するといった問題があった。
【0008】
本発明は、上記現状に鑑みて、顔料分散性及び塗液安定性に優れ、かつ、紫外線遮蔽性に優れた塗膜を形成することができる塗料組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らはかかる要求を検討した結果、硬化性官能基含有含フッ素ポリマー、及び、カーボンブラックを含む塗料組成物において、分散剤として、特定範囲の塩基価と酸価とを有する化合物を使用することにより、塗料組成物の顔料分散性及び塗液安定性が驚くほど改善され得ることを見出し、本発明を完成した。また、特定の分散剤を使用することにより、得られる塗膜の紫外線遮蔽性が向上することもあわせて見出された。
【0010】
すなわち、本発明は、硬化性官能基含有含フッ素ポリマー、カーボンブラック、分散剤、及び、有機溶媒を含み、上記分散剤は、塩基価が12mgKOH/g以上であり、かつ、酸価が12mgKOH/g以下であることを特徴とする塗料組成物である。
上記分散剤は、塩基価が12〜40mgKOH/gであり、かつ、酸価が12mgKOH/g以下であることが好ましい。
上記分散剤は、塩基価が12〜40mgKOH/gであり、かつ、酸価が実質0mgKOH/gであることが好ましい。
上記分散剤はポリウレタン化合物からなることが好ましい。
上記ポリウレタン化合物は、主鎖にエチレンオキサイド鎖及び/又はプロピレンオキサイド鎖を有し、四級化剤によって四級化されたアミノ基をもつポリウレタン化合物であることが好ましい。
上記硬化性官能基含有含フッ素ポリマーは、含フッ素単量体に基づく重合単位と、水酸基含有単量体、カルボキシル基含有単量体、酸無水物単量体、アミノ基含有単量体、及び、シリコーン系ビニル単量体からなる群より選択される少なくとも1種の硬化性官能基含有単量体に基づく重合単位と、を含むことが好ましい。
上記含フッ素単量体は、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、及び、ビニリデンフルオライドからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
上記含フッ素単量体は、テトラフルオロエチレンであることが好ましい。
本発明はまた、基材、及び、上記基材の少なくとも一方の面にフッ素樹脂層を有し、上記フッ素樹脂層は、上述の塗料組成物を用いて形成された硬化塗膜であることを特徴とする太陽電池モジュールのバックシートでもある。
本発明はまた、上述の太陽電池モジュールのバックシートを備えることを特徴とする太陽電池モジュールでもある。
本発明を以下に詳細に説明する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の塗料組成物は、顔料分散性及び塗液安定性に優れ、かつ、紫外線遮蔽性に優れた塗膜を形成することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明の太陽電池モジュールの一例の概略模式図である。
図2図2は、本発明の太陽電池モジュールの一例の概略模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、硬化性官能基含有含フッ素ポリマー、カーボンブラック、分散剤、及び、有機溶媒を含み、上記分散剤は、塩基価が12mgKOH/g以上であり、かつ、酸価が12mgKOH/g以下であることを特徴とする塗料組成物である。
このため、本発明の塗料組成物は顔料分散性及び塗液安定性に優れる。また、本発明の塗料組成物を用いて得られた硬化塗膜は紫外線遮蔽性に優れる。
【0014】
本発明の塗料組成物に含まれる分散剤は、塩基価が12mgKOH/g以上である。
塩基価が12mgKOH/g未満であると、カーボンブラックの分散安定性が低下する。
塩基価は14mgKOH/g以上が好ましい。
また、塩基価は、40mgKOH/g以下が好ましく、35mgKOH/g以下がより好ましい。
塩基価は、酸性物質を用いた酸塩基滴定法により測定することができる。
【0015】
本発明の塗料組成物に含まれる分散剤は、酸価が12mgKOH/g以下である。
酸価が12mgKOH/gを超えると、塗料組成物の液分かれが生じる。
酸価は10mgKOH/g以下が好ましく、実質0mgKOH/gであることがより好ましい。酸価が実質0mgKOH/gとは、具体的には0.1mgKOH/g未満をいう。
酸価は、塩基性物質を用いた酸塩基滴定法により測定することができる。
【0016】
本発明の塗料組成物に含まれる分散剤は、塩基を有することが好ましい。
上記塩基としては、例えば、アミノ基等が挙げられる。
上記アミノ基としては、−NH、−NHR、−NRR’が挙げられる。また、四級化されたものも含まれる。
【0017】
上記分散剤は、上記塩基価及び酸価を有するものであれば特に限定されないが、上記塩基価及び酸価を有するポリウレタン化合物からなることが好ましい。上記ポリウレタン化合物は、ウレタン結合(−CONH−)を有するポリマーである。
【0018】
上記ポリウレタン化合物は、主鎖にエチレンオキサイド鎖及び/又はプロピレンオキサイド鎖を有し、四級化剤によって四級化されたアミノ基をもつポリウレタン化合物であることが好ましい。
【0019】
上記四級化剤としては、3級アミノ基と塩を形成する有機酸、無機酸、有機ハロゲン化物等が挙げられる。上記有機酸としては、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、乳酸、リンゴ酸、マロン酸、アジピン酸、ベンゼンスルホン酸等、上記無機酸としては、塩酸、硫酸、燐酸、硝酸等を使用できる。また、上記有機ハロゲン化物としては、ベンジルクロライド、メチルクロライド等のハロゲン化アルキル等を使用できる。更に、ジメチル硫酸、ジエチル硫酸等の硫酸エステルも使用できる。なかでも、四級化剤として硫酸エステルを用いて3級アミノ基を4級アンモニウム塩としたものが好ましく、ジメチル硫酸を用いて3級アミノ基を4級アンモニウム塩としたものがより好ましい。
【0020】
上記四級化されたアミノ基(四級化アミノ基)とは、−[NRR’R’’](ただし、R、R’及びR’’は炭化水素基であって、同一でも異なっていても良く、Xはハロゲン基等の対イオンである。)により表されるものである。
【0021】
上記分散剤において、エチレンオキサイド鎖とプロピレンオキサイド鎖は質量比で、エチレンオキサイド鎖:プロピレンオキサイド鎖が0.1:99.9〜15:85であることが好ましい。
【0022】
上記ポリウレタン化合物としては、エチレンオキサイド鎖とプロピレンオキサイド鎖を有するポリオールとポリイソシアネートとイソシアネート基と反応可能なアミン化合物とを反応させ、上記四級化剤を用いてアミノ基を四級化したポリウレタン化合物等が挙げられる。具体的には、例えば、エチレンオキサイド鎖とプロピレンオキサイド鎖を有するポリオールとポリイソシアネートとを反応させ、次いでイソシアネート基と反応可能なアミン化合物を反応させ、更に得られた化合物のアミノ基(3級アミノ基)を、上記四級化剤を用いて四級化したもの(4級アンモニウム塩)等が挙げられる。
【0023】
上記エチレンオキサイド(EO)鎖とプロピレンオキサイド(PO)鎖を有するポリオールとしては、EO鎖及びPO鎖を有するポリオールであれば特に限定されず、例えば、OH−(CHCHO)−(CH(CH)−CHO)−(CHCHO)−Hで表されるブロック共重合体(l、m、nは1以上の整数である)等を挙げることができる。
【0024】
上記ポリイソシアネートとしては、ジイソシアネートが好ましい。上記ジイソシアネートしては、例えば、エチレンジイソシアネート、プロピレンジイソシアネート、ブチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート;イソホロンジイソシアネート、4−4′−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート等の脂環式ジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート等を挙げることができる。
【0025】
上記イソシアネート基と反応可能なアミン化合物としては、例えば、ブチルジエタノ−ルアミン、エチルジエタノ−ルアミン、メチルジエタノ−ルアミン、2−ジメチルアミノエタノ−ル、2−ジエチルアミノエタノ−ル、3−ジメチルアミノプロパノ−ル、ジメチルアミノエチルアミン、ジエチルアミノエチルアミン、ジメチルアミノプロピルアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、ジブチルアミノプロピルアミン等を挙げることができる。
【0026】
上記分散剤は、分岐ポリマーであることが好ましく、櫛形ポリマーであることがより好ましい。
【0027】
上記分散剤は、重量平均分子量が10000〜100000であることが好ましい。10000未満であると、分散安定性不良やブリードアウトのおそれがある。100000を超えると、分散性不良のおそれがある。
上記重量平均分子量は、20000以上がより好ましく、40000以上が更に好ましく、70000以下がより好ましく、60000以下が更に好ましい。
上記重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)(ポリスチレン換算)により測定することができる。
【0028】
上記分散剤として、市販品を用いてもよい。本発明の塗料組成物に適用可能な市販品としては、例えば、SOLSPERSE76500(日本ルーブリゾール社製)等が挙げられる。
【0029】
本発明の塗料組成物における上記分散剤の含有量は、カーボンブラック100質量部に対して2.5〜40質量部であることが好ましい。
2.5質量部未満であると、カーボンブラックの分散安定効果が得られないおそれがある。40質量部を超えると、塗膜物性低下のおそれがある。
上記分散剤の含有量は、5質量部以上がより好ましく、9質量部以上が更に好ましく、35質量部以下がより好ましく、30質量部以下が更に好ましい。
【0030】
本発明の塗料組成物は、硬化性官能基含有含フッ素ポリマーを含む。硬化性官能基含有含フッ素ポリマーを含むことにより、耐候性、耐湿性、耐熱性及び絶縁性に優れた塗膜を形成することができる。
【0031】
上記硬化性官能基含有含フッ素ポリマーとしては、含フッ素ポリマーに硬化性の官能基を導入したポリマーが挙げられる。なお、含フッ素ポリマーには明確な融点を有する樹脂性のポリマー、ゴム弾性を示すエラストマー性のポリマー、その中間の熱可塑性エラストマー性のポリマーが含まれる。
【0032】
含フッ素ポリマーに硬化性を与える官能基としては、例えば、水酸基(但し、カルボキシル基に含まれる水酸基は除く。以下、同じ。)、カルボキシル基、−COOCO−で表される基、アミノ基、グリシジル基、シリル基、シラネート基、イソシアネート基等があげられ、ポリマーの製造の容易さや硬化系に併せて適宜選択される。なかでも、硬化反応性が良好な点から水酸基、カルボキシル基、−COOCO−で表される基、アミノ基、シリル基が好ましく、特にポリマーの入手が容易な点や反応性が良好な点から水酸基が好ましい。これらの硬化性官能基は、通常、含フッ素単量体と硬化性官能基含有単量体とを共重合することにより含フッ素ポリマーに導入される。
【0033】
硬化性官能基含有単量体としては、例えば、水酸基含有単量体、カルボキシル基含有単量体、酸無水物単量体、アミノ基含有単量体、及び、シリコーン系ビニル単量体を挙げることができ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
上記硬化性官能基含有含フッ素ポリマーは、含フッ素単量体に基づく重合単位と、水酸基含有単量体、カルボキシル基含有単量体、酸無水物単量体、アミノ基含有単量体、及び、シリコーン系ビニル単量体からなる群より選択される少なくとも1種の硬化性官能基含有単量体に基づく重合単位とを含むことが好ましい。
【0034】
上記硬化性官能基含有単量体としては、例えば次のものが例示できるが、これらのみに限定されるものではない。なお、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
【0035】
(1−1)水酸基含有単量体:
水酸基含有単量体としては、例えば、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、3−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、2−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、4−ヒドロキシ−2−メチルブチルビニルエーテル、5−ヒドロキシペンチルビニルエーテル、6−ヒドロキシヘキシルビニルエーテル等の水酸基含有ビニルエーテル類;2−ヒドロキシエチルアリルエーテル、4−ヒドロキシブチルアリルエーテル、グリセロールモノアリルエーテル等の水酸基含有アリルエーテル類等が挙げられる。これらのなかでも水酸基含有ビニルエーテル類、特に4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、2−ヒドロキシエチルビニルエーテルが重合反応性、官能基の硬化性が優れる点で好ましい。
【0036】
他の水酸基含有単量体としては、例えばアクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル等の(メタ)アクリル酸のヒドロキシアルキルエステル等が例示できる。
なお、後述するカルボキシル基含有単量体は、上記水酸基含有単量体には含まれないものとする。
【0037】
(1−2)カルボキシル基含有単量体:
カルボキシル基含有単量体としては、例えば、一般式(1):
【0038】
【化1】
【0039】
(式中、R、R及びRは同じかまたは異なり、いずれも水素原子、アルキル基、アリール基、カルボキシル基またはアルコキシカルボニル基;nは0または1である)で表わされる不飽和モノカルボン酸、不飽和ジカルボン酸、そのモノエステル等の不飽和カルボン酸類;または一般式(2):
【0040】
【化2】
【0041】
(式中、R及びRは同じかまたは異なり、いずれも飽和または不飽和の直鎖または環状アルキル基;nは0または1;mは0または1である)で表わされるカルボキシル基含有ビニルエーテル単量体等が挙げられる。
【0042】
上記一般式(1)で表される不飽和カルボン酸類の具体例としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、ビニル酢酸、クロトン酸、桂皮酸、イタコン酸、イタコン酸モノエステル、マレイン酸、マレイン酸モノエステル、フマル酸、フマル酸モノエステル等が挙げられる。それらのなかでも単独重合性の低いクロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、マレイン酸モノエステル、フマル酸、フマル酸モノエステルが、単独重合性が低く単独重合体ができにくいことから好ましい。
【0043】
上記一般式(2)で表されるカルボキシル基含有ビニルエーテル単量体の具体例としては、例えば、3−アリルオキシプロピオン酸、3−(2−アリロキシエトキシカルボニル)プロピオン酸、3−(2−アリロキシブトキシカルボニル)プロピオン酸、3−(2−ビニロキシエトキシカルボニル)プロピオン酸、3−(2−ビニロキシブトキシカルボニル)プロピオン酸等の1種または2種以上が挙げられる。これらの中でも3−(2−アリロキシエトキシカルボニル)プロピオン酸等が、単量体の安定性や重合反応性がよい点で有利であり、好ましい。
【0044】
上記カルボキシル基含有単量体としては、上記一般式(1)又は(2)で表されるもの以外にも、例えば、フタル酸ビニル、ピロメリット酸ビニル等の、多塩基カルボン酸のアルケニルエステル等を用いることができる。
【0045】
(1−3)酸無水物単量体:
酸無水物単量体としては、例えば、マレイン酸無水物等の、不飽和ジカルボン酸の無水物が挙げられる。
【0046】
(1−4)アミノ基含有単量体:
アミノ基含有単量体としては、例えばCH=CH−O−(CH−NH(x=0〜10)で示されるアミノビニルエーテル類;CH=CH−O−CO(CH−NH(x=1〜10)で示されるアミン類;そのほかアミノメチルスチレン、ビニルアミン、アクリルアミド、ビニルアセトアミド、ビニルホルムアミド等が挙げられる。
【0047】
(1−5)シリコーン系ビニル単量体:
シリコーン系ビニル単量体としては、例えばCH=CHCO(CHSi(OCH、CH=CHCO(CHSi(OC、CH=C(CH)CO(CHSi(OCH、CH=C(CH)CO(CHSi(OC、CH=CHCO(CHSiCH(OC、CH=C(CH)CO(CHSiC(OCH、CH=C(CH)CO(CHSi(CH(OC)、CH=C(CH)CO(CHSi(CHOH、CH=CH(CHSi(OCOCH、CH=C(CH)CO(CHSiC(OCOCH、CH=C(CH)CO(CHSiCH(N(CH)COCH、CH=CHCO(CHSiCH〔ON(CH)C、CH=C(CH)CO(CHSiC〔ON(CH)C等の(メタ)アクリル酸エステル類;CH=CHSi[ON=C(CH)(C)]、CH=CHSi(OCH、CH=CHSi(OC、CH=CHSiCH(OCH、CH=CHSi(OCOCH、CH=CHSi(CH(OC)、CH=CHSi(CHSiCH(OCH、CH=CHSiC(OCOCH、CH=CHSiCH〔ON(CH)C、ビニルトリクロロシランまたはこれらの部分加水分解物等のビニルシラン類;トリメトキシシリルエチルビニルエーテル、トリエトキシシリルエチルビニルエーテル、トリメトキシシリルブチルビニルエーテル、メチルジメトキシシリルエチルビニルエーテル、トリメトキシシリルプロピルビニルエーテル、トリエトキシシリルプロピルビニルエーテル等のビニルエーテル類等が例示される。
【0048】
含フッ素単量体、すなわち、硬化性官能基が導入される含フッ素ポリマーを形成するための単量体としては、例えば、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、ビニリデンフルオライド、ビニルフルオライド、及び、フルオロビニルエーテルを挙げることができ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
中でも、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、及び、ビニリデンフルオライドからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、テトラフルオロエチレンであることがより好ましい。
【0049】
硬化性官能基が導入される含フッ素ポリマーとしては、該ポリマーを構成する重合単位に応じて、例えば次のものが例示できる。
【0050】
(1)パーフルオロオレフィン単位を主体とするパーフルオロオレフィン系ポリマー:
具体例としては、テトラフルオロエチレン(TFE)の単独重合体、または、TFEとヘキサフルオロプロピレン(HFP)、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)(PAVE)等との共重合体、更にはこれらと共重合可能な他の単量体との共重合体等が挙げられる。
【0051】
上記共重合可能な他の単量体としては、例えば酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、カプロン酸ビニル、バーサチック酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、シクロヘキシルカルボン酸ビニル、安息香酸ビニル、パラ−t−ブチル安息香酸ビニル等のカルボン酸ビニルエステル類;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル等のアルキルビニルエーテル類;エチレン、プロピレン、n−ブテン、イソブテン等非フッ素系オレフィン類;ビニリデンフルオライド(VdF)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、ビニルフルオライド(VF)、フルオロビニルエーテル等のフッ素系単量体等が挙げられるが、これらのみに限定されるものではない。
【0052】
これらのうち、TFEを主体とするTFE系ポリマーが、顔料分散性や耐候性、共重合性、耐薬品性に優れている点で好ましい。
【0053】
具体的な硬化性官能基含有パーフルオロオレフィン系ポリマーとしては、例えばTFE/イソブチレン/ヒドロキシブチルビニルエーテル/他の単量体の共重合体、TFE/バーサチック酸ビニル/ヒドロキシブチルビニルエーテル/他の単量体の共重合体、TFE/VdF/ヒドロキシブチルビニルエーテル/他の単量体の共重合体等があげられ、特にTFE/イソブチレン/ヒドロキシブチルビニルエーテル/他の単量体の共重合体、TFE/バーサチック酸ビニル/ヒドロキシブチルビニルエーテル/他の単量体の共重合体等が好ましい。
【0054】
TFE系の塗料用硬化性ポリマー組成物としては、例えばダイキン工業(株)製のゼッフルGKシリーズ等が例示できる。
【0055】
(2)クロロトリフルオロエチレン(CTFE)単位を主体とするCTFE系ポリマー:
具体例としては、例えばCTFE/ヒドロキシブチルビニルエーテル/他の単量体の共重合体等が挙げられる。
【0056】
CTFE系の塗料用硬化性ポリマー組成物としては、例えば旭硝子(株)製のルミフロン、DIC(株)製のフルオネート、セントラル硝子(株)製のセフラルコート、東亜合成(株)製のザフロン等が例示できる。
【0057】
(3)ビニリデンフルオライド(VdF)単位を主体とするVdF系ポリマー:
具体例としては、例えばVdF/TFE/ヒドロキシブチルビニルエーテル/他の単量体の共重合体等が挙げられる。
【0058】
(4)フルオロアルキル単位を主体とするフルオロアルキル基含有ポリマー:
具体例としては、例えばCFCF(CFCFCHCHOCOCH=CH(n=3と4の混合物)/2−ヒドロキシエチルメタクリレート/ステアリルアクリレート共重合体等が挙げられる。
【0059】
フルオロアルキル基含有ポリマーとしては、例えばダイキン工業(株)製のユニダインやエフトーン、デュポン社製のゾニール等が例示できる。
【0060】
これらのうち、耐候性、防湿性を考慮すると、パーフルオロオレフィン系ポリマーが好ましい。
【0061】
上記硬化性官能基含有含フッ素ポリマーは、例えば、特開2004−204205号公報に開示される方法により製造することができる。
【0062】
本発明の塗料組成物中の上記硬化性官能基含有含フッ素ポリマーの含有量は、塗料組成物中の不揮発分の総量100質量%に対し、20〜90質量%であることが好ましい。
【0063】
本発明の塗料組成物は、カーボンブラックを含む。
上記カーボンブラックとしては、特に限定されず一般に公知のものが挙げられる。
上記カーボンブラックは、紫外線遮蔽効果の点で、平均粒子径が10〜150nmであることが好ましく、20〜100nmであることがより好ましい。
上記平均粒子径は、電子顕微鏡での観察により得られる値である。
【0064】
塗料組成物中の分散工程後のカーボンブラックの平均粒径は紫外線遮蔽効果の点で50〜1000nmが好ましく、100〜700nmがより好ましく、100〜500nmがさらに好ましい。
上記平均粒径は、レーザー回折散乱式粒度分布計での測定により得られる値である。
【0065】
カーボンブラックの含有量は、塗料組成物中の硬化性官能基含有含フッ素ポリマー100質量部に対して0.5〜80質量部であることが好ましい。カーボンブラックの含有量が上述の範囲内であると、塗料中によく分散できる。
カーボンブラックの含有量は、硬化性官能基含有含フッ素ポリマー100質量部に対して3質量部以上がより好ましく、10質量部以上が更に好ましく、60質量部以下がより好ましく、50質量部以下が更に好ましい。
【0066】
本発明の塗料組成物は、有機溶媒を含む。
上記有機溶媒としては、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソプロピル、酢酸イソブチル、酢酸セロソルブ、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート等のエステル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類;キシレン、トルエン、ソルベントナフサ等の芳香族炭化水素類;プロピレングリコールメチルエーテル、エチルセロソルブ等のグリコールエーテル類;カルビトールアセテート等のジエチレングリコールエステル類;n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、n−ノナン、n−デカン、n−ウンデカン、n−ドデカン、ミネラルスピリット等の脂肪族炭化水素類;これらの混合等が挙げられる。
これらは、単独でまたは2種以上を併用してもよい。
なかでも、エステル類が好ましく、酢酸ブチルが好ましい。
【0067】
本発明の塗料組成物は、更に、硬化剤を含むことが好ましい。硬化剤を含むことにより、本発明の塗料組成物を用いて硬化塗膜を形成することができる。
上記硬化剤は、硬化性ポリマーの官能基に応じて選択され、例えば、水酸基含有含フッ素ポリマーに対しては、イソシアネート系硬化剤、メラミン樹脂、シリケート化合物、イソシアネート基含有シラン化合物などが好ましく例示できる。また、カルボキシル基含有含フッ素ポリマーに対してはアミノ系硬化剤やエポキシ系硬化剤が、アミノ基含有含フッ素ポリマーに対してはカルボニル基含有硬化剤やエポキシ系硬化剤、酸無水物系硬化剤が通常採用される。
【0068】
上記硬化剤としては、中でも、キシリレンジイソシアネート(XDI)及びビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン(水素化XDI、H6XDI)からなる群より選択される少なくとも1種のイソシアネートから誘導されるポリイソシアネート化合物、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)に基づくブロックイソシアネート化合物、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)から誘導されるポリイソシアネート化合物、並びに、イソホロンジイソシアネート(IPDI)から誘導されるポリイソシアネート化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物が好ましい。
【0069】
硬化剤として、キシリレンジイソシアネート(XDI)及びビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン(水素化XDI、H6XDI)からなる群より選択される少なくとも1種のイソシアネート(以下、イソシアネート(i)ともいう。)から誘導されるポリイソシアネート化合物(以下、ポリイソシアネート化合物(I)ともいう。)を用いた場合、本発明の塗料組成物から得られる硬化塗膜と太陽電池モジュールの封止材との密着性が、より優れたものになる。更に、上記硬化塗膜を有する太陽電池モジュールのバックシートが、巻き取り工程等において該硬化塗膜が接触する面に対する耐ブロッキング性により優れたものとなる。
上記ポリイソシアネート化合物(I)としては、例えば、上記イソシアネート(i)と3価以上の脂肪族多価アルコールとを付加重合して得られるアダクト、上記イソシアネート(i)からなるイソシアヌレート構造体(ヌレート構造体)、及び、上記イソシアネート(i)からなるビウレットを挙げることができる。
【0070】
上記アダクトとしては、例えば、下記一般式(3):
【0071】
【化3】
【0072】
(式中、Rは、炭素数3〜20の脂肪族炭化水素基を表す。Rは、フェニレン基又はシクロヘキシレン基を表す。kは、3〜20の整数である。)で表される構造を有するものが好ましい。
上記一般式(3)中のRは、上記3価以上の脂肪族多価アルコールに基づく炭化水素基であり、炭素数3〜10の脂肪族炭化水素基がより好ましく、炭素数3〜6の脂肪族炭化水素基が更に好ましい。
上記Rがフェニレン基である場合、1,2−フェニレン基(o−フェニレン基)、1,3−フェニレン基(m−フェニレン基)、及び、1,4−フェニレン基(p−フェニレン基)のいずれであってもよい。中でも、1,3−フェニレン基(m−フェニレン基)が好ましい。また、上記一般式(3)中の全てのRが同じフェニレン基であってもよく、2種以上が混在していてもよい。
上記Rがシクロヘキシレン基である場合、1,2−シクロヘキシレン基、1,3−シクロヘキシレン基、及び、1,4−シクロヘキシレン基のいずれであってもよい。中でも、1,3−シクロヘキシレン基が好ましい。また、上記一般式(3)中の全てのRが同じシクロヘキシレン基であってもよく、2種以上が混在していてもよい。
上記kは、3価以上の脂肪族多価アルコールの価数に対応する数である。上記kとして、より好ましくは3〜10の整数であり、更に好ましくは3〜6の整数である。
【0073】
上記イソシアヌレート構造体は、分子中に、下記一般式(4):
【0074】
【化4】
【0075】
で表されるイソシアヌレート環を1個又は2個以上有するものである。
上記イソシアヌレート構造体としては、上記イソシアネートの三量化反応により得られる三量体、五量化反応により得られる五量体、七量化反応により得られる七量体等を挙げることができる。
中でも、下記一般式(5):
【0076】
【化5】
【0077】
(式中、Rは、上記一般式(3)中のRと同じである。)で表される三量体が好ましい。すなわち、上記イソシアヌレート構造体は、キシリレンジイソシアネート及びビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサンからなる群より選択される少なくとも1種のイソシアネートの三量体であることが好ましい。
【0078】
上記ビウレットは、下記一般式(6):
【0079】
【化6】
【0080】
(式中、Rは、上記一般式(3)中のRと同じである。)で表される構造を有する化合物であり、上記イソシアヌレート構造体を得る場合とは異なる条件下で、上記イソシアネートを三量化することにより、得ることができる。
【0081】
上記ポリイソシアネート化合物(I)としては、中でも、上記アダクト、すなわち、キシリレンジイソシアネート及びビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサンからなる群より選択される少なくとも1種のイソシアネートと、3価以上の脂肪族多価アルコールと、を付加重合して得られるものであることが好ましい。
【0082】
上記ポリイソシアネート化合物(I)が、上記イソシアネート(i)と3価以上の脂肪族多価アルコールとのアダクトである場合、該3価以上の脂肪族多価アルコールとしては、具体的には、グリセロール、トリメチロールプロパン(TMP)、1,2,6−ヘキサントリオール、トリメチロールエタン、2,4−ジヒドロキシ−3−ヒドロキシメチルペンタン、1,1,1−トリス(ビスヒドロキシメチル)プロパン、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)ブタノール−3等の3価アルコール;ペンタエリスリトール、ジグリセロール等の4価アルコール;アラビット、リビトール、キシリトール等の5価アルコール(ペンチット);ソルビット、マンニット、ガラクチトール、アロズルシット等の6価アルコール(ヘキシット)等が挙げられる。中でも、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールが特に好ましい。
【0083】
また、上記アダクトの構成成分として用いられるキシリレンジイソシアネート(XDI)としては、1,3−キシリレンジイソシアネート(m−キシリレンジイソシアネート)、1,2−キシリレンジイソシアネート(o−キシリレンジイソシアネート)、1,4−キシリレンジイソシアネート(p−キシリレンジイソシアネート)が挙げられるが、中でも、1,3−キシリレンジイソシアネート(m−キシリレンジイソシアネート)が好ましい。
【0084】
また、上記アダクトの構成成分として用いられるビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン(水素化XDI、H6XDI)としては、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、1,2−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサンが挙げられるが、中でも、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサンが好ましい。
【0085】
キシリレンジイソシアネート及びビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサンからなる群より選択される少なくとも1種のイソシアネートと、上記のような3価以上の脂肪族多価アルコールと、を付加重合することにより、本発明で好適に用いられるアダクトが得られる。
【0086】
本発明で好ましく用いられるアダクトとして、具体的には、例えば下記一般式(7):
【0087】
【化7】
【0088】
(式中、Rは、フェニレン基又はシクロヘキシレン基を表す。)で表わされる化合物、すなわち、キシリレンジイソシアネート及びビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサンからなる群より選択される少なくとも1種のイソシアネートと、トリメチロールプロパン(TMP)と、を付加重合することにより得られるポリイソシアネート化合物を挙げることができる。
上記一般式(7)中のRで表されるフェニレン基又はシクロヘキシレン基については、上記一般式(3)におけるRについて述べたとおりである。
【0089】
上記一般式(7)で表されるポリイソシアネート化合物の市販品としては、タケネートD110N(三井化学株式会社製、XDIとTMPとのアダクト、NCO含有量11.8%)、タケネートD120N(三井化学株式会社製、H6XDIとTMPとのアダクト、NCO含有量11.0%)等が挙げられる。
【0090】
上記ポリイソシアネート化合物(I)が、イソシアヌレート構造体である場合の具体例としては、タケネートD121N(三井化学株式会社製、H6XDIヌレート、NCO含有量14.0%)、タケネートD127N(三井化学株式会社製、H6XDIヌレート、H6XDIの3量体、NCO含有量13.5%)等が挙げられる。
【0091】
硬化剤として、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)に基づくブロックイソシアネート(以下、単にブロックイソシアネートともいう。)を用いることにより、本発明の塗料組成物が充分なポットライフ(可使時間)を有するものとなる。
上記ブロックイソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネートから誘導されるポリイソシアネート化合物(以下、ポリイソシアネート化合物(II)ともいう。)をブロック化剤で反応させて得られるものが好ましい。
上記ポリイソシアネート化合物(II)としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネートと3価以上の脂肪族多価アルコールとを付加重合して得られるアダクト、ヘキサメチレンジイソシアネートからなるイソシアヌレート構造体(ヌレート構造体)、及び、ヘキサメチレンジイソシアネートからなるビウレットを挙げることができる。
【0092】
上記アダクトとしては、例えば、下記一般式(8):
【0093】
【化8】
【0094】
(式中、Rは、炭素数3〜20の脂肪族炭化水素基を表す。kは、3〜20の整数である。)で表される構造を有するものが好ましい。
上記一般式(8)中のRは、上記3価以上の脂肪族多価アルコールに基づく炭化水素基であり、炭素数3〜10の脂肪族炭化水素基がより好ましく、炭素数3〜6の脂肪族炭化水素基が更に好ましい。
上記kは、3価以上の脂肪族多価アルコールの価数に対応する数である。上記kとして、より好ましくは3〜10の整数であり、更に好ましくは3〜6の整数である。
【0095】
上記イソシアヌレート構造体は、分子中に、下記一般式(4):
【0096】
【化9】
【0097】
で表されるイソシアヌレート環を1個又は2個以上有するものである。
上記イソシアヌレート構造体としては、上記イソシアネートの三量化反応により得られる三量体、五量化反応により得られる五量体、七量化反応により得られる七量体等を挙げることができる。
中でも、下記一般式(9):
【0098】
【化10】
【0099】
で表される三量体が好ましい。
【0100】
上記ビウレットは、下記一般式(10):
【0101】
【化11】
【0102】
で表される構造を有する化合物であり、上記イソシアヌレート構造体を得る場合とは異なる条件下で、ヘキサメチレンジイソシアネートを三量化することにより、得ることができる。
【0103】
上記ブロック化剤としては、活性水素を有する化合物を用いることが好ましい。上記活性水素を有する化合物としては、例えば、アルコール類、オキシム類、ラクタム類、活性メチレン化合物、及び、ピラゾール化合物からなる群より選択される少なくとも1種を用いることが好ましい。
【0104】
このように、上記ブロックイソシアネートがヘキサメチレンジイソシアネートから誘導されるポリイソシアネート化合物をブロック化剤で反応させて得られるものであり、上記ブロック化剤は、アルコール類、オキシム類、ラクタム類、活性メチレン化合物、及び、ピラゾール化合物からなる群より選択される少なくとも1種であることは、本発明の好ましい実施形態の1つである。
【0105】
上記ブロックイソシアネートを得るためのポリイソシアネート化合物(II)が、ヘキサメチレンジイソシアネートと3価以上の脂肪族多価アルコールとのアダクトである場合、該3価以上の脂肪族多価アルコールとしては、具体的には、グリセロール、トリメチロールプロパン(TMP)、1,2,6−ヘキサントリオール、トリメチロールエタン、2,4−ジヒドロキシ−3−ヒドロキシメチルペンタン、1,1,1−トリス(ビスヒドロキシメチル)プロパン、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)ブタノール−3等の3価アルコール;ペンタエリスリトール、ジグリセロール等の4価アルコール;アラビット、リビトール、キシリトール等の5価アルコール(ペンチット);ソルビット、マンニット、ガラクチトール、アロズルシット等の6価アルコール(ヘキシット)等が挙げられる。中でも、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールが特に好ましい。
ヘキサメチレンジイソシアネートと、上記のような3価以上の脂肪族多価アルコールとを付加重合することにより、上記アダクトが得られる。
【0106】
上記ポリイソシアネート化合物(II)と反応させる、活性水素を有する化合物としては、具体的には、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、メトキシプロパノール等のアルコール類;アセトンオキシム、2−ブタノンオキシム、シクロヘキサノンオキシム等のオキシム類;ε−カプロラクタム等のラクタム類;アセト酢酸メチル、マロン酸エチル等の活性メチレン化合物;3−メチルピラゾール、3,5−ジメチルピラゾール、3,5−ジエチルピラゾール等のピラゾール化合物等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
中でも、活性メチレン化合物、オキシム類が好ましく、活性メチレン化合物がより好ましい。
【0107】
上記ブロックイソシアネートの市販品としては、デュラネートK6000(旭化成ケミカルズ株式会社製、HDIの活性メチレン化合物ブロックイソシアネート)、デュラネートTPA−B80E(旭化成ケミカルズ株式会社製)、デュラネートMF−B60X(旭化成ケミカルズ株式会社製)、デュラネート17B−60PX(旭化成ケミカルズ株式会社製)、コロネート2507(日本ポリウレタン株式会社製)、コロネート2513(日本ポリウレタン株式会社製)、コロネート2515(日本ポリウレタン株式会社製)、スミジュールBL−3175(住化バイエルウレタン株式会社製)、LuxateHC1170(オリン・ケミカルズ社製)、LuxateHC2170(オリン・ケミカルズ社製)等が挙げられる。
【0108】
硬化剤として、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)から誘導されるポリイソシアネート化合物(以下、ポリイソシアネート化合物(III)ともいう。)を用いることもできる。ポリイソシアネート化合物(III)としては、ポリイソシアネート化合物(II)として上述したものが挙げられる。
【0109】
ポリイソシアネート化合物(III)の具体例としては、コロネートHX(日本ポリウレタン(株)製、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート構造体、NCO含有量21.1%)、スミジュールN3300(住化バイエル社製、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート構造体)、タケネートD170N(三井化学社製、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート構造体)、スミジュールN3800(住化バイエル社製、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート構造体プレポリマータタイプ)等が挙げられる。
【0110】
硬化剤として、イソホロンジイソシアネート(IPDI)から誘導されるポリイソシアネート化合物(以下、ポリイソシアネート化合物(IV)ともいう。)を用いることにより、本発明の塗料組成物から得られる硬化塗膜を有する太陽電池モジュールのバックシートが、巻き取り工程等において該硬化塗膜が接触する面に対する耐ブロッキング性に優れたものとなる。
【0111】
上記ポリイソシアネート化合物(IV)としては、例えば、イソホロンジイソシアネートと3価以上の脂肪族多価アルコールとを付加重合して得られるアダクト、イソホロンジイソシアネートからなるイソシアヌレート構造体(ヌレート構造体)、及び、イソホロンジイソシアネートからなるビウレットを挙げることができる。
【0112】
上記アダクトとしては、例えば、下記一般式(11):
【0113】
【化12】
【0114】
(式中、R10は、炭素数3〜20の脂肪族炭化水素基を表す。R11は、下記一般式(12):
【0115】
【化13】
【0116】
で表される基である。kは、3〜20の整数である。)で表される構造を有するものが好ましい。
上記一般式(11)中のR10は、上記3価以上の脂肪族多価アルコールに基づく炭化水素基であり、炭素数3〜10の脂肪族炭化水素基がより好ましく、炭素数3〜6の脂肪族炭化水素基が更に好ましい。
上記kは、3価以上の脂肪族多価アルコールの価数に対応する数である。上記kとして、より好ましくは3〜10の整数であり、更に好ましくは3〜6の整数である。
【0117】
上記イソシアヌレート構造体は、分子中に、下記一般式(4):
【0118】
【化14】
【0119】
で表されるイソシアヌレート環を1個又は2個以上有するものである。
上記イソシアヌレート構造体としては、イソホロンジイソシアネートの三量化反応により得られる三量体、五量化反応により得られる五量体、七量化反応により得られる七量体等を挙げることができる。
中でも、下記一般式(13):
【0120】
【化15】
【0121】
(式中、R11は、上記一般式(11)中のR11と同じである。)で表される三量体が好ましい。すなわち、上記イソシアヌレート構造体は、イソホロンジイソシアネートの三量体であることが好ましい。
【0122】
上記ビウレットは、下記一般式(14):
【0123】
【化16】
【0124】
(式中、R11は、上記一般式(11)中のR11と同じである。)で表される構造を有する化合物であり、上記イソシアヌレート構造体を得る場合とは異なる条件下で、イソホロンジイソシアネートを三量化することにより、得ることができる。
【0125】
上記ポリイソシアネート化合物(IV)としては、中でも、上記アダクト及び上記イソシアヌレート構造体からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。すなわち、上記ポリイソシアネート化合物(IV)は、イソホロンジイソシアネートと、3価以上の脂肪族多価アルコールと、を付加重合して得られるアダクト、及び、イソホロンジイソシアネートからなるイソシアヌレート構造体からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0126】
上記ポリイソシアネート化合物(IV)が、イソホロンジイソシアネートと3価以上の脂肪族多価アルコールとのアダクトである場合、該3価以上の脂肪族多価アルコールとしては、具体的には、グリセロール、トリメチロールプロパン(TMP)、1,2,6−ヘキサントリオール、トリメチロールエタン、2,4−ジヒドロキシ−3−ヒドロキシメチルペンタン、1,1,1−トリス(ビスヒドロキシメチル)プロパン、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)ブタノール−3等の3価アルコール;ペンタエリスリトール、ジグリセロール等の4価アルコール;アラビット、リビトール、キシリトール等の5価アルコール(ペンチット);ソルビット、マンニット、ガラクチトール、アロズルシット等の6価アルコール(ヘキシット)等が挙げられる。中でも、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールが特に好ましい。
【0127】
イソホロンジイソシアネートと、上記のような3価以上の脂肪族多価アルコールと、を付加重合することにより、本発明で好適に用いられるアダクトが得られる。
【0128】
本発明で好ましく用いられるアダクトとして、具体的には、例えば下記一般式(15):
【0129】
【化17】
【0130】
(式中、R12は、下記一般式(12):
【0131】
【化18】
【0132】
で表される基である。)で表される化合物、すなわち、イソホロンジイソシアネートとトリメチロールプロパン(TMP)とを付加重合することにより得られるポリイソシアネート化合物を挙げることができる。
【0133】
上記一般式(12)で表されるポリイソシアネート化合物(イソホロンジイソシアネートのTMPアダクト体)の市販品としては、タケネートD140N(三井化学株式会社製、NCO含有量11%)等が挙げられる。
【0134】
イソホロンジイソシアネートからなるイソシアヌレート構造体の市販品としては、デスモジュールZ4470(住化バイエルウレタン株式会社製、NCO含有量11%)等が挙げられる。
【0135】
なかでも、上記硬化剤としては、タケネートD120N(三井化学株式会社製、NCO含有量11%)、スミジュールN3300(住化バイエル社製、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート構造体)がより好ましい。
【0136】
本発明の塗料組成物における硬化剤の含有量は、硬化性官能基含有含フッ素ポリマー中の硬化性官能基1当量に対して0.1〜5当量であることが好ましく、0.5〜1.5当量であることがより好ましい。
【0137】
本発明の塗料組成物は、更に、必要に応じて他の成分を含んでいてもよい。他の成分としては、他の樹脂や添加剤が挙げられ、上記添加剤としては、例えば、硬化促進剤、消泡剤、レベリング剤、紫外線吸収剤、光安定剤、増粘剤、密着改良剤、つや消し剤、親水化剤等を挙げることができる。
【0138】
硬化促進剤としては、例えば有機スズ化合物、酸性リン酸エステル、酸性リン酸エステルとアミンとの反応物、飽和または不飽和の多価カルボン酸またはその酸無水物、有機チタネート化合物、アミン系化合物、オクチル酸鉛等が挙げられる。
【0139】
硬化促進剤は1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。硬化促進剤の配合量は硬化性官能基含有含フッ素ポリマー100質量部に対して1.0×10−6〜1.0×10−2質量部程度が好ましく、5.0×10−5〜1.0×10−3質量部程度がより好ましい。
【0140】
紫外線吸収剤としては、有機系、無機系のいずれの紫外線吸収剤も用いることができる。有機化合物系では、例えばサリチル酸エステル系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、シアノアクリレート系等の紫外線吸収剤等が挙げられ、無機系では酸化亜鉛、酸化セリウム等のフィラー型無機系紫外線吸収剤等が好ましい。
【0141】
親水化剤としては、硬化塗膜の表面に偏在して水酸基を保持し得るものが挙げられ、具体的には、ダイキン工業株式会社製GH−701が挙げられる。親水化剤の配合量は、塗料組成物中の不揮発分に対する割合で0.01〜50質量%であることが望ましい。
【0142】
本発明の塗料組成物は、上述した硬化性官能基含有含フッ素ポリマー、カーボンブラック、分散剤、及び、必要に応じて他の成分を、有機溶媒に混合または分散することにより調製することができる。
上記混合及び分散は、特に限定されず、例えば、ペイントシェーカー、ビーズミル、ニーダー等の公知の装置を使用して行うことができる。
本発明の塗料組成物の固形分濃度は、特に限定されず、使用方法に応じて適宜調整するとよい。
【0143】
本発明の塗料組成物を使用して硬化塗膜を形成する方法としては、特に限定されないが、通常、基材上に、硬化剤を配合した本発明の塗料組成物を塗装し、硬化させて硬化塗膜を形成する。
上記塗装は、特に限定されず、公知の方法を用いればよく、例えば、ロールコート、カーテンコート、スプレーコート、ダイコート、グラビアコート等が挙げられる。
上記硬化は、塗料組成物の成分に応じて、乾燥、加熱又は放射線照射等から適宜選択して行うとよい。
【0144】
このように本発明の塗料組成物は、特定の分散剤を含むものである。このため、顔料分散性及び塗液安定性に優れる。また、本発明の塗料組成物を用いて、紫外線遮蔽性に優れた硬化塗膜を形成することができる。このため、本発明の塗料組成物は、太陽電池モジュールのバックシート用コーティング剤として好適に適用することができる。
【0145】
本発明の塗料組成物を用いて硬化塗膜を形成することができる。塩化ビニル、ポリカーボネート、アクリル樹脂等の様々な樹脂基材上に、本発明の塗料組成物を用いて硬化塗膜を形成することによって、上記樹脂基材の難燃性や耐候性を向上させたり、さらに親水性表面を付与したりできる。
【0146】
本発明の塗料組成物を用いて形成された硬化塗膜を備えた太陽電池モジュールのバックシートも本発明の一つである。
すなわち、本発明はまた、基材、及び、上記基材の少なくとも一方の面にフッ素樹脂層を有し、上記フッ素樹脂層は、上述した塗料組成物を用いて形成された硬化塗膜からなることを特徴とする太陽電池モジュールのバックシートでもある。
【0147】
本発明の太陽電池モジュールのバックシートは、基材と、上記基材の少なくとも一方の面にフッ素樹脂層とを有する。
上記基材としては、一般に太陽電池モジュールのバックシートに使用される樹脂シートが挙げられる。
上記樹脂シートとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリメタクリル酸メチル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアミド、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリオキシメチレン、ポリカーボネート、ポリフェニレンオキシド、ポリエステルウレタン、ポリm−フェニレンイソフタルアミド、ポリp−フェニレンテレフタルアミド等のポリマーからなるシートが挙げられる。
なかでも、ポリエチレンテレフタレート(PET)が好ましい。
【0148】
上記基材はまた、水不透過性シートであってもよい。水不透過性シートを用いることにより、本発明のバックシートを用いて太陽電池モジュールとした場合に、封止材や太陽電池セルに水分が透過するのを防ぐことができる。
上記水不透過性シートとしては、例えば、PETシート、シリカ蒸着PETシート、アルミニウムやステンレススチール等の金属シート等が挙げられる。
なかでも、軽量、低価格、可とう性に富む点で、シリカ蒸着PETシートとPETシートが好ましい。
【0149】
また、上記基材上のフッ素樹脂層又は他の層やシート等との接着性を向上させるために、上記基材は、表面処理をしたものであってもよい。表面処理としては、例えば、コロナ放電処理、プラズマ放電処理、化成処理、金属シートの場合はブラスト処理等が例示できる。いずれの処理も従来公知の方法を採用してよい。
上記表面処理は、基材の一方の面に形成されてもよく、両面に形成されてもよい。
【0150】
上記基材は、厚みが10〜500μmであることが好ましく、50〜300μmであることがより好ましい。
【0151】
本発明の太陽電池モジュールのバックシートは、上記基材上の少なくとも一方の面にフッ素樹脂層を有する。上記フッ素樹脂層は、上述した本発明の塗料組成物を用いて形成された硬化塗膜である。
上記フッ素樹脂層の形成は、上述した本発明の塗料組成物を用いて硬化塗膜を形成する方法と同様に行うことができる。
上記基材への塗装は、上記塗料組成物を基材に直接塗布することにより行ってもよいし、またプライマー層等を介して塗布することにより行ってもよい。
上記プライマー層の形成は、従来公知のプライマー用塗料を用いて、常法により行うとよい。プライマー用塗料としては、例えば、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂等が挙げられる。
【0152】
上記フッ素樹脂層の膜厚は2μm以上とすることが、隠蔽性、耐候性、耐薬品性、耐湿性が良好な点から好ましい。より好ましくは3μm以上、更に好ましくは5μm以上である。上限は、余り厚くすると軽量化効果が得られなくなるので、1000μm程度が好ましく、100μmがより好ましい。上記膜厚としては、特に5〜40μmが好ましい。
【0153】
上記フッ素樹脂層は、アセトンによるソックスレー抽出からゲル分率として計算される架橋度が90〜100%であることが好ましく、95〜100%であることがより好ましく、98〜100%であることが更に好ましい。
【0154】
本発明の太陽電池モジュールのバックシートはまた、上記基材の両面に上記フッ素樹脂層を有していてもよい。基材の両面にフッ素樹脂層を有する場合、これらの2つのフッ素樹脂層は、上述した範囲に含まれる成分から形成されたものであればよく、同成分からなるフッ素樹脂層であっても、異なる成分からなるフッ素樹脂層であってもよい。
また、他の層との接着性を向上させるために、上記フッ素樹脂層に表面処理を施しても良い。
表面処理としては、例えば、コロナ放電処理、プラズマ放電処理、化成処理、シランカップリング剤等のコーティング処理が例示できる。
【0155】
本発明の太陽電池モジュールのバックシートは、上述した基材とフッ素樹脂層以外に、他の材料層を有してもよい。上記バックシートが他の材料層を有する場合、他の材料層、基材、フッ素樹脂層の順に積層されていることが好ましい。
上記他の材料層としては、接着剤からなる接着剤層、硬化性官能基を有しない含フッ素ポリマー塗料の硬化塗膜、含フッ素ポリマーシート、ポリエステルシート又はポリエステル塗料の塗膜(他のシート又は塗膜)が挙げられる。これらの層は、プライマー層等を介して積層されていてもよい。
【0156】
上記接着剤層としては、例えば、ウレタン系接着剤、ポリエステル系接着剤、エポキシ系接着剤、ナイロン系接着剤、エチレン−酢酸ビニル系接着剤、アクリル系接着剤、ゴム系接着剤等の公知の接着剤からなる層が挙げられる。
【0157】
上記硬化性官能基を有しない含フッ素ポリマー塗料の硬化塗膜としては、例えば特開2004−214342号公報に記載されているPVdFにテトラアルコキシシランまたはその部分加水分解物を配合した塗料の硬化塗膜、VdF/TFE/CTFE共重合体とアルコキシシラン単位含有アクリル樹脂との混合塗料の硬化塗膜、VdF/TFE/HFP共重合体と水酸基含有アクリル樹脂との混合塗料の硬化塗膜、VdF/HFP共重合体にアミノシランカップリング剤を配合した塗料の硬化塗膜等が挙げられる。膜厚は、通常、5〜300μmとすることが、隠蔽性、耐候性、耐薬品性、耐湿性が良好な点から好ましい。より好ましくは10〜100μm、更に好ましくは10〜50μmである。
【0158】
上記含フッ素ポリマーシートとしては、PVdFシートやPVFシート、PCTFEシート、TFE/HFP/エチレン共重合体シート、TFE/HFP共重合体(FEP)シート、TFE/PAVE共重合体(PFA)シート、エチレン/TFE共重合体(ETFE)シート、エチレン/CTFE共重合体(ECTFE)シート等、現在のバックシートに使用されている含フッ素ポリマーシートが挙げられる。膜厚は、通常、5〜300μmとすることが、耐候性が良好な点から好ましい。より好ましくは10〜100μm、更に好ましくは10〜50μmである。
【0159】
上記ポリエステルシートとしては、従来のバックシートで使用されているものがそのまま使用でき、その水不透過性シートへの接着はアクリル系接着剤、ウレタン系接着剤、エポキシ系接着剤、ポリエステル系接着剤等によって行うことができる。膜厚は、通常5〜300μmとすることが、耐候性、コスト、透明性が良好な点から好ましい。より好ましくは10〜100μm、更に好ましくは10〜50μmである。
【0160】
上記ポリエステル塗料としては、多価カルボン酸と多価アルコール等とを用いた飽和ポリエステル樹脂を用いたもの、無水マレイン酸、フマル酸等とグリコール類とを用いた不飽和ポリエステル樹脂を用いたもの等があげられ、ロールコート、カーテンコート、スプレーコート、ダイコート等の塗装方法により塗膜を形成できる。膜厚は、5〜300μmとすることが隠蔽性、耐候性、耐薬品性、耐湿性が良好な点から好ましい。より好ましくは10〜100μm、更に好ましくは10〜50μmである。
【0161】
本発明の太陽電池モジュールのバックシートは、上記基材上に、上述した方法で上記塗料組成物を用いてフッ素樹脂層を形成したり、上記他の材料層を形成したり、シートを積層するとよい。また公知の方法により、所望の層構成となるよう製造するとよい。
【0162】
本発明はまた、上述した太陽電池モジュールのバックシートを備えることを特徴とする太陽電池モジュールでもある。
本発明の太陽電池モジュールは、上述したバックシート、及び、上記バックシートの上に形成された封止材層を有することが好ましい。
封止材層は、太陽電池セルを封止するための層であり、エチレン/酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリビニルブチラール(PVB)、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂等で構成されることが好ましい。なかでも、EVAが好ましく用いられる。
【0163】
本発明の太陽電池モジュールの好ましい実施態様の一例の概略模式図を図1及び図2に示す。
図1に示される第1の構造において、太陽電池セル1は、封止材層2に封止されており、封止材層2は、表面層3とバックシート4とで挟まれている。バックシート4は、基材5とフッ素樹脂層6とから構成され、フッ素樹脂層6が最外層となるように備えられている。
【0164】
表面層3は、太陽電池モジュールの受光面を保護するための層であり、通常ガラス板が用いられるが、樹脂シート等のフレキシブルな材料を用いてもよい。
【0165】
図2に示される第2の構造において、バックシート4は、基材5の一方の面に他の材料層7を有し、他方の面にフッ素樹脂層6を有する3層構造のものであり、フッ素樹脂層6が最外層となるように備えられている。
【0166】
本発明の太陽電池モジュールは、更に、ジャンクションボックスを有していてもよい。上記ジャンクションボックスは、太陽電池セルからの出力電力を取り出すための電極や配線(太陽電池セルと接続された電極や配線)や、出力電力を太陽電池モジュールの外部に取り出すためのケーブルが接続される端子を収納する箱体である。
ジャンクションボックスは、太陽電池モジュールのバックシート側面に接着層を介して設けられることが好ましい。上記接着層は、公知の接着剤からなる層でよい。
【0167】
以上のように、本発明によれば、優れた紫外線遮蔽性を有する硬化塗膜を形成することができる塗料組成物を提供することができる。本発明の塗料組成物を用いて基材上に形成された硬化塗膜は、太陽電池モジュールのバックシートとして好適に適用することができる。
【実施例】
【0168】
本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこの実施例により限定されるものではない。
【0169】
(実施例1)
ゼッフルGK−570(ダイキン工業株式会社製)100質量部に対して、酢酸ブチルを92.7質量部、顔料としてMA100(三菱化学社製)を13質量部、分散剤としてSOLSPERSE76500(日本ルーブリゾール社製)を6.5質量部添加して塗料組成物を調製した。
【0170】
(実施例2〜6、比較例1〜4)
ゼッフルGK−570(ダイキン工業株式会社製)100質量部に対して、顔料、分散剤及び酢酸ブチルを表1に示すとおりに添加した以外は、実施例1と同様にして塗料組成物を調製した。
【0171】
なお、表1中の各成分は、以下のとおりである。
硬化性官能基含有含フッ素ポリマー:
ゼッフルGK−570(酢酸ブチル中、固形分濃度65質量%、ダイキン工業株式会社製)
顔料:
Raven420(カーボンブラック、平均粒子径:86nm、pH:8.3、COLUMBIAN社製)
MA100(カーボンブラック、平均粒子径:24nm、pH:3.5、三菱化学社製)
分散剤:
SOLSPERSE76500(エチレンオキサイド(EO)鎖、プロピレンオキサイド(PO)鎖及び四級化剤により四級化されたアミノ基を有するポリウレタン化合物、塩基価15.2mgKOH/g、酸価実質0mgKOH/g、重量平均分子量50000、EOはPOの10%、有効成分50質量%、日本ルーブリゾール社製)
ディスパロンDA−7301(ポリエステル酸アマイドアミン塩、塩基価40mgKOH/g、酸価15mgKOH/g、重量平均分子量9700、有効成分75質量%、楠本化成社製)
ディスパロンDA−375(ポリエーテル燐酸エステル化合物、塩基価0mgKOH/g、酸価14mgKOH/g、重量平均分子量2000〜3000、有効成分>95質量%、楠本化成社製)
【0172】
得られた塗料組成物について、下記の評価を行った。結果を表1に示す。
<顔料分散性>
評価用基材としてPCTFEフィルム(ダイキン工業(株)社製、ネオフロンPCTFEフィルム、厚さ25μm)を用意し、このフィルムの片面に、上記実施例1〜6、比較例1〜4の塗料組成物を、乾燥膜厚が10μmになるようにバーコーターにて塗装し、60℃で30分間乾燥させて、10μmの塗装フィルムを得た。
変角光沢計(日本電色工業社製、VGS−SENSOR)を用いて、得られた塗装フィルムの光沢度を測定した。
【0173】
<塗液安定性>
上記実施例1〜6、比較例1〜4の塗料組成物を、容積50mlのスクリュー管容器に入れて密閉し、50℃にて静置し、静置後から液分離が観察されなかった日数を評価した。
【0174】
<紫外線遮蔽性>
上記の顔料分散性の評価方法と同様にして、上記実施例1〜6、比較例1〜4の塗料組成物を乾燥膜厚が10μmになるようにPCTFEフィルムにバーコーターにて塗装し、60℃で30分間乾燥させて、10μmの塗装フィルムを得た。
分光光度計(日立社製、U−4100)を用いて、得られた塗装フィルムの400nm波長の紫外線の透過率を測定した。
【0175】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0176】
本発明によれば、優れた顔料分散性及び塗液安定性を有する塗料組成物、並びに、紫外線遮蔽性に優れた太陽電池モジュールのバックシートを提供することができる。
【符号の説明】
【0177】
1 太陽電池セル
2 封止材層
3 表面層
4 バックシート
5 基材
6 フッ素樹脂層
7 他の材料層
図1
図2