特許第6299209号(P6299209)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6299209
(24)【登録日】2018年3月9日
(45)【発行日】2018年3月28日
(54)【発明の名称】皮膚外用剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/55 20060101AFI20180319BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20180319BHJP
   A61K 8/86 20060101ALI20180319BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20180319BHJP
【FI】
   A61K8/55
   A61K8/34
   A61K8/86
   A61Q19/00
【請求項の数】1
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-270585(P2013-270585)
(22)【出願日】2013年12月26日
(65)【公開番号】特開2015-124194(P2015-124194A)
(43)【公開日】2015年7月6日
【審査請求日】2016年11月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004341
【氏名又は名称】日油株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124349
【弁理士】
【氏名又は名称】米田 圭啓
(72)【発明者】
【氏名】飯盛 幸二
(72)【発明者】
【氏名】林 伸二
(72)【発明者】
【氏名】石田 実咲
【審査官】 ▲高▼ 美葉子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−203667(JP,A)
【文献】 特開2008−222643(JP,A)
【文献】 特開2010−013378(JP,A)
【文献】 特開2008−163006(JP,A)
【文献】 特開2003−238336(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00− 8/99
A61Q 1/00−90/00
CAplus/MEDLINE/KOSMET/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)式[I]で表される1−アシル−2,3−環状ホスファチジン酸またはその塩を0.0001〜5質量%、
(b)炭素数5〜8のアルカンジオールを1〜10質量%、
(c)ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルまたはポリオキシエチレン硬化ヒマシ油を0.01〜5質量%
含有する皮膚外用剤。
【化1】
(式中、Rは炭素数10〜22のアシル基を表す。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肌への感触が良好であり、保湿効果の持続性、シワ改善効果、肌のキメを整える効果に優れると共に、ポルフィリン産生抑制による肌の改善効果にも優れる皮膚外用剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の高齢化社会の急速な到来とともに、皮膚に対する種々の悩みを抱える人が増加してきている。代表的な悩みとしては、皮膚の老化が挙げられる。皮膚老化現象は、加齢、紫外線などによって進行し、シミ、くすみ、そばかすの増加、肌の弾力性低下、シワの増加、キメの乱れ、毛穴の開大などとして表れる。特に、外観上顕著に生じる変化であるシワの増加は、皮膚老化現象の象徴とされている。
そのような中、抗老化が期待される成分を配合した皮膚外用剤が種々提案されているが、それらは抗老化効果が十分でないばかりでなく、その効果の持続性が不十分であったり、効果にバラツキなどを生じることがあった。
【0003】
また、日光などの光線の照射によって被照射部位に、丘疹、紅斑、水疱などの皮膚症状を呈する疾患である光線過敏の問題も挙げられる。光線過敏の原因の一つにアクネ菌(P.acnes)が産生する光感受性物質のポルフィリンが挙げられる。ポルフィリンの産生を抑えることができれば、上記の皮膚症状も抑えることができることから、ポルフィリン産生抑制効果を有する皮膚外用剤が望まれている。
例えば、特許文献1には、トコフェリルリン酸エステル及び/又はその塩がアクネ菌を抗菌することによって皮膚炎症を抑えることが開示されているが、その効果は未だ満足できるものではなかった。
【0004】
一方、皮膚老化現象を抑える有効成分として、1−アシル−2,3−環状ホスファチジン酸(またはその塩)が配合された皮膚外用剤が種々提案されている。例えば、特許文献2には、1−アシル−2,3−環状ホスファチジン酸(またはその塩)を配合した皮膚外用剤が抗シワ効果を期待できることが示唆されている。
また、特許文献3には、1−アシル−2,3−環状ホスファチジン酸(またはその塩)によるヒアルロン酸産生増強作用を利用した皮膚外用組成物が皮膚の萎縮を改善するのに有用であることが記載されている。
さらに、特許文献4には、1−アシル−2,3−環状ホスファチジン酸(またはその塩)をリポソームの構成成分として配合された化粧料が、肌を滑らかにする効果、肌にハリを与える効果を有しており、かつ、べたつき感がなく、しっとり感を付与できることが記載されている。
しかしながら、特許文献2〜4に記載された、1−アシル−2,3−環状ホスファチジン酸(またはその塩)を含有する皮膚外用剤等は、ポルフィリン産生抑制効果を有していないので、光線過敏による皮膚症状を改善することは期待できなかった。
【0005】
また、1−アシル−2,3−環状ホスファチジン酸(またはその塩)は、水への溶解性が低く、沈殿などを生じることがあり、皮膚外用剤に配合した場合に、保湿効果の持続性やシワ改善効果が十分とは言えないことがあった。
すなわち、1−アシル−2,3−環状ホスファチジン酸(またはその塩)を含有する皮膚外用剤において、肌へのなじみ性といった肌への感触が良好であり、かつ保湿効果の持続性、シワ改善効果、肌のキメを整える効果に優れると共に、ポルフィリン産生抑制による肌の改善効果にも優れる皮膚外用剤は未だ開発されていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−213633号公報
【特許文献2】米国特許第5238965号明細書
【特許文献3】特開2002−363081号公報
【特許文献4】特開2008−222643号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、肌へのなじみ性などの肌への感触が良好であり、かつ保湿効果の持続性、シワ改善効果、肌のキメを整える効果に優れると共に、ポルフィリン産生抑制による肌の改善効果にも優れる皮膚外用剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明者らが鋭意検討した結果、(a)式[I]で表される1−アシル−2,3−環状ホスファチジン酸またはその塩、(b)炭素数5〜8のアルカンジオール、(c)ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルまたはポリオキシエチレン硬化ヒマシ油を特定の比率で組み合わせることにより、上記課題を解決し得る皮膚外用剤が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
すなわち、本発明の皮膚外用剤は、(a)式[I]で表される1−アシル−2,3−環状ホスファチジン酸またはその塩を0.0001〜5質量%、(b)炭素数5〜8のアルカンジオールを1〜10質量%、(c)ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルまたはポリオキシエチレン硬化ヒマシ油を0.01〜5質量%含有する皮膚外用剤である。
【化1】
(式中、Rは炭素数10〜22のアシル基を表す。)
【発明の効果】
【0010】
本発明の皮膚外用剤は、肌へのなじみ性などの肌への感触が良好であり、かつ保湿効果の持続性、シワ改善効果、肌のキメを整える効果に優れる。また、本発明の皮膚外用剤は、ポルフィリン産生抑制効果を有するので、光線過敏の皮膚症状を抑え、肌を改善する効果にも優れる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について説明する。
本発明の皮膚外用剤は、下記(a)〜(c)成分を含有する。まず、(a)成分について説明する。
【0012】
〔(a)式[I]で表される1−アシル−2,3−環状ホスファチジン酸またはその塩〕
本発明の皮膚外用剤に用いられる(a)成分は、式[I]で示される1−アシル−2,3−環状ホスファチジン酸またはその塩である。以下、「1−アシル−2,3−環状ホスファチジン酸またはその塩」を「置換環状ホスファチジン酸(塩)」とも表記する。
式[I]中、Rは炭素数10〜22のアシル基であり、好ましくは炭素数12〜20の直鎖状もしくは分岐鎖状の脂肪酸由来のアシル基である。
脂肪酸としては、例えば、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸等の飽和脂肪酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸等の不飽和脂肪酸、およびこれら脂肪酸の混合物であるヤシ油脂肪酸、パーム核油脂肪酸、牛脂脂肪酸、硬化牛脂脂肪酸、大豆リン脂質由来脂肪酸、卵黄リン脂質由来脂肪酸が挙げられる。中でも好ましくは、大豆リン脂質由来脂肪酸、卵黄リン脂質由来脂肪酸であり、更に好ましくは、大豆リン脂質由来脂肪酸である。
【0013】
本発明の皮膚外用剤に用いられる1−アシル−2,3−環状ホスファチジン酸塩は、下記式[II]で示されるものである。
【0014】
【化2】
(式中、Rは炭素数10〜22のアシル基を表し、Mはカチオンを表す。)
【0015】
式[II]中のMとしては、アルカリ金属、アンモニウム、有機アンモニウムなどが挙げられる。アルカリ金属としては、例えば、ナトリウム、カリウムが挙げられる。有機アンモニウムとしては、例えば、ブチルアンモニウム、トリエチルアンモニウム、テトラメチルアンモニウムが挙げられる。中でも、入手のし易さ、溶解性等の観点から、ナトリウム、カリウムが好ましい。
【0016】
置換環状ホスファチジン酸(塩)の製造方法としては、例えば、リゾホスファチジルコリンをホスホリパーゼDで酵素処理する方法、化学合成にて調製する方法(特開平6−228169号公報等を参照)等が挙げられる。
【0017】
また、本発明の皮膚外用剤に用いられる置換環状ホスファチジン酸(塩)の純度や形態は特に限定されない。例えば、純品のもの、賦形剤を含有するもの、液体のもの、粉体のものを用いることが可能である。具体的には、賦形剤としてシクロデキストリンを用いて凍結乾燥により得られた、1−アシル−2,3−環状ホスファチジン酸を含有する粉体が挙げられる。この凍結乾燥方法によれば、賦形剤によりさらさらとした取り扱いやすい脂質とすることが可能である。
なお、1−アシル−2,3−環状ホスファチジン酸は、商業的には、日油株式会社製「CyPA−ET」、「CyPA−PW」として入手することができる。「CyPA−ET」および「CyPA−PW」は、いずれも大豆リン脂質由来脂肪酸のアシル基である1−アシル−2,3−環状ホスファチジン酸を含有する。大豆リン脂質由来脂肪酸の脂肪酸組成は、パルミチン酸20.4質量%、ステアリン酸3.2質量%、オレイン酸11.3質量%、リノール酸57.6質量%、リノレン酸6.1質量%、その他1.4質量%である。
【0018】
(a)成分は、皮膚外用剤に対して、0.0001〜5質量%、好ましくは0.001〜2質量%、更に好ましくは0.05〜1質量%の割合で含有される。0.0001質量%未満の場合は、保湿効果の持続性、シワ改善効果が低下するおそれがある。5質量%を超える場合は、使用後にべたついたり、経時安定性が低下するおそれがある。
【0019】
〔(b)炭素数5〜8のアルカンジオール〕
本発明の皮膚外用剤に用いられる(b)成分は、炭素数5〜8のアルカンジオールであり、直鎖あるいは分岐炭化水素に2個の水酸基が付加した構造を有する。アルカンジオールの炭素数が5未満の場合は、皮膚に刺激を与えるおそれがあり、炭素数が8を超える場合は、シワ改善効果が低下するおそれがある。
【0020】
炭素数5〜8のアルカンジオールとして、具体的には、イソペンタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,3−ペンタンジオール、1,4−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,3−ヘキサンジオール、1,4−ヘキサンジオール、1,5−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、1,2−ヘプタンジオール、1,3−ヘプタンジオール、1,4−ヘプタンジオール、1,5−ヘプタンジオール、1,6−ヘプタンジオール、1,7−ヘプタンジオール、2,4−ヘプタンジオール、3,4−ヘプタンジオール、1,2−オクタンジオール、2,3−オクタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2,5−ジメチル−2,5−ヘキサンジオール等が挙げられる。中でも、入手のし易さ、臭い、配合のし易さ等の観点から、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオールが好ましい。本発明においては、これらアルカンジオールのうち1種または2種以上を用いることができる。
【0021】
(b)成分は、皮膚外用剤に対して、1〜10質量%、好ましくは2〜8質量%、更に好ましくは3〜6質量%の割合で含有される。1質量%未満の場合は、肌へのなじみ性が低下したり、シワ改善効果、肌のキメを整える効果が低下したりするおそれがある。10質量%を超える場合は、使用後にべたつくおそれがある。
【0022】
〔(c)ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルまたはポリオキシエチレン硬化ヒマシ油〕
本発明の皮膚外用剤に用いられる(c)成分は、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル又はポリオキシエチレン硬化ヒマシ油である。
ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルは、ソルビトールまたはソルビタンと脂肪酸とのエステルであるソルビタン脂肪酸エステルに、エチレンオキシドを付加させることによって得られる。エチレンオキシドの付加モル数は、安定性の点から、好ましくは15〜30モル、より好ましくは20〜30モルである。
【0023】
エステルを形成する脂肪酸としては、炭素数が8〜24の飽和あるいは不飽和脂肪酸が適し、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸などの単一脂肪酸、ヤシ油脂肪酸、牛脂脂肪酸等の動植物油由来の混合脂肪酸などを用いることができる。脂肪酸の炭素数は、安定性の点から、好ましくは8〜22、更に好ましくは12〜18である。脂肪酸エステルの数は、安定性の点から、好ましくは1〜3、更に好ましくは1(すなわちモノエステル)である。
【0024】
ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルとしては、具体的には、モノラウリン酸ポリオキシエチレン(20モル)ソルビタン、モノステアリン酸ポリオオキシエチレン(20モル)ソルビタン、モノオレイン酸ポリオキシエチレン(20モル)ソルビタンなどが挙げられる。これらの成分は、単独で使用しても良く、または2種以上を適宜組み合わせて使用しても良い。
【0025】
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油は、硬化ヒマシ油にエチレンオキシドを付加することによって得られる。エチレンオキシドの付加モル数は、安定性の点から、好ましくは10〜80、更に好ましくは20〜60である。具体的には、ポリオキシエチレン(20モル)硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン(40モル)硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン(60モル)硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン(80モル)硬化ヒマシ油などが挙げられる。これらの成分は、単独で使用しても良く、または2種以上を適宜組み合わせて使用しても良い。
【0026】
本発明においては、(c)成分として、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル単独、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油単独、またはそれらを適宜組み合わせて使用することができる。
【0027】
(c)成分は、皮膚外用剤に対して、0.01〜5質量%、好ましくは0.1〜3質量%、更に好ましくは0.3〜1質量%の割合で含有される。0.01質量%未満の場合は、肌へのなじみ性、ポルフィリン産生抑制効果、安定性が低下するおそれがあり、5質量%を超える場合は、べたつきを生じるおそれがある。
【0028】
本発明の皮膚外用剤は、常法に従って様々な剤形や形態にて提供することができる。例えば、化粧水、乳液、ジェル、クリーム、軟膏、スプレー等の剤形にて提供することができ、さらに、不織布に含浸させた形態等の様々な形態にて提供することができる。
本発明の皮膚外用剤には、提供される剤形や形態に応じて、外用剤や医薬品に常用されている様々な添加剤を、本発明の効果を損なわない範囲で、配合することができる。
【実施例】
【0029】
以下、実施例および比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。
〔実施例1〜6、および比較例1〜5〕
表1(実施例1〜6)および表2(比較例1〜5)に示す配合比率で、常法に従って、化粧水の皮膚外用剤を調製した。
得られた皮膚外用剤を用いて、下記の5項目について下記の方法により評価を行った。結果を表1および表2に示す。
【0030】
(1)肌へのなじみ性
20名の女性(30〜48歳)をパネラーとし、各パネラーが皮膚外用剤を全顔に使用した際の感触について下記のように判定した。
2点:肌へのなじみが明らかに良いと感じた場合。
1点:肌へのなじみがやや良いと感じた場合。
0点:肌へのなじみが悪いと感じた場合。
20名の合計点を求め、以下のように評価した。
◎:合計点が35点以上であり、かつ0点であると判定したパネラーが0人である。:肌へのなじみ性が非常に良い皮膚外用剤である。
○:合計点が25点以上35点未満、または合計点が35点以上であり、かつ0点であると判定したパネラーが1人以上2人以下である。:肌へのなじみ性が良い皮膚外用剤である。
△:合計点が15点以上25点未満である。:肌へのなじみ性がやや良い皮膚外用剤である。
×:合計点が15点未満である。:肌へのなじみ性が悪い皮膚外用剤である。
【0031】
(2)保湿効果の持続性
20名の女性(30〜48歳)をパネラーとし、各パネラーが皮膚外用剤を冬(2月)の朝、全顔に使用した後、その日の夕方の肌の状態について下記のように判定した。
2点:保湿感があると感じた場合。
1点:保湿感がややあると感じた場合。
0点:保湿感がないと感じた場合。
20名の合計点を求め、以下のように評価した。
◎:合計点が35点以上であり、かつ0点であると判定したパネラーが0人である。:非常に保湿効果の高い皮膚外用剤である。
○:合計点が25点以上35点未満、または合計点が35点以上であり、かつ0点であると判定したパネラーが1人以上2人以下である。:保湿効果の高い皮膚外用剤である。
△:合計点が15点以上25点未満である。:やや保湿効果の高い皮膚外用剤である。
×:合計点が15点未満である。:保湿効果の低い皮膚外用剤である。
【0032】
(3)シワ改善効果(シワ改善率)
目尻にシワがある22名の女性(30〜65歳)をパネラーとし、各パネラーが皮膚外用剤を1日2回ずつ連続3ヶ月間、目尻に使用し、3ヶ月後の目尻のシワの状態について下記のように評価した。
皮膚外用剤の使用開始前と3ヶ月間の連用塗布後の目尻のシワ(同一部位)について、軽く目を閉じた状態での目の際から約5mm離れた部位から10×10mm以上の範囲でシワレプリカ(有限会社アサヒバイオメッド製「シリコンASB−01−W」)を採取した。採取したシワレプリカについて三次元解析(GFM社製「PRIMOS(付属のソフトウェアを含む)」)を実施し、最大シワ平均深さ(μm、解析範囲に存在する最大体積をもつシワに対する平均深さ)を算出した。
使用開始前のシワレプリカと3ヶ月間の連用塗布後のシワレプリカは、自動位置合わせ機能により形状のマッチングを実施した。得られた最大シワ平均深さから、下記の式よりシワ改善率を算出した。なお、表1および表2中のシワ改善率はパネラー22名の平均値である。
【0033】
シワ改善率(%)=(皮膚外用剤使用開始前の最大シワ平均深さ−皮膚外用剤3ヶ月間の連用塗布後の最大シワ平均深さ)/皮膚外用剤使用開始前の最大シワ平均深さ×100
◎:シワ改善率35%以上:非常に優れたシワ改善効果を有する皮膚外用剤である。
○:シワ改善率20%以上35%未満:優れたシワ改善効果を有する皮膚外用剤である。
△:シワ改善率5%以上20%未満:わずかにシワ改善効果を有する皮膚外用剤である。
×:シワ改善率5%未満:シワ改善効果を有しない皮膚外用剤である。
【0034】
(4)肌のキメを整える効果
20名の女性(30〜48歳)をパネラーとし、各パネラーが皮膚外用剤を1日2回ずつ連続1ヶ月間、全顔に使用し、1ヶ月後の肌の状態について下記のように判定した。
2点:肌のキメが明らかに整ったと感じた場合。
1点:肌のキメがやや整ったと感じた場合。
0点:肌のキメを整える効果が見られないと感じた場合。
20名の合計点を求め、以下のように評価した。
◎:合計点が35点以上であり、かつ0点であると判定したパネラーが0人である。:肌のキメを整える効果が非常に優れた皮膚外用剤である。
○:合計点が25点以上35点未満、または合計点が35点以上であり、かつ0点であると判定したパネラーが1人以上2人以下である。:肌のキメを整える効果が優れた皮膚外用剤である。
△:合計点が15点以上25点未満である。:肌のキメを整える効果をわずかに有する皮膚外用剤である。
×:合計点が15点未満である。:肌のキメを整える効果を有しない皮膚外用剤である。
【0035】
(5)ポルフィリン産生抑制効果(ポルフィリン減少率)
20名の女性(30〜48歳)をパネラーとし、各パネラーが洗顔した後に皮膚外用剤を1日2回ずつ連続4週間、全顔に使用した。試験開始前および試験終了後に、コスメティック用全顔撮影装置(Facial Stage DM−3、ショットモリテックス(株)製)で、全顔をブラックライト撮影し、肉眼では見えずに、肌に潜在しているポルフィリンの状態について評価した。画像解析法にてポルフィリン由来の蛍光(赤色蛍光点数)を計測し、ポルフィリン減少率を下記の式より算出した。なお、表1および表2中のポルフィリン減少率はパネラー20名の平均値である。
【0036】
ポルフィリン減少率(%)=(1−皮膚外用剤4週間の連用塗布後の赤色蛍光点数/皮膚外用剤使用開始前の赤色蛍光点数)×100
◎:ポルフィリン減少率30%以上:非常に優れたポルフィリン産生抑制効果を有する皮膚外用剤である。
○:ポルフィリン減少率15%以上30%未満:優れたポルフィリン産生抑制効果を有する皮膚外用剤である。
△:ポルフィリン減少率6%以上15%未満:わずかにポルフィリン産生抑制効果を有する皮膚外用剤である。
×:ポルフィリン減少率6%未満:ポルフィリン産生抑制効果を有しない皮膚外用剤である。
【0037】
【表1】
【0038】
1)日油株式会社製「CyPA−ET」:大豆リン脂質由来脂肪酸のアシル基である1−アシル−2,3−環状ホスファチジン酸を4質量%、エタノールを40質量%含有する水溶液。なお、表中の(製品)の数値は製品である「CyPA−ET」の濃度を表す。
2)日油株式会社製「CyPA−PW」:大豆リン脂質由来脂肪酸のアシル基である1−アシル−2,3−環状ホスファチジン酸を10質量%、シクロデキストリンを50質量%含有する粉末。なお、表中の(製品)の数値は製品である「CyPA−PW」の濃度を表す。
【0039】
【表2】
【0040】
1)日油株式会社製「CyPA−PW」:大豆リン脂質由来脂肪酸のアシル基である1−アシル−2,3−環状ホスファチジン酸を10質量%、シクロデキストリンを50質量%含有する粉末。なお、表中の(製品)の数値は製品である「CyPA−PW」の濃度を表す。
【0041】
表1に示す実施例1〜6の結果から、本発明の皮膚外用剤に係る化粧水はいずれも、肌へのなじみ性が良く、保湿効果の持続性、シワ改善効果、肌のキメを整える効果に優れると共に、ポルフィリン産生抑制効果に優れていることが理解できる。
一方、比較例1〜5では十分な性能が得られていない。
具体的には、比較例1では、(b)および(c)成分が含まれていないので、保湿効果の持続性、シワ改善効果が若干しか得られておらず、肌へのなじみ性が不良であり、肌のキメを整える効果、ポルフィリン産生抑制効果が得られていない。
比較例2では、(a)成分が含まれていないので、肌へのなじみ性は認められるものの、ポルフィリン産生抑制効果は若干しか得られておらず、保湿効果の持続性、シワ改善効果、肌のキメを整える効果は得られていない。
比較例3では、(b)成分が含まれていないので、肌へのなじみ性、保湿効果の持続性、シワ改善効果、肌のキメを整える効果、ポルフィリン産生抑制効果は若干しか得られていない。
比較例4では、(c)成分が含まれていないので、肌へのなじみ性、保湿効果の持続性、シワ改善効果は認められるものの、肌のキメを整える効果、ポルフィリン産生抑制効果は若干しか得られていない。
比較例5では、(b)成分の代わりに1,3−ブタンジオールとジプロピレングリコールを配合しているので、肌へのなじみ性は認められるものの、保湿効果の持続性、シワ改善効果、肌のキメを整える効果、ポルフィリン産生抑制効果は若干しか得られていない。
【0042】
〔実施例7〕
表3に示す配合比率で、常法に従って、水中油型乳液の皮膚外用剤を調製した。
得られた皮膚外用剤を用いて、上記実施例と同様の方法により5項目について評価を行った。結果を表3に示す。
【0043】
【表3】
【0044】
1)日油株式会社製「CyPA−PW」:大豆リン脂質由来脂肪酸のアシル基である1−アシル−2,3−環状ホスファチジン酸を10質量%、シクロデキストリンを50質量%含有する粉末。なお、表中の(製品)の数値は製品である「CyPA−PW」の濃度を表す。
2)大日本製薬株式会社製「エコガーム」
3)BF−Goodrich社製「カーボポール940」
【0045】
表3に示す実施例7の結果から、本発明の皮膚外用剤に係る乳液は、肌へのなじみ性が良く、保湿効果の持続性、シワ改善効果、肌のキメを整える効果に優れると共に、ポルフィリン産生抑制効果に優れていることが理解できる。
【0046】
〔実施例8〕
表4に示す配合比率で、常法に従って、水中油型クリームの皮膚外用剤を調製した。
得られた皮膚外用剤を用いて、上記実施例と同様の方法により5項目について評価を行った。結果を表4に示す。
【0047】
【表4】
【0048】
1)日油株式会社製「CyPA−PW」:大豆リン脂質由来脂肪酸のアシル基である1−アシル−2,3−環状ホスファチジン酸を10質量%、シクロデキストリンを50質量%含有する粉末。なお、表中の(製品)の数値は製品である「CyPA−PW」の濃度を表す。
【0049】
表4に示す実施例8の結果から、本発明の皮膚外用剤に係るクリームは、肌へのなじみ性が良く、保湿効果の持続性、シワ改善効果、肌のキメを整える効果に優れると共に、ポルフィリン産生抑制効果に優れていることが理解できる。