(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
海成分がポリメチルペンテン系樹脂であり、島成分が熱可塑性樹脂である海島構造からなり、島成分の熱可塑性樹脂が、ポリエステル、ポリアミド、熱可塑性ポリアクリロニトリル、熱可塑性ポリウレタン、セルロース誘導体からなる群より選ばれた1種以上の化合物であり、島成分数が8個以上であり、繊維横断面における島成分の分散径の変動係数CVが1〜50%であることを特徴とするポリメチルペンテン複合繊維。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明のポリメチルペンテン複合繊維は、海成分がポリメチルペンテン系樹脂であり、島成分が熱可塑性樹脂である海島構造からなる。海成分のポリメチルペンテン系樹脂は透明性が高く、屈折率が低い樹脂であるため、島成分の熱可塑性樹脂を染色することによって、繊維内部からの発色を得ることができ、ポリメチルペンテン系樹脂を含有するポリメチルペンテン複合繊維へ発色性を付与することが可能となる。また、従来提案されているポリメチルペンテンを鞘成分、染色可能な樹脂を芯成分とした芯鞘構造と異なり、本発明における海島構造のように海成分に対して複数、好ましくは多数配置された島成分を染色することによって、島成分への透過光や島成分からの反射光が乱雑となり、鮮やかで深みのある発色を実現することができる。さらには、芯鞘構造と異なり、染色可能な樹脂が繊維横断面に島成分として散在しているため、芯鞘構造と同等の複合比率でより高い発色性を得ることができる。本発明における海島構造としては、海島型複合紡糸により得られる島成分が繊維長の方向に沿って連続して存在する海島構造であってもよく、この場合にはポリメチルペンテン複合繊維の島成分数は8個以上であ
る。また、海島構造は海を構成する樹脂と島を構成する樹脂を用いたポリマーアロイ型紡糸により得られる島成分が繊維長の方向に沿って有限の長さを有する海島構造であってもよい。
【0029】
本発明におけるポリメチルペンテン系樹脂としては、4−メチル−1−ペンテン系重合体が挙げられ、4−メチル−1−ペンテンの単独重合体であっても、4−メチル−1−ペンテンとその他のα−オレフィンとの共重合体であってもよい。これらその他のα−オレフィン(以下、単にα−オレフィンと称する場合もある)は、1種または2種以上で共重合することができる。
【0030】
これらα−オレフィンの炭素数は2〜20であることが好ましく、α−オレフィンの分子鎖は直鎖状でも分岐鎖状でもよい。これらα−オレフィンの具体例として、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセン、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、3−エチル−1−ペンテン、3−エチル−1−ヘキセンなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0031】
本発明におけるポリメチルペンテン系樹脂は、α−オレフィンの共重合率が20モル%以下であることが好ましい。α−オレフィンの共重合率が20モル%以下であれば、機械的特性や耐熱性が良好なポリメチルペンテン複合繊
維が得られるため好ましい。α−オレフィンの共重合率は15モル%以下であることがより好ましく、10モル%以下であることが更に好ましい。
【0032】
本発明におけるポリメチルペンテン系樹脂の融点は、200〜250℃であることが好ましい。ポリメチルペンテン系樹脂の融点が200℃以上であれば、ポリメチルペンテン複合繊
維の耐熱性が良好となるため好ましい。一方、ポリメチルペンテン系樹脂の融点が250℃以下であれば、溶融紡糸によって熱可塑性樹脂と複合化する際に製糸操業性が良好となるため好ましい。ポリメチルペンテン系樹脂の融点は210〜245℃であることがより好ましく、220〜240℃であることが更に好ましい。
【0033】
本発明におけるポリメチルペンテン系樹脂は、ASTM D1238に準じて温度260℃、荷重5.0kgの条件で測定したメルトフローレート(MFR)が5〜200g/10分であることが好ましい。ポリメチルペンテン系樹脂のメルトフローレートが5g/10分以上であれば、熱流動性が高く、成形加工性が良好であるため好ましい。一方、ポリメチルペンテン系樹脂のメルトフローレートが200g/10分以下であれば、機械的特性が良好なポリメチルペンテン複合繊
維が得られるため好ましい。ポリメチルペンテン系樹脂のメルトフローレートは10〜190g/10分であることがより好ましく、20〜180g/10分であることが更に好ましい。
【0034】
本発明におけるポリメチルペンテン系樹脂は、副次的添加物を加えて種々の改質が行われたものであってもよい。副次的添加剤の具体例として、相溶化剤、可塑剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、蛍光増白剤、離型剤、抗菌剤、核形成剤、熱安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、着色防止剤、調整剤、艶消し剤、消泡剤、防腐剤、ゲル化剤、ラテックス、フィラー、インク、着色料、染料、顔料、香料などが挙げられるが、これらに限定されない。これらの副次的添加物は単独で使用してもよく、複数を併用してもよい。
【0035】
本発明のポリメチルペンテン複合繊維における熱可塑性樹脂は、溶融紡糸によってポリメチルペンテン系樹脂と海島構造を形成して複合化することができ、染料によって染色することができれば
、好適に採用できる。本発明のポリメチルペンテン複合繊維における熱可塑性樹脂の具体例として、ポリエステル、ポリアミド、熱可塑性ポリアクリロニトリル、熱可塑性ポリウレタン、変性ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、セルロース誘導体などが挙げられ
る。ポリエステル、ポリアミド、熱可塑性ポリアクリロニトリル、熱可塑性ポリウレタン、セルロース誘導体は発色性が良好であるため好ましく、なかでも、ポリエステルやポリアミドは機械的特性に優れるため好適に採用できる。
【0037】
ポリエステルの具体例として、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリヘキサメチレンテレフタレートなどの芳香族ポリエステル、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリエチレンアジペート、ポリプロピレンアジペート、ポリブチレンアジペート、ポリエチレンサクシネート、ポリプロピレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンセバケート、ポリプロピレンセバケート、ポリブチレンセバケート、ポリカプロラクトンなどの脂肪族ポリエステル、これらのポリエステルへ共重合成分を共重合させた共重合ポリエステルなどが挙げられるが、これらに限定されない。なかでも、ポリ乳酸は屈折率が低く、染色した場合の発色性が高いためポリメチルペンテン複合繊維に好適に採用でき
る。
【0038】
ポリエステルの共重合成分の具体例として、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,2’−ビフェニルジカルボン酸、3,3’−ビフェニルジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸、マロン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、イタコン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,11−ウンデカンジカルボン酸、1,12−ドデカンジカルボン酸、1,14−テトラデカンジカルボン酸、1,18−オクタデカンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、ダイマー酸などの脂肪族ジカルボン酸、カテコール、ナフタレンジオール、ビスフェノールなどの芳香族ジオール、エチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノールなどの脂肪族ジオールなどが挙げられるが、これらに限定されない。これらの共重合成分は1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0039】
ポリアミドの具体例として、ナイロン6T、ナイロン9T、ナイロン10Tなどの芳香族ポリアミド、ナイロン4、ナイロン6、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン46、ナイロン410、ナイロン66、ナイロン610などの脂肪族ポリアミド、これらのポリアミドへ共重合成分を共重合させた共重合ポリアミドなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0040】
ポリアミドの共重合成分の具体例として、メタフェニレンジアミン、パラフェニレンジアミン、メタキシリレンジアミン、パラキシリレンジアミンなどの芳香族ジアミン、1,2−エチレンジアミン、1,3−トリメチレンジアミン、1,4−テトラメチレンジアミン、1,5−ペンタメチレンジアミン、2−メチル−1,5−ペンタメチレンジアミン、1,6−ヘキサメチレンジアミン、1,7−ヘプタメチレンジアミン、1,8−オクタメチレンジアミン、1,9−ノナメチレンジアミン、2−メチル−1,8−オクタメチレンジアミン、1,10−デカメチレンジアミン、1,11−ウンデカメチレンジアミン、1,12−ドデカメチレンジアミン、1,13−トリデカメチレンジアミン、1,16−ヘキサデカメチレンジアミン、1,18−オクタデカメチレンジアミン、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、ピペラジン、シクロヘキサンジアミンなどの脂肪族ジアミン、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,2’−ビフェニルジカルボン酸、3,3’−ビフェニルジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸、マロン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、イタコン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,11−ウンデカンジカルボン酸、1,12−ドデカンジカルボン酸、1,14−テトラデカンジカルボン酸、1,18−オクタデカンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、ダイマー酸などの脂肪族ジカルボン酸などが挙げられるが、これらに限定されない。これらの共重合成分は1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0041】
熱可塑性ポリアクリロニトリルとして、アクリロニトリルと共重合成分との共重合体が挙げられる。
【0042】
熱可塑性ポリアクリロニトリルの共重合成分の具体例として、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチルなどのアクリル酸エステル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチルなどのメタクリル酸エステル、塩化ビニル、フッ化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニリデンなどのハロオレフィン、アクリルアミド、メタクリルアミド、ビニルピロリドンなどのビニルアミド、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル、スチレン、ビニルピリジンなどのビニル芳香族化合物、アクリル酸、メタクリル酸などのビニルカルボン酸、p−スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、メタリルスルホン酸などのビニルスルホン酸、アクリル酸ナトリウム、メタクリル酸ナトリウム、p−スチレンスルホン酸ナトリウム、アリルスルホン酸ナトリウム、メタリルスルホン酸ナトリウムなどのビニルカルボン酸やビニルスルホン酸の塩などが挙げられるが、これらに限定されない。これらの共重合成分は1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0043】
熱可塑性ポリアクリロニトリルの具体例として、アクリロニトリル−アクリル酸メチル共重合体、アクリロニトリル−メタクリル酸エチル共重合体、アクリロニトリル−塩化ビニル共重合体、アクリロニトリル−アクリルアミド共重合体、アクリロニトリル−酢酸ビニル共重合体、アクリロニトリル−スチレン共重合体、アクリロニトリル−アクリル酸共重合体、アクリロニトリル−メタクリル酸ナトリウム共重合体などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0044】
熱可塑性ポリウレタンとして、ジイソシアネート、ポリオール、鎖伸長剤の3成分の反応によって得られる高分子化合物が挙げられる。
【0045】
ジイソシアネートの具体例として、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、1,3−シクロヘキサンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、2,4−トルエンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネートなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0046】
ポリオールとして、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリカーボネートポリオールなどが挙げられるが、これらに限定されない。ポリエーテルポリオールは、低分子量ポリオールや低分子量ポリアミンとアルキレンオキサイドとの開環付加重合により得られる。ポリエステルポリオールは、低分子量ポリオールと多価カルボン酸、多価カルボン酸エステル、多価カルボン酸無水物、多価カルボン酸ハライドとの縮合反応もしくはエステル交換反応により得られる。ポリカプロラクトンポリオールは、低分子量ポリオールとカプロラクトンとの開環重合により得られる。ポリカーボネートポリオールは、低分子量ポリオールとカーボネートとの付加重合により得られる。
【0047】
低分子量ポリオールの具体例として、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジグリセリン、キシリトール、ソルビトール、マンニトール、ジペンタエリスリトールショ糖などが挙げられるが、これらに限定されない。低分子量ポリアミンの具体例として、エチレンジアミン、1,3−プロパンジアミン、1,4−ブタンジアミン、1,6−ヘキサメチレンジアミン、1,4−シクロヘキサンジアミン、ヒドラジンなどが挙げられるが、これらに限定されない。アルキレンオキサイドの具体例として、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、テトラヒドロフランなどが挙げられるが、これらに限定されない。多価カルボン酸の具体例として、シュウ酸、マロン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、イタコン酸、アジピン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ダイマー酸などが挙げられるが、これらに限定されない。多価カルボン酸エステルの具体例として、多価カルボン酸のメチルエステル、エチルエステルなどが挙げられるが、これらに限定されない。多価カルボン酸無水物の具体例として、無水シュウ酸、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、無水トリメリット酸などが挙げられるが、これらに限定されない。多価カルボン酸ハライドの具体例として、シュウ酸ジクロライド、アジピン酸ジクロライドなどが挙げられるが、これらに限定されない。カプロラクトンの具体例として、ε−カプロラクトンが挙げられるが、これに限定されない。カーボネートの具体例として、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネートなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0048】
鎖伸長剤の具体例として、エタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコールなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0049】
変性ポリオレフィンは、α−オレフィンと共重合成分との共重合体であることが好適に採用できる。また、ポリオレフィンは、α−オレフィンの単独重合体であっても、2種以上のα−オレフィンの共重合体であっても、α−オレフィンと共重合成分との共重合体であってもよい。共重合体の形式として、ブロック共重合体やグラフト共重合体などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0050】
α−オレフィンの炭素数は2〜20であることが好ましく、α−オレフィンの分子鎖は直鎖状でも分岐鎖状でもよい。α−オレフィンの具体例として、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセン、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、3−エチル−1−ペンテン、3−エチル−1−ヘキセンなどが挙げられるが、これらに限定されない。これらのα−オレフィンは1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0051】
変性ポリオレフィンの共重合成分として、染料と親和性の高い極性官能基を含む不飽和化合物を好適に採用でき
る。染料と親和性の高い極性官能
基としては、カルボン酸基、カルボン酸無水物基、カルボン酸塩基、カルボン酸エステル基、カルボン酸アミド基などが挙げられる。変性ポリオレフィンまたはポリオレフィンの共重合成分の具体例として、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、アクリル酸、メタクリル酸などの不飽和カルボン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸などの不飽和カルボン酸無水物、メタクリル酸ナトリウム、アクリル酸ナトリウムなどの不飽和カルボン酸塩、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、マレイン酸モノエチルエステルなどの不飽和カルボン酸エステル、アクリルアミド、マレイン酸モノアミドなどの不飽和カルボン酸アミドなどが挙げられるが、これらに限定されない。これらの共重合成分は1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0052】
変性ポリオレフィンまたはポリオレフィンの具体例として、エチレン−マレイン酸共重合体、エチレン−フマル酸共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸−メタクリル酸ナトリウム共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、アクリル酸グラフトポリエチレン、無水マレイン酸グラフトポリエチレン、無水マレイン酸グラフトポリプロピレン、無水マレイン酸グラフトエチレン−プロピレン共重合体、アクリル酸グラフトエチレン−プロピレン共重合体、マレイン酸グラフトエチレン−プロピレン−ノルボルナジエン共重合体、アクリル酸グラフトエチレン−酢酸ビニル共重合体などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0053】
ポリ塩化ビニルは、塩化ビニルの単独重合体であっても、塩化ビニルと共重合成分との共重合体であってもよい。
【0054】
ポリ塩化ビニルの共重合成分の具体例として、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチルなどのアクリル酸エステル、エチレン、プロピレンなどのオレフィンなどが挙げられるが、これらに限定されない。これらの共重合成分は1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0055】
セルロース誘導体は、セルロースの構成単位であるグルコースに存在する3つの水酸基の少なくとも一部が他の官能基へ誘導体化された化合物である。例えば、セルロースへ1種のエステル基が結合したセルロース単独エステル、2種以上のエステル基が結合したセルロース混合エステル、1種のエーテル基が結合したセルロース単独エーテル、2種以上のエーテル基が結合したセルロース混合エーテル、エーテル基およびエステル基がそれぞれ1種または2種以上結合したセルロースエーテルエステルなどが挙げられるが、これらに限定されない。セルロース誘導体の置換度に関しては、特に制限がなく、溶融粘度、熱可塑
性などに応じて適宜選択することができる。また、セルロース誘導体が熱可塑性を示さない場合には、熱流動性を向上させる目的でセルロース誘導体へ可塑剤を添加してもよい。
【0056】
セルロース誘導体の具体例として、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート、セルロースバレレート、セルロースステアレートなどのセルロース単独エステル、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートバレレート、セルロースアセテートカプロエート、セルロースプロピオネートブチレート、セルロースアセテートプロピオネートブチレートなどのセルロース混合エステル、メチルセルロース、エチルセルロース、プロピルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースなどのセルロース単独エーテル、メチルエチルセルロース、メチルプロピルセルロース、エチルプロピルセルロース、ヒドロキシメチルメチルセルロース、ヒドロキシメチルエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどのセルロース混合エーテル、メチルセルロースアセテート、メチルセルロースプロピオネート、エチルセルロースアセテート、エチルセルロースプロピオネート、プロピルセルロースアセテート、プロピルセルロースプロピオネート、ヒドロキシメチルセルロースアセテート、ヒドロキシメチルセルロースプロピオネート、ヒドロキシエチルセルロースアセテート、ヒドロキシエチルセルロースプロピオネート、ヒドロキシプロピルセルロースアセテート、ヒドロキシプロピルセルロースプロピオネート、カルボキシメチルセルロースアセテート、カルボキシメチルセルロースプロピオネートなどのセルロースエーテルエステルなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0061】
本発明における熱可塑性樹脂の融点もしくは熱流動開始温度は、180〜270℃であることが好ましい。熱可塑性樹脂の融点もしくは熱流動開始温度が180℃以上であれば、溶融紡糸の際に熱可塑性樹脂が熱劣化することなく、ポリメチルペンテン系樹脂と複合化することができ、良好な機械的特性の複合繊
維が得られるため好ましい。一方、熱可塑性樹脂の融点が270℃以下であれば、溶融紡糸の際にポリメチルペンテン系樹脂が熱劣化することなく、熱可塑性樹脂と複合化することができ、良好な機械的特性のポリメチルペンテン複合繊
維が得られるため好ましい。熱可塑性樹脂の融点は190〜265℃であることがより好ましく、200〜260℃であることが更に好ましい。
【0062】
なお、本発明においてこれら融点および熱流動開始温度は以下の方法で測定することができる。前記ポリメチルペンテン系樹脂の融点および上記熱可塑性樹脂の融点は、示差走査熱量計(DSC)(例えばパーキンエルマー製示差走査熱量計DSC7型)を用いて測定することができる。具体的には、窒素雰囲気下において、試料約10mgを30℃から280℃まで昇温速度15℃/分で昇温後、280℃で3分間保持して試料の熱履歴を取り除く。その後、280℃から30℃まで降温速度15℃/分で降温して30℃で3分間保持した後、30℃から280℃まで昇温速度15℃/分で昇温し、2回目の昇温過程中に観測される吸熱ピークのピーク温度を融点(℃)とする。なお、測定は1試料につき3回行い、その平均値を融点とする。ただし、吸熱ピークのピーク幅が50℃より広い場合、もしくは吸熱ピークの吸熱量が5J/g未満の場合には融点として認知せず、以下の方法で熱流動開始温度を測定する。事前に真空乾燥したポリメチルペンテン系樹脂または熱可塑性樹脂について、フローテスター(例えば島津製作所製フローテスターCFT−500D型)にて、孔径1.0mm、孔長2.0mmのダイを使用して荷重2.16kgで測定を行う。試料1.0gを40℃から昇温速度6℃/分で昇温した際に、プランジャーが降下を開始した温度を熱流動開始温度(℃)とする。なお、測定は1試料につき3回行い、その平均値を熱流動開始温度とする。
【0063】
本発明における熱可塑性樹脂の溶融粘度は、後述するポリメチルペンテン系樹脂の溶融粘度(ηa)と熱可塑性樹脂の溶融粘度(ηb)との溶融粘度比(ηb/ηa)の範囲内であれば、熱可塑性樹脂の溶融粘度として好適に採用できる。また、本発明における熱可塑性樹脂の分子量や重合度は、熱可塑性樹脂の溶融粘度に応じて適宜選択することができる。
【0064】
本発明における熱可塑性樹脂は、比重に関して特に制限がなく、後述するポリメチルペンテン複合繊
維の比重の好ましい範囲内に含まれるようにポリメチルペンテン系樹脂との複合比率を適宜選択すれば、熱可塑性樹脂の比重に応じた軽量性を有するポリメチルペンテン複合繊
維を得ることができるため好ましい。
【0065】
本発明における熱可塑性樹脂は、副次的添加物を加えて種々の改質が行われたものであってもよい。副次的添加剤の具体例として、相溶化剤、可塑剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、蛍光増白剤、離型剤、抗菌剤、核形成剤、熱安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、着色防止剤、調整剤、艶消し剤、消泡剤、防腐剤、ゲル化剤、ラテックス、フィラー、インク、着色料、染料、顔料、香料などが挙げられるが、これらに限定されない。これらの副次的添加物は単独で使用してもよく、複数を併用してもよい。
【0066】
本発明では、海成分への島成分の分散性の向上や分散状態の制御、海成分と島成分の界面接着性の向上を目的として、必要に応じて相溶化剤を用いてもよい。また、溶融紡糸によって海島構造を形成させる際には、口金直下においてバラスと呼ばれる膨らみが発生し、繊維の細化変形が不安定になる傾向があるため、このバラスに伴う糸切れの抑制などの製糸操業性の改善を目的として、相溶化剤を用いてもよい。
【0067】
本発明において相溶化剤は、海成分と島成分のいずれか一方、もしくは海成分と島成分の両方へ添加してもよい。相溶化剤は、熱可塑性樹脂の種類、共重合成分、共重合率、海成分と島成分との複合比率などに応じて適宜選択することができる。なお、相溶化剤は単独で使用してもよく、複数を併用してもよい。
【0068】
本発明における相溶化剤として、疎水性が高いポリメチルペンテン系樹脂に親和性の高い疎水性成分と、島成分として用いられる熱可塑性樹脂に親和性の高い成分が、両方とも単一分子内に含まれている化合物を用いることができる。または、ポリメチルペンテン系樹脂に親和性の高い疎水性成分と、島成分として用いられる熱可塑性樹脂と反応しうる官能基が、両方とも単一分子内に含まれている化合物を用いることができる。
【0069】
相溶化剤を構成する疎水性成分の具体例として、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリスチレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブチレン共重合体、プロピレン−ブチレン共重合体、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0070】
相溶化剤について、熱可塑性樹脂に親和性の高い成分または熱可塑性樹脂と反応しうる官能基の具体例として、カルボン酸基、カルボン酸無水物基、カルボン酸塩基、カルボン酸エステル基、カルボン酸アミド基、アミノ基、イミノ基、アルコキシシリル基、シラノール基、シリルエーテル基、ヒドロキシル基、エポキシ基などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0071】
相溶化剤の具体例として、マレイン酸変性ポリエチレン、無水マレイン酸変性ポリプロピレン、無水マレイン酸変性ポリメチルペンテン、エポキシ変性ポリスチレン、無水マレイン酸変性スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体、アミノ変性スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体、イミノ変性スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0072】
本発明における相溶化剤の添加量は、ポリメチルペンテン系樹脂と熱可塑性樹脂の合計を100重量%とした場合に0.1〜15重量%であることが好ましい。相溶化剤の添加量が0.1重量%以上であれば、海成分と島成分との相溶化効果が得られ、糸切れの抑制など製糸操業性が改善されるため好ましい。また、相溶化効果によって島成分の分散径が小さくなり、ポリメチルペンテン複合繊維を染色した際に鮮やかで深みのある発色が得られるため好まし
い。一方、相溶化剤の添加量が15重量%以下であれば、過度の相溶化剤による製糸操業性の不安定化を抑制できるため好ましい。また、ポリメチルペンテン複合繊維においてポリメチルペンテン系樹脂や熱可塑性樹脂に由来する繊維特性や外観、風合いを維持することができるため好ましい。相溶化剤の添加量は、0.5〜12重量%であることがより好ましく、1〜10重量%であることが更に好ましい。
【0073】
次に、本発明のポリメチルペンテン複合繊維について説明する。
本発明のポリメチルペンテン複合繊維の比重は、0.83〜1.1であることが好ましい。ポリメチルペンテン系樹脂は、比重が0.83であり、単独で繊維化した場合、軽量性に優れた繊維を得ることができるものの染色することができないという欠点がある。本発明では、低比重のポリメチルペンテン系樹脂と、染色可能な熱可塑性樹脂を複合することによって、軽量性に優れるポリメチルペンテン系樹脂へ発色性を付与することができる。ポリメチルペンテン複合繊維の比重は、複合する熱可塑性樹脂の比重ならびに複合比率に応じて変化する。ポリメチルペンテン複合繊維の比重は、軽量性の観点から小さければ小さいほど好ましいが、1.1以下であることが好ましい。ポリメチルペンテン複合繊維の比重が1.1以下であれば、ポリメチルペンテン系樹脂による軽量性と熱可塑性樹脂による発色性を両立することができるため好ましい。ポリメチルペンテン複合繊維の比重は0.83〜1.05であることがより好ましく、0.83〜1.0であることが更に好ましい。
【0074】
本発明のポリメチルペンテン複合繊維の全繊度は、未延伸糸および延伸糸のいずれに関しても特に制限はないが、10〜500dtexであることが好ましい。ポリメチルペンテン複合繊維の全繊度が10dtex以上であれば、製糸操業性や高次加工における工程通過性が良好であることに加え、使用時に毛羽の発生が少なく、耐久性に優れるため好ましい。一方、ポリメチルペンテン複合繊維の全繊度が500dtex以下であれば、繊維ならびに繊維構造体とした場合に柔軟性を損なうことがないため好ましい。ポリメチルペンテン複合繊維の全繊度は、30〜400dtexであることがより好ましく、50〜300dtexであることが更に好ましい。
【0075】
本発明のポリメチルペンテン複合繊維の強度は、未延伸糸および延伸糸のいずれに関しても特に制限はないが、0.5〜5.0cN/dtexであることが好ましい。ポリメチルペンテン複合繊維の強度は、機械的特性の観点から高ければ高いほど好ましいが、0.5cN/dtex以上であることが好ましい。ポリメチルペンテン複合繊維の強度が0.5cN/dtex以上であれば、製糸操業性や高次加工における工程通過性が良好であることに加え、耐久性に優れる繊維ならびに繊維構造体が得られるため好ましい。ポリメチルペンテン複合繊維の強度は0.7〜5.0cN/dtexであることがより好ましく、1.0〜5.0cN/dtexであることが更に好ましい。
【0076】
本発明のポリメチルペンテン複合繊維の伸度は、未延伸糸および延伸糸のいずれに関しても特に制限はないが、5〜300%であることが好ましい。ポリメチルペンテン複合繊維の伸度が5%以上であれば、繊維ならびに繊維構造体の耐摩耗性が良好となり、毛羽の発生が少なくなるため好ましい。一方、ポリメチルペンテン複合繊維の未延伸糸の伸度が300%以下であれば、延伸における取り扱い性が良好であり、延伸によって機械的特性を向上させることができるため好ましい。また、ポリメチルペンテン複合繊維の延伸糸の伸度が30%以下であれば、繊維ならびに繊維構造体の寸法安定性が良好となるため好ましい。ポリメチルペンテン複合繊維が未延伸糸である場合、伸度は8〜280%であることが好ましく、10〜250%であることが更に好ましい。また、ポリメチルペンテン複合繊維が延伸糸である場合、伸度は8〜28%であることがより好ましく、10〜25%であることが更に好ましい。
【0077】
本発明のポリメチルペンテン複合繊維の初期引張抵抗度は、未延伸糸および延伸糸のいずれに関しても特に制限はないが、JIS L1013:1999の8.10に準じて測定した初期引張抵抗度が10〜100cN/dtexであることが好ましい。ポリメチルペンテン複合繊維の初期引張抵抗度が10cN/dtex以上であれば、高次加工における取り扱い性や工程通過性が良好であるため好ましい。一方、ポリメチルペンテン複合繊維の初期引張抵抗度が100cN/dtex以下であれば、繊維ならびに繊維構造体の柔軟性を損なうことがないため好ましい。ポリメチルペンテン複合繊維の初期引張抵抗度は15〜80cN/dtexであることがより好ましく、20〜60cN/dtexであることが更に好ましい。
【0078】
本発明のポリメチルペンテン複合繊維の平均繊維径は、未延伸糸および延伸糸のいずれに関しても特に制限はないが、3〜100μmであることが好ましい。ポリメチルペンテン複合繊維の平均繊維径が3μm以上であれば、製糸操業性や高次加工における工程通過性が良好であり、機械的特性に優れたポリメチルペンテン複合繊維が得られるため好ましい。一方、ポリメチルペンテン複合繊維の平均繊維径が100μm以下であれば、繊維ならびに繊維構造体の柔軟性を損なうことがないため好ましい。ポリメチルペンテン複合繊維の平均繊維径は5〜70μmであることがより好ましく、7〜50μmであることが更に好ましい。
【0079】
本発明のポリメチルペンテン複合繊維の繊維横断面における島成分の分散径は、0.001〜2μmであることが好ましい。繊維横断面における島成分の分散径は、発色性の観点から小さければ小さいほど好ましいが、2μm以下であることが好ましい。ポリメチルペンテン複合繊維の繊維横断面における島成分の分散径が2μm以下であれば、溶融紡糸の際に紡糸口金からの吐出が安定し、製糸操業性が良好となるため好ましい。さらには、海成分のポリメチルペンテン系樹脂に分散した島成分の熱可塑性樹脂による優れた発色性が得られるため好ましい。ポリメチルペンテン複合繊維の繊維横断面における島成分の分散径は、0.001〜1.5μmであることがより好ましく、0.001〜1.0μmであることが更に好ましい。
【0080】
本発明のポリメチルペンテン複合繊維は、繊維横断面における島成分の分散径の変動係数CVが1〜50%であ
る。変動係数CVの測定方法の詳細については後述するが、変動係数CVは均一性の指標であり、標準偏差を平均値で除した値である。本発明のポリメチルペンテン複合繊維の繊維横断面における島成分の分散径の変動係数CVは、発色性の観点から小さければ小さいほど好ましいが、1%が技術的な下限である。繊維横断面における島成分の分散径の変動係数CVが50%以下であれば、海成分のポリメチルペンテン系樹脂に分散した島成分の熱可塑性樹脂による優れた発色性が得られ
る。繊維横断面における島成分の分散径の変動係数CVは1〜45%であることがより好ましく、1〜40%であることが更に好ましく、1〜30%であることが特に好ましく、1〜20%であることが極めて好ましい。
【0081】
本発明のポリメチルペンテン複合繊維は、繊維の断面形状に関して特に制限がなく、真円状の円形断面であってもよく、非円形断面であってもよい。非円形断面の具体例として、多葉形、多角形、扁平形、楕円形、C字形、H字形、S字形、T字形、W字形、X字形、Y字形、田字形、井桁形、中空形などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0082】
本発明のポリメチルペンテン複合繊維は、繊維横断面における島成分の断面形状に関して特に制限がなく、真円状の円形断面であってもよく、非円形断面であってもよい。非円形断面の具体例として、多葉形、多角形、扁平形、楕円形、T字形、X字形、Y字形などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0096】
本発明のポリメチルペンテン複合繊
維は、副次的添加物を加えて種々の改質が行われたものであってもよい。副次的添加剤の具体例として、相溶化剤、可塑剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、蛍光増白剤、離型剤、抗菌剤、核形成剤、熱安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、着色防止剤、調整剤、艶消し剤、消泡剤、防腐剤、ゲル化剤、ラテックス、フィラー、インク、着色料、染料、顔料、香料などが挙げられるが、これらに限定されない。これらの副次的添加物は単独で使用してもよく、複数を併用してもよい。
【0097】
本発明のポリメチルペンテン複合繊
維は、繊維の形態に関して特に制限がなく、モノフィラメント、マルチフィラメント、ステープルなどのいずれの形態であってもよい。
【0098】
本発明のポリメチルペンテン複合繊
維は、一般の繊維と同様に延伸、仮撚、撚糸などの加工が可能であり、製織や製編についても一般の繊維と同様に扱うことができる。
【0099】
本発明のポリメチルペンテン複合繊
維からなる繊維構造体の形態は、特に制限がなく、公知の方法に従い、織物、編物、パイル布帛、不織布や紡績糸、詰め綿などにすることができる。また、本発明のポリメチルペンテン複合繊
維からなる繊維構造体は、いかなる織組織または編組織であってもよく、平織、綾織、朱子織あるいはこれらの変化織や、経編、緯編、丸編、レース編あるいはそれらの変化編などが好適に採用できる。
【0100】
本発明のポリメチルペンテン複合繊
維は、繊維構造体にする際にポリメチルペンテン複合繊
維と、他の繊維を交織や交編などによって組み合わせてもよいし、ポリメチルペンテン複合繊
維と、他の繊維を用いて混繊糸とした後に繊維構造体としてもよい。
【0101】
次に、本発明のポリメチルペンテン複合繊
維の製造方法について説明する。
【0102】
本発明におけるポリメチルペンテン複合繊維は、海成分がポリメチルペンテン系樹脂であり、島成分が熱可塑性樹脂である海島構造からなる。
【0103】
本発明では、海島構造を形成させる方法として、溶融紡糸の一種である海島型複合紡糸やポリマーアロイ型紡糸などが挙げられるが、これらに限定されな
い。
【0104】
本発明のポリメチルペンテン複合繊維の海成分/島成分の複合比率(重量比)は20/80〜99/1であることが好ましい。海成分の複合比率が20重量%以上であれば、溶融紡糸の際に島成分同士の合一のような複合異常などが生じず、紡糸口金からの吐出が安定するため好ましい。さらには、発色性の高い熱可塑性樹脂が、屈折率の低いポリメチルペンテン系樹脂に散在しているため、鮮やかで深みのある発色を実現できることに加え、熱可塑性樹脂に対してポリメチルペンテン系樹脂の特長である軽量性を付与することができるため好ましい。一方、海成分の複合比率が99重量%以下、すなわち島成分の複合比率が1重量%以上であれば、海成分に対して多数配置された島成分を染色することによって、島成分への透過光や島成分からの反射光が乱雑となり、鮮やかで深みのある発色が得られるため好ましい。海成分/島成分の複合比率(重量比)は30/70〜95/5であることがより好ましく、40/60〜90/10であることが更に好ましい。
【0106】
本発明のポリメチルペンテン複合繊維の繊維横断面における島成分数は、海島型複合紡糸を行う場合には8〜200個であることが好ましい。島成分数が8個以上であれば、芯鞘型複合繊維や島成分数が8個未満の海島型複合繊維と異なり、島成分への透過光や島成分からの反射光が乱雑となり、鮮やかで深みのある発色が得られるため好ましい。一方、島成分数が200個以下であれば、紡糸口金の構造が複雑にならず、島成分同士の合一のような複合異常などによる製糸操業性や機械的特性の悪化が抑制されるため好ましい。海島型複合紡糸を行う場合の繊維横断面における島成分数は16〜180個であることがより好ましく、32〜160個であることが更に好ましい。ポリマーアロイ型紡糸を行う場合には、繊維横断面における
島成分数は、発色性の観点から島成分数は多ければ多いほど好ましいが、8個以上であ
る。島成分数が8個以上であれば、島成分への透過光や島成分からの反射光が乱雑となり、鮮やかで深みのある発色が得られるため好ましい。ポリマーアロイ型紡糸を行う場合の繊維横断面における島成分数は16個以上であることがより好ましく、32個以上であることが更に好ましい。
【0108】
本発明では、海成分であるポリメチルペンテン系樹脂の溶融粘度(ηa)と、島成分である熱可塑性樹脂の溶融粘度(ηb)との溶融粘度比(ηb/ηa)は、0.1〜4.0であることが好ましい。溶融粘度ηの測定方法の詳細については後述するが、溶融粘度比とは、ポリメチルペンテン系樹脂、熱可塑性樹脂のそれぞれについて、測定温度を紡糸温度とし、剪断速度を1216sec
−1として測定した溶融粘度の比である。なお、紡糸温度とは、溶融紡糸機の紡糸ブロックにおいて紡糸パックを加熱する温度のことである。溶融紡糸によって複合化する場合、特にポリマーアロイ型紡糸を行う場合には、海成分への島成分の分散状態は、海成分と島成分の溶融粘度比に応じて変化するため、海成分と島成分の溶融粘度比は、繊維横断面における島成分の分散
径を制御する上で重要となる。すなわち、海成分と島成分の溶融粘度比によって、繊維横断面における島成分の分散径の変動係数C
Vが変化することとなる。溶融粘度比(ηb/ηa)が0.1以上であれば、溶融紡糸の際に島成分同士の合一のような複合異常が生じないため、繊維横断面における島成分の分散径が粗大化することなく、良好な分散状態の海島構造となるため好まし
い。一方、溶融粘度比(ηb/ηa)が4.0以下であれば、溶融紡糸の際に紡糸口金からの吐出が安定し、製糸操業性が良好となるため好ましい。また、繊維横断面における島成分の分散径の均一性が高いため、染色した際に染め斑がなく均染性に優れ
るため好まし
い。溶融粘度比(ηb/ηa)は0.3〜3.0であることがより好ましく、0.5〜2.0であることが更に好ましい。
【0109】
本発明では、溶融紡糸を行う前にポリメチルペンテン系樹脂および熱可塑性樹脂を乾燥させ、含水率を0.3重量%以下としておくことが好ましい。含水率が0.3重量%以下であれば、溶融紡糸の際に水分によって発泡することがなく、安定して紡糸を行うことが可能となるため好ましい。含水率は0.2重量%以下であることがより好ましく、0.1重量%以下であることが更に好ましい。
【0110】
溶融紡糸の方法としては、公知の方法に従い、以下に示す方法などが挙げられるが、これらに限定されない。本発明では海島構造を形成させるために、海島型複合紡糸もしくはポリマーアロイ型紡糸を好適に採用できる。
【0111】
海島型複合紡糸を行う場合には、必要に応じてチップを乾燥した後、エクストルーダー型やプレッシャーメルター型などの溶融紡糸機へチップを供給して、海成分と島成分をそれぞれ別々に溶融し、計量ポンプで計量する。その後、紡糸ブロックにおいて加温した紡糸パックへ導入して、紡糸パック内で溶融ポリマーを濾過した後、海島型複合用紡糸口金で海成分と島成分を合流させて海島構造として、紡糸口金から吐出して繊維糸条とする方法を好適に採用できる。
【0112】
ポリマーアロイ型紡糸を行う場合には、紡糸口金から吐出して繊維糸条とする方法として、以下に示す例が挙げられるが、これらに限定されない。第一の例として、海成分と島成分をエクストルーダーなどで事前に溶融混練して複合化したチップを必要に応じて乾燥した後、溶融紡糸機へチップを供給して溶融し、計量ポンプで計量する。その後、紡糸ブロックにおいて加温した紡糸パックへ導入して、紡糸パック内で溶融ポリマーを濾過した後、紡糸口金から吐出して繊維糸条とする方法が挙げられる。第二の例として、必要に応じてチップを乾燥し、チップの状態で海成分と島成分を混合した後、溶融紡糸機へ混合したチップを供給して溶融し、計量ポンプで計量する。その後、紡糸ブロックにおいて加温した紡糸パックへ導入して、紡糸パック内で溶融ポリマーを濾過した後、紡糸口金から吐出して繊維糸条とする方法が挙げられる。
【0113】
紡糸口金から吐出された繊維糸条は、海島型複合紡糸、ポリマーアロイ型紡糸のいずれの場合においても、冷却装置によって冷却固化し、第1ゴデットローラーで引き取り、第2ゴデットローラーを介してワインダーで巻き取り、巻取糸とする。なお、製糸操業性、生産性、繊維の機械的特性を向上させるために、必要に応じて紡糸口金下部に2〜20cmの長さの加熱筒や保温筒を設置してもよい。また、給油装置を用いて繊維糸条へ給油してもよく、交絡装置を用いて繊維糸条へ交絡を付与してもよい。
【0114】
溶融紡糸における紡糸温度は、ポリメチルペンテン系樹脂と熱可塑性樹脂の融点や耐熱性などに応じて適宜選択することができるが、220〜320℃の範囲であることが好ましい。紡糸温度が220℃以上であれば、紡糸口金より吐出された繊維糸条の伸長粘度が十分に低下するため吐出が安定し、さらには、紡糸張力が過度に高くならず、糸切れを抑制することができるため好ましい。一方、紡糸温度が320℃以下であれば、紡糸時の熱分解を抑制することができ、得られるポリメチルペンテン複合繊
維の機械的特性不良や着色が生じないため好ましい。紡糸温度は、240〜300℃であることがより好ましく、260〜280℃であることが更に好ましい。
【0115】
溶融紡糸における紡糸速度は、熱可塑性樹脂の種類や複合比率、紡糸温度などに応じて適宜選択することができるが、10〜5000m/分であることが好ましい。紡糸速度が10m/分以上であれば、走行糸条が安定し、糸切れを抑制することができるため好ましい。一方、紡糸速度が5000m/分以下であれば、繊維糸条を十分に冷却することができ、安定した紡糸を行うことができるため好ましい。紡糸速度は、300〜4000m/分であることがより好ましく、500〜3000m/分であることが更に好ましい。
【0116】
溶融紡糸によって引き取られた繊維は、所望の繊維特性を有するポリメチルペンテン複合繊
維を得るために延伸されてもよい。延伸を行う場合には、一旦引き取った繊維を延伸する2工程法、もしくは引き取ることなく連続して延伸する直接紡糸延伸法のいずれの方法によってもよい。
【0117】
延伸を行う場合には、1段延伸法または2段以上の多段延伸法のいずれの方法によってもよい。延伸における加熱方法としては、走行糸条を直接的あるいは間接的に加熱できる装置であれば、特に限定されない。加熱方法の具体例として、加熱ローラー、熱ピン、熱板、温水、熱水などの液体浴、熱空、スチームなどの気体浴、レーザーなどが挙げられるがこれらに限定されない。これらの加熱方法は単独で使用してもよく、複数を併用してもよい。加熱方法としては、加熱温度の制御、走行糸条への均一な加熱、装置が複雑にならない観点から、加熱ローラーとの接触、熱ピンとの接触、熱板との接触、液体浴への浸漬を好適に採用できる。
【0118】
延伸を行う場合の延伸倍率は、熱可塑性樹脂の種類や複合比率、延伸後のポリメチルペンテン複合繊
維の強度や伸度などに応じて適宜選択することができるが、1.02〜7.0倍であることが好ましい。延伸倍率が1.02倍以上であれば、延伸によってポリメチルペンテン複合繊
維の強度や伸度などの機械的特性を向上させることができるため好ましい。一方、延伸倍率が7.0倍以下であれば、延伸時の糸切れが抑制され、安定した延伸を行うことができるため好ましい。延伸倍率は、1.2〜6.0倍であることがより好ましく、1.5〜5.0倍であることが更に好ましい。
【0119】
延伸を行う場合の延伸温度は、熱可塑性樹脂の種類や複合比率、延伸後のポリメチルペンテン複合繊
維の強度や伸度などに応じて適宜選択することができるが、50〜150℃であることが好ましい。延伸温度が50℃以上であれば、延伸に供給される糸条の予熱が充分に行われ、延伸時の熱変形が均一となり、繊度斑の発生を抑制できるため好ましい。一方、延伸温度が150℃以下であれば、延伸ローラーに対する繊維の滑り性が良好となるため、糸切れが抑制され、安定した延伸を行うことができるため好ましい。延伸温度は、60〜140℃であることがより好ましく、70〜130℃であることが更に好ましい。また、必要に応じて50〜150℃の熱セットを行ってもよい。
【0120】
延伸を行う場合の延伸速度は、熱可塑性樹脂の種類や複合比率、延伸方法が2工程法であるか直接紡糸延伸法であるかなどに応じて適宜選択することができるが、30〜1000m/分であることが好ましい。延伸速度が30m/分以上であれば、走行糸条が安定し、糸切れが抑制できるため好ましい。一方、延伸速度が1000m/分以下であれば、延伸時の糸切れが抑制され、安定した延伸を行うことができるため好ましい。延伸速度は、50〜800m/分であることがより好ましく、100〜500m/分であることが更に好ましい。
【0127】
本発明で
は、必要に応じて、ポリメチルペンテン複合繊維、ポリメチルペンテン複合繊維からなる繊維構造
体などのいずれの状態において染色してもよ
い。
【0128】
本発明における染色方法は、特に制限がなく、公知の方法に従い、チーズ染色機、液流染色機、ドラム染色機、ビーム染色機、ジッガー、高圧ジッガーなどを好適に採用することができる。
【0129】
本発明では、熱可塑性樹脂の種類に応じて染料を適宜選択することができる。いずれの染料を用いた場合も、ポリメチルペンテン複合繊
維を構成するポリメチルペンテン系樹脂はほとんど染色されることはないが、熱可塑性樹脂が染色されることによって、発色性に優れた繊維ならびに繊維構造体を得ることが可能となる。熱可塑性樹脂として、ポリエステルを用いる場合には分散染料、ポリアミドを用いる場合には酸性染料、熱可塑性ポリアクリロニトリルを用いる場合にはカチオン染料、熱可塑性ポリウレタンを用いる場合には酸性染料、変性ポリオレフィンを用いる場合にはカチオン染料、ポリ塩化ビニルを用いる場合には分散染料、セルロース誘導体を用いる場合には分散染料を好適に採用できるが、これらに限定されない。
【0130】
本発明では、染料濃度や染色温度に関して特に制限がなく、公知の方法を好適に採用できる。また、必要に応じて、染色加工前に精練を行ってもよく、染色加工後に還元洗浄を行ってもよい。
【0131】
本発明により得られるポリメチルペンテン複合繊
維からなる繊維構造体は、軽量性に優れるポリメチルペンテン繊維へ鮮やかで深みのある発色性が付与されたものである。そのため、従来のポリオレフィン系繊維が使用されている用途に加えて、衣料用途ならびに軽量性や発色性が要求される用途への展開が可能であ
る。従来のポリオレフィン系繊維が使用されている用途として、タイルカーペット、家庭用敷物、自動車用マットなどのインテリア用途や、ロープ、養生ネット、ろ過布、細幅テープ、組紐、椅子張りなどの資材用途などが挙げられるが、これらに限定されない。さらに、本発明によって拡張される用途として、婦人服、紳士服、裏地、下着、ダウン、ベスト、インナー、アウターなどの一般衣料、ウインドブレーカー、アウトドアウェア、スキーウェア、ゴルフウェア、水着などのスポーツ衣料、ふとん用詰め綿、ふとん用側地、ふとんカバー、毛布、毛布用側地、毛布カバー、枕の充填材、枕カバー、シーツなどの寝具、テーブルクロス、カーテンなどのインテリア、ベルト、かばん、縫糸、寝袋、テントなどの資材などの用途が挙げられるが、これらに限定されない。
【実施例】
【0132】
以下、実施例
により本発明をより詳細に説明する。なお、実施例中の各特性値は、以下の方法で求めたものである。
【0133】
A.融点
ポリメチルペンテン系樹脂および熱可塑性樹脂について、パーキンエルマー製示差走査熱量計(DSC)DSC7型を用いて融点を測定した。窒素雰囲気下において、試料約10mgを30℃から280℃まで昇温速度15℃/分で昇温後、280℃で3分間保持して試料の熱履歴を取り除いた。その後、280℃から30℃まで降温速度15℃/分で降温後、30℃で3分間保持した。さらに、30℃から280℃まで昇温速度15℃/分で昇温し、2回目の昇温過程中に観測された吸熱ピークのピーク温度を融点(℃)とした。なお、測定は1試料につき3回行い、その平均値を融点とした。
【0134】
B.海/島/相溶化剤複合比率
ポリメチルペンテン複合繊維の原料として用いた海成分の重量、および、島成分の重量、相溶化剤の重量(相溶化剤使用の場合)から、海/島/相溶化剤複合比率(重量比)を算出した。
【0135】
C.溶融粘度比
事前に真空乾燥したポリメチルペンテン系樹脂(a)および熱可塑性樹脂(b)について、東洋精機製キャピログラフ1Bにて、孔径1.0mm、孔長10mmのキャピラリーを使用して窒素雰囲気下で5分間滞留させた後に測定を行った。なお、測定温度は後述する実施例中の紡糸温度と同様とし、剪断速度1216sec
−1での見掛け粘度(Pa・s)を溶融粘度(Pa・s)とした。測定は1試料につき3回行い、その平均値を溶融粘度とした。ポリメチルペンテン系樹脂(a)、熱可塑性樹脂(b)の溶融粘度をそれぞれηa、ηbとし、下記式を用いて溶融粘度比を算出した。
溶融粘度比(ηb/ηa)=ηb/ηa
D.繊度
温度20℃、湿度65%RHの環境下において、INTEC製電動検尺機を用いて、実施例によって得られたポリメチルペンテン複合繊
維100mの繊維をかせ取りした。得られたかせの重量を測定し、下記式を用いて繊度(dtex)を算出した。なお、測定は1試料につき5回行い、その平均値を繊度とした。
繊度(dtex)=繊維100mの重量(g)×100
E.強度、伸度
強度および伸度は、実施例によって得られたポリメチルペンテン複合繊
維を試料とし、JIS L1013:1999(化学繊維フィラメント糸試験方法)8.5に準じて算出した。温度20℃、湿度65%RHの環境下において、島津製作所製オートグラフAG−50NISMS型を用いて、初期試料長20cm、引張速度20cm/分の条件で引張試験を行った。最大荷重を示す点の応力(cN)を繊度(dtex)で除して強度(cN/dtex)を算出し、最大荷重を示す点の伸び(L1)と初期試料長(L0)を用いて下記式によって伸度(%)を算出した。なお、測定は1試料につき10回行い、その平均値を強度および伸度とした。
伸度(%)={(L1−L0)/L0}×100
F.初期引張抵抗度
初期引張抵抗度は、実施例によって得られたポリメチルペンテン複合繊
維を試料とし、JIS L1013:1999(化学繊維フィラメント糸試験方法)8.10に準じて算出した。上記Eと同様に測定を行って荷重−伸長曲線を描き、この曲線の原点近傍において伸長変化に対する荷重変化の最大点を求め、JIS L1013:1999(化学繊維フィラメント糸試験方法)8.10に記載の式を用いて初期引張抵抗度(cN/dtex)を算出した。なお、測定は1試料につき5回行い、その平均値を初期引張抵抗度とした。
【0136】
H.平均繊維径、島成分の分散
径
実施例によって得られたポリメチルペンテン複合繊
維を白金−パラジウム合金で蒸着した後、日立製走査型電子顕微鏡(SEM)S−4000型を用いて、繊維軸に対して垂直な断面、すなわち繊維横断面を観察し、繊維横断面の顕微鏡写真を撮影した。平均繊維径を測定するための観察は300倍で行い、無作為に抽出した30本の繊維の直径を測定し、その平均値を平均繊維径(μm)とした。島成分の分散
径を求めるための観察は300倍、500倍、1000倍、3000倍、5000倍、10000倍、30000倍、50000倍の各倍率で行い、顕微鏡写真を撮影する際には100個以上の島成
分が観察できる最も低い倍率を選択した。撮影された写真について、同一の写真から無作為に抽出した100個の島成
分の直径を測定し、その平均値を島成分の分散径(μm
)とした。繊維横断面に存在する島成
分は必ずしも真円とは限らないため、真円ではない場合には面積を測定して、真円に換算した際の直径を島成分の分散
径として採用した。
【0137】
単糸の繊維横断面に存在する島成
分が100個未満の場合には、同条件で製造した複数の単糸を試料として繊維横断面を観察した。顕微鏡写真を撮影する際には単糸の全体像が観察できる最も高い倍率を選択した。撮影された写真について、各単糸の繊維横断面に存在する島成分の分散
径を測定し、合計100個の島成分の分散
径の平均値を島成分の分散
径とした。
【0138】
I.島成分の分散
径の変動係数CV
上記Hで測定した100個の島成分の分散
径を基にして、標準偏差(σ
ALL)および平均値(D
ALL)を算出した後、下記式によって島成分の分散
径の変動係数CV(%)を算出した。
変動係数CV(%)=(σ
ALL/D
ALL)×100
J.比重
比重は、実施例によって得られたポリメチルペンテン複合繊
維を試料とし、JIS L1013:1999(化学繊維フィラメント糸試験方法)8.17の浮沈法に準じて算出した。重液には水を用い、軽液にはエチルアルコールを用いて比重測定液を調製した。温度20±0.1℃の恒温槽中において、繊維試料約0.1gを比重測定液に30分間放置した後、試料の浮沈状態を観察した。浮沈状態に応じて重液または軽液を添加して、さらに30分間放置した後に試料が浮沈平衡状態となったのを確認して、比重測定液の比重を測定し、試料の比重を算出した。なお、測定は1試料につき5回行い、その平均値を比重とした。
【0140】
M.L
*値
実施例によって得られたポリメチルペンテン複合繊
維を用いて筒編みを作製して試料とし、精練を70℃で20分間行った後、乾熱セットを160℃で2分間行い、常法に従って染色した。染色後の試料を、ミノルタ製分光測色計CM−3700d型を用いてD65光源、視野角度10°、光学条件をSCE(正反射光除去法)としてL
*値を測定した。なお、測定は1試料につき3回行い、その平均値をL
*値とした。各繊維についての具体的な染色方法は、以下のとおりである。
【0141】
熱可塑性樹脂としてポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレンテレフタレート(PPT)、ポリ乳酸(PLA)、セルロースジアセテート(CDA)、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)を用いた場合は、染料に分散染料である日本化薬製Kayalon Polyester Black EX−SF200を用いた。筒編みに対して染料を4重量%加え、pHを5.0に調整した染色液で、浴比1:100、染色時間60分の条件で染色した。なお、染色温度は、PETの場合は130℃、PPT、PLA、CDA、CAPの場合は100℃とした。
【0142】
熱可塑性樹脂としてナイロン6(N6)、ナイロン66(N66)を用いた場合は、染料に酸性染料である日本化薬製Kayanol Milling Black TLBを用いた。筒編みに対して染料を8重量%加え、pHを4.5に調整した染色液で、浴比1:100、染色温度100℃、染色時間60分の条件で染色した。
【0143】
熱可塑性樹脂としてポリメチルメタクリレート(PMMA)、無水マレイン酸変性ポリプロピレン(MPP)を用いた場合は、染料にカチオン染料である日本化薬製Kayacryl Black YAを用いた。筒編みに対して染料を8重量%加え、pHを4.0に調整した染色液で、浴比1:100、染色温度100℃、染色時間60分の条件で染色した。
【0144】
N.軽量性
実施例によって得られたポリメチルペンテン複合繊
維について、上記Jで算出した繊維の比重を軽量性の指標として、◎、○、△、×の4段階で評価した。評価は、◎が最も良く、○、△の順に悪くなり、×が最も劣ることを示す。繊維の比重が「1.0未満」を◎、「1.0以上1.1未満」を○、「1.1以上1.2未満」を△、「1.2以上」を×とし、「1.0以上1.1未満」の○以上を合格とし
た。
【0146】
P.発色性
上記Mで染色した筒編みのL
*値を発色性の指標として、◎、○、△、×の4段階で評価した。評価は、◎が最も良く、○、△の順に悪くなり、×が最も劣ることを示す。L
*値が「40未満」を◎、「40以上50未満」を○、「50以上60未満」を△、「60以上」を×とし、「40以上50未満」の○以上を合格とした。
【0147】
Q.洗濯堅牢度
洗濯堅牢度の評価は、JIS L0844:2004(洗濯に対する染色堅ろう度試験方法)A−2号に準じて行った。上記Mで染色した筒編みを試料として、大栄科学製作所製ラウンダメーターを用いて添付白布とともに試料を洗濯処理した後、試料の変退色の度合いをJIS L0804:2004に規定の変退色用グレースケールを用いて級判定し、添付白布の汚染の度合いをJIS L0805:2005に規定の汚染用グレースケールを用いて級判定することによって、洗濯堅牢度を評価した。なお、洗濯堅牢度は1〜5級まで0.5級間隔で表され、5級が最も優れており、1級が最も劣るものである。洗濯堅牢度が「4級以上5級未満」を◎、「3級以上4級未満」を○、「2級以上3級未満」を△、「2級未満」を×とし、「3級以上4級未満」の○以上を合格とした。
【0148】
R.摩擦堅牢度
摩擦堅牢度の評価は、JIS L0849:2004(摩擦に対する染色堅ろう度試験方法)7.1の乾燥試験に準じて行った。上記Mで染色した筒編みを試料として、大栄科学精機製学振型摩擦試験機RT−200を用いて白綿布(かなきん3号)で試料へ摩擦処理を施した後、白綿布の汚染の度合いをJIS L0805:2005に規定の汚染用グレースケールを用いて級判定することによって、摩擦堅牢度を評価した。なお、摩擦堅牢度は1〜5級まで0.5級間隔で表され、5級が最も優れており、1級が最も劣るものである。摩擦堅牢度が「4級以上5級未満」を◎、「3級以上4級未満」を○、「2級以上3級未満」を△、「2級未満」を×とし、「3級以上4級未満」の○以上を合格とした。
【0149】
S.耐光堅牢度
耐光堅牢度の評価は、JIS L0842:2004(紫外線カーボンアーク灯光に対する染色堅ろう度試験方法)に準じて行った。上記Iで染色した筒編みを試料として、スガ試験機製紫外線オートフェードメーターU48AUを用いてカーボンアーク灯光照射を行い、試料の変退色の度合いをJIS L0804:2004に規定の変退色用グレースケールを用いて級判定することによって、耐光堅牢度を評価した。なお、耐光堅牢度は1〜5級まで0.5級間隔で表され、5級が最も優れており、1級が最も劣るものである。耐光堅牢度が「4級以上5級未満」を◎、「3級以上4級未満」を○、「2級以上3級未満」を△、「2級未満」を×とし、「3級以上4級未満」の○以上を合格とした。
【0151】
U.染め斑
上記Mで染色した筒編みについて、5年以上の品位判定の経験を有する検査員5名の合議によって◎、○、△、×の4段階で評価した。評価は、◎が最も良く、○、△の順に悪くなり、×が最も劣ることを示す。「非常に均一に染色されており、全く染め斑が認められない」を◎、「ほぼ均一に染色されており、ほとんど染め斑が認められない」を○、「ほとんど均一に染色されておらず、うっすらと染め斑が認められる」を△、「均一に染色されておらず、はっきりと染め斑が認められる」を×とし、「ほぼ均一に染色されており、ほとんど染め斑が認められない」の○以上を合格とした。
【0152】
実施例1
海成分としてポリメチルペンテン(PMP)(三井化学製DX820、融点232℃、MFR180g/10分)を80重量%、島成分としてポリ乳酸(PLA)(融点168℃、重量平均分子量14.5万)を20重量%の配合比で、二軸エクストルーダーを用いて混練温度260℃で混練を行った。二軸エクストルーダーより吐出されたストランドを水冷した後、ペレタイザーにて5mm長程度にカットして、ペレットを得た。なお、海成分と島成分の溶融粘度比は1.7であった。得られたペレットを95℃で12時間真空乾燥した後、エクストルーダー型溶融紡糸機へ供給して溶融させ、紡糸温度260℃で紡糸口金(吐出孔径0.3mm、吐出孔長0.6mm、孔数36、丸孔)から吐出させて紡出糸条を得た。この紡出糸条を風温20℃、風速25m/分の冷却風で冷却し、給油装置で油剤を付与して収束させ、1000m/分で回転する第1ゴデットローラーで引き取り、第1ゴデットローラーと同じ速度で回転する第2ゴデットローラーを介して、ワインダーで巻き取って180dtex−36fの未延伸糸を得た。得られた未延伸糸を第1ホットローラー温度90℃、第2ホットローラー温度130℃、延伸倍率1.8倍の条件で延伸し、100dtex−36fの延伸糸を得た。得られたポリメチルペンテン複合繊維の延伸糸を用いて、丸編機で筒編みを作製した後、前述の方法で精練、乾熱セット、染色を行った。
【0153】
得られたポリメチルペンテン複合繊維の繊維特性、およびポリメチルペンテン複合繊維からなる筒編みの布帛特性の評価結果を表1に示す。得られたポリメチルペンテン複合繊維の比重は0.92であり、極めて軽量性に優れていた。また、屈折率の低いポリメチルペンテンからなる海成分の中に、発色性の高いポリ乳酸が島成分として微分散しているため、布帛全体が均一かつ鮮明に染まり、極めて優れた発色性を有していた。さらには、洗濯、摩擦、耐光の各種堅牢度についても合格レベルであった。
【0154】
実施例2
海成分をポリメチルペンテン(PMP)(三井化学製RT18、融点232℃、MFR26g/10分)に変更した以外は、実施例1と同様にポリメチルペンテン複合繊維および筒編みを作製した後、精練、乾熱セット、染色を行った。なお、海成分と島成分の溶融粘度比は1.1であった。
【0155】
得られたポリメチルペンテン複合繊維の繊維特性、およびポリメチルペンテン複合繊維からなる筒編みの布帛特性の評価結果を表1に示す。海成分と島成分の溶融粘度比が小さく、島成分の分散径が小さいため、L
*値が低く、鮮やかで深みのある発色が見られた。軽量性にも極めて優れており、洗濯、摩擦、耐光の各種堅牢度についても合格レベルであった。
【0156】
実施例3〜5
海成分と島成分の複合比率を表1に示すとおり変更した以外は、実施例1と同様にポリメチルペンテン複合繊維および筒編みを作製した後、精練、乾熱セット、染色を行った。
【0157】
得られたポリメチルペンテン複合繊維の繊維特性、およびポリメチルペンテン複合繊維からなる筒編みの布帛特性の評価結果を表1に示す。実施例3では、ポリ乳酸の複合比率が高いため、比重がやや高いものの軽量性に優れており、洗濯、摩擦、耐光の各種堅牢度についてはわずかに低いものの合格レベルであった。発色性については、極めて優れるものであった。実施例4では、軽量かつ高発色であり、各種堅牢度についても合格レベルであり、極めて優れた布帛特性であった。実施例5では、ポリ乳酸の複合比率が低いため、L
*値はやや高いものの布帛全体が均一かつ鮮明に染まり、その他の布帛特性についても合格レベルであった。
【0158】
実施例6、7
海成分のポリメチルペンテン(PMP)(三井化学製DX820、融点232℃、MFR180g/10分)と、島成分のポリ乳酸(PLA)(融点168℃、重量平均分子量14.5万)を95℃で12時間真空乾燥した後、海成分を80重量%、島成分を20重量%の配合比でプレッシャーメルター型複合紡糸機へ供給して別々に溶融させ、紡糸温度260℃で海島型複合用紡糸口金(吐出孔径0.3mm、吐出孔長0.6mm、孔数36、丸孔)から吐出させて紡出糸条を得た。なお、海島型複合用紡糸口金として、実施例6では島成分数が8個のものを用い、実施例7では島成分数が32個のものを使用した。この紡出糸条を風温20℃、風速25m/分の冷却風で冷却し、給油装置で油剤を付与して収束させ、1000m/分で回転する第1ゴデットローラーで引き取り、第1ゴデットローラーと同じ速度で回転する第2ゴデットローラーを介して、ワインダーで巻き取って180dtex−36fの未延伸糸を得た。得られた未延伸糸を第1ホットローラー温度90℃、第2ホットローラー温度130℃、延伸倍率1.8倍の条件で延伸し、100dtex−36fの延伸糸を得た。得られたポリメチルペンテン複合繊維の延伸糸を用いて、丸編機で筒編みを作製した後、前述の方法で精練、乾熱セット、染色を行った。
【0159】
得られたポリメチルペンテン複合繊維の繊維特性、およびポリメチルペンテン複合繊維からなる筒編みの布帛特性の評価結果を表1に示す。実施例6では、島成分数が8個であり、海成分を透過した光が染色された島成分へ到達する可能性がわずかに低いため、L
*値はやや高いものの布帛全体が均一かつ鮮明に染まり、発色性に優れていた。また、軽量性や各種堅牢度については、極めて優れるものであった。実施例7では、島成分数が32個であり、染色された島成分への透過光や染色された島成分からの反射光が乱雑となるため、L
*値が低く、鮮やかで深みのある発色が見られた。また、その他の布帛特性についても合格レベルであった。実施例6、7においては、屈折率の低いポリメチルペンテンからなる海成分の中に、発色性の高いポリ乳酸が島成分として微分散しているため、発色性に優れたポリメチルペンテン複合繊維を得ることができた。
【0160】
実施例8
相溶化剤としてアミノ変性スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体(SEBS)(JSR製ダイナロン8630P)を外割で5重量%添加した以外は、実施例1と同様にポリメチルペンテン複合繊維および筒編みを作製した後、精練、乾熱セット、染色を行った。なお、PMP、PLA、SEBSの複合比率(重量比)は80/20/5であり、PMP、PLA、SEBSの合計を100とした場合には76.2/19.0/4.8に換算される。
【0161】
得られたポリメチルペンテン複合繊維の繊維特性、およびポリメチルペンテン複合繊維からなる筒編みの布帛特性の評価結果を表1に示す。相溶化剤を添加したことによってポリメチルペンテンとポリ乳酸の相溶性が向上し、島成分の分散径が小さくなるとともにL
*値が低くなり、鮮明で深みのある極めて優れた発色性が得られた。軽量性にも極めて優れており、洗濯、摩擦、耐光の各種堅牢度についても合格レベルであった。
【0162】
実施例9〜16
表2に示すとおり、島成分をポリ乳酸からそれぞれの熱可塑性樹脂へ変更した。熱可塑性樹脂として、実施例9ではポリエチレンテレフタレート(PET)(東レ製T701T、融点257℃)、実施例10ではポリプロピレンテレフタレート(PPT)(シェル製コルテラCP513000、融点225℃)、実施例11ではナイロン6(N6)(東レ製アミランCM1017、融点225℃)、実施例12ではナイロン66(N66)(東レ製CM3001−N、融点265℃)、実施例13ではポリメチルメタクリレート(PMMA)(三菱レイヨン製アクリペットVH000、融点140℃)、実施例14では無水マレイン酸変性ポリプロピレン(MPP)(三洋化成製ユーメックス1010、融点142℃)、実施例15ではセルロースアセテートプロピオネート(CAP)(イーストマンケミカル製CAP−482−20、融点195℃)、実施例16ではセルロースジアセテート(CDA)(ダイセル製アセチ、フタル酸ジエチル22%含有、融点160℃)を使用した。ポリメチルペンテンについては、実施例9、11〜13では三井化学製RT18を用い、実施例10、14〜16では三井化学製DX820を使用した。紡糸温度については、実施例9、12では290℃、実施例10、11、13、14では260℃、実施例15、16では240℃とした。その他の条件については、実施例1と同様にポリメチルペンテン複合繊維および筒編みを作製した後、精練、乾熱セット、染色を行った。なお、海成分と島成分の溶融粘度比は、それぞれ表2に示すとおりであった。
【0163】
得られたポリメチルペンテン複合繊維の繊維特性、およびポリメチルペンテン複合繊維からなる筒編みの布帛特性の評価結果を表2に示す。一部の熱可塑性樹脂では、発色性や耐光堅牢度がやや低い結果であったものの、いずれの熱可塑性樹脂を用いた場合も海成分の中に島成分が微分散しているため、発色性に優れるとともに、軽量性や洗濯、摩擦、耐光の各種堅牢度についても合格レベルであった。
【0164】
比較例1
島成分を添加せず、ポリメチルペンテンを単成分で使用した以外は、実施例1と同様にポリメチルペンテン繊維および筒編みを作製した後、精練、乾熱セット、染色を行った。なお、染色には実施例1と同じ分散染料を使用した。
【0165】
得られたポリメチルペンテン繊維の繊維特性、およびポリメチルペンテン繊維からなる筒編みの布帛特性の評価結果を表3に示す。ポリメチルペンテンは極性官能基を有さないため染料によって染色されにくく、極めて発色性に劣るものであった。
【0166】
比較例2〜4
芯鞘型複合用紡糸口金(吐出孔径0.3mm、吐出孔長0.6mm、孔数36、丸孔)を用い、芯成分と鞘成分を表3に示す複合比率とした以外は、実施例6と同様にポリメチルペンテン複合繊維および筒編みを作製した後、精練、乾熱セット、染色を行った。なお、比較例2〜4においては、海成分は鞘成分に相当し、島成分は芯成分に相当する。
【0167】
得られたポリメチルペンテン複合繊維の繊維特性、およびポリメチルペンテン複合繊維からなる筒編みの布帛特性の評価結果を表3に示す。比較例2では、芯成分であるポリ乳酸が染色されているものの、ほとんど染色されていない鞘成分のポリメチルペンテンに覆われているため、L
*値は高く、鮮明で深みのある発色は得られなかった。比較例3、4において、複合比率を変更してポリ乳酸の比率を高めた場合においても、発色性の改善は見られず、発色性に劣るものであった。比較例2〜4のように芯鞘型複合繊維とした場合には、染色された島成分への透過光や染色された島成分からの反射光が乱雑とならないため、ポリメチルペンテン系樹脂へ発色性を付与することができなかった。
比較例5
海成分として高密度ポリエチレン(HDPE)(プライムポリマー製ハイゼックス2200J、融点135℃)を80重量%、島成分としてエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)(三井・デュポン製エバフレックスEV150、融点61℃)を20重量%の配合比で、二軸エクストルーダーを用いて混練温度155℃で混練を行った。二軸エクストルーダーより吐出されたストランドを水冷した後、ペレタイザーにて5mm長程度にカットして、ペレットを得た。なお、海成分と島成分の溶融粘度比は2.8であった。得られたペレットを95℃で12時間真空乾燥した後、エクストルーダー型溶融紡糸機へ供給して溶融させ、紡糸温度155℃で紡糸口金(吐出孔径0.3mm、吐出孔長0.6mm、孔数36、丸孔)から吐出させて紡出糸条を得た。この紡出糸条を風温20℃、風速25m/分の冷却風で冷却し、給油装置で油剤を付与して収束させ、250m/分で回転する第1ゴデットローラーで引き取り、第1ゴデットローラーと同じ速度で回転する第2ゴデットローラーを介して、ワインダーで巻き取って100dtex−36fの未延伸糸を得た。得られた高密度ポリエチレン複合繊維の未延伸糸を用いて、丸編機で筒編みを作製した後、前述の方法で精練、乾熱セット、染色を行った。なお、染料は上記M項記載の酸性染料を使用した。
【0168】
得られた高密度ポリエチレン複合繊維の繊維特性、および高密度ポリエチレン複合繊維からなる筒編みの布帛特性の評価結果を表3に示す。得られた高密度ポリエチレン複合繊維は軽量性に優れるものの、酸性染料によるエチレン−酢酸ビニル共重合体の染色が不十分であり、発色性に極めて劣るものであった。また、島成分の分散径の変動係数CVが大きいため、鮮明で深みのある発色性は得られなかった。
【0169】
比較例6
海成分をポリプロピレン(PP)(日本ポリプロ製ノバテックFY6、融点170℃)、混練温度、紡糸温度をそれぞれ190℃に変更した以外は、比較例5と同様にポリプロピレン複合繊維および筒編みを作製した後、精練、乾熱セット、染色を行った。
【0170】
得られたポリプロピレン複合繊維の繊維特性、およびポリプロピレン複合繊維からなる筒編みの布帛特性の評価結果を表3に示す。得られたポリプロピレン複合繊維は軽量性に優れるものの、比較例5と同様に酸性染料によるエチレン−酢酸ビニル共重合体の染色が不十分であり、発色性に極めて劣るものであった。また、島成分の分散径の変動係数CVが大きいため、鮮明で深みのある発色性は得られなかった。
【0191】
【表1】
【0192】
【表2】
【0193】
【表3】