特許第6299232号(P6299232)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6299232
(24)【登録日】2018年3月9日
(45)【発行日】2018年3月28日
(54)【発明の名称】移植機
(51)【国際特許分類】
   A01C 11/02 20060101AFI20180319BHJP
【FI】
   A01C11/02 303C
【請求項の数】5
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2014-9628(P2014-9628)
(22)【出願日】2014年1月22日
(65)【公開番号】特開2015-136316(P2015-136316A)
(43)【公開日】2015年7月30日
【審査請求日】2016年11月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】村並 昌実
(72)【発明者】
【氏名】大久保 嘉彦
(72)【発明者】
【氏名】山根 暢宏
(72)【発明者】
【氏名】東 幸太
(72)【発明者】
【氏名】田▲崎▼ 昭雄
【審査官】 中村 圭伸
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−289621(JP,A)
【文献】 特開2002−176814(JP,A)
【文献】 特開2002−045011(JP,A)
【文献】 特公昭31−009803(JP,B1)
【文献】 特開2001−161118(JP,A)
【文献】 実開昭54−057145(JP,U)
【文献】 特開2005−333925(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01C 11/02
B60B 35/00 − 35/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体を進行させる後輪(14)を設け、該後輪(14)に伝動するチェーンケース(20)を設け、機体の進行に伴って苗を収容した植付具(28)を圃場に突き刺して植付を行う移植機において、
該植付具(28)を昇降させる昇降リンク機構(29)を設け、該植付具(28)の降下で圃場に植付穴を穿設し、植付具(28)が下死点(A)から所定高さまで上昇した位置で植付具(28)の下部が前後に開口して苗を植付穴に投入して植え付ける構成とし、
前記チェーンケース(20)にブレーキドラム(46)と、該ブレーキドラム(46)に接触して機体の走行速度を低下させるか或いは走行停止させるブレーキアーム(46a)を設け、該ブレーキアーム(46a)と前記昇降リンク機構(29)をブレーキケーブル(49)で連結し、前記植付具(28)が降下して植付穴を穿設して苗を植付穴に投入する間、前記ブレーキアーム(46a)をブレーキドラム(46)に接触させて走行速度を低下させるか或いは走行停止させる構成としたことを特徴とする移植機。
【請求項2】
植付具(28)が下死点(A)から上昇する過程で植付具(28)の前部材(28F)が前方へ動作せずに後部材(28R)が後方へ動作して開口することを特徴とする請求項1に記載の移植機。
【請求項3】
植付具(28)が下死点(A)から上昇する過程で前部材(28F)と後部材(28R)が後方へ移動しながら開口動作することを特徴とする請求項1に記載の移植機。
【請求項4】
植付具(28)の上部周囲に内側へ傾斜した傾斜縁押(176)を設け、植付具(28)の降下で植付穴を穿設すると共に該植付穴の周縁部を傾斜縁押(176)で圧迫することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の移植機。
【請求項5】
機体に畝(U)を跨いで走行する前輪(13)を設け、該前輪(13)の支持軸(168)を支持する支持アーム(165)を設け、
該支持アーム(165)は、前記前輪(13)を垂直な姿勢で支持する垂直支持部(166)と、前記前輪(13)を内側に傾けて畝(U)の側面を転がる姿勢で支持する傾斜取付部(167)を備えることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の移植機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、玉葱やレタス、たばこ等の苗や種芋等を植付装置で圃場に移植する移植機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の移植機は、下記特許文献1に記載の如く、下端がくちばし状に尖った作穴体が周期的に昇降し、最上昇の上死点で作穴体内に苗が供給され、降下過程で作穴体が土壌に突入して植付穴を形成し、最降下の下死点で作穴体の下部が開いて苗が排出されて作穴体が開いたままで上昇する動作をして植付けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−60238号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記移植機の作穴体は、土壌に突入して植付穴を穿設した後に昇降動作の下死点において作穴体が土壌内で下部を開いて内部の苗を植付穴に供給し、苗の葉を挟まないように下部を開いたままで上昇する。このために、作穴体が開く際に植付穴を崩して苗の周囲を軟弱な状態にして苗が倒れた状態で植えつけられたり、作穴体が上昇する際に土を苗に振り掛ったりして、後の生育状態が悪くなる。
【0005】
本発明は、苗を収納した植付具を昇降開閉して苗を畝に植え付ける移植機において、苗が直立状態で安定して植え付けられるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の上記課題は、次の解決手段で解決される。
請求項1に記載の発明は、機体を進行させる後輪(14)を設け、該後輪(14)に伝動するチェーンケース(20)を設け、機体の進行に伴って苗を収容した植付具(28)を圃場に突き刺して植付を行う移植機において、該植付具(28)を昇降させる昇降リンク機構(29)を設け、該植付具(28)の降下で圃場に植付穴を穿設し、植付具(28)が下死点(A)から所定高さまで上昇した位置で植付具(28)の下部が前後に開口して苗を植付穴に投入して植え付ける構成とし、前記チェーンケース(20)にブレーキドラム(46)と、該ブレーキドラム(46)に接触して機体の走行速度を低下させるか或いは走行停止させるブレーキアーム(46a)を設け、該ブレーキアーム(46a)と前記昇降リンク機構(29)をブレーキケーブル(49)で連結し、前記植付具(28)が降下して植付穴を穿設して苗を植付穴に投入する間、前記ブレーキアーム(46a)をブレーキドラム(46)に接触させて走行速度を低下させるか或いは走行停止させる構成としたことを特徴とする移植機とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、植付具(28)が下死点(A)から上昇する過程で植付具(28)の前部材(28F)が前方へ動作せずに後部材(28R)が後方へ動作して開口することを特徴とする請求項1に記載の移植機とする。
【0008】
請求項3に記載の発明は、植付具(28)が下死点(A)から上昇する過程で前部材(28F)と後部材(28R)が後方へ移動しながら開口動作することを特徴とする請求項1に記載の移植機とする。
【0009】
請求項4に記載の発明は、植付具(28)の上部周囲に内側へ傾斜した傾斜縁押(176)を設け、植付具(28)の降下で植付穴を穿設すると共に該植付穴の周縁部を傾斜縁押(176)で圧迫することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の移植機とする。
【0010】
請求項5に記載の発明は、機体に畝(U)を跨いで走行する前輪(13)を設け、該前輪(13)の支持軸(168)を支持する支持アーム(165)を設け、該支持アーム(165)は、前記前輪(13)を垂直な姿勢で支持する垂直支持部(166)と、前記前輪(13)を内側に傾けて畝(U)の側面を転がる姿勢で支持する傾斜取付部(167)を備えることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の移植機とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載の発明によって、植付具(28)が降下過程で圃場に差し込まれて植付穴が穿設され、この植付穴から植付具(28)が下死点(A)から所定高さまで上昇した位置まで抜き出された後に植付具(28)の下部が開くので、植付具(28)の下部の開き動作で植付穴が崩されることなく、苗を植付穴に落下して供給するので、小さな植付穴に苗が投入されて直立状態で植え付けられる。
また、植付具(28)が植付穴を穿設して苗を植付穴に投入する間、走行速度を低下させるか或いは走行停止させることにより、植付具(28)が植付穴を崩すことが防止される。
【0012】
請求項2に記載の発明によって、請求項1に記載の発明の効果に加えて、植付具(28)が下死点(A)から上昇する過程で、機体の進行に伴って植付具(28)が植付穴の前方へ移動するが、前部材(28F)は前方へ動作せず、後部材(28R)が後方へ動作することで、植付具(28)の下部の開き動作で植付穴が崩されることなく、植付具(28)の下部を所望の開き量にすることができ、又は植付穴の中央に苗を供給することができる。また、前部材(28F)の内面に沿って苗が植付穴の真上に案内されるので、苗を植付穴へ確実に供給する。
【0013】
請求項3に記載の発明によって、請求項1に記載の発明の効果に加えて、植付具(28)が下死点(A)から上昇する過程で機体が前進しても前部材(28F)と後部材(28R)が後方へ移動しながら開口動作することで、植付具(28)の下部の開き動作で植付穴が崩されることなく、植付具(28)の下部を所望の開き量にすることができ、又は植付穴の中央に苗を供給することができる。また、植付具(28)が植付穴の略真上を保って開口するので、苗を植付穴に確実に落下供給して直立状態にする。
【0014】
請求項4に記載の発明によって、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の発明の効果に加えて、植付具(28)の降下によって植付穴が穿設され傾斜縁押(176)で植付穴の周縁部が押し固められるので、植付穴が崩れ難くなり、植付穴で苗を直立状態にして植え付ける。
【0015】
請求項5に記載の発明によって、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の発明の効果に加えて、機体を移動走行させる場合には、前輪(13)垂直支持部(166)で垂直に支持することで、機体の前側を支えることができる。
また、植え付け作業を行う場合には、前(13)傾斜取付部(167)で内側に傾けて畝Uの左右側面を転がる姿勢で支持することで、機体を(U)に沿って走行させることができる
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】たばこ苗移植機の左側面図、(a)植付具先端の昇降軌跡の側面図
図2】たばこ苗移植機の平面図
図3】たばこ苗移植機に設けられた固定予備苗台及び可動予備苗台の平面図
図4】(a)苗供給部を下から見た底面図、(b)苗供給部の一部透視上面図
図5】苗供給部の取り付け構造を説明する側断面図
図6】植付伝動ケースの側面図
図7】植付装置駆動ケースの側断面図
図8】植付伝動ケースの展開平面図
図9】植付クラッチの一部側断面図
図10】植付装置の左前方から見た斜視図
図11】植付装置の右後方から見た斜視図
図12】植付装置の側面図
図13】(a)〜(d)、植付動作中の各位置における植付装置の側面図
図14】植付具の軌跡を示す側面図
図15】植付具の別実施例を示す側面図
図16】植付具のさらに別実施例を示す側面図
図17】植付具に押圧プレートを取り付けた実施例の側面図
図18】前輪取り付け構成の別実施例を示す一部正面図
図19】別実施例の移植機の側面図
図20】別実施例の供給カップの平面図
図21】別実施例の供給カップの一部側断面図
図22】別実施例の供給カップの斜視図
図23】別実施例の昇降機構を示す植付具の側面図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面に基づき、本発明の実施形態のたばこ苗移植機の構成及び動作について説明する。
尚、以下の説明では、たばこ苗移植機10の前部とは、エンジン11を配置した側のことであり、又、後部とは、操縦ハンドル16を配置した側のことである。又、操縦ハンドル16側からエンジン11側を見た作業者の右手側をたばこ苗移植機10の右側とし、左手側を左側とする。
【0018】
図1は、本発明の実施の形態の移植機の一例として、たばこの苗を移植するたばこ苗移植機10を示す側面図であり、図2は、たばこ苗移植機10の平面図である。図2では、可動予備苗台を収納した状態を二点鎖線で示した。
【0019】
図1図2に示す通り、本実施の形態のたばこ苗移植機10は、機体を前進走行可能とする走行車体1と、走行車体1の後部に設けられた歩行操縦用の操縦ハンドル16と、走行車体1の後部であって操縦ハンドル16の前側に設けられた、圃場にたばこ苗を植え付ける植付装置19と、植付装置19の上方に設けられ、植付装置19にたばこ苗を供給する苗供給部31とを備えている。
【0020】
又、本実施の形態のたばこ苗移植機10は、左右前輪13及び左右後輪14が跨いで走行する畝Uに植付具28にて苗を植え付けて苗移植作業を行うが、畝案内機構160が機体の前部に設けられており、畝Uの左右の斜面にそれぞれ左右の畝案内ローラー250が接触して、機体が畝Uに沿って案内走行する。
【0021】
なお、図18に示す如く、機体の前端に畝U上を転がって植え付け直前の畝面を鎮圧する前鎮圧輪164を設けて、左右前輪13の支持軸168を支持する支持アーム165に垂直取付部166と傾斜取付部167を設け、傾斜取付部167に支持軸168を取り付けて畝Uの左右側面を左右前輪13が転がって走行方向を畝Uに誘導するようにしても良い。機体を路上走行する場合には、支持軸168を垂直取付部166に取り付ける。
【0022】
図3に、本実施の形態のたばこ苗移植機10に設けられた固定予備苗台及び可動予備苗台の平面図を示し、可動予備苗台を収納した状態を二点鎖線で示した。
固定予備苗台300Lと300Rは、第1連結部材301と第2連結部材302によって互いに並行配置状態で連結され(図3参照)、第1連結部材301側が、前部支持部材303を介して走行車体1の上面に固定されている。又、第2連結部材302の後方近傍において、左右一対の固定予備苗台300Lと300Rの互いに対向する側壁部が、それぞれ後部支持部材304を介して走行車体1の上面であって、前部支持部材303の取り付け位置より後方に固定されている。又、左右一対の固定予備苗台300L、300Rは、走行車体1の前後方向において後下がりに傾斜している。
【0023】
又、図に示す通り、走行車体1上面の、後部支持部材304よりも後方であって、平面視で左右一対の固定予備苗台300Lと300Rの後端部側であって走行車体1の中央位置寄りの角部において、左右一対の円筒状可動支持部材310L、310Rが立設されている。そして、その円筒状可動支持部材310L、310Rの円筒状の孔部には、略L字状に曲げられた左右一対のパイプ状部材311L、311Rの短辺側が回動可能に挿入されており、それぞれの長辺側は、可動予備苗台350Lと350Rの底面側に取り付けられている。
【0024】
又、図に示す通り、パイプ状部材311L、311Rの長辺側は、可動予備苗台350L、350Rのほぼ対角線上の位置に固定されており、可動予備苗台350Lと350Rは、図において実線で表した状態(即ち、使用状態)においては、走行車体1の前後方向において後下がりに傾斜させるべく、パイプ状部材311L、311Rの曲げ角度は、90度より小さい鋭角に設定されている。
【0025】
これにより、左右一対の可動予備苗台350L、350Rは、使用時には、走行車体1の前後方向において後下がりに傾斜しており、又、不使用時には、左右一対の円筒状可動支持部材310L、310Rを回動中心として、それぞれ矢印B、矢印Cの方向(図3参照)に手動で回動させることにより、左右一対の固定予備苗台300L、300Rの下方に収納され、その収納状態において、走行車体1の左右方向において外側に向けて下り勾配に傾斜している。
【0026】
次に、施肥機の構成について説明する。
図1図2に示す通り、左右一対の固定予備苗台300L、300Rの後方で、苗供給部31の前方で、且つ、使用時の位置にある左右一対の可動予備苗台350L、350Rで挟まれた位置に、左右一対の施肥機400L、400Rが設けられている。左右一対の施肥機400L、400Rには、それぞれ、圃場に供給する肥料を貯留する施肥ホッパー410L、410Rと、その下部に設けられ肥料を繰り出す肥料繰り出し部420L、420Rが設けられている。
【0027】
図1に示す通り、左右一対の施肥機400L、400Rの内、左側の施肥機400Lの下部に取り付けられた肥料繰り出し部420Lには、植付装置19の前側に肥料を吐出する前ホース430Lが配置されており、又、左右一対の施肥機400L、400Rの内、右側の施肥機400Rの下部に取り付けられた肥料繰り出し部420Rには、植付装置19の後側に肥料を吐出する後ホース430Rが配置されている。これらの前ホース430L及び後ホース430Rの開口先端部を保持するホース保持部431が走行車体1の下部に配置されている。
【0028】
走行車体1は、前部にエンジン11及び主伝動ケース12と、走行車輪としての左右一対の前輪13及び後輪14を備え、後部には、上述した通り、植付装置19、苗供給部31及び操縦ハンドル16を備え、更に、鎮圧輪15を備えている。
【0029】
そして、走行車体1が圃場内の畝Uを跨ぐべく、前輪13及び後輪14が畝間を走行し、畝Uの上面の左右幅方向における中央位置に植付装置19により苗を植え付けていく構成となっている。
【0030】
又、図2に示す通り、主伝動ケース12の左右端には該主伝動ケース12を基準として回動可能な走行エクステンションケース40を左右それぞれ設け、左右の走行エクステンションケース40のそれぞれの端部に走行チェーンケース20を取り付けている。したがって、エンジン11から入力される主伝動ケース12内の動力を走行チェーンケース20内に伝達する構成となっている。
【0031】
走行チェーンケース20の回動先端部の左右外側には、走行車輪である左右一対の後輪14をそれぞれ取り付け、この左右一対の後輪14の駆動により機体が走行する構成となっている。したがって、主伝動ケース12は、走行車輪としての後輪14に伝動する伝動装置となっている。
【0032】
又、図2に示す通り、主伝動ケース12の後端には左右方向に延びる後フレーム21を固着して設け、後フレーム21の後端面の右端部には、機体の右寄りの位置で前後方向に延びる主フレーム22を設けている。主フレーム22の後端部には操縦ハンドル16を設け、この操縦ハンドル16が主フレーム22及び後フレーム21を介して主伝動ケース12に支持された構成となっている。後フレーム21の左右一方寄り(右寄り)の位置の上面には、植付伝動ケース26の前下端部を載せて該植付伝動ケース26を固着して設けている。
【0033】
又、主伝動ケース12の後部で左右方向の中央には、油圧昇降シリンダ23を設けている。この油圧昇降シリンダ23は、主伝動ケース12に取り付けられた油圧切替バルブ部24(図1参照)に固着して設けられ、主伝動ケース12に取り付けられた油圧ポンプからの油路を油圧切替バルブ部24で切り替えることにより作動する。
【0034】
又、油圧昇降シリンダ23のシリンダロッドの後端には左右に延びる横杆43を設け、この横杆43の左右端部にそれぞれロッドとなる左側後輪昇降ロッド44及び右側後輪昇降ロッド45を連結し、左側後輪昇降ロッド44及び右側後輪昇降ロッド45の他端をそれぞれの走行エクステンションケース40に取り付けられた上側アーム40aに枢着して、横杆43と走行エクステンションケース40とが連結された構成となっている。
【0035】
したがって、油圧昇降シリンダ23の伸縮により横杆43、左側後輪昇降ロッド44及び右側後輪昇降ロッド45を介して主伝動ケース12の左右の出力軸回りに走行チェーンケース20を回動し、該走行チェーンケース20の回動により後輪14が上下して走行車体1が昇降する構成となっている。
【0036】
又、左側後輪昇降ロッド44が伸縮するべく該左側後輪昇降ロッド44の中途部に油圧ポンプからの油圧により作動する左右傾斜用油圧シリンダ25を設けており、該左右傾斜用油圧シリンダ25の伸縮により右側の後輪14の上下位置を基準として左側の後輪14を上下させて、畝Uの谷部の凹凸に関係なく走行車体1を所望の左右傾斜姿勢に制御する構成となっている。
【0037】
尚、主伝動ケース12の右側には振り子式の左右傾斜センサ42が設けられて、この左右傾斜センサ42の検出により油圧切替バルブ部24に備えられた左右傾斜用切替バルブを介して左右傾斜用油圧シリンダ25を作動させ、走行車体1を所望の左右傾斜姿勢に制御する構成となっている。
【0038】
本実施の形態の植付装置19は、苗を1個ずつ圃場の畝に植え付けるべく、主伝動ケース12内からの動力が主伝動ケース12の後側に設けた植付伝動ケース26と、その植付伝動ケース26に取り付けられた植付装置駆動ケース27を介して伝達され作動する構成になっている。
【0039】
植付装置19は、先端が尖った嘴状の植付具28と該植付具28を昇降させるべく作動する昇降リンク機構29とで構成される。植付具28の先端は、植付具28の昇降動作と機体の前進によって、図1(a)に示す通り、側面視で、下死点Aまで略垂直に降下し、上昇の最初は略垂直に上昇しやがて前に移動しながら上昇して上死点Cに達する軌跡17を繰り返し作動する。植付具28が機体に対して後方へ移動することで機体の前進とともに略垂直な昇降となる。植付具28の開き動作は略垂直上昇の開き開始点Bで行われる。
【0040】
以上の構成のもとで、本実施の形態のたばこ苗移植機10を使用しようとする作業者は、左右一対の固定予備苗台300L、300Rの下方に収納されている左右一対の可動予備苗台350L、350Rを、円筒状可動支持部材310L、310Rを中心として回動して、図3に示した位置まで展開し固定ピン(図示省略)等で一時的に固定する。そして、それら予備苗台の上に、たばこ苗を載せて、移植作業の準備を行う。
【0041】
そして、走行車体1の走行と共に歩行する作業者が、作業位置S(図2参照)において、可動予備苗台350L(350R)、固定予備苗台300L(300R)に予め準備された苗を一つずつ手で掴んで、機体の走行に合わせて矢印A方向(図2参照)に回転している供給カップ33に、それぞれ入れていく。
【0042】
供給カップ33の開閉蓋が、所定位置Pで開くと、供給カップ33内の苗が下方の植付具28に供給される。植付具28は、図1(a)に示す作動の軌跡17の下死点Aまで土中に突入して植付穴を形成し、植付具28が植付穴から抜け出した後の開き開始点Bで鳥の嘴の如く前後に開いて、内部に保持されていた苗を植付穴に落下する。
【0043】
そして、その植え付け位置の前方と後方にそれぞれ配置された前ホース430Lと後ホース430Rから、左右一対の肥料繰り出し部420L、420Rにてそれぞれ計量された施肥料が所定のタイミングで播かれる。
【0044】
次に、苗供給部31の構成、及び苗供給部31から植付具28への苗の供給動作について説明する。
図4(a)は、苗供給部31を下から見た底面図であり、図4(b)は、苗供給部31を上から見た一部透視上面図である。図5は、苗供給部31の取り付け構造を説明する側断面図であり、供給回転台32の回転中心を通る断面を示している。
【0045】
図2に示す通り、苗供給部31は、植付伝動ケース26からの動力が供給部駆動軸77によって伝達され、作動する。
苗供給部31は、植付装置19の上方に設けられた、上端と下端に開口を有する供給カップ33を8つ貫通させてループ状に固定配置した回転可能な供給回転台32と、略C字型の供給カップ開閉ガイド35と、供給回転台32を反時計回りに回転させる回転駆動機構78等を備えている。
【0046】
供給回転台32は、図5に示す通り、外周縁部が下方に曲げられた盆状部材であって、その円形平面部の外周寄りに等間隔に開けられた8つの孔に、両端が開放された略筒状の供給カップ33がそれぞれ貫通固定されている。又、供給回転台32の中央部には、回転駆動機構78からの回転力により供給回転台32を反時計回りに回転させる供給駆動回転軸122が固定配置されている。
【0047】
回転駆動機構78は、機体に固定された支柱39に固定されるとともに、補助プレート79に固定されている。補助プレート79は、主フレーム22に固定された補助プレート支持板132を介して主フレーム22に固定されている。
【0048】
そして、図4(a)に示す通り、各供給カップ33の底部には、上下方向に可動する開閉蓋34が、それぞれ1つずつ設けられている。そして、各供給カップ33の下方には、供給回転台32の矢印A方向への回転により供給カップ33が、植付具28の上方の位置である所定位置Pに来たときにのみ供給カップ33の底部の開閉蓋34が開くべく、環状の一部を切り欠いた略C字型の供給カップ開閉ガイド35が、支柱39に固定されている。尚、供給カップ開閉ガイド35は、前記所定位置P以外の位置で、開閉蓋34を下側から接触して支えて開閉蓋34が開くことを規制する。
【0049】
苗は、機体の走行と共に歩行する作業者が、可動予備苗台350L(350R)、固定予備苗台300L(300R)にある苗を一つずつ手で掴んで、機体の走行に合わせて矢印A方向に回転している供給カップ33に、それぞれ入れていく。
【0050】
供給カップ33の開閉蓋34が、前記所定位置Pで開くと、供給カップ33内の苗が下方の植付具28に供給される。植付具28は、図1(a)に示す作動の軌跡17の下死点Aまで土中に所定深さまで突入して植付穴を穿設するとともに上昇途中の開き開始点Bで鳥の嘴の如く前後に開いて、内部に保持されていた苗を落下して植え付ける。
【0051】
次に、植付装置19を詳しく説明する。
図6に本実施の形態の植付伝動ケースの側面図を示し、図7に本実施の形態の植付装置駆動ケースの側面図を示し、図8に本実施の形態の植付伝動ケースの断面展開平面図を示す。
【0052】
植付伝動ケース26は、図8に示すように、植付装置19の揺動カム駆動軸88と苗供給部31の駆動回転軸120を配置し、主伝動ケース12の後面から入力軸193で植付伝動ケース26内に動力が入力される。
【0053】
植付伝動ケース26内の伝動について説明すると、前後方向の入力軸193から一対のベベルギヤ194a、194bを介して左右方向の第一軸195へ伝動される。尚、植付伝動ケース26の直前で入力軸193には、所定以上の負荷トルクで動力を断つ安全クラッチ196を設けており、メカロック等により植付装置19に過大な作動負荷が生じたときに安全クラッチ196により動力を断って植付装置19及び植付伝動ケース26を含む植付伝動機構の破損を防止する。
【0054】
第一軸195に該第一軸195と一体回転する第一駆動スプロケット197を設け、第一駆動スプロケット197から第一伝動チェーン198を介して第一従動スプロケット199へ伝動し、該第一従動スプロケット199と一体回転する左右方向の第二軸200へ伝動する。
【0055】
第二軸200の回転は、第二伝動チェーン113で間欠クラッチ88aを介して揺動カム駆動軸88に伝動し、第三伝動チェーン114で株間変速装置110に伝動する。
株間変速装置110の変速回転は、植付クラッチ157を介して苗供給部31の駆動回転軸120を変速駆動し、間欠クラッチ88aの制御側に入力する。従って、株間変速装置110によって変速された動力が間欠的に苗供給部31のテーブル駆動に合わせて植付装置19の揺動カム駆動軸88に伝動され、植付装置19の昇降リンク機構29を駆動する。
【0056】
前記株間変速装置110は、駆動側の小ギヤ110a,中ギヤ110b,大ギヤ110cと従動側の小ギヤ110d,中ギヤ110e,大ギヤ110fとが各々カウンタギヤを介して噛合しており、且つ、駆動側の小ギヤ110a,中ギヤ110b,大ギヤ110cの何れかを駆動側軸111aと一体回転させる株間変速第1レバー112a及び従動側の小ギヤ110d,中ギヤ110e,大ギヤ110fの何れかを駆動側軸111aと一体回転させる株間変速第2レバー112bが設けられている。従って、駆動側の3つのギヤの選択と従動側の3つのギヤの選択との組合せで、株間は9段に変速できる構成となっている。
【0057】
従って、この株間変速装置110の9段の変速と前記機体の進行速度の変速である植付速の3段の変速とで、株間は27段に変更でき、植付ける苗の種類に対する適応性や地域独特の植付株間に対する適応性が拡大し、汎用性のある苗移植機を得ることができる。
【0058】
また、図9に示す如く、植付クラッチ157の受動部分158の最外面部158aには二か所の第一回動規制溝159aと第二回動規制溝159bを設け、該溝159a,159bに係止具160の先端部が係合することにより植付クラッチ157の伝動に抗して揺動カム駆動軸88の駆動を停止するようになっている。一方、停止タイミング軸156には該軸156と一体回転する係止解除具161を設け、停止タイミング軸156の回転に伴って該係止解除具161が係止具160に当接することにより前記係止具160を回動させて該アーム160の先端部と前記第一回動規制溝159a或いは第二回動規制溝159bとの係合を解除し、植付クラッチ157の伝動により揺動カム駆動軸88を駆動する構成となっている。
【0059】
従って、第一回動規制溝159aに係止具160が係止した状態で揺動カム駆動軸88の回転が停止し、停止タイミング軸156が一回転して第一回動規制溝159aと係止具160の係止を解除すると揺動カム駆動軸88が回動して再び第二回動規制溝159bと係止具160が係止するまで回転することになる。
【0060】
そして、植付クラッチ157の受動部分158が回転すると、再度、別の第一回動規制溝159a或いは第二回動規制溝159bに係止具160の先端部が係合して揺動カム駆動軸88の駆動を停止するようになっている。前記係止具160は、植付装置駆動ケース27内に設けた植付伝動規制スプリング162により先端部が前記植付伝動規制溝159a,159bに係合する側に回動するように付勢されている。
【0061】
従って、前記受動部分158すなわち植付クラッチ軸157の一回転につき、前側開閉駆動カム100が一回転して植付装置19が一株の苗を植え付けるようになっていて、第一回動規制溝159aでの停止が第一停止位置で、第二回動規制溝159bでの停止が苗供給待機位置となる。
【0062】
なお、停止タイミング軸156に係止解除具161を二個設けて停止タイミング軸156の一回転で第一回動規制溝159aと第二回動規制溝159bとの係合を解除するようにしても、植付具28の昇降1周期で一回の停止タイミングを持たせることが出来る。
【0063】
そして、第一回動規制溝159aと第二回動規制溝159bの間隔を植付クラッチ軸157の回動方向で狭くしているので、停止タイミング軸156に二個の係止解除具161を設けた場合には、第一停止位置から苗供給待機位置までの移動時間は短くなる。
【0064】
また、植付クラッチ157に、第一回動規制溝159aのみを設けた第一規制円盤と第一回動規制溝159aと第二回動規制溝159bを設けた第二規制円盤を設け、一個の係止解除具161を設けた停止タイミング軸156を軸スライドして、第一規制円盤に係止解除具161が係止する状態から第二規制円盤に係止解除具161が係止する状態にすれば、植え付け株間を半分に変更出来る。
【0065】
植付クラッチレバーを設け、この植付クラッチレバーを操作すると係止解除具161がスライドして第二回動規制溝159bに係止するようにすれば、植付間隔が半分になって植付具28を必ず苗供給待機位置で停止するように出来る。
【0066】
揺動カム駆動軸88の左側端部は、植付伝動ケース26から突出しており、植付伝動ケース26の左側面に固着された植付装置駆動ケース27内を貫通し、さらに植付装置駆動ケース27の左側面から突出している。
【0067】
植付装置駆動ケース27内において、図7に示す通り、揺動カム駆動軸88と一体回転する第三駆動スプロケット218を設け、この第三駆動スプロケット218から第三チェーン107を介して第三従動スプロケット220へ伝動し、第三従動スプロケット220と後述するクランクアーム駆動軸89が一体回転する。尚、クランクアーム駆動軸89は、揺動カム駆動軸88と同じ高さで揺動カム駆動軸88の後方に配置されている。又、第三チェーン107の上方には、第三チェーン107に接触して第三チェーン107に張力を与える板ばね219を設けている。
【0068】
また、駆動回転軸120の右側端部には、一対のベベルギヤ221を介して植付伝動ケース26の後側に突出する供給部駆動軸77へ伝動する構成となっている。供給部駆動軸77からの伝動により、苗供給部31が駆動回転する構成である。
【0069】
側方から見た植付伝動ケース26内の伝動軸の配置は、図6に示す通り、第一軸195よりも第二軸200を後側且つ上側に配置し、第二軸200の後方(第二軸200と略同じ高さの位置)に第三軸203を配置し、第三軸203の上方(第三軸203と略同じ前後位置)に第四軸(揺動カム駆動軸)88を配置している。そして、植付伝動ケース26は、第二軸200と第四軸88の間で第三軸203の斜め前上側で且つ植付伝動ケース26の前側上面に凹部223を形成している。
【0070】
そして、図1に示す如く、エンジン11及び主伝動ケース12の上方を覆う機体カバー224を設けており、該機体カバー224の後部224aを植付伝動ケース26の凹部223に突入させて配置している。機体カバー224には、植付伝動ケース26の左右一方側(左側)で植付伝動ケース26の凹部223よりも後側に延ばした延長部224bを形成し、該延長部224bを昇降リンク機構29の前部(後述する前揺動アーム80及び左後揺動アーム81)の上方に配置している。
【0071】
次に、植付装置19の植付具28を動作する構成及びその動作について説明する。
図10図11に、それぞれ植付装置19の、左前方から見た斜視図及び右後方から見た斜視図を示す。又、図12に、植付装置19の側面図を示す。
【0072】
植付装置19は、苗ガイド108の上方に開口した受入口から苗を受け入れて前後に開閉可能な先端が尖ったカップ状の植付具28と、この植付具28を昇降駆動する、植付装置駆動ケース27に設けられた昇降リンク機構29とから構成される。
【0073】
尚、植付具28は、先端が尖ったカップ状の下部が閉じた状態で内部に苗を保持して、植付け軌跡17の降下過程で畝面に突き刺って植付穴を形成し、この植付穴から抜け出して少し上昇した開き開始点Bで前後に開いて植付穴へ苗を落下して植付ける構成である。
供給回転台32から落下してくる苗が確実に植付具28内に入るべく、植付具28上部には、苗ガイド108が取り付けられている。
【0074】
昇降リンク機構29は、植付装置駆動ケース27の左側において、上端が揺動カム駆動軸88に回動自在に枢支され、下端が下前軸91にて回動自在に連結支持板94に連結された前揺動アーム80と、植付装置駆動ケース27を基準として回動自在な上後軸90に上端が固定され、下端が下後軸93にて回動自在に連結支持板94に連結されて、前揺動アーム80と前後に平行に設けられた左後揺動アーム81を備える。又、上後軸90は、他端が植付装置駆動ケース27の右側へ突出しており、植付装置駆動ケース27の右側において、右後揺動アーム99の上端が固定されている。
【0075】
植付装置駆動ケース27は、植付伝動ケース26から出力される動力を伝達し、左側に突出して設けた揺動カム駆動軸88、及び植付装置駆動ケース27を貫通して左右両側に突出して設けたクランクアーム駆動軸89を駆動する。
【0076】
又、連結支持板94の上軸92と下後軸93に前端がそれぞれ回動自在に枢支され、後端がそれぞれ植付具28の回動上軸95と回動下軸96に回動自在に連結された平行な上アーム82及び左下アーム83を備える。植付装置駆動ケース27の右側には、右後揺動アーム99の下端部分に前端が回動自在に枢支され、後端が植付具28の右側に回動自在に連結された右下アーム97を備える。
【0077】
右下アーム97は、左下アーム83と平行に配置され、左下アーム83及び右下アーム97に両端がそれぞれ回動自在に枢支された左右連結棒98によって、左下アーム83と連結されている。
【0078】
植付装置駆動ケース27から右側に突出して設けたクランクアーム駆動軸89に基部が固着されて回転するクランクアーム85と、クランクアーム85の先端に設けた回動連結軸106に回動自在に一端が枢支され、他端が左右連結棒98の途中部分に連結された連結アーム86を備える。左右連結棒98は、連結アーム86を基準として回動自在に連結されている。
【0079】
又、植付装置駆動ケース27から左側に突出して設けた揺動カム駆動軸88に固定されて回転する揺動駆動カム84を備え、揺動駆動カム84の周縁部に接触する構成で、左後揺動アーム81の上後軸90寄りの途中部分に回動自在に回動ローラー87が設けられている。
【0080】
又、植付伝動ケース26に設けられた支持ピンと左後揺動アーム81の下端部との間に設けられて、前揺動アーム80及び左後揺動アーム81を機体前方に向けて付勢し、揺動駆動カム84と回動ローラー87を接触させる引張バネ167(図13(a)参照)を備えている。
【0081】
又、植付具28の開閉動作に使用するカウンターアーム104が、上アーム82の一端が連結されている回動上軸95に、回動自在に軸支されている。
又、開閉アーム101が、上アーム82の他端が連結されている上軸92に、回動自在に軸支されており、開閉アーム101とカウンターアーム104が、連結ロッド103により連結されている。カウンターアーム104には、ピン105が立設しており、植付具28のホルダー部分に連結する開閉ロッド231に設けられた孔が遊嵌している。
【0082】
又、揺動駆動カム84とともに揺動カム駆動軸88に固定されて回転する開閉駆動カム100が設けられており、開閉駆動カム100の周縁部に接触する構成で、開閉アーム101上に開閉用ローラー102が設けられている。揺動カム駆動軸88の回転に従って開閉駆動カム100が回転することにより、開閉用ローラー102に接触すると開閉アーム101が回動して、連結ロッド103とカウンターアーム104と開閉ロッド231を介して植付具28の左側部材109Lと右ホルダー291Rを開口作用させる。
【0083】
前記植付クラッチ157が停止する第一回動規制溝159a位置は、開閉駆動カム100が回転することにより、開閉用ローラー102に接触すると開閉アーム101が開閉用ローラー102から離れていく位置とすることで、左側部材109Lと右ホルダー291Rが自重で閉じる力が揺動カム駆動軸88を駆動する補助力となって、植付具28が上昇し易くなる。
【0084】
この構成により、本実施の形態の植付装置19は、植付動作時において、図1(a)に示す如く、先端が軌跡17を描くように動作する。
図13(a)〜図13(d)は、植付動作中の各位置における植付装置19の側面図を示している。図13(a)は、上死点Cにおける側面図を示し、図13(c)は、下死点Aにおける側面図を示している。図13(b)は、上死点Cから下死点Aに向けて下降している際の側面図を示し、図13(d)は、下死点Aから上死点Cに向けて上昇している際の側面図を示している。
【0085】
揺動カム駆動軸88が回転することにより、揺動カム駆動軸88に固定されている揺動駆動カム84は揺動カム駆動軸88とともに回動し、揺動駆動カム84と接触する回動ローラー87を介して左後揺動アーム81及び前揺動アーム80が前後に揺動する。このとき、上後軸90によって左後揺動アーム81と連結している右後揺動アーム99も、左後揺動アーム81とともに前後に揺動する。
【0086】
一方、クランクアーム駆動軸89が回転することにより、クランクアーム駆動軸89に固定されているクランクアーム85がクランクアーム駆動軸89とともに回動し、連結アーム86及び左右連結棒98を介して左下アーム83及び右下アーム97が上下に揺動し、左下アーム83とともに上アーム82も上下に揺動する。
【0087】
したがって、前揺動アーム80、左後揺動アーム81及び右後揺動アーム99と、上アーム82、左下アーム83及び右下アーム97は、いずれも平行リンク機構であるから、植付具28は垂直方向を向いた姿勢を維持してその下端が植付け軌跡17を描いて作動し、植付具28内に受け入れられた苗を適正な姿勢で畝Uに植付けることができる。
【0088】
尚、植付装置19は、図12に示す通り、植付具28において、左下アーム83が連結する回動下軸96の位置を、上アーム82が連結する回動上軸95よりも僅かに前方に配置している。このことにより、植付具28が下降した際に、上アーム82と左下アーム83との間隔が狭まることを抑制できる。また、植付具28が下死点A付近にあるとき、上アーム82と左下アーム83との間隔を広く維持できるので、植付状態においてガタつきがなく安定した植え付けが行なえる。
【0089】
苗が植付具28に供給される位置、すなわち植付具28が作動する軌跡17の上死点C付近にあるときの、揺動駆動カム84が回動ローラー87と接触している位置における揺動駆動カム84の径の変化は小さく為るべく、又、苗を植え付ける位置、すなわち植付具28が下死点A付近にあるときの、揺動駆動カム84が回動ローラー87と接触している位置における揺動駆動カム84の径の変化は大きく為るべく、揺動駆動カム84の形状及び揺動駆動カム84が揺動カム駆動軸88に固定される向きが設定されている。
【0090】
このような揺動駆動カム84の形状及び揺動カム駆動軸88に固定される向きによって、植付具28の先端の移動速度を、苗を植え付けるときよりも、苗を供給するときを極めて遅くすることができる。
【0091】
又、上死点C及び下死点Aでは、クランクアーム85と連結アーム86が、鉛直方向で直線状に重なる位置となり、かつ、前揺動アーム80、左後揺動アーム81及び右後揺動アーム99と平行になる構成としている。従って、苗が植付具28に供給されるとき、すなわち植付具28が上死点C付近にあるときと、苗を植え付ける位置、すなわち植付具28が下死点A付近にあるときの、クランクアーム85の回転による連結アーム86の上下方向の位置の変化は小さく為るべく、クランクアーム85の向きが設定されている。この構成により、植え付け動作時に、植付具28の先端によって、ループ状の軌跡17を描かせる構成で動作させ、上死点C付近(苗が供給される位置)における植付具28の移動速度が、下死点A(苗が植え付けられる位置)における移動速度よりも遅くなる構成としている。したがって、移植対象物を、より確実に植付具28に供給させることができる。
【0092】
又、植付具28の先端が移植対象物を植え付ける位置に存在するときでは、クランクアーム85及び連結アーム86は、直線状に重なるので、クランクアーム85による上下動と、連結アーム86の傾きによる上下動が一致し、植付具28の動きを速くできる。又、植付具28の先端が移植対象物を植え付ける位置に存在するときでは、クランクアーム85が、前揺動アーム80、左後揺動アーム81及び右後揺動アーム99と互いに平行となるので、前揺動アーム80、左後揺動アーム81及び右後揺動アーム99の上下動が少なくなり、クランクアーム85及び連結アーム86による上下動で、植付具28をより速く移動させることができる。
【0093】
さらに、植付具28の先端によって描かれる軌跡17が、植え付けるときの前後の幅が最大と為るべく、すなわち植付具28の上下動する幅の中心よりも下部で前後の幅が最大となる構成としている。植付具28の先端の上下動する幅の中心位置よりも下方の位置で、静軌跡17の前後幅が最大となるので、移植機走行時の動軌跡は、直線的に上下する軌跡となり、移植対象物をきれいに植え付けることができる。
【0094】
又、植付装置19の上アーム82、左下アーム83及び右下アーム97からなる平行状のリンク機構を、1つのクランクアーム85により動作させている。一軸のクランクアーム85で駆動するべく、伝動系のガタによる植付不具合を抑制することができる。
【0095】
又、上記昇降リンク機構29を、揺動駆動カム84によって前後移動させている。揺動駆動カム84を用いる構成なので、植付具28の先端が描く軌跡17の前後幅を自由に設定することができる。
【0096】
又、揺動駆動カム84に接触する回動ローラー87を、左後揺動アーム81の長手方向の中央位置よりも上後軸90に近い位置、すなわち前揺動アーム80の支点である揺動カム駆動軸88に近い位置に配置しているので、揺動駆動カム84の支点との距離を短くでき、揺動駆動カム84を小さくできる。揺動駆動カム84を小さくできるので、植付装置19の小型化を図ることができる。
【0097】
又、引張バネ167により左後揺動アーム81へ斜め前上方への引き上げ力を与えているので、植付具28が植付位置へ向けて下降するときに、植付具28の自重により植付具28が急激に降下して軌跡17上での植付具28の作動速度が不適正となることを防止できる。又、引張バネ167による前記引き上げ力は、植付具28の自重に抗して下死点Aから植付具28が上昇することをアシストするので、植付具28を安定して動作させることができる。
【0098】
又、クランクアーム85を、右側方から見た図6において反時計回りに回動させることにより、植付具28が作動するループ状の軌跡17を基準としてクランクアーム85が逆方向に回転することになるので、軌跡17の上死点C付近における植付具28の移動速度を遅くさせ易く構成できる。上死点C付近における植付具28の移動速度を遅くすることで、より確実に苗を植付具28へ供給させることができる。
【0099】
下死点A付近では、前揺動アーム80、左後揺動アーム81及び右後揺動アーム99が、前方から後方へ向けて動作するのに対応して、クランクアーム85の先端の回動連結軸106は、後方から前方へ向けて回動する。前揺動アーム80、左後揺動アーム81及び右後揺動アーム99が、クランクアーム85と対向して動作するので、植付具28の上下動の速度が速くなる構成にでき、植え付けの株間が変化しても機体の走行を加味した土中における植付具28先端の動軌跡の変化は小さい。
【0100】
又、下死点A付近において、クランクアーム85と連結アーム86が鉛直方向又は鉛直方向に近い方向で一直線上になるので、クランクアーム85による上下動と連結アーム86の傾きによる上下動が一致するので、植付具28の上昇速度を速くできる。
【0101】
さらに、下死点A付近において、前揺動アーム80、左後揺動アーム81及び右後揺動アーム99が、クランクアーム85及び連結アーム86と平行に為らせることで、前揺動アーム80、左後揺動アーム81及び右後揺動アーム99の上下動が少なくなり、クランクアーム85及び連結アーム86による上下動により、植付具28をより速く上昇させることができる。
【0102】
次に、植付具28を開閉させる開閉機構とその動作について説明する。
図10に示す如く、植付具28の開閉動作に使用するカウンターアーム104を、上アーム82の一端(後端)に設けた回動上軸95に、回動自在に設けている。又、上アーム82の他端(前端)に設けた上軸92に、開閉アーム101を回動自在に設けており、開閉アーム101とカウンターアーム104を連結ロッド103により連結している。又、カウンターアーム104には、ピン105を設けている。
【0103】
又、揺動駆動カム84とともに揺動カム駆動軸88に固定されて回転する開閉駆動カム100を設けており、開閉駆動カム100の周縁部に接触する開閉用ローラー102を、開閉アーム101に回動自在に設けている。揺動カム駆動軸88の回転に伴って開閉駆動カム100が回転することにより、開閉用ローラー102を介して開閉アーム101を作動させる。
【0104】
植付具28の開閉動作については、カウンターアーム104が連結ロッド103を介して開閉アーム101と並行して動作し、開閉アーム101は、開閉用ローラー102を介して開閉駆動カム100によって動作する。よって、簡易な形状の開閉駆動カム100によって開閉タイミングと開閉量を高精度で設定できる。
【0105】
図13(a)及び図13(b)に示す位置では、開閉用ローラー102には開閉駆動カム100が接触していないので、上死点C及び上死点Cから下死点Aまで下降しやや上昇する開き開始点Bまでは、植付具28の下部が閉じた状態が維持されている。
【0106】
図13(c)の下死点Aからやや上昇した開き開始点Bにおいて、開閉用ローラー102に開閉駆動カム100が接触して開き始め、その位置から上昇する図13(d)の位置では、開閉用ローラー102に開閉駆動カム100が接触し続けて開いた状態となる。
【0107】
従って、植付具28は、軌跡17の上死点C付近から下降して下死点Aに至りやや上昇する行程では、下部が閉じた状態が維持され、下死点Aからやや上昇した位置で下部が開き始め、下部が開いた状態のまま上昇し続ける。
【0108】
植付具28は、下部が前部材28F及び後部材28Rで構成されており、植付具28が開き開始点Bに達した際に、前部材28F及び後部材28Rの各先端部が離間して開き、苗を植付穴に落下供給して植え付ける。
【0109】
図14では、植付具28の先端軌跡17を一点鎖線で示している。
前部材28Fと後部材28Rは、下死点Aを経てやや上昇した開き開始点Bまで閉じた状態で、開き開始点Bで前後に開き始めて全開し、上死点Cの直前で閉じる。すなわち、植付具28が閉じた状態で畝Uに差し込まれて植付穴を形成し、下死点Aから上昇して先端が畝Uから抜き出されるか抜き出される直前の開き開始点Bで前部材28Fと後部材28Rが前後に開いて苗を植付穴に落下する。
【0110】
植付具28は、畝Uに差し込まれて前進することで植付穴の前側が前部材28Fの外側面で押し固められ、畝Uから抜き出されるとやや後方へ引き戻されて植付穴の真上位置で前部材28Fと後部材28Rが前後に開くようになる。
【0111】
図15に示す実施例は、植付ケース174に前部材28Fを固着し、後部材28Rを取り付けた作動アーム173を植付ケース174の前に枢支軸172で枢支して作動ロッド171で作動アーム173を引き上げる構成で、植付具28が畝Uに差し込まれた下死点Aで前部材28Fはそのままで後部材28Rだけが後方へ開くようにしている。この構成では、前部材28Fが前に開かないので、植付穴の前側を崩すことが無い。
【0112】
図16に示す実施例は、植付ケース174に前部材28Fを前側の枢支軸168aで前後回動可能に枢支し、植付ケース174に後部材28Rを後側の枢支軸169aで前後回動可能に枢支し、前部材28Fと一体で回動する前アーム168のアーム長を後部材28Rと一体で回動する後アーム169のアーム長よりも長く構成し、前アーム168と後アーム169とを共に作動ロッド171に連結し、作動ロッド171を上に引くことで、前部材28Fを少し後へ回動し後部材28Rを大きく後へ回動して開口する。この構成で、植付具28が植付穴から抜き出る間に機体が前に移動しても苗が前部材28Fの内面を滑ってその先端から落下することで植付穴に投入するようになる。
【0113】
図17に示す実施例は、植付具28の前部材28Fと後部材28Rの上部周囲を囲んだ傾斜縁押176を設ける押圧プレート175をロッド178,178でバネ177を介して植付ケース174に取り付けた構成で、植付具28を畝Uに差し込んで植付穴を形成する際に、植付穴の周縁を傾斜縁押176で押し固めて崩れないようにする。
【0114】
図19は、植付具28の昇降リンク機構29と走行チェーンケース20の駆動軸に設けたブレーキドラム46のブレーキアーム46aをブレーキケーブル49で連動して、植付具28が畝Uに差し込まれて植付穴を形成して苗を投入する間には走行速度を低下或いは停止して植付穴が崩れないようにする構成である。
【0115】
図20から図22は、供給カップの別実施例で、供給カップ33の外側周囲に内部へ入り込む複数の苗ガイド30をバネ30aで開き勝手に設けた構成で、開閉蓋34に繋がるワイヤ46で開閉蓋34が閉じた苗の供給時には苗ガイド30が内に入り込んで苗の通路を狭めて苗が直立するようにし、開閉蓋34が開くと苗ガイド30が外に移動して通路を広めて苗が落下し易くしている。苗ガイド30の内隅部30bは角を取って苗が引っ掛らないようにしている。
【0116】
図23は、植付具28を昇降する昇降リンク機構の別実施例を示し、植付具28に上アーム187と下アーム188を連結し、左アーム188の中間部に枢支したクランク杆182のクランクピン182aを駆動軸180に固着のクランクプレート181の長穴181aに係合し、クランクピン182aを後上方にスプリング189で引っ張っている。
【0117】
この構成で、駆動軸180が回転すると、クランクプレート181とクランク杆182で下アーム188が上下することで植付具28が昇降するが、植付具28が下死点Aを越えるとスプリング189で引かれたクランクピン182aが長穴181aを前側へ急激に移動し、植付具28が直線的に開き開始点Bまで或いは上死点Cまで急上昇するようになり、植付具28が穿った植付穴を崩さない。植付具28が上死点Cに達すると、クランクピン182aが長穴181aを後側へ移動するが植付具28は静止状態で、この間に供給カップ33から苗を植付具28に供給する。
【0118】
また、駆動軸180に固着の開閉カム183が回動することで、ローラ185を介して開閉アーム184を上下し、開閉アーム184とワイヤ186で連結した植付具28の作動ロッド171が引かれて植付具28が植付穴から抜き出た位置で開く。
【符号の説明】
【0119】
A 下死点
U 畝
28 植付具
28F 前部材
28R 後部材
176 傾斜縁押
図1
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