(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6299273
(24)【登録日】2018年3月9日
(45)【発行日】2018年3月28日
(54)【発明の名称】電線保護材及びワイヤーハーネス
(51)【国際特許分類】
H02G 3/04 20060101AFI20180319BHJP
C08L 23/10 20060101ALI20180319BHJP
C08K 5/24 20060101ALI20180319BHJP
C08K 5/49 20060101ALI20180319BHJP
H01B 7/00 20060101ALI20180319BHJP
H01B 7/18 20060101ALI20180319BHJP
【FI】
H02G3/04 068
H02G3/04 081
C08L23/10
C08K5/24
C08K5/49
H01B7/00 301
H01B7/18 H
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-35582(P2014-35582)
(22)【出願日】2014年2月26日
(65)【公開番号】特開2015-162929(P2015-162929A)
(43)【公開日】2015年9月7日
【審査請求日】2016年7月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002158
【氏名又は名称】特許業務法人上野特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100095669
【弁理士】
【氏名又は名称】上野 登
(72)【発明者】
【氏名】清水 亨
(72)【発明者】
【氏名】中野 正剛
(72)【発明者】
【氏名】嶋田 達也
(72)【発明者】
【氏名】村尾 諭
【審査官】
木村 励
(56)【参考文献】
【文献】
特開平5−287117(JP,A)
【文献】
特開2012−35803(JP,A)
【文献】
特開平10−173386(JP,A)
【文献】
特開2011−168726(JP,A)
【文献】
特開2006−348136(JP,A)
【文献】
特開2012−97217(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 3/04
C08K 5/24
C08K 5/49
C08L 23/10
H01B 7/00
H01B 7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリプロピレン系樹脂と銅不活性化剤と難燃性付与剤とを含有し、
前記銅不活性化剤が、分子量が400以上の化合物であり、
前記難燃性付与剤が、エチレンビス(ペンタブロモジフェニル)、エチレンビステトラブロモフタルイミド、TBBA−ビス(2,3‐ジブロモプロピルエーテル)、テトラブロモビスフェノールA(TBA)、デカブロモジフェニルオキサイド、ヘキサブロモシクロドデカン、オクタブロモジフェニルオキサイド、ビストリブロモフェノキシエタン、トリブロモフェノール、TBAポリカーボネートオリゴマー、臭素化ポリスチレン、TBAエポキシオリゴマー・ポリマー、ヘキサブロモベンゼン、ポリジブロモフェニレンオキサイド、テトラブロモジフェニルオキサイド、ビス[3,5‐ジブロモプロポキシフェニル]スルフォン、パークロロシクロペンタデカン、塩素化パラフィン、テトラクロロ無水フタル酸、クロレンド酸から選択される1種又は2種以上である電線保護材用組成物を用いて、電線を保護可能な所定の形状に成形してなり、
グロメットのゴムが外側周囲に接触した状態にあることを特徴とする電線保護材。
【請求項2】
前記銅不活性化剤が分子量400以上であることにより、外側周囲に接触するグロメットのゴムに前記銅不活性化剤が移行するのが防止されていることを特徴とする請求項1に記載の電線保護材。
【請求項3】
前記銅不活性化剤が、炭素数2以上のアルキル基又はアルキレン基を有する化合物であることを特徴とする請求項1または2に記載の電線保護材。
【請求項4】
前記銅不活性化剤が、ヒドラジン系化合物であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の電線保護材。
【請求項5】
更に酸化防止剤が配合されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の電線保護材。
【請求項6】
更にリン系熱安定剤が配合されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の電線保護材。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の電線保護材により、複数本の絶縁電線が束ねられた電線束の周囲が被覆されていることを特徴とするワイヤーハーネス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車等の車両部品、電気・電子機器部品等に用いられるコルゲートチューブ等の電線束を保護するための電線保護材、該電線保護材に用いられる電線保護材用組成物、及び前記電線保護材を用いたワイヤーハーネスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車用電線の保護材として、コルゲートチューブ等が用いられている。従来、ポリプロピレン系樹脂に銅害防止剤が添加されたポリオレフィン系樹脂組成物を用いて成形されたコルゲートチューブが公知である(例えば特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1では、ポリオレフィン系樹脂組成物に添加される銅害防止剤として、シュウ酸誘導体、サリチル酸誘導体、ヒドラジン誘導体を用いる旨の記載がある。上記特許文献1の樹脂組成物の実施例では、銅害防止剤として、実施例1には3‐(N−サリチロイル)アミノ1−,2,4‐トリアゾールを用いたことが記載され、実施例2には旭電化工業社製、アデカスタブZS‐27を用いたことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10‐173386号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記コルゲートチューブは銅害防止剤が添加されていることにより、電線保護材として使用される場合、内部に収容した銅線や銅編組線と接触することによる劣化を防止できる
【0006】
コルゲートチューブが車両に装着される場合、止水のためにグロメットゴムでコルゲートチューブの周囲に接触した状態となることがある。この状態でコルゲートチューブが高温の状態に曝されると、コルゲートチューブに添加されている銅害防止剤がグロメットに移行してしまい、コルゲートチューブ中の銅害防止剤の含有量が低下してしまうという問題があった。コルゲートチューブ中の銅害防止剤の添加量が減少すると、銅害防止剤の添加効果が低下して、コルゲートチューブの劣化が促進されることになってしまい、長期耐熱性が低下することになる。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、本発明が解決しようとする課題は、コルゲートチューブ等の電線保護材から該電線保護材と接触しているゴム等の部材に、電線保護材から銅害防止剤が移行するのを防止して、電線保護材の高温状態における劣化を防止することが可能である、電線保護材用組成物、電線保護材及びワイヤーハーネスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明に係る電線保護材用組成物は、ポリプロピレン系樹脂と銅不活性化剤を含有し、電線保護材の成形に用いられる樹脂組成物であり、前記銅不活性化剤が、分子量が400以上の化合物であることを要旨とするものである。
【0009】
上記電線保護材用組成物において、前記銅不活性化剤が、炭素数2以上のアルキル基又はアルキレン基を有する化合物であることが好ましい。
【0010】
上記電線保護材用組成物において、前記銅不活性化剤が、ヒドラジン系化合物であることが好ましい。
【0011】
上記電線保護材用組成物において、更に難燃性付与剤が配合されていることが好ましい。
【0012】
上記電線保護材用組成物において、更に酸化防止剤が配合されていることが好ましい。
【0013】
上記電線保護材用組成物において、更にリン系熱安定剤が配合されていることが好ましい。
【0014】
本発明に係る電線保護材は、上記の電線保護材用組成物を用いて電線を保護可能な所定の形状に成形してなることを要旨とするものである。
【0015】
本発明に係るワイヤーハーネスは、上記の電線保護材用組成物を用いて形成された電線保護材により、複数本の絶縁電線が束ねられた電線束の周囲が被覆されていることを要旨とするものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る電線保護材用組成物は、ポリプロピレン系樹脂と銅不活性化剤を含有し、電線保護材の成形に用いられる樹脂組成物であり、前記銅不活性化剤が、分子量が400以上である化合物であるから、電線保護材が高温に曝された状態になった場合に、分子量400未満の銅不活性化剤を用いた従来の電線保護材用組成物と比較して、銅不活性化剤が高分子量であるため、該銅不活性化剤が加熱によりゴム等に移行するのが遅くなり、銅不活性化剤が電線保護材と接触している状態のグロメットゴム等に移行するのを抑制することができる。その結果、電線保護材の高温劣化が促進されるのを防止する効果を発揮可能であり、電線保護材の長期耐熱性が向上するという効果が得られる。
【0017】
本発明の電線保護材は、上記の電線保護材用組成物を用いて電線を保護可能な所定の形状に成形してなるものであるから、長期耐熱性に優れたものである。
【0018】
本発明のワイヤーハーネスは、上記の電線保護材用組成物を用いて形成された電線保護材により、複数本の絶縁電線が束ねられた電線束の周囲が被覆されている構成を採用したことにより長期耐熱性に優れたワイヤーハーネスが得られる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。本実施形態の電線保護材用組成物は、難燃剤が添加された自動車用コルゲートチューブの成形に用いられる電線保護材用組成物の例である。電線保護材用組成物は、例えば、下記の(A)〜(E)成分から構成することができる。本発明は、少なくとも(A)ポリプロピレン系樹脂と(B)銅不活性化剤を含むものである。
【0020】
樹脂成分として(A)ポリプロピレン系樹脂が用いられ、添加剤成分として(B)銅不活性化剤、(C)難燃性付与剤、(D)酸化防止剤、(E)リン系熱安定剤等が用いられる。上記(C)難燃性付与剤は、(C−1)臭素系難燃剤、(C−2)三酸化アンチモン等が併用される。
【0021】
以下、電線保護材用組成物の各成分について説明する。上記(A)ポリプロピレン系樹脂は、ブロックポリプロピレン、ランダムポリプロピレンのいずれでも良い。またポリプロピレンは、その分子構造は、シンジオタクチックポリプロピレン、アイソタクチックポリプロピレン、アタクチックポリプロピレンのいずれでも良い。
【0022】
電線保護材用組成物は、樹脂成分として、上記ポリプロピレン系樹脂以外の樹脂を添加してもよい。上記添加樹脂として、具体的には、ポリエチレン、塩素化ポリエチレン、エチレン‐プロピレンゴム、各種エラストマー等が挙げられる。
【0023】
ポリエチレンとしては、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、超低密度ポリエチレン(VLDPE)、メタロセン超低密度ポリエチレンなどを例示することができる。これらは単独で用いてもよいし、併用しても良い。
【0024】
上記添加樹脂は、樹脂および添加剤の混練のしやすさを考慮して、その種類、添加量等を適宜選択することができる。上記添加樹脂の配合量は、樹脂成分の中の50質量%未満であることが好ましい。
【0025】
(B)銅不活性化剤は、電線保護材が銅と接触した際にポリプロピレン系樹脂が劣化するのを防止して、電線保護材の耐熱老化特性を向上させるために用いられる。銅不活性化剤は、いわゆる銅害防止剤と呼ばれるものである。銅不活性化剤は、分子量が400以上のものが用いられる。従来、銅不活性化剤として用いられていた、特許文献1等に記載されている3−(N−サリチロイル)アミノ−1,2,4−トリアゾールは、分子量が204である。これに対し本発明は、分子量が400以上であり、比較的高分子量の銅不活性化剤を用いることにより、樹脂組成物から成形された電線保護材が加熱されて高温になった場合に電線保護材の中で移動し難くなり、電線保護材と接触しているゴム等に銅不活性化剤が移行するのを抑制することができた。その結果、電線保護材の銅害による劣化防止効果を発揮することができるので、長期耐熱性を向上させることが可能である。
【0026】
分子量が400以上の銅不活性化剤は、特に限定されないが、ヒドラジン系化合物が好ましい。分子量が400以上の銅不活性化剤としては、N'1,N'12‐ビス(2‐ヒドロキシベンゾイル)ドデカンジヒドラジド( 分子量:498)、N,N'‐ビス[3‐(3,5‐ジ‐tert‐ブチル‐4‐ヒドロキシフェニル)プロピオニル]ヒドラジン( 分子量:553)、3,9‐ビス(2,6‐ジ‐tert‐ブチル‐4‐メチルフェノキシ)‐2,4,8,10‐テトラオキサ‐3,9‐ジホスファスピロ[5,5]ウンデカン(分子量:633)、ジエチレントリアミン五酢酸ナトリウム塩(分子量:503)、エチレンジアミン四酢酸カリウム塩(分子量:407)、1,4,7,10‐テトラアザシクロドデカン‐1,4,7,10‐四酢酸(DOTA)( 分子量:404)等が挙げられる。
【0027】
銅不活性化剤は、分子中に炭素数が2以上のアルキル基又はアルキレン基を有するものが好ましい。このようなアルキル基又はアルキレン基を有する銅不活性化剤としては、例えば、N'1,N'12‐ビス(2‐ヒドロキシベンゾイル)ドデカンジヒドラジド、N,N'‐ビス[3‐(3,5‐ジ‐tert‐ブチル‐4‐ヒドロキシフェニル)プロピオニル]ヒドラジン等が挙げられる。
【0028】
(B)銅不活性化剤の配合量は、特に限定されないが、樹脂成分100質量部に対し、0.1〜3質量部の範囲内であるのが好ましい。銅不活性化剤の配合量が0.1質量部未満では銅不活性化効果が不十分となる虞があり、3質量部を超えると押出し成型時に銅不活性化剤がダイス口に析出して目ヤニとなる虞がある。
【0029】
(C)難燃性付与剤は、(C−1)臭素系難燃剤又は(C−2)三酸化アンチモンのいずれか一方だけ添加してもよいが、併用することが好ましい。(C−1)臭素系難燃剤と(C−2)三酸化アンチモンの配合比率は、通常、質量比で、臭素系難燃剤:三酸化アンチモン=1:4〜4:1の範囲が、添加効率の点から好ましい。
【0030】
難燃性付与剤の配合量は、樹脂成分100質量部に対し、臭素系難燃剤と三酸化アンチモンの合計量で、1.5〜15質量部の範囲内であることが好ましい。難燃性付与剤の配合量が、1.5質量部未満では難燃性が不十分となる虞があり、15質量部を超えると耐熱老化性が低下する虞がある。
【0031】
(C‐1)臭素系難燃剤は、特に限定されないが、臭素系難燃剤としては、例えば、テトラブロモビスフェノールA(TBA)、デカブロモジフェニルオキサイド、ヘキサブロモシクロドデカン、オクタブロモジフェニルオキサイド、ビストリブロモフェノキシエタン、トリブロモフェノール、エチレンビステトラブロモフタルイミド、TBAポリカーボネートオリゴマー、臭素化ポリスチレン、TBAエポキシオリゴマー・ポリマー、エチレンビスペンタブロモジフェニル、ヘキサブロモベンゼン、ポリジブロモフェニレンオキサイド、テトラブロモジフェニルオキサイド等が挙げられる。これらの難燃剤は一種単独で使用しても、二種以上を組み合わせて使用しても、いずれでもよい。
【0032】
臭素系難燃剤は、融点が110℃以上のものが好ましい。融点が110℃以上の臭素系難燃剤としては、例えば、エチレンビス(ペンタブロモジフェニル)(融点350℃)、エチレンビステトラブロモフタルイミド(融点456℃)、TBBA−ビス(2,3‐ジブロモプロピルエーテル)(融点117℃)等が挙げられる。
【0033】
また臭素系難燃剤の代わりに、パークロロシクロペンタデカン,塩素化パラフィン、テトラクロロ無水フタル酸、クロレンド酸等の塩素系難燃剤を用いてもよい。
【0034】
(C‐2)三酸化アンチモンは、難燃助剤として、上記臭素系難燃剤と併用される。三酸化アンチモンは、例えば、鉱物として産出される三酸化アンチモンを粉砕処理して微粒化したものを用いることができる。三酸化アンチモンを臭素系難燃剤と併用することで、臭素系難燃剤の使用量を減らすことができる。
【0035】
(D)酸化防止剤は、特に限定されないが、フェノール系酸化防止剤を用いるのが好ましい。フェノール系酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系、モノフェノール系、ジフェノール系、トリフェノール系、及びポリフェノール系等を用いることができる。中でもヒンダードフェノール系酸化防止剤が好ましい。
【0036】
上記ヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、チオジエチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、N,N’−ヘキサン−1,6−ジイルビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオンアミド)、ベンゼンプロパン酸,3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシ,C7−C9側鎖アルキルエステル、2,4−ジメチル−6−(1−メチルペンタデシル)フェノール、ジエチル[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル]ホスフォネート、3,3’,3”,5,5’5”−ヘキサ−tert−ブチル−a,a’,a”−(メシチレン−2,4,6−トリイル)トリ−p−クレゾール、カルシウムジエチルビス[[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル]ホスフォネート]、4,6−ビス(オクチルチオメチル)−o−クレゾール、エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3−(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−m−トリル)プロピオネート]、ヘキサメチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,3,5−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン、1,3,5−トリス[(4−tert−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−キシリル)メチル]−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン、2,6−tert−ブチル−4−(4,6−ビス(オクチルチオ)−1,3,5−トリアジン−2−イルアミノ)フェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、3,9−ビス[2−(3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−プロピノキ)−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン等が挙げられる。これらは1種単独で用いても2種以上を併用してもいずれでも良い。
【0037】
(D)酸化防止剤の配合量は、特に限定されないが、樹脂成分100質量部に対し、0.1〜3質量部の範囲内であるのが好ましい。酸化防止剤の配合量が0.1質量部未満では添加効果が不十分となる虞があり、3質量部を超えると押出し成型時に酸化防止剤がダイス口に析出して目ヤニとなる虞がある。
【0038】
(E)リン系熱安定剤は、加工熱安定剤であり、上記フェノール系酸化防止剤と併用するのが好ましい。上記リン系熱安定剤としては、ジフェニルノニルフェニルホスファイト、トリストリデシルホスファイト、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト等が挙げられる。
【0039】
(E)リン系熱安定剤の配合量は、特に限定されないが、樹脂成分100質量部に対し、0.1〜3質量部の範囲内であるのが好ましい。リン系熱安定剤の配合量が、0.1質量部未満では添加効果が不十分となる虞があり、3質量部を超えると押出し成型時に添加剤がダイス口に析出して目ヤニとなる虞がある。
【0040】
上記フェノール系酸化防止剤とリン系熱安定剤の配合割合は、フェノール系酸化防止剤:リン系熱安定剤=1:5〜5:1の範囲内が好ましい。配合割合は、樹脂の種類や加工条件等に応じて、適宜選択することができる。
【0041】
電線保護材用組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、上記成分以外の成分を含有していてもよい。これらの成分として、具体的には、充填剤、着色剤、帯電防止剤、滑剤、核剤等の添加剤が挙げられる。上記添加剤は、この種のポリプロピレン系樹脂組成物に添加される公知の材料が使用できる。
【0042】
上記充填剤としては、例えば金属酸化物等を用いることができる。上記金属酸化物は、例えば、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化錫等が挙げられる。
【0043】
また電線保護材用組成物は、難燃剤として水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等の無機系難燃剤を用いても良い。
【0044】
本発明の電線保護材用組成物を調製するには、上記の各成分を公知の混合方法で混合すればよい。混合の際の配合順序、混合方法などは特に限定されない。具体的な混合方法としては、例えば、タンブラー式ブレンダー、V型ブレンダー、ヘンシェルミキサー、リボンミキサー、押出機(単軸、二軸)、バンバリミキサー、加圧ニーダー、ロールなどの通常用いられる混練機を用いて混合する方法等が挙げられる。
【0045】
本発明の電線保護材は、上記電線保護材用組成物を用いて電線を保護可能な所定の形状に成形してなるものである。例えば電線保護材の一例としてコルゲートチューブが挙げられる。電線保護材の形状は、コルゲートチューブに限定されず、電線束の外周を覆い、内部の電線束を外部環境等から保護する役割を有するように形成されていて、電線、或いは電線束を保護可能な形状であればよい。
【0046】
コルゲートチューブの製造は、例えばポリオレフィン系樹脂組成物をチューブ状の管状製品として押出した後、金型により蛇腹状のコルゲートチューブに成形することで製造することができる。上記管状製品の押出しは、上記電線保護材用組成物を、180〜250℃程度で溶融させて、成形ノズルのダイス口からチューブ状に連続的に押出して押出し成形を行う。
【0047】
本発明のワイヤーハーネスは、上記の電線保護材用組成物を用いて形成された電線保護材により、複数本の絶縁電線が束ねられた電線束の周囲が被覆されているものである。
【0048】
ワイヤーハーネスに用いられる電線束は、絶縁電線のみがひとまとまりに束ねられた単独電線束、あるいは、絶縁電線と他の絶縁電線とが混在状態でひとまとまりに束ねられた混在電線束等を用いることができる。単独電線束及び混在電線束に含まれる電線本数は、特に限定されるものではない。
【0049】
上記形態の電線保護材用組成物を用いた電線保護材及びワイヤーハーネスは、長期耐熱性が要求される、自動車用電線保護材及び自動車用ワイヤーハーネスとして好適に利用することが可能である。特に電線保護材は、防水材としてグロメット等のゴムが外側周囲に接触した状態で、車両本体等に装着される。上記ゴムとしてはEPDMゴム等が用いられる。このようなグロメットと接触した状態で装着される場合の長期耐熱性を向上させるのに最適である。
【実施例】
【0050】
以下、本発明の実施例、比較例を示す。尚、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。
【0051】
[供試材料及び製造元等]
実施例及び比較例において使用した供試材料を製造元、商品名等と共に示す。
【0052】
(A)樹脂成分:ポリプロピレン
・ブロックPP、プライムポリマー社製、商品名「J356HP」
(B)銅害防止剤(銅不活性化剤)
(B−1)
・N'1,N'12‐ビス(2‐ヒドロキシベンゾイル)ドデカンジヒドラジド、ADEKA社製、商品名「アデカスタブCDA−6」(分子量:498)
(B−2)
・N,N'‐ビス[3‐(3,5‐ジ‐tert‐ブチル‐4‐ヒドロキシフェニル)プロピオニル]ヒドラジン、ADEKA社製、商品名「アデカスタブCDA−10」(分子量:553)
(B−3)
・2‐ヒドロキシ‐N‐1H‐1,2,4‐トリアゾール‐3‐イルベンズアミド、ADEKA社製、商品名「アデカスタブCDA−1」(分子量:204)
(C)難燃性付与剤
(C−1)臭素系難燃剤
・ビス[3,5‐ジブロモプロポキシフェニル)]スルフォン、丸菱油化工業社製、商品名「ノンネンPR2」、融点40‐60℃
(C‐2)三酸化アンチモン、日本精鉱社製、商品名「PATOX‐CF」
(D)フェノール系酸化防止剤:BASF社製、商品名「IRGANOX1010」
(E)リン系熱安定剤:BASF社製、商品名「IRGAFOS168」
【0053】
以下、実施例、比較例の評価試験方法について説明する。表1に示す実施例、比較例の各成分を、二軸混練機を用いて、混練温度220℃にて混合した後、ペレタイザーにてペレット状に成形して実施例、比較例に係る各組成物のペレットを得た。次いで得られた各ペレットを用いコルゲートチューブを成形し、長期耐熱性の評価試験を行った。成形方法と評価試験方法は下記の通りである。
【0054】
[コルゲートチューブ成形方法]
上記コルゲートチューブは、樹脂温度220℃、ブロー押出成形で、内径10mmのコルゲートチューブを200mmの長さに成形した。
【0055】
〔長期耐熱性の試験方法〕
成形したコルゲートチューブの内部に、電線、編組線を通し、コルゲートチューブの両端をEPDMゴムで密封し、150℃‐150時間加熱処理を行った後、コルゲートチューブの割れの有無を観察した。割れが無かった場合を良好(○)とし、割れがあった場合を不良(×)とした。
【0056】
【表1】
【0057】
表1に示すように、実施例1、2は、分子量が400以上の銅不活性化剤を用いたものであるから、長期耐熱性が良好なものが得られた。これに対し、比較例1は分子量が400未満の銅不活性化剤を用いたものであるから、長期耐熱性が不良であった。
【0058】
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。