(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0016】
<アルカリ蓄電池及びニッケル電極>
本発明のアルカリ蓄電池は、α型水酸化ニッケル粒子と、β型水酸化ニッケル粒子と、の混合粉体を活物質として含有するニッケル電極を正極として備えている。α型水酸化ニッケル粒子及びβ型水酸化ニッケル粒子の同定は、X線回折ピークの測定によって行うことができる。ニッケル電極は、本発明の効果を阻害しない範囲で、その他の材料を適宜含んでいてもよい。
【0017】
ニッケル電極は、集電体と、集電体に充填配置された本発明の水酸化ニッケルと、から構成される。集電体は、アルカリ蓄電池用のニッケル電極において利用可能なものであれば、特に限定されるものではない。例えば、発泡ニッケル板、繊維状ニッケルの焼結体、ニッケルメッキを施した穿孔鋼板等を用いることができる。
【0018】
<水酸化ニッケル(活物質)>
本発明において、「α型水酸化ニッケル粒子」とは、当該粒子が主にα型水酸化ニッケルで構成されていることを意味するが、本発明の合成方法に従ってα型水酸化ニッケル粒子を合成した際に粒子中に付随して含まれる非晶質水酸化ニッケルやβ型水酸化ニッケル、添加金属元素、あるいは不可避の不純物等を排除する趣旨ではない。当該粒子中にはα型水酸化ニッケルが50質量%以上含まれることが好ましく、80質量%以上含まれていることがより好ましい。粒子中におけるα型水酸化ニッケルの含有比率が高いほど、反応電子数が増加するため好ましい。また、水酸化ニッケルの粒子内におけるα型水酸化ニッケルとβ型水酸化ニッケルとが混在状態の確認及びその定量は、1つの粒子に対してTEM(透過電子顕微鏡)による制限視野電子回折をおこない、焦点面に現れる逆格子点に相当する回折スポット像を解析し、面間隔、面方位等の結晶パラメータを算出することにより、確認することができる。
【0019】
α型水酸化ニッケルは安定性が低く、単体でこれを生成することが難しく、安定性の高いβ型水酸化ニッケルが生成してしまう。これを避けるためには、α型水酸化ニッケル中に3価のカチオン(Al、Ga、Mn、Fe、Moなど)を添加することが好ましい。これらの元素の中でもAlを添加した時の効果が顕著である。これらの元素は、水酸化ニッケル中のニッケル原子の一部を置換しているか、もしくは水酸化ニッケルの層間に固溶し、α型水酸化ニッケルの結晶構造を安定させると推定される。水酸化ニッケル中のこれらの元素の含有量は、ICP分析等の周知の方法により測定することができる。
【0020】
前記のように、安定的にα型水酸化ニッケルを生成しようとする場合、3価のカチオンの含有比率を20mol%とすると、水酸化ニッケル粒子はすべて安定的にα型水酸化ニッケルを生成することができる。一方で、この3価のカチオンの含有比率を0mol%とすると、水酸化ニッケル粒子中にはα型水酸化ニッケルは安定的に生成できず、β型水酸化ニッケルが安定的に生成する。この3価のカチオンの含有比率とα型水酸化ニッケルの生成量との関係は直線的であり、例えば、3価のカチオンの含有比率が10mol%である場合には、α型水酸化ニッケルが50質量%生成し、β型水酸化ニッケルが50質量%生成する。なお、α型水酸化ニッケル中に3価のカチオンが存在する濃度の最大値は20mol%であり、それ以上3価のカチオンの含有比率を増やしても、α型水酸化ニッケルの安定性向上に関して顕著な効果は得られない。α型水酸化ニッケルを安定的に生成し、かつニッケルの反応電子数を増加させる観点から、3価のカチオンの含有比率は10〜20mol%にすることが望ましい。
【0021】
本発明において、「β型水酸化ニッケル」粒子とは、当該粒子が主にβ型水酸化ニッケルで構成されていることを意味するが、本発明の合成方法に従ってβ型水酸化ニッケルを合成した際に粒子中に付随して含まれる非晶質水酸化ニッケル、α型水酸化ニッケルや添加金属元素、あるいは不可避の不純物等を排除する趣旨ではない。なお、当該粒子中にはβ型水酸化ニッケルが50質量%以上含まれることが好ましく、80質量%以上含まれていることがより好ましい。粒子中におけるβ型水酸化ニッケルの含有比率が高いほど、蓄電池の初期活性化がされやすくなるため好ましい。
なお、水酸化ニッケル粒子におけるβ型水酸化ニッケルの定量は前述したのと同様であるため説明を省略する。
【0022】
本発明において、「α型水酸化ニッケル粒子とβ型水酸化ニッケル粒子とを含有する」とは、α型水酸化ニッケル粒子と、β型水酸化ニッケル粒子とを混合して得られる混合粉体を指す。すなわち、
図1に示すように、α型水酸化ニッケル粒子と、β型水酸化ニッケル粒子とがそれぞれ独立に存在し、これが混合されている場合(
図1(A))であって、1つの粒子内にα型水酸化ニッケルとβ型水酸化ニッケルが混在するような粒子のみからなる場合(
図1(B)および(C))は含まれない。なお、
図1(B)はβ型水酸化ニッケル粒子をα型水酸化ニッケルでコートしたものであり、
図1(C)はα型水酸化ニッケルとβ型水酸化ニッケルが混晶している状態になっているものである。
【0023】
ここで、α型水酸化ニッケル粒子、及びβ型水酸化ニッケル粒子は、それぞれ上述の定義に従う。混合方法としては、一般に用いられる任意の手段を用いることができる。これに対して、例えば特開2001−043855号公報には、β型水酸化ニッケルからなる基体粒子をα型水酸化ニッケルで被覆した活物質粒子が開示されているが、このように一つの粒子中にα型水酸化ニッケルとβ型水酸化ニッケルが混在する粒子のみを用いた態様は、本発明の混合粉体には該当しない。特開2001−043855号公報の方法では、β型水酸化ニッケルをα型水酸化ニッケルで被覆してしまっているために、β型水酸化ニッケルの先行充電が十分に行われず、そのため本発明の効果である初期活性の改善効果が十分でないと考えられる。また、例えば特開平9−161797号公報には、水酸化ニッケルに添加した添加元素の組成が異なる二種類の活物質微粒子を含有する活物質粒子が開示されているが、一つの活物質粒子中にα型水酸化ニッケルの微粒子とβ型水酸化ニッケルの微粒子とが混在する態様のみから構成される場合も、本発明の混合粉体には該当しない。このように微粒子を複数含有する活物質粒子を得るためには、2つの微粒子を生成する反応を連続して行う必要があり、製造プロセスが煩雑となる。
【0024】
本発明の水酸化ニッケルは、α型水酸化ニッケルと、β型水酸化ニッケルと、を特定の質量比で含んでいる。α:βの質量比は、20:80〜80:20の範囲が好ましい。α:βの質量比が80:20を超えてα型水酸化ニッケルが多く含まれると、β型水酸化ニッケルが存在することによる初期活性の改善効果が認められない。また、α:βの質量比が20:80を下回ると、β型水酸化ニッケルが存在することによる初期活性の改善がそれほど顕著ではなくなる一方、β型水酸化ニッケルに起因する平均反応電子数の低下が発生するため望ましくない。
【0025】
本発明において、α型水酸化ニッケルとβ型水酸化ニッケルと質量比は、これらの混合粉末のX線回折ピークの測定をおこなうことによって、定量することができる。すなわち、α型水酸化ニッケルにおける最大ピークである2θ=10°〜12°のα相の(003)ピークとβ型水酸化ニッケルにおける最大ピーク2θ=18〜22°のβ相の(001)ピークとの強度比を比較し、その割合を質量比として算出することにより、得ることができる。
また、他にもα型水酸化ニッケルに3価のカチオンが含有している場合は、このカチオンの量をICP等をもちいて定量し、その量からα型水酸化ニッケルとβ型水酸化ニッケルとの質量比を計算することも可能である。
【0026】
本発明のα型水酸化ニッケルは、粉末状であり、その平均粒径を5〜20μm、好ましくは7〜15μmとすることが望ましい。また、本発明のβ型水酸化ニッケルは、同じく粉末状であり、その平均粒径を3〜15μm、好ましくは5〜13μmとすることが望ましい。すでに述べたとおり、本発明の効果である初期活性の改善は、先行的に充電されたβ型水酸化ニッケルが導電剤として働くことに起因するものであるので、β型水酸化ニッケル粒子ができるだけ多くのα型水酸化ニッケル粒子や他のβ型水酸化ニッケル粒子と接点を持つことが好ましい。この観点から、β型水酸化ニッケル粒子の比表面積を大きくするため、β型水酸化ニッケルからなる粒子の平均粒径が、α型水酸化ニッケルのみからなる粒子の平均粒径よりも小さいことが望ましい。なお、本発明における平均粒径とは、粒子径の積算分布における粒子の累積度50%の粒径のことを指す。
【0027】
<負極>
本発明に係るアルカリ蓄電池の負極には、水素吸蔵合金電極やカドミウム電極、亜鉛電極などを使用することができる。例えば、水素吸蔵電極として、Mm
1.0Ni
4.0Co
0.7Al
0.3Mn
0.3組成の合金を用いることができる、ここで、Mmは、希土類元素の混合物であるミッシュメタル[ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジウム(Pr)、ネオジウム(Nd)など]を意味する。なお、本発明は、このような水素吸蔵合金電極の使用に限定されるものではなく、任意の負極を適宜使用することができる。例えば、MmNi
5合金のNiの一部を、Al、Mn、Co、Ti、Cu、Znのような元素で置換した多元素系のものや、または、TiNi系、TiFe系の合金を適用することができる。
【0028】
<セパレータ>
本発明で用いるセパレータとしては、例えば、アクリル酸グラフト重合させることによって親水性を付与したポリプロピレン(PP)繊維からなる不織布を用いることができる。ただし、本発明は、これに限定されるものではなく、任意のセパレータを適宜使用することができる。例えば、ポリプロピレンを含むポリオレフィン繊維やポリアミド繊維の不織布や、これらの繊維にスルホン基などの親水性官能基を付与したものを適用することができる。
【0029】
<電解液>
電解液の組成も特に限定されるものではない。通常使用される水酸化カリウム水溶液の他、水酸化ナトリウムおよび水酸化リチウムを単独で、またはこれら3種のうち少なくとも2種を含む水溶液を適用することができる。
【0030】
<α型水酸化ニッケル粒子の合成>
NiSO
4の水和物とAl
2(SO
4)
3の水和物との混合水溶液を調製する。この際、Ni
2+イオン濃度とAl
3+イオン濃度の和を0.5〜2.5mol/L、好ましくは1.0〜2.0mol/Lとすることが望ましい。
【0031】
次いで、この混合水溶液を撹拌しながら、20〜80℃、好ましく40〜60℃の(アルカリ水溶液中に滴下し、Ni(OH)
2とAl(OH)
3とを共沈させ、沈殿を濾過洗浄し、乾燥することでα型水酸化ニッケルを得ることができる。アルカリ水溶液としては水酸化ナトリウムとアンモニウムイオンが混合したものが好ましい。この反応で、NiとAlはほぼ全量沈殿するので、NiSO
4とAl
2(SO
4)
3の仕込量の比により、ニッケル電極中のニッケルおよびアルミニウムの含有量を制御できる。ニッケル電極のタップ密度(タッピングを施した後の体積密度)を高くするため、アルカリ水溶液のpHは好ましくは10〜12、特に好ましくは10.5〜11.5とする。
【0032】
上述の合成方法において、NiSO
4は任意の水溶性のニッケル塩に変えることができ、Al
2(SO
4)
3は任意の水溶性のAl塩に変えることができる。
また、Ni(OH)
2とAl(OH)
3と、を共沈させる前に、NiSO
4とAl
2(SO
4)
3の混合水溶液に対して(NH
4)
+イオンを含む水溶液を混合することで、Ni
2+イオンをニッケルアンミン錯体に変化させておいてもよい。
【0033】
<β型水酸化ニッケル粒子の合成>
NiSO
4の水和物の水溶液を調製する。この際、Ni
2+イオン濃度を1.0〜2.0mol/Lとすることが好ましい。この水溶液を撹拌しながら、20〜80℃好ましくは40〜60℃のアルカリ水水溶液に滴下し、Ni(OH)
2を沈殿させ、沈殿を濾過洗浄し、乾燥することでβ型水酸化ニッケルを得る。ニッケル電極のタップ密度(タッピングを施した後の体積密度)を高くするため、アルカリ水溶液のpHは好ましくは10以上、特に好ましくは11〜13とする。NiSO
4は任意の水溶性のニッケル塩に変えることができる。
また、Ni(OH)
2を沈殿させる前にNi水溶液に対しアンモニウムイオンを含む水溶液を混合させることで、Ni
2+イオンをアンミン錯体に変化させておいてもよい。
【0034】
<α型水酸化ニッケル粒子とβ型水酸化ニッケル粒子との混合粉体を活物質として含んだニッケル電極の作製>
合成したα型水酸化ニッケル粒子と、β型水酸化ニッケル粒子とを、結着剤及び水とともに混合してペーストを作製する。結着剤としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などの良く知られた任意の結着剤を用いることができる。この混合ペーストを集電体に塗布して乾燥させることで、本発明の混合粉体を得ることができる。
【0035】
また、作製される電極の導電性を高めるため、任意の導電助剤を合わせて追加してもよい。導電助剤としては、コバルトの化合物、特に好ましくは水酸化コバルトが挙げられる。粉体混合法でCo水酸化物を添加する場合、電解液への溶解と再析出とによりニッケルの水酸化物粒子の表面をコバルトの水酸化物により被覆する工程と、コバルトの水酸化物をコバルトのオキシ水酸化物等へ酸化する工程と、を行うことが好ましい。実用的には、国際公開第2006/064979号に記載のように、水酸化ニッケル粒子の表面をあらかじめ水酸化コバルトで被覆し、そのコバルトを酸化してオキシ水酸化コバルトとすることが好ましい。 さらに、活物質の性能を阻害しない範囲で任意の添加剤をペースト中に含有してもよい。
【0036】
ペーストの作製時に、α型水酸化ニッケル粒子とβ型水酸化ニッケル粒子の混合比率を変えることで、各粒子の含有比率が異なるニッケル電極を作製することができる。作製したペーストを集電体に塗布して、活物質が充填配置されたニッケル電極を作製する方法については特に制限はなく、当業者に知られた任意の方法を用いることができる。また、塗布後の乾燥工程、プレス工程等の実施についても特に制限はない。
【0037】
<電池の作製>
作製したニッケル電極を用いてアルカリ蓄電池を作製する方法については、特に制限はなく、当業者に知られた任意の方法を用いることができる。
【実施例】
【0038】
以下、実施例により本発明をさらに説明する。
【0039】
<α型水酸化ニッケル粒子の合成>
NiSO
4の水和物とAl
2(SO
4)
3の水和物との混合水溶液を調製し、Ni
2+イオン濃度とAl
3+イオン濃度の和を1mol/Lとした。この混合水溶液を激しい撹拌下で、50℃、pHが11(NaOH水溶液によりpHを11に調整)のアルカリ水溶液に滴下し、NiとAlとを共沈させた。その後、沈殿を濾過洗浄し、得られた濾過残渣を80℃で16時間乾燥することで、平均粒径10.8μmのα型水酸化ニッケルを得た。
X線回折(リガク社製MiniFlex2、CuKα線を用い管電流15mA、加速電圧30kV、測定角度範囲5°〜85°、掃引速度4°min
-1)から、2θ=10°〜12°のα相の(003)ピークを確認し、α型水酸化ニッケルが得られていることを確認した。
平均粒径測定は、レーザー回折・散乱式粒子径分布測定装置(Mictrotrac社MT3000)をもちいて、粒子径の積算分布を測定し、算出した。
また、NiSO
4の水和物とAl
2(SO
4)
3の水和物との混合水溶液におけるNi
2+イオンとAl
3+イオンとの比率を変化させることで、Al含有量が10mol%および20mol%の水酸化ニッケルをそれぞれ作製した。
【0040】
<β型水酸化ニッケル粒子の合成>
NiSO
4の水和物の水溶液を調製し、Ni
2+イオン濃度を1mol/Lとした。この水溶液を激しい撹拌下で、50℃、pHが11(NaOH水溶液によりpHを11に調整)のアルカリ水溶液に滴下し、Ni(を沈殿させた。その後、沈殿を濾過洗浄し、得られた濾過残渣を80℃で16時間乾燥することで平均粒径9.8μmのβ型水酸化ニッケルを得た。
X線回折(リガク社製MiniFlex2、CuKα線を用い管電流15mA、加速電圧30kV、測定角度範囲5°〜85°、掃引速度4°min
-1)から、2θ=18〜22°のβ相の(001)ピークを確認し、β型水酸化ニッケルが得られていることを確認した。
平均粒径測定は、レーザー回折・散乱式粒子径分布測定装置(Mictrotrac社MT3000)をもちいて、粒子径の積算分布を測定し、算出した。
【0041】
<ニッケル電極の作製>
得られた水酸化ニッケルに、導電助剤として水酸化コバルトを10重量%添加した。これに、濃度が1質量%のカルボキシルメチルセルロース(CMC)水溶液とPTFEとを混合し、ニッケル電極ペーストとした。ニッケル電極ペースト中の固型分の組成は、水酸化ニッケル(α型水酸化ニッケル粒子およびβ型水酸化ニッケル粒子の混合):α−Co(OH)
2:PTFE+CMC=89.5:10:0.5である。α−Co(OH)
2とPTFE+CMCの量は、特に指摘する場合を除いて一定とし、水酸化ニッケル中のα型水酸化ニッケル粒子とβ型水酸化ニッケル粒子との混合割合を表1に示す割合となるように段階的に変化させて複数のペーストを作製した。
【0042】
厚さ1.4mm、面積当たりの密度が320g/m
2の発泡ニッケル基材に、電極容量が250mAhとなるようにニッケル電極ペーストを充填し、乾燥後にロール加工を施して、厚さが0.4mmのニッケル電極の原板とした。この原板を40mm×60mmに裁断し、β型水酸化ニッケル粒子の含有量の異なる複数のアルカリ蓄電池のニッケル極(正極)を得た。
【0043】
<水素吸蔵合金電極の作製>
Mm
1.0Ni
4.0Co
0.7Al
0.3Mn
0.3(Mmはミッシュメタル)の組成で原料を混合し、不活性雰囲気中で高周波誘導加熱により合金インゴットを作製し、1000℃で7時間熱処理した後、平均粒径50μmに粉砕し、水素吸蔵合金粉末を作製した。この粉末を、スチレンブタジエンラバー(SBR)の分散液及びメチルセルロース(MC)水溶液と混合して、水素吸蔵合金ペーストとした。厚さ45μmのFe基材に1μm厚のニッケルメッキを施した基材に、このペーストを塗布して乾燥し、原板とした。原板を45mm×65mmのサイズに裁断し、電極容量が500mAh以上の水素吸蔵合金電極(負極)を作製した。
【0044】
<評価セルの作製>
作製した各ニッケル電極の両側に合成樹脂製のセパレータを配置し、2枚の水素吸蔵合金電極で挟み、容器にセットした。また参照電極としてHg/HgO電極を設けた。6.8mol/Lの水酸化カリウム(KOH)を含むアルカリ電解液を、電極が充分浸される程度に注ぎ、開放型のセルを作製した。ニッケル電極中のα−Co(OH)
2粒子は、充放電時に電解液中での溶解を経て、アルミニウム固溶の水酸化ニッケル表面に再析出しているものと推定される。
0.1ItA(25mA)の電流でセルを15時間初期充電した。ここで、「ItA」とは、蓄電池の充放電電流の大きさを表し、電池の定格容量を表した数値の倍数に、Itと電流の単位を付けたものである。初期充電中にα−Co(OH)
2粒子はCoのオキシ水酸化物に酸化されたと推定される。初期充電後に1時間休止し、0.2ItA(50mA)で正極電位が参照極の電位と等しくなるまで放電した。このサイクル充放電をを10回繰り返した。
【0045】
<α型水酸化ニッケルおよびβ型水酸化ニッケルの存在比の測定>
サイクル充放電後の評価セルから、各ニッケル電極を取り出し、蒸留水で水洗し、10時間、室温で真空乾燥させた。乾燥後の各ニッケル電極から基材を除去し、得られた粉末にX線回折(リガク社製MiniFlex2、CuKα線を用い管電流15mA、加速電圧30kV、測定角度範囲5°〜85°、掃引速度4°min
-1)をおこない、α型水酸化ニッケルとβ型水酸化ニッケルとの存在比を求めた。
【0046】
上記α型水酸化ニッケルおよびβ型水酸化ニッケルの存在比の測定結果および上記充放電試験中における単位活物質当たりの放電容量を測定した結果を以下の表1に示す。なお、表中で、「活性化」とは、最大容量(α、β水酸化ニッケルともに260mAh/g)の95%以上を発現する状態を意味する。また、表中の「α相」とはα型水酸化ニッケルであり、「β相」とはβ型水酸化ニッケルである。
【0047】
【表1】
【0048】
表1から明らかな通り、β型水酸化ニッケル粒子を含有している場合には、活性化に要するサイクル数がβ型水酸化ニッケル粒子を含まない場合の10サイクルから5サイクルまで著しく減少しており、β型水酸化ニッケル粒子を混合することによる初期活性の改善効果が明確に認められる。また、α型水酸化ニッケルが含まれることから、β型水酸化ニッケルのみから構成される場合と比較して反応電子数を増大させることが可能となる。