(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
91〜95質量%のアクリロニトリルと、前記アクリロニトリルと共重合性を有するエチレン性ビニルモノマー3〜8質量%、およびスルホン酸含有ビニルモノマー1〜6質量%を含むアクリロニトリル系共重合体からなる繊維であって、前記繊維の色が、ハンター表色系においてbが+1.5〜+4.7であり、かつ、前記繊維の単繊維繊度が0.3〜1.3dtex、引っ張り強度が2.0cN/dtex以上、結節強度が1.3〜2.2cN/dtex、結節伸度が10〜20%、および抗ピル性が3.5級以上であり、繊維断面の長辺の長さをA、短辺の長さをBとした時の扁平率A/Bが1.5〜5であることを特徴とする白色抗ピル性アクリル系繊維。
91〜95質量%のアクリロニトリルと、前記アクリロニトリルと共重合性を有するエチレン性ビニルモノマー3〜8質量%、およびスルホン酸含有ビニルモノマー1〜6質量%を含むアクリロニトリル系共重合体20〜25質量%と有機溶媒75〜80質量%とからなる紡糸原液を、凝固浴中の溶媒濃度が60〜70質量%で温度が30〜50℃の凝固浴に、紡糸原液温度が60〜80℃および紡糸ドラフトが1.5〜2.2の条件で、紡糸原液を長辺の長さが0.065〜0.145mm、短辺の長さが0.015〜0.035mmで、孔の深さ/孔の面積の値が12〜32である長方形孔から紡糸した後、延伸倍率3.5〜5.0倍で延伸し、しかる後、乾燥緻密化時の収縮率を5%以下にして緻密化し、次いで160〜180℃の温度で10〜30秒間緊張熱処理することを特徴とする白色抗ピル性アクリル系繊維の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の白色抗ピル性アクリル系繊維は、91〜95質量%のアクリロニトリルと、前
記アクリロニトリルと共重合性を有するエチレン性ビニルモノマー3〜8質量%、および
スルホン酸含有ビニルモノマー1〜6質量%を含むアクリロニトリル系共重合体からなる
繊維であって、前記繊維の色が、ハンター表色系においてbが+1.5〜+4.7であり
、かつ、前記繊維の単繊維繊度が0.3〜1.3dtexで、引っ張り強度が2.0cN
/dtex以上、結節強度が1.3〜2.2cN/dtex、結節伸度が10〜20%、
および抗ピル性が3.5級以上
であり、繊維断面の長辺の長さをA、短辺の長さをBとした時の扁平率A/Bが1.5〜5である白色抗ピル性アクリル系繊維である。
【0013】
本発明で用いられるアクリロニトリル系共重合体は、91〜95質量%のアクリロニトリルからなる共重合体であり、4〜9質量%以内でアクリロニトリルと共重合可能な他の共重合性不飽和ビニル化合物と共重合される。アクリロニトリルの含有量が91質量%未満の場合は、製糸工程で予め付与された緊張状態でのヒートセット性が高次加工工程における染色あるいは蒸気熱処理等によって著しく低下し、95質量%より大きい場合は、延伸性が著しく低下し、生産性を損なう。
【0014】
また、上記のエチレン性ビニルモノマーの共重合率は、3〜8質量%であることが必要であり、好ましくは3.2〜7.5質量%である。エチレン性ビニルモノマーの共重合率が3質量%未満の場合は、延伸性が乏しく安定した生産が困難となる。一方、エチレン性ビニルモノマーの共重合率が8質量%より多くなると、抗ピル性能が低下する。
【0015】
更に、スルホン酸含有ビニルモノマーの共重合率は、1〜6質量%であることが必要であり、好ましくは1.2〜5.0質量%である。スルホン酸含有ビニルモノマーの共重合率が1質量%未満の場合は十分な染色性能が得られず、6質量%より多くなると、染色性能は高まるものの、凝固が遅く、紡糸工程で繊維同士の接着が発生し易くなる。また、得られた繊維もリング染色などの染色斑を引き起こす。
【0016】
本発明で用いられるアクリロニトリル系共重合体中に含まれるエチレン性ビニルモノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸またはこれらのエステル類、アクリルアミド、メタクリルアミド、酢酸ビニル、塩化ビニルおよび塩化ビニリデンなどが挙げられ、特にアクリル酸メチルが好ましく用いられる。
【0017】
また、スルホン酸含有ビニルモノマーとしては、ビニルスルホン酸、アクリルスルホン酸、メタリルスルホン酸およびP−スチレンスルホン酸などの不飽和スルホン酸またはこれらの塩類などの酸性モノマーなどが挙げられ、特にメタリルスルホン酸ナトリウムが好ましく用いられる。
【0018】
本発明で用いられるアクリロニトリル系共重合体には、必要に応じ、添加剤として、重合開始剤、pH調整剤および分子量調整剤等を配合することができる。
【0019】
本発明で用いられるアクリロニトリル系共重合体の重合方法は、懸濁重合法、乳化重合法および溶液重合法等のうちいずれでも良い。また、使用する有機溶媒としては、ジメチルスルホキシド(以下、DMSOということがある。)、ジメチルアセトアミドおよびジメチルホルムアミド等の有機溶媒が挙げられるが、その効果が、DMSO系湿式紡糸において特に顕著であることから、重合方法もDMSOを使った溶液重合法を用いることが望ましい。
【0020】
アクリロニトリル系共重合体の割合は、紡糸原液として20〜25質量%であり、その際有機溶媒の割合を75〜80質量%にする必要がある。アクリロニトリル系共重合体の割合は、好ましくは21〜24質量%であり、有機溶媒の割合は、好ましくは76〜79質量%である。
【0021】
紡糸原液において、アクリロニトリル系共重合体の割合が20質量%より少ないと、得られる繊維が失透し光沢が失われるとともに発色性低下をきたす。一方、アクリロニトリル系共重合体の割合が、が25質量%を超えると紡糸性が著しく悪化する。
【0022】
このようにして作製された紡糸原液は、通常の湿式紡糸装置を使用して紡糸される。
【0023】
凝固浴としては、DMSO、ジメチルホルムアミドおよびジメチルアセトアミド等の有機溶媒が挙げられ、特にDMSO水溶液が好ましく用いられる。紡糸原液を凝固浴のDMSO水溶液中に紡出する際、紡糸原液温度を60〜80℃、好ましくは65〜75℃とし、紡糸ドラフトは1.5〜2.2、好ましくは1.6〜2.1の範囲の条件が用いられる。
【0024】
紡糸原液温度が60℃未満の場合は、紡糸原液の曳糸性が不足するだけでなく、粘度が高いためにノズル圧上昇などの設備破損の原因となる。また、紡糸原液温度が80℃より高い場合は、紡糸原液のゲル化等の変性を引き起こすことが多く、安定した紡糸が望めなくなる。
【0025】
また、紡糸ドラフトが1.5未満では、口金から引取ローラーまでの糸が弛み、凝固浴液の乱流で糸が揺れ口金面で糸が切れ、また、紡糸ドラフトが2.2を超えると糸が張りすぎ口金面で糸が切れる。
【0026】
本発明の白色抗ピル性アクリル系繊維の単繊維繊度は、0.3〜1.3dtexであり、好ましくは0.5〜1.1dtexである。一般的なアクリル系繊維の製造方法においては、繊維を細くするためには紡糸原液吐出量を下げる必要がある。紡糸原液吐出量を下げることにより、紡糸口金面での糸切れ等が発生し、生産性が低下する傾向にあるが、本発明の白色抗ピル性アクリル系繊維の製造方法を用いることにより、単繊維繊度を0.3〜1.3dtexの極細繊維として顕著なソフト風合いと抗ピル性能を発現させた繊維を生産性を実質的に損なうことなく、安定して製造することができる。
【0027】
また、本発明の白色抗ピル性アクリル系繊維の引っ張り強度は、2.0cN/dtex以上であることが必要である。引っ張り強度が2.0cN/dtexより低い場合、紡績工程等の加工工程通過性が悪くなり、生産性が著しく低下するので好ましくない。
【0028】
さらに、本発明の白色抗ピル性アクリル系繊維においては、結節強度は1.3〜2.2cN/dtex、好ましくは1.4〜2.1cN/dtexであり、かつ、結節伸度は10〜20%、好ましくは12〜18%である、という2つの条件を満たす必要がある。結節強度が2.2cN/dtexより高い場合、結節伸度が20%より高い場合、いずれの場合も抗ピル性が著しく低下する。
【0029】
本発明の白色抗ピル性アクリル系繊維において、抗ピル性は3.5級以上であり、好ましくは4〜5級であることが必要である。
【0030】
ここで抗ピル性は、JIS L 1076 A法:(2012年)に従って、操作時間5時間の試験で測定された値である。
【0031】
紡糸性を保持するための凝固浴の組成は、有機溶媒濃度が60〜70質量%であることが必要であり、その他、好ましくは水が30〜40質量%含まれている。有機溶媒濃度が60質量%未満の場合は、凝固浴での糸の張力が高くなり、口金面での糸切れが多くなる。有機溶媒濃度が70質量%より高い場合は、糸の凝固不足により引取ローラー部での接着が発生する。
【0032】
上記の凝固浴条件に加えて、本発明では、凝固浴温度を30〜50℃、好ましくは35〜45℃の範囲にすることによって、抗ピル性に優れた白色アクリル系繊維の製造が可能となる。凝固浴温度が35℃未満の場合は、凝固浴での糸条の張力が高くなり、紡糸口金面での糸切れが多くなり、他方、凝固浴温度が40℃より高い場合は、糸条の凝固不足により引取ローラー部での接着が発生する。
【0033】
このようにして作製された凝固糸状は、例えば、30%以下の濃度のDMSO水溶液中で、好ましくは3.5〜5.0倍に延伸される。この延伸倍率が3.5倍より小さいと、得られた繊維の紡績工程通過性が低下することがあり、また、延伸倍率が5.0倍を超えると抗ピル性が低下することがある。
【0034】
延伸されたアクリル系繊維糸状は、温水、例えば、40〜60℃の温度の温水中でアクリル系繊維糸状中に含まれている溶媒を除去した後、熱処理温度を好ましくは160〜180℃、より好ましくは165〜175℃の温度で乾熱下、熱処理時間を好ましくは10〜30秒間、より好ましくは15〜25秒間、また、収縮率を好ましくは5%以下、より好ましくは1〜3%の収縮率に保ちながら、乾燥と緻密化緊張熱処理が施されることにより、繊維の色が、ハンター表色系においてのbが+1.5〜+4.7の白色性が得られる。
【0035】
収縮率が5%を超える場合、または熱処理温度が165℃より低く熱処理時間が10秒間より短い場合には、紡糸ドラフトを1.5〜2.2にしてアクリル系繊維の繊維配向を高めた効果が十分に維持されず、高次加工工程において顕著に配向緩和が起こり抗ピル性が悪化することがある。また、熱処理温度が180℃より高く熱処理時間が30秒間より長い場合には、抗ピル性は得られるものの繊維の色が、ハンター表色系においてのbが+4.7を大きく上まわり黄色味の強い繊維となり、この黄色味が弊害となって白色または淡色染めにおいて鮮明な色合いを出すことが困難となる。
【0036】
従来のアクリル系繊維では、たとえ緊張状態で乾燥しても、そこで与えられた配向はその後の熱処理、例えば、染色等の熱処理で容易に配向緩和し、最終的にはある一定の弛緩状態に落ち着いて抗ピル性能が乏しくなるが、本発明で得られる白色抗ピル性アクリル系繊維は、好適な物性、例えば、引っ張り強度2.0cN/dtex以上、結節強度1.3〜2.2cN/dtexの繊維を得ることができる。
【0037】
本発明によれば、製造条件を最適化しつつその相乗効果を最大限に発揮させることにより、白色性および抗ピル性のみならず、ぬめり、光沢および発色性等を具備し、汎用性に富み、商品価値の高い繊維が生産性よく安定的に得られる。
【0038】
また、本発明の白色抗ピル性アクリル系繊維は、カットして短繊維とされた後、紡績される。紡績糸の構成は、本発明の白色抗ピル性アクリル系繊維を100質量%としても良いし、他の繊維、例えば、ポリエステル系繊維、ナイロン繊維、レーヨン繊維等の合繊繊維または化学繊維、綿、ウールおよび絹等の天然繊維と混紡して、紡績糸とすることも可能である。さらに、本発明で得られる白色抗ピル性アクリル系繊維の用途は、セーター、肌着、ジャージおよび靴下等の衣料用途において、優れたソフト風合いと、白色、淡色染めでより鮮明で良質な品質を有する抗ピル性の繊維製品を提供することを可能にする。
【0039】
さらに、本発明の白色抗ピル性アクリル系繊維は、繊維断面の長辺の長さをA、短辺の長さをBとした時の扁平率A/Bが1.5〜5の白色抗ピル性アクリル系繊維であることが好ましい。以下この扁平な白色抗ピル性アクリル系繊維を白色抗ピル性扁平アクリル系繊維という場合がある。
【0040】
ここで繊維断面の長辺の長さAとは、繊維断面を平行する2本の直線で挟んだとき、直線の間隔が最大となるときの間隔であり、短辺の長さBとは、最小となるときの間隔である。
【0041】
繊維断面の扁平率が1.5未満では、単繊維が曲がりにくく良好な柔軟性が得られず、扁平率が5を超えると曲がりやすく柔軟性は良くなるものの、繊維同士との接触面積が増大し、紡績性が悪化する。
【0042】
また、本発明の白色性抗ピル性扁平アクリル系繊維は、長辺の長さが0.065〜0.145mm、好ましくは0.080〜0.120mm、短辺の長さが0.015〜0.035mm、好ましくは0.020〜0.030mmの長方形孔で、孔の深さ/孔の面積の値が12〜32、好ましくは16〜28である孔でなければ口金面での糸切れが発生し、繊維断面の扁平率A/Bが1.5〜5である本発明の白色抗ピル性扁平アクリル系繊維が得られない。
【0043】
ここで、孔の長辺の長さとは長方形孔の長辺であり、短辺の長さとは長方形孔の短辺である。また、孔の深さの値は、口金面から垂直に空けられた孔部分の垂直方向の長さを表し、孔の面積の値は長辺の長さ×短辺の長さで表される。
【実施例】
【0044】
次に、実施例により本発明の白色抗ピル性アクリル系繊維とその製造方法について具体
的に説明するが、本発明は、これらに限定されるのもではない。
ここで、実施例1〜7は参考例1〜7に、比較例1〜11は比較参考例1〜11に、実施例8〜12は参考例8〜12に、比較例12〜17は参考比較例12〜17と読み替えるものとする。
【0045】
(1)「紡糸性と延伸性の評価」
[表1]に、紡糸性と延伸性の評価基準を示す。紡糸性については、口金面での糸切れがないものを「○」とし紡糸性としての合格とした。また、口金面での糸切れが若干あるものを「△」、頻繁にあるものを「×」とし紡糸性不合格とした。さらに延伸性については、ローラーへの単繊維巻き付きがないものを「○」とし延伸性としての合格とした。また、ローラーへの単繊維巻き付きが若干あるものを「△」、頻繁にあるものを「×」とし延伸性不合格とした。
【0046】
【表1】
【0047】
(2)「繊度、引っ張り強度、結節強度、結節伸度の測定方法」
JIS L1015:(2010年)化学繊維ステープル試験方法によって測定した。
【0048】
(3)「抗ピル性の測定方法」
繊維を38mmにカットし、短紡により、番手が1/52の紡績糸とし、その紡績糸を、スムース編、18ゲージで編成し、得られた編地を、1.0%owfの繁成化学社製アクリックホワイトTK染料溶液で浴比1:15、温度97℃、時間30分間の条件で染色を行い作製した編地について、JIS L 1076 A法 操作時間5時間試験により抗ピル性を評価した。
【0049】
(4)「ハンター表色系bの測定方法」
試料2.5gを測色セル(16cm
3の正方形セル)に充填し、スガ試験機株式会社製SMカラーコンピューターSM−3を用いて、試料台にセットし測色する。測定は、セット時と測色セルを90°回転させたときの2回の平均値を求めた。
【0050】
(5)「編地風合いの評価方法」
編地風合いの評価方法は、5人の判定員が、その風合い評価用の編地を触感判定し、十分なソフト性を有していると判断されるものに「○」、ソフト性は有してしているもののシャリ感が出ていると判断されるものに「×」をつけた。5人全員が○をつけた場合の判定結果を◎とし、○が3人以上いた場合の判定結果を○とし「◎、○」はソフト性の合格とし、また、×が3人以上いた場合の判定結果を×として「×」をソフト性の不合格と評価した。
【0051】
(6)「扁平率の測定方法」
試料3gの20カ所以上からそれぞれ2〜3本の繊維を採り、引きそろえて繊維束を作り、これを金属板の小孔に通し、両面を直角に切断、顕微鏡を用いて断面写真を撮る。断面写真から30個の繊維断面の最大短辺および最大長辺を測り、扁平率を算出する。
【0052】
[実施例1]
アクリロニトリル92質量%、アクリル酸メチル7質量%およびメタリルスルホン酸ソーダ1質量%をDMSO中で共重合して、アクリロニトリル系共重合体を得、紡糸原液濃度を22質量%とした。
【0053】
前記の紡糸原液を、67℃の温度に調節し、DMSO65質量%および水35質量%の浴液を温度40℃に調節した凝固浴中に、紡糸ドラフト1.85で押し出して湿式紡糸し、熱水中で4.0倍の延伸を施し、続いて水洗し、油剤を付着させ、熱風乾燥機を用いて温度168℃で、処理時間23秒乾燥し、弛緩率5%で乾燥緻密化を行って、単繊維繊度が0.9dtex、ハンター表色系bが+3.9の白色抗ピル性アクリル系繊維を得た。
【0054】
得られた白色抗ピル性アクリル系繊維を38mmにカットし、短紡により、番手が1/52の紡績糸とし、その紡績糸を、スムース編、18ゲージで編成し、得られた編地を、1.0%owfの繁成化学社製アクリックホワイトTK染料溶液で浴比1:15、温度97℃、時間30分間の染色を行った。作製した編地の抗ピル性と編地風合いを評価したところ、抗ピル性は5級で、編地風合いは良好(◎)であった。結果を表2に示す。
【0055】
[実施例2〜7および比較例1〜11]
実施例1における、アクリロニトリル系共重合体、紡糸原液中のポリマー割合、紡糸原液温度、凝固浴条件、紡糸ドラフト、延伸倍率、乾燥条件、および目標繊度を、表2と3のとおり変更して得られた原綿を、紡績し編地を作製し、それらの抗ピル性と編地風合いを評価した結果を、表2と3に示す。
【0056】
【表2】
【0057】
【表3】
【0058】
[実施例8〜12、比較例12〜17]
実施例1と比較例1で得られたアクリル系繊維38mmカットとレーヨン1.7dtex 38mmカットを60質量%/40質量%、50質量%/50質量%で混綿し、実施例1、3、7、比較例1、2、6および9で得られたアクリル系繊維と、沸騰水中での収縮率が22%である1.15dtex 38mmカットの収縮性アクリル系繊維を60質量%/40質量%で混綿し、短紡により、番手が1/52の紡績糸とし、その紡績糸を、スムース編、18ゲージで編成し、得られた編地を、1.0%owfの繁成化学社製アクリックホワイトTK染料溶液で浴比1:15、温度97℃、時間30分間の染色を行った。作製した編地の抗ピル性、ハンター表色系bおよび編地風合いの評価結果を、表4に示す。
【0059】
【表4】
【0060】
表2〜表4の結果から明らかなように、本発明に関わる諸工程要件を満たす条件で生産された白色抗ピルアクリル系繊維は、それ自信が優れた白色性、編地風合いおよび抗ピル性能を有するだけでなく、他の繊維と混綿した後も優れた白色性、編地風合いおよび抗ピル性能を発現することが分かる。
【0061】
[実施例13]
アクリロニトリル92質量%、アクリル酸メチル7質量%およびメタリルスルホン酸ソーダ1質量%をDMSO中で共重合して、アクリロニトリル系共重合体を得、紡糸原液濃度を22質量%とした。
【0062】
前記の紡糸原液を、67℃の温度に調節し、DMSO65質量%および水35質量%の浴液を温度40℃に調節した凝固浴中に、紡糸ドラフト1.75で、長辺の長さが0.085mm、短辺の長さが0.030mm、孔の深さ/孔の面積の値が23.5である長方形孔から押し出して湿式紡糸し、熱水中で4.0倍の延伸を施し、続いて水洗し、油剤を付着させ、熱風乾燥機を用いて温度168℃で、処理時間23秒乾燥し弛緩率5%で乾燥緻密化を行って、単繊維繊度が1.0dtex、ハンター表色系bが+3.8、扁平率2.2の白色抗ピル性扁平アクリル系繊維を得た。
【0063】
得られた白色抗ピル性扁平アクリル系繊維を38mmにカットし、短紡により、番手が1/52の紡績糸とし、その紡績糸を、スムース編、18ゲージで編成し、得られた編地を、1.0%owfの繁成化学社製アクリックホワイトTK染料溶液で浴比1:15、温度97℃、時間30分間の染色を行った。作製した編地の抗ピル性と編地風合いを評価したところ、抗ピル性は4.5級で、編地風合いは良(○)であった。結果を表5に示す。
【0064】
[実施例14〜19および比較例18〜23]
実施例13における、アクリロニトリル系共重合体、紡糸原液中のポリマー割合、紡糸原液温度、凝固浴条件、口金孔、延伸倍率、乾燥条件、および目標繊度を、表5と6のとおり変更して得られた原綿の結果を、表5と6に示す。尚、口金孔を変更した比較例18〜23においては、紡糸性、延伸性ともに×であり、原綿を得ることができなかった。
【0065】
【表5】
【0066】
【表6】
【0067】
[実施例20〜24]
実施例13で得られたアクリル系繊維38mmカットとレーヨン1.7dtex 38mmカットを60質量%/40質量%、50質量%/50質量%で混綿し、実施例13、15、19で得られたアクリル系繊維と、沸騰水中での収縮率が22%である1.15dtex 38mmカットの収縮性アクリル系繊維を60質量%/40質量%で混綿し、短紡により、番手が1/52の紡績糸とし、その紡績糸を、スムース編、18ゲージで編成し、得られた編地を、1.0%owfの繁成化学社製アクリックホワイトTK染料溶液で浴比1:15、温度97℃、時間30分間の染色を行った。作製した編地の抗ピル性、ハンター表色系bおよび編地風合いの評価結果を、表7に示す。
【0068】
【表7】
【0069】
表5〜表7の結果から明らかなように、本発明に関わる諸工程要件を満たす条件で生産された白色抗ピル性扁平アクリル系繊維は、扁平でありながら、それ自身が優れた白色性、編地風合いおよび抗ピル性能を発現することが分かる。