特許第6299351号(P6299351)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6299351
(24)【登録日】2018年3月9日
(45)【発行日】2018年3月28日
(54)【発明の名称】電力変換装置のゲート駆動回路
(51)【国際特許分類】
   H02M 1/08 20060101AFI20180319BHJP
   H02M 7/48 20070101ALI20180319BHJP
【FI】
   H02M1/08 301B
   H02M7/48 E
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-78277(P2014-78277)
(22)【出願日】2014年4月7日
(65)【公開番号】特開2015-201931(P2015-201931A)
(43)【公開日】2015年11月12日
【審査請求日】2017年1月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006105
【氏名又は名称】株式会社明電舎
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100104938
【弁理士】
【氏名又は名称】鵜澤 英久
(74)【代理人】
【識別番号】100096459
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 剛
(72)【発明者】
【氏名】森田 一徳
【審査官】 麻生 哲朗
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭63−171159(JP,A)
【文献】 特開2007−252020(JP,A)
【文献】 特開2013−150454(JP,A)
【文献】 特開2008−228440(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 1/08
H02M 7/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御回路部とゲート駆動回路間を光通信手段による信号の授受を行って半導体スイッチングデバイスの制御を行うと共に、電源用の電力は変圧器を介して制御回路部からゲート駆動回路へ銅線を通して供給するよう構成された電力変換装置において、
前記制御回路部とゲート駆動回路との間に中継回路部を設け、中継回路部はその取付部材に光送信器および光受信器を配置してゲート駆動回路の光受信器,光送信器との信号の授受を行うよう構成し
前記中継回路部の取付けは、前記変圧器の上部に搭載して構成したことを特徴とした電力変換装置のゲート駆動回路。
【請求項2】
制御回路部とゲート駆動回路間を光通信手段による信号の授受を行って半導体スイッチングデバイスの制御を行うと共に、電源用の電力は変圧器を介して制御回路部からゲート駆動回路へ銅線を通して供給するよう構成された電力変換装置において、
前記制御回路部とゲート駆動回路との間に中継回路部を設け、中継回路部はその取付部材に光送信器および光受信器を配置してゲート駆動回路の光受信器,光送信器との信号の授受を行うよう構成し
前記変圧器の取付けは、前記ゲート駆動回路の取付部材上であることを特徴とした電力変換装置のゲート駆動回路。
【請求項3】
前記ゲート駆動回路の取付部材に、ゲートドライバ,光送信器,光受信器および変圧器を設け、中継回路部の光送信器,光受信器とゲート駆動回路の取付部材に設けた光受信器,光送信器間を光通信線で接続して構成したことを特徴とした請求項1または2に記載の電力変換装置のゲート駆動回路。
【請求項4】
制御回路部とゲート駆動回路間を光通信手段によるゲート信号の授受を行って半導体スイッチングデバイスの制御を行い、電源用の電力は変圧器を介して制御回路部からゲート駆動回路へ銅線を通して供給するよう構成された電力変換装置において、
前記制御回路部とゲート駆動回路との間に中継回路部を設け、中継回路部は取付部材に光送信器および光受信器を配置してゲート駆動回路の光受信器,光送信器との信号の授受を行う構成し、
前記制御回路部と中継回路部それぞれに、信号と電源用電力の混合分離を行う信号混合・分離部を設け、各信号混合・分離部の相互間は銅線で接続し、中継回路部における分離された電力は変圧器に出力し、分離された信号は光送信器に出力するよう構成し
前記中継回路部の取付けは、前記変圧器の上部に搭載して構成したことを特徴とした電力変換装置のゲート駆動回路。
【請求項5】
制御回路部とゲート駆動回路間を光通信手段によるゲート信号の授受を行って半導体スイッチングデバイスの制御を行い、電源用の電力は変圧器を介して制御回路部からゲート駆動回路へ銅線を通して供給するよう構成された電力変換装置において、
前記制御回路部とゲート駆動回路との間に中継回路部を設け、中継回路部は取付部材に光送信器および光受信器を配置してゲート駆動回路の光受信器,光送信器との信号の授受を行う構成し、
前記制御回路部と中継回路部それぞれに、信号と電源用電力の混合分離を行う信号混合・分離部を設け、各信号混合・分離部の相互間は銅線で接続し、中継回路部における分離された電力は変圧器に出力し、分離された信号は光送信器に出力するよう構成し
前記変圧器の取付けは、前記ゲート駆動回路の取付部材上であることを特徴とした電力変換装置のゲート駆動回路。
【請求項6】
前記ゲート駆動回路の取付部材に、ゲートドライバ,光送信器,光受信器および変圧器を設け、中継回路部の光送信器,光受信器とゲート駆動回路の取付部材に設けた光受信器,光送信器間を光通信線で接続して構成したことを特徴とした請求項4または5に記載の電力変換装置のゲート駆動回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力変換装置のゲート駆動回路に係わり、特に半導体スイッチングデバイスに印加される電圧の高い電力変換装置のゲート駆動回路の構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電力変換装置には、直流電力を交流電力に変換するインバータ、交流電力を直流電力に変換するコンバータ等がある。図5は一般的な3相インバータの主回路構成図であり、6個の半導体スイッチングデバイスにより構成されている。使用する半導体スイッチングデバイスは様々な種類のものが考えられるが、ここでは大容量の電力変換装置に使用されることの多いIGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)を例に説明する。なお、以下で述べる問題点および実施例等はIGBTに限定されるものではなく、FET(電界効果トランジスタ)等の電圧制御型の自己消弧型半導体スイッチングデバイスであれば共通である。
【0003】
3相インバータは、IGBT S1〜S6のON/OFFを制御回路部において決定し制御することにより、所望の交流電圧出力を得ることができる。各々のIGBTのON/OFFは、ゲート駆動回路部が出力するゲート・エミッタ間の電圧により決定され、例えば、S1,S2の直列アームを例にすると、S1のON/OFFはGS1端子とGS2端子間の電圧により、S2のON/OFFはGS2端子とES2端子間の電圧により決定される。
【0004】
S2端子の電位は常に直流部のN端子電位であるが、ES1端子の電位はS1のON時には直流部のP端子の電位で、S2のON時には直流部のN端子電位である。このように、各々のIGBTのエミッタ電位は異なるため、各々のゲート・エミッタ間電圧は絶縁された電圧とする必要がある。
【0005】
図6は特許文献1に記載された3相インバータの制御構成図である。制御回路部10内のゲート信号生成部11で生成したS1〜S6のON/OFFゲート信号は、各々絶縁されたゲート駆動回路部40に入力され、絶縁されたゲート・エミッタ間電圧をゲートドライバ60で生成し、S1〜S6(IGBT 70)に入力される。
【0006】
ゲート信号生成部11からゲート駆動回路部40に入力されるゲート信号は、フォトカプラ41により絶縁され、制御回路部10内の電源生成部13から供給されるゲート駆動回路部40の電源は、変圧器51によって絶縁される。また、ゲート駆動回路部40内のゲートドライバ60では、ゲートドライバ60及びIGBT 70の状態を示す状態信号が生成される。生成される状態信号は、例えば、ゲートドライバ60の電源異常やIGBT 70の短絡の状態信号である。この状態信号は、異常発生時における装置の停止等に利用するために、フォトカプラ41により絶縁されて制御回路部10内の状態検知部12に出力される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第4055115
【特許文献2】特開平11−356035
【特許文献3】特許第2888876
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
半導体スイッチングデバイスに印加される電圧の高い電力変換装置、例えば、出力電圧がkVクラスのようにインバータ等のIGBTに印加される電圧が非常に高い場合、一般的なフォトカプラでは絶縁耐圧が不足するため、制御回路部とゲート駆動回路部間の絶縁信号の授受にフォトカプラを使用することができない。
【0009】
高電圧の絶縁信号の授受を可能とするためには、例えば特許文献2のように光通信線(ライトガイド)を使用し、絶縁の必要な回路間の沿面距離を長く取ることが考えられる。すなわち、図7で示す30が光通信線、14,43が光送信器、15,42が光受信器となる。しかし、光通信線はメタル線と比較して高価なため、光通信線を長距離使用すると電力変換装置の価格上昇につながる。
【0010】
一般に、電力変換装置が大容量になると、制御回路部10とゲート駆動回路部40間は離れており、数メートル程度の光伝送が必要になることか多い。光通信線は伝送距離が長くなると信号減衰が大きくなるため、輝度の高い光送信器を用いる必要があり、光送信器自体が大型化すると共に、消費する電力も大きくなって電源回路等の周辺回路が大規模化し、電力変換装置の小型化を困難にしている。さらに光通信線は最小曲げ半径が大きいため、電力変換装置内で長距離使用した場合には電力変換装置の小型化の障害となっている。
【0011】
また、光通信線が長いことは断線の可能性が高いことを意味しており、電力変換装置の信頼性の面でも好ましくない。更に、光通信線が長く高輝度の光送信器を使用することは、光送信器の寿命の面でも好ましくない。
【0012】
上記の点から、信号線の本数低減による電力変換装置の小型化やコストダウンを考える場合、特許文献3のように信号を電力線に重畳する電力線通信方式が有効である。特許文献3では、配電系統において配電線路上に信号を重畳することが開示されており、変電所から開閉器への信号および開閉器から変電所への信号、
すなわち、双方向の信号を電力線上に重畳することが開示されている。
【0013】
ところで、この電力線通信方式を、制御回路部とゲート駆動回路部との間で絶縁手段が必要となる電力変換装置に適用すると、電力線の途中に変圧器を経由する必要が生じる。特許文献3によれば、変圧器を経由する電力線通信方式では、変圧器における結合損失および内部損失によって信号が減衰する問題がある。
したがって、電力線通信方式を電力変換装置における制御回路部とゲート駆動回路部間の信号伝送に用いることは困難となっている。
【0014】
本発明が目的とするとこは、高圧のゲート駆動回路の絶縁に光通信線の使用を容易とした電力変換装置のゲート駆動回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の請求項1は、制御回路部とゲート駆動回路間を光通信線手段による信号の授受を行って半導体スイッチングデバイスの制御を行うと共に、電源用の電力は変圧器を介して制御回路部からゲート駆動回路へ銅線を通して供給するよう構成された電力変換装置において、
前記制御回路部とゲート駆動回路との間に中継回路部を設け、中継回路部は取付部材に光送信器および光受信器を配置してゲート駆動回路の光受信器,光送信器との信号の授受を行うよう構成し
前記中継回路部の取付けは、前記変圧器の上部に搭載したことを特徴としたものである。
【0017】
本発明の請求項は、制御回路部とゲート駆動回路間を光通信線手段による信号の授受を行って半導体スイッチングデバイスの制御を行うと共に、電源用の電力は変圧器を介して制御回路部からゲート駆動回路へ銅線を通して供給するよう構成された電力変換装置において、
前記制御回路部とゲート駆動回路との間に中継回路部を設け、中継回路部は取付部材に光送信器および光受信器を配置してゲート駆動回路の光受信器,光送信器との信号の授受を行うよう構成し、
前記変圧器の取付けは、前記ゲート駆動回路の取付部材上であることを特徴としたものである。
【0018】
本発明の請求項は、前記ゲート駆動回路の取付部材に、ゲートドライバ,光送信器,光受信器および変圧器を設け、中継回路部の光送信器,光受信器とゲート駆動回路の取付部材に設けた光受信器,光送信器間を光通信線で接続したことを特徴としたものである。
【0019】
本発明の請求項は、制御回路部とゲート駆動回路間を光通信線手段によるゲート信号の授受を行って半導体スイッチングデバイスの制御を行い、電源用の電力は変圧器を介して制御回路部からゲート駆動回路へ銅線を通して供給するよう構成された電力変換装置において、
前記制御回路部とゲート駆動回路との間に中継回路部を設け、中継回路部は取付部材に光送信器および光受信器を配置してゲート駆動回路の光受信器,光送信器との信号の授受を行う構成し、
前記制御回路部と中継回路部それぞれに、信号と電源用電力の混合分離を行う信号混合・分離部を設け、各信号混合・分離部の相互間は銅線で接続し、中継回路部における分離された電力は変圧器に出力し、分離された信号は光送信器に出力するよう構成し
前記中継回路部の取付けは、前記変圧器の上部に搭載したことを特徴としたものである。
【0021】
本発明の請求項は、制御回路部とゲート駆動回路間を光通信線手段によるゲート信号の授受を行って半導体スイッチングデバイスの制御を行い、電源用の電力は変圧器を介して制御回路部からゲート駆動回路へ銅線を通して供給するよう構成された電力変換装置において、
前記制御回路部とゲート駆動回路との間に中継回路部を設け、中継回路部は取付部材に光送信器および光受信器を配置してゲート駆動回路の光受信器,光送信器との信号の授受を行う構成し、
前記制御回路部と中継回路部それぞれに、信号と電源用電力の混合分離を行う信号混合・分離部を設け、各信号混合・分離部の相互間は銅線で接続し、中継回路部における分離された電力は変圧器に出力し、分離された信号は光送信器に出力するよう構成し、
前記変圧器の取付けは、前記ゲート駆動回路の取付部材上であることを特徴としたものである。
【0022】
本発明の請求項は、前記ゲート駆動回路の取付部材に、ゲートドライバ、光送信器,光受信器および変圧器を設け、中継回路部の光送信器,光受信器とゲート駆動回路の取付部材に設けた光受信器,光送信器間を光通信線で接続したことを特徴としたものである。
【発明の効果】
【0023】
以上のとおり、本発明によれば、次のような効果を生じるものである。
(1)信号絶縁に使用する部材として光通信線を使用し、使用する光通信線の長さは変圧器の高さ程度の短距離であるため、例え高価であったとしても、伝送距離が短いことで最小曲げ半径の大きい光通信線の使用が可能となる。
(2)伝送距離が短いため、伝送距離あたりの信号減衰が大きくとも光通信線の使用が可能となり、光通信線の中でも断面積の小さな比較的安価な光通信線を利用することができる。
(3)輝度の高い光送信器を用いる必要がなく、光送信器自体を小型化できると共に、消費電力も少なく、電源回路部などの周辺回路も小型化できるため、電力変換装置の小型化、低コスト化が可能となる。
(4)ゲート駆動回路部の取付部材上に変圧器を載置し、光通信線は変圧器の下部と上部間での短い配線となるので、銅線よりも折れ易い光通信線の断線による装置停止の可能性は低下し、電力変換装置の信頼性が向上する。
(5)光送信器は一般に経年変化により輝度か低くなるが、光伝送の距離が短いため輝度が低くても信号伝送が可能であり、結果として電力変換装置の寿命を長くすることができる。
(6)また、信号混合・分離部を設けた場合、制御回路部と中継回路部間の信号および電力の授受は、1個当たりのIGBT 70に対して1本の銅線でよく、電力変換装置のさらなる小型化が可能となるものである。また、信号混合・分離部を設けることで、変圧器を経由するのは電力のみとなり、電力線通信を採用しても、変圧器における結合損失および内部損失によって信号が減衰するような問題は生じないものである。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の実施形態を示すゲート駆動回路の機能概略接続図。
図2】本発明のゲート駆動回路の概略構成図。
図3】本発明の他のゲート駆動回路の機能概略接続図。
図4】本発明の他のゲート駆動回路の概略構成図。
図5】三相インバータの主回路接続図。
図6】従来のゲート駆動回路の機能概略接続図。
図7】従来の他のゲート駆動回路の機能概略接続図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の電力変換装置は、制御回路部とゲート駆動回路との間に中継回路部を設ける。中継回路部には、その取付部材に光送信器、光受信器を配置してゲート駆動回路の光受信器、光送信器との信号の授受を行う。ゲート駆動回路に電源用電力を供給する変圧器は、ゲート駆動回路の取付部材上に設置する。また、中継回路部は変圧器に取付けることで光送信線の短縮化が図られるものである。以下図に基づいて詳述する。
【実施例1】
【0026】
図1は、インバータ制御装置を例にした本発明の第1の実施例を示す電力変換装置の機能接続図を示したもので、10は制御回路部で、ゲート信号生成部11、状態検知部12および電源生成部13を有している。50は中継回路部で、絶縁部材等のような取付部材50aに光送信器44,光受信器47を配置する。光送信器44はゲート信号生成部11に、また、光受信器47は状態検知部12にそれぞれIGBT 70の素子数に対応した数の銅線20を介して各別に設けられる。
【0027】
40はゲート駆動回路部で、このゲート駆動回路部40は取付部材40aに光受信器45,光送信器46およびゲートドライバ60が配置されている。光受信器45は、中継回路部50の光送信器44と光通信線31によって接続され、光送信器46は中継回路部50の光受信器47と光通信線31によって接続されて、それぞれは光通信線31を介して信号の授受が行われる。
【0028】
ゲートドライバ60の出力側は、IGBT 70のゲート・エミッタ間の端子に接続されている。51は変圧器で、電源生成部13によって生成された電源電圧は、この変圧器51によって絶縁されてゲート駆動回路部40の電源としてゲートドライバ60などに供給される。
【0029】
以上のように、本実施例では制御回路部10と中継回路部50との非絶縁間の信号・電力伝送は銅線20を利用し、中継回路部50とゲート駆動回路部40の間は光通信線31および変圧器51によって絶縁する。つまり制御回路部10側の電位とゲート駆動回路部40側の電位は絶縁境界100にて絶縁される。
【0030】
図2は、図1で示す電力変換装置における絶縁境界100近辺の構成図を示したものである。ゲート駆動回路部40の取付部材40a上には、ゲートドライバ60と変圧器51および光受信器45,光送信器46が配置される。変圧器51
には、その側面でもよいが、ここでは、変圧器51の上部に中継回路部50の取付部材50aが載置されており、取付部材50aの面上には光送信器44,光受信器47が配設される。
【0031】
取付部材40aに固定された光受信器45,光送信器46と、取付部材50aに固定された光送信器44,光受信器47間には、それぞれ変圧器51の側面に沿って配設された光通信線31が接続される。また、取付部材50aには外部との接続用端子50bが取付けられており、光送信器44,光受信器47はこの端子50bを介して銅線20と接続される。
【0032】
一方、取付部材40a上にも外部との接続用の端子40bが取付けられており、ゲートドライバ60はこの端子40bを介してIGBT 70に接続される。取付部材40aの面上には、ゲートドライバ60と変圧器51および光受信器45,光送信器46との接続線が設けられている。
【0033】
変圧器51は、絶縁境界100で示す上部が一次側となっており、制御回路部10の電源生成部13で生成された出力電力は、銅線20を通して変圧器51の一次側巻線に入力され、変圧器下部の二次側巻線および接続線を通してゲートドライバ60に入力されてゲート駆動回路部40,中継回路部50の駆動用電力として利用する。
【0034】
制御回路部10のゲート信号生成部11で生成されたゲート信号は、端子50bを介して光送信器44に入力される。光送信器44では電気信号を光信号に変換し、その信号は光通信線31内を通過して光受信器45に受信されて再度電気信号に変換される。変換された電気信号はゲートドライバ60に入力され、IGBT 70のゲート・エミッタ間電圧を制御する。
【0035】
また、ゲートドライバ60から出力されるIGBT 70やゲートドライバ60の状態信号は電気信号として光送信器46に出力される。電気信号は光送信器46により光信号に変換され、光通信線31内を通過して光受信器47に入力される。光受信器47ではゲート駆動回路部40から絶縁された電気信号に再変換される。この電気信号は端子50bおよび銅線20を介して制御回路部10の状態検知部12に入力され、状態信号は装置の停止などに利用される。
【0036】
この実施例によれば、次のような効果が生じるものである。
(1)信号絶縁に使用する部材として変圧器の高さ程度の長さで短距離であるため、例え高価であったとしても、伝送距離が短いことで最小曲げ半径の大きい光通信線の使用が可能となる。
(2)伝送距離が短いため、伝送距離あたりの信号減衰が大きくとも光通信線の使用が可能となり、断面積の小さな比較的安価な光通信線を利用することができる。
(3)輝度の高い光送信器を用いる必要がなく、光送信器自体を小型化できると共に、消費電力も少なく、電源回路部などの周辺回路も小型化できるため、電力変換装置の小型化、低コスト化が可能となる。
(4)ゲート駆動回路部の取付部材上に変圧器を載置し、光通信線は変圧器の下部と上部間での短い配線となるので、銅線よりも折れ易い光通信線の断線による装置停止の可能性は低下し、電力変換装置の信頼性が向上する。
(5)光送信器は一般に経年変化により輝度か低くなるが、光伝送の距離が短いため輝度が低くても信号伝送が可能であり、結果として電力変換装置の寿命を長くすることができる。
【実施例2】
【0037】
図3図4は第2の実施例を示したもので、第1の実施例である図1図2と同一部分に同一符号を付してその説明を省略する。すなわち、制御回路部10
に信号混合・分離部16を設け、中継回路部50に信号混合・分離部52を設ける。この信号混合・分離部52は図4で示すように端子50bと光送信器44,光受信器47との間に配置される。
【0038】
制御回路部10と中継回路部50の間は1回路の銅線20で接続し、1本の銅線20と中継回路部50を介して制御回路部10とゲート駆動回路部40間の信号および電源の授受が行われる。制御回路部10内では、ゲート信号生成部11、状態検知部12および電源生成部13はそれぞれ信号混合・分離部16と接続される。また、中継回路部50内では、光送信器44,光受信器47および変圧器51の一次側はそれぞれ信号混合・分離部52と接続される。
【0039】
以上のように構成されたものにおいて、制御回路部10の電源生成部13から出力される電力は、信号混合・分離部16,銅線20,中継回路部50および変圧器51を経由してゲート駆動回路部40のゲートドライバ60に入力され、ゲート駆動回路部40および中継回路部50の駆動用電力として利用する。
【0040】
制御回路部10内のゲート信号生成部11で生成されたゲート信号は、信号混合・分離部16に入力され、電源生成部13から出力される電力と混合される。混合されたゲート信号は、銅線20により中継回路部50内の信号混合・分離部52に入力されて電力から分離される。分離されたゲート信号は光送信器44に入力されて光信号に変換され、光通信線31内を通過して光受信器45に入力される。
【0041】
ゲート信号は光受信器45内で、制御回路部10から絶縁された電気信号に再変換される。この電気信号はゲートドライバ60に入力され、IGBT 70のゲート・エミッタ間電圧を制御する。また、ゲートドライバ60から出力される
IGBT 70やゲートドライバ60の状態信号は、電気信号として光送信器46に入力される。この状態信号は光送信器46により光信号に変換され、光通信線31を介し中継回路部50の光受信器47に入力されてゲート駆動回路部40とは絶縁された電気信号に再変換される。
【0042】
変換された電気信号は信号混合・分離部52に入力され、電源生成部13から出力される電力と混合される。混合された信号は銅線20を介して制御回路部10内の信号混合・分離部16に入力され、電力から分離される。分離された信号は状態検知部12に入力され、装置の停止信号や状態表示信号等に利用される。
【0043】
この実施例によれば、信号混合・分離部を設けたことにより、制御回路部と中継回路部間の信号および電力の授受は、1個当たりのIGBT 70に対して1本の銅線でよく、電力変換装置のさらなる小型化が可能となるものである。また、信号混合・分離部を設けているため、変圧器を経由するのは電力のみであり、したがって、電力線通信を採用しても、特許文献3のような変圧器における結合損失および内部損失によって信号が減衰するような問題は生じないものである。他は、実施例1と同様な効果を有するものである。
【符号の説明】
【0044】
10… 制御回路部
11… ゲート信号生成部
12… 状態検知部
13… 電源生成部
16,52… 信号混合・分離部
20… 銅線
31… 光通信線
40… ゲート駆動回路部
44,46… 光送信器
45,47… 光受信器
50… 中継回路部
51… 変圧器
60… ゲートドライバ
70… 半導体スイッチングデバイス(IGBT)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7