【実施例1】
【0027】
本発明に係る車両用灯具の一例としての実施例1の車両用灯具10を、
図1から
図9を用いて説明する。なお、
図7では、プレート部材21の光源側面21cに設けた光源側拡散面21mへと進行した光B7が拡散される様子を模式的に示しているが、必ずしも実際に光B7が拡散される様子と一致するものではない。また、
図8では、投影レンズ22の裏面22cとプレート部材21の遮蔽箇所21bのレンズ対向面21d(レンズ側拡散面21h)との間で光が多重反射される様子を模式的に示しているが、必ずしも実際に光が多重反射される様子と一致するものではない。
【0028】
実施例1に示す本発明に係る車両用灯具の一例としての実施例1の車両用灯具10は、自動車等の車両の前照灯として用いられるものであり、対向車線での眩惑を防止することができるすれ違い配光(ロービーム)を形成するものである。以下の説明では、取り付けられる車両において運転手から見た前後方向、左右方向および上下方向を用いるものとする。車両用灯具10では、
図1から
図3に示すように、ヒートシンク部材11にレンズホルダ12が取り付けられるとともに、それらに後述する各部材(半導体型発光部13等)が設けられて構成されている。
【0029】
そのヒートシンク部材11は、後述する半導体型発光部13で発生した熱を放熱するものであり、樹脂や金属製ダイカスト等の熱伝導率が高い材料で形成されており、実施例1では金属製ダイカストのうちのアルミダイカストにより形成されている。ヒートシンク部材11では、後述する半導体型発光部13を設けるための発光部設置箇所11a(
図3等参照)が設けられるとともに、そこで発生した熱を放熱するための複数の放熱フィン11bが設けられている。発光部設置箇所11aは、前後方向および左右方向を含む平坦な面とされており、後述する発光基板14を介して半導体型発光部13が設けられる(
図4等参照)。各放熱フィン11bは、発光部設置箇所11aの後方において、前後方向および上下方向に沿う板状を呈し、左右方向に並列されて設けられている。
【0030】
このヒートシンク部材11では、
図3に示すように、前側の端部に、支持枠部11cと、2つのガイド突起11dと、3つの連結ネジ穴11eと、が設けられている。支持枠部11cは、後述するストッパ部材18が宛がわれることで、そのストッパ部材18が変形することを防止する。2つのガイド突起11dは、ヒートシンク部材11で前側の端面から前方へと突出する円柱状を呈し、後述するストッパ部材18のガイド孔18cおよびレンズホルダ12のガイド孔(図示せず)に通すことが可能とされている。3つの連結ネジ穴11eは、後述する連結ネジ部材34の軸部34bを受け入れることが可能な内径寸法で前後方向に伸びる穴であり、内周壁面にネジ溝が形成されている。
【0031】
また、ヒートシンク部材11では、下端に2つの取付ネジ穴11g(
図4参照)が設けられている。この2つの取付ネジ穴11gは、後述する固定ネジ部材33の軸部33bを受け入れることが可能な内径寸法で上下方向に伸びる穴であり、内周壁面にネジ溝が形成されている(
図4参照)。このヒートシンク部材11には、レンズホルダ12が取り付けられる。
【0032】
そのレンズホルダ12は、ヒートシンク部材11との間で後述するシェード17(
図4参照)を移動可能に支持しつつ、後述する投影レンズ22を保持してヒートシンク部材11に取り付けるものである。レンズホルダ12は、全体に円筒状を呈する円筒部12aと、そこから下方へと伸びる取付部12bと、を有する(
図3参照)。このレンズホルダ12は、主に円筒部12aにより、後述するように発光基板14から発せられてシェード17により部分的に遮蔽された光が投影レンズ22へと至る光路として機能する灯室を形成する。このレンズホルダ12は、実施例1では、シェード17および投影レンズ22の支持精度および支持強度を確保すべく金属製ダイカストのうちのアルミダイカストにより形成されている。
【0033】
レンズホルダ12では、円筒部12aの前側端面12cに複数の第2突起部12dが設けられている。この各第2突起部12dは、円筒部12aの前側端面12cから前後方向前側に部分的に突出されて形成されており、その前後方向前側で姿勢規定面12e(
図6および
図7参照)を規定している。その姿勢規定面12eは、前後方向に直交する(左右方向および上下方向を含む)平坦な面とされているとともに、円筒部12aの中心軸線に直交する平坦な面とされている。そして、各第2突起部12dは、それぞれの姿勢規定面12eが前後方向に直交する同一の平面上に位置するように形成されている。この各姿勢規定面12eは、後述するプレート部材21(その環状箇所21a)の光源側面21cに面で当てることにより、そのプレート部材21の位置および姿勢を規定する。この第2突起部12dは、実施例1では、左右方向および上下方向で見て対称となる位置関係とされて4か所に設けられている。
【0034】
また、レンズホルダ12では、円筒部12aの前側端面12cに2つのガイド突起12fが設けられている。この両ガイド突起12fは、円筒部12aの前側端面12cから前方へと突出する円柱状を呈し、後述するプレート部材21のガイド溝21qまたはガイド穴21rと、後述する投影レンズ22のガイド溝22fおよびガイド穴22gと、に通すことが可能とされている。そして、レンズホルダ12では、円筒部12aの外周面に2つのレンズ固定部12gが設けられている(
図1等参照)。このレンズ固定部12gは、円筒部12aの外周面から径方向の外側に突出されて設けられており、それぞれに固定ネジ穴12hが設けられている。その各固定ネジ穴12hは、後述する固定ネジ部材35の軸部35bを受け入れることが可能な内径寸法で前後方向に伸びる穴であり、内周壁面にネジ溝が形成されている。この2つのレンズ固定部12gは、実施例1では、前後方向前側から見て、円筒部12aの中心軸線(後述する投影レンズ22の軸線(
図1参照))に関して回転対称となる位置関係とされている。
【0035】
さらに、レンズホルダ12では、3つの取付用穴12iが設けられている(
図3では2つのみ図示している)。3つの取付用穴12iは、後述する連結ネジ部材34の軸部34bを受け入れることを可能な内径寸法とされた前後方向に伸びる穴である。このレンズホルダ12では、3つの取付用穴12iのうちの1つが円筒部12aに設けられ、他の2つが取付部12bに設けられている(
図1等参照)。その取付部12bは、円筒部12aの下方へと伸びる板状片が適宜折り曲げられて形成されている。このレンズホルダ12のヒートシンク部材11への取り付けのために連結ネジ部材34が用いられる。
【0036】
その連結ネジ部材34は、頭部34aと軸部34bとを有する。頭部34aは、柱状を呈し、レンズホルダ12に設けられた各取付用穴12iの内方へと通すことのできない外径寸法とされている。軸部34bは、外周面にネジ溝が設けられた円柱状を呈し、レンズホルダ12の取付用穴12iおよびヒートシンク部材11に設けられた連結ネジ穴11eへと通すことができる外径寸法とされている。この連結ネジ部材34は、ヒートシンク部材11の連結ネジ穴11eに軸部34bを噛み合わせることにより、その連結ネジ穴11eに締め付け固定することが可能とされている。このため、連結ネジ部材34によりレンズホルダ12をヒートシンク部材11に取り付けることができる。そのヒートシンク部材11に、半導体型発光部13と発光基板14とリフレクタ15とが設けられる。
【0037】
半導体型発光部13は、車両用灯具10における光源を形成するものであり、LEDや有機EL(OLED)等の自発光半導体型の発光部とされている。半導体型発光部13は、実施例1では、LEDが用いられている。この半導体型発光部13は、発光基板14に実装されて設けられる。その発光基板14は、図示は略すが電力を供給するためのコネクタ等が設けられた給電部材により、発光部設置箇所11aに設置される。この発光基板14は、実施例1では、熱伝導性の良い材料で構成されるものとされており、金属ベース基板が用いられている。
【0038】
この発光基板14の発光部設置箇所11aへの設置のために設置ネジ部材31が用いられる。その設置ネジ部材31は、頭部31aと軸部31bとを有する。頭部31aは、柱状を呈し、発光基板14に設けられた図示を略す設置穴の内方へと通すことのできない外径寸法とされている。軸部31bは、外周面にネジ溝が設けられた円柱状を呈し、発光基板14の設置穴(図示せず)およびヒートシンク部材11の発光部設置箇所11aに設けられた図示を略す設置ネジ穴へと通すことができる外径寸法とされている。この設置ネジ部材31は、ヒートシンク部材11の発光部設置箇所11aの図示を略す設置ネジ穴に軸部31bを噛み合わせることにより、当該設置ネジ穴に締め付け固定することが可能とされている。発光基板14は、半導体型発光部13を実装した状態でヒートシンク部材11の発光部設置箇所11aに設置ネジ部材31により固定されて設置される。そして、その発光基板14では、図示を略すコネクタが接続され、実装された半導体型発光部13が適宜点灯および消灯されて光源として機能する。その半導体型発光部13を覆うようにリフレクタ15が設けられる。
【0039】
そのリフレクタ15は、発光部設置箇所11aに設置された半導体型発光部13を上方から覆うことのできるドーム形状を呈し、
図4に示すように、内方に楕円を基本とする自由曲面とされた反射面15aを有する。この反射面15aは、上下方向で見た断面すなわち縦断面でみると楕円を基本として形成され、第1焦点および第2焦点を有する。このリフレクタ15には、板状を呈する取付片部15bが設けられている(
図3参照)。その取付片部15bには、上下方向に貫通する2つの取付穴15cが設けられており、それぞれ固定ネジ部材32の軸部32bを受け入れることを可能としつつ当該固定ネジ部材32の頭部32aを受け入れることのできない内径寸法とされている。
【0040】
その固定ネジ部材32は、頭部32aと軸部32bとを有する。頭部32aは、柱状を呈し、リフレクタ15に設けられた取付穴15cの内方へと通すことのできない外径寸法とされている。軸部32bは、外周面にネジ溝が設けられた円柱状を呈し、リフレクタ15の取付穴15cおよびヒートシンク部材11の発光部設置箇所11aの近傍に設けられた固定ネジ穴(図示せず)へと通すことができる外径寸法とされている。この固定ネジ部材32は、ヒートシンク部材11の固定ネジ穴に軸部32bを噛み合わせることにより、その固定ネジ穴に締め付け固定することが可能とされている。
【0041】
このリフレクタ15は、各固定ネジ穴(図示せず)に締め付け固定された両固定ネジ部材32によりヒートシンク部材11に取り付けられると、反射面15aの第1焦点近傍に発光部設置箇所11aに設置された半導体型発光部13が位置するものとされている。このため、半導体型発光部13から出射された光は、リフレクタ15の第2焦点近傍に集光される。そのリフレクタ15の第2焦点近傍に、シェード17の上端縁17aが位置される。
【0042】
そのシェード17は、光の透過を阻む部材で構成されており、レンズホルダ12が形成する灯室の内方において、底面から上方へと延在する板状を呈し、左右方向(車両の幅方向)に所定の幅を有している。このため、シェード17の上端縁17aは、車両の幅方向に延在しており、当該上端縁17aの中央に段差部(図示せず)が設けられている。このシェード17は、半導体型発光部13から出射されて後述する投影レンズ22から出射され得る光束のうち、照射光軸Lに直交する断面で見て略上半部に位置する光束が投影レンズ22から出射されることを防止するように、リフレクタ15の反射面15aから投影レンズ22に至る光路上に配置されている。このシェード17は、その上端縁17aの近傍に反射面15aの第2焦点を位置させることにより、投影レンズ22から出射される光束の上端に、上端縁17aの形状に倣う明暗の境界線(カットオフラインという)が形成することができる。これにより、投影レンズ22から、上端縁17aの形状が明確に反映されたカットオフラインが形成されて対向車線での眩惑を防止しつつ前方を照射するすれ違い配光(ロービーム)としての配光パターンを形成する光束を出射させることができる。
【0043】
このシェード17は、ストッパ部材18により上下方向での位置が規定されるとともに、シェード駆動機構19により下方へと変位することが可能とされている。ストッパ部材18は、
図3に示すように、板状部材の中央に光路開口18aが設けられるとともに、その下方に左右方向で対を為すストッパ片部18bが設けられている。光路開口18aは、半導体型発光部13を覆うようにヒートシンク部材11に取り付けられたリフレクタ15の前方側における当該リフレクタ15と発光部設置箇所11aとの間を開口するものとされている(
図4参照)。一対のストッパ片部18bは、光路開口18aの下方に設けられ、上方からシェード17の規制片部17b(
図4参照)と接触することが可能とされている。そのシェード17は、図示は略すがレンズホルダ12とヒートシンク部材11との間においてバネ部により上方へ向けて移動する押圧力が付与されており、規制片部17bがストッパ片部18bに押し当てられることにより上下方向での位置が規定される。そして、シェード17では、このストッパ部材18(ストッパ片部18b)により上下方向での位置が規定されると、上端縁17aがリフレクタ15(その反射面15a)の第2焦点近傍に位置するものとされている。
【0044】
このストッパ部材18には、2つのガイド孔18cと4つの取付用穴18dとが設けられている。2つのガイド孔18cは、ヒートシンク部材11に設けられた2つのガイド突起11dに対応する位置でストッパ部材18を貫通して設けられており、それぞれが対応するガイド突起11dを通すことにより前後方向に直交する方向への相対的な位置ずれが生じることを防止する。4つの取付用穴18dは、後述する連結ネジ部材34の軸部34bを受け入れることが可能な内径寸法とされて、ストッパ部材18を貫通して設けられている。この4つの取付用穴18dのうちの3つは、ヒートシンク部材11に設けられた3つの連結ネジ穴11eに対応して設けられており、残りの1つは左右を反転させた際にヒートシンク部材11に設けられた上側の連結ネジ穴11eに対応するものとされている。
【0045】
シェード駆動機構19は、ソレノイドが内蔵された本体部19aに、上下方向へと移動可能とされた可動軸部19bが設けられて構成されている。このシェード駆動機構19では、可動軸部19bの上端部を上方へと突出させており、本体部19aに内蔵されたソレノイドに電力が供給されると可動軸部19bを下方へと移動させる。シェード駆動機構19では、可動軸部19bを下方へと移動させる移動力が、シェード17に付与された上方へ向けて移動する押圧力よりも大きく設定されている。
【0046】
このシェード駆動機構19では、本体部19aの外方に2つの取囲片部19cが設けられている。その各取囲片部19cは、上下方向に直交する面に沿う平板状とされており、上下方向に貫通する固定孔19dが設けられている。その各固定孔19dは、後述する固定ネジ部材33の軸部33bを受け入れることが可能であり、かつ当該固定ネジ部材33の頭部33aを受け入れることのできない内径寸法とされている。この取囲片部19cの固定孔19dは、ヒートシンク部材11の下端に設けられた取付ネジ穴11g(
図4参照)に対応して設けられている。このシェード駆動機構19のヒートシンク部材11への取り付けのために固定ネジ部材33が用いられる。
【0047】
その固定ネジ部材33は、頭部33aと軸部33bとを有する。頭部33aは、柱状を呈し、シェード駆動機構19に設けられた各取囲片部19cの固定孔19dの内方へと通すことのできない外径寸法とされている。軸部33bは、外周面にネジ溝が設けられた円柱状を呈し、シェード駆動機構19の固定孔19dおよびヒートシンク部材11に設けられた取付ネジ穴11g(
図4参照)へと通すことができる外径寸法とされている。この固定ネジ部材33は、ヒートシンク部材11の取付ネジ穴11gに軸部33bを噛み合わせることにより、その取付ネジ穴11gに締め付け固定することが可能とされている。シェード駆動機構19では、可動軸部19bの上端部にシェード17が取り付けられ(
図4参照)、その状態でヒートシンク部材11に固定ネジ部材33により固定されて取り付けられる。
【0048】
このため、シェード17は、基本的に付与された上方へ向けた押圧力でストッパ部材18に押し当てられて上下方向での位置が規定されることで、上端縁17aがリフレクタ15の第2焦点近傍に位置される(
図4参照)。そして、シェード17は、シェード駆動機構19(その本体部19a)に電力が供給されて可動軸部19bが下方へと移動されることで、上端縁17aがリフレクタ15の第2焦点近傍から下方へと移動される。すると、シェード17は、半導体型発光部13から出射された光束を部分的に遮蔽する位置から下方へと移動されることとなる。これにより、投影レンズ22から、シェード17によりカットオフラインが形成されていない通常配光(ハイビーム)としての配光パターンを形成する光束を出射させることができる。その投影レンズ22は、プレート部材21を介して固定枠23によりレンズホルダ12に取り付けられる。
【0049】
そのプレート部材21は、レンズホルダ12の熱が投影レンズ22に伝導することを抑制(断熱)するために設けられている。プレート部材21は、レンズホルダ12よりも低い熱伝導率の部材で形成し、より好適には投影レンズ22よりも高い耐熱性を有する(耐熱温度が高い)部材で形成する。このプレート部材21は、実施例1では、ポリカーボネート(PC)で形成している。プレート部材21は、全体にレンズホルダ12の円筒部12aの前側端面12cに対応する環状を呈する。プレート部材21は、
図5等に示すように、実施例1では、環状箇所21aに遮蔽箇所21bが設けられて構成されている。その環状箇所21aは、円筒部12a(その前側端面12c)に対応する環状を呈するものであり、実施例1では後側の面となる光源側面21cを前側端面12cに全周に渡って宛がうことのできる形状および大きさ寸法とされている(
図3等参照)。また、環状箇所21aは、前側の面となるレンズ対向面21dを後述する投影レンズ22のフランジ部22bの裏面22cに全周に渡って宛がうことのできる形状および大きさ寸法とされている(
図4等参照)。遮蔽箇所21bは、環状箇所21aから内方へと伸びる板状を呈し、環状箇所21aの内側の開口の一部を遮蔽して設けられている。この遮蔽箇所21bは、半導体型発光部13から出射された光(光束)が照射光軸Lに直交する面における上部を直接照射することを防止する。このため、プレート部材21では、環状箇所21aの内方において、遮蔽箇所21bの下側に開口部21nが形成されている。
【0050】
プレート部材21では、
図5(a)に示すように、レンズ対向面21dに複数の第1突起部21eとガイド突起21gとレンズ側拡散面21hとが設けられている。その各第1突起部21eは、環状箇所21aにおけるレンズ対向面21dから前後方向前側に部分的に突出して形成されており、その前後方向前側で姿勢規定面21fを規定している。その姿勢規定面21fは、前後方向に直交する(左右方向および上下方向を含む)平坦な面とされている。そして、各第1突起部21eは、それぞれの姿勢規定面21fが前後方向に直交する同一の平面上に位置するように形成されている。この各姿勢規定面21fは、後述する投影レンズ22(そのフランジ部22b)裏面22cに面で当てることにより、その投影レンズ22の位置および姿勢を規定する。この第1突起部21eは、実施例1では、左右方向および上下方向で見て対称となる位置関係とされて4か所に設けられている。
【0051】
ガイド突起21gは、環状箇所21aにおけるレンズ対向面21dから前方へと突出する板状を呈し、後述する投影レンズ22のフランジ部22b(その外周縁)に径方向外側から宛がうことが可能とされている。このガイド突起21gは、前後方向に直交する面に沿う方向でのプレート部材21すなわち後述するようにプレート部材21が取り付けられるレンズホルダ12に対する投影レンズ22の位置を大まかに規定する。
【0052】
レンズ側拡散面21hは、後述するように半導体型発光部13から発せられてプレート部材21におけるレンズ対向面21dへと導かれた光を拡散させるものであり、実施例1では、遮蔽箇所21bにおけるレンズ対向面21dに設けられている。このレンズ側拡散面21hは、所定の規則性を持って並べられ、かつ後述する投影レンズ22を通して視認可能な大きさ寸法とされた凹凸によって形成されている。レンズ側拡散面21hは、実施例1では、上下方向に伸びる突条部が左右方向に並列されて形成された所謂縦目ローレットとされており、上下方向に直交する断面で見ると各突条部が前方へ向けて円弧状に突出するものとされている。なお、レンズ側拡散面21hは、上下方向に直交する断面で見た各突条部の形状は適宜設定すればよく、実施例1の構成に限定されるものではない。また、レンズ側拡散面21hは、ローレット(各突条部)の伸びる方向は適宜設定すればよく、実施例1の構成に限定されるものではない。
【0053】
レンズ側拡散面21hは、実施例1では、遮蔽箇所21bにおける下端近傍まで設けられている、すなわち各突条部が遮蔽箇所21bの下端近傍まで伸びるものとされている。このため、実施例1では、レンズ対向面21dにおける遮蔽箇所21bの下端に、レンズ側拡散面21hが存在せずに平坦面とされた下端平坦面21iが設けられている。その下端平坦面21iは、後述する不測光に起因して眩惑させることを防止すべくレンズ側拡散面21hによる半導体型発光部13から発せられた光を拡散させることの作用を損なうことなく、レンズ側拡散面21hの下方に左右方向に伸びる直線模様を形成する。
【0054】
プレート部材21では、
図5(b)に示すように、環状箇所21aにおける光源側面21cが、各第1突起部21eの姿勢規定面21f(
図5(a)参照)が規定する平面と平行な平坦な面とされている。このため、プレート部材21は、環状箇所21aの光源側面21cを、レンズホルダ12の円筒部12aの前側端面12cに設けられた各第2突起部12dの姿勢規定面12e(
図3参照)に宛がうことにより、各姿勢規定面21fが規定する平面を前後方向に直交するものとすることができる。
【0055】
このプレート部材21では、光源側面21cに位置決め柱状部21kと光源側拡散面21mとが設けられている。その位置決め柱状部21kは、環状箇所21aにおける光源側面21cから後方へと突出する円柱状を呈し、レンズホルダ12の円筒部12aの前側端面12cに設けられた位置決め穴(図示せず)に嵌め入れることが可能とされている。この位置決め柱状部21kは、前後方向に直交する面に沿う方向でのレンズホルダ12(その円筒部12a)に対するプレート部材21の位置ずれを防止する。
【0056】
光源側拡散面21mは、半導体型発光部13から発せられてプレート部材21における光源側面21cへと導かれた光を拡散させるものである。この光源側拡散面21mは、実施例1では、プレート部材21の光源側面21c、すなわち環状箇所21aおよび遮蔽箇所21bにおける光源側面21cの略全面に渡って設けられている。この光源側拡散面21mは、実施例1では、上下方向に伸びる突条部が左右方向に並列されて形成された所謂縦目ローレットとされており、上下方向に直交する断面で見ると各突条部が前方へ向けて円弧状に突出するものとされている。すなわち、光源側拡散面21mは、レンズ側拡散面21h(
図5(a)参照)と同様に縦目ローレットとされている。そして、光源側拡散面21mは、レンズ側拡散面21hよりも細かいピッチで各突条部が設けられており、各突条部における突出量が小さいものとされて曲率が大きいものとされている。なお、光源側拡散面21mは、上下方向に直交する断面で見た各突条部の形状は適宜設定すればよく、実施例1の構成に限定されるものではない。また、光源側拡散面21mは、ローレット(各突条部)の伸びる方向は適宜設定すればよく、実施例1の構成に限定されるものではない。
【0057】
さらに、プレート部材21では、環状箇所21aの外周面に4つのガイド片21pが設けられている。この各ガイド片21pは、環状箇所21aの外周面から径方向の外側に突出された板状を呈する。ガイド片21pでは、環状箇所21aの上部に位置する2つにガイド溝21qが設けられ、環状箇所21aの下部に位置する2つにガイド穴21rが設けられている。この各ガイド溝21qおよび各ガイド穴21rは、レンズホルダ12の円筒部12a(その前側端面12c)に設けられたガイド突起12f(
図3参照)を受け入れることが可能な内径寸法とされている。この4つのガイド片21pは、実施例1では、前後方向前側から見て、円筒部12aの中心軸線(後述する投影レンズ22の軸線(
図1参照))に関して回転対称となる位置関係とされている。
【0058】
その投影レンズ22は、
図3等に示すように、半導体型発光部13から出射されてリフレクタ15の反射面15aにより反射された光束を、所定の配光パターンとして前方を照射させるものであり、実施例1では平凸レンズにより構成されている。投影レンズ22は、半導体型発光部13から出射される光が殆ど熱を有していないことから、自身の重量延いては車両用灯具10の重量の低減を図るために樹脂材料を用いて形成されている。この投影レンズ22に用いる樹脂材料としては、ポリカーボネート(PC)、メタクリル樹脂(PMMA)、環状オレフィン重合体(PCO)等を用いることができ、実施例1ではアクリル樹脂を用いている。投影レンズ22は、非球面を基本とする平凸レンズとされたレンズ部22aと、その周辺に設けられたフランジ部22bと、を有する。
【0059】
レンズ部22aは、半導体型発光部13からの光が前後方向の後側に位置する裏面22cから入射され、内方を進行した光を前後方向の前側に位置する表面22dから出射させる(
図4参照)。すなわち、投影レンズ22では、裏面22cが平面とされ、表面22dが凸面とされている。そして、フランジ部22bにおける裏面22cが、レンズ部22aの中心軸線(レンズ光軸)に直交する平坦な面とされている。このことから、投影レンズ22は、フランジ部22bの裏面22cを、プレート部材21の各第1突起部21eの姿勢規定面21f(
図5(a)参照)に宛がうことにより、当該各姿勢規定面21fが規定する平面にレンズ部22aの中心軸線(レンズ光軸)が直交する姿勢とされる。
【0060】
このフランジ部22bには、外周面に4つのガイド片22eが設けられている。この各ガイド片22eは、フランジ部22bの外周面から径方向の外側に突出された板状を呈する。そのガイド片22eでは、フランジ部22bの上部に位置する2つにガイド溝22fが設けられ、フランジ部22bの下部に位置する2つにガイド穴22g(
図3では一方のみ図示する)が設けられている。この各ガイド溝22fおよび各ガイド穴22gは、レンズホルダ12の円筒部12a(その前側端面12c)に設けられたガイド突起12f(
図3参照)を受け入れることが可能な内径寸法とされている。この4つのガイド片22eは、実施例1では、前後方向前側から見て、円筒部12aの中心軸線(後述する投影レンズ22の軸線(
図1参照))に関して回転対称となる位置関係とされ、プレート部材21に設けられた各ガイド片21pに対応する位置関係とされている。この投影レンズ22の取り付けのために固定枠23が用いられる。
【0061】
その固定枠23は、プレート部材21を介して投影レンズ22をレンズホルダ12(その円筒部12a)に固定するために用いられ、
図3に示すように、投影レンズ22のフランジ部22bに対応する円環状とされている。固定枠23では、
図7等に示すように、円環状とされた箇所が全体に渡って、前後方向に直交する面に沿う押当片部23aと、その径方向外側が後側へと折り曲げられた取囲片部23bと、により構成されている。押当片部23aは、前後方向に直交する面に沿って存在する平板状を呈し、投影レンズ22のフランジ部22bの表面22dに前側から宛がうことが可能とされている。取囲片部23bは、投影レンズ22のフランジ部22bの径方向の外側で間隔をおいて取り囲むことが可能とされている。
【0062】
この固定枠23では、
図3に示すように、一対の取付片部23cが設けられている。その各取付片部23cは、取囲片部23bを部分的に後方へ向けて伸ばして形成された板状を呈し、その先端箇所が径方向外側へと折り曲げられて固定片部分23dとされている。その各固定片部分23dは、前後方向に直交する面に沿う平板状とされており、前後方向に貫通する固定孔23eが設けられている。その各固定孔23eは、後述する固定ネジ部材35の軸部35bを受け入れることが可能であり、かつ当該固定ネジ部材35の頭部35aを受け入れることのできない内径寸法とされている。この取囲片部23b(固定片部分23d)の固定孔23eは、レンズホルダ12の円筒部12aの外周面に設けられた2つの固定ネジ穴12hに対応して設けられている。この固定枠23、投影レンズ22およびプレート部材21のレンズホルダ12への取り付けのために固定ネジ部材35が用いられる。
【0063】
その固定ネジ部材35は、頭部35aと軸部35bとを有する。頭部35aは、柱状を呈し、固定枠23に設けられた各取付片部23cの固定孔23eの内方へと通すことのできない外径寸法とされている。軸部35bは、外周面にネジ溝が設けられた円柱状を呈し、固定枠23の固定孔23eおよびレンズホルダ12の円筒部12aに設けられた各固定ネジ穴12hへと通すことができる外径寸法とされている。この固定ネジ部材35は、レンズホルダ12の固定ネジ穴12hに軸部35bを噛み合わせることにより、その固定ネジ穴12hに締め付け固定することが可能とされている。
【0064】
次に、この車両用灯具10の組み付け方法の一例について説明する。先ず、
図3に示すように、発光基板14に半導体型発光部13を実装し(矢印A1参照)、その発光基板14を設置ネジ部材31によりヒートシンク部材11の発光部設置箇所11aに固定して設置する(矢印A2参照)。その後、リフレクタ15の取付片部15bに設けられた各取付穴15cに固定ネジ部材32の軸部32bを通し、その軸部32b(固定ネジ部材32)をヒートシンク部材11の対応する固定ネジ穴(図示せず)に締め付け固定する(矢印A3参照)。これにより、リフレクタ15をヒートシンク部材11(その発光部設置箇所11a)に取り付ける。すると、リフレクタ15は、その反射面15aの第1焦点近傍に、発光部設置箇所11aに設置された半導体型発光部13を位置させることとなる(
図4参照)。
【0065】
その後、シェード駆動機構19の可動軸部19bの上端部にシェード17(
図4参照)を取り付け、そのシェード駆動機構19の各取囲片部19cの固定孔19dに固定ネジ部材33の軸部33bを通す。そして、その軸部33b(固定ネジ部材33)をヒートシンク部材11の取付ネジ穴11g(
図4参照)に締め付け固定することにより、シェード駆動機構19およびシェード17をヒートシンク部材11に取り付ける(矢印A4参照)。
【0066】
そして、ヒートシンク部材11の2つのガイド突起11dをストッパ部材18の対応するガイド孔18cに通しつつ、そのストッパ部材18をヒートシンク部材11の支持枠部11cに宛がう。このとき、ストッパ部材18の一対のストッパ片部18bに、下方からシェード17の規制片部17bが押し当たる位置関係とする。この状態において、連結ネジ部材34の軸部34bをレンズホルダ12の3つの取付用穴12iおよびストッパ部材18の対応する取付用穴18dへと通し、その軸部34b(連結ネジ部材34)をヒートシンク部材11の3つの連結ネジ穴11eに締め付け固定する。これにより、シェード17、ストッパ部材18およびシェード駆動機構19を介在させて、レンズホルダ12がヒートシンク部材11に取り付けられる。これにより、シェード17は、ストッパ部材18との協働により上端縁17aがリフレクタ15の第2焦点近傍に位置するものとされるとともに、その状態からシェード駆動機構19により下方へと移動することが可能とされる。
【0067】
その後、レンズホルダ12の円筒部12aの前側端面12cの2つのガイド突起12fを、プレート部材21の4つのガイド片21pのうちの対応するガイド溝21qまたはガイド穴21rに通しつつ環状箇所21aの光源側面21cを円筒部12aの前側端面12cに宛がう(
図6および
図7等参照)。すると、その前側端面12cには、複数の第2突起部12d(実施例1では4つ)が設けられていることから、プレート部材21の環状箇所21a(その光源側面21c)が、各第2突起部12dの姿勢規定面12eに宛がわれる(
図6および
図7参照)。その各姿勢規定面12eは、前後方向に直交する同一の平面上に位置するものとされていることから、プレート部材21が前後方向に直交してレンズホルダ12の円筒部12aに設けられる。そのプレート部材21(その光源側面21c)は、第2突起部12d(その姿勢規定面12e)に宛がわれていることから、レンズホルダ12の円筒部12a(その前側端面12c)との間に第2突起部12dの高さ寸法(前後方向での突出量)の隙間C1(
図7参照)を置くものとされる。
【0068】
その後、レンズホルダ12の円筒部12aの前側端面12cの2つのガイド突起12fを、投影レンズ22の4つのガイド片22eのうちの対応するガイド溝22fまたはガイド穴22gに通しつつフランジ部22bの裏面22cをプレート部材21の環状箇所21aのレンズ対向面21dに宛がう(
図6および
図7等参照)。すると、その環状箇所21aには、複数の第1突起部21e(実施例1では4つ)が設けられていることから、投影レンズ22のフランジ部22b(その裏面22c)が、各第1突起部21eの姿勢規定面21fに宛がわれる(
図6および
図7参照)。その各姿勢規定面21fは、前後方向に直交する同一の平面上に位置するものとされ、かつフランジ部22bの裏面22cは、レンズ部22aの中心軸線(レンズ光軸)に直交する平坦な面とされていることから、その中心軸線(レンズ光軸)が前後方向と平行とされて投影レンズ22がレンズホルダ12の円筒部12aに設けられる。その投影レンズ22(その裏面22c)は、第1突起部21e(その姿勢規定面21f)に宛がわれていることから、プレート部材21(そのレンズ対向面21d)との間に第1突起部21eの高さ寸法(前後方向での突出量)の隙間C2(
図7参照)を置くものとされる。
【0069】
その後、投影レンズ22の前側から固定枠23を宛がう。詳細には、固定枠23の取囲片部23bの内方に投影レンズ22のフランジ部22bを位置させつつ、その固定枠23の押当片部23aを投影レンズ22のフランジ部22bの表面22dに宛がう(
図4および
図7参照)。このとき、固定枠23の一対の取付片部23cの固定片部分23dの各固定孔23eを、レンズホルダ12の円筒部12aの外周面に設けられた2つの固定ネジ穴12hに対応する位置関係とする。この状態において、2つの固定ネジ部材35の軸部35bを固定枠23の対応する固定孔23eに通し、その軸部35b(固定ネジ部材35)をレンズホルダ12の円筒部12aの対応する固定ネジ穴12hに締め付け固定する。この固定枠23のレンズホルダ12への固定により、投影レンズ22がプレート部材21を介在させてレンズホルダ12(その円筒部12a)に取り付けられる。このとき、投影レンズ22は、後側焦点がリフレクタ15の第2焦点の近傍に位置される。
【0070】
このように組み付けられた車両用灯具10は、半導体型発光部13から出射されてリフレクタ15の反射面15aにより反射された光束を、縦断面(上下方向および前後方向を含む面)で見て、投影レンズ22から照射光軸Lに略沿うように出射させる。このとき、車両用灯具10では、投影レンズ22とレンズホルダ12(その円筒部12a)との間にプレート部材21が介在されているが、このプレート部材21には開口部21nが設けられていることから、当該プレート部材21により上記した投影レンズ22からの出射が阻害されることはない。その投影レンズ22から出射された光束は、レンズホルダ12が形成する灯室においてシェード17により部分的に遮蔽されることにより、カットオフラインが形成された配光パターンとされる。また、車両用灯具10は、シェード駆動機構19(その本体部19a)を駆動して可動軸部19bを下方へと移動させると、灯室においてシェード17が部分的な遮蔽をせず、カットオフラインが形成されていない通常配光としての配光パターンの光束を出射させる。このため、車両用灯具10では、投影レンズ22の前方において、照射光軸Lに直交する面における略上半部を照射することなく略下半部を照射する配光パターンを形成することができ、かつ略下半部とともに上半部の一部も照射する配光パターンを形成することができる。換言すると、車両用灯具10では、投影レンズ22から出射させた光(光束)で、すれ違い配光(ロービーム)としての配光パターンと、通常配光(ハイビーム)としての配光パターンと、を形成することができる。
【0071】
その車両用灯具10では、光源となる半導体型発光部13(それが設けられた発光基板14)がヒートシンク部材11(その発光部設置箇所11a)に設けられている。このため、車両用灯具10では、半導体型発光部13(発光基板14)で発生した熱をヒートシンク部材11、主にその複数の放熱フィン11bで放熱することができ、半導体型発光部13および発光基板14の温度が過度に上昇することを防止することができる。
【0072】
ここで、車両用灯具10では、半導体型発光部13が出射する光が殆ど熱を有していないことから、重量の低減を図るべく投影レンズ22としてガラス材料に換えて樹脂材料で形成したものを用いている。この車両用灯具10では、投影レンズ22をレンズホルダ12で保持することから、プレート部材21が設けられていないものとすると、ヒートシンク部材11に取り付けられたレンズホルダ12を経て投影レンズ22(そのレンズホルダ12に保持された箇所)へと熱が伝わる。その樹脂材料で形成した投影レンズ22では、ガラス材料で形成した投影レンズと比べて耐熱温度が低いことから、ヒートシンク部材11に伝達された熱がレンズホルダ12を経て伝わると変形してしまう虞がある。このため、車両用灯具10では、例えば、レンズホルダ12を経て伝わった熱により投影レンズ22のレンズホルダ12に保持された箇所が変形してしまうと、投影レンズ22のレンズホルダ12への取り付け精度が低下してしまう虞があり、配光不良が生じてしまう虞がある。ここで、ガラス材料で形成した投影レンズにおいては、耐熱温度が高いことから、ヒートシンク部材11の熱がレンズホルダ12を経て伝達されても問題となることはない。
【0073】
これに対して、本発明に係る車両用灯具の実施例1の車両用灯具10では、投影レンズ22とレンズホルダ12との間に、レンズホルダ12よりも低い熱伝導率の部材で形成したプレート部材21を設けている。このため、車両用灯具10では、半導体型発光部13(発光基板14)で発生した熱によりヒートシンク部材11が高温となり、その熱がレンズホルダ12に伝わった場合であっても、レンズホルダ12の熱が投影レンズ22に伝わることを大幅に抑制することができる。すなわち、投影レンズ22では、主に熱伝導によりレンズホルダ12の熱が伝わることとなるが、当該レンズホルダ12との間にプレート部材21を設けているので、そのプレート部材21が断熱部材として機能することで熱伝導により熱が伝わることを大幅に抑制することができる。これにより、車両用灯具10では、レンズホルダ12を経て伝わった熱により投影レンズ22が変形してしまうことを防止することができる。よって、車両用灯具10では、投影レンズ22のレンズホルダ12への取り付け精度の低下を防止することができ、配光不良が生じることを防止することができる。
【0074】
また、車両用灯具10では、プレート部材21に遮蔽箇所21bを設けている。このため、車両用灯具10では、プレート部材21の遮蔽箇所21bで、半導体型発光部13から出射された光(光束)が直接投影レンズ22の上部に入射すること(直射光が投影レンズ22の上部に入射すること)を防止することができる。これは、車両用灯具10では、半導体型発光部13から出射された直射光の一部が、直接投影レンズ22の上部に入射する方向へと進行することがあることによる。そして、そのような投影レンズ22の上部に入射する直射光は、照射光軸に直交する面における上部を直接照射することで眩惑を生じさせる配光上不要となるものである。このため、車両用灯具10では、レンズホルダ12が形成する灯室において配光上不要となる直射光が生じた場合であっても、当該直射光が投影レンズ22の上部から出射されることをプレート部材21の遮蔽箇所21bで確実に防止することができる。
【0075】
さらに、車両用灯具10では、プレート部材21に遮蔽箇所21bを設けていることから、半導体型発光部13から出射されてレンズホルダ12が形成する灯室における反射面15a以外の箇所で反射された制御されていない光(光束)が、投影レンズ22の上部に入射することを防止することができる。これにより、車両用灯具10では、意図しない光(光束)がグレアとして車両の前方に照射されることを、プレート部材21の遮蔽箇所21bで防止することができる。
【0076】
車両用灯具10では、プレート部材21の遮蔽箇所21bにおけるレンズ対向面21dに、レンズ側拡散面21hを設けている。このため、車両用灯具10では、投影レンズ22とレンズホルダ12との間に配置するプレート部材21に遮蔽箇所21bを設けることに起因して、配光上不要となる光(光束)を投影レンズ22から出射させて眩惑させることを防止することができる。これは以下のことによる。まず、プレート部材21において遮蔽箇所21bのレンズ対向面21dにレンズ側拡散面21hを設けていない平坦な面としたものを用いた車両用灯具を車両用灯具(10A(略等しい構成であることから図面としては車両用灯具10を用いる))とする。その車両用灯具(10A)では、車両用灯具10と同様に、プレート部材21の遮蔽箇所21bにより遮蔽されることなく投影レンズ22へと進行した光(光束)B1を、裏面22cから投影レンズ22内へと進行させて当該投影レンズ22から出射させる(
図8の光B2参照)。このとき、投影レンズ22の裏面22cでは、
図8に示すように、光B1の一部を反射してしまい、遮蔽箇所21bの近傍で反射された光B3が投影レンズ22(その裏面22c)と遮蔽箇所21b(そのレンズ対向面21d)との間に形成された隙間C2へと進行する。すると、その光B3は、遮蔽箇所21bのレンズ対向面21dへと向かい、そのレンズ対向面21dで反射されて再び投影レンズ22の裏面22cへと向かい、その一部(光B4)は裏面22cから投影レンズ22内へと進行するとともに他部(光B5)が裏面22cで反射される。このように、投影レンズ22(裏面22c)と遮蔽箇所21b(レンズ対向面21d)との間では多重反射が発生してしまう。このことは裏面22cとレンズ対向面21dとの間に隙間C2が形成されていると顕著となる。このため、車両用灯具(10A)では、遮蔽箇所21bのレンズ対向面21dで反射されて投影レンズ22内へと進行する光(B4等)が、本来であれば遮蔽箇所21bにより遮蔽される光(光束)と同様の方向で投影レンズ22内に進行することとなる。これにより、車両用灯具(10A)では、裏面22cとレンズ対向面21dとの間で多重反射が発生すると、遮蔽箇所21bにより遮蔽されるはずであって予期しない光(以下では、不測光ともいう)を、投影レンズ22から出射させてしまう虞がある。この不測光は、場合によっては車両用灯具として規定された法規や規格から外れる光となってしまう虞がある。これに対して、車両用灯具10では、遮蔽箇所21bのレンズ対向面21dにレンズ側拡散面21hを設けていることから、レンズ対向面21dへと進行した光B3をレンズ側拡散面21h(レンズ対向面21d)で拡散することができる。このため、車両用灯具10では、光B3が再び投影レンズ22の裏面22cへと向かっても、車両用灯具(10A)のように平坦なレンズ対向面21dで反射される場合とは異なり、当該裏面22cへと向かう方向をバラつかせることができる。これにより、車両用灯具10では、不測光が発生した場合であってもその光量を大幅に抑制することができ、当該不測光に起因して眩惑させることを防止することができる。このことから、車両用灯具10では、車両用灯具として規定された法規や規格から外れる光を投影レンズ22から出射させることも防止することができる。
【0077】
車両用灯具10では、プレート部材21の遮蔽箇所21bのレンズ対向面21dに設けたレンズ側拡散面21hを、所定の規則性を持って並べられた凹凸によって形成していることから、簡易な構成でかつコスト削減を図りつつ自らに向かう光を拡散することができる。
【0078】
車両用灯具10では、プレート部材21の遮蔽箇所21bのレンズ対向面21dに設けたレンズ側拡散面21hを、所定の規則性を持って並べられかつ投影レンズ22を通して視認可能な大きさ寸法とされた凹凸によって形成していることから、
図9に示すように、非点灯時に投影レンズ22の奥であって上部にレンズ側拡散面21hによる凹凸の模様を形成することができる。このため、車両用灯具10では、簡易な構成で非点灯時の見栄えを向上させることができる。
【0079】
車両用灯具10では、プレート部材21の遮蔽箇所21bのレンズ対向面21dに設けたレンズ側拡散面21hを縦目ローレットとしていることから、より簡易な構成でかつコスト削減を図りつつ自らに向かう光を拡散することができる。
【0080】
車両用灯具10では、プレート部材21の遮蔽箇所21bのレンズ対向面21dに設けたレンズ側拡散面21hを縦目ローレットとしていることから、
図9に示すように、非点灯時に投影レンズ22の奥であって上部にレンズ側拡散面21h(縦目ローレット)により縦縞の模様を形成することができる。特に、実施例1では、遮蔽箇所21bにおけるレンズ側拡散面21hの下方に下端平坦面21iを設けていることから、縦縞の模様と、その下方で左右方向に伸びる直線模様と、を形成することができる。このため、車両用灯具10では、簡易な構成で非点灯時の見栄えを向上させることができる。
【0081】
車両用灯具10では、プレート部材21の遮蔽箇所21bのレンズ対向面21dに設けたレンズ側拡散面21hを縦目ローレットとしていることから、自らに向かう光を上下方向へと拡散することなく左右方向に拡散することができる。このため、車両用灯具10では、上方へと向かうことで眩惑させる虞のある光(光束)を生じさせることなく遮蔽箇所21bに向かう光を拡散することができるので、プレート部材21に遮蔽箇所21bを設けることに起因して配光上不要となる光(光束)を投影レンズ22から出射させて眩惑させることをより確実に防止することができる。
【0082】
車両用灯具10では、プレート部材21を、レンズホルダ12よりも熱伝導率が低く、かつ投影レンズ22よりも耐熱性の高い部材で形成している。このため、車両用灯具10では、プレート部材21を介してレンズホルダ12に取り付けられる投影レンズ22の取り付け精度が低下することをより確実に防止することができる。
【0083】
車両用灯具10では、第2突起部12dにより、レンズホルダ12(その円筒部12aの前側端面12c)と、プレート部材21(その環状箇所21aの光源側面21c)と、の間に隙間C1を設けている。このため、車両用灯具10では、レンズホルダ12からプレート部材21へと熱伝導させるための経路を各第2突起部12dのみとすることができるので、レンズホルダ12の熱がプレート部材21に伝わることをより効果的に抑制することができる。このため、車両用灯具10では、レンズホルダ12を経て伝わった熱により投影レンズ22が変形してしまうことをより確実に防止することができる。
【0084】
車両用灯具10では、第1突起部21eにより、プレート部材21(その環状箇所21aの光源側面21c)と、投影レンズ22(そのフランジ部22bの裏面22c)と、の間に隙間C2を設けている。このため、車両用灯具10では、プレート部材21から投影レンズ22へと熱伝導させるための経路を各第1突起部21eのみとすることができるので、レンズホルダ12の熱がプレート部材21を介して投影レンズ22に伝わることをより効果的に抑制することができる。このため、車両用灯具10では、レンズホルダ12を経て伝わった熱により投影レンズ22が変形してしまうことをより確実に防止することができる。
【0085】
車両用灯具10では、レンズホルダ12の円筒部12aの前側端面12cに、第2突起部12d(その姿勢規定面12e)を設けることにより、レンズホルダ12(前側端面12c)とプレート部材21(光源側面21c)との間に隙間C1を形成している。このため、車両用灯具10では、プレート部材21のレンズホルダ12への取り付け精度を向上させつつ、簡易な構成でレンズホルダ12(前側端面12c)とプレート部材21(光源側面21c)との間に隙間C1を設けることができる。これは、レンズホルダ12の前側端面12cを全周に渡って所望の平面とすることに比べて、複数の第2突起部12dの姿勢規定面12eを所望の平面とすることの方が高い精度とすることができることによる。
【0086】
車両用灯具10では、第2突起部12dによりレンズホルダ12(前側端面12c)とプレート部材21(光源側面21c)との間に隙間C1を設けていることから、隙間C1を利用してレンズホルダ12とプレート部材21との間に空気層を形成することができる。このため、車両用灯具10では、この空気層でレンズホルダ12の熱を放熱することができるとともに、プレート部材21が温まることを効果的に抑制することができる。これにより、車両用灯具10では、レンズホルダ12の熱がプレート部材21に伝わることをより効果的に抑制することができる。
【0087】
車両用灯具10では、プレート部材21の環状箇所21aのレンズ対向面21dに、第1突起部21e(その姿勢規定面21f)を設けることにより、プレート部材21(光源側面21c)と投影レンズ22(裏面22c)との間に隙間C2を設けている。このため、車両用灯具10では、投影レンズ22のプレート部材21への取り付け精度を向上させつつ、簡易な構成でプレート部材21(光源側面21c)と投影レンズ22(裏面22c)との間に隙間C2を設けることができる。これにより、車両用灯具10では、投影レンズ22のレンズホルダ12への取り付け精度を向上させることができる。
【0088】
車両用灯具10では、第1突起部21eによりプレート部材21(光源側面21c)と投影レンズ22(裏面22c)との間に隙間C2を設けていることから、隙間C2を利用してプレート部材21と投影レンズ22との間に空気層を形成することができる。このため、車両用灯具10では、この空気層でプレート部材21の熱を放熱することができるとともに、投影レンズ22が温まることを効果的に抑制することができる。これにより、車両用灯具10では、レンズホルダ12の熱が投影レンズ22に伝わることをより効果的に抑制することができる。
【0089】
車両用灯具10では、プレート部材21の遮蔽箇所21bにおける光源側面21cに、光源側拡散面21mを設けている。このため、車両用灯具10では、プレート部材21の遮蔽箇所21bで、半導体型発光部13から出射された光(光束)が照射光軸Lに直交する面における上半部の上方を直接照射することを防止することに起因して、配光上不要となる光(光束)を投影レンズ22から出射させて眩惑させることを防止することができる。これは、以下のことによる。まず、プレート部材21において光源側面21cに光源側拡散面21mを設けていない平坦な面としたものを用いた車両用灯具を車両用灯具(10B(略等しい構成であることから図面としては車両用灯具10を用いる))とする。その車両用灯具(10B)では、半導体型発光部13から出射された光(光束)のうち、プレート部材21の遮蔽箇所21bで遮蔽される光(光束)が基本的に遮蔽箇所21bの光源側面21cへと向かう。すると、車両用灯具(10B)では、光源側面21cに向かった光(光束)を、光源側面21cで反射してレンズホルダ12が形成する灯室において意図しない方向へと進行させてしまう。このような光(光束)は、投影レンズ22から意図しない方向に出射される虞があり、場合によっては車両用灯具として規定された法規や規格から外れる光となってしまう虞がある。これに対して、車両用灯具10では、遮蔽箇所21bの光源側面21cに光源側拡散面21mを設けていることから、光源側面21cへと進行した光(光束)B7(
図7参照)を光源側拡散面21m(光源側面21c)で拡散することができる。このため、車両用灯具10では、車両用灯具(10B)のように平坦な光源側面21cで反射される場合とは異なり、遮蔽箇所21bで遮蔽した光が灯室内へと進行する方向をバラつかせることができる。これにより、車両用灯具10では、遮蔽箇所21bで光(光束)を遮蔽した場合であっても、その遮蔽に起因して灯室内を意図しない方向へと進行する光(光束)の光量を大幅に抑制することができ、それに起因して眩惑させることを防止することができる。このことから、車両用灯具10では、車両用灯具として規定された法規や規格から外れる光を投影レンズ22から出射させることも防止することができる。
【0090】
車両用灯具10では、プレート部材21における光源側面21cの略全面に渡って光源側拡散面21mを設けている。このため、車両用灯具10では、半導体型発光部13から出射されてプレート部材21の光源側面21cに向かった光(光束)に起因して、レンズホルダ12が形成する灯室において意図しない方向へと進行する光(光束)の光量を大幅に抑制することができる。これにより、車両用灯具10では、半導体型発光部13で発生した熱に起因して投影レンズ22の取り付け精度が低下することを防止しつつ、そのために設けたプレート部材21により意図しない方向への光(光束)を投影レンズ22から出射させることに起因して眩惑させることを防止することができる。
【0091】
車両用灯具10では、プレート部材21の光源側面21cに設けた光源側拡散面21mを縦目ローレットとしていることから、簡易な構成でかつコスト削減を図りつつ意図しない方向への光(光束)を投影レンズ22から出射させることを防止することができる。
【0092】
車両用灯具10では、プレート部材21の遮蔽箇所21bの光源側面21cに設けた光源側拡散面21mを縦目ローレットとしていることから、自らに向かう光を上下方向へと拡散することなく左右方向に拡散することができる。このため、車両用灯具10では、上下方向へと拡散することに起因して、遮蔽箇所21bの下方を通ったにも拘らず上方へと向かうことで眩惑させる虞のある光(光束)を生じさせることを効果的に抑制することができる。これにより、車両用灯具10では、上方へと向かうことで眩惑させる虞のある光(光束)を生じさせることを抑制しつつ遮蔽箇所21bに向かう光を拡散することができるので、プレート部材21に遮蔽箇所21bを設けることに起因して配光上不要となる光(光束)を投影レンズ22から出射させて眩惑させることを防止することができる。
【0093】
車両用灯具10では、プレート部材21の光源側面21cに設けた光源側拡散面21mにおける縦目ローレットのピッチを、遮蔽箇所21bのレンズ対向面21dに設けたレンズ側拡散面21hにおける縦目ローレットのピッチよりも小さくしている。このため、車両用灯具10では、レンズ対向面21dに向かう光(光束)とは異なり、半導体型発光部13から出射されてプレート部材21の光源側面21cに直接向かうことで光量が大きい光(光束)を、小さいピッチとされた光源側拡散面21mでより確実に拡散することができる。また、車両用灯具10では、投影レンズ22の裏面22cで反射されて隙間C2へと進行することで光量が小さい光(光束)に対しては大きなピッチとされたレンズ側拡散面21hであっても十分に光量を低減することができ、非点灯時の見栄えを向上させることができる。
【0094】
車両用灯具10では、投影レンズ22とプレート部材21とを、固定枠23によりレンズホルダ12(その円筒部12a)に固定している。このため、車両用灯具10では、接着剤を用いてプレート部材21や投影レンズ22をレンズホルダ12(その円筒部12a)に固定することと比較して、半導体型発光部13で発生した熱がプレート部材21や投影レンズ22へと伝わることをより効果的に抑制することができる。
【0095】
車両用灯具10では、プレート部材21を環状として遮蔽箇所21bと開口部21nとを有するものとしているので、その開口部21nで半導体型発光部13から出射された光(光束)が投影レンズ22に至る光路を確保するものとしている。このため、車両用灯具10では、プレート部材21を簡易な構成としつつ、そのプレート部材21を投影レンズ22とレンズホルダ12(その円筒部12a)との間に設けることができる。
【0096】
車両用灯具10では、プレート部材21が、レンズホルダ12を経て伝わった熱が投影レンズ22へと伝わることを効果的に抑制する機能と、配光上不要となる光(直接光および制御されていない光)に起因する眩惑を防止する機能と、を併せ持つものとされている。このため、車両用灯具10では、簡易な構成とすることができるとともに、投影レンズ22を樹脂材料で形成していることも併せて重量の低減を図ることができる。
【0097】
したがって、本発明に係る実施例1の車両用灯具10では、樹脂材料で形成した投影レンズ22を用いた場合であっても、半導体型発光部13で発生する熱に起因して取り付け精度が低下することを防止することができる。